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- スポーツ医療
- 足底腱膜炎
スポーツが原因で発症しがちな足底腱膜炎、その症状と治し方・治療法について! 足底腱膜炎(そくていけんまくえん)とは、あまり聞き慣れないかもしれませんが、「足底腱膜」と呼ばれる足の裏側に存在している「腱膜の組織」が何かの原因によって炎症を起こしている状態を指します。 足底腱膜とは、いわゆる「土踏まず」と呼ばれる足底部、アーチ状になっている構造を保ち、身体を支えるクッション、バネのような役目をする腱膜(筋肉ではなく筋肉を支えるシート状の存在)です。 外力など足部への負担や、衝撃などを吸収する役割を果たすほか、衝撃を受け止める以外の働きもあります。それは、足裏にかかった物理的な衝撃を吸収しながらも、その力を逆方向に蹴り出すエネルギーに変換する機能です。 このように足底腱膜は、衝撃を吸収したり、その逆に力を発する機能を有していて、いわばバネのような存在です。歩く、走るということに無くてはならず、特にスポーツなどでは大きな働きをしてくれる組織です。 逆に言うとスポーツが原因となって起こることが多い症状でもあります。 足底腱膜炎を発症すると足で衝撃が吸収されにくくなり、結果として蹴りだすことも不自由になります。これは、足裏が痛くなるため、足を蹴り出して歩く、走るなどの動作時において足底部の力学的バランスが悪化するために起こります。 そこで、今回は「足底腱膜炎とはどのような病気なのか」、その原因、症状、治療方法などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 1.足底腱膜炎の原因はスポーツで多くみられる 足底腱膜炎は、スポーツや競技で走ったり、歩いたりを長距離、継続して行った場合や、ジャンプしたり、急なストップ&ゴーを繰り返したり、あるいは自分の足に適さない靴を履いて長時間行動する、硬い道路でトレーニングを続けるなどの行動によって足底腱膜に過剰な負荷が生じることで発症すると考えられています。 本疾患は、足の筋力不足や柔軟性の低下などが原因となり、運動競技を通じて、その部分がオーバーユースになること。つまり使い過ぎることで引き起こされることが多いため、スポーツをする際などにはストレッチ運動をすると同時に練習環境やメニュー内容を調整することが大切になることを知識として知っておくべきです。 それ以外にも、扁平足や外反母趾など、もともと足領域に変形などの異常所見がある場合にも足底にある腱膜部に負荷がかかって足底腱膜炎を発症する可能性がありますので十分な注意が必要です。 足底腱膜炎に注意が必要なスポーツや状況 ・マラソンをはじめとした陸上競技全般 ・バレーボール、バスケットボール(ジャンプなどが多い) ・サッカーや、ラクビー(走る距離が長く、急停止や方向転換が多い) ・硬いグラウンドやコンクリート上で走る、弾むなどの運動量が多い練習等 ・しっかりしたクッションを伴わないシューズで運動の繰り返し 2.足底腱膜炎の症状 足底腱膜炎とは足底の腱付着部に起こる炎症を指しており、踵の痛みを呈する疾患のひとつであり、成人では足に治療を要する病気のなかで約10%程度を占めると言われていて、しばしば難治性であると伝えられています。 本疾患では、陸上競技ランナーなどに多く認められるスポーツ障害の一種とも考えられており、安静などによって一時的に症状が改善しても、再度弊害を繰り返すことがあります。一時的に良くなっても繰り返して発症することがあるので注意が必要です。 この病気は、走れば、走るほど足底部の痛みが顕著になると考えられていて、主に足部において踵を中心とした足裏に疼痛症状を来すことが知られています。階段を昇降する際や、つま先立ちの姿勢をとる時に痛みの症状が悪化すると言われています。 一般的に、運動時間が長くなればなるほど足裏部の痛みが強度になっていくことが知られており、最悪の場合には日常生活で歩けないぐらいの強い痛みに進展することもあります。 3.足底腱膜炎の治療・治し方 足底腱膜炎に対する治療は、「保存療法」および「手術療法」を検討することになります。まずは、セルフケアとしてできることは、足底腱膜部の痛みを感じた部分に、1日2回ほど10分程度かけて患部を冷却するように心がけましょう。 保存療法 足底腱膜炎の治療は、リハビリを中心とした理学療法での治療が基本となります。まずは症状が軽くなるまでは安静にしてください。スポーツはもちろんのこと、長距離の歩行や、長い時間、立っていることも避けねばなりません。 その他、必要があればテーピングなどを行うことで患部の負担を軽減を目指します。 薬物療法 患部に炎症がある場合は、消炎鎮痛剤の塗布や、湿布で炎症を抑えて症状の改善を待ちます。また、痛みが強い場合は、和らげるために鎮痛剤の服用も有効ですが長期間での使用は胃に負担がかかるため、ご注意ください。 その他、治療上の注意点として、患部へのステロイド注射を行うことがありますが、副作用の心配もあり、長期頻回に行うことは回避すべきです。 リハビリテーション 症状が重篤でない状況では、ほとんどの場合は数か月程度で症状が軽快していくと言われています。リハビリで重要となるのは筋膜の柔軟性を向上させることです。そのためには足底腱膜だけでなく、それに続くアキレス腱やハムストリング、下腿三頭筋を含めた柔軟性の確保を目指しストレッチを中心にアプローチします。 このようなリハビリを用いた治療法は、ステロイド注射のように明らかな即効性は見られませんが長期的なスパンで見ていただくと非常に有効です。尚、こういったリハビリは、低周波による電気療法や超音波を用いた療法、レーザー照射などといった物理療法を組み合わせるのが一般的です。 装具療法(インソール) 上記以外、靴選びも重要になります。靴を履く際は自分の足の形に適したクッション性の優れた靴を選択すると共に着地する際の衝撃を少しでも緩和できるよう、衝撃を吸収できるインソールを挿入するなどで足底腱膜部にかかるストレスを和らげる対策を取りましょう。 インソールとは、靴底に敷くことで足底のアーチ形状を解剖学的に補正することで足のアライメントを調整し改善するものです。そのため、個人に合わせてオーダーメードで作成します。 以上のような薬剤やリハビリ、インソールを中心とした保存的治療で症状が改善しないケースにあっては、根治的な手術療法が考慮されることになります。 まとめ・スポーツが原因で発症しがちな足底腱膜炎、その症状と治し方・治療法について! 今回は、足底腱膜炎とはどのような病気なのか、その原因と症状、治療方法について詳しく解説してまいりました。 誰しも足底部にはかかとの骨から足指にかけて強靱な繊維組織である足底腱膜が広がっており、足底部の土踏まずであるアーチ部を支えることで歩行時や走る際における足裏の衝撃力を吸収する役割を有しています。 さらに、足底腱膜部は衝撃を吸収した外力などを蹴り出しするエネルギーとして変換して活用する機能も果たしているため、足底腱膜炎に罹患すると足底部が地面に着地する際の衝撃吸収力だけでなく蹴り出す力が低下して走りにくさや歩きにくさに繋がります。 本疾患は一時的に症状が改善しても将来的に再発することが広く知られており、症状を放置して病状が悪化すると侵襲的な手術を必要とするのみならず、日常的に運動やスポーツができず普段の生活が制限されますので早期的に整形外科をはじめとした病院で専門医の診断を受け治療を実施しましょう。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S070 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療に関する詳細は以下をご覧下さい 自分自身の自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした最先端の医療です
2022.04.14 -
- スポーツ医療
- 足底腱膜炎
足底腱膜炎はスポーツをするしないに関わらず発症します 足底腱膜炎(そくていけんまくえん)をご存知でしょうか。 足底腱膜炎は、足を使うスポーツで多く見られる疾患なのですが、実はスポーツなど足を酷使する以外にも色々なことが原因となって発症します。そもそも足底腱膜は足指の付け根部分から踵に向かって張られた存在で足底をアーチ状に保っている腱膜です。 この部分が炎症を起こすことで足底腱膜炎が発症します。 スポーツ以外、発症原因の一例 ・普段履いている靴が合わない ・加齢などで足の筋力が低下する ・体重が増えてしまうことで足への負荷が増加 ・足首の関節が硬くて足裏への負荷がかかりやすくなっている このように、足底腱膜炎はスポーツをするしないに関わらず日常生活のちょっとしたことが原因に発症することもあるので、足の裏が突然痛くなったけど、痛くなった原因、思い当たることがないというケースも出てきます。 足底腱膜炎は、放置して治る場合もあるけど逆もある 足底腱膜炎は、症状が軽いものであれば、原因となっているものを取りのぞいたり、正しいケアや治療をすることで痛みは治まることがほとんどです。このような場合、放置していても治る可能性が高いのですが重い、軽いといった症状に対する自己判断は慎重にしましょう。 できるだけ安静にし、歩く、走るなどの動作をする際にはインソールやサポーターなどを活用してなるべく負担がかからないようにするのが、早く治すための基本です。 また、自分の足に合った靴を選ぶ、減量や足の筋力アップなどで、足への負担を軽減するなども再発・悪化を防ぐために必要です。ただし、軽症ではなかった場合や、軽症でも十分なケアをしないまま、「痛いけど我慢できる」から…と放置しておくと悪化することもあるため注意が必要です。 いくら軽くても無理をすると治りきらず、慢性化して痛みが強くなることもあるため、症状が軽いうちにできれば医師などの治療や指示を受けるなどの対処をおススメします。 重症化した足底腱膜炎の治し方 他の病気やけがと同じように、足底腱膜炎も軽症であればそれだけ治る可能性も高くなりますし、重症化すればそれだけ治るのは難しくなってしまいます。 