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- 腱板損傷
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肩が痛い!そんなときに疑うべき肩の病気とは 肩の痛みは、肩関節疾患を抱えた患者さんの自覚症状として最も多いと言われています。肩が痛む患者さんを診察する際には、いつから、どのような動作で、どこが、どう痛むかなど具体的に詳しく問診したうえで診察や検査を進めます。 その上で疼痛といった症状の原因となる疾患を診断し、確実な治療に結び付けることが大切になります。そこで、今回は、肩の痛みで疑うべき疾患とは何なのか、それらの病気に対する検査および治療方法などに関する情報を中心に詳しく解説してまいります。 肩の痛みで疑うべき肩の病気 一般的に肩の痛みを引き起こす関連疾患は整形外科でも色々な可能性が挙げられますが、広く知られている代表的な病気は、「肩関節周囲炎(別名:五十肩)」、「肩蜂下インピンジメント症候群」、「腱板断裂」といた3つの病気です。 肩関節周囲炎 肩関節周囲炎という疾患は、40~60歳代の中高年齢層でよく経験されるいわゆる五十肩(四十肩)と呼ばれている状態のことを指しており、この病気は特に誘因になるような契機がないものの、肩の痛みといた症状が出現して知らぬ間に肩を挙げることができないといった可動域制限を認めます。 肩蜂下インピンジメント症候群 肩蜂下インピンジメント症候群では、日常生活で頻繁に肩関節を動作させることで肩甲骨の先端部に位置している肩峰と腱板の間に存在している肩峰下滑液包が炎症を引き起こすことによって強い肩の痛みを生じる状態を意味しています。 インピンジメント症候群には、肩峰と棘上筋間で肩峰下包が挟まれるエクスターナル型、あるいは棘上筋の関節包面が後上方関節唇と衝突するインターナル型の2種類があり、野球の投球動作やテニスのサーブ動作などオーバーハンドスポーツ競技者で多く認められます。 腱板断裂 腱板断裂という疾患は、中高年齢層の方に罹患率が高く、加齢と同時に喫煙、外傷、スポーツなどの要因によって発症することが知られており、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉腱から構成される腱板が断裂することで肩の痛みを引き起こします。 肩の痛みで代表的な病名 ・肩関節周囲炎(別名:五十肩または四十肩) ・肩蜂下インピンジメント症候群 ・腱板断裂 肩の痛みで疑うべき病気に対する診断と検査方法 肩関節周囲炎の診断と検査 肩関節部を構成する軟部組織におこる炎症に伴う痛みといった症状や、運動制限を特徴とする肩関節周囲炎は自然治癒すると思われがちですが、実際のところは放置すると痛みや拘縮が強くなり症状が慢性化することが多いため、早期的に診断することが重要です。 病院などの医療機関では、専門医による問診、画像検査、可動域を測定することなどを実施して肩関節周囲炎を診断できることが多いです。 一般的には、本疾患ではレントゲン検査上で異常所見を認めないとされており、個々の患者さんの経過や状況に応じて肩関節部の軟部組織状態を精密に評価するために関節造影検査やMRI検査をあわせて実施するケースもあります。 肩蜂下インピンジメント症候群の診断と検査 肩蜂下インピンジメント症候群に対する検査は、問診や肩関節部におけるテスト法、MRI検査、超音波検査などが有効的とされております。 特に、超音波検査を実施することで肩峰下滑液包と腱板の腫脹、腱板断裂の有無を調べることが出来ますし、肩を外転する際に腱板や滑液包の肩峰下への滑動状態やすべり具合を判定することが可能となります。 腱板断裂の診断と検査 腱板断裂においては、診断が遅れてしまうと治療による症状改善が難しくなってしまう可能性があり、早期発見および早期治療が重要な鍵になります。 実際の診察場面では、肩の痛みの場所や症状、肩がどのような動きで痛みを感じるのか確認する外転テスト、ドロップアームテストなどを施行すると共に、レントゲン検査、MRI画像検査などを実行されることが多いです。 これらの画像的な精密検査によって肩関節部の腱板断裂以外の石灰性腱板炎を始めとする疾患との鑑別も可能となります。 肩の痛みと病気、その治療方法 研究によると肩の痛みといった症状が改善することで身体的側面から健康に関連する生活の質(Quality Of Life)が向上する可能性があることが示されています。 