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頸椎椎間板ヘルニア!やってはいけないこと 頸椎椎間板ヘルニアを始めとする頸椎疾患は日常診療のなかでも多い病気のひとつとされています。 頸椎疾患自体は、30~50歳代前後の中年層に患者数が多く、時には訳もなく発症するケースもあるものの、その多くは普段の生活の中で悪い姿勢で作業をする、あるいは首に負担のかかりやすいスポーツや運動といったものが主たる原因になっているようです。 頭の重さは、5~6Kgと言われ、要はボーリングの球が首に乗っているようなイメージで考えて頂くといかに首に負担が掛かかイメージ頂けるのではないでしょうか。つまり、普段の生活の中、大きな衝撃が無い場合でもほんの数センチ頭が傾くだけでも大きな負担が首に掛かってしまうのです。 そこで「頸椎椎間板ヘルニア」は、どのような病気なのか、そして、頸椎椎間板ヘルニアを患った人が日常生活において「やってはいけないこと」について解説してまいります。 ・比較的多い疾患 ・30~50歳代前後の中年層に患者数が多い ・首に負担のかかりやすいスポーツや運動 ・突然、わけもなく発症するケース 頸椎椎間板ヘルニアについて 首の骨は「頚椎」と呼ばれ、7つの骨で構成されています。 脊椎領域において、骨と骨の間に「椎間板」と呼ばれるクッションの役割を担っている軟骨が存在しています。いわゆる頸椎椎間板ヘルニアという疾患はその椎間板の一部が本来の正常な位置からずれて後方、背中側に向けて突出してしまう病気をいいます。 特に、頭側に位置する上位頸椎椎間板ヘルニアが発生する原因としては、加齢に伴って、下位頚椎の変形などによって上位頚椎に負荷がかかることで引き起こされると言われています。 本疾患は、若年者から中年層にかけて幅広く発症し、多くは悪い姿勢でデスクワークをする。 あるいは頚部に重い負担や、大きな衝撃がかかる可能性があるラグビーや、アメフト、柔道、レスリング、その他格闘技のほか、スキー、スノーボードなどのウインタースポーツが原因となることもあります。 頸椎椎間板ヘルニアの症状としては、首や肩、そして腕にかけて比較的広範囲に痛みや、しびれが現われたり、食事中に箸が持ちにくくなったり着衣時にボタンがかけづらくなる。 そして歩行時に足がもつれるなどのサインが表れたりします。 実際に、医療機関などで頸椎椎間板ヘルニアの患者さんを診療する際は、手足の感覚や筋力が通常より低下していないか、あるいは四肢の腱反射異常などを観察したうえで、MRI検査(核磁気共鳴装置)で画像を確認し、脊髄の圧迫状態を確認します。 頸部の痛みや、神経領域のしびれ症状が強い例では、頸部の安静保持を心掛けると同時に鎮痛消炎剤の服用、外用薬貼付、そしてひどい場合には、神経ブロックなどを行うことで疼痛を緩和させる治療を行います。 また、これらの保存的な治療策で顕著な症状改善を認めず、手や足の筋力低下が持続して悪化するケース、或いはスムーズに歩けないなどの歩行障害や尿失禁を始めとする排尿障害を合併する場合には根治的な手術治療を検討することも往々にしてあります。 本疾患の原因 ・若年~中年層にかけて幅広く発症(加齢) ・悪い姿勢でのデスクワーク ・頸部に重い負担が掛かる動作(重量のある荷物を持ち上げる) ・頸部に大きな衝撃(ラグビー、柔道、レスリング、格闘技、体操、スキー、スノーボード、転倒、他) 頸椎椎間板ヘルニアのリスク、注意したいこと 前項で触れた通り、頸椎椎間板ヘルニアという病気は、スポーツなどが契機となって発症しやすいと考えられているため、頸部のしびれや痛みなどの症状がみられる場合には、これらスポーツや、運動を一旦中止し、医療機関を受診することを検討しなければなりません。 スポーツに注意しましょう 例えば、アメリカンフットボールやラグビー、格闘技系など激しいコンタクトを要求されるスポーツ選手は特に注意が必要です。 また、体に対して急激で強い外力が頻繁に加わる動作を特徴とする体操選手など、長時間同じような動作を反復することも頚椎椎間板ヘルニアを発症するリスクになります。 