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- 腰部脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症を自力で治す!ストレッチと筋トレの方法を紹介 「脊柱管狭窄症の痺れや痛み、自力で和らげる方法を知りたい」 「脊柱管狭窄症に効果的な運動療法は、どのようなものがあるの?」 このような疑問がある方はいませんか? この記事では、脊柱管狭窄症とはどのようなものかを理解して、自分で治すためにできる、ストレッチや筋トレについて知ることができます。 運動をしたくても、正しい方法がわからない方はぜひ参考にしましょう。 脊柱管狭窄症とは?原因や症状を紹介 背骨は脊椎(せきつい)とも呼ばれ、椎骨(ついこつ)という骨がつながってできています。椎骨の後ろ部分には穴が空いており脊柱管と呼ばれます。 脊柱管には脳から続く神経である脊髄(せきずい)が通り、脊髄から全身につながる神経が枝分かれします。 脊柱管狭窄症は脊椎の変形などにより脊柱管が狭くなり、神経を圧迫してさまざまな症状を呈する病気です。 脊柱管狭窄症の原因 脊柱管狭窄症の原因で最も多いのは、加齢による脊椎の変形です。骨の一部が飛び出たり、骨がずれたりして神経を圧迫します。 また、事故や生まれつきの変形、手術による脊椎の固定なども原因になります。 脊柱管狭窄症の症状 脊柱管狭窄症の症状はお尻から足にかけての痺れや痛みです。筋肉を動かす神経が圧迫されると力が入りにくくなります。 また、しばらく歩くと痛みや痺れが強まり歩けなくなるものの、数分間休んだり、前屈みの姿勢をとったりすると症状が和らいで歩けるようになる神経性間欠跛行(しんけいせいかんけつはこう)の症状が特徴的です。 重症な場合は排泄や排便が障害されます。 脊柱管狭窄症におすすめのストレッチ 脊柱管狭窄症のストレッチの重要な目的は、次の 2 点です。 ・狭くなっている神経の通り道を広げて、神経の圧迫を取り除く ・腰や足の付け根の、関節の動きを妨げる筋肉の凝りをほぐす これらを踏まえた具体的なストレッチの方法を 、ポイントを交えながら3 つ紹介します。 膝かかえストレッチ 初めに紹介するのは、神経の通り道を広げたり、背中の筋肉をほぐしたりするストレッチです。 ・仰向けになり両膝をかかえます ・太ももをお腹に近づけるようにします ・ 15 秒キープします ・ 5 回ほど繰り返します POINT: 太ももを近づけるタイミングで息をフーッと吐き出しましょう。 正座ストレッチ 次も、膝かかえストレッチと同じ効果が期待できるストレッチです。 少し難易度が高くなります。 ・四つ這いの状態で背中を丸めます ・手の位置は変えずに徐々に膝を曲げていきます ・背中を丸めるように意識して、正座のような姿勢になります ・また四つ這いの姿勢にゆっくり戻ります ・ 5 回ほど繰り返します POINT: 先ほどのストレッチと同じように、正座をするときは息を止めないようにして、リラックスをしましょう。 片膝立ちストレッチ 最後は太ももの前の筋肉である腸腰筋(ちょうようきん)のストレッチです。 腸腰筋が硬くなると腰が反る姿勢になりやすいため、柔軟性を保つことが大切です。 ・壁などを支えにして片膝立ちになります ・膝をつけている方の足を後ろに少し引きます ・前方の足の膝を曲げて、膝をついている方の太ももの前をストレッチします POINT: 腰を反ったり、上半身が前かがみにならないように注意しながら行いましょう。 脊柱管狭窄症におすすめの筋トレ 脊柱管狭窄症の筋トレのポイントは、脊椎にかかる負担を減らすために、腹筋や背筋といった体幹(インナーマッスル)の筋肉を鍛えることが大切です。 ここでは、 2 つの方法をポイントとともに紹介します。 ドローイング 椎骨を支える筋肉として、コルセットのような役割をする「腹横筋(ふくおうきん)」という筋肉があります。 お腹が割れたように見える筋肉は腹直筋(ふくちょくきん)ですが、脊柱管狭窄症の場合は腹筋の中でも「腹横筋」を鍛え、椎骨にかかる負荷をサポートしましょう。 ・仰向けになり両膝を立てます ・腹式呼吸の要領で、息を大きく吸ったり吐いたりします ・息を吐くときに合わせて、お腹を限界までへこませます ・これを 10 回程度繰り返します POINT: 息を吐くときは口をすぼめるようにして、ゆっくり長く吐くようにしましょう。 2.ダイアゴナル 腹筋と背筋の中でも、「インナーマッスル」という姿勢を保つ筋肉を鍛える運動です。 ・四つ這いの姿勢で、背中が曲がったり反ったりしないようにします ・右手と左足をまっすぐ上げて 15 秒キープします ・次に左手と右足をまっすぐ上げて 15 秒キープします ・ 10 回程度繰り返します POINT: 手足を上げたときに、体が傾かないように意識しましょう。また、お腹をへこませるように力を入れると効率よく筋肉を刺激でき、反り腰の防止にもなります。 ストレッチや筋トレをする上での注意点 3 つ ストレッチや筋トレなどの運動療法は、正しい方法で行う必要があります。 そこで 、3 つの意識したいことと注意点を紹介します。 痛みがあるときは無理をしない 「痛みを我慢した方がよく効く気がする」と思われる方がいるかもしれません。しかし、痛みがあるのに無理して運動療法をすると、脊柱管狭窄症の症状を悪化したり、別の部位を怪我したりする危険性があります。 筋肉がつっぱる程度のストレッチに止め、痛みや痺れが出るまで無理をしないようにしましょう。 崩れた姿勢で行わない 運動療法は正しい姿勢で行わないと、怪我の原因となったり、狙った効果がえられなかったります。 脊柱管狭窄症のストレッチでは、「腰を反らない」という点が大切になります。お腹に力を入れることを意識すれば腰が反りにくいです。 継続して取り組む ストレッチや運動を実施して症状が和らいでも、脊柱管狭窄症の原因となっている脊椎の状態や姿勢は、すぐには元に戻りません。 そのため、症状が楽になる運動は、特に継続して取り組むのが大切です。 特に筋トレは継続しなければ筋肉がつきません。最低 1 ヵ月は継続しましょう。 まとめ・脊柱管狭窄症に合わせた正しいストレッチや筋トレで症状を和らげよう 脊柱管狭窄症の症状を和らげるためには、原因を理解して、状態に合わせたストレッチや筋トレをするのが大切です。 今回の運動療法は家でもできる簡単な方法ですので、症状が和らぐのを確認しながら、継続するようにしましょう。 また、脊柱管狭窄症は運動療法の他にも、薬物療法や生活の工夫などを組み合わせて治療をするのが基本です。 そのため、症状が気になる場合は整形外科を受診して、医師や理学療法士などの専門家による助言を受けながら実施するようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S105 監修:医師 加藤 秀一
2023.01.09 -
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症を分かりやすく解説!症状のセルフチェック方法について 脊柱管狭窄症は、腰椎ヘルニアと並び、最も代表的な腰部疾患の一つです。 神経への影響という部分では、ヘルニアと似ているところもありますが、原因や症状、治療法などが微妙に違ってきます。 今回は、脊柱管狭窄症の病態や自分でできるチェック方法、治療について解説します。 脊柱管狭窄症とはどんな病気? 脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)とは、脊柱(背骨)で構成される脊柱管というトンネルが狭くなる疾患です。 その脊柱管の中には、脳と全身の器官を繋ぐ脊髄神経が通り、感覚や運動の指令を伝達するとても重要な役割を果たしています。 脊柱管狭窄症では、脊髄神経が通るトンネルが狭くなるため、脊髄神経は圧迫されてしまい、痛みやしびれ、力の入りづらさなど様々な症状が出てしまいます。 脊柱管狭窄症は部位によって分類される 脊柱は、7 個の頸椎と 12 個の胸椎、5 個の腰椎が連なって構成されます。 そのため、脊柱のどの部分で狭窄が起きているかで、呼び名が変わるのです。 ・頸椎で狭窄‥頸部脊柱管狭窄症 ・胸椎で狭窄‥胸部脊柱管狭窄症 ・腰椎で狭窄‥腰部脊柱管狭窄症 割合としては、腰部脊柱管狭窄症が 1 番多くみられるため、本記事でも腰部脊柱管狭窄症について述べていきます。 脊柱管狭窄症の症状 脊柱管狭窄症は、圧迫される場所によりタイプ分けされており、それぞれ症状が違います。 タイプは以下の2つに分けられます。 ①馬尾型 ②神経根型 また、この 2 つが組み合わさった混合型というのもあります。 ①馬尾型の症状 脊柱管狭窄症の 1 割程度でみられ、脊柱管の中心部に近いところで圧迫が起きます。 馬尾型では、両下肢のしびれやだるさ、膀胱直腸障害(排尿・排便障害)などがあり、症状が出現した場合は、すみやかに整形外科を受診するようにしましょう。 ②神経根型の症状 脊柱管狭窄症の 7 割が、神経根型といわれています。 多くは、片方の臀部や脚にかけてのしびれやピリピリする痛みがあります。 症状がなかなか落ち着かない場合は、整形外科に受診し、圧迫の程度や身体機能のチェックをおすすめします。 長時間(一定時間)の歩行で症状が増強する間欠性跛行 馬尾型、神経根型のいずれにおいても、長時間の歩行で痛みやしびれの増強がみられます。これが間欠性跛行です。 これは脊柱管狭窄症と診断された患者さんの大部分が訴える症状です。 いつもなら何事もなく歩ける距離が、急に辛くなった、休まないといけなくなった、などの症状が出たら、脊柱管狭窄症を疑いましょう。 もちろん、下肢の循環障害などでも同様の症状が出てくる可能性もあるので、専門機関でしっかり診断してもらうことが大切です。 出典「日本整形外科学会」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html 脊柱管狭窄症の原因 脊柱管狭窄症は、脊髄神経が通る脊柱管が狭くなることで引き起こされる疾患です。 では、どうして狭くなってしまうのでしょうか? 脊柱管が狭窄を起こしてしまう原因は、以下の 3 つが考えられます。 ①加齢による骨や周囲の軟部組織の変化 人の体は20歳をピークに徐々に衰え始め、中高年の時期に急激に変化していきます。 脊柱でも同様のことが起こり、脊柱管狭窄につながる変化としては以下のものが挙げられます。 ・椎骨の変形(骨の形態が変わること) ・椎間板の変性・膨隆(椎間板の性質が変わること・椎間板が後方の脊柱管内に膨らむこと) ・脊柱周囲の靭帯の肥厚(主に黄色靭帯が厚くなること) 椎骨は脊柱の骨組みになるものであり、椎間板は背骨と背骨の間に入り込みクッションのような役割を果たし、靭帯は背骨を安定させるために働いてくれます。 これらの機能が落ちてくると、上記の 3 つのような変化が現れ、脊柱管を狭くし脊髄神経を圧迫、そしてしびれや痛み、脚の脱力感などの症状が出てしまうのです。 ②姿勢や動作習慣など日常的な体の使い方によるもの 加齢による背骨やその周りの組織の変化が起こると同時に、問題になるのが姿勢や動作習慣です。 脊柱管狭窄症の人は反り腰となっていることが多く、その原因は猫背姿勢や運動不足による体幹筋力の低下、股関節や上半身を上手に使えない誤った動作習慣が挙げられます。 腰を反らした姿勢では、脊柱管はより狭くなってしまい、症状が強く現れます。 反対に、腰を少し前かがみにすれば、脊柱管が広がり、痛みやしびれが軽くなります。 脊柱管狭窄症の人が、痛みがある時に腰を一時的に曲げる動作をとるのは、このような理由があるからです。 ③先天的な疾患によるもの 割合としては非常に少ないですが、先天的な骨の形態異常により脊柱管が狭くなってしまい発症する脊柱管狭窄症もあります。 脊柱管狭窄症は、中高年の年齢から発症することが圧倒的に多いですが、この先天的なものが原因となる脊柱管狭窄症では、発育途上の若い年代で起こることが多いです。 脊柱管狭窄症とヘルニアの違い 脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニアは、腰部の疾患に挙げられる代表的なものですが、その違いは以下です。 腰椎椎間板ヘルニア 腰椎椎間板ヘルニアは、脊椎と脊椎の間にあるクッションの役割をする椎間板が後方へ飛び出てしまい、神経を圧迫して症状が出ます。 よく発症する年齢は、50 歳代ですが、10 〜 20 歳代の若い男性に多くみられることがあります。 腰椎椎間板ヘルニアの場合、脊柱管狭窄症と違って、間欠性跛行の症状はありません。 脊柱管狭窄症 脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭くなり、そこを通る神経が圧迫され発症します。 脊柱管狭窄症は、ヘルニアを伴うこともあり、完全に違う病気であるとは言い切れない部分もあるため、鑑別が難しいです。 好発年齢は 60 〜 70 歳代以降の人に多く、背骨の変形や姿勢の変化を伴うことが多いです。 脊柱管狭窄症のセルフチェック 脊柱管狭窄症は、特徴的な症状がいくつかあるため、セルフチェックができます。 下記の項目にチェックを付けて下さい ▢一定時間歩いていると脚に痛みやしびれが出てくる ▢立ったままの状態を長時間続けられない ▢足首や足の指を動かしづらい ▢陰部やお尻周りがしびれる ▢腰を反らすと痛い ▢腰を前に曲げると楽になる ▢尿漏れがある ▢身長が縮んだ ▢壁に踵・お尻・頭をつけた状態で立った時、腰と壁の間のスペースが大きい ▢下にある物を持ち上げる時、股関節や膝を曲げずに腰だけ曲げて持ち上げる いかがでしたか? ひとつでも当てはまるものがある方は、注意が必要です。 脊柱管狭窄症になっている可能性がある人や、今後脊柱管狭窄症になりやすい人は複数の項目でチェックが入るかもしれません。 特に下半身のしびれや長時間の歩行での痛み、尿漏れなどの症状が出ている人は、放置せずにできるだけ早めに専門の医療機関に相談しましょう。 脊柱管狭窄症の治療 脊柱管狭窄症の治療法は様々あります。 【脊柱管狭窄症の治療方法】 ・神経からくる痛みに対しての内服 ・コルセットなどで腹圧を高めるためのサポートを行う ・体幹や肩周り、股関節周りの柔軟性を高めるストレッチ ・体幹や下半身の筋力トレーニング ・立っている時、座っている時の姿勢の改善 ・歩き方、動き方の改善 ・重症度の高い脊柱管狭窄症への手術療法 重度の脊柱管狭窄症の場合は、早急に神経の圧迫を取り除く必要があるため、手術療法が用いられます。 また、体にメスを入れない保存療法では、リハビリテーション、薬物療法、装具療法があります。 保存療法では、神経的な痛みに対する薬を処方し、まずは症状を抑えることが多いです。そして、症状の原因となる姿勢の改善や、誤った動作習慣を改善する目的でリハビリテーションを行います。 高齢になると、どうしても活動量が落ちてしまい、同一姿勢をとる時間が長くなります。そうすると、脊柱の柔軟性や体幹を保とうとする筋力が低下し、脊柱にかかる負荷が増えてしまうのです。 そんな悪循環を断ち切るために、気になる症状が出てきた時は、専門の整形外科へ相談しあなたにあった治療方法を探してみましょう。 まとめ・脊柱管狭窄症を分かりやすく解説!症状のセルフチェック 今回は、脊柱管狭窄症の病態や、他の腰部疾患であるヘルニアとの違い、セルフチェック、治療方法について紹介しました。 中高齢の方に多い疾患ですが、その多くがそれ以前の姿勢や動作習慣が原因となって起こります。 今、症状が出ている人は、できるだけ早めに医療機関へ相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。 まだ症状が出ていない方、そして年齢的にもまだまだ若い方は、脊柱への過剰な負荷がかからないように、今のうちから姿勢や体の使い方を見直し、予防に努めましょう。 No.S103 監修:医師 加藤 秀一 ※脊柱管狭窄症でのお悩みは、再生医療という治療方法があります。手術や入院を避けることができる最新療法です。当院までお問い合わせ下さい。
2022.12.16 -
- 腰部脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症の手術|入院期間や費用、手術からリハビリまでの流れ 「脊柱管狭窄症の手術はどれくらい入院するの?」 「手術費用がいくらかかるか不安」 脊柱管狭窄症は足の痺れや痛みで歩けなくなる病気で、症状が悪化すると手術による治療が必要になります。 どのような手術やリハビリをするかはもちろんですが、入院期間や費用がどのくらいかかるかが気になる方も多いのではないでしょうか。 そこで、脊柱管狭窄症について、手術からリハビリまでの流れ、入院期間や必要な費用を詳しく解説します。 脊柱管狭窄症とは?原因とその症状 脊柱管狭窄症はさまざまな原因により、背中にある神経の通り道が狭くなり、神経を圧迫することで症状を引き起こす状態です。 まずは脊柱管狭窄症についての理解を深めるために、原因や症状を紹介します。 脊柱管狭窄症の原因 多くの場合は、加齢により「脊柱の変形による神経の圧迫」が原因となります。 脊柱は小さな積み木のような骨が積み重なってできており、後方の脊柱管という空間に脳から伸びた神経(脊髄:せきずい)が通っています。また、脊髄から枝分かれした神経は脊柱の左右の隙間を通って、手足につながり感覚や運動を司っています。 脊柱の変形のため、これらの通り道が狭くなってしまうと、神経にダメージを与えてしまい、脊柱管狭窄症の症状につながるのです。 加齢による変形の他に、骨の代謝障害や生まれつきの変形によるものなどがあります。 脊柱管狭窄症の症状 お尻から脚全体にかけての痺れや痛み、脱力といった神経の症状が特徴です。 また、ある程度の距離を歩くと痛みや痺れなどが悪化して歩けなくなるものの、数分間休憩して前屈みの姿勢をとると再び歩けるようになる間欠性跛行(かんけつせいはこう)という症状がみられます。 症状が悪化すると排泄の障害や性機能が不全になるなどの膀胱直腸障害(ぼうこうちょくちょうしょうがい)がみられます。 脊柱管狭窄症の治療方法について 脊柱管狭窄症の治療は、保存療法と手術療法があります。まず選択されるのは、手術をしない保存療法です。 脊柱管狭窄症の保存療法 保存療法は次のようなものがあります。 ・薬物療法 ・神経ブロック注射 ・運動療法 ・生活指導 薬物療法は、痛み止めや神経の働きを改善する薬を服用します。 神経ブロック注射は、傷害された神経に麻酔薬を注射して一時的に神経働きを麻痺させ痛みの軽減や神経症状の改善を目的とします。 また、運動や生活の工夫で腰部の負担を軽くして、症状の改善や悪化予防を図ります。 それでも回復しなかったり、症状が悪化したりする場合は、手術の適応となります。 脊柱管狭窄症の手術療法 脊柱管狭窄症の手術は大きく分けて「除圧術」と「除圧固定術」の 2 種類あります。 1 つ目は、神経を圧迫している背骨の一部を取り除いて、圧迫されている部分の除圧をする手術(除圧術)です。 もう 1 つは、除圧術をしたあとに、その部分を別の箇所の骨を移植して固定する手術(除圧固定術)です。 背骨が狭窄だけでなく、ずれがあったり変形が強かったりする場合、除圧術をすると背骨の関節が不安定になってしまいます。そのため、除圧に加えて固定をする必要があり、除圧固定術が適応となります。 最近では小型のカメラを使用して、わずかな傷で手術を行う内視鏡での手術が多くなっています。手術は全身麻酔で行われ、手術箇所や状態によりますが 1〜3 時間以内で終了することが多いです。 傷口が小さくて回復も早いため、従来の切開して行う手術に比べて入院期間が短くなっています。 脊柱管狭窄症の入院期間と費用 脊柱管狭窄症は状態に合わせて手術の方法が異なるため、入院期間や費用は手術内容に応じて変わってきます。 そこで、手術ごとの入院期間や費用の目安を紹介します。 入院期間の目安 内視鏡を使用した手術の場合、入院期間は 1 〜 2 週間程度です。 病院や状態によっては 1 週間以内で退院が可能になる場合もあります。 入院期間は除圧術の方が固定術に比べて短く、手術箇所が多いほど入院が長くなる傾向にあります。 また、脊柱管狭窄症にヘルニアなどの合併している場合も入院期間が長くなります。 費用の目安 費用は除圧術の場合、25 万円〜 40 万円程度になります。 除圧固定術は除圧術に比べて費用がかかり、 60 万円〜 85 万円程度になります。 術式や入院期間、リハビリの量などによって差が出ますので、手術を検討する病院でしっかり確認をしましょう。 脊柱管狭窄症の手術からリハビリまでの流れ 脊柱管狭窄症で内視鏡手術をした場合、早期からベッドを離れて、体を動かすことができます。 そこで、手術からリハビリまでの流れについて解説します。 手術の翌日からリハビリ開始 手術当日は安静にしますが、翌日からリハビリが始まります。 ベッドから起きたり、座ったりという動きを確認したあと、経過が良好であれば、コルセットを装着して歩くことも可能です。 コルセットは術後の背骨が安定するまで約 3 カ月間装着する必要があり、手術の翌日から正しい装着方法を習得することが重要です。 2日目以降は状態に応じて積極的なリハビリを実施 2 日目以降は歩行練習を含めて、活動的な生活を送るためのリハビリがしっかり行われます。 歩行が安定してくると、階段の昇降や屋外での歩行も開始して、退院が可能な状態まで回復を目指します。 中腰の作業や重い荷物を持つなどは腰に負担がかかるため、しばらくは行ってはいけません。 退院までに日常生活での注意点もしっかり理解を深めておくことが重要です。 退院後も必要に応じて外来でのリハビリを受けることがあります。 脊柱管狭窄症の手術内容やリハビリまでの流れを知って不安を減らそう 脊柱管狭窄症は症状が悪化して、手術を勧められても、手術の費用や入院期間やリハビリまでの流れを知らないと不安になるのも仕方ありません。 紹介した情報を知ることで、少しでも不安を減らしていただければ幸いです。 脊柱管狭窄症により神経症状が悪化すると、日常生活を送るのに支障をきたします。 手術が必要になる前に、早めに整形外科を受診し、症状の悪化を防ぎましょう。 今回の記事がご参考になれば幸いです。 No.102 監修:医師 坂本貞範
