専門医が語る、選ばれる再生医療
の安全性と秘密
【再生医療】治療の新たな選択肢に!
低リスクで元の元気な体に戻る治療法をプロがお話します!
なぜ!?当院が選ばれるのか??
そこには幹細胞の強さに秘密があった!!
独自の培養技術について詳しく解説を行います。
症例紹介
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- 股関節の症例
- 関節の症例
- 幹細胞治療の症例
痛み「9」から「2」へ激減!人工関節を回避できた! 50代女性の患者様は、長年にわたり両股関節の深刻な痛みに悩まされてきました。特に左股関節は、変形性股関節症(臼蓋形成不全)が進行し、主治医からは人工関節置換術を強く勧められるほどでした。治療前の痛みは、日常生活を送るのも困難な10段階中9という非常に深刻な状態でした。人工関節以外の選択肢はないのかと、深く悩まれていました。 しかし、当院の再生医療"リペア幹細胞"の投与により、劇的な変化が現れました。初回投与からわずか1か月後には、痛みが10段階中9から2へ大幅に改善し、人工関節置換術を回避することができました。幹細胞が軟骨の損傷部位で修復作用を発揮し、炎症を抑えた結果、長年の苦痛から解放され、活動的な生活を取り戻されたのです。 いったいどのような治療で、このような驚異的な回復を実現したのでしょうか。 治療前の状態 今回ご紹介する50代の女性患者様は、15年前から両股関節の痛みに悩まされていました。診断は、臼蓋形成不全による両変形性股関節症です。 12年前に右股関節に対しては寛骨臼回転骨切り術を受けられましたが、左股関節の変形は進行。すでに軟骨がすり減り、激しい痛みのため歩行困難となり、日常生活に大きな支障をきたしていました。 治療前の痛みの程度は、10段階中9という非常に深刻な状態でした。主治医からは、最終手段として人工関節置換術を強く勧められていましたが、当院の再生医療を選択されました。 "リペア幹細胞"とリペアセルクリニックの特徴 レントゲン所見 レントゲンにて関節の狭小化を認めます。 <治療内容>両変形性股関節症に"リペア幹細胞"5000万個を2回投与 本症例では、両変形性股関節症に対して、当院独自の再生医療である"リペア幹細胞"治療を実施いたしました。この治療は、患者様ご自身の脂肪組織から採取・培養した幹細胞を使用するもので、今回は5000万個の幹細胞を、患部の関節内に直接投与しました。投与は合計2回実施しました。 治療後の変化 初回投与後1週間:徐々に痛みが軽減し始め、治療効果を実感されました。 初回投与後1か月:痛みが劇的に改善しました。治療前の痛みの程度は10段階中9でしたが、わずか1か月で痛みが10段階中2まで大幅に改善しました。 投与された"リペア幹細胞"は、軟骨の損傷部位で集中的に修復作用を発揮し、変形性股関節症特有の炎症を強力に抑えることで、痛みが大幅に軽減されました。 この劇的な改善により、患者様は当初主治医から提案されていた人工関節置換術を回避することができました。 50代という活動的な年代で、ご自身の関節を温存し、再び痛みなく歩ける喜びを実感されています。
2025.12.30 -
- 脳神経・脊髄の症例
- 頚椎・腰椎ヘルニア・狭窄症・脊髄損傷・脊髄梗塞などの症例
- 幹細胞治療の症例
80代女性の脊髄腔内ダイレクト注射による幹細胞治療 4年前の頚椎手術後も続いていた両足のふらつきや手のしびれ。80代の患者様は「もう年だから仕方ない」と諦めかけていらっしゃいました。 しかし、"リペア幹細胞"の投与によって症状の改善を実現しました。わずか2回の投与で立ち上がりから歩行までスムーズになり、料理も楽しめるように。いったいどのような治療でこの劇的な変化が起きたのでしょうか。 患者様の治療前の状態 4年前の頚椎手術後も多くの症状が残存 両足のふらつきと力の入りにくさ 右手の痛み・しびれで日常生活に支障 加齢による衰えへの不安 頚椎症性脊髄症の手術を受けて4年経っても、これらの後遺症に悩まされていらっしゃいました。 頚椎症性脊髄症とは 医学用語で「頚椎症性脊髄症」と呼ばれるこの病気は、加齢により頚椎が変形して脊髄を圧迫する疾患です。手術が遅れると神経の回復が困難になることもあるのです。 従来治療の限界 手術で脊髄の圧迫は取り除かれても、一度損傷した神経機能の回復には限界があります。 特に手術から時間が経過した後遺症や、高齢の方の神経機能回復は現在の保険診療では困難です。リハビリを続けても改善が頭打ちになってしまうことが多いのが現状なのです。 "リペア幹細胞"とリペアセルクリニックの特徴 通常の幹細胞治療では、点滴による静脈注射が一般的ですが、当院では、損傷部位に直接幹細胞を届けるため、国内ではほとんど行われていない、脊髄腔内へ直接投与する脊髄腔内ダイレクト注射を提供しています。これは、腰椎麻酔と同様の方法で、幹細胞をくも膜下腔に投与し、髄液の流れに乗せて、損傷部位に直接届ける画期的な方法です。当院の経験から、脊髄・神経系の疾患に対しては、このダイレクト注射が特に良い効果を示すことがわかっています。 また、点滴治療においては、厚生労働省への届出・受理を経て、2億個の一括投与を提供しています。リペアセルクリニック独自の治療経験から、この投与量の最適化により、治療効果が向上していることが明らかになっています。 MRI所見 受診時のMRIでは、頚髄の圧迫は手術で改善されていました。 <治療内容>脊髄くも膜下腔に直接"リペア幹細胞"2500万個を計3回投与 この患者様には、脊髄くも膜下腔に"リペア幹細胞"2500万個を計3回投与いたしました。 治療効果と患者様の変化 1回目投与後:下肢に力が入りふらつきが改善 2回目投与後:立ち上がりから歩行までスムーズに 右手の痛み・しびれが軽減し料理が楽に 日常生活で困る場面がなくなった 2500万個の幹細胞を3回に分けて投与する治療計画で、わずか2回の投与後から劇的な改善が見られました。 「もう料理で困ることがなくなりました」と患者様も喜んでいらっしゃいます。幹細胞は投与後1年間は神経回復のために働き続けるため、さらなる改善も期待できます。 手術後の後遺症にお悩みの方へ 頚椎や腰椎の手術後も後遺症に苦しんでいる方、年齢による衰えを感じている方にも、再生医療という新しい治療の可能性があります。 「もう年だから」と諦める前に、ぜひ一度カウンセリングへお越しください。 https://www.youtube.com/watch?v=BtcxNzi06po
2025.12.28 -
- 股関節の症例
- 幹細胞治療の症例
- PRP治療の症例
痛み10段階中10が2に!人工関節を回避! 20年以上も左股関節の痛みに悩まされ、人工関節の適応と言われていた60代女性の患者様は、“リペア幹細胞”によって痛みが劇的に軽減しました。10段階中10だった激痛が、わずか半年で2まで改善し、人工関節を回避してご自分の足で歩き続けることができるようになったのです。いったいどのような治療で、このような素晴らしい回復を実現できたのでしょうか。 治療前の状態 幼少時から臼蓋形成不全と診断 12歳時に股関節手術を受けるも40代で痛み再発 20年以上痛み止めで過ごし半年前から悪化 痛みの程度は10段階中10で人工関節の適応 この患者様は幼少時より左股関節の臼蓋形成不全と診断されており、12歳の時に左股関節の手術を受けておられます。その後は股関節の調子は良かったのですが、40代で痛みを感じるようになりました。その後20年以上、痛み止めの内服で過ごされてきましたが、半年前から痛みが悪化し、主治医からは手術の適応と言われました。人工関節は回避したいと再生医療を頼って受診されました。 臼蓋形成不全とは股関節の形成不全で、骨頭への臼蓋のかぶりが浅い状態のことです。若い時期に発見された場合、将来の変形性関節症を予防するために骨盤の骨を切って臼蓋の屋根をかぶせる手術を行うこともあります。しかし軟骨がすり減り末期の変形性関節症に進行してしまうと、人工股関節置換術が選択されます。手術技術や人工関節自体は進歩していますが、人工関節が適応と言われた患者様は不安や心配を抱え、できれば避けたいと思われるはずです。現在の保険診療の範囲では、軟骨を再生させる治療法はありません。 リペアセルクリニックの特徴 詳細については、こちらで当院独自の再生医療の特徴を紹介しています。 当院では、高齢の方や末期の変形性関節症に対しても、積極的に治療を行い、患者様に満足のいく治療効果をもたらしてきました。この成果は、当院の「細胞の質と量へのこだわり」と「関節内ピンポイント注射」によるものと考えています。 リペアセルクリニックは「股関節の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 レントゲン所見 レントゲンにて関節の狭小化を認めます。 <治療内容>左股関節に1億個の幹細胞を2回投与+PRP 左股関節に1億個の“リペア幹細胞”を2回投与いたしました。 治療後の変化 初回投与1か月後に痛みが3まで軽減 最終投与半年後に痛みが2まで改善 人工関節を回避してご自分の足で歩行継続 患者様には左股関節に5,000万個の“リペア幹細胞”を独自のピンポイント注射で計3回投与いたしました。初回投与後1か月には、投与前は10段階中10だった左股関節の激痛が3まで劇的に軽減しました。最終投与半年後には痛みは2とさらに改善し、人工関節を回避することができました。 “リペア幹細胞”が股関節の軟骨欠損部位に確実に届けられ、組織の再生・修復を促したことで、このような素晴らしい回復が実現したのです。20年以上も痛みに悩まされ、人工関節の適応と言われていた患者様が、ご自分の足で歩き続けることができるようになりました。 人工関節が必要と言われた方で、まだまだご自分の足で歩きたい方に、当院の再生医療は新たな可能性を提供します。あなたも新たな一歩を踏み出してみませんか。 当院独自の“リペア幹細胞”、そして国内で珍しい分化誘導技術を用いた“リペア幹細胞プラス”で、『次世代の再生医療』を提供します <治療費> 関節1部位 幹細胞数 ( 2500万個~1億個) 投与回数( 1回 )132万円( 税込 )/2500万個 分化誘導( 1回 )55万円( 税込 ) PRP治療 16.5万円(税込) <起こりうる副作用> 脂肪採取部の内出血や創部感染、傷跡などが起こることがあります。 症状によりMRIやCTなどの検査を受けて頂く事があります。 ※こちらでご紹介している症例は一部の患者様です。掲載以外の症例も多数ございます。ご自身の症状については、お気軽にご相談ください。 変形性股関節症の再生医療についてはこちらで詳しく説明しています。↓ 再生医療医師監修:黄金勲矢
2025.12.26 -
- 脳卒中の症例
- 脳神経・脊髄の症例
- 幹細胞治療の症例
