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アキレス腱断裂の予防と再発予防策を医師が解説 アキレス腱断裂の予防には、ふくらはぎの柔軟性を保ち、使いすぎを防ぐようにするのが大切です。また、アキレス腱断裂後は、適切なトレーニングをして再発予防をします。 本記事では、アキレス腱断裂の予防方法や再発予防策を紹介します。日頃からスポーツをする方はもちろん、運動不足でスポーツを始めようとする方も、アキレス腱断裂の予防にぜひ参考にされてください。 アキレス腱断裂とは?原因や症状を解説 「アキレス腱断裂」とは、踵にあるアキレス腱が、スポーツや仕事などで生じる負担で断裂する怪我です。 まずはアキレス腱断裂がどのような怪我なのかを解説して、断裂が生じる原因を紹介します。 アキレス腱断裂の原因 30〜40歳代のスポーツ実施中によく見られます。また、加齢によってアキレス腱が老化したり、使いすぎて負担が蓄積したりすることがアキレス腱断裂の原因です。 アキレス腱は足首の後ろ側にあり、ふくらはぎの筋肉である腓腹筋(ひふくきん)とヒラメ筋が合流して踵につく部分の腱です。腓腹筋とヒラメ筋は合わせて下腿三頭筋(かたいさんとうきん)と呼び、つま先立ちを可能にします。 スポーツなどの動作で、下腿三頭筋が強く働いたり、急にアキレス腱が伸ばされたりしたときの衝撃で断裂してしまいます。 アキレス腱断裂の症状 アキレス腱が断裂すると、誰かに足をけられたような感覚や「ブツッ」というアキレス腱が切れた音を自覚する場合があります。 また、断裂により次のような症状がみられます。 1 ,歩行障害 2 ,断裂部の痛み 3 ,つま先立ちが困難 4 ,断裂部がへこむ それぞれの症状について解説します。 1 ,歩行障害 断裂した直後は、うまく踏ん張れず、歩くことが難しくなります。しかし、しばらくするとべた足で歩ける場合も少なくありません。 2 ,断裂部の痛み 断裂部の痛みがありますが、強い痛みは一時的でその後は痛みが少ないこともあります。 また、断裂部を抑えると痛みがあります。 3 ,つま先立ちが困難 つま先立ちは下腿三頭筋の強力な筋力が必要になります。そのため、アキレス腱断裂により下腿三頭筋の力がうまく発揮できなくなると、つま先立ちが難しくなります。 体重をかけずにつま先を下に向けるよう足首を動かすことは可能です。 4 ,断裂部がへこむ 完全にアキレス腱が断裂すると、断裂した部分がへこんだように見えるのが特徴です。しかし、部分的な断裂だと、腫れによりへこみがあまりわからない場合もあります。 アキレス腱断裂の予防 アキレス腱が切れやすい人の特徴は、アキレス腱の老化による柔軟性や筋力の低下が挙げられます。そのため、柔軟性や筋力を保つことがアキレス腱の予防に大切です。 具体的には次のような方法があります。 ・下腿三頭筋のストレッチ ・下腿三頭筋の筋力トレーニング ・日常生活やスポーツ時の工夫 それぞれの方法やポイントについて解説しますので、実践可能なものから取り入れましょう。 下腿三頭筋のストレッチ 下腿三頭筋の柔軟性を高めアキレス腱にかかる負担を減らすようにしましょう。下腿三頭筋は腓腹筋とヒラメ筋が合流した筋肉です。それぞれの筋肉によってストレッチの方法が違うので注意しましょう。 まずは腓腹筋のストレッチ方法を紹介します。 腓腹筋のストレッチ 1. 立った状態で左足を後ろに引く 2. 右足の膝を曲げながら体重を前にかけていく 3. 左足の膝は伸ばして踵を地面から離さないようにする 4. 左足のふくらはぎが伸びているのを感じながら30秒キープする 5. 脚を左右変えて同じようにする。 次にヒラメ筋のストレッチ方法です。 ヒラメ筋のストレッチ 1. しゃがんだ状態で左脚を立てて片膝立ちになる 2. 左足に体重をかけるように前に重心を移動させる 3. 左足の踵が地面から離れないようにする 4. 左足のふくらはぎが伸びているのを感じながら30秒キープする 5. 脚を左右変えて同じようにする。 ヒラメ筋は膝を曲げながらストレッチをかけるのがポイントです。膝を曲げると腓腹筋が緩んだ状態になるので、ヒラメ筋を単独でストレッチできます。 下腿三頭筋の筋力トレーニング 下腿三頭筋のトレーニングとしては、立った状態でゆっくり踵の上げ下ろしをする「カーフレイズ」が有名です。 カーフレイズ 膝を伸ばした状態と曲げた状態の両方で行うと、腓腹筋、ヒラメ筋を両方鍛えることができます。 バランスがとりづらい方は椅子やテーブルを持って行うと良いでしょう。 10回を最初の目標にして、ふくらはぎが疲れない程度に取り組みましょう。 日常生活やスポーツ時の工夫 日常生活で運動不足を解消して、散歩や前述のストレッチや運動でアキレス腱を若々しい状態に保つことが大切です。 また、スポーツ時に急に激しい運動をするのではなく、事前のストレッチや軽めの体操など取り入れ、アキレス腱にいきなり強い負荷をかけないようにしましょう。 アキレス腱断裂の再発予防 一度アキレス腱が断裂すると、修復まで腱がもろい状態ですので再断裂のリスクをともないます。そこで再発予防の方法を解説します。 適切なトレーニングの実施 アキレス腱の修復の状態に合わせて、適切なトレーニングやケアをする必要があります。アキレス腱断裂には手術をする場合と、手術をしない保存療法の場合があります。どちらの場合でも、いきなり激しいトレーニングは禁物です。 最初は怪我した部分以外からトレーニングを行い、徐々に下腿三頭筋に負荷をかけて筋力を戻していきます。そして、必要に応じてスポーツ動作の練習をしていき、競技復帰を目指します。 再発を予防するためには、整形外科を受診して、医師や理学療法士などの専門家の指導のもとで、適切なトレーニングを実施しましょう。 アキレス腱へ無理な負荷をかけない 激しい運動を控えたり、ストレッチなど事前の準備なく運動をしないようにしたりなどアキレス腱へ無理な負担をかけないようにしましょう。 サポーターやテーピングを活用して、アキレス腱にかかる負担を軽くするのも良いでしょう。 まとめ・アキレス腱断裂を予防するために日頃からストレッチや運動を心がけよう アキレス腱の断裂を予防するために、下腿三頭筋のストレッチや筋力トレーニングを日頃から行い、柔軟性や筋力を保つようにしましょう。 また、運動不足で急に激しい運動をしたり、ストレッチをせずにスポーツをすることは避けましょう。 再断裂のリスクは不適切なトレーニングや無理な運動で高まります。医師や理学療法士などの助言をしっかり受けて、適切な方法でスポーツなどに復帰するようにしましょう。 本記事で紹介したストレッチや運動は誰でも簡単に実践できます。運動不足を感じる方は、アキレス腱断裂予防のために、今日から実施しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.133 監修:医師 坂本貞範
2023.06.01 -
- アキレス腱
アキレス腱断裂の手術の流れと注意点|入院期間や費用も解説 アキレス腱が断裂してしまった場合、手術を行うか、手術を行わない保存療法を行うかを選ぶ必要があります。その際、もちろん「手術療法(保存療法)のメリット・デメリット」「このような場合には手術が推奨される」などの話はされるでしょう。 しかし、「手術ってどのくらいお金かかるの?」「手術ってどういうことするの?」という不安も自然であり、なかなか医師に聞きにくい場合もあると思います。 この記事では、アキレス腱断裂手術の流れや注意点などを解説します。 アキレス腱断裂の手術治療の選択肢 アキレス腱断裂と診断された際には、治療法を提示され、自身で決定する必要があります。手術と保存療法はそれぞれにメリット、デメリットがあるので、納得できないままどちらかを選ぶことはやめましょう。 手術と保存療法については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。 ▶アキレス腱断裂の治療、手術と保存療法どちらがよい?失敗しない選択肢! それでは、手術を選択した場合の治療の流れを解説していきます。 手術決定〜入院 手術することが決まれば、具体的な日取りを決めていきます。仕事や学校など、考慮したい事情がある場合は必ず伝えましょう。 入院オリエンテーションで入院中の生活、注意点などの説明がありますので、わからないことがある場合は積極的に聞いてよいです。術前検査や、全身麻酔の場合は麻酔科の診察もありますので、治療中の病気などがあれば必ず申告しましょう。 入院・手術 手術より前の日に入院する場合と、手術当日に入院する場合があります。合併症や治療中の病気がある場合には前もって入院することが多いです。 入院・手術が近づいてきたら飲酒は避けたほうがよいでしょう。食べるものなどに制限はありませんが、「手術前〇時間は絶食」などの指示は必ず守ってください。 注意ポイント ・入院、手術前の飲酒は避ける ・病院側からの食事の指示は必ず守る 手術が終わった後は、合併症に気をつけながら経過観察をされます。早期にリハビリテーションを行うこともあります。「手術後の痛みや腫れはいつまで続くのだろう」と不安になる方もおられると思いますが、手術による痛みや腫れなどの急性変化は 3日ほどで改善することが多いと言われています。 入院期間は病院により様々ですが、4〜10日前後を設定しているところが多いです。経皮的縫合術という侵襲の少ない手術方法では日帰りの手術も可能です。手術の説明を受ける際に、術式や期間もまとめて聞くとよいでしょう。 退院後のリハビリテーション 入院した直後から日常生活、スポーツの復帰まで継続したリハビリテーションが必要になります。それぞれの動作、運動を開始するタイミングは施設により異なりますが、最短でのスポーツ復帰は4~5ヶ月に設定している施設が多いです。せっかく受けた手術を無駄にしないためにも、していいこと・してはいけないことを確認し、しっかりと守りましょう。 大まかな流れ 術後1週まで:足関節が動かないようにギプスで固定します。ヒールをつけて歩くなど、固定したところ以外はしっかり動かしてもらいます。 術後2週頃:固定を外し、装具を装着した状態で少しずつ足首を動かす練習を行います。 術後1ヶ月頃:両足での底屈動作(つま先立ち)の練習を開始します。 術後2ヶ月頃:片足での底屈動作(つま先立ち)の練習を開始します。装具がとれて、軽いジョギングを開始します。 術後3ヶ月頃:ランニングを開始します。 術後4〜5ヶ月頃:スポーツ動作の練習を再開します。 手術・入院にかかる費用 どのような術式、麻酔法にするかで差がありますが、3日間の入院で10万円ほど、7日間の入院で20〜30万円ほどは最低かかると見ておいた方がよいでしょう。食事代や個室を利用する場合は差額ベッド代がかかります。 ・3日間の入院で10万円ほど ・7日間の入院で20〜30万円ほど 収入により高額療養費制度を利用することができます。しかし、一旦は負担分を窓口で支払う必要があるので注意が必要です。 ギプス固定後の治療用装具はオーダーメイドで作成するので、こちらも8万円前後かかります。保険適応になりますが、一旦全額を支払う必要があります(支払先は装具屋さんです)。そこから手続きを行うことで差額が還付され、実質負担は医療費の負担割合と同等になります。 アキレス腱断裂の手術についてよくある質問 Q:アキレス腱断裂手術の麻酔はどのようなものですか? A:全身麻酔もしくは腰椎麻酔で行われることが多いです。経皮的縫合術では侵襲が少ないために局所麻酔で行うこともあります。全身麻酔や腰椎麻酔の場合には、麻酔科医による麻酔が行われることが多いです。 Q:手術の前に喫煙はしても良いですか? A:喫煙をしていると、酸素の取り込みが少なくなります。特に全身麻酔を行う際には、痰の増加、肺炎や無気肺(肺の一部に空気が入らない状態)のリスクになります。傷の治りも遅くなる可能性があるので、手術が決まった際にはその日から禁煙しましょう。 まとめ・アキレス腱断裂に対する手術の流れ、費用について解説 この記事ではアキレス腱断裂に対する手術の流れ、費用などについて解説しました。手術療法にはメリットもありますが、合併症や費用などのデメリットもあります。手術を受ける場合はしっかり納得して、不安のないようにする必要があります。少しでも気になることがあれば、必ず事前に医師に確認しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S132 監修:医師 加藤 秀一