安静にして薬物療法などでも症状が改善させないほど重症化した場合は、手術という選択肢もありますが、最近ではスポーツ医療の発展によって手術以外の治療法も選択できるようになっています。 例えば、メスを入れる必要がない衝撃波治療や、自分の細胞を使って損傷した部位の修復を図る再生医療などの方法があります。 足底腱膜炎を改善するインソールとテーピング 足底腱膜炎の治療法としてよく行われるのがインソール(靴の底敷き)による装具療法です。足の裏にある足底腱膜は、歩き出したり走り出したりするために足を蹴り出す際に引っ張られて負荷がかかります。 また、立っている時や足が着地した時にも重みや衝撃で圧迫されて負荷がかかります。そんな場合にインソールを装着することで、こうした負荷を分散させることができ、結果、痛みを緩和させる効果が期待できます。 この方法が、「インソールによる装具療法」です。インソールを使った装具療法は非常に有効ですが、インソールは靴を履いていない室内では使用することができないという欠点があります。 そのような場合は、テーピングをするという方法もあります。 足底腱膜炎対策としてテーピングが有効な理由 足底腱膜炎対策にテーピングを使用するといろいろな効果が期待できます。例えば、テーピングで筋肉を伸ばすことで、足底腱膜炎で硬くなった筋肉をやわらかくすることができます。 また、扁平足の人の場合は、踵が内側へ倒れることで足底腱膜に大きな負荷がかかりやすいのですが、土踏まずが高くなるようにテーピングすることで負荷を軽減することができます。 逆に土踏まずが高くなりすぎている人は踵が外側に倒れることで足底腱膜に大きな負荷がかかりやすいので、外側に倒れにくくするようにテーピングを使用すると負荷を軽減させることができます。 足底腱膜炎対策でテーピング使用する時の注意点 足底腱膜炎の対策にテーピングは有効ですが、テーピングを毎日長時間使用していると肌かぶれることがあります。特に肌が弱い人は気をつけましょう。必要がない時は外すようにするとよいでしょう。 かぶれが気になる人は皮膚を保護するアンダーラップを巻いてからテーピングを使用するのもおすすめです。また、テーピングの頼り過ぎにならないように、痛みが治まったらテーピングの使用はやめましょう。 テーピングも自己判断で行うのではなく専門家の指示を受けて、行い方、力加減、その他の注意事項等指導を受けて、どのように行えば良い(効果的)のか理解して行いましょう。 まとめ・足底腱膜炎はスポーツをするしないに関わらず発症します 足底腱膜炎はスポーツ以外でも発生します。足底腱膜炎は正しい処置をすれば多くのケースで治ることが期待できます。 悪化してしまった場合もさまざまな治療法を選択することができますが、やはり予防をして足底腱膜炎にならないようにした方が良いですし、もし足底腱膜炎になってしまったら症状が軽いうちに治してしまうようにしましょう。 「土踏まずが痛い」「踵が痛い」「歩くときに足の裏が痛い」といった足底腱膜炎に悩まされている人はたくさんいると思います。足底腱膜炎は安静にしておくのが一番ですが、なかなか思うように足を休ませることができないという人も少なくないでしょう。 そのような場合、対処法の1つとしてテーピングがおすすめです。そこで、ここでは足底腱膜炎にテーピングが有効な理由やテーピングを使用する時に注意すべき点について紹介します。 足底腱膜炎の対策としてテーピングが有効であることや、テーピングを使用する時の注意点について紹介しました。 近年では、スポーツ医療も進歩していてインソールやテーピングもいろいろな種類や機能の高いものがたくさんあります。ただ、素人判断では回復が遅くなるばかりか、誤った方法で症状が悪化する危険性もあります。 足底腱膜炎の痛みを何とかしたいという人は、病院をはじめ、整形外科等で専門医に相談し、インソールやテーピングが必要な場合はその助言を得て治療を薦めることをおススメします。 No.S061 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.18 -
- 手
- スポーツ医療
TFCC損傷とは、使いすぎたり転倒など強い衝撃で発症する手首の障害です TFCC損傷という聞きなれない症状をご存知でしょうか? このTFCCとは「三角線維軟骨複合体(Triangular Fibrocartilage Complex)」の略であり、手首の小指側にある関節の病気です。例えば外傷として転倒時に手をつく、あるいはバトミントンなどのスポーツ活動を行って手首を捻る動作を繰り返すことで引き起こされる障害です。 そもそも「三角線維軟骨複合体」とは、手首の小指側にあるぐりぐりした関節部に存在している軟部組織を指しています。本疾患を発症すれば、日常的に腕をひねる動作、もしくは手首を小指側に曲げることによって手関節部の疼痛症状を自覚するようになます。 そのため、患部安静を保持して手首にサポーターなどの装具を装着しながら運動を制限する必要が出てまいります。そこで、今回はTFCC損傷とはどのような病気なのか、その原因、症状、治療方法などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 ・TFCC損傷の原因 TFCCは、橈骨と尺骨の遠位端同士および尺側手根靭帯とを接合している靭帯の役割を担っています。 橈骨(とうこつ) ひじから手首まで2本ある前腕骨のうち、前腕の親指側の骨を指す 尺骨(しゃっこつ) ひじから手首まで2本ある前腕骨のうち、小指側にあり、橈骨と平行している骨を指す 解剖学的に前腕部の橈骨と尺骨間には、いくつかの靭帯あって、これらの骨を支持していますが、前腕の手首側の遠位部に位置するこのTFCCが損傷してダメージを受けると手関節全体において機能障害を引き起こすことが懸念されます。 TFCC損傷における主たる要因としては、手関節部に対する強い衝撃や手首における過剰な負荷の繰り返し動作によって引き起こされることが知られています。 したがって、テニスなどラケットを用いるスポーツ競技者において手首を構成している三角線維軟骨複合体(TFCC)という組織が損傷を受けることでTFCC損傷を罹患したり、あるいは自分で転倒したことによる外傷や、繰り返される振動など作業時に手関節を酷使することによって本疾患が発症します。 この症状は、テニス以外にもバトミントンや野球、ゴルフなどの道具を強振する動きに関連して発症するスポーツ外傷ですが、例えば重い鍋やフライパンを不規則に持ったり、振るような動作を継続的に続けた場合においてもTFCC損傷は起こります。 また、加齢によって手関節部の組織が変性することを原因として起こることがあります。更に外傷を認めることなく、尺骨が橈骨に対して長くなる、解剖学的な異常(尺骨突き上げ症候群)によっても引き起こされることがあります。 原因(繰り返しの動作が多い) スポーツ テニス、バドミントン、ゴルフ、野球など(道具を用いて強振) 職業 重い荷物の持ち運び、料理(重いフライパン) 加齢 手関節の変性 その他 解剖学的な異常 ・TFCC損傷の症状 TFCCとは、本来ふたつの橈骨と尺骨で構成されている遠位橈尺関節を安定化させている支持組織です。手関節部の尺側部(小指側)痛をきたす代表的な疾患としてTFCC損傷が挙げられます。 特に、手関節部のなかでも「尺骨茎状突起」と呼ばれる部位に局所的に疼痛を認めることがTFCC損傷における症状の特徴の一つでもあります。 通常では、患部の靭帯が損傷したことによる関節面の不安定性に伴って軟骨同士の適合性が悪化して、特にdiscと呼ばれる円盤状の軟骨組織が断裂することで痛みといった症状を引き起こすと考えられています。 具体的にはタオルを絞る、運転時に車のカギを回す、あるいはドアノブを回すなど手首を捻るような動作をした際に手関節部の特に尺骨側(小指側)において疼痛症状が顕著になって出現します。 一般的に、物を持つ際に手関節部に強い痛みを自覚して力が入らないこともあり、これらの症状は掌を上側に向けると少し軽減することが知られています。 病状が悪化して症状がさらに進展した場合には、安静時でも患部に痛みが出るといた症状を自覚することがありますし、同時に動作開始時に手が抜けそうになる感覚を覚える、あるいは手首が腫れて可動域が制限されるなどの所見を認めることもあります。 ・TFCC損傷の治療 まず、TFCC損傷を患った場合における初期的な治療としては運動を中止してサポーターやギプスによって患部を固定することで局所の安静を図り、消炎鎮痛剤などの服薬治療が行われます。 特に、装具を用いた治療方法に関しては軟骨の変性を悪化させないため、あるいは橈骨尺骨間の可動性を正常に復帰させるためにも前向きに実践されることをお勧めします。 疼痛症状がひどいケースでは、局所麻酔剤を含有して炎症を抑制する効果を狙ってステロイド注射を実施することで数か月単位で症状が改善することを期待します。 数か月間に渡ってこれらの保存的な治療策が奏効しない際には、手術加療が検討されます。 最近では、TFCC損傷している部位が深い場所にあって組織自体も小さいために切開手術よりも術野がよく確保できるように関節鏡や内視鏡を用いて病変部位の縫合処置や部分切除術なども頻繁に実施されるようになってきています。 まとめ・TFCC損傷とは、使いすぎたり転倒など強い衝撃で発症する手首の障害です 今回はTFCC損傷とはどのような病気なのか、その原因、症状、治療方法などについて詳しく解説してきました。 TFCC損傷とは、遠位橈尺関節を安定化させている支持組織である三角線維軟骨複合体が転倒して手をつくなどの外傷やスポーツや作業などで繰り返される過度の負担などでストレスがかかることで手関節部に疼痛症状が出現する疾患です。 尺側手関節痛の原因疾患は多岐に渡りますので、万が一普段の日常生活で手首の小指側が痛みを覚え、安静にしてもなかなか症状が改善しないという人は最寄りの手外科専門医の診察を受けて適切な治療に結び付けるように心がけましょう。 以上、TFCC損傷とは、その原因、症状と治療法について解説いたしました。今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S059 監修:医師 加藤 秀一 ▼ TFCC損傷等のスポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.17 -