2022.12.12 -
- 腰部脊柱管狭窄症
- ひざ
膝から下が『痛い・重い・だるい』こんな症状から考えられる病気と治療法 言葉には言い表せないような痛みや違和感を覚えると、とても不安な気持ちになりますよね。 今回は、そんな痛みの中でも「膝から下が痛い」や「だるい」という訴えから、考えられる原因を述べていきます。 「膝から下が痛い」という不安な訴え 「タンスに小指をぶつけた」 「頑張って運動やりすぎた」 「少し足を挫いてしまった」 このように痛みが出る原因がハッキリしている場合は、なんとなくこれかな?というのが浮かぶので、割と落ち着いて対処できるのではないでしょうか? しかし、ある日突然、 「何もしていないのに足が痛い!」 「膝から下が重だるい」 「ふくらはぎがジンジンする」 などと、前触れもなく、これまで感じたことのないような痛みや違和感が襲ってくると、怖くなりますよね。 自分が経験したことのない感覚が襲ってくると人間誰しも不安に駆られます。 そこで今回は、急にくる「膝から下が痛い・重い・だるい」を医学的に紐解いていくようなお話をします。 これを読めばあなたの不安も少しは軽くなり、落ち着いて行動できるでしょう。 「膝から下が痛い」原因として考えられる疾患 以下に「膝から下が痛い」と感じた時に、考えられる疾患を挙げます。 ①下肢静脈瘤 ②閉塞性動脈硬化症 ③深部静脈血栓症 ④脊柱管狭窄症 なかなか難しい字が並んでいますよね。かえって不安になる方もいらっしゃるかもしれません。 これらの疾患について、できるだけ簡単に説明していきます。 ①下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう) 下肢静脈瘤は、足の血管(静脈)に異常が起こる病気です。 血管がコブ(瘤)のように膨れ上がり、体表からはぼこぼこしたように見えます。 静脈の中には、血液の逆流を防ぐための弁がついており、ふくらはぎの筋肉などの力で下から上に血液を戻してくれます。 しかし、その弁が壊れて正常に働かない場合は、血液が滞ってしまい、下の方に溜まってしまうのです。その血液が溜まった状態を下肢静脈瘤と言います。 出典:日本血管外科学会 https://www.jsvs.org/common/kasi/index.html 下肢静脈瘤の症状 ・ふくらはぎのだるさ、重さ ・湿疹や皮膚の変症、皮膚炎 ・足がむくむ ・足がつる(こむら返り) ・血管が目立つ(ボコボコなる) 下肢静脈瘤の原因 ・加齢による筋肉や血管機能の低下 ・立ち仕事 ・妊娠や出産 ・遺伝的な要素 ・激しいスポーツ 以上のように下肢静脈瘤の症状や原因はさまざまあります。 見た目的にも分かりやすいため、自分で気づきやすい病気です。 また、加齢による血管のしなやかさがなくなったり、立ちっぱなしの仕事を続けたりなど、誰にでも起こりうる病気ですので、まずは医療機関に相談しましょう。 ②閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう) 閉塞性動脈硬化症は、足の血管の動脈硬化が進んでしまい、血液が流れづらくなったり、つまったりする病気です。 足の血流が悪くなるので、歩くときに足の痛みや痺れ、冷たさを感じることがあります。 進行すると、安静にしていても同様の症状が出てきますので、注意が必要です。 動脈硬化が進んだ血管(上)と正常な血管(下) 閉塞性動脈硬化症の症状 ・足の痺れや冷感(しびれ・冷える) ・歩行の時の足の痛み ・間欠性跛行(しばらく歩行していると、足の痛みが強くなり歩行困難となる症状) ・安静時の足の痛み ・足の潰瘍・壊死 閉塞性動脈硬化症の原因 ・肥満 ・高血圧 ・喫煙 ・糖尿病 以上のように、主な原因は生活習慣の乱れによるものが大きいようです。 動脈硬化は全身に起こりやすいものなので、足だけでなく手にも同様の症状が出てくる可能性もあります。 安静時の足の痛みや足の潰瘍、壊死はだいぶ進行している状態です。治療には早めの対処が必要となりますので、足の痺れや痛み、冷たい感覚などが出てきたら早めに相談しましょう。 ③深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう) 深部静脈血栓症とは、足の奥深くに通る静脈血管のなかに、血の塊(血栓)ができてしまう病気です。 この血栓が心臓や肺に流され詰まってしまうと、心筋梗塞や肺塞栓症などの命に関わる重大な疾患を引き起こす危険性があります。 特に足の整形外科の手術後や長時間のフライトなどで多くみられ、別名「エコノミークラス症候群」と呼ばれることもあります。 出典:日本血管外科学会 https://www.jsvs.org/common/sinbu/index.html 深部静脈血栓症の症状 ・片足が大きく腫れ上がる ・赤黒く変色する ・ジンジンとした痛みが伴う ・肺塞栓症へ移行した場合、呼吸が荒くなり、胸が痛くなる 深部静脈血栓症の原因 ・手術や怪我による静脈血管の損傷 ・長期の臥床(寝たきり)など、足を動かしていない期間が長い ・喫煙 ・脱水 ・その他血流の低下が起こりうる場合 以上のように、手術やケガによる不動の期間が長くなってしまった場合によく起こります。 放置しておくと、重篤な肺塞栓症へと進行してしまう可能性もあるため、おかしいと思ったらただちに専門の医療機関へ行きましょう。 ④脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう) 脊柱管狭窄症は、脊髄や抹消神経が通るトンネル(脊柱管)が何らかの影響を受けて狭くなってしまい、発症する疾患です。 中高年で腰痛を伴う代表的なもので、長時間歩くことができなくなる間欠性跛行がみられます。 出典:日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html 脊柱管狭窄症の症状 ・お尻から足にかけて痛みや痺れがある ・長く歩いたり、立ったままになるのが辛い ・足に力が入りにくい ・体を反らす動きがしづらい ・体を前屈みにすることで症状が楽になる ・尿漏れなどの排尿・排便障害がある 脊柱管狭窄症の原因 ・加齢による背骨の変形や、周辺の軟部組織の変性 ・先天的なもの ・猫背などの偏った姿勢 ・反り腰 ・仕事などで腰に負担のかかる動作の繰り返し 脊柱管狭窄症で悩む中高年の患者さんは数多くいます。それゆえ、見過ごされやすいのも事実です。 しかし、ひどいものでは足に力が入らない、排尿障害がでるなど、日常生活に大きく影響してくる場合もあります。 気になる症状が出たら、できるだけ早く専門医に受診しましょう。 「膝から下が痛い」と感じた人はご相談を 「膝から下が痛い」と感じた時に、考えうる疾患について説明しました。 一見、全く違う病気のようにみえますが、似ている症状も数多くあります。そのため、疾患の見分け方は専門医でなければ難しいことも多々あるのです。 「じゃあ、何科にかかったらいいの?」と不安になる方もいらっしゃると思います。 そこで、下記に疾患ごとのおすすめ受診科目を挙げています。 早めの対処が必要な疾患もありますので、気になる症状がみられましたら、下記を参考に専門医へご相談ください。 ①下肢静脈瘤・・・ 血管外科、心臓血管外科、皮膚科、形成外科、循環器内科 ②閉塞性動脈硬化症・・・ 血管外科、循環器内科 ③深部静脈血栓症・・・ 血管外科、循環器内科、整形外科 ④脊柱管狭窄症・・・ 整形外科 ここで多く紹介している血管外科は、現時点で日本にあまり多く展開しておりません。 そのため、近くに無い場合は、循環器内科や皮膚科、整形外科などの他の診療科も視野に入れて早めに相談することをおすすめします。 まとめ・膝から下が『痛い・重い・だるい』こんな症状から考えられる病気と治療法 今回は「膝から下が痛い・重い・だるい」という症状で、考えられる疾患についてお話しました。 本記事で挙げた疾患の中には命に関わる重大な疾患も含まれている為、気になる症状がありましたらできるだけ早めに専門医へ相談してください。 難しい言葉が並び、読むのも嫌になるかもしれませんが、これらの疾患は誰にでも起こりうるものです。深部静脈血栓症から肺塞栓症へ移行してしまうと、一刻も争う状態になります。 「あの時、もっと早く相談しておけば良かった・・・」 そんな声が1人でも少なくなるよう、本記事を読んでいただけると幸いです。 No.S094 監修:医師 加藤 秀一
2022.11.14 -
- 腰部脊柱管狭窄症
- 腰