2023.05.29 -
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離断性骨軟骨炎は再発する?再発リスクをリハビリで抑えるための治療と期間 離断性骨軟骨炎は、スポーツが原因で発症することが多い病変です。 もし発症した場合は、初期のうちに治療することで完治する確率が高くなりますし、症状が進行した場合でも、重症なものでなければ手術によって痛みや引っかかりを解消することができます。 一時的にスポーツをやめて安静にしていれば治る可能性が高いのですが、運動の再開時期を間違えると再発することもあり、軟骨の状態によっては選手生命を絶たれることもあります。 しかし、術後のリハビリを正しく行うことで再発リスクを下げることが可能になります。プロのスポーツ選手やプロを目指している人はもちろん、誰にとっても再発は避けたいものですよね。 今回は、この離断性骨軟骨炎の再発と再発予防、再発リスクを予防するリハビリについて解説していきます。 離断性骨軟骨炎の症状と治療 離断性骨軟骨炎は、初期の症状がほとんどありません。 違和感や痛みは、負荷がかかった肘や膝の関節軟骨表面に亀裂が入ったことで生じます。 離断性骨軟骨炎をそのまま放っておくと、軟骨がはがれ落ち、痛みが強くなります。はがれ落ちた軟骨の欠片は関節内を浮遊し、曲げ伸ばしに影響を及ぼし、動作の際に引っかかりを感じるようになります。 進行すると、引っかかりと痛みでスムーズな動きができなくなるため、スポーツを継続することが難しくなります。しかし、発症した原因となっている運動を休止することで病巣が修復し完治する場合もあります。 無理に運動を継続すると、手術が必要になったり選手生命を絶たれることになったりする可能性が高いため、肘や膝に違和感があったら運動は中止し、早く医療機関を受診し、医師の指示に従いましょう。 離断性骨軟骨炎は再発する 注意すべきは離断性骨軟骨炎は、一旦症状が治まっても再発することがあります。なぜなら、軟骨が普通の骨よりも再生しにくいからです。 実は、離断性骨軟骨炎の症状は安静にしていると落ち着いてくるため、もう治ったと勘違いする人が多くいます。しかし、その状態で運動を始めてしまうと、まだ安定していない軟骨に負荷をかけることになり、結果として再発してしまうのです。 しばらく運動を休んでいて痛みや、引っかかりがなくなったとしても、自己判断で運動を再開するのは非常に危険です。必ず、運動を再開する前には面倒でも医師の診察を受けて運動再開の可否を確認することが大切です。 大丈夫だろう・・・といった自己判断は、結果として治療期間を長引かせる可能性があるため、避けましょう。 離断性骨軟骨炎をリハビリで抑えるために 離断性骨軟骨炎のリハビリは、保存療法として行うものと、手術の後に行うものがあります。 子どもや軽症の患者さんは、ほとんどが保存療法での治療となるため、治療開始とともにリハビリを始めます。 離断性骨軟骨炎は、運動が原因の疾患ですので、痛みがある時は安静にしていることが一番です。しかし、症状が落ち着いて来たら、ある程度動かすことも必要になります。 離断性骨軟骨炎のリハビリ治療と期間 離断性骨軟骨炎は、軽症であればリハビリと安静中心の保存療法で治療が行われます。 また、離断性骨軟骨炎のリハビリ期間は、患者さんの年齢や症状の進行具合によって変わってきます。 約1~2カ月で痛みはやわらぎ、最低でも3か月の安静は必要です。3カ月以上保存療法を行っていても回復しない場合は手術療法が適応されることもあります。また、すでにに症状が進行しており、軟骨の状態が良くない場合は、リハビリより手術を先に行います。 手術は大体が関節鏡を使ったものになりますが、患者さんの状態によっては軟骨の移植など大がかりな方法になることもあります。 関節鏡下の手術の場合は、傷口が小さく回復が早いため、早期にリハビリを開始することができます。ただ、軟骨の修復は普通の骨と比べて時間がかかるため、無理に動かすことはできません。 離断性骨軟骨炎のリハビリは重要 離断性骨軟骨炎のリハビリは、可動域訓練や筋力トレーニングを中心に行います。 リハビリの際は、理学療法士から動かし方の指導やアドバイスがありますから、それに従って、肘や膝に負荷のかからない動作を身につけていきます。 リハビリを行うことは、自分の動きや姿勢の癖に気付くことにも繋がります。体に負担のかからない動作を知ることができるため、スポーツ再開後のトレーニングやストレッチにも役立ちます。 離断性骨軟骨炎の再発予防 離断性骨軟骨炎の再発を予防するには、運動の再開時期を勝手に決めないことがポイントです。 痛みがなくても軟骨はまだ不安定な状態ですから、きちんと医師の指示に従い、完全に治ってから運動を再開してください。 また、いきなり以前と同じレベルで体を動かすのは危険です。最初のうちは無理せず、少しずつ元に戻していくようにしましょう。 まとめ・離断性骨軟骨炎は再開時期を誤ると再発するため注意が必要 離断性骨軟骨炎は、安静にしていれば症状がなくなっていきます。しかし、それを完治したと思い込んでしまうと、再発しやすくなります。リハビリを正しく行うことで症状を和らげ、再発を防ぐことができます。 自分の姿勢や動作の癖を知ることは、その後の怪我を予防することにも繋がります。また、治療後はいきなり治療前と同じトレーニングをするのではなく、少しずつ運動を再開していくようにしましょう。 きちんと軟骨が修復されれば、離断性骨軟骨炎は治すことができます。痛みや引っかかりがなくなっても、運動の再開時期は必ず一度受診し、医師の指示に従うようにし、焦らず確実に治療しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.132 監修:医師 坂本貞範
2023.05.26 -
- アキレス腱
【アキレス腱断裂】アキレス腱が切れる予兆の症状とその原因 はじめに アキレス腱はわたしたちの体の中で、最も強靭といわれている靭帯です。断裂してしまうと、手術やギプス固定による長期間の治療が必須であり、日常生活に大きく影響を与えます。実はアキレス腱断裂には、予兆があることがあります。予兆を知っていれば、断裂を防ぐために予防もできるでしょう。 今回はアキレス腱が切れる予兆と、その原因について詳しく解説します。疑わしい場合のアキレス腱断裂テストについてもお答えしています。ぜひ参考にしてください。 アキレス腱断裂とは アキレス腱断裂は30代から40代に最もよく起こる外傷です。若い人ではスポーツによって受傷することが多いですが、40代以上では、日常生活のちょっとした動作で断裂してしまうこともあります。 アキレス腱断裂は、当初は歩くことができる場合もあり、整形外科を受診しないと、見逃されてしまうこともあります。ですが、放置すると後遺症を残す可能性が非常に高いため、しっかりと治療することが大切です。 健常なアキレス腱は、約1トンもの張力に耐えられるといわれています。しかしアキレス腱も、歳を重ねると徐々に老化してきます。アキレス腱はコラーゲン繊維でできているため、だんだんと硬くなり、柔軟性がなくなるのです。高齢になってから起こるアキレス腱断裂は、このように老化したアキレス腱が原因になっている場合も多くあります。 若年者でも、スポーツによる繰り返しのストレスが、アキレス腱を痛めてしまうことがあり、傷んだアキレス腱は断裂しやすくなります。 アキレス腱断裂の前兆 アキレス腱断裂の前兆として、アキレス腱周囲に痛みや腫れなどの症状や異変がある場合があります。 アキレス腱断裂を引き起こす状況や症状について解説していきます。 立ち仕事がアキレス腱に与える影響 老化や過度なスポーツ以外にも、アキレス腱断裂の危険性を高める要因があります。それは、日常生活でのアキレス腱への負荷です。 特に長時間の立ち仕事は、アキレス腱にストレスをかけ続けます。その結果、アキレス腱自体に小さな傷がついたり、アキレス腱の周囲に炎症を起こしたりします。これをアキレス腱炎、アキレス腱周囲炎と呼びます。 アキレス腱炎やアキレス腱周囲炎は、当初は立っているときやスポーツした時などに痛みが起こりますが、進行すると安静時にもアキレス腱周囲に痛みが出現します。 アキレス腱断裂の危険因子 ・過度なスポーツや老化 ・日常生活でのアキレス腱への負荷 ・長時間の立ち仕事 ・アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎の進行 このようなアキレス腱のまわりの炎症は、腱自体の強度を落とすため、アキレス腱断裂の危険因子です。 ふくらはぎの痛みや足のむくみはアキレス腱断裂への危険信号? アキレス腱周囲に炎症が起こると、ふくらはぎや踵に痛みがでます。特に、動き出しや、朝(起床時)の1歩目が痛いとおっしゃる方が多いです。 また、アキレス腱が全体的に腫れていたり、コブ状に盛り上がったりする場合もあります。これもアキレス腱断裂の危険信号です。 さらに過度な足の浮腫み(むくみ)も、アキレス腱断裂の可能性を示す予兆となり得ます。浮腫みは血液やリンパ液の流れが悪くなることで起こります。その結果アキレス腱への血液供給が不足し、ストレスを受けたアキレス腱が十分に修復されなくなってしまいます。 アキレス腱断裂の危険信号 ・ふくらはぎや踵に痛みがある ・動き出しや起床時の1歩目に痛みを感じる ・アキレス腱の全体の腫れ、コブ状の盛り上がりがある ・過度の足の浮腫みがある アキレス腱断裂の前兆に気付いたら アキレス腱周囲の痛みや腫れなど、アキレス腱周囲に症状がある場合は、まず負荷のかかるスポーツや日常生活動作を中止しましょう。