- スポーツ医療
- 再生治療
肉離れとは?治療法と再発予防について|スポーツ医療 「肉離れ!」を簡単に見過ごしてはいけません。肉離れは、「筋肉のケガ」です 筋肉は筋繊維というものが束になってできています。肉離れは、筋肉が伸ばされながら急激に収縮することで、筋繊維に損傷が生じて発症します。肉離れの多くは部分断裂なのですが、完全に断裂してしまう場合もあります。 肉離れは、そもそも筋肉が発達していない乳幼児には起こりにくいですが、小学校も高学年以上になってくると筋肉が発達し、スポーツなどで運動量が増えてきます。 そのため、短距離で急激に加速したり、ジャンプするなどした場合に大腿二頭筋、大腿四頭筋、ハムストリングスといった太ももの筋肉に、肉離れを起こすことがあります。 また、ランニングをはじめ、陸上競技や、サッカー、テニス、バレーボール、ラグビー、その他で起こりやすいのが、ふくらはぎの腓腹筋の肉離れです。 これは、それらスポーツでは瞬発的な動きが必要で、急激な筋肉の収縮が起こりやすいからです。スポーツをしているとこのような肉離れといたスポーツ障害を引き起こすことがあります。 肉離れという言葉自体は、よく耳にされると思われますが、いったん症状が起こると激しい痛みが生じ、ひどい場合は歩行が困難になる場合もあるので簡単に見過ぎるのは誤りです。 同様に注意したいのは、多少、痛みが残っていても肉離れを軽く見ているため、或いは早く復帰したいと焦るあまり、無理をすることで、かえって全治までの期間が長くなることです。 肉離れは「繰り返す」と言われます。そのため、一度肉離れを起こしたら再発しないように対策することが必要です。肉離れは筋肉のケガなので、肉離れが起こった場合、万一のために病院など、医療機関を早めに受診されることをおススメします。 肉離れの予防はスポーツ前後のストレッチ 肉離れは、筋肉の疲労や柔軟性の低下が原因となり起こります。そのため、スポーツを行う前後には、その準備としてストレッチなどで筋肉をほぐすことがとても重要です。 筋肉を動かす準備をせずに、筋肉に急激な負荷をかけることは、肉離れのリスクを高めることになるからです。その間スポーツができないことで焦ることがあるかもしれません。 しかし、しっかり治らないままに早期復帰をすると、再発のリスクが高くなってしまうため、できる限り医療機関を受診して助言を得るようにするべきです。 スポーツ医療では発生から復帰までの間、リハビリテーションに力を入れることが多くあります。肉離れが発生した直後には安静が必要ですが、断裂した筋繊維が修復し痛みがなくなってくると、筋肉が硬くならないように動かしていく必要があるからです。 しかし、いきなり走ったり負荷をかけ過ぎると、肉離れが再発したり、痛みの出現につながるため、まずは痛みがないことを確認しながらストレッチから始めるようにしましょう。 このストレッチも無理な動きをしないように注意しなければなりません。ストレッチをすることで、スポーツを休んでいる間の筋肉低下の予防にもなります。 スポーツ復帰してからは、スポーツをする前後にストレッチを習慣化するようにしてください。ストレッチで筋肉の柔軟性を高めることで肉離れの再発予防になります。 肉離れの全治、回復までの期間 肉離れの主な治療は安静と固定です。筋繊維が損傷または、断裂した部分が出血し、内出血や圧痛が生じることがあります。また血腫という血の塊ができることもあり、この場合は血腫を吸引して取り除く治療も必要です。 スポーツ医療では、スポーツをする人を対象としており、早期の全治を目指して、早期に復帰を遂げたいという思いを持つ選手が多くいます。筋繊維が損傷した部位に しかし、これだけでは診断はできないため病院で超音波検査(エコー検査)やMRI検査を行い、筋繊維が断裂した部位の特定や重症度を判断します。この重症度によって全治までの期間を予測していきます。 軽度の肉離れは 1 ~ 2 週間で復帰できる場合もありますが、多くの場合は、全治までに 3 ~ 5 週間かかると思った方がいいでしょう。焦って復帰しては再発のリスクが高まります。 肉離れは筋肉が傷ついた状態です。断裂してしまった筋繊維を固定して修復させる必要があるため、安全性と選手の将来の可能性を鑑みて全治までの期間がある程度長くなってしまうのです。 肉離れが重症の場合は全治までに2~ 3 か月必要な場合もあり、こうなると選手にとっては非常に長く感じることでしょう。こうした肉離れは、スポーツ選手だけでなく、小中学生などの若者、また、スポーツをしない中高年でも起こることがあります。 肉離れの治療 肉離れが発生すると、まず激しい痛みを感じます。肉離れは筋肉の損傷なので、まずは安静にする必要があります。損傷した筋肉を無理に動かしたり負荷をかけたりしないように、包帯で固定したり、重症の場合はギプス固定をすることもあります。 筋繊維が断裂した部分が出血し、血腫という血の塊ができることもあります。その場合は血腫を吸引する処置を行う必要があります。 また、肉離れが発生した直後に重要なのが冷却です。筋繊維が断裂するとその部分に炎症が起こるからです。 数日間は湿布を貼って患部を冷やします。早目に湿布を貼るなどの患部を冷却する処置をすることで、治癒までの期間が変わってくることがあります。 肉離れの治療に湿布は有効ですが、湿布だけでは肉離れを治すことはできません。安静や、必要なら固定をして筋繊維の断裂を修復させながら、内服薬や湿布で痛みをコントロールする場合もあります。 スポーツ選手にとってこの期間が長くなると選手生命の危機を覚えるそうです。現在は、「再生医療」という先端医療があり、修復速度をを早めることが可能になってきました。 これは自身の細胞から採取した幹細胞を用いて損傷した組織を修復させる治療法で、副作用が少なく、安全で、治療期間を短縮できるというメリットがあるため、スポーツ医療として是非チェックしておきたいものです。。 スポーツ医療で注目される肉離れですが、スポーツをしない人にも起こります。 それは筋肉の疲労や柔軟性の低下によるものです。そのような状態の場合、筋肉を柔軟に動かすことができず、階段の上り下りのような日常生活のささいな動きでも肉離れが起こることがあります。 スポーツ選手同様、肉離れを起こしたら湿布で患部を冷やした上、当初は安静にして、治り始めたら、様子を見ながらストレッチなどの軽い動きから始めるようにしましょう。 まとめ・肉離れとは?治療法と再発予防について|スポーツ医療 「肉離れ」は、筋繊維の断裂で、筋肉が急激に収縮することで起こります。肉離れは全治まで1~2週間という場合が多く見られますが、重症の場合は2~3か月必要なこともあるので油断は禁物です。 肉離れは、比較的なじみのある症状だけに簡単にとらえがちですが、再発する可能性がありるため、注意が必要です。肉離れが起こったら症状に関わらず、まずは患部を冷やすことに努めましょう。 肉離れの主な治療法は、当初の冷却と安静、そして固定です。近年は、スポーツ選手のためのに「スポーツ医療」という分野も発達してまいりました。そして注目の先端医療である「再生医療」という方法も注目されています。 効果的に一日も早く全治を目指すためにも肉離れを起こしてしまったときには、まず病院等にて専門医にご相談ください。 以上、スポーツ治療における「肉離れの治療と再発予防について」記させて頂きました。参考にしていただければ幸いです。 No.S055 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ医療、(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手の選手生命、パフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.15 -
- スポーツ医療
- 膝蓋軟骨軟化症
- ひざ
ランナー膝のひとつ(膝蓋軟骨軟化症)とは、その原因、症状と治療法 ランニングなどの競技で膝を過剰に酷使した際に起こる障害を総称してランナー膝と呼んでいますが、膝蓋骨の裏側にある軟骨に異常が出現する「膝蓋軟骨軟化症」もランナー膝のひとつと考えられています。 この疾患は、特に若年層の女性に多く発症するひざ痛を生じさせる病気として周知されており、膝蓋骨の裏側にある軟骨部分に変形や破壊などの損傷変化が引き起こされることで膝関節部に強い疼痛症状を自覚することが多いです。 今回は、若い女性ランナーに多いと言われている膝蓋軟骨軟化症という病気の原因、症状、検査、治療などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 ・膝蓋軟骨軟化症:若い女性ランナーに多く見られる ・ランニング医など膝を酷使した場合に起こるランナー膝のひとつ ・膝蓋軟骨軟化症の原因 そもそも膝蓋軟骨とは、膝の皿である膝蓋骨のうしろ側に付着している軟骨成分のことを指しており、通常であれば大腿骨と関節部を構成しています。 この軟骨組織の存在で通常であれば滑らかに関節面を可動するはずが、太ももの筋肉の一つである大腿四頭筋が筋力不足になっている、あるいは関節面の柔軟性低下などによって関節接合部が摩耗されてしまうと、ゴリゴリと膝部から音が鳴ることもあります。 それ以外にも発症要因としては、膝蓋骨と大腿骨の関節面における適合性が悪い構造的な問題も考えられていますが、詳細な発症メカニズムはいまだに明確にされておらず、はっきりとした結論は知られていません。 成人においては、特にビタミンD成分が欠乏すると、膝蓋部のみならず全身の軟骨軟化症に繋がると考えられており、あわせて骨密度の低下が引き起こされる懸念もあります。 本疾患は主に10代~20代の比較的若い女性に発症することが知られていて、その原因として、若年層の女性が普段ハイヒールなど通常よりもヒールの高い靴を履く習慣があるため、膝への負担が男性よりも大きくなると考えられています。 