肩の痛みに対する治療は、一般的に個々の症例における年齢、職業、生活環境などの要素や患者さん自身の希望を検討したうえで決定することになります。 肩関節周囲炎の治療 肩関節周囲炎に対する治療方法は、まず痛みを自覚している炎症期においては三角巾を用いて上肢を安静に保つ、あるいは消炎鎮痛薬を服用することが考慮されます。 また、症状が比較的強いときには肩関節の患部内に局所麻酔薬を注入して、癒着した関節包組織を開大させる手技法も症状改善に有用であると考えられています。 そして、肩の痛みがある程度軽減して肩部の動作制限が症状の主体である拘縮期においては、リハビリテーションを中心とした関節可動域の訓練を実施します。 万が一これらの保存治療でも奏功しない難治例に対しては、全身麻酔下で鏡視下関節包切離術などの根治的外科的処置が実施される場合もあります。 肩蜂下インピンジメント症候群 肩蜂下インピンジメント症候群では、肩の痛み症状を呈している直接の原因とされてる関節包などの拘縮度を解消するためのストレッチング、あるいは上腕骨頭が上方に向かないようにするためのインナーマッスルを中心とした筋力増強トレーニングが実践されます。 仮に痛みが非常に強い場合や前述した運動療法が著効しないケースでは、滑液包内に炎症を抑制する作用を有する副腎皮質ステロイド剤を注入することもあります。 そして、副腎皮質ステロイド剤の注入を頻回に繰り返しても肩の痛み症状が継続される際には、関節鏡視下に関節包切離処置や肩峰下除圧術などが実施されることになります。 腱板断裂 腱板断裂に対する有用な治療方法としては薬物療法や理学療法が知られています。 特に、加齢に伴う腱の変性による腱板断裂を認める際には、まず保存療法が行われることがほとんどであり、非ステロイド性抗炎症薬を内服あるいは外用する、そして副腎皮質ステロイド剤を関節内注入することを検討します。 また、患部を温熱療法で温める、ストレッチやトレーニングによって肩関節部の可動域を広げて筋力強化に繋げる理学療法もお勧めされます。 若年者における外傷に伴う腱板断裂やスポーツによって引き起こされた断裂病変に対しては、肩峰下除圧術や腱板修復術が実践されることもあります。 まとめ・肩が痛い!そんなときに疑うべき肩の病気とは 今回は肩の痛みで疑うべき病気とは何なのか、それらの病気に対する検査および治療方法などについて詳しく解説してきました。 「肩が痛い」、「肩が挙上できない」などの症状を自覚して日常生活においてお困りの方は、専門の医療機関などで早期的に診察や検査を受けて、保存療法や手術療法など様々な治療アプローチによって症状改善を図るように心がけましょう。 また、これら整形外科的な治療以外にも「再生医療」という新しい治療法も注目を得ています。興味があれば以下のリンクからご参照ください。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S057 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療で肩の痛みを治療できることをご存知ですか 肩の痛みは、再生医療により手術や入院を避けて改善することができます
2022.03.16 -
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- インピンジメント症候群
インピンジメント症候群とは、その原因、症状と治療法 インピンジメント症候群とは、肩を使う動作の途中で痛みを感じたり、引っかかるような違和感を感じて、それ以上に動かせなくなる症状を起こす障害です。この「インピンジメント」とは、聞きなれない言葉ですが「衝撃、衝突、挟まる」といった意味になります。 なぜこの症状に衝撃や衝突、挟まるといった言葉が使われているかというと、その症状が肩の関節を上げたり、動かそうとした際に、関節が骨や筋肉と衝突を起こすような衝撃があることに由来しているようです。 今回は、この舌を噛みそうな名前の「インピンジメント症候群」についてお話しましょう。 インピンジメント症候群はスポーツが原因になることが多いスポーツ障害 インピンジメント症候群とは、肩のインナーマッスル(肩関節の周りを取り囲み肩を支えている腱板)が骨の屋根にあたって突っかかったり、挟まったりすることで痛みが起こり、うまく動かせなくなるといった症状の総称です。 これは肩が使われると肩峰や靱帯に上腕骨頭が衝突や、摩擦が起こることによって腱板が挟まれ、肩峰の下にある腱板を保護している滑液が入った袋、「肩峰下滑液包(肩関節の保護や動きを滑らかにしています)」に炎症が起こり、肩が痛むようになるものです。 