痛みがあるけど、無理して運動をするのはとても危険です。アキレス腱周囲炎の治療の基本は安静です。また踵を高くした靴を用いて、アキレス腱への負担を軽減する方法もあります。 また、アキレス腱断裂をしてしまった人は、ストレッチを行っていなかったという研究もあり、アキレス腱への負荷を軽減するために日常的なストレッチを取り入れることをお勧めします。 そして、早期に整形外科を受診することをお勧めします。ときどきステロイドの注射を打ってほしいという患者さんがいますが、ステロイド自体がアキレス腱の断裂の危険性を高めてしまうため、アキレス腱周囲炎に対しては行いません。 まずは整形外科を受診し、専門医の正しい指示を仰ぎましょう。 アキレス腱断裂についてよくあるQ&A Q:「服用しているとアキレス腱断裂を起こしやすい薬」があると聞いたのですが、本当? A:フルオロキノロン系の抗菌薬を長期間服用していると、アキレス腱の変性を誘発し断裂が起こりやすくなるという報告があります。 しかし、抗菌薬は必要時に短期間処方されることが多いので、日常的に心配しすぎる必要はありません。ただし、長期間に及ぶ場合は注意が必要です。 Q:アキレス腱断裂テストは簡単にできますか? A:アキレス腱断裂テストは一般的に、「トンプソンテスト」と呼ばれています。整形外科の診察でも行います。 トンプソンテスト ①まずうつ伏せになり、膝を曲げます。 ②そのまま力を抜いた状態で、ふくらはぎを握って圧迫した際に、足首が動くかどうか確認します。 ③アキレス腱が切れていない場合は、足首が下向きに動きますが、切れていると動きません。 自分でやるとなかなかうまくいかないので、2人でやるのがいいと思います。 まとめ・アキレス腱が切れる予兆の症状とその原因 アキレス腱断裂は、日常生活の中で誰にでも起こりうる怪我です。一度起こしてしまうと、元の生活に戻れるまでには長期間の治療を必要とします。 アキレス腱断裂の予兆を覚えておくと、休息を取るタイミングを見極められるようになります。痛みやむくみなど症状が出ている場合は、無理をせずしっかりと対策をしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S131 監修:医師 加藤 秀一
2023.05.22 -
- アキレス腱
アキレス腱断裂の全治期間とは?仕事復帰や歩けるまでどのくらい? アキレス腱断裂は足首を伸ばす力の伝達を担うアキレス腱が完全に切れてしまう怪我で、手術をしない保存療法とアキレス腱を縫合する手術療法の選択肢があります。 それぞれの治療では歩けるまで、もしくはスポーツ復帰までにはどのくらいかかるのでしょうか。治療方針を選ぶためには、治療の具体的な内容について知っておく必要があります。 この記事では保存療法と手術療法における歩行や仕事復帰までの経過、全治期間などについて詳しく解説していきます。 保存療法と手術療法の比較 どちらの治療を選んでも長期的には良好な経過が得られることが多いのですが、手術の方が歩行やスポーツの復帰までの期間が短く、再断裂の可能性も低いことがわかっています。 しかし、手術は傷の痛みや感染症、神経損傷のリスクもあるので、保存療法で治したい方も多いと思います。 以下で具体的な期間を詳しく解説していきます。 ・ギプス固定期間 アキレス腱断裂では足関節を反らすと断裂した腱同士が離れてしまい、くっつかないため足関節を伸ばした状態でギプス固定を行います。 ・手術では腱同士を縫合しているのでギプス固定は腱に負担がかからないようにすることが目的で期間は1〜2週間程度です。 ・保存療法ではそれより長く2〜4週間程度ギプス固定されることが一般的です。 ・松葉杖の期間 足首を伸ばした状態でギプス固定を行うので、ギプス固定のうちは上手く歩くことが難しく、松葉杖を使用することが必要です。 そのため、どちらの治療でもギプス固定の期間は松葉杖を使用することになります。 ・装具の期間 ギプスを除去してからはアキレス腱断裂用の装具(アキレスブーツ)を使用します。ギプスでは足関節を動かすことや、角度の調整が不可能で歩行することができませんが、装具を使用することにより、踵を付けて歩行することが可能になります。 装具の特徴としては、踵の高さが調節できることで、初期は踵が高い状態で腱への負担を減らしますが、徐々に踵の高さを低くして通常の歩行ができるように調整していきます。 ・手術療法では1〜2週間後から開始し、6〜8週間程度で装具を終了します。 ・保存療法では2〜4週目から装具の使用を開始し、約1ヶ月程度使用します。 ・歩行までの期間 一般的にギプスを外して装具を着用できた段階で歩行することが可能になります。 ただし、装具を着用してすぐの段階では、踵が高く歩行が不安定なので松葉杖の併用をおすすめします。 ・車の運転について アキレス腱が断裂している際の車の運転については明確な取り決めはありません。しかし、一般的にギプス固定や装具を着用している状態では運転することはおすすめできません。もし交通事故を起こしてしまった場合には怪我による過失を指摘される可能性もあるので、ギプスや装具を終了して日常生活について問題なく過ごすことができるようになってから運転を開始することがよいでしょう。 最終的には自己責任になってしまうので、運転時期については医師とも十分相談するようにしましょう。 ・スポーツ復帰までの期間 スポーツ復帰については、手術を受けた場合は3ヶ月、保存療法を受けた場合は6ヶ月以上の期間を要するとされています。そのため最短でスポーツ復帰をしたい方は手術療法がお勧めされます。 ・手術を受けた場合は3ヶ月 ・保存療法を受けた場合は6ヶ月以上 また早く確実に治すためには、どちらの治療法でも医師や理学療法士の指導を守り、徐々に負荷を増やしていくトレーニングを行い、無理をしないように注意することが大切です。 ・仕事復帰までの期間 仕事復帰までの期間は業務内容によって異なります。事務作業であれば座った状態で行えるので松葉杖、装具で歩行できている段階で可能ですが、走ったり、重いものを運んだりする重労働では、スポーツ復帰できるまで筋力が回復した時期からの復帰をお勧めします。 アキレス腱断裂についてよくあるQ&A Q, 痛み、腫れはいつまで続きますか? A, 術後の痛みや腫れが完全になくなるまでは個人差があります。 手術を受けてから抜糸をするまでは1〜2週間程度ですが、その後も傷、腱を治す過程で炎症が起こっているので1ヶ月から2ヶ月程度かかることもあります。 Q, 装具の歩き方、調整方法について A, アキレス腱断裂用装具は踵に着脱できるヒールが付いており、段階を追って徐々にアキレス腱を伸ばすことができるようになっています。治療開始直後はアキレス腱への負担を減らすために踵が高い状態で歩く必要があるので、つま先立ちの形で歩行することとなります。この状態で上手に歩けない方は松葉杖を使用するとよいでしょう。 治療が進むと徐々にアキレス腱に負担をかけてもよくなるため、踵を少しずつ低くしていき、最終的に装具を終了します。装具の調整は医師と相談しながら行うようにし、ご自分で調整しないようにすることが必要です。 Q, お酒の解禁はいつからですか? A, アルコールを摂取すると血流が増加するので、出血や腫れが悪化してしまう要因となります。そのため怪我をしてから腫れが落ち着くまでの数週間、手術を受けた方では抜糸をして傷がしっかり治るまでは摂取しないようにしましょう。 まとめ・アキレス腱断裂の全治期間とは?仕事復帰や歩けるまでどのくらい? アキレス腱断裂では、保存療法と手術療法によってスポーツ復帰までの期間が異なります。またギプス固定の期間も異なるため、歩行や仕事への早期復帰を考えると手術療法にメリットがあります。しかし手術療法はリスクもあるので、ご自分の目的をしっかり考えて治療を選ぶようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.131 監修:医師 坂本貞範
2023.05.18 -
- アキレス腱
アキレス腱断裂の治療、手術と保存療法どちらがよい?失敗しない選択肢! アキレス腱は腓腹筋とひらめ筋というふくらはぎの筋肉から踵の骨につながる強力な腱で、人体で最も太い腱です。アキレス腱断裂は中高年者に多く、激しい運動やスポーツ中の突然の動作、あるいは転倒などが原因で発生することがほとんどです。アキレス腱は足首の動作に関与するので、断裂してしまった場合には歩行が困難になり、生活に支障をきたしてしまうことがあります。 アキレス腱断裂の治療には、手術と保存療法があり、どちらの治療を選んでも適切に行うことで完治することができます。しかし、手術と保存療法のどちらを選択するかには保存療法で失敗するリスクや歩けるまでの期間の比較、手術の合併症などの正確な情報を知っておく必要があります。 この記事では、アキレス腱断裂の治療方法について、それぞれのメリットとデメリットを詳しく説明し、失敗しない選択肢について解説します。 アキレス腱断裂の診断方法 アキレス腱が断裂した時には、「ふくらはぎをバットで叩かれた感じ」や、「ボールが当たった感じ」などの衝撃を感じることが多く、「破裂したような音がした」など断裂時の音が自覚できている場合もあります。断裂した部分は凹みができ、レントゲン写真は明らかな異常がないことがほとんどです。 問診と診察で診断は可能ですが、診断が難しい場合や、治療中の腱の治癒過程を観察するためにエコーやMRIが用いられることもあります。 アキレス腱断裂の治療方法について 保存療法と手術療法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらの治療でも成績は良好で1年後の状態はほとんど同じなのですが、患者さん毎に状況は異なるので、治療の特徴を理解して主治医とよく相談することが必要です。 保存療法のメリット、デメリット 保存療法では、まずギプス固定を行ってから、アキレス腱断裂専用のヒールの調節が可能な踵を高くした装具を着用して歩行練習を開始します。 保存療法のメリットとして、入院や手術が不要なので費用が安い点と、手術による合併症のリスクがなく安全であるという点があります。デメリットとして、ギプスの固定期間が長く、ギプスを終了してから歩行を開始するので歩行の開始時期が遅くなること、再断裂率が手術と比較して高いことが挙げられます。 メリット ・入院や手術が不要なので費用が安い ・手術による合併症のリスクがなく安全 デメリット ・ギプスの固定期間が長く、ギプス終了後の歩行の開始時期が遅くなる ・再断裂率が手術と比較して高い ギプスの固定期間は医療機関によって幅がありますが、4週間〜6週間程度のことが多く、装具を終了してスポーツを開始できるまでに4〜6ヶ月程度かかります。 手術治療のメリット、デメリット 手術治療では断裂したアキレス腱を縫合しますが、大きく直視化縫合術と経皮的縫合術という傷が小さい手術の2つに分けられます。行っている手術は病院ごとに異なるので、詳しい内容は病院に問い合わせるようにしましょう。 