さらに、ハイヒール自体が外反母趾を発症させる要因として捉えられており、外反母趾はX脚に発展しやすいのみならず、膝蓋軟骨軟化症に罹患しやすいといった疾患関連性が指摘されています。 ・膝蓋軟骨軟化症の症状 膝蓋軟骨軟化症という病気においては、膝関節の周囲部や、その裏側、後ろ面に鈍い痛みを覚えることが往々にしてありますが、一般的には膝関節の腫れや熱感などは認められません。 特に、膝関節を屈伸した際に強度の痛みが起こると言われているため、階段の昇降時や長時間、座位の姿勢を保っている場合、ランニングするときや、急に椅子から立ち上がる際などに症状が悪化しやすいと考えられます。 特に、走っているときに膝蓋骨の裏側に痛み症状を覚えた際には本疾患が発症した疑いが持たれます。ランニングする際に膝部分を何度も屈曲する動作を行うことで膝蓋骨裏側に存在する軟骨成分と大腿骨下端部が摩擦し合って関節面が傷ついていることが考えられます。 ・膝蓋軟骨軟化症の検査 膝蓋軟骨軟化症では、通常の専門医による問診、視診、触診などの診察のみならず、MRI検査を始めとする画像検査が行われます。 まずは診察することでどのような症状がどういった時に出現しやすいのか、あるいはいつから症状を自覚しているのかなどの臨床経過を確認する作業から開始します。 併せて、膝関節部に腫れなどといった所見はあるか、押さえて痛い部分は存在するか、膝をどのように可動させた際に疼痛症状が起こるかなどを順番に評価していきます。 MRI検査では、膝蓋骨の裏側に位置している軟骨部にどのような異常所見を認めるかを確認して、本疾患において特徴的な軟骨変形や軟骨破壊などの病変部があるかどうかを調査します。 膝蓋軟骨軟化症と類似している疾患としては膝蓋骨後面欠損、離断性骨軟骨炎などが挙げられますので、MRI画像所見やこれまでに外傷を負ったか否かなどを詳細に評価して適切な診断に繋げていきます。 ・膝蓋軟骨軟化症の治療 本疾患では、主に保存療法、理学療法、薬物療法、手術療法などが実施されます。 初期段階における疼痛症状に対しては、患部を冷却してアイシングする、あるいは鎮痛薬を服薬する、湿布剤を貼付するといった対策が実践されます。 また、膝裏部に存在する軟骨が損傷を受けていますので直接的に病変部位を触りにくいと思われますが、リハビリ加療など理学療法を実行することによって大腿四頭筋の柔軟性を高めて膝蓋軟骨関節部の摩擦を軽減させることで疼痛症状を緩和させることが出来ます。 万が一にも、症状が長期に渡り継続する場合、または再発を繰り返して認める際には関節鏡視下に関節軟骨部の凹凸(おうとつ)を平らに整える処置を行うために根治的な手術を受けることを検討する余地があります。 ・保存療法 ・理学療法 ・薬物療法 ・手術療法 まとめ・ランナー膝のひとつ(膝蓋軟骨軟化症)とは、その原因、症状と治療法 今回は若い女性ランナーに多く見受けられるランナー膝の一種、膝蓋軟骨軟化症とはいったいどのような病気なのか、また本疾患の原因、症状、検査、治療などについて解説しました。 昨今では、健康意識が向上してウォーキングやランニングを日常的に取り入れている人も多いので、膝を痛めて困っている方もいらっしゃるかもしれません。 この病気は、ランニングやジョギングなどのスポーツ動作を繰り返すことで膝部分に過度の負担がかかる場合に発症しやすいと言われています。 ほとんどのケースでは保存的治療により良好な経過を得ることができますが、難治性の場合などでは手術治療が考慮されるパターンもありますので、膝蓋軟骨軟化症と診断された際には最寄りの整形外科など専門医療機関を受診されることをお勧めします。 以上、膝蓋骨の裏側にある軟骨部分に変形や破壊などの損傷変化が引き起こされる膝蓋軟骨軟化症について、その原因、症状と治療法について記させて頂きました。今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S051 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.11 -
- ひざ
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- スポーツ医療
半月板損傷!そもそも半月板とは?膝が痛むその原因、検査と治療法 半月板というのは膝関節に位置する大腿骨と脛骨間に存在する線維軟骨を意味します。一般的には、膝部分の内側と外側のそれぞれに存在し、主には膝にかかる荷重や負担を分散して物理的な衝撃を吸収する役割を有しています。 半月板損傷という病気は、膝関節内にある半月板に亀裂が生じる、あるいは組織が欠損する状態であり、若年者から高齢者まで発症し、慢性化すると変形性膝関節症を引き起こすことが懸念される病気です。本疾患に罹患した際には進行しないように早期に医療機関を受診し、適切に治療することが重要となります。 今回は、そのような半月板損傷という病気の原因、症状、検査、治療などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 1.半月板損傷、膝が痛む原因 近年、積極的にスポーツに取り組む人とそうでない人の二極化傾向が指摘される背景があり、通常の運動不足に伴う運動能力の低下のみならず、過度なエクササイズによって「スポーツ傷害」を引き起こすかねない、どちらにもリスクが存在するようになりました。 一般的に、スポーツや運動による膝の外傷には、大きく分類すると骨折、靱帯損傷、半月板損傷、軟骨損傷がメジャーな疾患となっていますが、このうち最も頻繁にみられるのが半月板損傷と言っても過言ではありません。 また、半月板損傷は運動時の怪我から発症する場合だけでなく、加齢により傷つきやすくなっている半月板組織に僅かな外力が加重されて損傷し変性断裂が引き起こされるケースが存在します。 外傷による半月板損傷では、急なターンなどスポーツ中に膝部を傷めて膝前十字靱帯の断裂に合併して引き起こされることもありますし、特に外側半月板損傷は内側に比べて発症率は少ないと言われているものの若年者でよく罹患すると考えられています。 外傷とはまったく関係なく発症するタイプには生まれつき半月組織が大きく分厚いのが特徴的な円板状半月の症例で半月板損傷を認める場合もあります。 2.半月板損傷の症状 半月板が仮に損傷すると膝部に強い痛みが生じて運動する際や膝を屈曲伸展するときに膝に引っかかり感を覚えることがありますし、症状が進行した場合には膝に関節液が貯留して急激に膝が曲げ伸ばしできなくなるロッキングという状態に陥ります。 万が一、半月板が損傷すると激痛のために歩行できなくなることも経験されますし、関節の内部で強い炎症を惹起して水が溜まって膝部分が顕著に腫れあがる、あるいは膝内部の関節区域で出血が引き起こされて血液が貯留することも考えられます。 3.半月板損傷の検査 仮に本疾患が疑われる際には医療機関で整形外科の医師などが用手的に半月板部分に外的ストレスをかけることで、痛み症状などを再現させる診察が施行されることも多いです。 理学的所見などに基づいて積極的に半月板損傷を疑うときには、追加で半月板損傷に伴う関節症変化の有無を評価できるレントゲン検査を始めとする画像検査が実践されます。 また、核磁気共鳴装置を用いて行うMRI検査の場合は、半月板そのものが撮影されないレントゲン写真とは異なって、半月板自体を写し出せるので半月板損傷の診断率が非常に高く有用であると考えられています。 MRI検査を施行することによって半月板に縦断裂や水平断裂、横断裂、弁状断裂を始めとしてどのような組織損傷が起こっているか把握することができますし、半月板の変性状態を推察することにも貢献します。 4.半月板損傷の治療 半月板損傷に対する主な治療策としては、大まかに言うと保存治療と手術療法があります。保存療法とは、一般的に安静を保持する、抗炎症薬などの薬物を内服する、リハビリテーションなどを行うことを意味します。 仮に、これらの保存療法を実践してみても、膝部の痛み、引っかかり感、ロッキングなどの症状が継続して認められる場合には手術療法を検討します。 手術療法には、半月板のなかで損傷した部分を切り取る切除術、ならびに損傷した部分を上手い具合に縫い合わせる縫合術のふたつのタイプが挙げられ、通常では関節鏡を駆使した鏡視下手術を施行することが主流です。 実際には、半月板手術例のうち約9割は切除術が選択されていますが、この方法では膝関節の衝撃を吸収して膝関節の安定性を保持する役割を持つ半月板の機能そのものが失われるため、将来的に変形性膝関節症へ進行するリスクが高率であることが指摘されています。 したがって、特に近年では可能な限り縫合術を選んで半月板を出来る限り温存するという考え方がメジャーとなっています。 まとめ・半月板損傷!そもそも半月板とは?膝が痛むその原因、検査と治療法 今回は半月板損傷とはいったいどのような病気なのか、また本疾患の原因、症状、検査、治療などについて詳しく解説してきました。 半月板という組織は膝関節の内部に存在している軟骨様の構造物であり、内側と外側に各々ひとつずつあり、主な役割としては関節に加わる体重の負荷を分散させて関節部を安定に保つ働きを担っています。 半月板には、軟骨部に荷重される物理的なストレスを軽減させる重要な役割があるために現在では手術療法を選択した際には出来る限り半月板を温存して残す治療方法が重要視されています。 以上、半月板損傷とは、その原因と症状、治療法についてご説明させていただきました。今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S049 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療の幹細胞治療で半月版損傷を治療する 半月板損傷の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せず、入院も不要で症状をする
2022.03.10 -
- ひざ
- オスグッドシュラッター病
- スポーツ医療