脊柱管狭窄症でやってはいけないこと あなたは脊柱管狭窄症が『薬で治る』と思っていませんか? 多くの日本人を悩ます、腰痛。腰痛の原因は様々ありますが、よく耳にする病名の一つに「脊柱管狭窄症」というのがあります。 本記事では、聞いたことあるけどイマイチよく分からない脊柱管狭窄症の原因や症状、治療法、そして脊柱管狭窄症との向き合い方を分かりやすく説明します。 脊柱管狭窄症とは? 脊柱管狭窄症は、50代以降の中高年に多く発症する腰部の疾患です。 脊柱とは24個の背骨(椎骨)で構成されており、それらが連なることで縦に長いトンネルができます。そのトンネルが脊柱管と呼ばれ、脳から伸びる脊髄神経が通る場所になります。 脊髄神経は、脳からの指令を手脚に伝えたり、手で触れたものなどの情報を脳に伝える役割をしており、その脊髄神経を保護する役割を担うのが脊柱管です。 脊柱管狭窄症は、その名の通り脊柱管がなんらかの原因により狭くなってしまい、脊柱管を通る神経や血管を圧迫している状態のことを指します。 出典「日本整形外科学会」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html 脊柱管狭窄症の症状・原因 脊柱管狭窄症の症状は多岐にわたります。症状の中で当てはまるものがないかチェックしましょう。 脊柱管狭窄症の症状 脊柱管狭窄症の症状で特徴的なものに間欠性跛行があります。しばらく歩いていると下肢の痛みや痺れがひどくなり、歩くのが困難になります。 しかし、しばらく座ったり前屈みになったりして休んでおくと症状が落ち着き歩けるようになるのです。間欠性跛行以外にもさまざまな症状がありますので下記をご参照ください。 【脊柱管狭窄症の症状の例】 ・おしりから脚にかけての痛みや痺れがある ・脚に力が入らない ・長く歩いたり、立ったままになるのが辛い ・歩いているときに症状が出ても、少し休憩すれば症状が和らぐ ・体を反らす動きがしづらい ・体を前屈させると症状が楽になる ・尿漏れなどの排尿・排便障害がある 出典「日本整形外科学会」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html 脊柱管狭窄症になる原因 脊柱管狭窄症がどのように生じるのか簡単に説明しました。ではなぜ狭窄が起こってしまうのでしょうか? 原因はさまざまありますが、ここでは3つ紹介します。 ①加齢による骨や軟部組織の変性が起こる 人間の体は20歳代半ばをピークに成長し、30歳を超えたあたりから機能が落ちてくると言われています。特に中高年では、加齢に伴う体の変化が顕著です。 そのため、背骨を構成する椎骨の変形や、椎間板の変性、靭帯の肥厚などが生じ、脊柱管が狭くなると言われています。 ②先天的な疾患によるもの 稀にですが、先天的に生じる脊柱管狭窄症があります。発育段階で脊柱管が狭くなっているせいで、比較的若い年代で症状が発症します。 割合としてはかなり少ないですが、比較的若い年代で上記の症状を有している人がいましたら詳しい検査を受けましょう。 ③普段の姿勢や体の使い方によるもの 加齢による骨や靭帯組織の変性と合わせて主な原因となるのが日々の姿勢や動作習慣です。特に反り腰の人に多くみられます。 背骨は首から骨盤まで繋がっているため、反り腰の原因は腰だけではありません。胸椎や骨盤、股関節の可動性の低下が影響します。 猫背や偏った姿勢をとることが多い人は特に注意が必要でしょう。 脊柱管狭窄症の診断 脊柱管狭窄症の診断には主にレントゲンやMRIなどの画像診断が用いられます。特に分かりやすいのがMRIで、骨以外の靭帯や椎間板の変性も確認しやすく、診断の手助けとなる検査法の一つです。 また、神経圧迫の程度や他の腰部疾患との鑑別のために、腱反射や感覚検査、筋力測定も行います。 脊柱管狭窄症の治療 脊柱管狭窄症の治療法は様々あります。大まかにいうと、内服やリハビリ、装具などを用いた保存療法と、外科的な処置を行う手術療法に分けられます。 保存療法 保存療法の例は以下です。 薬物療法 神経障害性疼痛という神経由来の痛みに効果的なお薬が処方されることがあります。また、局所の炎症を抑え、血液循環を良くする目的に神経ブロック注射を行うこともあります。 いずれも痛みの悪循環を断つ目的で行う治療法です。 装具療法 腰椎の不安定性がある状態や、圧迫により症状が緩和する場合はコルセットを処方されることがあります。コルセットは、腹圧を高めるサポートをし、背骨を安定させ、余分な筋肉の緊張を緩和する効果があります。 ただし、長期間装着することで腹筋の筋力が低下する可能性もあるため注意が必要です。 リハビリテーション リハビリテーションは、疼痛の緩和を目的とした物理療法と、関節の動きの改善、筋力の向上、体の使い方を改善させる運動療法からなります。物理療法の中には、電気刺激を与えて痛みを緩和させる電気刺激療法、温めることで痛みを緩和させる温熱療法を用いることがあります。 いずれも運動療法と併用して行うことでより効果が得られます。 運動療法は、理学療法士が中心となって、関節の動きや筋力の改善をサポートします。脊柱管狭窄症では、腰だけでなく、上部体幹(首や胸椎、胸郭など)や骨盤、下肢関節の動きも悪くなっていることが多々あります。 ストレッチや筋力トレーニング、姿勢の指導などその人に合わせたリハビリテーションを提供するのが特徴です。 手術療法 保存療法で症状の改善が見込めない場合や、神経の高度の圧迫により症状が強く出ている場合などには、手術療法を選択することがあります。 手術療法の一つに、狭くなった脊柱管を広げる方法があります。それは、椎弓と呼ばれる脊椎の一部と、肥厚した靭帯を部分的に切除する方法です。この手術により狭窄が解消でき、症状の改善につながります。 また、別の手術療法に、固定術というのがあります。腰椎分離症やすべり症といった背骨の不安定性を伴う脊柱管狭窄症の場合、神経を圧迫している場所の上下の背骨を固定する方法です。 いずれも重度な脊柱管狭窄症に用いられる手術療法ですが、その後のリハビリや生活習慣の見直しが重要となります。 脊柱管狭窄症で気をつけるポイント 脊柱管狭窄症の治療は簡単なものではありません。脊柱管狭窄症は、薬で完全に治る病気でもなく、手術したからといって完全に元のように痛みがとれるわけではないからです。 老化や長年の姿勢、負担のかかる動作の繰り返しなどがいくつも重なって生じるものなので、症状の改善も一筋縄ではいきません。 では、どういうところに気をつけて過ごしていくべきなのでしょうか。 歩き過ぎは禁物 リハビリに来られる患者さんの中には、 「歩くのが大事なんでしょ?」 と言って、痛いのを我慢してより長い距離を歩こうとする方も多くいらっしゃいます。 しかし、前述したように脊柱管狭窄症は間欠性跛行が特徴としてみられ、それだけ負担がかかっている状態なのでかえって痛みが増強することがあります。その結果、さらに悪い姿勢をとってしまう危険性もあるのです。 姿勢や動作の改善が大事 無理な歩き過ぎはかえってよくないとお話しましたが、ではどのように対処していけばいいのでしょうか。 対処法の一つに、ストレッチや筋力トレーニングがあります。それらを駆使して偏った体の状態を戻すことが重要です。 背骨は、首から腰までつながっており、S字にカーブしています。そのカーブによって背骨にかかる負担が分散され、安全に効率よく体を動かすことができます。しかし、脊柱管狭窄症の患者さんはよく反り腰になっているのです。 反り腰になることで、背骨の一つ一つがずれてしまい、その結果、脊柱管が狭くなってしまいます。反り腰は腰だけが悪いのではなく、首や胸椎など腰以外に原因があることが多いのです。 例えば、背中が丸まってしまうと、バランスをとろうとして自然と腰が反ってしまいます。スマホ首や、肩こりが多い人も要注意です。 そんな人は、首から肩周りにかけてストレッチをすることをオススメします。特に胸を張る動作がしづらくなっている方も多いので、胸を開くようなストレッチを頑張っていきましょう。 まとめ・脊柱管狭窄症でやってはいけないこと 本記事では中高齢者が悩む「脊柱管狭窄症のやってはいけないこと」について紹介しました。 脊柱管狭窄症は完治が難しく、内服や注射、手術にリハビリと多くの治療法が用いられています。症状を緩和することは大事なことですが、普段の姿勢の改善や無理な動作をしないなど、体を根本から変えることも必要です。 腰の痛みや痺れ、歩きづらさで悩んでいる方は、医療機関でしっかりみてもらうと同時に、普段の生活の中で負担になっている動きがないか、偏った姿勢をとっていないか見直してみましょう。 No.S086 監修:医師 加藤 秀一
2022.10.06 -
- 腰椎分離症
- 腰
腰椎分離症とは?症状と原因、治療法を分かりやすく解説! 腰椎分離症をご存じですか? 今回は、成長期の疾患で意外と見落とされがちな腰椎分離症についてご紹介します。分離症はどのようになってしまうのか、なってしまった後の治療法や予防法などを分かりやすく解説します。 腰椎分離症はどういうもの? 腰椎分離症とは、10代前半から中盤(小学生高学年、中学生、高校生)の成長期のスポーツ選手に多い腰のケガです。 背骨を構成する腰椎の「椎弓(ついきゅう)」と呼ばれる部分に疲労骨折が起こり、その名の通り腰椎が2つに分離してしまう状態のことを言います。 出典「日本整形外科学会」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html 発症は成長期ですが、腰椎分離症に気づかず、大人になってから指摘されるケースも珍しくありません。場合によっては、疲労骨折した部分がより離れてずれてしまう「腰椎すべり症」へと進行することもありますので、早期の発見・治療が必要です。 腰椎分離症の原因 腰椎分離症の原因は大きく2つあります。 まず一つめは、未熟な骨の脆弱性です。10代の子どもたちの骨はまだ未熟で、軟骨部分も多いため強いストレスが繰り返し加わると悲鳴をあげてしまいます。 二つめに、激しいスポーツ動作により繰り返される腰椎へのストレスが挙げられます。 以下に発症しやすい動作を伴うスポーツとその動作を挙げていますのでご参照ください。 [スポーツの種類の例] ・サッカー ・ラグビー ・バスケットボール ・バレーボール ・野球 [スポーツ動作の例] ・ダッシュ ・ストップ ・ジャンプ ・体の反り ・強く捻りを伴う動作 このような「反らす」「捻る」動作が特に負担がかかりやすく、繰り返し加わることで疲労骨折が生じます。さらに、カラダの柔軟性が低下していたり、下半身や体幹の力が弱くなっていたり、不良な動作を身につけてしまうことで、腰椎分離症を発症しやすくなるのです。 腰椎分離症の症状と診断 症状 例えば、こんな症状はありませんか? ・体を反らす、捻る動きによる腰の痛み ・スポーツ中やスポーツ後の痛み ・下半身のしびれ(神経症状) ・骨折した部分の圧痛(指で押した時の痛み) もしかすると、腰椎分離症の症状かも知れません。医療機関では以下のようにして診断が行われることがあります。 診断 痛みやしびれの程度は個人差がありますので、年齢やスポーツ歴、痛みの問診、理学所見、レントゲンやCT、MRIなどの画像検査で総合的に判断します。 ①問診 これまでの研究では、スポーツ選手の約3割程度が腰椎分離症を持っていると言われています。 