手術治療のメリットは再断裂率が低く、ギプス固定の期間が短く、スポーツ復帰までの期間が早いことです。デメリットとして手術の合併症である傷の感染症、神経損傷などのリスクがあることと、手術代+入院費用がかかることが挙げられます。 メリット ・再断裂率が低い ・ギプス固定の期間が短く、スポーツ復帰までの期間が早い デメリット ・手術の合併症である傷の感染症、神経損傷などのリスクがある ・手術代、入院費用がかかる スポーツ復帰までの期間は手術内容によりますが、3〜5ヶ月程度です。 アキレス腱断裂についてよくあるQ&A 1. アキレス腱断裂の保存治療と手術治療の復帰までの期間の違いはどのくらい? 回答:ギプス固定の期間は医師により異なりますが、通常の保存治療では4〜6週間程度ギプス固定を行います。その後装具をつけて歩行練習、足関節の可動域訓練を行います。装具の踵の高さを少しずつ調節していき、足関節を十分に反らすことができるようになったころに装具を終了します。装具を終了できるまでは約4〜5ヶ月でスポーツ復帰までは6ヶ月程度です。 手術治療では術後1〜2週間程度ギプス固定を行い、その後装具を使用して歩行練習を開始します。装具を終了できるまでは6〜8週程度で、スポーツ復帰は3〜5ヶ月程度です。ただし、治療の詳細は患者さんの状態、病院ごとに異なるので医師に確認するようにしましょう。 2. アキレス腱断裂は保存療法と手術治療のどちらがおすすめですか。 回答:患者さんの目的と、医師の考えによるため完全な正解はありません。目安として、競技レベルのスポーツをしており、早期の復帰を希望する方や再断裂を起こしたくない方は手術治療のよい適応です。一方で、日常的にスポーツをしていない方や手術の合併症が気になる方は保存治療を選択してもよいと考えられます。 3.アキレス腱が再断裂する可能性はそれぞれの治療でどの程度ですか。 回答:様々な研究のデータを集めて解析した質の高い論文では再断裂率は手術で3.6%、保存療法で8.8%と保存療法の再断裂率が高い結果でした。日本整形外科学会のガイドライン2019年版でも再断裂率は保存療法で高いと記載されており、再断裂のリスクを下げたい方は手術治療が適していると言えます。 まとめ・アキレス腱断裂で手術と保存療法による治療、ご自身に合った選択を! アキレス腱断裂の治療は保存療法、手術治療ともに成績は良好ですが、手術治療の方がギプス固定、スポーツ復帰できるまでの期間は短いです。 一方で手術に伴う合併症の可能性もあるので、ご自身の予定や治療の目的などをはっきりとさせて治療に臨むことが必要です。この記事を参考にしてご自身の治療に役立ててください。 No.S129 監修:医師 加藤 秀一
2023.05.15 -
- アキレス腱
アキレス腱断裂、放置するとどうなる?その後遺症について解説 アキレス腱断裂は、スポーツ中などに起こることが多い怪我です。ただし、主に40代以上の方では、スポーツをしていなくても、日常生活で断裂してしまうこともあります。 いずれ治るだろうと放置すると、歩行困難や慢性的な痛みなどの後遺症が発生する可能性があり、しっかりと治療するべきです。 今回は、アキレス腱断裂の症状や応急処置、ギプスによる固定方法、後遺症などについて詳しく解説します。 アキレス腱断裂の症状は?断裂音がするってほんと? アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋とかかとの骨をつなぐ、体の中でもとても太い腱です。このアキレス腱が断裂してしまうと、かかと周辺に強い痛みを生じます。 実際に怪我をした人に聞くと、「後ろから誰かに踵を蹴られたような気がしたほどの強い衝撃と痛み」という方が多いです。また、ブチッという断裂音を自覚することもあります。 断裂直後は、歩行困難になる場合も多く、徐々に腫れや内出血が出現してきます。 アキレス腱断裂直後の応急処置 アキレス腱断裂かなと思ったら、運動中の場合は直ちに中断し、歩行はしないようにしましょう。また、固定できるものがある場合は、足首を動かないように固定できると良いです。 腫れや痛みを防ぐため、足を心臓より高くして、足首を氷などで冷やすことも有効です。 アキレス腱断裂を放置することによる後遺症とは アキレス腱断裂は放置すると、歩行困難となる場合があります。アキレス腱を断裂してしまうと、足首を動かす動作で重要な役割を果たすふくらはぎの筋肉である、下腿三頭筋がうまく機能しないため、つま先立ちはもちろん、立ち上がりや階段昇降が難しくなる可能性があります。 また、断裂した部位が治癒しないままになると、慢性的な痛みが残ることもあります。時間が経過すると、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋が徐々に痩せて、筋肉が萎縮してしまいます。 そのため、早期に適切な治療を行うことが必要であり、放置せずなるべく早く整形外科を受診するようにしましょう。 アキレス腱断裂の検査方法 アキレス腱断裂は、視診や触診だけでも、ある程度判断することができます。アキレス腱が断裂した部位には、delle(デレ)と呼ばれる凹みがあり、皮膚表面からでも触れることができます。 また、うつ伏せになり、ふくらはぎを圧迫した際に、足首が動くかどうか確認するトンプソンテストを行います。アキレス腱がつながっていれば、ふくらはぎを圧迫すると自然に足首が動きますが、アキレス腱断裂の場合、ふくらはぎを圧迫しても足首は動きません。 超音波でも、アキレス腱の断裂を確認することができます。ほかに骨折がないかどうか、レントゲンを撮影したり、触診でわかりづらい場合は、MRI検査を行ったりすることもあります。 アキレス腱断裂の治療 アキレス腱断裂の治療方法は、手術を行わずにギプスや装具を用いて治療する保存療法と、断裂したアキレス腱を直接糸で縫合する手術療法に分けられます。 保存療法 保存療法では、断裂したアキレス腱が離れていかないように、足首を底屈(つま先立ちする際の方向)にした状態でギプス固定を行います。その後、専用の装具を用いて、徐々に歩行練習などを行います。 手術療法 スポーツ選手や若年者など、活動性が高い人は手術を行うことが多いです。ただし、手術をしたとしても、すぐにスポーツが可能になるわけではなく、保存療法と同じく専用の装具を用いた治療期間を必要とします。再断裂するリスクは手術療法の方がやや低いですが、どちらも再断裂の危険性はあります。また、手術を行うと細菌感染などのリスクも生じます。 どちらが良いのかは、十分に担当医と相談して決定するべきでしょう。 アキレス腱断裂についてよくあるQ&A Q:いつからスポーツ復帰できますか? スポーツの復帰時期には個人差がありますが、一般的には保存療法の場合は6か月程度、手術療法でも4カ月程度の治療期間は要することが多いです。復帰してからも、徐々に運動強度を上げていく必要があり、再断裂を防ぐための筋力トレーニングなど、リハビリは必須です。 Q:手術はどのような方法で行いますか? 手術は、基本的には腹臥位(うつぶせ)で行います。アキレス腱の断裂している部分に近い皮膚を切開し、直接アキレス腱に糸をかけて縫い合わせます。縫い方にはいくつかの方法があり、いずれを選択するかは医師の判断によりますが、いずれの方法でもしっかりと縫合できます。 全身麻酔や腰椎麻酔(下半身麻酔)で行うことが多いですが、局所麻酔のみで、日帰りで行っている病院もあります。 まとめ・アキレス腱断裂は放置厳禁!早期の治療で後遺症を防ごう アキレス腱断裂はスポーツを行う方だけでなく、誰にでも起こりうる怪我です。治療期間は長くかかりますが、放置せずに適切な治療を行うことで、後遺症を防ぎ、早期に日常生活やスポーツに復帰することが可能となります。アキレス腱断裂を疑う症状がある場合は、速やかに整形外科を受診しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S130 監修:医師 加藤 秀一
2023.05.12 -
- アキレス腱
アキレス腱炎の予防には靴選びが大切! 正しい靴の選び方と注意点 「アキレス腱炎はどうしたら治るの?」「アキレス腱炎を予防するには?」こんな疑問のある方はいませんか。アキレス腱炎の原因は、靴にあるかも知れません。 アキレス腱炎はランニングやバスケなどでジャンプを繰り返すことで起こります。それらの動作を合わない靴で行うことは、怪我の発生を招きます。そのため、正しい靴選びをすることが怪我の予防には大切です。 今回はアキレス腱炎を予防する対処法として、靴選びのポイントやインソール(中敷き)の活用方法を解説します。 アキレス腱炎を予防する靴選びのポイント4つ アキレス腱炎の原因はアキレス腱に繰り返しかかるストレスです。 ランニングやジャンプでかかるストレスを軽減する靴を選ぶためには、以下の4つポイントを押さえましょう。 1, 踵が薄すぎない 2, 靴底のクッション性が高い 3, カウンターがしっかりしている 4, サイズの合ったものを選ぶ それぞれポイントとなる理由を詳しく解説します。 1, 踵が薄すぎない アキレス腱はふくらはぎの筋肉が踵につく部分です。そのため、ふくらはぎの筋肉が働くと、つま先立ちになるような力が働きます。つまり、アキレス腱をゆるめて負担を減らす場合は、踵の高い靴を履く方が良いです。 ただし、踵が高いと不安定になりやすいので、スポーツなどで使用するには適度に踵に厚みがある靴を選びましょう。 逆に靴底がすり減ったような靴はアキレス腱の負担を強めます。踵が薄すぎるような靴はアキレス腱を常に緊張させてしまう恐れがあるので注意しましょう。 2, 靴底のクッション性が高い アキレス腱にかかる衝撃を和らげるために、靴底のクッションが良いものを選びましょう。 踵の薄さについて前述しましたが、靴底全体を見ても、ある程度厚みのあるもので、クッションの性能が良いものを選ぶのが大切です。 3, カウンターがしっかりしている アキレス腱炎の原因の1つが、回内(かいない)と言って、足の裏を外に向けるような動きが過剰に生じることです。この状態を「過回内(かかいない)」や「オーバープロネーション」と呼びます。過回内が起こると、アキレス腱をひねるようなストレスがかかり、ジャンプやランニングの着地でアキレス腱の負担が強まります。そのため、アキレス腱炎の要因として挙げられます。 靴の後ろ側の部分で踵を左右で挟み込む部分をカウンターや月型(つきがた)と呼びます。カウンターがしっかりしていると、足首の安定性を高めて、過回内を防ぎます。結果として、アキレス腱炎も予防につながるのです。 4 ,サイズの合ったものを選ぶ 当たり前かもしれませんが、アキレス腱炎の予防にも、正しいサイズの靴を選ぶことは重要です。 人に譲ってもらい、なんとなくサイズが同じくらいだから、と履き続けていませんか?靴は履いているうちにそれぞれの足の形に変形するため、お下がりの靴では自分の足が馴染まないことも。 サイズの小さすぎる靴を選べば、アキレス腱をしめつけすぎてしまい、アキレス腱に直接負担がかかります。