オスグッド・シュラッター病は成長期の少年に発症しやすいスポーツ障害!痛む膝の治療法 オスグッド・シュラッター病という病気をご存知でしょうか? 普段あまり聞き慣れないかも病名ですが、脛骨結節部という膝の皿(膝蓋骨)の下に存在している骨が飛び出してくることで膝痛が引き起こされる病気です。 この疾患は、患部が赤く腫れあがる、あるいは熱感を認めることもあって、傾向的には成長期に該当する少年に発症しやすいスポーツ障害のひとつと言われています。 特に、サッカーや陸上、バスケットボールなどの競技において、跳ねる行為やボールを蹴る動作を頻繁に必要とされる場合によく遭遇する病気と考えられています。 今回は、そのようなオスグッド・シュラッター病という病気の原因、症状、検査、治療などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 オスグッド・シュラッター病の「原因」 オスグッド・シュラッター病が引き起こされる原因は、膝を伸ばす力が繰り返されることによって脛骨結節部分が引っ張られて成長期に認められる膝軟骨部が剥離することと言われています。 オスグッド-シュラッター病という疾患は大腿四頭筋の過剰使用によるスポーツ障害の一種とされており、骨が軟骨から急激に成長する時期である概ね10歳から15歳頃の成長期における男児に多い病気です。 もともと、膝の曲げ伸ばし運動は太ももにある大腿四頭筋という筋肉によって常日頃から行われており、この筋肉が膝蓋腱を介して脛骨結節を引っ張っているため、跳躍運動やボールなどを蹴る動作で脛骨結節に過剰な負荷がかかると本疾患を発症しやすいと言えます。 一般的には、成長期が過ぎてしまえば自然と症状が軽快する病気であり、疼痛症状が改善すればスポーツや運動行為を再開することが出来ます。 オスグッド・シュラッター病の「症状」 オスグッド・シュラッター病における主な症状としては、「脛骨結節部の隆起と痛みや腫れ、あるいは患部が熱感」を持つことなどが挙げられます。 通常であれば、それらの症状は片脚にのみ認められることが多く、痛み症状は膝を動かすときに出現しやすく、休息している際には緩和されていることが知られています。 成長期においては、骨成長スピードに周囲の筋肉が追いつけずにアンバランスになっている状態であり、筋肉自体に強度と柔軟性が乏しいためにスポーツなどを過度に実践すると、大腿四頭筋から繋がっている脛骨粗面部に負荷がかかりやすくなります。 その結果として、膝軟骨が一部剥離するなど物理的な刺激が生じて、かつ成長期の脛骨結節部は通常よりも柔らかい構造であるがゆえに外的刺激がより過重されて、患部の熱感や腫脹などに伴って疼痛症状を引き起こされやすいと考えられます。 オスグッド・シュラッター病の「検査」 オスグッド・シュラッター病の診断は、基本的には医師による診察と症状、あるいは画像検査などに基づいて評価されます。 この疾患では特徴的な症状を捉えると同時に、患部の隆起所見や圧痛の有無などによって診断されますし、より確実な診断に繋げるためにX線レントゲン検査を行って脛骨結節の剥離があるかどうかを確認する作業が行われます。 膝部分のX線検査を施行することで、脛骨粗面の腫脹の有無、あるいは剥離破片が形成されているか否かも判断できます。また、必要に応じて超音波検査、CT検査やMRI検査などの画像的評価を追加して実施することも往々にしてあります。 オスグッド・シュラッター病の「治療」 オスグッド・シュラッター病は成長期に一時的に認められる病気とされており、通常では成長を重ねると共に自然と治癒傾向を示します。 この病気に伴う症状は通常であれば数週間から数カ月後の間に消失することが多く、激しい運動ならびに深く膝を屈伸する動作などを避けると症状の軽減に繋がります。 本疾患による症状の悪化を回避するために、大腿四頭筋のストレッチング、あるいは患部のアイシングなどを実践すると同時に、万が一疼痛症状がひどい際には鎮痛剤の服用や湿布を貼付することも考えられます。 症状が改善されればスポーツ活動や運動動作を再開することも可能ですが、スポーツする前後に出来る限りストレッチングやアイスマッサージをする、そして膝にベルトなど固定具を装着するなどの対策を講じると有用ですので心がけましょう。 まとめ・オスグッド・シュラッター病は成長期の少年に発症しやすいスポーツ障害!痛む膝の治療法 今回はオスグッド・シュラッター病とはいったいどのような病気なのか、また本疾患の原因、症状、検査、治療などについて詳しく解説してきました。 オスグッド・シュラッター病とは、主に成長期の子どもたちが膝前下部に痛みや熱感を自覚する疾患であり、激しい運動を繰り返すことで発症しやすいと考えられています。 スポーツ活動中に万が一にも膝部に疼痛を認める際には我慢せずに安静にして休息することが重要であり、症状改善後には運動前後にウォーミングアップやクーリングダウンを確実に実践することで、スポーツ障害の発生を回避できると考えられます。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S048 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ外傷(オスグッド・シュラッター病、筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.10 -
- 手
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腱鞘炎で箸も持てない!そんな悩みを解消!原因と治療、予防法について 腱鞘炎の痛みで「お箸も持てない」「ドアノブもつかめない」などと、悩んでいる人はいませんか? 腱鞘炎になると手首や手の指に激痛が走り、日常生活にも支障をきたすようになります。「このまま痛みが続いたらどうしよう」「治らないとかも」と心配になりますよね。 しかし、腱鞘炎は適切に対応すれば、早期の回復も可能です。ここでは腱鞘炎の種類と症状、原因と予防について解説します。 腱鞘炎の種類と原因 腱鞘炎は、指を動かし過ぎるために、腱の通り道にあるトンネル状の腱鞘が炎症のために厚くなることや、腱鞘の中を通っているロープ状の腱が腫れることで起きます。 以前は楽器の演奏者、ラケットを使う競技、テニスやバドミントン、ゴルフなどのスポーツ選手、作家や重い鍋を振る料理人など一部の人に多く現れるため、職業病とされていました。 ただ、最近では、パソコンやスマホで手指を長時間使用することから一般の人にも増えています。 その他、スーパーなどでレジの操作、子供の抱きおろしなど育児でも起こったり、編み物を頻繁にするなど普段手指をよく使うなど、手を頻繁に使う人に起こりやすい傾向があります。 またホルモン分泌の変化に伴い、妊婦や更年期の女性にもよく見られます。糖尿病やリウマチの患者にも多く生じています。腱鞘炎は痛みが生じるので仕事や日常生活にも支障をきたします。 腱鞘炎の原因(頻繁に繰り返される動作により起こる) ・スポーツ選手:ラケット競技の多い(テニス、バドミントン、ゴルフほか) ・事務:パソコンをはじめとしたキーボードを頻繁に使う職務 ・料理人:中華等で重い鍋を繰り返し使う職務 ・育児:乳児の抱きおろしなど ・その他:作家(文筆業)、一般人(スマホを頻繁に使う) ・ホルモンの関係で妊婦や更年期の女性に多い ・糖尿病やリウマチへの罹患 腱鞘炎の種類 腱鞘炎は、2種類に分けられます。一つは、手首に症状が現れる「ドケルバン病」と言われるものと、指に症状が現れる「ばね指」というものです。 ドケルバン病は、狭窄性腱鞘炎といい、親指側の手首の腫れや力が入らなくなるという症状が主な特徴です。これは指と手首を繋いでいる2本の腱と、その2本の腱を覆ってトンネル状になっている腱鞘といわれる部分が炎症を起こして痛みが生じます。 また圧倒的に女性に多いという特徴があります。 ばね指は、指に現れる腱鞘炎です。指を曲げたり、伸ばす場合に痛みが出たり、動きにくくなるなどの症状が起こります。これは指の手のひら側にある腱をカバーするように覆っているトンネル状の腱鞘と呼ばれる部分に炎症が起こる病気です。 腱鞘炎が発症すると指を上手く動かせなくなります。症状が進むと急に指が伸びるようなバネ現象が起こる特徴があるため、ばね指と言われています。 いずれの症状も仕事や日常の動作が関係しているので、慢性化することもあり、中には腱鞘炎が原因で、やむを得ず転職するはめになったという方もいます。 手首や指に痛みや違和感を感じたら放置せずに、安静にし、それでも痛みなどが残る場合は、軽いうちに治すよう整形外科等の病院、医療機関を受診してください。 腱鞘炎の種類 ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎) 手首に起こる、女性に多い ばね指 指に起こる 腱鞘炎の治療法 腱鞘炎の原因は手の使いすぎですから、軽症であれば一定期間手の使用を控えるようにしていれば治ることがあります。手に違和感がある場合は、湿布で冷やすことや、テーピングにも効果が期待できます。 1)保存的治療 まずは、親指や手首を休ませることです。添え木を用いて手首を固定し、安静にする場合もあります。湿布で冷やしたり、痛み止め、テーピング、痛み止めの内服などの使用が保存療法的な主な治療法です 2)ステロイド注射トリアムシノロン 投薬治療をしても改善されない場合は、ステロイドの注射をする方法もあります。 3)手術 腱鞘炎の再発を繰り返し、改善がみられない場合は、手術という選択が必要になる場合もあります。手術は、局所麻酔による日帰り手術が可能です。 手指をよく使う腱鞘炎のリスクが高い職種の方は、日頃から手や指のストレッチや、マッサージなどのケアをしっかり行い予防を行うことが大切でしょう。 腱鞘炎の予防策 腱鞘炎の予防は、日頃からのケアが大事です。腱鞘炎は、手の使い過ぎだけでなく、血行不足でも生じることがあります。その予防策について以下を参照してください。 ・手と手首のストレッチをして血流を良くしましょう > 仕事の前、合間、後に行うことをお勧めします ・手や指、手首に違和感や痛みがある > 熱めのお湯と冷水を交互に30秒ずつ5セット、あたため、冷却を繰り返す ・スマートフォンの操作は、両手で操作する > 片手操作は、親指と手首に負担がかかります 普段から長時間同じ作業を続けないように意識しましょう。 ときどき休憩を挟んで手を休ませることが必要です。作業の前後にストレッチを取り入れるのも有効です。パソコンであれば、強くキーボードを叩かないなどの工夫をしてみることも興亜があります。 そして、症状が軽いうちにケアをして、痛みを長引かせないことが大切です。 痛みが続くようなら病院等、医療機関を受診してください。症状に合わせて塗り薬を使う、炎症を抑えるステロイド薬を注射をする、またリハビリを行うなどの治療方法があります。 それでも改善が見られない場合は手術になることもあります。また、近年は、スポーツ医療の分野でも話題になっている「再生医療」で治療するという方法を検討することもできます。 まとめ・腱鞘炎で箸も持てない!そんな悩みを解消!原因と治療、予防法について 腱鞘炎は、スポーツをはじめとして手や指を使う職業、そして育児など子供の抱きおろしでも発症します。 一度発症すると治るまでに時間がかかってしまう場合がありますが、治らない疾患ではありません。悪化する前に早めに対応してください。また、手を酷使しないように、定期的に休憩をして手を休ませるなどして予防に努めましょう。 腱鞘炎は手や指を頻繁に使う仕事に起こりやすい症状です。腱鞘炎というものを意識して日頃から予防をすれば避けることができます。治療法については、保存的治療、注射、手術の3つの治療を説明しました。 近年は再生医療による治療を選択することもできます。手術以外の選択肢として、この治療法は、患者さんの負担を抑えることができ、副作用も少ないため、注目を集めている治療方法のひとつです。 慢性化した腱鞘炎の治療としては、薬物療法やリハビリテーション、手術、再生医療など、さまざまな方法があります。痛みや違和感が長く続く場合は、整形外科をはじめ専門の医療機関で相談してください。 以上、腱鞘炎とは?お箸も持てない!そんなお悩みを解決!治療と予防法について、説明させていただきました。この記事が参考になれば幸いです。 No.S047 監修:医師 加藤 秀一
2022.03.07 -
- スポーツ医療
筋断裂に注意したい「ふくらはぎ」と、そのリハビリについて 筋断裂はいろいろな部位で起こる可能性がありますが、なかでも起こりやすい部位の「ふくらはぎ」です。筋断裂とは、スポーツなどで急に強い力や、無理な力がかかった際に、筋肉が耐えられなくなって筋線維が損傷、避けたり、破れたりして断裂することです。 筋線維のうち、一部など範囲が限定的な断裂の場合は部分断裂といい「肉離れ」とも言われます。筋断裂が起こると、たとえ部分断裂であってもそれ以上の運動はもちろん動けなくなってり歩くことも困難になります。 ふくらはぎの筋肉は、歩行や走る場合、立っている時の姿勢の安定などに関わります.また、血液を心臓へ戻す役割を果たすことから第2の心臓とも言われている筋肉なのです。そのため、筋断裂を起こすと生活に大きな支障が出てしまいかねません。 今回は、ふくらはぎの筋断裂の症状や原因、再発防止や予防法について紹介してまいります。 ふくらはぎの筋断裂の症状 ふくらはぎの筋断裂の主な症状は、ふくらはぎの痛みや内出血です。ふくらはぎの一部分に凹みが出てくる場合もあります。ふくらはぎの痛みは度合いによって異なります。 安静時や、軽く歩く程度なら問題ないものの、走るときだけ痛いという場合もあれば、歩くだけでも痛い場合もあります。また、重度の場合は安静にしていても痛みを感じる場合があります。 ふくらはぎの筋断裂の主な原因 ふくらはぎの筋断裂の主な原因は、筋力の低下や柔軟性の低下、疲労の蓄積などが挙げられます。 スポーツなど激しい動きの有無にかかわらず、事前にウォーミングアップ目的のストレッチを行ったり、終了時にはクールダウンのスチレッチを十分に行うことが大切です。このような準備が不足すると筋断裂の原因につながります。 また、筋力のバランスや身体の動かし方が悪いことも筋断裂が起こりやすくなる原因になります。そのため、スポーツをしている人はフォームやトレーニング方法を見直すことも必要です。 これはスポーツをしていない人にも当てはまり、普段の姿勢などを見直してみるてはいかがでしょうか。 ふくらはぎの筋断裂の再発防止や予防法 ふくらはぎが筋断裂を起こすと痛みや動きの制限などで悩まされることになるので、再発防止や予防が必要になりますす。特に、スポーツに取り組んでいる人などは、完全に回復しないまま早期復帰したために、再発してしまうことがあるので無理や大丈夫との過信は禁物です。 ふくらはぎの筋断裂の再発防止や予防に効果的なのはストレッチですが、筋肉は色々な方向に向かって付いているため、ストレッチする際は一つの方向にだけ伸ばすのではなく、いろいろな方向へ伸ばしたり、捻りや回転などを加える意識を持ってください。ストレッチは、複数の動きを取り入れましょう。 筋断裂の再発防止と予防 ・激しい動きやスポーツには事前のウォーミングアップと事後のクールダウンを行う ・身体のバランスを整える、正しい姿勢を知る ・身体の柔軟性を高めるストレッチは有効 ・ストレッチは一方向だけでなく、筋肉に合わせた色々な方向へのストレッチを行う 筋断裂が起きたとき、回復に欠かせないのがリハビリです 何故リハビリが必要なのか?どのようなリハビリが必要か?という疑問や質問がある人のために、筋断裂の治療でリハビリをおこなう理由や、リハビリを始めるタイミング、どのようなリハビリをおこなうのかについてご紹介しましょう。 筋断裂の治療でリハビリをおこなう理由 筋断裂の治療でリハビリをおこなう主な目的は、柔軟性と筋力の回復です。筋断裂が起きて筋組織が回復していくなかで、患部とその周囲は徐々に硬くなっていきます。 幹部や周囲が硬くなったまま、これまで通り部位を使用していると、思うように動かすことができなかったり、大きな負荷がかかって筋断裂が再発する危険性もあります。 また、筋断裂が起こると動かせる範囲も制限され、動かせたとしても安静にしておく必要があるため、どうしても筋力が低下してしまいます。 そのため、患部をはじめとした州にも硬くなった部分の柔軟性を改善していくと共に、低下した筋力も改善していかねばなりません。このように、柔軟性と筋力を回復させ、発症前と同じような動きができるよう、そして、再発防止のためにリハビリはとても重要なのです。 筋断裂のリハビリを始めるタイミング 筋断裂のリハビリは、筋断裂を起こしてからいきなり始めるわけではありません。 なぜなら筋断裂が起きると断裂した部分は炎症を起こします。そのため、炎症を起こしている間は安静にして、患部を冷やしたり、圧迫し、血腫が大きくなるのを防ぐなどして、痛みや腫れが軽減していくのを待つことが必要です。 その後、腫れが治まり、痛みが治まるのを待って、ゆっくりと患部を動かしてみます。痛みなくリハビリをおこなえる状態であれば、そこからリハビリを開始することになります。 筋断裂のリハビリ リハビリの内容は医療機関や指導者によって異なりますが、ストレッチと筋力トレーニングが基本となります。ストレッチは、患部が軽く伸びるくらいの強さで、時間をかけて(20秒から30秒くらい)ゆっくりと伸ばしていきます。それを3セットから5セットくらい行います。 筋力トレーニングは、筋力低下を改善するという目的の他にも、患部に刺激を与えることで回復が早まることも期待できます。例えば、筋断裂が起きやすい太ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)の筋力トレーニングでは、うつぶせになって足を伸ばした状態で上へ挙げるヒップエクステンションというトレーニングがよくおこなわれます。 このようにリハビリ目的での筋肉トレーニングは有効ですが、こうしたトレーニングは過度に行うべきではなく、その際は専門家の指導の下、行うことが再発の防止につながります。 まとめ・筋断裂が起こりやすい「ふくらはぎ」とリハビリについて ふくらはぎの筋断裂の症状や主な原因、再発防止や予防法について紹介しました。ふくらはぎの筋断裂を起こすと痛みや動きの制限で悩まされることになります。 再発したり、慢性化したりしないようにストレッチなどでウォーミングアップやクールダウンをしっかりおこなうようしましょう。また、もし筋断裂を起こしてしまったときは、適切な治療を受けることが必要です。 筋断裂の治療でおこなわれるリハビリは、筋断裂が回復するまでしっかりとリハビリをおこなうことは大切ですが、回復して、筋断裂を起こす前と同じような生活を送れるようになった場合も、再発防止のため、ストレッチなどを行うなど発症予防をしましょう。 以上、筋断裂に注意したい「ふくらはぎ」と、そのリハビリについて記してまいりました。 最近は、スポーツ医療の分野で、「再生医療」に注目が集まっています。この再生医療についても詳細を知っておき、万一の筋断裂を治療する選択肢の1つとして検討してみられてはいかがでしょうか。 No.S045 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.03 -
- 肘
- スポーツ医療