注意頂きたいのは、現れた症状が比較的、軽度な場合に「この程度なら…」との自己判断で放置し、そのスポーツや生活を治療することなく続けることです。 そうなると当然ながら症状を悪化させることに繋がります。自然に良くなることはありません。首に痛みを感じたら早めに診察を受け、適切な指導を受けるべきです。 姿勢に注意しましょう 頸椎椎間板ヘルニアを引き起こしやすい例としては、日常的な姿勢の悪さが挙げられます。代表例としては、「そり腰」や腹部に体幹を支える力が入っていない状態の「猫背」が挙げられます。 頸椎椎間板ヘルニアの発症を防止する意味でも、或いは発症後に症状を悪化させないためにも日常生活において背筋を伸ばすなど「正しい姿勢を意識する」ことが大切です。 ・反り腰や猫背にならないように心がけましょう。 確認方法 大きな鏡の前で自身の姿勢を確認したり、壁を後ろに直立し、かかとを壁に付けて自然に立った場合、お尻や肩、頭は壁に軽くでも壁についているか、背中には手のひら1枚分程度の隙間があるか確認しましょう。 ・お尻、肩、頭が壁につかない部分があると姿勢が良くない証拠です ・頭の後頭部が就かない場合は、頸椎に負担が掛かっているといえます 正しい姿勢を知ることで、自分で矯正する意識を持てます。気づいたら背筋を伸ばすなど「正しい姿勢」を目指して姿勢が悪くならないように注意しましょう。 体重管理に注意しましょう 平均的な体重の成人は、上半身の重さが全体重の概ね6割程度といわれいます。 体重が重い肥満傾向の場合は、そのぶん健常者よりも頚椎椎間板にかかる負荷が大きくなります。身長に対して過剰な体重にならないよう注意し、管理することが大切です。 自転車やバイク、自動車など乗り物に注意しましょう すでに頸椎症の疑いや、症状がある場合は、通常の自転車走行であっても、転倒時には急激に首に力が入ってしまうことを考慮するべきです。転倒した場合のリスクを考え、ご不安な方は、自転車走行は控えたほうが良いでしょう。 それでも自転車に乗る場合は、停止時、スグに足が着けるようサドルを調整し、無理のない走行を心がけましょう。 自転車同様、ご注意ください ・バイクも同様:発信や停止では、首に大きな負担が掛かかります。 ・自動車も同様:急発進や急ブレーキは禁物です。首に大きな負担が掛かかります。 自動車の場合、他の方が運転する場合では、乗る前に事情をお話して安全運転をお願いしましょう。特に急発進、急停車に注意が必要です。 これら以外でも重い荷物を持ち上げるなども首に負担が掛かるためご注意ください。 日常生活、普段意識することはなくても首には大きな力が掛かっています。姿勢をただし、何らかの動作が必要な折には、首を意識してください。 以上、乗り物は特にですが、普段の生活においても無理のない、負担のかからないよう意識的に行動することが大切です。 喫煙に注意すべきです ここまで以上、何より注意すべきは喫煙です。 何故なら喫煙は、全身の毛細血管の血流を悪化させて椎間板の劣化が起こりやすくなると考えられているからです。頚椎椎間板ヘルニアを患っているにも関わらず喫煙習慣があるのなら、できるかぎりタバコを吸わないよう、もしくは大幅に減らしましょう。できれば禁煙するといった努力を心がけてください。 ご存知のようにタバコは万病の元とも言われるため、この機会に禁煙されてはいかがでしょうか?最近は電子タバコなどもあり、切り替えながら少しずつでも減らしていければベストですね。 頸椎椎間板ヘルニアやってはいけないこと ・激しいスポーツを避ける ・激しくなくともスポーツを行う際は要注意 ・重い荷物を持つなどの重労働は避ける ・腰を曲げてお辞儀するようにかがまない(首に負担が掛かる) ・猫背、そり腰を避ける(正しい姿勢を知ること) ・太らないこと、体重の増加(体重管理に気を付け、食生活を正す) ・首に負担が掛かるような動作や動き ・自転車、バイクでの転倒、 ・バイク、自動車の急発信 ・スマホを悪い姿勢で見る(首への負担を意識する) ・喫煙に注意(禁煙が望ましい) 頸椎椎間板ヘルニアの予防 ・正しい姿勢を知ること ・正しい姿勢を維持すること ・腹部で体幹を支える意識をもって姿勢を正す まとめ・頸椎椎間板ヘルニアでやってはいけないこと 人間は、誰しも年齢を重ねるにつれて身体には様々な劣化が起こります。