ふらつきが消失!書字も改善! 2か月前に脳梗塞を発症し、右半身麻痺と構音障害に悩まされていた30代の患者様。“リペア幹細胞”によって劇的な改善を実現しました。右半身に力が入るようになってふらつきが無くなり、うまく書けなかった文字もしっかり書けるようになったのです。 発症からわずか2か月で治療を開始し、確かな効果を感じていただけたのは、いったいどのような治療だったのでしょうか。 治療前の状態 2か月前に脳梗塞を発症 右半身麻痺と構音障害が後遺症として残る 若干の改善は見られるも回復が心配 まだ30代という若さで後遺症に悩む この患者様は2か月前に脳梗塞を発症し、発症時は右半身麻痺と構音障害が見られました。2か月経った現在、若干の改善は認められましたが、このまま後遺症として残るのではないかと心配され、幹細胞治療を希望されました。まだ30代という若さでの発症だったため、今後の人生を考えると、できる限りの回復を目指したいというお気持ちが強くありました。 脳梗塞の発症直後はリハビリテーションが中心となりますが、保険診療の範囲では、損傷した脳神経を再生させる根本的な治療法はありません。若干の自然回復は期待できるものの、後遺症が残ってしまうケースも多く、特に若い患者様にとっては今後の生活への不安が大きくなります。 “リペア幹細胞”とリペアセルクリニックの特徴 詳細については、こちらで当院独自の再生医療の特徴を紹介しています。 当院では厚生労働省への届出・受理を経て、2億個の幹細胞一括投与を提供しています。リペアセルクリニック独自の豊富な治療経験から、この投与量の最適化により、治療効果がさらに向上することがわかっています。 これまで主流だった骨髄幹細胞の代わりに、 脂肪幹細胞を使う治療が世界的に広まっています。 脂肪幹細胞は採取が簡単で、患者への負担も少ないだけでなく、 優れた治療効果を発揮することから、新しい再生医療として期待されています。 参考文献: Zuk PA. Mol Biol Cell. 2010 Yousefifard et al., 2020 El-Badawy et al., 2016 脳卒中は再発リスクが高く、軽度の症状でも安心できません。 治療後やリハビリ中の再発リスクに加え、生活習慣病による体質的な問題もあるため、 再発抑制が極めて重要です。 リペアセルクリニックは「脳卒中」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 MRI所見 MRIにて脳梗塞を認めます。 <治療内容>“リペア幹細胞”2億個を計3回点滴投与 この患者様には、“リペア幹細胞”2億個を計3回点滴投与しました。 治療後の変化 右半身に力が入るようになった ふらつきが無くなった 書字がうまくできるようになった こちらは、片足でジャンプをしていただいている様子です。治療前よりバランス能力が向上しています。 点滴投与された“リペア幹細胞”がホーミング効果により損傷した脳神経細胞に到達し、神経の修復・再生を促したことで、このような素晴らしい改善が実現したのです。 こちらは診察時の様子です。 3回目の投与後には、右半身に力が入るようになってふらつきが無くなり、うまく書けなかった文字もしっかり書けるようになるなど、確かな効果を感じていただきました。 脳梗塞の後遺症に悩まれている方、特に発症から間もない方に、当院の再生医療は新たな可能性を提供します。早期に治療を開始することで、より高い回復が期待できます。あなたも新たな一歩を踏み出してみませんか。 投与後の症状の変化を記録していただきました。 <治療費> 幹細胞点滴 投与回数(1回) 242万円(税込) <起こりうる副作用> 脂肪採取部の内出血や創部感染、傷跡などが起こることがあります。 症状によりMRIやCTなどの検査を受けて頂く事があります。 ※こちらでご紹介している症例は一部の患者様です。掲載以外の症例も多数ございます。ご自身の症状については、お気軽にご相談ください。 脳卒中の再生医療についてはこちらで詳しく説明しています。↓ 再生医療医師監修:黄金勲矢
2025.12.21
自分の細胞を活用し、
蘇らせる「再生医療」とは?
薬での治療は限界ではないだろうか。本当に手術は必要だろうか。
そんな思いで悩んだり、あきらめたりしていませんか?
ケガをしても傷跡が少しずつ薄くなる・・
当たり前のようですが、あなた自身の細胞には、弱ったところ、傷ついたところを修復するチカラがあります。
その細胞のチカラを最大限に引き出して治療を行うことを「再生医療」と呼び、おすすめしています。
リペアセルクリニックの特長
当クリニックは、疾患・免疫・美容という分野すべてを、自己細胞を用いた最先端の医療で行うことができる国内でも珍しい部類の医療機関です。
CPC(細胞培養加工施設)の高い技術により、冷凍しない方法で幹細胞を投与できるので高い生存率を実現。
ご自身の細胞や血液を利用するため、アレルギーや拒絶反応といった副作用の心配が少ないおすすめの治療方法です。
- 2億個の細胞を
投与可能※但し適応による - 高い
安全性 - 入院不要
日帰り - 身体への
負担が少ない - 高い技術力を
もったCPC
LICENSE厚生労働省届出済医療機関
第二種・第三種再生医療等提供計画 届出済
リペアセルクリニックは、第二種・第三種再生医療提供計画を厚生労働省に届出し、受理されました。
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自己脂肪由来幹細胞を用いた脳血管障害の治療
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自己脂肪由来幹細胞を用いた糖尿病の治療
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自己脂肪由来幹細胞を用いた肝障害の治療
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自己脂肪由来幹細胞を用いた変形性関節症治療
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自己脂肪由来幹細胞を用いた顔面萎縮症、皮膚再生治療
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自己脂肪由来幹細胞を用いた脊髄損傷の治療
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自己脂肪由来幹細胞を用いた慢性疼痛の治療
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多血小板血漿(PRP)を用いた変形性関節症の治療
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多血小板血漿(PRP)を用いた筋腱炎、靭帯炎の治療
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多血小板血漿(PRP)を用いた皮膚再生療法
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悪性腫瘍の予防に対する活性化NK細胞を用いた細胞治療
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自己脂肪由来幹細胞と自己前骨芽細胞分化誘導上清液を用いた変形性関節症の治療




















当クリニックでは、国内では数少ない自己の幹細胞を用いた「変形性関節症」「脳卒中」「糖尿病」「肝障害」「肌の再生」などの最先端の再生医療および、PRP(多血小板血漿)の関節内投与を再生医療安全確保法のもと、自由診療にて提供しています。再生医療とは、厚生労働省によって受理されることで行うことのできる治療となります。
坂本理事長のブログ
藤間院長のブログ
スタッフブログ
トピックス
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- 脳卒中
- 頭部
「最近、会話が噛み合わないと感じる」 「簡単な話が理解できず、人間関係に支障をきたしている」 言葉が通じず会話が成り立たなくなると、多くの方はまず認知症を疑います。しかし、会話や言葉の意味が理解しにくくなる原因として、ウェルニッケ失語症(感覚性失語)と呼ばれる失語症の一種が存在します。 ウェルニッケ失語症(感覚性失語)は、脳の言語理解に関わる領域が障害されることで、言葉の意味の理解が難しくなる失語症のひとつです。原因となる脳の病気が進行したり再発したりすると、認知機能や運動機能にも影響が及ぶおそれがあります。 本記事では、現役医師がウェルニッケ失語症について詳しく解説します。 ウェルニッケ失語症の原因 ウェルニッケ失語症の治療法 ウェルニッケ失語症の悪化を防ぐためのポイント 記事の最後にはよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ウェルニッケ失語症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ウェルニッケ失語症(感覚性失語)とは 項目 内容 原因 言語理解に関わる脳領域(ウェルニッケ野)の損傷 主な症状 流暢だが意味の伝わりにくい発話、言葉の理解困難、言い間違いの頻発 自覚の有無 発話内容や理解の問題に対する自覚の乏しい傾向 知能・記憶 知能や記憶が保たれ、他の認知機能は比較的保たれる傾向 誤解されやすい点 認知症と誤認されやすいが、主体は言語機能の障害 よく困る場面 家族との会話、電話応対、テレビ視聴での理解困難 対応のポイント 早期診断とリハビリテーション開始、医師への相談 (文献1)(文献2) ウェルニッケ失語症は、言葉を理解する脳の領域(ウェルニッケ野)が損傷されることで起こる失語症です。話す量は多く流暢ですが、言葉の選び方や内容がちぐはぐになり、相手に意味が伝わりにくくなります。 音としての言葉は聞こえているものの、意味と結びつきにくいため、会話がかみ合わず認知症と誤解されることもあります。外見や日常動作からは気づきにくいため、会話の様子を注意深く観察することが重要です。 治療は、原因となる脳の病気への対応と言語理解を高める訓練を組み合わせ、日常生活での工夫や環境調整も行いながら進めていきます。 ウェルニッケ失語症とブローカ失語症の違い 項目 ウェルニッケ失語症 ブローカ失語症 障害される部位 左側頭葉の言語理解の領域 左前頭葉の言語産出の領域 発話の特徴 流暢だが意味の伝わりにくい発話 言葉が出にくく非流暢な発話 言葉の理解 聞いた内容の理解が難しい傾向 聞いて理解する力は比較的保たれる 読み・書き 文章の理解や書字が難しい傾向 読む力は残るものの、書字が難しい傾向 会話の印象 話は多いが、内容が支離滅裂 話したいが言葉が出ず短い発話 本人の自覚 問題を自覚しにくい傾向 話せないもどかしさを自覚しやすい 伝わりにくさ 伝えても理解されにくい 理解できるが、表現が困難 リハビリの方向性 言語理解の再獲得と意味処理の訓練 発話生成の練習と伝達手段の確立 (文献3)(文献4) ウェルニッケ失語症の特徴は、言語理解の障害により流暢に話せても意味が伝わりにくくなることです。