大きすぎる靴では、靴の中で足がずれてしまい、靴の機能が生かせず、足への負担も強まってしまい、怪我の危険性を高めます。 また、インソールやサポーターを使用する場合は、靴の大きさを大きめにした方が良い場合もあるため注意しましょう。 アキレス腱炎の予防にはインソールも効果的 アキレス腱炎の予防には正しい靴の着用とともに、靴の中敷きとしてインソールを活用するのも効果的です。インソールには、前述のアキレス腱炎を予防する靴選びのポイントと同じ機能が備わったものがあります。 例えば、ヒールカップと呼ばれる、踵を左右で覆うような構造をしたインソールでは、靴のカウンターと同じように、踵が過回内にならないように安定させる機能があります。 また、過回内の要因である扁平足(へんぺいそく)に対して、土踏まずを支えるようなアーチサポートと呼ばれる機能のついたインソールが活用できます。アーチサポートをすることで、過回内を防ぎ、アキレス腱にかかる負担を減らすのも良いでしょう。 このように、アキレス腱炎の予防のために、インソールをうまく活用してみましょう 靴選びだけではなく靴の履き方にも気をつけよう アキレス腱炎を予防するためには、靴の履き方にも気をつける必要があります。靴を不適切に履いてしまうと、せっかく良い靴を選んでも、靴の機能を十分活かせません。 靴の履き方のポイントは以下の2点です。 1, 靴紐を活用する 2, 踵をしっかり合わせて履く それぞれ詳しく解説します。また、最後に靴を履く手順を紹介します。 1, 靴紐を活用する 靴紐のあるスニーカーやシューズを履くときには必ず靴紐を調整しましょう。 履くときは靴紐を一度ゆるめて、履いた後はしっかりと靴紐を締めて結ぶのが大切です。 もし、靴紐をほどかずにきついままの状態で履いてしまった場合、靴の上部であるアッパー部分が伸びたり、踵部分を引っ張って履こうとするためカウンターが崩れたりするなど、靴の機能低下を招きます。 また、履きにくいからといって紐がゆるんだ状態で靴を履くと、靴の固定性が弱まり、足が靴の中で滑って、踵をうまく支えられなくなってしまいます。 上記のような状態は、靴のカウンター機能の働きを低下させるため、アキレス腱炎のリスクを高める要因になるので注意しましょう。 2, 踵をしっかり合わせて履く アキレス腱を保護するとともに、足首が回内しすぎないようにするためには、靴のカウンターでしっかり踵を支えてもらう必要があります。 そこで、靴を履くときに大切なのが、踵をしっかり合わせて履くことです。踵がしっかりはまっていないと、靴のカウンター機能が充分働きません。足を靴の中に入れるときは、踵から合わせることを覚えておきましょう。 靴を履く手順 上記を踏まえた上で、靴の履き方の手順を紹介します。 ~靴を履く手順~ 1, 靴紐をゆるめる 2, 足を靴に入れて、つま先をあげながら踵を地面に押しつける 3, 足に合うように靴紐のきつさを調整して結ぶ 4, 履いた後、ゆるさやきつさを感じないか、アーチサポートやカウンターがしっかり合っているかを確認する 以上のように、普段何気なく行っている靴を履く動作も怪我の予防には大切です。ついつい面倒になってしまい忘れがちですが、アキレス腱炎の予防のために意識して、習慣化しましょう。 まとめ・アキレス腱炎を予防するため正しい靴を選んで運動をしよう アキレス腱炎を予防するためには、ジャンプやランニングでアキレス腱にかかる衝撃を減らし、踵をしっかり守ってくれる靴を選ぶようにしましょう。 また、インソールを活用すれば、靴の機能と合わせて、より負担を軽減することも可能です。自分自身で靴を選ぶのではなく、靴の専門店のスタッフに聞きながら、靴の性能を吟味して、自分にあったサイズの靴を探しましょう。 また、靴の履き方も重要ですので、本記事で紹介したポイントを覚えて、毎日実践してみましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.130 監修:医師 坂本貞範
2023.05.10 -
- アキレス腱
アキレス腱炎のテーピング効果とは?プロが実践する方法を解説! 「ランニングするとアキレス腱が痛む」「アキレス腱の痛みを和らげる方法が知りたい」 このような疑問のある方は、アキレス腱炎に対するテーピングの活用を検討しましょう。アキレス腱炎はランニングやジャンプを繰り返すことで、アキレス腱にストレスがかかって生じる怪我です。 今回はアキレス腱炎への対処法の1つである、テーピングの効果や実践方法について解説します。 アキレス腱炎に対するテーピングの効果 アキレス腱炎は、バスケや陸上、バレー、マラソン、バレエなどランニングやジャンプを繰り返すスポーツで起こりやすい怪我です。これらの動作により、アキレス腱に繰り返しストレスがかかり、炎症が発生してしまいます。 症状としては、足首を動かしたり、歩いたりするときに生じるアキレス腱周辺の痛みやランニングなどの運動の制限があります。 ここでは、これらの症状に対するテーピングの効果を紹介します。 痛みを軽減する テーピングによりアキレス腱にかかる負担を軽くして、痛みを軽減できます。 アキレス腱はふくらはぎの筋肉である腓腹筋(ひふくきん)とヒラメ筋が合流して、踵にくっつく部分の腱(けん)です。そのため、ふくらはぎの筋肉が働くとアキレス腱に負担がかかります。具体的には、つま先立ちや足首を下に向けるように動かしたときです。 ランニングやジャンプでは、ふくらはぎの筋肉の働きにより、しっかり地面を蹴り出すため、アキレス腱に大きな負担がかかります。 テーピングにより、ふくらはぎの筋肉の働きをサポートしたり、足首の動きを制限したりすることでアキレス腱の負担を軽減でき、痛みを軽くする効果が期待できます。 動きをサポートする アキレス腱炎のために、立ったり、歩いたりしにくい場合でも、テーピングで痛みを軽減させたり、筋肉の働きを補助することで、動きをサポートできます。 前述のようにアキレス腱炎の原因は、アキレス腱に繰り返しかかるストレスです。スポーツやランニングなどは一時的に休止できますが、立つ、歩くといった動作は日常生活には不可欠で、アキレス腱に負担がかかるからといって行わないわけにはいきません。そのため、テーピングで少しでも動きやすくなるようにサポートすることが大切です。 アキレス腱炎の発生・再発の予防も可能 テーピングにより、アキレス腱炎にかかる負担を減らしたり、動きをサポートしたりすることで、アキレス腱炎の再発を予防が期待できます。 アキレス腱炎の発生する要因として、もともと足首の関節の動きが不安定だったり、足の筋肉の機能が不十分だったりする点が挙げられます。そのため、テーピングにより足首の動きを固定したり、ふくらはぎの筋肉をサポートしたりすることで、発生・再発を予防することができるのです。 また、アキレス腱炎後にスポーツを再開する場合にもテーピングは有効です。炎症により固くなったふくらはぎの筋肉やアキレス腱などの組織に急に負担をかけると、再発のリスクが高まります。そこで、テーピングによりサポートをしながら、運動を再開することで、アキレス腱に急な負担をかけないことが可能です。 アキレス腱炎に対してはテーピング以外の治療も必要 テーピング自体でアキレス腱の炎症が治るわけではありません。そのため、根本的な治療のためには、整形外科を受診して、適切な治療を受けましょう。 アキレス腱炎に対しては以下のような治療があります。 ・安静 ・外用薬の塗布 ・踵を高くする装具 ・物理療法(超音波など) 上記のような手術をしない保存療法が治療の中心になります。 また、再発予防には、アキレス腱の柔軟性低下や筋力低下、ランニングフォームの改善、練習量や練習環境の調整など、発生のリスクを評価して対策をします。医師や理学療法士などの専門家による指導を受けながらの実施が必要です。 アキレス腱炎に対するテーピングの方法 アキレス腱炎に対するテーピングの巻き方を具体的に紹介します。 【用意するテープ】 伸びるタイプのテープ4本 (踵から膝下までの長さを3本、足首に巻ける長さを1本) 【巻き方】 1. 踵から膝下までふくらはぎの中央を通るようにテープを貼る 2. 踵の外側から始めて、踵の内側を覆ったあと、アキレス腱の上を通って、ふくらはぎの外側までテープを貼る 3. 踵の内側から始めて、踵の外側を覆ったあと、アキレス腱の上を通って、ふくらはぎの内側までテープを貼る 4. 3本のテープを固定するため、テープが交差したところを覆うように、足首に1周テープを巻きつける 【注意点】 貼り始めは引っ張りながら貼り、最後2cm程度はそのまま貼る 上記の方法でテープの伸縮性を利用してアキレス腱の働きをサポートできます。また、アキレス腱に直接テープを貼ることで、保護する意味もあります。 まとめ・アキレス腱炎にテーピングを実施して症状軽減や再発の予防をしよう! アキレス腱炎はアキレス腱の使い過ぎによって起こるため、できるだけ負担を軽くすることが大切です。 テーピングはアキレス腱の働きを補助するため、症状の軽減や再発予防の効果が期待できます。本記事でのテーピング方法は自分でも可能ですが、もし不安な場合はお近くの整形外科などを受診して、直接指導を受けましょう。 また、テーピングは根本治療ではありません。痛みが生じた場合は、まず整形外科を受診して、適切な治療を受けましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.129 監修:医師 坂本貞範
2023.05.08 -
- アキレス腱