そのひとつとして椎間板も加齢で劣えていきます。 頸椎椎間板ヘルニアは、頚部の背骨を構成している骨と骨との間にある椎間板組織が慢性的な負担でに劣化や、外因的な衝撃を受けて正常な位置からずれて突出し、脊髄の神経を圧迫することで発症します。 椎間板が劣化する原因は多種多様であり、いわゆる加齢や肥満、喫煙習慣、悪い姿勢や、激しいスポーツ活動、また普段の生活における環境要因も要因になる可能性があるため、頸椎椎間板ヘルニアの場合は、これらのリスク要因を少しでも回避する努力が必要です。 荷物や、物を持ち上げるのは避けて頂きたいのですが、どうしてもの際には、腰を曲げてかがむのではなく、膝を折ってかがめば首に負担をかけずに持ち上げることができます。 また、スポーツなどでは年齢を重ねてからは激しい動きがある種目は行わない。もしくは可能な限り、リスクを押さえ注意して行うなどの対策を取ってください。首を意識することが大切です。 頸椎椎間板ヘルニアの予防は正しい姿勢を知ることが第一です。リハビリテーションにおいても同じことが言えます。正しい姿勢を取れるように指導を受けることになるからです。 その他、正しい姿勢で散歩したり、泳ぐのが好きな方は、スイミングを取り入れるなどで持続的に無理のない範囲で運動をする習慣を持つことも大切です。現在、本症状でご覧頂いているあなた様には、無理をなされないよう、くれぐれも気を付けてお過ごしください。 以上、頸椎椎間板ヘルニアでやってはいけないことについてご説明させていただきました。今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼こちらもあわせてご覧ください 頸椎椎間板ヘルニアや腰椎椎間板ヘルニアの最新療法幹細胞治療! No.S027 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療の幹細胞治療は、頸椎椎間板ヘルニアなどのしびれ、その他の症状を改善します 再生医療は、ご自身の幹細胞を用いた安全且つ、最新の先端治療です
2022.04.04 -
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頚椎すべり症でやってはいけないこと 頚椎すべり症の症状とは、首の痛みや肩こりだけではなく、圧迫される神経の障害によって、手足の症状が出現します。初期症状としてはまず腰痛と下肢の痛みが出現することが多いです。 それに加えて上肢の症状としては腕や指のしびれ、指の動きがぎこちなくなり、ボタンがうまく止められなくなったり、字が書きづらくなったりといった症状があります。 下肢の症状としては、歩くときのふらつき、間欠性跛行といって、おしりと、ふともも、ふくらはぎなど下肢を中心に痛みや痺れが出ることもあります。また、しびれや感覚障害が出ることもあります。 これらの症状がゆっくり出現して悪化することが一般的に多いです。また他にも頭痛などの症状もあります。頚椎は脳へと繋がる神経や血管の通り道になっています。そのため、すべり症などが原因で首の骨がずれたりすると、神経や血管を強く圧迫してしまうことがよくあります。 その代表的な症状が慢性的な偏頭痛です。急激に悪化した場合は早めに病院等の医療機関で専門医を受診することが必要です。 頚椎すべり症の種類 腰椎すべり症は大きく分けて2種類あり、分離すべり症、変性すべり症があります。個々の背骨を繋げている場所が分離した状態を分離すべり症と呼び、骨と骨の間にある椎間板が老化し、変性したことが原因でずれた状態を変性すべり症と呼びます。 「変性すべり症」は「分離すべり症」と比較し、中年以降の女性に見られることから女性ホルモンの影響を受けているのではないかとも考えられています。分離すべり症も変性すべり症も脊髄神経の圧迫が症状の主な原因となるため、出現する症状自体には大きな差はないとされています。 頚椎すべり症 分離すべり症 変性すべり症 頚椎すべり症の診断方法 診断は問診、医師の診察の後レントゲン撮影にて骨の変形の程度や姿勢の状態、靱帯骨化の有無を確認します。