インピンジメント症候群と深く関わっているのがスポーツです。特に多いのが野球で、ピッチングなどで肩を酷使すると投球障害が起こりやすくなります。その他にも肩をよく使うテニスなども発症しやすいスポーツ障害の一つです。 このようにインピンジメント症候群は、繰り返し肩関節を刺激することで肩に痛みが起こる疾患です。野球ならボールを投げる時、テニスならサーブやスマッシュを打つ時です。どちらも長時間にわたって何度も肩を使います。 同じ理由でバドミントンやバレーボールもインピンジメント症候群になりやすいスポーツと言えます。バドミントンならスマッシュ、バレーボールならサーブとスパイクなどが、肩関節に負担がかかる動作になります。 主な症状 野球の投球動作で起こることが多い ・腕を肩より上で動かしたときの運動痛 ・腕の上げ下げ、腕を上げる場合、下げる際に痛みがでる ・腕を上げていく時に、ある角度までくると痛みや、ひっかかる感じがあり上げられなくなる ・夜間痛がある インピンジメント症候群を発症しやすいスポーツ ・野球 ・テニス ・バドミントン ・ゴルフ ・バレーボール ・やり投げ等、肩関節を使う競技に多い インピンジメント症候群は、日常生活上の動作が原因にもなる インピンジメント症候群は、一般的にスポーツ障害ですが、あながちスポーツだけが原因ではありません。日常生活でもインピンジメント症候群になりやすい動作についてご説明します。 インピンジメント症候群は、スポーツで肩を使うことに近い動作、肩を使うことが多い仕事などで発症することがあります。例えば荷物などを高い所に上げたり、高い場所から下ろしたりする動作です。このような動作を日常的に繰り返していると肩を痛めることがあります。 荷物などを高い所に上げる時は、腕が肩より上になり、肩に負担が掛かかり、高い所の物を下す時も同様に肩に負担が掛かります。これを繰り返していると、肩を酷使するスポーツ選手と同様の状態になります。 このように特に肩を使うようなスポーツをやっていない場合でも、仕事や普段の生活で頻繁に腕を上げ下げすることがあれば、それはインピンジメント症候群になる可能性があるため注意が必要です。 インピンジメント症候群は加齢も原因になる! 実は、インピンジメント症候群は、加齢にも関わりがあります。私達は年を取ると骨がもろくなっていきます。肩関節も同じです。加齢によって、肩の高くなっている部分(肩峰(けんぽう)といいます)の下に骨の棘(骨棘(こつきょく:尖った突起物))ができ、加齢ととともに大きくなることで腕の上げ下げの際に骨同士が衝突(インピンジメント)するようになります。 この状態になると、肩そのものの動きがスムーズではなくなります。肩の骨の出っ張りが摩擦・衝突しやすくなり、インピンジメント症候群になるのです。 インピンジメント症候群の治療 インピンジメント症候群で痛みを発症した場合は、痛みを感じる動きを行わないことが大切です。その上で痛みには、痛み止めの薬物療法や痛み止めの注射、そしてヒアルロン酸の局所注射することがあります。その後は、ストレッチをはじめとしたリハビリを行うことになります。 2~3か月程度リハビリテーションを繰り返しても症状が改善しない、改善が乏しいという場合は、関節鏡視下で手術をすることも検討されるでしょう。 ・肩の安静 ・リハビリテーション(ストレッチ) ・痛み止め(薬物療法) ・痛みの改善(ヒアルロン酸、ステロイドの局所注射) ・手術(関節鏡視下が主流) まとめ・インピンジメント症候群とは、その原因、症状と治療法 インピンジメント症候群は、肩を酷使するスポーツ障害ですが、その他にも日常生活の動作や、仕事上での動き、また加齢でも発症します。特に肩を使った運動をしていなくても、仕事や日常生活の中で腕を振ったり上げたりする動作が多い場合は、十分インピンジメント症候群になる可能性があります。 また、年を取るとより症状が出やすくなります。スポーツをしていなくても、肩の痛みや違和感、肩の動きに異変を感じたら早めに対策するようにしましょう。 いずれにしても、スポーツの前後にストレッチなどを取り入れて肩の手入れを行うようにすることで症状の発生を予防する意識も不可欠です。以上、スポーツ障害|肩のインピンジメント症候群の原因について解説しました。 No.S043 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療で肩の痛みを治療する 肩の痛みは、再生医療なら手術や入院をせずに症状を改善することができます
2022.02.25