アキレス腱炎のつらい痛みの治し方!自宅でできるセルフケアのポイントとは? アキレス腱は、踵の骨とふくらはぎの筋肉をつなぐ腱で足関節を動かす際に重要な働きをします。そのため、アキレス腱炎になってしまった場合には日常生活や歩行でも痛みを感じてしまうため、早く治したい症状の 1つです。 アキレス腱炎と病院で診断された場合には、スポーツの中止、安静などのほかに鎮痛薬の処方や、運動療法が指導されます。その他にも整体や整骨院でのマッサージなどの様々な治療法がありますが、ご自宅で行うセルフケアも治療において重要です。 この記事ではアキレス腱炎のつらい痛みを一日でも早く治すために、ご自宅でできるセルフケアのポイントについて解説していきます。 安静・ストレッチ 痛みが生じてすぐの場合、強い炎症が起こっています。そのため、原則としてまずは運動を中止して、安静にするようにしましょう。一般的には2〜6週間程度の安静、スポーツ活動の休止が必要です。2週間程度安静にしてから再度医師の診察を受けて、スポーツの再開時期について指導を受けるようにしましょう。 ストレッチに関しては、足関節を反らして、アキレス腱を伸ばすように行います。 1. 階段などの段差につま先をかけて、踵をゆっくり下ろします 2. アキレス腱が伸びてきたら、我慢できる程度の痛みまで踵を下ろしてアキレス腱を伸ばしていきます 3. この状態を15秒ほどキープします 15秒ほどキープするのを1回とし、3 回 1セットとして1日2セットを目標に行うようにしましょう。 運動療法 ストレッチに加えて、ふくらはぎの筋力訓練が効果的です。 「カーフレイズ」や「つま先立ち体操」という方法であり、ストレッチと動作が似ていますが、踵を上げる動作によって筋力を強くすることができます。 1. 階段や台の縁に立ち、踵を段の端から出します 2. その状態で、踵をゆっくりと上げ下げさせます 3. この上下運動を10回ほど行います 10回1セットを1日2セットとして、少なくとも3ヶ月程度継続するようにしてください。この運動は痛みがあっても行うのを推奨していますが、我慢できないほどの痛みの場合には中止するようにしてください。 サポーター、インソールの使用 アキレス腱炎の発症にはふくらはぎの筋肉の柔軟性の低下や、足の回内や回外などのアライメントの異常が関連していると言われています。 また、足関節を反らしすぎるとアキレス腱が伸びて痛みが悪化するため、サポーターを使用して足関節が反りすぎないように制限したり、インソールを用いて、アキレス腱への負担を減らすことが有効です。 お薬の使用 病院では、ロキソニンなどの消炎鎮痛薬や、湿布が処方されます。いずれも用法用量を守ることが大事です。特に湿布は貼りっぱなしにしていると湿疹を起こしてしまうこともあるので、効き目が少なくなってきたら一度剥がして、次に貼るまでに時間を空けることが必要です。 整体、整骨院などでの治療 安静、運動療法、お薬といった治療法をしっかり行っていただいた上であれば、整体、整骨院、鍼灸院などでのマッサージ、ツボを刺激して痛みを軽減させる電気鍼療法、お灸などは必要に応じて受けていただいて大丈夫です。 病院ではマッサージなどは提供していないため、ご自身でケアが難しい場合には、ご利用いただくことも考えてよいかもしれません。 アキレス腱炎についてよくあるQ&A 1.アキレス腱炎のときにはどのようなサポーター、インソールを使えばいいですか。 回答:サポーターには様々な種類がありますが、アキレス腱専用のサポーターの使用がおすすめです。アキレス腱や踵を安定させることで、アキレス腱への負担の軽減や、足関節の背屈を制限することにより、痛みを抑える効果が期待できます。 インソールは踵の部分が高くなっているものを使うと、アキレス腱の過度な緊張を緩めることができます。 2.マッサージはどのように行えばいいですか。 回答:アキレス腱炎に対しては、まずアキレス腱を十分に伸ばすストレッチを行いましょう。 痛みによって体重をかけてストレッチをすることができない時には、座った状態で痛い方の足を持って、ゆっくりと足関節を曲げたり反らしたりすることでアキレス腱をマッサージすることができます。 3.病院や自分で治療をしていてもよくなりません。 回答:アキレス腱炎は大部分の方が数ヶ月で自然に改善しますが、中には痛みが続く場合もあります。適切な治療を4ヶ月以上行っても効果がない方では、手術治療が行われる場合があります。よくならない場合には注射や手術などの他の治療について病院に問い合わせるようにしましょう。 手術の方法はアキレス腱内部の変性した組織の除去や、腱周囲の癒着剥離、足底筋腱の切離など様々な方法があります。どのような治療を行っているか、事前に病院に確認しておくことがお勧めです。 まとめ・アキレス腱炎を早く治すには日々のセルフケアも重要! アキレス腱炎では、なかなか症状がよくならないこともあり、治療について不安になることも多いと思います。 病院での治療以外にも、ご自身で日々のケアを行うことも重要な病気なので、参考にしていただいて、一日でも早く治すための日々の治療に役立ててください。また治療には病院での正確な診断が必要なので、痛みがでて困っている方は早めに病院で診察・治療を受けるようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S128 監修:医師 加藤 秀一
2023.05.04 -
- アキレス腱
アキレス腱の痛み、放っておくとどうなる?悪化する前に知っておきたいこと 「最近、なんだかアキレス腱が痛い」「アキレス腱が痛かったのがなかなか治らない」とアキレス腱周囲に痛みを感じ、それを不安に思った経験がある人は多いと思います。それはもしかすると、アキレス腱炎かもしれません。アキレス腱に炎症が起こることをアキレス腱炎といい、多くは自然に軽快します。 この記事ではアキレス腱の周囲の痛みについて「放置しているけど大丈夫かな」「悪化しないように何かできることはないかな」という疑問にお答えします。 アキレス腱炎とは? 不安に思う要因の一つは「分からないこと」ですので、まずはアキレス腱炎とはどのようなものかを知ってもらいたいと思います。 筋肉は腱という硬い組織を跨いで骨にくっつくことで、効率的に運動できる作りになっています。アキレス腱は人体の中でも最も大きい腱の一つです。筋肉の動作としては、足首を下に向ける(底屈)、下腿を後方から支えるという役割を担っており、歩行、走行、ジャンプ、スクワットのような膝を曲げ伸ばしする動作で重要な存在です。 アキレス腱炎とは文字通り、アキレス腱に炎症が起こることによる疾患です。アキレス腱の周囲の膜に炎症が及ぶとアキレス腱周囲炎といい、痛みの部位がわずかに移動することが特徴です。ただし、診断は区別されても治療法はほとんど同じになります。 アキレス腱炎の症状 アキレス腱炎の症状は、ふくらはぎから踵にかけての運動時の痛みです。特にアキレス腱を押さえると痛みが増加し、時にはアキレス腱が腫れて見えることもあります。重症になると歩けないほどの疼痛になることもあります。 アキレス腱炎の原因 アキレス腱炎の原因は、運動やスポーツなどの繰り返す動作の中で、アキレス腱に負荷がかかることで生じます。明らかな外傷はなくとも、微小なダメージが積み重なり発症します。 ・運動習慣のない人が急激に強い運動を行った ・運動習慣がある方でも、強い負荷が日常的に持続した ・強い扁平足がある ・適切でない靴を履いている(サイズが合わない、靴底がすり減っているなど) 上記のようなケースではアキレス腱炎になりやすいと言われています。 アキレス腱炎の診断 まず、アキレス腱に圧痛があるかという身体所見は最も重要です。超音波(エコー)検査やMRIで腱に損傷があるか、炎症があるかを確認することで確定診断になります。どちらも痛みや侵襲を伴う検査ではありませんので、安心して受けてください。 アキレス腱炎の治療 基本的には保存療法で経過をみます。保存療法とは、手術(小さなものも含む)を伴わない治療法で、安静、過度な負荷になる動作を行わない、消炎鎮痛剤の外用や内服などがあります。多くは保存療法で改善しますが、症状が強い場合では手術が行われることもあります。 明らかな受傷のタイミングがある場合は、アキレス腱以外にも損傷を生じている可能性があるので、注意が必要です。 応急処置としてPOLICE処置を行うのが良いでしょう。 POLICE処置 ・Protection(保護) ・Optimal Loading(適切な負荷) ・Ice(冷却) ・Compression(圧迫) ・Elevation(挙上) POLICE処置とは、Protection(保護)、Optimal Loading(適切な負荷)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字を取った処置です。 アキレス腱炎かなと思ったら アキレス腱炎は、多くは保存的に軽快する疾患です。「たまに痛い気がする」くらいであれば概ね問題はないことが多いです。しかし「運動の時に必ず、比較的強い痛みがある」くらいの状態になると、安易な判断は危険になります。 受診したほうが良いかなと迷った場合には、ぜひ専門家への受診をおすすめします。受診するのであれば、整骨院・接骨院よりも、整形外科の方が望ましいです。X線で骨折がないか、MRIやエコーがあればそのままアキレス腱や周囲の組織で炎症や断裂がないかの評価が行えます。痛みに応じて消炎鎮痛剤の処方や松葉杖の貸出もしてくれるでしょう。 アキレス腱炎を放っておくとどうなる? 初期に適切な対応ができていないと、症状が長引いてなかなか治らない、一時的に症状が改善して治ったと思ってもまた再発するといったように、ずるずると長い期間痛みと共にする可能性があります。あまりに長引くようであれば保存的には改善は望めないとして、手術を受ける必要もあります。 炎症が持続すると瘢痕化(結合組織の増殖)が起こり、足首の可動域が減り、力が入りにくいといったことになることもあります。アキレス腱は多くの動作で重要な役割をしているので、力が入りにくくなればそれだけ動作(立ち座りや歩行)への影響も出てきます。 悪化する前に知っておきたいこと 「アキレス腱炎と思ったら/アキレス腱炎と診断されたら、まずは安静と過度な負荷を避ける」これを知っておくだけでも、アキレス腱炎の治り方が違います。 足をくじいてしまった、あの運動をした日から痛い、と思うことがあれば上記にあるPOLICE処置ができれば初期対応としては良いでしょう。 アキレス腱炎についてよくある質問 Q : アキレス腱炎を自分で診断する方法はありますか? A : アキレス腱部分に痛みを感じる場合は、アキレス腱炎の可能性があります。ただし、正確な診断をするためには医師または専門医の診察が必要です。 Q : アキレス腱炎は完全に治るのでしょうか? A : 大半の場合は治癒しますが、適切な治療を受けない場合や重症化した場合には、痛みが長引いたり、慢性的な痛みが残ることがあります。早期の治療が重要です。 まとめ・アキレス腱炎、放っておくのはNG!長引く痛みは病院の受診を! この記事ではアキレス腱炎について、皆さんに知っておいてほしいこと、放っておくとどうなるかについて解説しました。 アキレス腱炎は適切な対応をすれば多くは自然に軽快する疾患です。何もせずに放置してしまうと痛みが長引いたり、ふくらはぎに力が入りにくくなったりすることもあります。少しの痛みであれば問題ないことが多いですが、特に痛い間は無理することなく、安全に生活できるとよいですね。受診するかを迷うくらいの強い症状、長引く症状があれば整形外科を受診しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.128 監修:医師 坂本貞範
2023.05.02 -
- アキレス腱