一方、ブローカ失語症の場合、理解は保たれるものの、言葉が出にくく非流暢な話し方になります。 両者は損傷部位が異なるため、症状や必要な支援も異なります。違いを把握し、適切なリハビリやコミュニケーション方法を医師の指導のもと選択しましょう。 以下の記事では、ブローカ野とウェルニッケ野の違いを詳しく解説しています。 ウェルニッケ失語症の症状 症状 詳細 言葉の意味が理解できない 聞こえた言葉や文章の内容が正しく理解できない状態 話す内容がまとまらない 流暢に話せるが意味が通じず支離滅裂になりやすい状態 症状への自覚が乏しい 発言の誤りや会話の不適切さに気づきにくい傾向 ウェルニッケ失語症では、脳の言語理解を担う領域が損傷されるため、聞こえた言葉の意味がつかみにくくなり、会話がかみ合いにくくなります。 発話そのものはスムーズでも、言葉の選び方や内容がまとまりにくく、支離滅裂な印象になりがちです。さらに、自分の発言の誤りや会話のずれに気づきにくいため、ご本人と周囲との間で認識のギャップが生じやすいことも特徴です。 言葉の意味が理解できない ウェルニッケ失語症は、言語理解を担う左側頭葉(ウェルニッケ野)の損傷によって生じます。 会話がかみ合わない、的外れな返答をする、話は流暢でも意味が通じない、読み書きが困難になるといった症状が現れるのが特徴です。 左側頭葉(ウェルニッケ野)は耳や目から取り込んだ言語情報に意味を付与する役割を担っているため、損傷が起こると音声や文字そのものは認識しても、その内容の理解は難しくなります。 こうした症状は、言語情報を受け取って解釈し、適切に応答するまでの過程で行われる「意味づけ」が途絶えることによって生じると考えられています。 話す内容がまとまらない ウェルニッケ失語症では、言語の意味を処理する機能が障害されるため、流暢に話せても内容がまとまらず理解しにくくなるのが特徴です。 言い間違いや実在しない言葉が混ざることも多く、話は長くても相手に伝わる情報が少ない「空虚な発話」と呼ばれる状態になることがあります。 ご本人は症状を自覚しにくいため、周囲が戸惑いやすい一方で、適切な言語訓練を継続することで、会話のわかりやすさが改善していく例も報告されています。 症状への自覚が乏しい 項目 詳細 障害される部位 言葉の意味を理解する脳の領域(ウェルニッケ野)の損傷 自覚しにくい理由 自分の言葉の誤りや会話のズレを認識しづらい 症状の背景 音声の認識や発声は保たれるため、「自分は話せている」と認識しやすい 主な問題点 言葉の意味処理が障害され、問題の所在を自分で把握しにくい状態 ウェルニッケ失語症では、言葉の意味を処理する脳の領域が障害されるため、自分の発言の内容や相手の反応を正しく把握しにくくなります。 音声の認識や発話は保たれるため、ご本人は「話せている」と感じやすく、発話内容の誤りに気づきにくい傾向があります。 ウェルニッケ失語症の原因 原因 詳細 脳梗塞による左側頭葉の損傷 言語理解を担う領域への血流障害による神経細胞の損傷 脳出血によるウェルニッケ野の障害 出血による圧迫や破壊で生じる言語中枢の機能低下 その他の原因(脳腫瘍・頭部外傷・脳炎など) 腫瘍や外傷、炎症による言語領域への影響 言葉の意味を理解する脳の領域が傷つくと、ウェルニッケ失語症が生じます。主な原因は、脳梗塞による血流障害や脳出血による出血・圧迫で、神経細胞の機能低下によって起こります。 そのほか、脳腫瘍、頭部外傷、脳炎などでも同じ領域が障害されることがあり、原因によって治療方針が大きく異なるため、画像検査などによる評価が欠かせません。 ウェルニッケ失語症は認知症とは性質が異なりますが、適切なリハビリテーションにより言語機能の改善がみられる場合があります。 脳梗塞による左側頭葉の損傷 ウェルニッケ失語症は、脳梗塞により左側頭葉後部が障害されることで生じます。脳梗塞は血管が詰まり血流が途絶える疾患で、とくに中大脳動脈後方枝が閉塞すると、神経細胞が急速に機能不全に陥ります。 左側頭葉後部には言語理解を担うウェルニッケ野があり、右利きでは約95.5%、左利きでは約61.4%の人が言語中枢を左半球に持つため、この領域の損傷が言語障害に直結します。 脳梗塞では、発症から短時間のうちに不可逆的な変化が進行するため、できるだけ早期に血流を再開させる治療が重要です。 以下の記事では、脳梗塞について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説 脳梗塞後遺症で性格が変わる?主な変化と原因を解説 脳出血によるウェルニッケ野の障害 脳出血は、長期の高血圧により脳血管が破裂し、周囲の脳組織に出血が広がる疾患です。左側頭葉後部のウェルニッケ野周辺で出血が起こると、血腫による直接的な圧迫と周囲の浮腫により神経細胞が損傷されます。 高血圧性脳出血の好発部位である被殻や視床からの出血が拡大した場合や、ウェルニッケ野を栄養する後大脳動脈分枝の細動脈が破綻した場合に、この領域が障害されます。 出血した血液成分が神経毒として働き数時間で細胞死が進行し、とくに急性期の血腫拡大が症状をさらに悪化させるため、血圧管理と早期の止血処置が不可欠です。 以下の記事では、脳出血について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】脳出血とは|症状・種類・原因を詳しく解説 脳出血で後遺症なしの確率は?発症後の意識レベルによる予後や余命を解説 その他の原因(脳腫瘍・頭部外傷・脳炎など) 原因 障害の起こり方 主な特徴 発症の経過 脳腫瘍 腫瘍の増大によるウェルニッケ野の圧迫・血流障害 浮腫や出血を伴い、ゆるやかに言葉の理解が低下 徐々に進行することが多い 頭部外傷 衝撃による脳の揺れや打撲でウェルニッケ野を損傷 出血や脳のむくみにより神経細胞が圧迫 怪我の後、数日以内に症状出現 脳炎 ウイルス感染による炎症や腫れでウェルニッケ野が障害 発熱や頭痛に続き急な言葉の障害が出現 数時間〜数日の急速な発症 (文献5) 脳腫瘍、頭部外傷、脳炎などでも言語理解を担う部位が損傷し、ウェルニッケ失語症が生じることがあります。これらは脳卒中と異なり、急激に発症する場合、もしくは徐々に進行する場合もあるため、日常の変化に注意が必要です。 言葉の理解や会話の様子に違和感を覚えた場合は、画像検査と言語評価が必要です。また、治療の基本方針は、原因疾患への対応と言語症状へのリハビリテーションを並行して行います。 以下の記事では、脳腫瘍及び、脳炎の後遺症について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳膿瘍の手術で起こりうる後遺症を医師が解説|術後のリハビリ方法も紹介 脳炎で起こりうる後遺症を医師が解説|回復の見込みについても紹介 ウェルニッケ失語症の治療法 治療法 詳細 基礎疾患の治療(脳梗塞・脳出血・脳炎など) 原因となる疾患を治療し、脳機能の悪化を防ぐ リハビリテーション(言語理解の再学習など) 言語理解や表現を回復する訓練による機能改善の促進 コミュニケーション支援 身振りや文字、環境調整による意思疎通の補助 脳損傷に対する再生医療 幹細胞治療などによる損傷部位の機能回復を目指す ウェルニッケ失語症の治療では、まず脳梗塞や脳出血、脳炎などの基礎疾患を適切に治療し、脳機能の悪化を防ぐことが重要です。 その上で、言語理解や表現力を回復するためのリハビリテーションを継続し、身振りや文字などを活用したコミュニケーション支援を組み合わせることで、日常生活での意思疎通を補います。 近年、幹細胞を用いた再生医療に関する研究も進められていますが、現在のところ適応となる病態や条件が限られており、実施している医療機関も多くはありません。 利用を検討する際は、医師に相談し、適応条件や得られる可能性のある効果や考えられるリスクなどについて十分な説明を受けた上で判断することが大切です。 以下の記事では、ウェルニッケ失語症の原因となる脳梗塞の治療について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞の後遺症は治る?治療法や種類・症状別に医師が解説 脳梗塞は症状が軽いうちの治療が大切!原因と対策を解説【医師監修】 基礎疾患の治療(脳梗塞・脳出血・脳炎など) 基礎疾患 詳細 脳梗塞 血栓溶解療法により血流を回復し神経細胞の壊死を抑える対応 脳出血 血腫除去により脳への圧迫を軽減し二次損傷を防ぐ対応 脳炎 抗ウイルス薬やステロイドで炎症や浮腫を抑え神経細胞を保護する対応 脳腫瘍 手術や放射線などで腫瘍を縮小し言語中枢への圧迫を解除する対応 ウェルニッケ失語症は、言語理解に関わる脳領域が損傷されることで起こるため、まずは原因となる基礎疾患を適切に治療することが重要です。 脳梗塞では、血流をできるだけ早く回復させて神経細胞の障害を最小限に抑えることが治療の中心となります。脳出血では、必要に応じて血腫を除去し、周囲の脳への圧迫を軽減することが目標となります。 脳炎や脳腫瘍では炎症や圧迫を取り除き、神経細胞の機能を守ることが目的です。これらの治療により、言語機能の改善に向けた土台が整い、リハビリの効果が高まりやすくなります。 以下の記事では、脳梗塞のリハビリについて詳しく解説しています。 リハビリテーション(言語理解の再学習など) リハビリ内容 目的・特徴 絵カードや写真を使う練習 物の名前をいう力や言葉を思い出す力の向上 短い文章の聞き取りと応答 聞いた内容を理解し、簡単に返事する力の練習 絵や映像を言葉で説明 内容を整理して言葉で伝える力の強化 書く練習(段階的) 単語や文を書く力を少しずつ回復 ジェスチャーやノートの活用 言葉以外の手段で意思を伝える補助 家族・介護者への指導 わかりやすい話し方や環境づくりの支援 ウェルニッケ失語症では、脳の神経可塑性(しんけいかそせい)により損傷後も新しい回路を形成できるため、言語リハビリテーションが有効です。 言語聴覚士は検査結果に基づいて訓練内容を計画し、音声の識別や語彙の再学習などを行い、言語理解の回復を目指します。 急性期は意思疎通手段の確保、回復期は意味理解や文の処理を高める訓練が中心となります。 また、家庭での短時間の練習も大切です。音読やメモ書き、家族とのゆっくりとした会話を続けることで脳が刺激され、リハビリの効果を高めることが期待できます。 とくに発症後12カ月以内は言語機能が回復しやすい時期とされており、この期間に集中的なリハビリテーションを行うことが有効と報告されています。 コミュニケーション支援 方法・視点 詳細 間違い指摘を避ける 自尊心を保ち、会話意欲を維持する支援 「はい・いいえ」質問とジェスチャー 理解負荷を減らし、意思確認を容易にする支援 非言語手段の併用 絵や描画などを組み合わせ、伝達成功率を高める支援 意思汲み取りと成功体験の重視 伝えられた喜びを感じさせ、発話意欲を高める支援 言葉が通じにくい経験が続くと会話への意欲が低下しやすくなるため、相手の表現を否定せず意思疎通しやすい環境を整えることが大切です。 