スポーツ歴やどの動作で痛みやしびれが出るのか、これらを聴取することが重要な判断材料となります。 ②理学所見 理学所見は、身体の診察のことで視診、触診を中心に行います。 痛みの場所を触診したり、痛みが出る動きを再現させて原因を特定したりします。 ③画像診断 レントゲン: レントゲンで分離部(骨折部)がハッキリ写る(※1スコッチテリアの首輪)と進行期や終末期である可能性が高く、骨の癒合が極めて困難である場合が多い ※1スコッチテリアの首‥‥分離部が犬の首輪のように見えるためこのように表現されている。 CT: 骨癒合の状態をみることができるため、分離部の進行状況や固定期間の予測に有用。 MRI: 完全に分離していない初期段階の疲労骨折の発見に有用。ヘルニアの有無など他の腰部疾患との鑑別にも有用。 腰痛やしびれを症状とする腰部疾患は多く存在するので、腰椎ヘルニアや筋膜性腰痛などの他の疾患との見極めが必要です。 腰椎分離症の治療法3つのポイント では実際に腰椎分離症になってしまったらどのような治療をしていくのでしょうか。治療を進めていく中で重要なことは、「早期発見、早期治療」です。 他のどの病気にも言えることですが、ほったらかしにしておくと、高校生になった時や、大人になった時に痛みが再発し、思うように動けなくなってしまうことも多々あります。そのような状況を未然に防ぐことが重要です。 ポイント①疲労骨折部の安静 腰椎分離症の治療は「患部の癒合」が一番に優先されます。そのため、初期の段階であれば、患者のカラダに合わせた硬いコルセットを用い、患部に負担がかからないように固定し安静を保ちます。 コルセットを装着することにより、脊柱の捻るストレスを軽減することができるため、骨折部の癒合を促せるのです。骨が未熟な小・中学生では癒合の可能性も高いため、スポーツを一定期間中止し、癒合に専念することをオススメします。 ポイント②患部以外の柔軟性、筋力の強化 原因のところでも述べましたが、腰椎に負担がかかる要因は以下のことが挙げられます。 ・下肢(特に股関節など)や上半身(胸椎など)のかたさ ・下肢、体幹の筋力および筋持久力の低下 ・不良なスポーツ動作 これらの改善には、ストレッチや筋力トレーニングといったカラダのコンディショニングが重要となります。患部に負担のかからないところから徐々にストレッチや筋力強化をし、身体機能を上げていきましょう。 ポイント③腰椎へ過度なストレスにならない動作の獲得 柔軟性や筋力不足だけでなく、カラダの使い方も大きな原因となります。 例えば「カラダを反らせてください」と指示した時に、本来なら弓なりに背骨全体で反らせてほしいところ、胸が張れずに腰のところだけで反らせている人を多くみかけます。この動きだと腰だけに負担がかかりやすく、腰椎分離症を発症するリスクが高くなるのです。 また、カラダを捻る動きになると、頑張って背骨を捻ろうとしてしまいます。背骨の動きはそんなに大きな動きはできません。 カラダを捻る時に大事な役割をしてくれるのが、骨盤や股関節です。骨盤、股関節の動きが不十分だと背骨にかかる負担も増えてくるので、スポーツ復帰する前に改善しておきましょう。 予防の観点からもストレッチや筋力トレーニング、動作訓練は大切 前述した治療方法は、そのまま予防にもつながります。腰が痛くない人でも、普段から運動前後のストレッチやウォーミングアップ、クールダウンを徹底して行うとケガのリスクを下げることができます。 動作においても、日頃から自分の動きをチェックしておきましょう。無理な使い方をしていないか、指導者や保護者の方と一緒に確認することでケガの予防だけでなくパフォーマンスの向上にもつながります。基本的な動作の反復練習は、地味ですが大きな意味を持ちます。 腰椎分離症のQ&A 腰椎分離症になったらどうしたらいいの?腰椎分離症について、Q&Aでお答えしていきます。 Q.固定期間や安静期間はどれくらい必要? A.初期の腰椎分離症では、癒合の目安がおよそ2〜3ヶ月、進行期になると3〜6ヶ月と言われています。ただ、骨癒合には安静度や年齢、栄養状態などさまざまな要素が絡んでくるので一概には言えません。 定期的なCT画像検査により、癒合状況を確認することをオススメします。 Q.コルセットはずっとつけておかないといけないのか? A.医療機関にもよりますが、基本的にはお風呂以外の時間はつけておきましょう。 Q.安静にしておけば必ず骨癒合するのか? A.腰椎分離症にも初期から終末期があり、なりたての初期段階であればかなりの確率で癒合できます。しかし、終末期になると癒合は難しいので、体幹の強化や動作の改善の訓練を行い、患部に負担をかけない工夫が必要になります。 Q.固定以外にも治療方法はあるのか? A.終末期で症状がとれない、分離部がぐらぐらする、などといった症状が残っており、今後のスポーツ活動に支障を及ぼす可能性が高い場合に、手術療法を行うこともあります。 まとめ 本記事では、腰椎分離症について原因や症状、治療法について紹介しました。 腰椎分離症は、早期に発見し、適切な治療を行えば後遺症も残さず治る傷害です。ただし、骨癒合まではある程度の期間、固定と安静が必要となります。 スポーツを休まなければいけないのは根気と我慢が必要となりますが、無理して治療を先延ばしにしておくと、痛みが長引くだけでなく、後になってより強い腰痛を引き起こす原因となることもあります。成長期の年代で腰痛に悩んでいる方は、ぜひ一度整形外科に相談してみましょう。 No.086 監修:医師 坂本貞範 ▼ 脊髄損傷の再生医療|最新の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脊髄損傷の新たな治療法として注目を浴びています
2022.09.28 -
- 腰椎分離症
- 腰
腰椎分離症でやってはいけない!3つのこと・正しい治療の流れを知って症状の悪化を防ぐ スポーツ活動をしている成長期の子どもによく見られる腰椎分離症。 選手として取り残される不安から、早く競技復帰したい気持ちになるかもしれません。しかし、正しい治療を守らなければ症状が悪化する恐れがあります。 今回は腰椎分離症でやってはいけないことを、治療の流れを確認しながら紹介したいと思います。 腰椎分離症とは 腰椎分離症は疲労骨折により背骨の骨が分離してしまった状態です。 背骨は椎骨(ついこつ)というブロックのような骨が積み重なってできています。 椎骨の背中側には椎弓(ついきゅう)と呼ばれる出っ張りがありますが、この椎弓が分離してしまうことで、腰から殿部、太ももにかけての痛みがみられます。また、骨折でずれた骨が神経を圧迫するとしびれが見られる場合もあります。 椎弓が分離する主な原因は成長期の過剰なスポーツ活動による疲労骨折で、成長期のスポーツ選手による腰痛の30〜40%を占めるとされています。 一度の衝撃で起こる骨折ではなく、骨が発達しきっていない時期に、腰を繰り返し捻ったり、ジャンプを繰り返したりして、椎弓部分にかかる負担が蓄積して起こります。骨折は発生の初期であるほど癒合(※)しやすく、完全に分離してしまったら骨が癒合することはありません。 (※癒合(ゆごう)・・・傷が治り、離れていた皮膚や筋肉、骨がくっつくこと) 腰椎分離症でやってはいけないこと3つ 腰椎分離症は骨折の早期であるほど骨が癒合しやすい為、正しい時期に無理をしないことが重要です。 そこで、腰椎分離症になった場合に、やってはいけないことを3つ紹介します。 ①無理な運動やスポーツをする 安静が必要な期間に無理な運動をすると、骨折している部分に負担がかかり、分離が悪化したり、骨が治癒するのを妨いだりしてしまいます。 特にスポーツ活動をしている場合、競技に早く復帰したい焦りから、少しでも体を動かしたい気持ちになるかもしれません。しかし、骨折部に負担がかからないように固定している期間は、腰を無理に曲げ伸ばししたり、捻ったりする動作は禁物です。 そのため、医師に指示されている間は、運動やスポーツは中止しましょう。 ②コルセットの装着を守らない 腰椎分離症の最初の治療として、疲労骨折により分離した部分を守るため、硬いコルセットの装着をして動きを制限します。腰痛があるうちはコルセットの装着を守るものの、痛みが軽くなればコルセットが動きを妨げるため、邪魔な感じがするかもしれません。 しかし、腰椎分離症は骨がしっかり癒合するより先に腰痛がなくなるため、痛みがなくなったからといって治ったわけではありません。そのため、痛みの程度により自己判断でコルセットを外さないようにすることが大切です。 ③痛い部分にマッサージやストレッチをする 腰痛があるからといって、痛い部分を圧迫するようなマッサージや腰をひねるようなストレッチをすると骨折を悪化させる恐れがあります。そのため、自己判断で痛い部分のマッサージやストレッチをしないようにしましょう。 ただし、腰椎分離症が起こりやすい発育期は、筋肉の柔軟性が低下して、腰椎分離症を含め、さまざまな成長期特有の怪我の要因となります。そのため、適切な指導のもとで行う脚のストレッチなど、骨折部分以外のストレッチを行うことは重要です。 腰椎分離症の治療の流れ 腰椎分離症ではやってはいけないことに関して理解を深めるために、治療の流れを知っておきましょう。 骨折の初期〜進行期(急性期) 疲労骨折が起こり、進行するまでの間を急性期(きゅうせいき)と呼びます。 急性期に治療を開始すれば、骨の結合する可能性が高いため、正しい治療を継続する必要があります。治療は硬いコルセットや体専用のギプスを着用して、腰の動きを制限するとともに、スポーツなどの運動を中止します。 あくまでも骨を癒合させるための治療ですので、痛みがなくなったからといって勝手に治療を中止しないことが大切です。しっかりと骨が癒合するのを待ち、医師の指示が出たら運動やスポーツを再開します。 骨折の終末期 骨の分離が進んでしまった時期を終末期(しゅうまつき)または慢性期(まんせいき)と呼びます。 慢性期で完全に骨が分離しまうと、再び癒合することは期待できません。そのため、骨を癒合させる目的での安静は行わずに、痛みをコントロールしながら運動やスポーツを再開していきます。 痛みのコントロールは、柔らかいコルセットを着用したり、痛み止めを服用したりします。分離したからといって強い痛みがなく、日常生活で支障が出ない場合も多く、腹筋や背筋などを鍛えていくことで腰痛の予防につながります。 成人に見られる腰椎分離症も骨が癒合することはないので、痛みが軽い場合は必ずしも仕事や運動を中止する必要はありません。 まとめ/腰椎分離症でやってはいけないことを守り悪化を防ごう 腰椎分離症は骨折部に負担をかけないようにして、骨が癒合するのを待つことが重要です。そのため、腰椎分離症でやってはいけないことをしっかり守る必要があります。 早期での治療が行われれば高い確率で骨が癒合する骨折ですので、腰痛が見られた場合は無理をせず早めに整形外科への受診をして、正しい治療を行いましょう。 No.S085 監修:医師 加藤 秀一