アキレス腱炎やってはいけないこと アキレス腱炎になってしまった場合、過度な運動や無理な負荷をかけることは、症状を悪化させてしまう可能性があります。そのため、アキレス腱炎になった際には、避けるべき行動や注意点を把握し、適切な治療法を行うことが大切です。 この記事では、アキレス腱炎になった際にやってはいけないこと、予防のために重要なことについて詳しく解説します。 アキレス腱炎とは アキレス腱炎とは、ふくらはぎの筋肉と踵の骨を繋ぐ腱であるアキレス腱が炎症を起こし、痛みをだす病気です。 慢性的な負荷や急激な運動量の増加によって引き起こされることが多く、ランニングやジャンプ競技のアスリートに多い病気です。 アキレス腱炎で避けるべき行動や注意点 1.運動について 治療の原則として、まずは運動を中止して適切な期間の安静が必要です。 一般的にアキレス腱炎になってしまった場合には2〜6週間の安静、スポーツ活動の休止が指示されます。その間の運動療法として「つま先立ち体操」という、下腿三頭筋の筋力訓練が改善に有効です。 【つま先立ち体操】 ・階段や台の縁に立ち踵を段の端から出した状態でゆっくりと上下させます。 ・膝を伸ばして行うのと、曲げて行う場合とで、使う筋肉が異なるので両方を試してみましょう。 ・10回1セットを1日2回で、少なくとも3ヶ月継続します。 このトレーニングでは痛みがあっても継続し、無痛となるまで実施することが推奨されています。ただし、動作に影響がでるほどの痛みの場合には中止するようにしましょう。その上で、運動の再開時期については症状に応じて決定されます。 2.不適切な靴選び こんな靴、履いていませんか? ・足に合わない靴 ・つま先が細い靴 ・ヒールの高い靴 ・靴底がすり減った古い靴 上記のような靴は、足への負担が大きいので控えるようにしましょう。アキレス腱炎を引き起こす原因となったり、症状を悪化させてしまう可能性があるため、靴選びはとても重要です。 3.無理な自己治療のリスク アキレス腱部の痛みがあるときには、安易に自己治療を行わず、まずは病院を受診して診断を受けるようにしましょう。どのような病気でも言える事ですが、自己治療は、間違った治療により症状が悪化する可能性もありお勧めできません。 また、病気を放置することで、痛みが長引く可能性もあるので、早めに病院で治療を開始することをお勧めします。 4.適切な治療の重要性 痛みが続いている状態でスポーツを継続すると、改善しないだけではなく、アキレス腱の痛みをかばうことによって別の部位の障害を発症してしまう可能性もあります。 そのためアキレス腱炎の治療は、安静と、適切な運動療法を取り入れることが重要です。 アキレス腱炎の予防について 1.適度な運動の種類・方法 前述したような下腿三頭筋をストレッチしながら挙上させる「つま先立ち体操」は、アキレス腱炎の治療に有効です。 予防のためにも、運動前にはアキレス腱を十分にストレッチさせてからスポーツを行うようにし、つま先立ち体操で下腿三頭筋の筋力強化も行うようにしましょう。 2.予防のための靴選びについて 運動する際には、靴の選び方も重要です。 ・足にフィットするかどうか ⇨サイズ・幅・高さ ・クッション性があるかどうか ⇨足への衝撃を吸収してくれるもの ・アキレス腱に負荷がかからないもの ⇨かかとが高すぎないか、安定しているか ・インソールの着用 靴は、足にフィットし、クッション性があり、アキレス腱に負荷がかからないものを選ぶことが望ましいです。また、運動用の靴は、使用期間を守り、新しい靴に買い替えることが大切です。 また、アキレス腱への負担を減らすための予防に、インソールの着用も効果的です。最近では、足の形に合わせたオーダーメイドのインソールも出ているのでおすすめです。 3.日常生活での注意点とは アキレス腱は、日常生活でも負荷がかかることがあります。 たとえば、長時間の立ち仕事や、ハイヒールの着用は、アキレス腱に負担をかけることがあります。そのため、できるだけ座ったり、ヒールが低い靴を選んだりすることが予防につながります。 またアキレス腱の柔軟性の低下が発症につながるので、起床時や入浴後など十分にアキレス腱をストレッチするようにしましょう。 4.アキレス腱炎になった際にするべきこと まずは適切な診断をつけることが必要です。症状がでて改善しない時や、日常生活、スポーツをすることが困難なときには無理をせずに早めに病院を受診して、診断と今後の治療についてアドバイスを受けるようにしてください。 5.アキレス腱炎は早期発見・早期治療が重要 アキレス腱炎は大部分が保存治療で良くなりますが、痛みが長引き手術を受ける方もいらっしゃいます。 また、悪化を防ぐためにも、痛みが出た場合には、運動を控えることが必要です。自己判断や自己治療を行わず、早めに医師の診断を受け、適切な治療を行うようにしましょう アキレス腱炎についてよくあるQ&A Q. アキレス腱炎の治療にはどのようなものがありますか。 A. 安静や運動療法のほかに、局所注射療法、PRP(自己多血小板血漿)注入療法、手術治療などの方法があります。 PRP(自己多血小板血漿)注入療法は新しい治療法ですが、保険の適応が十分でないことや実施している施設も限られています。しかしながら最近ではアスリートが実施するなど、注目を浴びています。 治療を受けるかどうかは、担当の医師と十分に相談してから治療を選択するようにしましょう。 Q. アキレス腱炎に対する注射はどのような方法ですか。 A. 炎症を抑える目的で腱内部や周囲注射する方法があります。 注射する薬剤は局所麻酔薬、ヒアルロン酸、生理食塩水、ステロイド剤など様々です。ステロイドは炎症を抑える効果が強いのですが、腱の脆弱化や断裂を起こす可能性があるので、何度も注射することは勧められません。 Q. アキレス腱炎に対する手術はどのようなものがありますか。 A. 保存治療を少なくとも4ヶ月以上行っても効果がない方では、手術治療が行われる場合があります。 痛みが長引く方では、手術を実施している施設かどうか受診の前に事前に確認しておくと以降の治療がスムーズとなります。 まとめ・アキレス腱炎やってはいけないこと アキレス腱炎になってしまった場合、無理な運動は症状が悪化してしまう可能性があります。 また安静だけではなく、十分な運動療法も治療に効果的です。そのためには正確な診断と早期の治療開始が必要ですので、痛みがでて困っている方は早めに病院で診察・治療を受けるようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S127 監修:医師 加藤 秀一
2023.04.26 -
- アキレス腱
アキレス腱炎の症状とは?セルフチェックの方法を解説! はじめに アキレス腱炎は、急激な運動量の増加や過度なストレスによって引き起こされることが多い、足の痛みが生じる病気の一種です。 今回はアキレス腱炎の症状と対処方法、セルフチェック方法や運動再開のポイントなどについて解説します。 アキレス腱炎とは アキレス腱炎は、踵の骨(踵骨)とふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)をつなぐ腱であるアキレス腱が、炎症を起こす状態です。運動や立ち仕事が原因となることが多く、急激な運動量の増加や、過度な負担が症状を悪化させることがあります。 スポーツでは、ジャンプを繰り返すスポーツや陸上、剣道などを行う選手に発症することが多いです。下腿三頭筋はつま先立ちや、地面を蹴って歩くなど、足関節の底屈運動とよ呼ばれる動きに関与します。地面を蹴る動きが多いこれらのスポーツでは、この動きが多くアキレス腱に負荷がかかり続けます。 ただし、スポーツなどをしていない場合でも、加齢によるアキレス腱の変性や靴の不適合、偏平足、肥満などが原因で、アキレス腱炎になる方もいます。 アキレス腱炎の症状 アキレス腱炎になると、以下のような症状がみられます。 ・アキレス腱周囲が痛い ・つま先立ちをすると痛い ・ふくらはぎのこわばり ・アキレス腱に腫れや熱感がある 特にアキレス腱の痛みやこわばりは、朝( 起床後 )、最初の数歩が痛いことが特徴的です。また、炎症が進行すると腱の周りが腫れたり、熱をもって赤くなったりすることもあります。 アキレス腱炎のセルフチェック なんとなくアキレス腱のあたりが痛むけど、まだ病院に行くほどではない、という場合は、以下の方法でセルフチェックをしてみましょう。 ①立ち姿勢でかかとを浮かせる動作を繰り返す →痛みがある場合は、アキレス腱に軽度の炎症がある可能性があります。スポーツの中止や運動強度の調整を考えましょう。 ②両手でアキレス腱を触って痛みや腫れを確認する →左右で比べてみることも大切です。腫れや熱感がある場合は炎症を起こしている可能性があります。 アキレス腱炎かなと思って放置していたら、「アキレス腱断裂」や「踵骨骨折」だったという場合もありますので、これらのセルフチェックで当てはまる項目がある方は、まず整形外科の診察を受けて、正しく診断してもらうことが大切です。 アキレス腱炎は、運動し始めた時は痛みが強くありますが、我慢して運動を続けていると軽減してくるという特徴があります。アキレス腱炎を我慢したまま運動を続けると、難治性になったり、アキレス腱の断裂につながったりするので、無理して続けないことが重要です。 アキレス腱炎の治療 整形外科では、痛みの場所や性質、腫れなどを確認します。また、他の疾患と鑑別するために、エコー検査やMRI検査で、腱の状態や変性の程度などを見ることもあります。 アキレス腱炎と診断されたら 治療の基本は安静です。運動やアキレス腱に負担のかかる動きをしている場合は、一時的にそれを中止し、アイシングや消炎鎮痛剤などを使用します。テーピングなども併用して、アキレス腱にかかる負担を軽減させることも可能です。 また、踵の部分を高くした中敷きや偏平足用の中敷きを使用することで、アキレス腱の緊張を緩める方法もあります。 どうしても治りづらい場合は注射を行うこともありますが、ステロイドの注射は、アキレス腱を痛めて断裂しやすくするリスクもあるので、安易に使用するべきではありません。 あまりにも改善がみられない場合は、手術療法やカテーテルによる血管内療法などを行うこともありますので、専門機関へ相談することを検討してみてください。 再発予防と運動再開について 治療と同時に、再発予防を考えることも非常に重要です。 単なるオーバーユースだけでなく、練習環境やシューズ、体幹筋力の低下による姿勢不良なども影響してくるため、足りない部分を補う筋力トレーニングやストレッチ、練習環境の見直しも必要です。 運動再開は、痛みや腫れがなくなり通常通り歩けるようになってからです。いつから運動していいかについては、治療している医師や理学療法士と、しっかり相談しましょう。ただし、急激な運動量の増加は避け、徐々に時間や強度を上げていくようにしてください。 また、前述の通り再発予防のトレーニングやストレッチも積極的に取り入れましょう。 アキレス腱炎についてよくある質問 Q:アキレス腱炎のような症状です。整形外科を受診する前に自分でできる応急処置はありますか? A:アキレス腱の痛みなどの症状が出た場合は、まず運動を中止しましょう。そしてなるべく動かさないように安静にして下さい。また、氷嚢などを使用し、アキレス腱部を冷やすことも有効です。 包帯がある場合は、アキレス腱をふくめて足首を固定することで、痛みを軽減できる可能性があります。 Q:市販薬を使用してもいいですか? A:市販の薬にも、鎮痛・抗炎症効果がある湿布や飲み薬があります。薬局の場合は、薬剤師の方に聞いてみるのもいいと思います。ただし、薬の使用は症状の一時的な緩和ですので、薬を使用して痛みが引いたからといって、すぐに運動を再開するのは避けて下さい。 また、病院を受診している場合は、適切な処方のために市販薬を使用していることを医師に伝えてください。 Q:再発予防のためのストレッチはどのようなものがありますか? A:ふくらはぎをのばすストレッチがよいといわれています。階段や段差などに片足のつま先だけかけて、ゆっくりと踵を下ろしながらアキレス腱を伸ばします。最初は無理のない範囲で行いましょう。 座った状態で、つま先にタオルをかけて引っ張るようにしながら、伸ばしていく方法も効果的です。 運動前や運動後にこれらのストレッチを行うことで、ふくらはぎの筋肉の柔軟性が高まり、アキレス腱の緊張を軽減することができます。 まとめ・アキレス腱に痛みを感じたら早めに医療機関の受診を! 今回はアキレス腱炎について解説しました。アキレス腱炎はスポーツ選手だけに限らず、誰にでも起こりうる症状です。アキレス腱の痛みを感じた時は、自分だけで対処せず、しっかりと医療機関を受診しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.127 監修:医師 坂本貞範