単純な質問やジェスチャーを組み合わせると、理解の負担を軽減できます。成功体験が増えることでコミュニケーションが円滑になります。 また、絵や文字などの非言語的手段を活用すると、伝える手段が広がり生活の質が向上します。 周囲の工夫により会話参加の意欲やリハビリの効果が高まることが期待されるため、できないことに対しても根気よく長期的な視点で取り組むことが大切です。 脳損傷に対する再生医療 ウェルニッケ失語症に対する治療の選択肢として、再生医療を用いる取り組みが検討される場合があります。 脂肪由来の幹細胞は、体内で他の細胞に変化する分化能や、生体内環境に作用する働きが報告されており、脳の損傷部位に関連した研究が進められています。 再生医療は、損傷した脳組織の修復や機能回復を目的として検討されている治療法です。しかし、疾患の状態によっては適用できない場合も多く、実施する医療機関も限られるため、希望する場合は医師に相談し、内容を十分に確認しましょう。 以下の記事では再生医療について詳しく解説しています。 ウェルニッケ失語症の悪化を防ぐためのポイント 悪化を防ぐためのポイント 詳細 基礎疾患(脳梗塞・脳出血など)の再発予防を徹底する 血圧管理や生活習慣改善による脳血管障害の再発予防 リハビリテーションを早期に開始し継続する 言語機能の維持と回復のための継続的な訓練 家族・周囲が適切なコミュニケーション支援を受ける 理解しやすい環境づくりによる意思疎通の促進 ウェルニッケ失語症では、脳梗塞や脳出血といった基礎疾患が再発すると症状が悪化する可能性があります。そのため、血圧管理や生活習慣の見直しが重要です。 言語リハビリテーションは早期に開始して継続することで機能維持につながります。また、家族や周囲が適切なコミュニケーション方法を理解し環境を整えることで、日常の意思疎通が円滑になり患者の不安や負担が軽減されます。 基礎疾患(脳梗塞・脳出血など)の再発予防を徹底する 観点 詳細 再発でウェルニッケ野の二次損傷が起きる 追加の血流障害や圧迫で言語理解機能が低下する可能性 再発率が高い 危険因子の放置による脳梗塞・脳出血の再燃リスク 服薬・生活習慣管理で再発抑制が望める 血管保護により再発リスクを低下させ残存機能を守る取り組み 定期通院で早期発見・基礎疾患を防ぐ 画像検査で血管の状態を把握し発作を未然に防ぐ取り組み (文献6) ウェルニッケ失語症では、脳梗塞や脳出血が再発すると新たな脳損傷が生じ、言語理解機能がさらに低下する可能性があります。高血圧や糖尿病などの危険因子を管理し、服薬や生活習慣の改善を継続することが重要です。 また、定期的な通院によりMRIや血管検査を受けることで、再発の兆候を早期に捉えられます。再発予防は、残存する言語機能を守り、リハビリテーションの効果を維持するための重要な取り組みです。 【関連記事】 脳梗塞の予防・再発防止のために食べてはいけないものとは?理想的な食事の摂り方 脳出血は再発する?再発率や血圧管理を含む予防法を解説 リハビリテーションを早期に開始し継続する リハビリテーションの早期開始と継続は、ウェルニッケ失語症の回復に極めて重要です。 脳には損傷後も神経回路を再編成する可塑性(かそせい)があり、早期から言語刺激(聞く・話す・読む・書く)を積極的に行うことで脳の再編成を促し、言語機能の回復が得られやすくなります。 実際、早期リハビリの有益性を示す報告があります。(文献7) 研究では、発症後約10日〜3カ月までに言語機能の改善が著しく、発症から6カ月頃まで改善が続くとされています。この時期に集中的な訓練を行うことは効果的です。 慢性期であっても、高頻度・高強度のリハビリにより日常会話能力が改善した報告があり、これらの介入は効果的です。(文献8) さらに、早期リハビリは廃用症候群(筋力低下、関節拘縮など)の予防にもつながります。(文献9) 継続的なリハビリにより、完全回復に至らなくても補助的コミュニケーション手段と組み合わせて日常生活で使える言葉を取り戻せる可能性があり、言語聴覚療法(SLT)が失語症後の機能改善に有効です。(文献10) 家族・周囲が適切なコミュニケーション支援を受ける 観点 詳細 会話意欲低下を防ぎ言語機能を維持する 指摘を避けジェスチャーを併用し成功体験を増やす支援 二次的合併症(うつ・孤立)を防ぐ 過ごしやすい環境づくりによる心理的安定の確保 家族負担を軽減し長期継続を可能にする 医師の助言による適切な関わり方の習得 (文献11) ウェルニッケ失語症では、言葉が伝わらない経験が続くと会話を避けるようになり、言語機能の低下につながることがあります。 家族が誤りの指摘を控え、ジェスチャーや簡潔な表現を取り入れることで日常生活での成功体験が増え、発話意欲を保ちやすくなります。 また、安心してやり取りできる環境は、うつや孤立といった心理的な悪化を防ぐ上で大切な取り組みです。さらに、言語聴覚士による家族教育を受けることで適切な関わり方を学べるため、支援の負担が軽減され長期的に続けやすくなります。 ウェルニッケ失語症の症状が出た際は早期に受診しよう ご家族が急に言葉を理解できなくなったり、会話が噛み合わないと感じた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 ウェルニッケ失語症は、脳梗塞や脳出血などの重大な脳疾患を原因として発症することが多く、早期の診断と治療が求められます。 とくに脳梗塞や脳出血では発症から治療開始までの時間が治療効果に影響するため、医療機関の受診が重要です。 ウェルニッケ失語症の症状でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、ウェルニッケ失語症の治療において、有効な選択肢のひとつとして再生医療を提案しています。 再生医療は幹細胞を用いた治療のひとつで、脳機能回復を目指した研究が進められています。リハビリとの併用による相乗効果が期待されています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 ウェルニッケ失語症に関するよくある質問 ウェルニッケ失語症は完治しますか? ウェルニッケ失語症では、障害された部位や範囲によっては、元の状態までの回復が難しい場合もありますが、早期から言語リハビリテーションを行うことで、会話能力の改善が期待できます。 とくに発症後2週間で自然回復が最大となり、12カ月で約40%の改善が見込まれると報告されています。 言語聴覚士による訓練を継続することで日常会話が可能になる例もみられますが、症状や損傷範囲には個人差があります。そのため、再発予防や家族のコミュニケーション支援を含めた長期的な取り組みが大切です。 ウェルニッケ失語症の平均寿命は? ウェルニッケ失語症そのものに特有の平均寿命は示されていません。 ただし、脳卒中により失語症を発症した患者は、失語のない患者と比較して死亡率が高く、機能回復率が低いとする報告があります。(文献12) 一方で、適切なリハビリテーションや支援、合併症の管理を継続することで、長期にわたり生活機能を維持できる可能性があります。 これらは寿命そのものを示すものではなく、予後や生活の質に関する指標として理解することが大切です。 ウェルニッケ失語症の家族との向き合い方を教えてください ウェルニッケ失語症の方を支える際は、失語が言語の障害であり、人格や知性が変わるわけではないことを理解し、尊重した関わりが重要です。 伝える際は短くゆっくり話し、簡単な言葉やジェスチャー、絵カードを併用すると意思疎通がしやすくなります。 質問は「はい・いいえ」や選択式が有効です。返答に時間がかかるため急かさず、静かな環境で落ち着いてやり取りをしましょう。 絵や筆談などの補助手段を活用し、判断や意思決定は可能な範囲でご本人に任せることで自立性を支えられます。また、ご家族自身も専門家や支援団体を利用し、負担を軽減することが大切です。 ウェルニッケ失語症と診断された際に受けられる助成制度はありますか? ウェルニッケ失語症は、条件を満たす場合に身体障害者手帳(音声・言語機能障害)の対象となります。また、障害者総合支援法や介護保険制度に基づき、補装具・福祉用具の助成や意思疎通支援などを利用できる場合があります。 ウェルニッケ失語症で利用できる主な助成制度は以下です。 制度名 内容 申請先・対象 身体障害者手帳 3・4級で医療費助成、税制上の優遇措置、コミュニケーション機器の給付 市区町村窓口 障害者総合支援法 補装具(意思伝達装置)・日常生活用具(AAC機器)の支給・貸与 市区町村窓口 介護保険 福祉用具貸与、訪問リハビリ、言語支援機器の利用 要介護認定者 意思疎通支援事業 支援者派遣、道具や絵を用いたコミュニケーション支援(無料) 市区町村(地域生活支援事業) 障害年金・就労支援 障害基礎年金、就労移行支援、復職時の配慮 年金事務所・支援機関 (文献13)(文献14) 制度は自治体によって異なります。具体的な利用条件や手続きについてはお住まいの自治体に相談しましょう。 参考文献 (文献1) Wernicke's Aphasia (Receptive Aphasia)|Cleveland Clinic logo (文献2) Wernicke’s Aphasia|the Aphasia library (文献3) 失語の種類|MSDマニュアルプロフェッショナル版 (文献4) 失語症|社会福祉法人恩賜財団済生会 (文献5) 失語|MSDマニュアルプロフェッショナル版 (文献6) 脳卒中の再発予防|脳卒中療養支援シリーズ (文献7) Early Aphasia Rehabilitation Is Associated With Functional Reactivation of the Left Inferior Frontal Gyrus: A Pilot Study|Go to homepage (文献8) Speech and language therapy for aphasia following stroke|pubMed® (文献9) Ⅶ.リハビリテーション (文献10) Speech and language therapy for aphasia following stroke|pubMed® (文献11) 失語症者の家族から見た失語症状の認識に関する検討|川崎医療福祉学会誌 (文献12) Epidemiology of Aphasia Attributable to First Ischemic Stroke: Incidence, Severity, Fluency, Etiology, and Thrombolysis|American HeartAssociation. (文献13) 障害者支援機器の活用ガイドブック|障害者自立支援機器の活用のための支援体制構築の活性化に向けた調査研究 (文献14) 厚生労働省|意思疎通支援