2022.09.23 -
- 腰
- 腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症の手術後に、痛みや痺れの後遺症が残る可能性 部脊柱管狭窄症とは、背中に通る神経の束である脊髄を保護している脊椎のうち、腰骨に当たる部分が変形して脊髄を圧迫している状態をいいます。 これは加齢にしたがって生じることが多く、文字通り、脊柱管が狭くなることで神経を物理的に圧迫するため、足のしびれなどの症状や、腰痛などが起こります。 腰腰部脊柱管狭窄症の発症率は、高齢化社会を迎えている我が国では増加の一途を辿り、中年以降に発症する確率が高くなっているので注意が必要です。 この疾患に対する治療は、対症療法を含めて保存的加療が中心となりますが、症状を根本的に改善させるためには手術が有効とされています。 手術は、患者個々のケースで症状や、部位を診断したうえで、出来る限り正常な組織を温存して神経への圧力を減らす除圧術が望まれます。ただ、その一方で手術を行っても場合によっては症状が再発する可能性もあることを知っておきましょう。 今回は、腰部脊柱管狭窄症の症状と手術後のしびれ、うずき、痛みなどの症状が残った場合に新たな光明となる「再生医療」という先端医療の可能性について解説していきます。 腰部脊柱管狭窄症の症状 腰部脊柱管狭窄症という病気は、主に椎間板の変化や、その周りの靱帯が腫れて厚くなったことが原因となり、脊柱管を圧迫した結果、管内のスペースを狭めてしまい神経を圧迫し、発症します。 その結果としてお尻周辺の殿部から、足を中心に「下肢全体に“しびれ”などの症状」を生じさせます。時には「膀胱障害」なども現われることがあります。 現在において日本では概ね500万人以上の患者数が存在していると考えられており、超高齢化社会が進行するにしたがって今後、さらに本疾患で悩まれる方が増加していくことが予想されます この病気で感じる痛みは、腰椎椎間板ヘルニアほど強くはないのですが、それとは別に「下肢痛やしびれを代表とする感覚異常が主な症状」となり、患者さんを苦しめます。 腰部脊柱管狭窄症の症状については、安静時にはそれほどではないものの、歩行していると、ふくらはぎの筋肉がうずくように痛みだして、とても歩き続けることができない状態となります。 これはしばらく休憩すると落ち着くのですが、再び歩きはじめると同じように痛みだすという厄介なものです。 腰部脊柱管狭窄症は、60歳以降あるいは70歳前後の高齢者に多くみられるとされており、先に記した歩行時のような症状が進行すると、連続して動くことが出来なくなります。 それだけではなく、進行すると次第に安静時にも、しびれや、うずき、痛み等を強く感じるようになり日常生活に支障をきたすようになります。 腰部脊柱管狭窄症の治療と、術後のしびれや痛み 腰部脊柱管狭窄症における一般的な治療は、「薬物療法やブロック注射などの保存的治療」が行われますが、効果が見込めないケースでは「手術的治療」を考えねばなりません。 症状が軽い場合は、神経レベルの血流改善を図るべく、内服薬が処方されますが、数ヶ月以上服薬しても症状の改善がみられない場合や、逆に症状が悪化する際には、根治的な手術治療が考慮されます。 手術による治療成績は、おおむね良好です。術式としては、脊柱管間隙スペースを拡大することによって神経そのものへの物理的な圧迫を除去することになり、神経に関するものだけに慎重な手術が行われます。 ここで注意すべき点は、「手術前に長期間にわたって神経症状を自覚されている場合」です。 こうなると圧迫された神経そのものが元通りに改善できなくなる可能性があり、残念なことに例え手術が成功しても、しびれや、痛みなどの症状の回復が思い通りにいかない例もあるということです。 そして、実際にそのようなケースになった場合で日常生活に支障をきたすことがあります。こうなった場合は、一般的な保存的治療や痛み止めのブロック注射などをするしかなく、辛い症状が続くことになります。 そこで注目したいのが「再生医療」という文字通り再生を期待する医療です。 この再生治療の利点は、脊椎手術を受けたあとで下肢のしびれ症状が残存してしまっている方にとどまらず、腰部脊柱管狭窄症の術前状態で厳しい症状に日々悩まされている人にも推奨できる治療法であることです。 治療 ・保存療法(薬物療法、ブロック注射など) ・手術療法(保存療法で効果が見込めない場合) 手術 ・術前の症状が長期にわたっていた場合、術後にもしびれ、痛みが残る可能性 まとめ/腰部脊柱管狭窄症の手術後に、痛みや痺れの後遺症が残る可能性 腰部脊柱管狭窄症は、年齢を重ねると罹患しやすく特に高齢者に起こりやすい病気です。いわゆる椎間板ヘルニアや変性すべり症、あるいは椎体の変形や椎間関節および靭帯が厚く変化することによって脊柱管という神経を覆う管を狭くすることが発症します。 脊柱管内に存在している神経が圧迫を受けてしまうと「腰痛や下肢痛のみならず足全体のしびれや、うずき、痛みなどの症状を自覚」することになります。 治療法は、保存療法として消炎鎮痛剤、神経障害性疼痛に対する鎮痛薬、血流障害を改善するための血管拡張剤などをはじめとする内服薬を使用し、外用薬を貼付してブロック注射などを併用する場合があります。 これら数週間から数か月程度の保存的治療を行っても良い効果を示さない場合や、しびれ症状が強く下肢の筋力低下や膀胱、直腸障害がある場合には根治的な手術となる可能性が高くなります。 また昨今では、そういった手術治療と従来の保存治療の中間的な存在として「画期的な再生医療という選択肢」ができるようになってきています 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼ 再生医療の可能性 自分自身の自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした最先端の医療です No.S016 監修:医師 加藤 秀一
2022.08.21 -
- 関節リウマチ
- ひざ
- 股関節
- 肩
- 肘
- 腰
- 首
関節症に喫煙や電子タバコが良くないというのは本当か? 喫煙することと関節症の間には、一見何も関係がないようにみえます。 しかし最近いくつかの研究の結果から、タバコが関節症の経過によくない影響を与えていることが明らかになってきました。そこで今回の記事では、喫煙と関節症の関係についてご説明します。さらに電子タバコによる影響についても、解説いたします。 喫煙が関節症に与える影響 喫煙そのものは、肺がんや肺疾患、また動脈硬化や脳血管障害など、わたしたちの体のあらゆるところによくない影響を与えることは、よく知られていることかと思います。 ここでは特に、関節症の方に対して喫煙が与える影響についてご紹介します。 死亡リスクの増加 関節リウマチと診断されている方が喫煙を続けていると、非喫煙者に比べて死亡率が増加することがわかっています。 121,700人の女性が参加する追跡調査で、追跡中に関節リウマチと診断された923名を分析しました。このうち36%は関節リウマチと診断される前に一度も喫煙したことがなく、43%が過去に喫煙しており、21%が現在も喫煙者でした。 この調査によると、関節リウマチと診断された後も年間5パック以上の喫煙を続けていた女性は、診断前から喫煙をしていなかった人や関節リウマチと診断された後に禁煙した人たちと比べても、死亡リスクが2~4倍も高くなっていました。 診断後に禁煙することで、喫煙を継続するよりも死亡リスクは低くなっていましたので、早めに禁煙することは有効だと言えるでしょう。 (参考文献:https://acrabstracts.org/abstract/smoking-behavior-changes-after-rheumatoid-arthritis-diagnosis-and-risk-of-mortality-during-36-years-of-prospective-follow-up/) また5,677人の関節リウマチの方を平均して約5年間追跡調査した研究では、喫煙者の心血管障害や呼吸器疾患による入院率は、非喫煙者の2倍になっていました。 入院するリスクは、禁煙1年後に著しく低下していましたので、こちらも早めに禁煙することが予後を改善することにつながります。 (参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5623338/) 手術の合併症の増加 喫煙者と非喫煙者における、膝関節置換術の経過を比較した研究があります。 合計で8,776人の膝関節再置換術を受けた方を対象に実施した研究です。このうち、11.6%が現在も喫煙者でした。再置換人工膝関節置換術を受けた喫煙者は、非喫煙者と比較して、あらゆる創傷合併症、肺炎、および再手術の割合が高くなっていました。 (参考文献:https://www.arthroplastyjournal.org/article/S0883-5403(18)30282-1/fulltext) タバコを吸うと、一酸化炭素が赤血球内に取り込まれ、その結果、全身の組織に運ばれる酸素が少なくなります。手術部位が適切に治るためには、酸素を十分に含んだ血液が必要です。 タバコを吸うと、この治癒プロセスの重要な部分が滞り、治癒に時間がかかるようになると考えられています。 病状の悪化 159人の変形性膝関節症の男性を最長30ヶ月間追跡調査したところ、喫煙者は非喫煙者に比べて関節症による膝の痛みが強く、軟骨が著しく失われる可能性が2倍以上であることがわかりました。 (参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1798417/) X線写真の撮影が可能であった311人の初期リウマチ性関節炎の方をフォローした調査では、1年後にX線写真の進行がみられる独立した予測因子は、喫煙でした。つまりX線写真上で悪化する危険因子に喫煙があることがわかりました。 (参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4515990/) タバコに含まれる有害物質が軟骨の減少に寄与している可能性や、血中の一酸化炭素濃度が高いことが、軟骨の修復を妨げている可能性があると推測されています。 