野球肘を予防する!ストレッチで選手生命を伸ばす スポーツをする上で気を付けたいのが何といってもケガや故障です。 今回ご説明する「野球肘」は少年野球の選手のうち5人に1人が発症するとされるスポーツ障害の一種です。野球肘は、ボールを投げる動作を繰り返すことで起こります。 特に子供さんが野球チームに入り、ピッチャーの才能があることが分かっても手放しで喜んではいけません。ピッチング、投球のしずぎで肘の故障を起こして結果的に野球を断念…といこともあり得るからです。 せっかくの才能をつぶさないで伸ばしてあげるためにも野球肘には十分注意してあげなければなりません。子供さんからの肘が痛いというサインを見逃さないでください。 日本は、とかく根性論に走りがちです。根性は大切ですが万一、症状が悪化してしまっては本末転倒、選手生命を奪いかねません。そこで野球肘の原因や予防方法を知って是非、選手生命を伸ばす方向で取り組んで頂ければと思うのです。 野球肘とは 野球肘とは、ピッチングなど、ボールを投球する動作が原因で起こる「肘関節の損傷をまとめた呼び方」です。 野球肘|起こる原因 野球肘は、肘に反復して過度な負担がかかることが原因で発症します。野球のボールを投げる動作は、腕を大きく振りかぶった状態から肘の機能を使って力いっぱい投げおろすため、肘への負担が大きな動作となります。この動作を繰り返すことで肘の靱帯や軟骨に大きな負担がかかってしまうのです。 野球肘|種類 野球肘は肘関節のさまざまな部位で起こりますが、痛めた部分によって大きく3種類に分けられます。 野球肘が起こる部位 ・肘の内側の骨である橈骨側の靱帯や軟骨を損傷してしまうもの ・肘の外側の骨である尺骨側の軟骨を損傷してしまうもの ・尺骨自体を損傷してしまうもの 球を投げる動作を分解 肘の内側には骨や靱帯が引き離される方向に力がかかりますが、この引っ張られる力は、関節を痛めやすいため、橈骨側の靭帯は野球肘の起こりやすい部位です。 一方、肘の外側と後ろ側には骨がぶつかり合う方向で力がかかります。そのため、骨自体に損傷を与えてしまうことで発症すると重症化しやすく、注意が必要になります。 野球肘の症状と重症化を防ぐ予防法 野球肘の発症後、その治療は、何よりも安静が第一です。短くても数週間、長いと数年、野球肘と付き合いが続く可能性があります。そのためにも、症状や違和感を感じたら、少しぐらいと我慢してはいけません。 軽症のうちから医療機関を受診し、指導を受けて重症化を防ぐことが必要です。 野球肘|症状 野球肘は、ボールを投げるときの痛み、違和感が代表的な症状です。痛みについては、投げるときのみの場合と、投げた後しばらく痛む場合がありますが、軽症の場合なら、安静にすることで痛みは引きます。 これは良いことのようですが実は、この痛みが引いてしまうこと困りものと言えるのです。 なぜなら、少々痛くても休んたら大丈夫と勘違いしてしまうからです。その結果、治療せず放置し、痛みが継続的に出るようになり、こうなると重症化して治りにくくなります。 無理は禁物ということですが、この部分は本人だけでなく、周りの意識も非常に重要です。肘が痛いという言葉に敏感にならなければなりません。 すでに野球肘の症状がある場合 野球肘の心配がある場合は、初期の段階から医療機関で診察を受けることをお勧めします。野球肘の症状がある場合は、何年も肘の安静を強いられることがないように、重症化を防ぐ必要があります。 まずは投球する回数を減らし、肘を休ませましょう。そして、長くプレーを続けるためには、肘に負担が掛かる投げ方をしていないか指導者を交えての指導が必要です。肘に負担が掛かるような投げ方を改善する必要があります。 治療については、スポーツ外来などがある医療機関を受診し、治療はもちろん。リハビリを含め、以後の取り組みについて指導を受けるようにしましょう。エコー検査やレントゲンなど検査を受け状態を確認し、早期に治療を開始することが大切です。 野球肘|予防にはストレッチが有効 肘の関節や靭帯を守るため、動かす前に準備が大切!野球肘を予防するには、プレー前に関節をしっかり伸ばすストレッチを行いましょうす。スポーツの前後にストレッチをしっかり行うことは、大切ですが肘周りのストレッチだけで安心していてはいけません。 野球肘の予防には、肘の関節だけでなく、全身の柔軟性を上げることが重要だからです。そこで以下に野球肘の予防に効果的なストレッチをご紹介します。 野球肘を予防するストレッチの種類 運動前に準備運動を行ったり、ストレッチを行うことは一般的に知られています。野球肘の予防にもストレッチは大切です。肘周り、肩回り、下半身と全身の柔軟性を上げてから練習に挑むことでケガや故障を防ぐことが可能になるからです。 野球肘は肘の酷使が原因ですから、まずは、肘の負担を減らすために肘周りの関節をほぐしていきましょう。痛みがあるときは無理して行わず、専門家に相談することをお勧めします。 手首・肘の内側を伸ばすストレッチ 片手をまっすぐ前に伸ばします。この時、手の甲は天井を向き、手首と腕が90度になるようにします。そして、伸ばしている手と反対の手で、指先を体の方に引き寄せましょう。 次の動作は、そのまま手のひらを反時計回りに180度回転させ、手の甲が地面を向くようにします。そのまま手のひらを机などの平らなところに着き、ゆっくりと体重をかけていきます。 肩・肩甲骨をほぐすストレッチ 投球動作では、肩にも大きな負担がかかります。肩甲骨周りの可動域を広げることは、きれいな投球フォームを作ることにもつながります。 肩回りを伸ばすストレッチ 身体の前で肘を体に対して直角に上げ、手の平から肘までをピッタリつけて肩甲骨を開きます。(肘の角度は90度でキープ!)次にゆっくりと胸を張るように、腕を後ろに引きましょう。この時、肩甲同士を骨を内側に寄せるイメージで行ってください。 体幹と下半身のストレッチ 投球は足を大きく踏み込み、体の回転をボールに伝えることでより肘への負担を軽減できます。そのためには体幹のストレッチも忘れず行いましょう! 体幹と股関節のストレッチ 足を開いて座り、片方の足は体側に引き寄せます。腕を頭上にまっすぐ伸ばし、曲げた足側の手を反対の手で引っ張りながら伸ばしている足の方へ体を倒しましょう。反対側も同様に行います。 効果的なストレッチについて ストレッチにはコツがあります。そのコツを抑えるだけで野球肘の予防効果をアップさせることができます。せっかくストレッチを行うのですから次に紹介するポイントを守って、より効果的なストレッチを行いましょう。 ストレッチをする時に気を付けるポイント 第一に、ストレッチの動作はゆっくり行いましょう。急に関節を伸ばすと、痛めてしまうこともあります。具体的には、1つの部位を伸ばすのに20秒程度かけるのが理想的です。 加えて、ストレッチをしてすぐに激しい動きをするのはNGです。緊張がゆるんだ関節を急に動かすと思わぬケガにつながりますから、軽い運動を行ってから練習を始めてくださいね。 野球肘治療後のストレッチは専門家に相談する ストレッチは関節の可動域を広げるために重要です。ただし、野球肘の治療後にストレッチを始める場合は、医師の指示に従って行うようにしましょう。 また、リハビリにストレッチのメニューが加えられた場合、専門家の指導のもとで行うことも大切です。安易な自己判断で野球肘を悪化させることがないように気を付けてください。 まとめ・野球肘をスチレッチで予防して選手生命を伸ばす 野球の投球は全身で行うことが理想で、手だけの力で投げ続けると、野球肘発症の引き金となってしまいます。練習前に時間をかけてストレッチを行うことで、野球肘の予防だけでなく、練習後の疲労も軽減できるでしょう。 野球肘の原因は肘の使い過ぎです。最初から強く投げたり、いきなり投球するのではなく準備が必要です。プレーや練習前、練習後には入念なストレッチを行うことが必要です。 練習計画に前後のストレッチを取り入れて野球肘を予防しましょう。 それでも肘の違和感がある、痛みがあるというような場合は重症化を防ぐためにも肘を安静にし、早めに医療機関を受診しましょう。せっかくの才能ですから伸ばすためには身体の手入れが一番の練習だとご理解ください。 以上、野球肘を予防する!ストレッチで選手生命を伸ばすと題して説明させていただきました。参考になれば幸いです。 No.S044 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ外傷、野球肘をはじめとした再生医療という手段について 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.01 -
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コラーゲンのサプリやドリンクは、関節に良い効果を与えてくれるのか 近年、CMなどでよく見かけるサプリメントや、ドリンクとしてのコラーゲン!このような摂取方法で本当に効果があるのでしょうか?コラーゲンは美容的に注目されていますが、実は体にとっても非常に大切な栄養素です。 そこで本記事では、コラーゲンを摂取することで体にどのような効果があり、またどのような働きをしているのか解説していきます。関節に違和感があったり、痛みを感じられている方でコラーゲンのサプリメントやドリンクの摂取をお考えの場合は、ぜひ参考にしてみてください。 コラーゲンについて コラーゲンと聞くと、肌に良いイメージを持たれる方もいるのではないでしょうか。しかし、コラーゲンの働きは皮膚だけではありません。そもそもコラーゲンとは何かをみていきましょう。 コラーゲンとは コラーゲンとは、人間の体に存在するタンパク質の一種です。タンパク質は人間の筋肉や臓器など体のさまざまなところに分布されています。また、タンパク質は三大栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質)の一つとして数えられ、人間の体に必要なエネルギー源にもなっています。 コラーゲンは体内のタンパク質のうち約30%を占めていて、皮膚や骨、血管などに多く含まれています。組織の部位ごとに分類され、繊維性コラーゲンや基底膜コラーゲン、短鎖コラーゲンなど、現在分かっているものだけでも29種類あります。 コラーゲンのはたらき 肌に良いイメージがあるコラーゲンは、皮膚の約70%がコラーゲンでできていると言われていて、肌に弾力とハリを与える働きをしています。 コラーゲンは皮膚だけではなく、骨や関節、腱、靭帯などにも存在し、強度や柔軟性を保つ機能があります。骨の中にコラーゲンがあることでクッション性が加わり、骨にしなやかさを与え、転んだときなどの強い衝撃から守っています。 また、関節の部分にもコラーゲンが存在し、骨と骨の摩擦による擦り減りから骨が傷つくのを防ぐ役割もしています。このようにコラーゲンは骨や関節にも密接に関わっています。 加齢による体内のコラーゲンの減少 コラーゲンは健康の維持に欠かせないものですが、年齢とともに減少していきます。