2025.12.29 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「いつも寒くなると血圧が上がる」 「なぜ寒いと血圧が上がるのだろう?」 「一度病院にかかる方が良いのだろうか?」 このような疑問や不安を抱えながら、寒い時期を過ごされている方も少なくありません。 寒くなると、もともと高血圧ではない方も血圧が上がりやすくなります。 しかし、寒い時期の血圧上昇を放置すると、思わぬ病気を引き起こすリスクがあります。主な例として挙げられるのは、心筋梗塞や脳梗塞などの血管系の疾患、そしてヒートショックです。 本記事では、寒くなると血圧が上がるメカニズムや医療機関受診が必要なサインなどについて解説します。ヒートショックの予防法もお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 寒い時期の血圧上昇について気になる方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 寒いと血圧が上がる理由 寒いと血圧が上がる主な理由は、血管の収縮と自律神経の変化です。自律神経の変化とは、交感神経の活発化を指します。 寒さによる血管収縮と血圧上昇のメカニズム 寒いときには、体内からの熱放散を抑えるために、血管が収縮します。そのため皮膚への血流量が低下し、結果として体表面の温度も低下します。体表面と気温との差を小さくして、熱の放散を抑制するしくみです。(文献1) 末梢血管が収縮すると、血液がスムーズに流れにくくなります。血液をスムーズに流すため、動脈内の血液が血管壁を強く押します。これが血圧上昇のメカニズムです。(文献2) 寒さによる自律神経の変化と血圧への影響 寒い時期は交感神経が活発になり、以下のような現象が生じます。 血管の収縮 腎臓からのナトリウム排泄抑制に伴う体内の水分量増加 血液量増加 心拍数の増加 交感神経の活発化によるこれらの現象が、血圧を上昇させる因子です。 寒いと血圧はどのくらい上がるのか この章では、気温と血圧変動の関係と血圧が上がりやすい時間帯について解説します。 気温と血圧変動の関係 外国の論文においても、温かいところから寒いところに移動すると、収縮期血圧と拡張期血圧の両方が著しく上昇したとの報告があります。(文献3) イギリスでの研究では、リビングルームの温度が1℃低下すると、収縮期血圧が1.3mmHg、拡張期血圧が0.6mmHg上昇するとの結果が示されました。日本人高齢者15人を対象とした研究では、平均外気温が1℃低下すると、収縮期血圧が0.43mmHg、拡張期血圧が0.29mmHg上昇しました。(文献3) 血圧が上がりやすい時間帯と日常生活シーン 血圧が上がりやすい時間帯は早朝で、血圧上昇の要因は以下の通りです。 夜間高血圧:夜間に上昇した血圧が朝も維持されるもの モーニングサージ:早朝、起床前後に生じる一過性の血圧上昇 モーニングサージは、心筋梗塞や脳血管疾患との関連性が深いとされる現象です。 日常生活においては、あたたかいところから寒いところへ急に移動すると、血圧上昇のリスクがあります。 部屋があたたまっていないときにトイレに行く、薄着で外出する(ゴミ出しや散歩、雪かきなど)などの行動は避けましょう。 寒さで血圧が上がったときの受診サイン 寒さで血圧が上がった場合、医療機関受診が必要なケースがあります。主な受診サインは以下のとおりです。 高血圧とされる数値が続く場合 高血圧以外に自覚症状がある場合 高血圧とされる数値が続く場合 高血圧とは、繰り返し測っても血圧が正常より高い状況を指します。 日本高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2019で示している、異なる測定法における高血圧基準値は以下のとおりです。(文献4) 測定法 収縮期血圧 拡張期血圧 診察室血圧 140mmHg以上 90mmHg以上 家庭血圧 135mmHg以上 85mmHg以上 自由行動下血圧 24時間 130mmHg以上 80mmHg以上 昼間 135mmHg以上 85mmHg以上 夜間 120mmHg以上 75mmHg以上 自由行動下血圧とは、24時間自動血圧計を装着して15〜30分間隔で行う血圧測定のことです。この間の日常生活は基本的に自由ですが、入浴や激しい運動は控えてください。 家庭血圧で高値が続く場合は、放置せずに医療機関を受診しましょう。高血圧を放置すると、脳梗塞や心筋梗塞など、命に関わる病気を発症する可能性があるためです。また、徐々に腎機能が低下して、人工透析を受ける可能性もあります。 血圧の正常値については、下記の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 高血圧以外に自覚症状がある場合 高血圧に加えて以下のような症状がある場合も、医療機関を受診しましょう。 頭痛(とくに早朝) めまい 肩こり ふらつき 呼吸困難 足の冷え これらの症状は、高血圧の合併症である可能性が高いためです。 寒い時期における高血圧対策 寒い時期における主な高血圧対策としては、以下の4つがあげられます。 室温管理と防寒対策 塩分を控えたバランスの良い食事 適度な運動 家庭での定期的な血圧測定 高血圧の予防および改善については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 室温管理と防寒対策 あたたかいところから急に寒いところへ出ると、血管が収縮し、血圧が上がります。 冬は室温と外気の差が激しいため、温度差が5度以上開かないように対処しましょう。外出時は手袋やマフラー、帽子、マスクなどで防寒してください。 居間と浴室、居間と廊下、居間とトイレなどは、室内でも温度差が生じやすいため、寒い場所には暖房設備を整えると良いでしょう。 塩分を控えたバランスの良い食事 食塩の過剰摂取は、血圧上昇と深い関連があります。(文献4)食塩に含まれるナトリウムには、血圧を上げる作用があるためです。血圧が高めの方の場合、1日の食塩量の目標は6g未満です。 減塩食の工夫としては、以下のようなことがあげられます。 汁物を具だくさんにする 減塩しょうゆや減塩みそを使う ハムやソーセージといった加工食品を減らす 塩分の排出をうながすカリウムを積極的にとる カリウムは、緑黄色野菜や海藻類、豆類などに多く含まれます。 バランスの良い食事とは、主食(炭水化物)、主菜(タンパク質や脂質)、副菜(ビタミン、ミネラル)をまんべんなく取り入れたものです。 適度な運動 高血圧患者の生活習慣改善法の1つが、適度な運動です。身体を動かす時間を増やすと、血圧低下に加えて体重や体脂肪の減少などがみられます。(文献4)目安としては、1日30分程度です。(文献5) ウォーキングのような有酸素運動やストレッチ、スクワットのような筋トレなどを組み合わせて実施しましょう。 体調が悪いときや天候がよくないときは、運動を控えてください。 家庭での定期的な血圧測定 日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインにおいても、高血圧の判定は家庭血圧が診察室血圧よりも優先されています。(文献4) 家庭では、朝と夜、椅子に座った姿勢で血圧を測定し、血圧手帳に記録しておきましょう。体を動かしたあとは血圧が上がりやすいので1〜2分程度安静にしてから測るようにしてください。 家庭で血圧を測るときは、正確な数値が出やすいタイプがおすすめです。上腕(肘の上)にカフを巻くタイプを選びましょう。家庭で測定した血圧の記録は、病院受診時に必ず主治医へ見せてください。 寒さによる血圧上昇とヒートショックのリスク 寒さによる血圧上昇と関係が深い体調変化が、ヒートショックと呼ばれるものです。 本章では、ヒートショックの概要と予防について解説します。 温度差による血圧変動とヒートショック ヒートショックとは、温度差に伴う血圧変動により、心筋梗塞や脳梗塞といった血管の疾患を起こす現象です。(文献6) ヒートショックの可能性が高いのは、入浴時です。あたたかい室内では血圧が安定していますが、寒い脱衣所では血管の収縮により血圧が上昇します。浴室が寒い場合、さらに血圧が上昇します。その後熱めの浴槽に浸かると、血圧が低下してしまうのです。 ヒートショックの好発時期は、11月~2月頃です。 65歳以上の高齢者や、高血圧や糖尿病などの基礎疾患がある方、肥満気味の方はヒートショックを起こしやすいとされています。 日常生活でのヒートショック予防法 日常生活でのヒートショック予防法としてあげられるものは、主に以下のとおりです 脱衣室と浴室をあたためる。 お湯の温度を41℃以下に設定する 入浴前に水分補給する 浴槽から出るときはゆっくりと立ち上がる 食事直後や飲酒後の入浴を控える 脱衣室と浴室をあたためる方法としては、脱衣室に暖房器具を設置したり、浴室にシャワーをかけてあたためたりするなどがあります。 寒いと血圧があがる理由を理解した上で高血圧対策を実践しよう 寒いと血圧が上がるメカニズムには、血管や自律神経が関係しています。室内と屋外の温度差は血圧上昇および、心筋梗塞や脳梗塞を発症する可能性を高める要因の1つです。 血圧上昇予防のためにも、室温管理と防寒対策を心がけましょう。 寒さで血圧が上がっている方は、自分でも気づかないうちに高血圧を発症している可能性があります。朝と夜、家庭で血圧を測り、自分が高血圧かどうかを理解しておきましょう。 寒さと血圧の関係で考えると、ヒートショックも危険です。とくに入浴時は、室内と浴室、脱衣室の温度差を少なくするように工夫するように心がけましょう。 高血圧によって引き起こされる脳梗塞の後遺症改善や再発予防を目的とした治療法として、再生医療という選択肢があります。脳梗塞に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 当院リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。高血圧に関してお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 寒いと血圧が上がることに関するよくある質問 足が冷えると血圧が上がるのですか? 血圧の変動は足元からの高さによって異なるとの研究結果があります。(文献7) 室内で高さ1.1mの部分の室温が10℃下がると、血圧が5mmHg上昇しました。高さ0.1mの部分の室温が高いと血圧が9mmHg上昇したとの結果も出ています。 室温が適温でも、足元が冷えていると血管が収縮し、末梢に血液を送る心臓の負担が増えるために血圧が上がる仕組みです。 寒い部屋での血圧測定は良くありませんか? 寒い部屋での血圧を測ると、血圧が高くなりやすくなります。そのため、正確な血圧かどうかわかりにくい状況です。 血圧を測るときは、少なくとも室温を20℃以上に設定しましょう。 参考文献 (文献1) 寒冷下におけるヒトの体温調節と運動時低体温症の発症メカニズム|新潟医療福祉会誌 (文献2) 血圧の生理学|動物の循環器 (文献3) Winter Hypertension: Potential mechanisms|PubMed Central (文献4) 高血圧治療ガイドライン2019|日本高血圧学会 (文献5) 一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子高血圧の話|日本高血圧学会ほか (文献6) 冬場に多発‼温度差で起こるヒートショック|社会福祉法人恩賜財団済生会 (文献7) 第19回「足元のひえにご注意!気温感受性高血圧とは?」~気温と血圧、循環器病の関係~|公益財団法人日本心臓財団