電子タバコの関節症に与える影響 電子タバコ(e-cigarettes)の使用率が急速に高まっていますが、電子タバコの使用が関節症状に対して与える影響について、まだ詳細はわかっていません。そこで行われたので、米国で924,882人の成人を対象に実施された、最大規模の全国電話調査です。 この調査では、電子タバコの使用歴と炎症性関節炎に関する情報を入手し、解析しています。 その結果、電子タバコ使用者と電子タバコ未使用者を比較したところ、電子タバコ使用者の方が炎症性関節炎により罹りやすいことが確認されました。この傾向は、電子タバコ使用者でも電子タバコと通常のタバコを併用する使用者でも同様であることがわかりました。(参考文献:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2022.883550/full) まとめ・関節症に喫煙や電子タバコが良くないというのは本当か? 喫煙と関節症の関係、また電子タバコと関節症の関係についてご説明しました。 いずれにしても喫煙は関節症に対し、良い作用は何もないと言えるでしょう。ただ禁煙することで、予後や合併症の改善がみられることも事実です。まだ電子タバコを含め喫煙しておられる方がおられるようであれば、できる限り早く禁煙に取り組むことをお勧めいたします。 No.082 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療に関する詳細は以下をご覧下さい 自分自身の自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした最先端の医療です
2022.08.09 -
- 腰
坐骨神経痛でやってはいけないこと、9つの注意したいこと 坐骨神経痛の痛みは、慢性的な背骨への刺激によってできた骨の棘や、椎間板ヘルニアが腰の脊髄神経根を圧迫し、背中や足、臀部に耐え難い不快感をもたらします。 坐骨神経痛に悩んでいる方は、内服薬に始まり、理学療法、硬膜外注射など、痛みを止めるために、あらゆる方法を試されているかもしれません。しかし、日常的によくとりがちな行為が症状を悪化させてしまうことがあることをご存知でしょうか? そこでこの記事では、坐骨神経痛に悩む方が「やってはいけないこと」、「できれば避けるべきこと」など気を付けるべきことについてご紹介してまいります。。 1,重いものを持ち上げる 坐骨神経痛の急性期に荷物などを持ち上げる場合、10kgもあれば、かなりの負担になる可能性があり、坐骨神経痛を悪化させることがあります。そのため、荷物などを持ち上げるときは、体から遠い場所にあるものを持ち上げようとしないでください。 できれば持ち上げない方が良いのですが、そうもいかない場合、効果的な対処法は、足を肩幅に開き、対象物の近くに立つ。膝を曲げて、対象物に向かって背中を伸ばしたままでしゃがむ。 左右の手で物を持ち、持ち上げる。頭、背中、お尻が一直線になっていることを意識します。臀部と腹部の筋肉を引き締める。しゃがんだ状態から物をできるだけ体の近くで持ち、背筋をできるだけ伸ばして、足の筋肉で立ち上がるようにして持ち上げます。 このような持ち上げ方をすることで、腰への負荷を最小限にすることができます。 荷物などの腰への負担を減らす持ち上げ方 ・身体から遠くのモノを持ち上げない ・足を肩幅に開き、近くにポジションをとる ・頭、背中、お尻を直線にする意識で膝を曲げてしゃがむ ・臀部と腹部の筋肉を引き締め、頭、背中、お尻を直線にする意識おまま、足で持ち上げる 2,長時間、座りっぱなし 長時間座っていると、腰に負担がかかってしまうため避けたいものです。 そこで、例えばオフィスであれば2~30分くらい経ったら、立ち上がって少し歩いてから座り直します。長時間の乗り物に乗る場合は、坐骨神経痛の痛みを避けるために、こまめに休憩を取るようにしましょう。 ちなみに座るときは、前屈みにならないようにし、また柔らかいソファーに座ることは腰に負担がかかるのでやめましょう。ずっと座っていると腰や背中の筋肉が硬直してしまい、運動能力も低下してしまいます。 数時間おきには休憩を入れ、しっかりと歩き回り、背筋を伸ばすことです。そうすることで負担を軽減するばかりか、腰への負担を乗り越える力を蓄えることもできます。 3,ハムストリングス(筋肉)のストレッチ ふくらはぎの筋肉であるハムストリングをストレッチさせると、坐骨神経痛が悪化することがありるため、注意が必要です。 これは準備運動などの一環でよく行われる動作ですが、ハムストリングを伸ばす行為は、坐骨神経に刺激を加え、痛みを増強させることがあります。 したがって、坐骨神経痛の痛みがあるときは、全身の筋肉を温めるウォーキングや、水の浮力を利用して背中に体重をかけない水泳を試してみてください。 ハムストリングとは 太ももの内側の半腱様筋、半膜様筋と、外側にある大腿二頭筋からなる3つの筋肉の総称です。 4,前かがみになる 例えば屈みで物を取ろうとすると、前屈みの姿勢に対して、背骨にかかる力が増大します。更に持ち上げようとしている物の重さが組み合わさると、靭帯、骨、椎間板に負荷がかかり、坐骨神経痛が悪化する可能性があります。 そこで、地面に落ちているものを拾うときや、普段お生活で食器洗機から食器、衣類乾燥機から洗濯物を出し入れするときは、まず背骨をまっすぐにし、そのままの姿勢で膝を曲げて腰を落とします。 食器洗い機からは一気に多くの食器を取り出すことは避け、重いものを保たないようにします。こうすることで、腰に負担をかけることなく目的を果たすことができます。 5,間違ったサイズの椅子に座る 座り心地の悪い椅子は、腰椎を支えきれず、坐骨神経痛の症状を悪化させる可能性があります。 最善の椅子は、背骨を伸ばしたままでニュートラルな姿勢を保てるような、人間工学に基づいた椅子を使用することです。股関節と膝の角度が90度の状態で、足の裏を床にフラットにつけて座っていられることを意味します。 6,背骨をねじる 背骨をひねる動作と前屈や側屈などの他の動作を組み合わせると、腰の痛みを悪化させることがあります。やってはいけないことの例は、雪かきや間違った方法で物を持ち上げることです。 すでに何度か説明したように、ものを持ち上げるための正しい方法を学ぶことです。合わせて体幹のコアマッスルを強化するエクササイズを行い、柔軟性、可動域を向上させ、怪我を防ぐために運動や活動をする前にストレッチを行うことです。 7,ベッドで柔らかすぎるマットレスを避ける ベッドで仰向けになると、腰に負担がかかります。ベッドで休む時は横むきになると良いでしょう。また柔らかいマットレスも腰に負担がかかります。ある程度硬いマットレスのほうが健全です。 またベッドから立ち上がる時は、ゆっくりと起き上がるだけでなく、腰に負担がかからないようにすることを意識します。特にベッドから腰を上げる時は、膝の力を使うこと、両手を膝について力を膝に集めることも有効でしょう。 8,体を冷やしすぎない 腰や足を冷やしすぎると自律神経が興奮し、体が常に緊張状態になってしまいます。そのため、筋肉が固まってしまい、神経を更に圧迫してしまうと考えられています。 特に夏場に冷房の効いた部屋に長時間滞在すると症状が悪化しやすいので、ブランケットや薄手の上着などを持ち歩くなどして対策するようにしましょう。 9,太らないようにする 脂肪をつけすぎないこと、太らないようにすることも、坐骨神経痛の症状を悪化させないために重要です。 食べすぎや運動不足によって上半身に脂肪が付きすぎると、腰に大きな負担がかかってしまいます。坐骨神経痛の症状がある人は、食事量や運動量を調節し、脂肪が付かないように、太りすぎないように気を付けましょう。 まとめ・坐骨神経痛でやってはいけないこと、9つの注意したいこと 坐骨神経痛で悩む方がやってはいけないこと、注意すべきことををいくつかご紹介しました。 特に適切な立ち方やものの持ち上げ方には、アドバイスや訓練をすることでより効果的にできるようになります。是非かかりつけの整形外科医やリハビリの担当者に相談してみてください。 No.S084 監修:医師 加藤 秀一
2022.08.03 -
- 腰
腰椎すべり症とは、その症状と治療法 腰椎すべり症は、実は全ての年代における慢性的な腰痛の原因ともなりうる症状です。腰痛に苦しむアスリートのなかに、腰椎すべり症を発症している人がいると聞いたことがある方がおられるかもしれません。 そこで今回の記事では、腰椎すべり症の症状、原因や治療法についてご紹介します。 腰椎すべり症とは? 腰椎すべり症は、腰痛の原因となる脊椎の病気です。腰の骨である腰椎のひとつが、その下の腰椎との位置がずれてしまうことで起こります。多くの場合、非外科的治療で症状を和らげることができますが、重症化すれば手術が必要となることもあります。 腰椎すべり症の症状 腰椎すべり症は、腰椎の不安定性を伴っており、腰椎が必要以上に動きます。そのため脊髄神経を圧迫し、腰痛や足の痛みを引き起こす可能性があります。ただし、腰椎すべり症の初期は、症状が現れないこともあります。 症状が出てくると、一般的には腰痛が主な症状です。痛みは、お尻や太ももにまで及ぶこともあります。また、そのほかにも太ももの裏の筋肉のけいれん、背中のこわばり、長時間の歩行や立位が困難になる、足のしびれ、筋力低下などが生じることもあります。 腰椎すべり症の原因 腰椎すべり症の原因は、主に2つに分けられます。 変性すべり症 椎間板の変性により、椎骨がずれてしまうこともあります。椎骨のクッションである椎間板は、加齢に伴って水分が失われ、磨耗していきます。椎間板が薄くなると、椎骨はその位置からずれやすくなります。 また椎骨と椎骨の間にあり、各椎骨同士をつないでいる関節面がすり減ることもあります。関節面がすり減ると、表面積が不均一で不安定になり、椎骨が定位置にとどまることができなくなります。 変性すべり症の多くは、進行するまで症状が出ません。脚の痛みを感じる場合は、椎骨の位置がずれて脊髄神経のために必要なスペースが狭くなり、さらに脊柱管から出る神経根が圧迫されたり、挟まれたりすることが原因です。 なお変性すべり症は、50歳以降に多く、男性よりも女性に多くみられます。 分離すべり症 分離すべり症は、脊椎を繋ぐ関節突起部が生まれつき不完全なために、椎骨の一部分の分離を生じることがあります。 