それに加えて神経学的診察に加え、MRI検査を行います。 腰椎の「ずれ」に関しては、腰椎を前後に曲げた状態での撮影を行うことで不安定性の程度を診断できます。似たような症状をきたす疾患としては椎間板ヘルニアや脊髄腫瘍なども考えられるため、これらとの鑑別も重要となります。 頚椎すべり症の治療・保存療法 これらの症状に対して、現在まで様々な治療が行われています。首の痛みや肩こりが主な症状であれば温熱療法、マッサージ、電気治療、鍼灸治療が行われ、一部の施設では牽引療法が行われます。さらに消炎鎮痛剤や、ブロック注射などで痛み、しびれなどの軽減を図ります。 さらにリハビリにてストレッチや腰まわりの筋力訓練などを行うことも有効とされています。痛みとうまく付き合っていけるのであれば、保存治療を継続します。しかし痛みや、しびれが、ひどくなり生活の質の低下があった場合は手術療法が検討されます。 特に首や肩こりの症状が重く手足の症状が出現している場合は、症状の悪化を来す可能性もあるため、早めの専門的加療が望まれます。痛みやしびれが激烈であったり、足が動かなくなったり、麻痺が出現している場合などは手術療法が検討されます。 手足の症状が進行している場合、症状を回復させるためには神経の圧迫を解除する手術治療が唯一有効な手段となります。 保存療法 ・温熱療法 ・マッサージ ・電気治療 ・鍼灸治療 ・牽引療法 ・リハビリテーション(ストレッチ) 手術療法 代表的な手術は、骨どうしをボルトで固定する固定術という方法になります。これは、顕微鏡や内視鏡を使ってできるだけ低侵襲(お身体への負担を少ない手法)に手術を行うことで早期離床、早期のリハビリテーションを開始することが可能になります。 手術方式によって固定の力や切開の大きさに差があるため、患状態や病状によって使い分けがされています。術後は安静やコルセットなどによる保護が必要となりますが多くの場合、手術の翌日より歩行や食事を開始いただけます。 すべり症でも不安定な状態が強くない場合は、内視鏡を用いて神経の圧迫をとる低侵襲の手術も選択に挙げられます。 頚椎すべり症でやってはいけないこと 上記に挙げたように様々な症状が出現しますが、歩きにくさや、手足のしびれ、感覚障害などがひどい場合は早めに専門医にかかることをお勧めします。また仕事や日常生活で首や腰に負担がかかる作業がある場合には早めにやめてコルセットなどを使用するべきでしょう。 また、普段の姿勢など生活態度の改善によって予防できる病気でもあり頚椎すべり症にならないためにも、普段の生活で負担を掛けないようにすることが大切です。 仕事で常に首を曲げ続けたり、同じ体勢で長時間首に負荷をかけ続けているという人は、そのような生活を見直して、出来るだけ首に負担をかけないよう心がけて下さい。日常的に姿勢を正すように意識して過ごすようにしてください。 首を10度下に傾けると頚椎の負荷が2倍になります。デスクワークやパソコンを長時間する場合は、仕事でもこまめに休憩をとるようにしましょう。また、スマホはうつむき加減になりがちで首に負担が大きくなるので特に注意が必要です。 また、お風呂はぬるめのお湯で(38度~40度)、ゆっくりとお入りください。ぬるめのお風呂は副交感神経を刺激し、血行を良くします。熱いお風呂(42度以上)は交感神経を刺激し、血行不良を起こす可能性があるため控えましょう。その場合は症状を悪化させる可能性があります。 頸椎すべり症で「やってはいけない」こと ・仕事で常に首を曲げ続けたり、同じ体勢で長時間首に負荷をかけ続けない ・意識して姿勢を正す癖を付けましょう ・首を10度下に傾けると頚椎の負荷が2倍になる ・デスクワークや、パソコン、長時間しないように気を付け、仕事の場合でもこまめに休憩をとる ・特にスマホは、うつむき加減井なりがち首への負担が多いので気を付けましょう ひどい首の痛みや肩こり。手足のしびれを感じたり、慢性的な偏頭痛でお悩みなら早期に病院をはじめとした医療機関で診療を受けるようにしましょう。 以上、頚椎すべり症でやってはいけないことについてご説明させていただきました。 No.S015 監修:医師 加藤 秀一 ▼ すべり症による「しびれ・痛み」などのお悩みに幹細胞治療という先端医療分野があります 再生医療は、ご自身の幹細胞を用いた治療方法でこれまで難しかった症状の緩和を目指せます