2025.12.13 -
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食道静脈瘤は、肝硬変によって発症する重大な合併症のひとつであり、破裂すれば命に関わる危険性もある疾患です。 しかし、自覚症状に乏しく発見が遅れるケースも多いため、正しい知識と早期対応が求められます。 本記事では、食道静脈瘤の原因や症状、診断法、治療の選択肢、日常生活での注意点をわかりやすく解説します。 受診前に不安を抱える方や、ご家族のサポートを考えている方は参考にしてみてください。 なお、肝臓の疾患に対しては、「再生医療」という治療法があります。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEで情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。肝臓疾患やその合併症でお悩みの方は、ぜひご利用ください。 食道静脈瘤は肝硬変の合併症のひとつ 食道静脈瘤は肝硬変の合併症のひとつであり、破裂すると命に関わる大量出血を引き起こす危険があります。 肝硬変を抱える患者の約50%に合併するとされており、極めて高い頻度です。(文献1) 肝硬変を患うと、血液の流れが肝臓で滞って血圧が異常に上昇します。 その結果、血液は肝臓を迂回して別の経路を通ろうとしますが、食道の静脈に過剰な血液が流れ込んでこぶ状に拡張するのが「食道静脈瘤」です。 自覚症状が乏しいまま進行することも多いため、肝硬変と診断された時点で定期的に内視鏡検査を受けましょう。 肝硬変の原因や症状について詳しくは、以下の記事をご覧ください。 肝硬変から食道静脈瘤になるメカニズム 食道静脈瘤の主な原因は、肝硬変による「門脈圧亢進(もんみゃくあつこうしん)」です。 門脈圧亢進では、肝臓内の血流が障害され、門脈と呼ばれる血管にかかる圧力が異常に高くなります。 通常、腸や脾臓からの血液は門脈を通じて肝臓へ流れ込みますが、肝硬変によって肝臓の組織が線維化すると、血液がスムーズに流れなくなります。 その結果、血液は別の経路を通って食道や胃の静脈などに流れ込み、血管が膨らんで瘤(こぶ)状になるのです。 このように、肝硬変による血流障害は門脈系全体のうっ血を引き起こし、結果として食道静脈瘤が形成されます。 食道静脈瘤が破裂したらどうなる?主な症状 食道静脈瘤が破裂すると、命に関わる大量出血を引き起こす可能性があります。 以下が代表的な症状です。 吐血:口から真っ赤な血液を吐く、もっとも目立つ初期症状 下血:腸内を通って排泄される血液により、黒色のタール状の便が出る 貧血:大量の失血により血圧が低下し、動悸・息切れ・めまいなどを伴う 上記の症状が現れると、短時間で急激に容体が悪化するケースがあり、緊急に治療しなければなりません。 とくに、肝硬変が進行すると血液が止まりにくくなる傾向があるため、破裂前の段階で発見して予防的な治療を行うことが重要です。 肝硬変による食道静脈瘤の診断 肝硬変と診断された患者に対しては、食道静脈瘤の有無を確認するために定期的な内視鏡検査を行います。 なかでも、上部消化管内視鏡(胃カメラ)は、食道内の静脈の拡張を直接観察可能です。食道静脈瘤の有無だけでなく、大きさや形状、表面の変化などをもとに破裂リスクを評価します。 また、必要に応じて色素や特殊光を用いた詳細な観察が行われることもあります。 なお、CT検査や超音波内視鏡が補助的手段として用いられる場合がありますが、診断の中心は内視鏡です。 症状がない段階でも発見できるため、肝硬変と診断されたら定期的な検査を受け、破裂による重篤な出血を未然に防ぎましょう。 肝硬変による食道静脈瘤の治療法 食道静脈瘤の治療は、破裂による出血を防ぐことを最優先の目的としています。 肝硬変に伴って発生する食道静脈瘤は、症状がないまま発見されることも多いため、瘤の大きさや形状、破裂リスクに応じた適切な治療法の選択が重要です。 ここでは、食道静脈瘤の治療法について詳しく解説します。 内服治療 食道静脈瘤に対する内服治療では、主に門脈圧を下げる薬剤が使用されます。 代表的な薬剤が、プロプラノロールやカルベジロールといった「β遮断薬(ベータブロッカー)」です。 β遮断薬は心拍数を下げる薬で、門脈系への血流の減少によって静脈瘤の内圧を低下させ、破裂のリスクを軽減します。 ただし、低血圧や不整脈などの副作用が現れる場合もあるため、定期的な診察と血圧・心拍の管理が重要です。 また、継続的なフォローアップのもとで、他の治療法と併用されるケースもあります。 内視鏡治療 内視鏡治療は、食道静脈瘤の破裂を防ぐための代表的な治療法です。 主に、薬剤を直接注入して血管を固める「静脈瘤硬化療法(EIS)」と、輪ゴムで瘤を縛り壊死させる「内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)」の2つの方法があります。 いずれも出血のリスクを大きく下げる効果があり、瘤の状態に応じて使い分けられます。 処置後は、再発予防のために定期的な内視鏡検査が必要です。 カテーテル治療 細い管状の器具を血管や体内に挿入する「カテーテル治療」は、門脈圧の低下を目的とする手術的治療法のひとつです。 代表的な方法に「経皮的門脈圧シャント術(TIPS)」があります。 肝静脈と門脈の間に人工のバイパスを作って門脈圧を下げ、静脈瘤への血流を減少させるのが特徴です。 主に、内視鏡治療が難しいケースや再発を繰り返す重症例に適用されます。 ただし、高度な技術を要するため、専門の施設で実施されるのが一般的です。 外科手術 外科手術は、内視鏡やカテーテル治療で効果が不十分な重症例に対して検討される治療法です。 門脈と体循環をつなぐ「門体シャント術」や、脾臓を摘出して血流量を減らす「脾摘術」などがあります。 手術は、門脈圧を根本的に下げることが目的です。 ただし、全身への負担が大きく、重度の肝機能障害がある患者には適さないケースがあります。 現在、外科手術は限られた救済的適応とされており、状態に応じて慎重に判断される点に留意しておきましょう。 バルーンタンポナーデ法 バルーンタンポナーデ法は、食道静脈瘤が破裂して大量出血を起こした際に行われる一時的な止血処置です。 専用のチューブを鼻や口から挿入し、食道内でバルーン(風船)を膨らませて静脈瘤を圧迫し、出血を物理的に止めます。 通常、24時間の留置が限度ですが、出血が再発した場合は必要に応じて食道バルーンをさらに24時間再拡張することも可能です。(文献2) ただし、応急処置として有効ではあるものの、再出血のリスクが高いため根本的な治療につなげるまでのつなぎの処置であり、あくまで緊急時の対応策に位置づけられています。 再生医療という選択肢 近年、肝硬変に伴う合併症への対応として「再生医療」が検討されるようになってきました。 再生医療とは、患者様の体から採取した脂肪由来の幹細胞を培養し、点滴で体内に戻す治療法です。幹細胞が持つ、他の細胞に変化する「分化能」が肝組織に対して働きかけることが期待されています。 患者様自身の幹細胞を用いるため、拒否反応のリスクが低いのが特徴です。また、手術や入院を必要としません。 肝硬変や合併症でお悩みの方は、治療法の一つとして再生医療もご検討ください。当院「リペアセルクリニック」での肝硬変に対する症例も参考になります。 肝臓疾患に対する再生医療について詳しくは、以下のページで解説しているのでご覧ください。 肝硬変で食道静脈瘤になった場合の予後・生存率 肝硬変の合併症のひとつである食道静脈瘤は、破裂すると生命を脅かす重大な疾患です。 破裂による初回出血後の6週死亡率は15〜25%に達するとされ、早急な対応が求められます。(文献3) また、一度出血した患者の多くは6か月以内に再出血を起こすリスクが高く、再出血時の死亡率が高い傾向がある点も見逃せません。 予後は、出血の有無だけでなく、肝機能の重症度にも大きく左右されます。 食道静脈瘤の早期発見と適切な予防的治療、肝機能の維持が長期的な生存率向上の鍵です。 肝硬変で食道静脈瘤になった場合の注意点 肝硬変によって食道静脈瘤を発症した場合、命に関わる出血リスクを常に抱えることになります。 適切な治療はもちろん、再発予防を意識した日常生活も大切です。 ここでは、肝硬変の合併症で食道静脈瘤になった場合の注意点を解説します。 疾患と治療のバランスが重要 食道静脈瘤の治療は破裂リスクを抑えるのが最優先ですが、同時に肝機能そのものの管理も欠かせません。 過剰な処置や薬剤の使用は、かえって肝臓に負担をかける場合もあります。 疾患の進行度と体調のバランスを見極めながら、治療方針を選択することが重要です。 経過観察が必要 食道静脈瘤は治療後も再発する可能性が高いため、内視鏡検査による定期的な経過観察が不可欠です。 とくに、静脈瘤の再形成や出血リスクの高まりを早期に察知することで、迅速な対応が可能になります。 治療後も決して油断せず、継続的な受診を欠かさないようにしましょう。 食事の注意点 肝硬変が原因の食道静脈瘤では、食事にも細心の注意が必要です。 硬い食べ物や刺激の強いものは食道粘膜を傷つけ、静脈瘤の破裂を誘発する恐れがあります。 たとえば、以下のような食事は避けたほうが良いでしょう。 乾燥したパンの耳 揚げ物 香辛料の強い料理 柔らかく調理した食事をよく噛んで、ゆっくり食べる習慣が大切です。 ただし、食道静脈瘤以外にも疾患があれば、塩分の摂取制限や栄養バランスに配慮しなければならない場合もあるため、自己判断せず医師に相談しましょう。 肝硬変で注意すべき食事については、以下の記事でも紹介しています。 まとめ|定期的な経過観察で早期発見・治療 食道静脈瘤は、肝硬変によって引き起こされる重大な合併症のひとつであり、破裂すると生命に関わる危険があります。 多くの場合、自覚症状がないまま進行するため、早期発見が極めて重要です。 肝硬変と診断されたら定期的な内視鏡検査を受け、瘤の有無や状態を確認する必要があります。 また、治療を受けた後も再発のリスクは残るため、継続的な経過観察が欠かせません。 医師と連携しながら、食生活や服薬、生活習慣の改善にも取り組みましょう。 