加齢に伴って細胞の数が減ったり、衰えたりすることでコラーゲンの合成力が衰えてしまうためです。 また、紫外線による影響で皮膚のコラーゲンが減少することが分かっており、シワやたるみなどの原因になっています。では、コラーゲンを摂取した場合に、減少したコラーゲンを補うことができるのでしょうか。 コラーゲンを飲むことで効果は期待できるのか 日本整形外科学会によれば、直接関節にヒアルロン酸を注射した場合には科学的データに基づいて、有効性が認められているとされています。 しかし、食べ物などの口からの摂取の場合は有効性が確認できる科学的データはないとし、効果が期待できないと結論づけています。ですが、まったく効かないというデータもないため、悩ましいですね。 参考資料:サプリメントの効果について|公益法人日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/public/about/supplement.html 希望の星!低分子コラーゲン(コラーゲンペプチド) 食べ物からの摂取でコラーゲンの有効性が認めれられていないとされているものの、最近の研究では低分子コラーゲンを摂取することでコラーゲンを作る材料になったり、コラーゲンの生成量を増やしたりすることが期待できることが分かってきました。 低分子コラーゲンとはコラーゲンタンパク質を小さくしたものを言います。低分子化したものは、コラーゲンペプチドともよばれ粒子が細かく、腸壁で吸収され血液を通って皮膚や骨、関節など全身に行き渡ります。 サプリメントの種類と成分 コラーゲンペプチドはサプリメントとして錠剤やパウダー、ドリンクに配合されており種類もさまざまあります。 サプリメントのコラーゲンの成分には主に動物性由来と魚由来があり、動物性由来であれば、牛や豚、鶏などの皮から抽出したもの、魚由来は魚皮や魚鱗から抽出したものが原料となっています。 注意!コラーゲンとアレルギーの関係性 サプリメントの原料になっている牛や豚、鶏、魚などが原因でアレルギー反応を起こす可能性があります。アナフィラキシーを起こした事例も報告されているため、サプリメントなどでコラーゲンを摂取する際は十分に注意が必要です。 特に鶏や卵にアレルギーがある方は、鶏が原料になっているコラーゲンは避けた方が良いでしょう。 コラーゲン・トリペプチドの効果 コラーゲン・トリペプチドとはコラーゲンの最小単位で、その大きさは一般的なコラーゲンサプリメントの20分の1から50分の1の大きさと言われています。 そのため小腸から直接そのままの形で吸収されることが分かっています。最近の研究では関節や骨など体内でコラーゲンが不足しているところに、効率よく届くことが期待できるという報告がされています。 関節や骨への具体的効果について 関節 傷ついた関節の治療の際、患者さんがコラーゲンペプチドのサプリメントを摂取したところ、関節の修復が早いという結果の報告されています。また、変形性膝関節症の症状の改善にも効果があることも分かってきました。 骨 骨を丈夫にするにはカルシウムのイメージが強いですが、カルシウムだけでは強度な骨は作れません。 骨の約30%がコラーゲンできていると言われ、コラーゲントリペプチドを摂取することでコラーゲンの生成を助ける働きがあることが分かっています。 まとめ・コラーゲンのサプリやドリンクは関節に良い効果を与えてくれるのか これまではコラーゲンを食べ物で摂取しても、体の中でアミノ酸としてバラバラに分解されて吸収されてしまうため効果がないと考えられてきました。 しかし、小さな分子のコラーゲンペプチド(低分子コラーゲン)であれば腸壁から吸収され血液を通って、体の中のコラーゲンが不足しているところへ効率よく届くということが分かってきています。 そのため、コラーゲンのサプリやドリンクを購入する場合は「低分子コラーゲン」、「コラーゲンペプチド」との表記があるものが良いかもしれません。いずれにしてもコラーゲンの効果には個人差があり、短期ではなく、長期で考える必要があります。 関節のために体内のコラーゲンをキープしたいと摂取する場合は、毎日の食生活に取り入れ、長期的な視点で取り組みましょう。コラーゲンが関節や健康の維持に役立つと良いですね。 以上、コラーゲンのサプリやドリンクは関節に効果があるのかについて記させて頂きました。 No.S041 監修:医師 加藤 秀一
2022.02.16 -
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膝の痛みを引き起こすスポーツ上の慢性障害について 走ったり、ジャンプをするなどのスポーツ、運動をすると、膝に力が加わり続け、靭帯や腱の組織が損傷したり炎症を起こして、膝に痛みなどの障害を引き起こす場合があります。 これは、いわゆるスポーツ障害の一種で「膝の慢性障害」です。これは、運動による膝の使い過ぎが原因であり、スポーツによる「使い過ぎ症候群」とも言われています。そこで今回は、膝の使い過ぎにより発症するスポーツ障害のうち「膝の慢性障害」とその症状について、詳しく解説します。 膝の使いすぎによるスポーツ障害、「膝の慢性障害を起こす3大要因」とは ① 身体要因 1つ目は、筋力不足や筋肉のアンバランス、体の柔軟性の不足など、体自体の発達具合に起因する身体要因です。 ② 環境要因 2つ目は、合わない靴を履いている、地面が固すぎたり柔らかすぎたりして膝に負担がかかるなどの環境要因です。 ③ トレーニング要因 3つ目は、過度な運動量、技量や体力に合わない運動をするなど、自分に合わないトレーニングやスポーツを行うことに起因するトレーニング要因です。 これらの要因が発生している状況で、膝の靭帯や腱に骨が付着する部分や、靭帯が骨の上を通る部分に繰り返し負荷がかかり続けると、付着部分や重なっている部分に摩擦が起き、損傷や炎症が生じて痛みを感じるようになります。 軽度な症状であれば、運動中や運動後に痛みを感じることもありますが、トレーニングやプレーは通常通りできるため、大きな影響はありません。しかし、進行すると運動中に常に痛むようになり、支障をきたすようになります。 さらに重症化してくると、運動が出来なくなったり、靭帯や腱の断裂を引き起こし、日常生活に支障が出るなど、スポーツによる膝の慢性障害を発症してしまいます。 スポーツ障害|膝への代表的な症状で4つの慢性障害とは 前述した要因により引き起こされる、スポーツによる膝の慢性障害の代表的な症状としては、以下の4つが挙げられます。 ①鵞足炎 ②大腿四頭筋腱付着部炎 ③膝蓋腱炎 ④腸脛靭帯炎 これら4つの症状は、ひざ関節の外側や内部で生じるものですが、特定の動きにより発症しやすくなります。 ①鵞足炎の「鵞足」とは、ひざを曲げる筋肉や腱が付着する骨の部位をさしますが、ラ ンニング動作などの、足を後ろに蹴り出す動作を繰り返したり、急に方向転換をする動きを繰り返すことで、鵞足がすれて炎症し痛みが出るようになります。 ②大腿四頭筋腱付着部炎は、膝の関節の外側が炎症することで症状が出ますが、バレーボールやバスケットボールなどのジャンプ動作やサッカーボールを蹴る動作、ジョギングなどの走る動作を繰り返したことにより発症します。 ③膝蓋腱炎は、膝蓋骨という通称「膝の皿」と言われる部分の下部からすぐ下の靭帯にかけて痛みが出るもので、バレーボールやバスケットボールなどのジャンプ動作を繰り返すと発症しやすくなります。 ④腸脛靭帯炎は、膝の外側を通る腸脛靭帯が、長距離ランニングなど、長時間の膝の屈伸運動により、炎症を起こして発症します。 以上のように、ジャンプをしたり、足を蹴り出したり、長時間動かし続けることで、各動作で使われる膝の周りの靭帯や腱と骨の付着部分に摩擦が生じて炎症を起こし、痛みが生じるようになります。 スポーツによる膝の慢性障害への対処法 スポーツによる膝の痛みなどの慢性障害の対処法としては、まず症状が出るのを予防すること、そして、発症してしまった症状を改善することが重要となってきます。そして、予防をするためには自己対処がとても大切です。 ストレッチを行う 体の柔軟性を高めるために、運動開始前に十分にストレッチを行ってください。ストレッチを行うことにより、運動前に体の筋を十分伸縮させ筋肉の緊張をほぐすことで、運動による膝への衝撃を和らげることができます。 アイシングを行う 運動後に、急性炎症を抑えるために、氷や水などで膝を局所的に冷やすアイシングを15分程度行うのも効果的です。 その他 もしスポーツによる膝の慢性障害を発症してしまったら、無理をしないように休憩を適度にとったり、トレーニングメニューを強度の低いものに変更するなど、まずはご自身で調整しましょう。 症状が重い場合は、リハビリテーションを含む専門知識や技術が必要となる場合があります。 また、痛みに対して鎮痛剤を投与したり、装具療法や、時に手術が必要になるなど、各個人で症状や対処法は異なりますので、お近くの整形外科での診察を受け、個々の症状に応じた診断と適切な治療やアドバイスを受けるようにしてください。 まとめ/膝の痛みを引き起こすスポーツ上の慢性障害について 健康を意識する方が増え、運動を継続的に行ったり、趣味で競技スポーツを行う方が年々増加傾向にあります。 適度な運動を体に無理がかからない範囲で行うのは良いですが、過度な運動をしたり、合わない靴を履いての運動などをすることで、気づかないうちに膝に負担をかけ続けていると、スポーツによる膝の慢性障害を発症する確率が高くなります。 また、我慢できる程度の痛みだからと、準備運動のためのストレッチや運動後のケアを怠ったり、トレーニングメニューの調整をしないと、症状が悪化し日常生活に支障が出る場合があります。 スポーツによる膝の慢性障害は症状が進行すると、自然治癒することが難しく手術が必要になることもありますので、無理な運動をせず、日頃のコンディショニングをしっかりと行いつつ、トレーニングをするようにしてください。 以上、膝の痛みを引き起こすスポーツ上の慢性障害について解説させていただきました。参考になれば幸いです。 No.S037 監修:医師 加藤 秀一
2022.02.10