2021.11.30 -
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頚椎症性脊髄症の症状と手術後のしびれ、機能障害への対処 頚椎症性脊髄症の症状と手術後のしびれや機能障害にいかに対処するか 【はじめに】 頚椎症性脊髄症という病気、難しい病名ですね。 実はこの病気、聞きなれないようですが、比較的多くの方が患われている病なんです。 この病気は、慢性的な神経への圧迫によって脊髄への血液循環が悪くなることで、その結果として細胞が死んでしまうために起こると考えられています。何とも怖いものです。 頚椎症性脊髄症は、年齢的な原因が多く、加齢を重ねることによって頚椎そのものや、頚椎と頚椎の隙間でクッションとして機能しておる椎間板、そして骨と骨の間に存在する靱帯などを含めて脊柱管といわれるものが変形してしまうために起こります。 年齢的には、50歳以降になって加齢とともに発症しやすい病気と考えられているのでご年配の方は注意が必要です。 ただし、年齢について、もともと脊柱管が狭い人がいて、そんなケースでは頚椎などの加齢性変化が始まると言われている40歳前後で発症する可能性もあるので「私は、まだまだ・・・」と思うのは早計です。 そこで気になる、この病気の治療法。一般的には外科手術で「髄神経の圧迫を減らす」ことが解決策になるのですが、手術の部位的にも難しく、いかに安全に神経組織への影響を最小限に抑えて行うえるかが命題でした。 そんな高難度な手術ですが・・・ 先端医療である「再生医療からのアプローチ」なら、そもそも手術を回避できる可能性があったりもしますので興味のある方はご相談ください。 次に、頚椎症性脊髄症の症状で手術後の症状としてお悩みの方が多いのが「しびれ」です。 この「しびれの症状」が残ると治療が難しい場合が多いのが実情ですが、最近は、「再生医療という新分野からのアプローチが可能」になってきています。 【第1章】頚椎症性脊髄症の症状 はじめにもご紹介しましたが、頚椎症性脊髄症のほとんどは、加齢による脊椎症性の変化によって脊柱管が狭くなる狭窄を生じることによって、脊髄や馬尾神経根という部分が圧迫されて引き起こされます。 この病気が発症すれば、脊髄が圧迫されるために、その影響で首や背中を含めて手足のしびれといった症状が現れます。それ以外にも、手がうまく使えなくなったり、足に力が十分入らずスムーズに歩行できなくなるなどの運動障害が現れるようになります。 また、神経を圧迫する結果、症状として頻尿や尿失禁などをはじめ、膀胱や直腸の機能が低下して日常生活に大きな支障を及ぼしてしまうことも稀ではありません。 特に困るのが頚椎症性脊髄症を患うと日常生活で必要不可欠な動作ができなくなります。 機能障害 例えば、箸を使う、ボタンをかける、字を書くといった細かい動作ができなくなるだけでなく、歩くことさえできなくなるなど、運動機能に大きな弊害が発生することになります。 このような運動機能障害が起こると、歩き方に障害が起こり、両脚が突っ張って、つま先を引きずるような歩き方になるため注意したいのは、頻繁に躓くようになり、その結果、転倒しやすくなるというものです。こうなると非常に危険です。 それだけではありません。脅すようで申し訳ないのですが、歩行時に足がピクピクとけいれんする異常反射が出現することもあり、バランスを崩して転倒後に頭部や頚部を打撲したり、捻挫すると、頚椎症性脊髄症自体が急速に悪化してしまうため、歩行時は極めて最大限の注意が必要です。 これらの疾患を日頃の症状から正確に診断して神経障害の程度を正確に評価することは、適切な治療を行う上でもたいへん重要な視点になります。 症状と注意 ・頻尿、失禁 ・手が上手く使えない、手足のしびれ ・足の痙攣 ・頻繁につまずくようになる ・転倒しやすくなる 【第2章】頚椎症性脊髄症術後のしびれと再生治療による治療効果 仮に本疾患を発症したとしても、手足の軽いしびれ程度しかないなど、自覚のない軽症である場合は鎮痛剤や、神経ダメージを修復する作用を有するビタミンB12などによる薬物療法などを中心とした保存的な治療が行われます。 