なお、肝臓の疾患には「再生医療」が治療の選択肢のひとつとして注目されています。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEにて再生医療に関する情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。ぜひ登録してご利用ください。 肝硬変と食道静脈瘤に関連するよくある質問 食道静脈瘤に予兆はありますか? 食道静脈瘤は、破裂するまでほとんど自覚症状がないことが多い疾患です。 ただし、破裂が近づくと胸部の違和感や黒色便、軽度の吐血といった前兆が現れる場合があります。 とはいえ、こうした予兆は非常にあいまいであり、明確なサインとして現れるとは限りません。 したがって、肝硬変と診断された時点で、症状の有無にかかわらず、定期的な内視鏡検査による監視が極めて重要です。 食道静脈瘤は極めて重篤な疾患であり、早期発見が予防的治療と命を守る第一歩となる点を肝に銘じておきましょう。 食道静脈瘤破裂で亡くなった芸能人は? 俳優の石原裕次郎さんは、肝臓がんの出血で亡くなったとされています。 ただし、食道静脈瘤破裂が直接の原因で亡くなったとの、確かな情報は確認できませんでした。 参考文献 (文献1) New index to predict esophageal variceal bleeding in cirrhotic patients|PMC(PubMed Central) (文献2) Medscape|Sengstaken-Blakemore Tube Placement Technique (文献3) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37351074/|PubMed
2025.12.13 -
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「最近お酒の量が増えている」「健康診断で肝機能の数値が悪い」そんな方は、アルコール性肝硬変のリスクがあるかもしれません。 アルコール性肝硬変は、長期間の大量飲酒により肝臓が硬くなり、正常に機能しなくなる病気です。初期は自覚症状がほとんどありませんが、進行すると腹水や黄疸、吐血などの深刻な症状が現れ、命に関わる場合もあります。 飲酒習慣があり肝硬変が心配な方に向けて、本記事ではアルコール性肝硬変の原因・症状から治療法・予防法まで、分かりやすく解説します。 なお、肝硬変に対しては再生医療という治療方法があります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する症例の紹介や簡易オンライン診断を実施しているので、ぜひご利用ください。 アルコール性肝硬変とは? 日頃から多くお酒を飲む方の場合、アルコール性肝硬変のリスクに注意する必要があります。 アルコール性肝硬変の特徴は以下のとおりです。 長期間の飲酒による肝臓疾患で症状が進んだもの 前段階としてアルコール性肝炎がある アルコール以外で発症する肝硬変との違い 肝硬変について詳しくは以下の記事をご参照ください。 長期間の飲酒による肝臓疾患で症状が進んだ状態 アルコール性肝硬変とは、肝硬変のうち5年以上の長期間にわたる大量の飲酒によって肝臓が硬くなる疾患を指します。お酒に含まれるアルコールには「アセトアルデヒド」と呼ばれる有害物質があり、通常は肝臓で分解された後に体外に排出される仕組みです。 しかし、普段から大量のお酒を飲んでいる場合は、肝臓でアセトアルデヒドが分解しきれずに蓄積します。このアセトアルデヒドが肝細胞を傷つけて破壊すると、傷ついた部分は硬い組織(線維)に置き換わります。この硬化が肝臓全体に広がった状態が肝硬変です。 なお、日本では肝硬変の原因としてアルコール摂取が最も多いことを示す研究結果もあります。(文献1) 前段階としてアルコール性肝炎がある アルコール性肝硬変は、普段の大量の飲酒がきっかけで短期的に発生するわけではありません。日頃からの過剰な飲酒でアルコールを体内に多く摂取すると、肝臓で代謝するなかで中性脂肪が蓄積されます。この中性脂肪が肝臓に溜まった状態が「アルコール性脂肪肝」です。 アルコール性脂肪肝ができてもアルコールの摂取量を減らさない場合、中性脂肪の蓄積がさらに進んでアルコール性肝炎へと発展します。このアルコール性肝炎がより重篤になった疾患がアルコール性肝硬変です。 アルコール性肝炎には、肝細胞の膨張や黄疸、腹痛などの症状が見られます。詳細は以下の記事を参考にしてください。 アルコール以外で発症する肝硬変との違い 肝硬変にはアルコール以外で発症する、「非アルコール性肝硬変」と呼ばれるものもあります。アルコール性肝硬変と非アルコール性肝硬変との違いは、「発症の原因がアルコールかそれ以外か」です。 非アルコール性肝硬変の場合、以下の原因が挙げられます。 肥満や糖尿病などの生活習慣病 B型・C型肝炎ウイルスによる感染 自己免疫疾患 薬剤や有害物質 これらのアルコール以外の要因で肝臓疾患になり、その症状が進行して肝硬変になったものが、「非アルコール性肝硬変」に分類されます。 アルコール性肝硬変の原因 アルコール性肝硬変は、主に長期に及ぶ大量のアルコール摂取が原因です。摂取したアルコールを分解する際に発生するアセトアルデヒドが継続的に肝臓を傷つけることで、肝細胞が損傷・破壊されます。肝細胞の破壊が進むと、肝臓内で硬い部分が広がって肝機能が衰え、肝炎や肝硬変などの症状に発展します。 なお、「長期に及ぶ大量のアルコール摂取」の目安は、男性で1日60g以上、女性で1日40g以上のアルコールを10年以上に渡り摂取している状態です。また、上記の目安に達していなくても短期間で大量飲酒を繰り返す場合も、アルコール性肝硬変のリスクがあります。 ほかにも生活習慣病や遺伝的要因を抱えている状態で、大量にアルコールを摂取する生活を続けている方も注意が必要です。 アルコール性肝硬変の症状 アルコール性肝硬変の症状には、次のようなものが見られます。 肝機能やアルコール分解能力の低下 黄疸(おうだん) 腹水 吐血 肝臓がんを発症するケースも 命に関わる症状もあるため、事前に知識を深めておくことが大切です。 肝機能やアルコール分解能力の低下 アルコール性肝硬変になると、肝臓の働きが悪くなり、アルコールを分解する能力も落ちます。これは、お酒に含まれる有害物質(アセトアルデヒド)が肝臓の細胞を傷つけて壊すためです。毎日お酒を飲み過ぎると、肝臓の細胞が傷つき、最終的には肝臓の線維化が進み硬くなります。 肝機能やアルコール分解能力の低下が続けば、肝臓に中性脂肪が溜まるようになります。この状態が続くと、アルコール性肝炎を起こし、さらに進行するとアルコール性肝硬変になります。 アンモニア臭が発生する アルコール性肝硬変になった人は、アンモニア臭を発生させることがあります。 食事を通じて体内に取り込まれたアンモニアは、本来であれば肝臓で無毒化された上で、尿として排出されます。しかし、肝硬変になった人は肝機能が衰えているため、アンモニアの解毒作用がはたらきません。その結果、残留したアンモニアが血管内に流出し、吐き出す息にもアンモニアのにおいが伴います。 なお、血液中のアンモニア濃度の上昇が脳に影響し、肝性脳症による意識障害を引き起こすケースもあります。 黄疸(おうだん) 黄疸(おうだん)、この黄色に染めるものの正体は、赤血球に含まれるビリルビンです。 赤血球は古くなると肝臓に送られて分解されます。その際に赤血球に含まれるビリルビンも、胆汁とともに排出されます。 しかし、肝機能が低下するとビリルビンがうまく排出されず、血液中に増えてしまいます。そのため、皮膚や目の白い部分が黄色く染まってしまうのです。 腹水 腹水とは、胃などのお腹周りの臓器と、それらを包む膜の間に広がる腹腔に水が溜まる症状を指します。そして腹水も、アルコール性肝硬変がある程度進んだ場合に見られる症状です。 体内の水分バランスは、肝臓で作られる「アルブミン」というたんぱく質が調整しています。しかし、アルコール性肝硬変が進行するとアルブミンの生成量が減り、血管内の水分が腹腔へと流れ出て腹水になります。 なお、腹水が膨らむと呼吸困難のような重篤な状態になるケースもあります。 吐血 吐血もアルコール性肝硬変で見られる症状です。 アルコール性肝硬変では肝臓に向かう血管が狭くなったり閉塞したりするため、血流が低下します。加えて、行き場を失った血液は食道の静脈へと向かうため、圧力がかかり食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)という血管の瘤(こぶ)ができます。 アルコール性肝硬変による吐血は、多くの場合、この食道静脈瘤がいきみや咳などの刺激で破裂することで起こります。 肝臓がんを発症するケースも アルコール性肝硬変になった場合、肝臓がんを発症することもあります。肝硬変から肝臓がんになるのは、肝細胞が損傷と再生を繰り返す過程で、突然変異によってがん細胞に変化するためです。 肝臓がんを発症すると、肺やリンパ節など他の臓器に転移する場合があります。また、他の臓器のがんが肝臓に転移してくるケースもある点にも注意が必要です。 アルコール性肝硬変の末期症状は?余命はどの程度? アルコール性肝硬変が末期になると、肝臓が著しく縮小し、肝機能は大幅に低下します。加えて、腹水による呼吸困難や吐血、肝性脳症による昏睡のリスクが高まるため、非常に危険な状態です。 末期症状とともに気にされることの多い余命については、医学的な重症度分類に基づいた研究では、症状が重度まで進んだ肝硬変患者の3年後も生存している割合は約31%と報告されています。(文献2) ただし、実際の経過は患者様の年齢、他の病気の有無、治療への反応などにより大きく異なります。また、適切な治療を継続し、禁酒を徹底することで病気の進行を遅らせることが期待できるため、諦めずに治療を続けることが大切です。 アルコール性肝硬変の診断方法 アルコール性肝硬変の早期発見・治療には、適切な診断が重要です。 主な診断方法として、以下があります。 飲酒歴や生活習慣の聞き取り 血液検査 腹部超音波検査・画像診断 肝生検 医師は患者さんの症状や状態に応じて、これらの診断方法を選択して検査を行います。 飲酒歴や生活習慣の聞き取り アルコール性肝硬変について診断する際は、医師が飲酒歴や生活習慣を聞き取ります。飲酒歴の場合、以下の項目を尋ねるのが一般的です。 お酒を飲んでいる年数 週に飲む日数 1日に飲む量 アルコール濃度 お酒の種類 アルコール性肝硬変かどうかは、5年以上にわたって1日に60g以上(女性は40g以上)の純アルコールを摂取しているかが基準とされます。ただし肥満が見られる人については、摂取量が基準に満たない場合でもアルコール性肝硬変を疑われます。 なお、飲酒歴は本人だけでなく、家族からも聴取します。加えてアルコール依存症の有無も確認される項目です。 