また骨が成長する思春期に、陸上競技、体操やサッカーなど、腰に過度に負荷のかかる運動を続けていると、椎間の関節部にストレスがかかってしまい、その結果関節突起の疲労骨折を起こすことがあります。 この疲労骨折が、度重なる運動のために十分に治癒していないと、後々腰椎の分離を起こし、分離すべり症を発症します。分離すべり症は、10代の子どもが腰痛になる最も一般的な理由の一つです。 腰椎すべり症の診断 症状や診察より、腰椎すべり症が疑われる場合、画像検査を行うことが一般的です。 はじめに脊椎のX線検査を行います。X線検査により、腰椎のずれが生じているか、確認することができます。それに加えて、CTスキャンやMRIを用いた検査を行います。これらの画像検査は、脊椎の状態をより詳しく見るため、あるいは椎間板や神経などの組織の状態を評価するために必要な場合があります。 腰椎すべり症の治療 治療は、すべり症の程度、症状、年齢、全身状態によって異なりますが、通常はまず手術を行わない、非外科的治療法を試みます。 腰椎すべり症の非外科的治療 非外科的治療の最初のステップは、安静にすることです。当然ですが、激しい運動やスポーツを休みます。腰への負担を軽減させることを目的に、コルセットを併用することもあります。 また同時に、痛みを軽減させることを目的に、鎮痛薬を使用します。通常は非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID)が用いられます。 さらに激しい痛みに対しては、神経婚ブロックを行い、痛みを最小限にできるようにコントロールします。場合によっては、腰椎のけん引を行うこともあります。 痛みが落ち着いてきたら、腹部と背部の強化を目的に筋力トレーニングをしたり、ストレッチをしたりして、症状の進行を止めるよう試みます。 腰椎すべり症の外科的治療 すべりの程度が強く、痛みがひどい場合、または非外科的治療を試みたがうまくいかない場合、手術が必要になることがあります。 手術では、脊椎の減圧術を行うことで神経への圧迫を解除し、圧迫による刺激を受けている神経からの痛みを和らげ、機能を回復させることを目指します。また原因に応じて腰椎の固定術を行い、すべった部分の腰椎を安定させることもあります。 腰椎すべり症の予後 腰椎すべり症は、自然に治ることはありませんが、安静や薬物療法、リハビリテーションによって、症状が緩和されることはよくあります。 手術の成功率は高いと言われています。腰椎すべり症の手術を受けた人の多くは、術後数カ月で以前の生活に戻ることができています。なお、手術後は機能を完全に回復するためにリハビリテーションが必要になることが多いでしょう。 まとめ・腰椎すべり症とは、その症状と治療法 腰椎すべり症について、その症状や原因、また治療法について説明しました。もし自分が腰椎すべり症かもしれないと思う方がおられたら、ぜひ整形外科クリニックまでご相談ください。 腰椎すべり症には、なかなか効果的な予防法がありませんが、背筋と腹筋を鍛えるためのエクササイズを定期的に行ったり、腰への負担軽減を意識して減量したり、日常生活のなかでできる工夫もありますので、専門医にご相談することをお勧めします。 No.S081 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療に関する詳細は以下をご覧下さい 自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした最先端の医療です
2022.06.09 -
- 腰
ぎっくり腰に前兆、なんとなく違和感?!よりも大切な生活習慣 日常生活の中で、重いものを持ち上げたりした時、身体を起こしたりした時、お辞儀をしたりする時などの何気ない動作の中で、急に腰が痛くなり歩けなくなる、ということを経験した人は少なくないと思います。 世間ではこれを『ぎっくり腰』と言っています。実は『ぎっくり腰』という病気は正式な疾患の名前ではありません。正式には『急性腰痛症』と言われます。 ぎっくり腰で起こる腰痛は、『急性腰痛症』という文字の通り、急激に発症しますが、腰痛を起こさないために防ぐ方法はないのか、前兆はあるのかについて解説していきます。 ぎっくり腰について 先ほど述べたように、正式には『急性腰痛症』と言います。急性腰痛症は発症からの期間が 4 週間未満の腰痛を総称して言います。 腰痛の原因自体は、実はたくさんあります。腰や背骨を支えている様々な組織(椎間板、椎間関節、骨膜、筋肉・筋膜、靭帯、血管など)が疾患や外傷によって傷がついて腰痛を起こしていると言われています。 腰痛の原因と大きく分けると、脊椎が原因の痛み、神経が原因の痛み、血管が原因の腰痛、内臓が原因の腰痛、心が原因の腰痛に分けることができると言われています。 腰痛の原因 ・脊椎が原因 ・神経が原因 ・血管が原因 ・内臓が原因 ・ストレスが原因 このように腰痛の原因は様々ですが、ぎっくり腰自体の原因は、実ははっきりとしたことが解明されておらず、腰痛の様々は原因が関係しあって引き起こしているのではないかと言われています。 ぎっくり腰の原因と治療法 腰痛の原因にもありますがストレスが原因で「ぎっくり腰」が起こるというのは意外かもしれませんね。実は、『ぎっくり腰を起こしそう』と思っていることも、ぎっくり腰を起こす原因の一つであると言われています。 ぎっくり腰の症状は、『力を込めて物を持ち上げようとした際』や『挨拶をしようと頭を下げた際』、『座っている姿勢から、何気なく、立ち上がろうとした際』などに、急激に痛みが出現して、歩けなくなったりします。 経験している人は身をもって感じていることが多いですが、痛みは耐えられないくらいの激痛で、今までに経験したことのないほどの痛みであることが多いです。 経過について、意外かもしれませんが、急激に発症する腰痛は、慢性的な腰痛に比べて、治療を行わなくても自然に治ることが多いと言われています。治療について、明確に決まった治療法はなく、安静を保ち、ゆっくりと過ごすことが大事です。 ただし、これは単にゆっくり過ごすということではなく、なるべく早く日常の生活に戻ることも治療のために必要であると言われています。 身体を伸ばしたり、軽く体操することが効果がある可能性もあると言われていますが、ぎっくり腰を起こし痛みがどうしても耐えられない人は、鎮痛剤を内服したり湿布を貼ったりしながらも早期に日常生活に戻る努力を行いましょう。 ぎっくり腰の原因 ・力を込めて重い物を持ち上げようとした ・挨拶をしようと頭を下げた ・座っている姿勢から、何気なく、立ち上がろうとした ・腰に関わる急激な姿勢変動 ・ストレス(心理的要因) 治療法 ・受傷した当初は安静 ・痛み止め(鎮痛剤や、湿布等) ・早めに意識して日常生活に戻る。安静のし過ぎは良くない。 ・急激に発症した腰痛は、慢性腰痛に比べて、治療を行わなくても自然に治ることが多い ぎっくり腰ではなかった?に注意 ぎっくり腰で治療のために入院が必要になるということは、ほぼないと言われています。 しかし、ここで注意しなくてはいけないのは、『実は骨折していた』『実はヘルニアだった』などということもあるので、症状がなかなか良くならない時や、いつもと違う痛みのときは、なるべく早く病院に受診するのがよいでしょう。 日本整形外科学会のガイドラインでは、自然に症状がよくなるために影響している可能性があるものが紹介されています。 腰痛がより早く良くなるために大事なこととしては、発症する前に定期的に運動を行う習慣があることや、年齢が比較的若いこと、健康状態が良好であること、精神の状態を良好であることなどが挙げられています。 その反対に、腰痛がなかなかよくならない原因として、『痛みが頭から離れないこと』『痛みに対して無気力であること』『痛みを過大にとらえる』などの考え方が挙げられています。 ぎっくり腰の前兆は「なんとなくの違和感?!」 ぎっくり腰の前兆はあるのでしょうか。 実は前兆は、『明らかなものがない』と言われています。しかし、何回も経験している人の中には、『なんとなく腰が痛くなりそうである』『嫌な予感がする』と前兆を感じることもあると言われています。 その『なんとなく』の違和感こそが、前兆とも言えます。しかし、今までに経験したことのない方は、そのような『なんとなく』の前兆については、判別がとても難しいでしょう。 前兆については、そのような曖昧なものしかありませんが、予防策はあると言われています。 具体的には、姿勢を整えたり、規則正しい運動習慣を身につけたり、しっかりとした睡眠をとったり、身体も心も健康に保つことが予防のために重要であると言われています。 その反対に、身体の健康を損なった時や、ストレスなど心理的要因を抱えていたり、精神的に不安定なときは、ぎっくり腰を引き起こしやすいと言われています。そういう意味では、身体が疲れている時や、心が疲れている時、睡眠不足などの生活習慣の乱れも、前兆であると考えても良いのかもしれません。 もし、そのような予兆を感じた場合は、まず一旦、今しようとしていることを止めて姿勢を正すなど、そのように思った流れを断ち切るように心がけましょう! ぎっくり腰は、前兆よりも、心と体を健康に保つことで予防する ・姿勢を整える ・定期的な運動習慣 ・しっかり睡眠 ・心と体の健康で予防する まとめ・ぎっくり腰に前兆、なんとなく違和感?!よりも大切な生活習慣 ぎっくり腰は、日常的な動作の中で急激に起こる腰痛です。一度引き起こすと痛みで動けなくなり、とてもつらい思いをします。また、一度起こすと繰り返しやすくなったりもします。 ストレスなど心理的要因にて身体や心の健康が乱れることが、前兆となっている可能性があります。ぎっくり腰を引き起こさないようにするのに大事なのは、身体や心の健康を保つことであると言えるでしょう。 実際になってしまった時は、早く良くなるために、また、再発しないようにするために、身体や心を健康に保つことが非常に重要です。ぎっくり腰と思って放置していたら、別の病気が隠れていることもあります。 いつもと違う症状のとき、症状がなかなかよくならない時は病院を受診するようにしましょう。以上、ぎっくり腰に前兆はあるのか、あるならどんな症状という内容で解説させていただきました。参考にして頂けると幸いです。 ▼こちらもあわせてご覧ください ぎっくり腰の疑問?原因と予防!やって良いこと、悪いこと No.059 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療という新しい先端医療をご存知ですか 自分自身の、自然治癒力を活かしたこれまでになかった医療です
2022.06.06