ところが、日常生活を送るうえで大な支障をきたすような痛みや、しびれ、あるいは運動機能の低下など強い症状がある場合は、脊柱管を拡げるための手術が必要と考えられています。 さらには、近年ではMRIなどの画像検査で神経圧迫が顕著な場合や、骨や靱帯など構造物の物理的変化が明らかに認められるようなケースでは、たとえ症状が軽微であっても早期的に手術した方がよいとの意見もあります。 実際に、症状を改善させる目的で脊椎手術に期待するわけなんですが、ここに問題があって、せっかく手術した後でも実のところ、しびれや、感覚障害が残存する可能性があるのです。 その理由は、長期に渡って脊髄神経の圧迫状態が続いた場合、手術によっても神経は元通りに改善するわけではなく、たとえ「圧迫を取り除いたとしても、神経症状が治らない」からです。 再生医療の可能性 そこで昨今のトピックスとして、術前に強い感覚障害などの自覚症状を呈する症例や、術後にもしびれ症状が残存する強い脊髄症を患っている方々に対して、自己脂肪由来幹細胞を用いて治療する再生医療による治療が話題を呼びはじめています。 この方法は、その患者の体内にある脂肪から幹細胞を取り出し、数千倍~にも培養し、患部への注射や、点滴で培養した幹細胞を投与することで神経再生を促進する治療に繋げるという先端医療です。 幹細胞は、本来人間のあらゆる場所に存在していて、同じ細胞を作る能力と、別の種類に分化する能力を持った細胞なのです。つまりは、何にでも変化できるため、自己修復能力を持った細胞と言えるのです。 実際に、投与された自己脂肪由来・幹細胞が傷ついた神経部位に対して血管の新生や圧迫受傷された神経箇所の修復を促す特徴が認められてきました。 さらには、この再生医療を行った後にリハビリテーションを重ねて実践することで、組織修復力が格段と向上することを期待もできるため、お悩みの方には朗報になるものですね。 再生能力が高く、新しく問題や傷のある部位に働きかける幹細胞は、神経の再生に重点を置いたリハビリテーションを並行して実施することで神経細胞としての機能を獲得して傷んでいる損傷部位の修復に効果的に働きかけることが期待できます。 つまり、「再生医療」は、頚椎症性脊髄症で問題となる「しびれをはじめとした神経症状」に対して有効な治療法として期待が持てる!ということなのです。 まとめ・頚椎症性脊髄症の症状と手術後のしびれ、機能障害への対処 頚椎症性脊髄症とは、 頚椎などの脊柱管が加齢性によって変形して、重要な脊髄が走行する脊柱管の隙間が狭くなることで脊髄が圧迫され、色々な問題のある神経症状を覚える病気です。 本疾患を発症する原因としては、加齢に伴う頚椎などの物理的な構造の変化が多いと考えられていますが、もともと日本人は諸外国人に比べて脊柱管が狭い傾向があることもあり、頚椎症性脊髄症を発症しやすいと言われています。 頚椎症性脊髄症では、脊髄へのダメージが軽度なケースでは軽い手足のしびれ症状のみですが、神経へのダメージが大きければ大きなほど、手足の筋力低下や、運動障害などの麻痺、そして頻尿や失禁など膀胱、直腸障害などの症状も併せて見られるようになります。 その改善を目指し、神経の圧迫を手術で除いたにもかかわらず、術後にしびれや麻痺などの症状が残った場合には、あきらめることなく、 近年注目を浴びている「自己脂肪由来の幹細胞を投与する再生治療を受けることで改善の可能性がある」ことを思い出してください。 S009 監修:医師 加藤 秀一
2021.11.17 -