飲酒以外にも、普段の食事や運動の状況・体重の変化・服薬の有無・健康状態も問診します。健康状態については、黄疸など明確な症状の有無のほか、倦怠感や食欲不振など本人が感じている症状も聞きます。 血液検査 血液検査では、肝機能を示すASTやALTなどの指標を調べます。アルコール性肝硬変が疑われる場合、これらの数値が異常値を示すことが多く、診断の重要な手がかりとなります。 なお、会社や自治体の健康診断で肝機能の異常が見つかった場合は、その結果を医師に持参して詳しい検査を受けることが大切です。 腹部超音波検査・画像診断 血液検査で異常が見られた場合、より精密な検査として腹部超音波検査や画像診断が必要です。 腹部超音波検査は超音波を使って肝臓の状況を確認します。肝臓のサイズや表面の凹凸の状態、脂肪の蓄積具合などを見ることで、肝臓の線維化の程度や病気の進行度を調べる方法です。 腹部超音波検査とともに、振動波で肝臓の硬さをチェックする手段もよく用いられます。振動波は硬い物体ほど速く伝わるため、その原理を利用した装置で肝硬変の進み具合を見ます。 画像診断は実際の肝臓の状態を直接目で確認できる手段で、MRIやCTによる方法が一般的です。基本的にはこれらの装置を使った方法と、今までの血液検査や問診の結果を総合して最終的な診断を下します。 肝生検 アルコール性肝硬変の診断には、肝生検と呼ばれる方法を用いるケースもあります。肝臓組織の一部を切り取った上で、顕微鏡で観察して病状を確認する方法です。 ただし、すでに説明した超音波などによる検査や画像診断が主流になってきている上に、出血や感染症などの合併症のリスクがあることから、必要性が高いときにのみ実施されます。 アルコール性肝硬変の治療法 アルコール性肝硬変の主な治療法は以下のとおりです。 【最重要】断酒 栄養療法・食事療法 薬物治療 アルコール依存症の治療 肝移植 再生医療 アルコール性肝硬変の治療法について知り、本格的な治療に臨みましょう。 断酒 アルコール性肝硬変の治療においては、お酒を全く飲まない「断酒」が重要です。症状が出ている中で飲酒を続けた場合、アセトアルデヒドによる肝細胞の損傷・破壊や、脂肪の蓄積が進みます。その結果、肝硬変の症状が悪化するため、命の危機に直面する可能性もあります。 アルコール性肝硬変の治療を始めるのであれば、すぐに断酒しましょう。 栄養療法・食事療法 肝機能の回復には十分な栄養補給が必要ですが、アルコール性肝硬変の方は長期の飲酒により、栄養状態が悪化していることが多くあります。そのため、食事内容の見直しが必要です。 医師の指導を受けながら、主食・主菜・副菜で構成される、栄養バランスを考慮した献立で食事をとりましょう。エネルギーやたんぱく質の不足を克服するためにも、高エネルギー・高たんぱく質のメニューにします。 たんぱく質は肉だけでなく魚介類や大豆類などでバランスよくとることが大切です。加えて、野菜や果物などからのビタミンや食物繊維の摂取もポイントに挙げられます。ただしどんなに体に良い栄養素でも、食べ過ぎは禁物です。 一方で、腹水の症状がある方は、塩分や水分を制限します。塩分や水分を多く摂取すると、腹腔に腹水が多く溜まるためです。とくに塩分は1日5~7g以内が推奨されます。(文献3) 薬物治療 薬物治療では、アルコール性肝硬変の症状緩和や合併症の管理を目的として薬剤が用いられます。ただし、肝機能が低下している状態では、薬物の代謝も困難になるため、使用する薬や量は慎重に選択されます。 具体的には、腹水に対して利尿剤、肝細胞の保護には肝保護薬(ウルソデオキシコール酸など)、肝性脳症に対してはラクツロースなどが使用されます。 アルコール性肝硬変の治療で薬物は、あくまでも補助的な意味合いで使われるものと理解すると良いでしょう。 アルコール依存症の治療 アルコール性肝硬変を発症する方には、アルコール依存症にかかっている方も多くいます。生活上の不安や不満などをお酒の力を借りて紛らわそうとするあまり、お酒が手放せない状態になってしまう状態です。 アルコール自体も中毒性を伴う物質であるため、依存症まで発症すると自力での断酒は困難です。そのため、治療を進める中で精神科や心療内科の専門医のカウンセリングを受ける必要があります。 肝移植 断酒や食事療法などによる治療が難しい場合は、肝移植を検討します。肝移植は70歳※までの健康な成人の肝臓の一部を移植する方法です。※日本肝臓学会の基準。施設により異なる場合があります。 移植された肝臓の一部は、高い再生能力で元の形状や大きさに戻ります。 アルコール性肝硬変の治療では、本人が一定期間継続して断酒しているなどの条件を満たすことが欠かせません。加えて自身の体に合う肝臓があることも重要です。 ほかにも移植しなかった場合の余命の長さも、肝移植するかどうかの判断材料になります。肝移植は、ほかの内科的治療では改善が困難な場合に検討されます。 再生医療 近年では再生医療も、アルコール性肝硬変治療で選べる方法のひとつです。再生医療には主に幹細胞治療とPRP療法があります。 幹細胞治療は、患者様の脂肪から幹細胞を採取・培養後、幹細胞を患部に投与する方法です。 一方、PRP療法では患者様の血液を採取し、遠心分離器で血小板を多く含む液体を作製して患部に投与します。再生医療は手術を伴わない治療法で、施術にもあまり時間はかかりません。 当院「リペアセルクリニック」では、随時再生医療に関するご相談を受け付けていますので、興味がある方や気になる方はぜひお問い合わせください。 実際の肝硬変に対する再生医療の治療例については、当院の症例をご覧ください。 アルコール性肝硬変の予防法 アルコール性肝硬変は予防可能な疾患です。 症状が現れる前の早期対策が重要で、主に以下の方法で予防できます。 適量の飲酒・禁酒 栄養バランスのとれた食事 定期健診 発症して厄介な事態になる前に、これらの予防法で早めに対策しましょう。 適量の飲酒・禁酒 アルコール性肝硬変の予防には、適量の飲酒や禁酒への意識が大切です。お酒とうまく付き合いつつ、アルコール性肝硬変も予防するには、お酒の適正量を知っておくと役に立ちます。 お酒の適正量は厚生労働省によると、純アルコールを1日約20gに留めるのが目安です。これはビールであればアルコール度数5%で中瓶1本500ml、清酒であれば15%で1合(180ml)に相当します。(文献4) 肝機能に特別な問題のない方は、上記の摂取量の範囲でお酒を飲むことが、アルコール性肝硬変の予防につながります。加えて、週に1~2日は休肝日を設け、肝臓を休ませましょう。 一方で肝硬変や、その前段階である脂肪肝・アルコール性肝炎が疑われるときは、肝機能が安定するまでは禁酒が必要です。 栄養バランスのとれた食事 栄養バランスのとれた食事も有効な予防法です。食事でアルコール性肝硬変を予防する場合も、基本的には主食・主菜・副菜の構成で、良質なたんぱく質や食物繊維などを積極的に摂取します。また、塩分の取りすぎには注意しましょう。 加えて、食事の回数は1日3回を心掛け、適切な量をよく噛んで食べることも大切です。食事の回数が少ないと、肝臓が貯蔵してある栄養分でエネルギーを補てんしようとするため、余計な負担をかけます。よく噛まなかったり食べすぎたりする習慣も、肝臓への負担や脂肪肝の蓄積の原因になるため、避けるべきです。 定期健診 定期健診は、アルコール性肝硬変の早期発見と予防に重要な役割を果たします。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期段階では自覚症状がほとんど現れないため、定期的な健診で確認しましょう。 血液検査で数値に異常が見られた場合は、早期の段階で飲酒量の見直しや生活習慣の改善を行うことで、肝硬変への進行を防ぐことができます。 とくに日常的に飲酒する習慣がある方は、定期的な肝機能検査を受けることで、肝臓の状態を把握し、適切なタイミングで予防対策を講じることが可能です。 まとめ|アルコール性肝硬変は飲酒を見直すことが不可欠 アルコール性肝硬変は、長期間の大量飲酒が原因で発症する重篤な肝疾患です。 初期は自覚症状がほとんどありませんが、進行すると黄疸や腹水、吐血などの深刻な症状が現れ、命に関わる場合もあります。 治療の中心は断酒です。飲酒を続ける限り肝臓の損傷は進行し続けるため、症状の改善や進行の抑制には完全な禁酒が不可欠です。断酒と併せて、栄養バランスの取れた食事療法や合併症に対する薬物治療も重要な役割を果たします。 日常的に飲酒する習慣がある方は、今一度飲酒量や生活習慣を見直し、肝臓の健康を守ることが大切です。 なお、アルコール性肝硬変を含む肝疾患に対しては、再生医療という治療の選択肢もあります。再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」まで、お気軽にお問い合わせください。 肝硬変とアルコールのよくある質問 アルコール性肝硬変は治るのか? アルコール性肝硬変は、症状が軽いうちであれば治る見込みは十分にあります。とくに健康診断の段階で肝機能に異常が見られたり、肝臓で脂肪肝や炎症が見つかったりしたときには、すぐにでもお酒を控えるなどの対策が治る確率を高めます。 なお、アルコール性肝炎が治るかどうかは、以下の記事も参考にしてください。 肝硬変でお酒をやめないとどうなる? 肝硬変でお酒をやめなかった場合、脂肪の蓄積やアルコールの作用で、さらに肝臓の線維化が進行します。しかも、肝臓がんや肝性脳症のような合併症のリスクも高まるため、注意が必要です。 なお、医学的な重症度分類に基づいた研究では、症状が重度まで進んだ肝硬変患者の3年後も生存している割合は約31%と報告されています。(文献2) ただし、実際の経過は患者様の年齢、他の病気の有無、治療への反応などにより大きく異なります。また、適切な治療と生活習慣の改善により、病気の進行を遅らせることが期待できます。 肝硬変になるアルコール摂取量はどのくらい? 肝硬変は、一般的に男性で1日約60g以上、女性で約40g以上のアルコールを摂取する生活を5年以上継続した場合に発症するとされています。(文献4) ただし、飲む側の体質によって発症する摂取量はさまざまです。また、肥満体質の場合は上記よりも少ないアルコールの摂取を数年続けた結果、肝硬変になる場合があります。 参考文献 (文献1) Hirayuki Enomoto et al. (2024) Etiological changes of liver cirrhosis and hepatocellular carcinoma-complicated liver cirrhosis in Japan: Updated nationwide survey from 2018 to 2021, Hepatol Res.2024 (文献2) 肝硬変患者の生命予後の検討|厚生労働省 (文献3) 肝硬変診療ガイドライン 2020(改訂第 3 版)|日本消化器病学会・日本肝臓学会 (文献4) アルコール|厚生労働省
2025.12.13