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頚椎椎間板ヘルニアの辛い症状の種類と、似た病気、検査と治療法 頚椎椎間板ヘルニアとは 背骨の骨と骨をつなぐ役割の組織を椎間板と言います。頚椎椎間板ヘルニアは椎間板組織が脊柱管内に突出または脱出して脊髓や神経根を圧迫し症状をきたす疾患です。 30~50歳代の男性に多く、その発生部位ではC5、C/6(第5頚椎と第6頚椎の間の椎間板で発生)が最も多く、次にC4、C5並びにC6、C7にも多く発症します。(以下の図参照)事故による外傷性や加齢による経年性による変性が機序となることが多く、喫煙も危険因子とされています。 脊柱管横断面で正中型、外側型と傍正中型とヘルニアが飛び出た方向で分類されます。正中ヘルニアは脊髄症、外側型や傍正中型は神経根症や脊髄神経根症(脊髄症と神経根症の合併)をきたすことが多く、画像検査で椎間根ヘルニアを認めても、無症状であることも多いので注意が必要です。 発症原因 ・事故による外傷性 ・加齢による経年性による変性 ・喫煙も危険因子とされている 症状について 頸椎症のほかに、脊髄が圧迫されると脊髄症の症状、神経根が圧追されると神経根症が生じます。 頚椎症 首から肩甲骨にかけて痛みがあり首を動かすに痛みが増強し、安静にすると軽快します。 神経根症(radiculopathy) 上肢への放散痛、知覚障害、しびれ感、脱力感などの症状が生じます。放散痛の領域を詳しく把握することで障害神経根を推測することが可能です。前胸部に放散する疼痛がある狭心症に似た頸性狭心症(cervical angina)と呼ばれる疾患があり、鑑別を必要とします。 脊髄症(myelopathy) ボタンが掛けにくい、著が使いにくい、ボタンを上手く掛けることができない、といった手指巧級運動障害や歩行障害を生じます。痙性歩行により歩容は揺劣となり、階段昇降時には手すりが必要となります。また小走りも難しくなります。 初期は大きなボタンを掛けることはできますが、ワイシャツのような小さいボタンが掛けにくくなります。指または手のひら全体のしびれを訴えることがあり、脊髄の圧迫する部位によってしびれの領域に違いがみられます。進行すると膀胱直腸障害(頻尿、尿勢低下、残尿感、便秘)も自覚するようになります。 身体所見について 頸椎症 頸椎の可動域制限と僧帽筋、棘下筋、棘上筋などに圧痛を生じます。 神経根症 神経根の障害高位に一致した上肢の筋力低下および筋萎縮、感覚障害、深部腱反射の低下が生じます。スパーリングテスト(Spurling test)、ジャクソンテスト(Jackson test)が陽性となることが多いです。 脊髄症 上肢の障害髄節に一致して深部反射が弱くなり、筋力低下が生じることもあります。また錐体路障害により、それ以下の深部反射、ホフマン(Hoffmann)反射、ワルテンベルク(Wartenberg)反射が亢進し、バビンスキー(Babinski)反射、膝・足間代(足クローヌス)も陽性となります。 また小指が閉じることができない指離れ徴候(finger escape sign)がみられ、10秒テスト(手掌を下にしてできるだけ速く、グーパーを繰り返す)では通常20回以下になります。感覚障害は、初期には上肢のみに生じることが多いです。 画像検査について X線像(レントゲン) 椎間板ヘルニアでは一般に椎間板腔狭小化(椎間板と椎間板の間の隙間が狭くなること)や骨棘形成は軽度であることが多いです。高齢者では、骨棘などの変性が著明になると隣接椎間に椎間板ヘルニアが発生することもあります。 MRI(磁気共鳴画像法) 椎間板ヘルニアの局在や、圧迫された脊髄、椎間板変性の度合い、神経根の状態を確認することができます。 脊髄造影(ミエログラフィー) 脳槽・脊髄用の水溶性造影剤をくも膜下腔に注入して、脊髄や神経根を明瞭に描出することができる検査です。脊髄造影後にCTを撮影すると椎間板ヘルニアの局在、神経根や脊髄の圧迫を三次元的にとらえることが可能です。しかし、MRIが導入された現在では、脊髄造影をする機会は減ってきています。 頸椎椎間板ヘルニアと似た症状の病気 疾患によって治療方針が変わってくるため、頸肩腕痛を引き起こす疾患との鑑別が大変重要となります。 肩軟部組織の変性疾患(腱板断裂、凍結肩など) 肩関節の運動痛や肩関節可動域制限を認めれば、頸椎疾患以外と考えます。C5神経根症と腱板断裂は、ともに上腕近位外側の疼痛を訴え、関節の外転ができなくなるので鑑別を必要とします。 C5神経根症では、三角筋や上腕二頭筋で筋力低下を生じることが多いですが、腱板断裂では上腕二頭筋の筋力は通常正常です。 胸郭出口症候群 (thoracic outlet syndrome) 頸肋、中斜角筋、前斜角筋、鎖骨および第1肋骨、小胸筋などにより腕神経叢と鎖骨下動脈が胸郭出口部で圧迫され、上肢の疼痛、しびれ、握力低下、重だるさなどが生じます。 ライトテスト(Wright test)、モーレイテスト(Moley test)、アドソンテスト(Adson test)が陽性となります。胸郭出口症候群の症状は前腕尺側に多いのが特徴です。 肘部管症候群(cubital tunnel syndrome) 尺骨神経の絞扼性神経障害で尺骨神経溝にティネル様徴候(Tinel)がみられます。環指尺側から小指にかけてのしびれや麻痺など感覚障害が生じ、進行すると環指と小指の変形が起きます。 手根管症候群(carpal tunnel syndrome) 正中神経の絞扼性神経障害手根管部でティネル様徴候(Tinel)が陽性になります。母指から環指の痺れや疼痛など生じ、指先の症状は夜間や早朝に強い傾向があります。 母指球筋萎縮が進むと猿手変形が生じます。確定診断には、当該神経の神経伝導速度を測定が必要です。 脊随腫瘍 (spinal cord tumor)、脊椎腫瘍(spiatumor) MRIで容易に確定診断することが可能です。稀に パンコースト(Pancoast)腫瘍により、主に尺骨神経側に神経症状を生じることもあるので注意が必要です。 頚椎椎間板ヘルニアの治療法について 頚椎症状、神経根症、脊髄症に分けて説明します。椎間板ヘルニアは自然吸収されることが多いため、無理に手術を選択すべきではないと考えます。 頚椎症に対する治療 頚椎症状のみで手術療法を行うことはあまりありません。消炎鎮痛剤などの薬物療法、トリガーボイントブロック、ストレッチなどを行います。 神経根症に対する治療 ●保存療法 消炎鎮痛薬などの薬物療法を行います。頸椎カラーを装着して頸部の安静を図ることもあり、痛みが激しい場合には、副腎皮質ステロイドの内服、硬膜外ブロック、神経根ブロック、星状神神経ブロックなどを併用します。ほとんどの症例で、保存療法により2〜3カ月以内に軽快することが多いです。 ●手術療法 保存療法を2〜3カ月続けても効果がない場合や、進行性の麻痺を認めた場合には手術を行います。推間板ヘルニアは脊髄や神経根の前方にあるため、前方除圧固定術(anterior decompression and fusion)を選択することが多いです。 前方除圧固定術は胸鎖乳突筋の内側から進入し、気管と食道を内側によけて椎間板に到達し、当該高位の椎間板やヘルニアを完全に摘出し、椎体間に腸骨から採取した骨や人工物(インプラント)を移植して固定します。 アライメントの維持や移植骨の脱転を予防する目的で、前方にプレートを使用することもあります。神経根症をきたす椎間板ヘルニアは傍正中型あるいは外側型なので、後方から部分椎弓切除と椎間孔切除を行った上でヘルニアを摘出することもあります。 脊髄症に対する治療 ●保存療法 軽度であれば、鎖椎カラーで頸部の安静を図り、椎間板ヘルニアの自然吸収を待ちます。しかし痙性歩行、手指巧緻運動障害により日常生活に支障がある場合や、排尿障害がある場合には、機能障害が永続性となることを避けるために手術を行います。 ●手術療法 脊髄症の場合でも、通常は1椎間での障害で脊髄の前方にヘルニアがあるので、神経根症と同様に前方除圧固定術を選択することが多いです。しかし、椎間板ヘルニアの高位以外でも脊柱管の狭窄がある場合には、後方から椎弓形成術 (laminoplasty)を選択することもあります。 椎弓形成術は脊髄の広範囲な除圧を容易に行うことができ、さらに脊髄を保護する脊柱の後方要素を温存することができます。合併症は比較的少ないですが、頸椎後方伸筋群に侵襲を加えるため、術後に頸部痛をきたしやすいという難点があります。 以上、頚椎椎間板ヘルニアの辛い症状の種類と、似た病気、検査と治療法と題して記させて頂きました。参考になれば幸いです。 監修:院長 坂本貞範
2021.08.05