2023.04.24 -
- アキレス腱
アキレス腱炎の原因と治療方法、悪化を防ぐための対策とは? アキレス腱はふくらはぎの筋肉から踵の骨につながる腱であり、歩行やランニングにおいて重要な役割を果たしています。 アキレス腱周囲の痛みを起こす病気としてアキレス腱自体に痛みの原因がある「アキレス腱炎」と、腱が踵の骨に付着する部分に痛みの原因がある「アキレス腱付着部症」があります。どちらも慢性的な負荷や急激な運動量の増加によって引き起こされることが多く、ランニングやジャンプ競技を行うスポーツ愛好家に特に多く見られますが、どこにどんな痛みがでるのでしょうか。 この記事では、アキレス腱炎の原因や症状、治療方法と対策について詳しく解説していきますので、参考にしてみてください。 アキレス腱周囲の痛みを起こす病気 ・アキレス腱炎 ・アキレス腱付着部症 アキレス腱炎の症状と原因について アキレス腱部を押すと痛いというのが主な症状です。安静時の痛みはないことが多く、運動時の痛み、腫れがみられることが多い疾患です。 痛みの部位はアキレス腱が踵の骨に付着している部分から中枢側2~6cmがほとんどで、足関節を反らした際に腱が伸びることで痛みが増強します。 主な原因はスポーツ、自転車などでのオーバーユースや不適切なランニングフォームでのランニングなど、誤ったトレーニングによる負担の増加などです。しかし、原因不明の場合や別の病気の可能性もあるので診断のために早めに病院を受診することが大切です。 アキレス腱炎の診断について 診断のためには整形外科で診察を受けることが必要です。痛みの部位、症状から診断は可能ですが、補助的に画像検査を行うことがあります。 レントゲン・エコー・MRIによる診断 レントゲン写真ではアキレス腱の内部に石灰化を認めることがあり、エコーではアキレス腱の肥厚と、腱周囲の血流の増加を確認できることがあります。またMRIが診断に有用であり、アキレス腱の肥厚や、腱の炎症を反映して腱の内部や周囲の異常信号を呈する場合があります。 アキレス腱炎の治療と期間について 初期の治療は基本的に保存治療が行われます。悪化しないための対策をご紹介していきます。 保存療法 軽症の場合は全治3ヶ月程度ですが、回復までの治療期間は症状が続いた期間や病気の重症度によって変わってきます。治療は整形外科で行うことが多く、局所安静やアイシングで患部を冷やすこと、鎮痛薬の服用や局所への注射、理学療法士によるリハビリ・ストレッチングの指導・マッサージなどの方法があります。 局所の安静についてですが、痛みが強い場合には炎症が強いことが多いので松葉杖を使用するなどして痛い方の足を無理に使わないことが大切です。 局所への注射は、アキレス腱と周囲の組織の癒着を剥離する筋膜リリースや炎症を抑えるステロイドの投与などが行われます。 また整骨院の通院についても行なっていただいて構いません。整骨院では電気治療や超音波治療、低周波治療器での治療、温める温熱療法などを行う場合があり、医師の指導のもと治療を受けるようにしてください。 手術療法 これらの治療を行なっても6ヶ月以上痛みが続き効果がないなど、保存療法での完治が難しい場合には手術治療の方法もあります。 手術では皮膚を切開して、炎症を起こしている腱の周囲の組織を部分的に切除します。さらに腱自体に異常がある場合には腱の部分切除を行い、腱の切除部分が多くなった場合には他の部位から腱を移植して補強を行います。 治療内容が病気の重症度によって異なるため治療費も様々です。詳しい治療費の見込みについては担当医師に確認するようにしましょう。 アキレス腱炎についてよくある質問 Q:アキレス腱炎で痛くなる場所はどこですか。 A:アキレス腱が踵の骨に付着している部分から中枢側で腱自体に痛みがある病気を、「アキレス腱炎(別名:アキレス腱周囲炎)」と言います。アキレス腱と踵の骨の境界部分の痛みは「アキレス腱付着部症」といい、治療方法が多少変わってきます。 Q:アキレス腱炎に対する注射は効果がありますか。 A:炎症を抑える目的で腱内部や周囲にステロイドを注射する方法があります。しかし、腱の脆弱化や断裂を起こす可能性があるので、何度も注射することは勧められません。また、腱の周囲を剥離する目的でヒアルロン酸や生理食塩水などの注射を行う場合もありますが、病気の状態によってはご本人に適していない場合もあることや、行なっていない施設もあるので事前に確認することが望ましいです。 Q:アキレス腱炎に効果的なストレッチはどのような方法ですか。 A: 下腿三頭筋や、太ももの裏にあるハムストリングのストレッチは、治療、再発の予防に効果的です。下腿三頭筋のストレッチは階段や足台などの段差があるところに痛い方の足の先をかけ、踵をゆっくりと降ろしていきます。我慢できる程度の痛みの範囲で10〜15秒ほど伸ばすのを3回行い、これを朝・夕の1日2回行います。夜は入浴後など身体が温まっている状態で行うのが効果的です。 まとめ・アキレス腱炎の原因と治療方法、悪化を防ぐための対策とは? アキレス腱部の痛みはアキレス腱炎のほかに、アキレス腱付着部症という病気があります。どちらもオーバーユースや急な運動によって起こります。症状、治療方法が多少異なりますので、正確な診断のために整形外科を受診するようにしましょう。 治療は基本的には保存治療ですが、飲み薬や注射だけではなく、安静やアイシング、ストレッチなどご自身のセルフケアも重要な病気です。アキレス腱炎に悩む方や、スポーツをされる方はぜひ参考にしていただき、健康な身体作りに役立ててください。この記事がご参考になれば幸いです。 No.S126 監修:医師 加藤 秀一
2023.04.21 -
- 脳卒中
- 脳梗塞
脳梗塞とはどんな病気?3つの種類と気をつけたい合併症とは 脳梗塞は誰にでも起こる可能性がある重篤な病気であり、時に生命に関わることもあります。そのため、症状や原因について正しい知識を持つことが重要です。原因、 なぜ、合併症 看護、 消化管出血 なぜ この記事では脳梗塞の3つの種類、原因について解説します。また、治療の上で気をつけるべき合併症やその原因、脳梗塞についてよくある質問についても紹介します。 脳梗塞の3つの種類について まず脳卒中は、脳の血管が詰まって起こる「脳梗塞」と、血管が破れて出血する「脳出血」に大きく分けられます。 脳梗塞では神経細胞に血液を運ぶ血管の一部が詰まってしまい、神経が障害されることにより麻痺や痺れ、意識障害などのさまざまな症状を起こします。 さらに脳梗塞は、血管が詰まる原因によって3つに分類されます。 ラクナ梗塞 1つ目が、動脈硬化によって細くなった血管が詰まる「ラクナ梗塞」です。細い血管が詰まることが多く、他の種類の脳梗塞と比べて症状が軽いことが多い点が特徴です。 アテローム血栓性脳梗塞 2つ目が、血管にコレステロールが溜まった結果、そこに血の固まりができて詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」です。最初は軽症でも、徐々に血管が詰まっていき症状が悪化するなど、段階的に増悪することがあるという特徴があります。 心原性脳塞栓症 3つ目が、心臓など他の部位で作られた血の固まりが血流によって脳の血管に運ばれて詰まる「心原性脳塞栓症」です。大きな血の塊が太い血管に詰まることによって突然発症し、障害される脳の範囲が広いため重症な場合が多い点が特徴です。 ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞は、高血圧、糖尿症、脂質異常症や喫煙などの生活習慣が危険因子のため、これらを適切に治療することが予防のために必要です。 一方で、心原性脳塞栓症は心房細動という不整脈が原因であることが多く、その他にも心臓弁膜症でも起こりえます。心房細動では脈が乱れ打ちになってしまい、心臓の中で血液がよどんで血栓ができてしまう場合があります。この血栓が脳の血管に運ばれて詰まってしまうと脳梗塞を発症します。 そのため、脳梗塞のリスクが高い方は抗凝固薬という血液をサラサラにするお薬を服用して予防をする場合があります。お薬には副作用もあるため、薬のリスクや服用のメリット、デメリットを考えて治療が検討されます。 脳梗塞の合併症について 脳梗塞では、伴う合併症に発熱、肺炎、脳・消化管出血、脳梗塞の再発など、さまざまなものがあります。 ではなぜ起こるのでしょうか。主な合併症の種類と原因を解説していきます。 発熱 ・人の体温は脳の中枢で管理されていて脳梗塞で脳が障害を受けると体温調節中枢も障害され発熱することがあります ・通常は解熱鎮痛薬で対症的に治療します。 誤嚥性肺炎 ・意識障害や、飲み込みの機能の低下によって唾液や痰が肺に入って肺炎を起こしてしまうことがあります ・誤嚥性肺炎と呼ばれており、抗菌薬の投与や酸素投与などを必要とする場合もあります 脳・消化管出血 ・動脈硬化は血管の色々な部位に起こるので、一度脳梗塞を起こした方は再発する危険性が高くなっています ・再発を予防するために血液をサラサラにする薬を服用することが推奨されます しかし、血液をサラサラにする薬の副作用として、脳、胃や腸などの消化管で出血を起こしてしまう場合があります。脳出血では麻痺の悪化、消化管の出血では貧血によって全身状態が悪化してしまうリスクがありますが、完全に予防することは困難で早期発見、対処が重要になってきます。 脳梗塞についてよくあるQ&A Q : 脳梗塞になりやすい人の特徴は? A:脳梗塞の危険因子として生活習慣病があります。 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満などが挙げられ、健診で異常を指摘されている方は早めに治療を開始することが勧められます。 Q : 脳梗塞の前兆の症状はありますか? A:脳梗塞は突然発症するものから、前兆を伴う場合もあります。脳梗塞の前兆とは急に手足や顔の麻痺やしびれが出現して、時間が経って改善することです。 この症状は一過性脳虚血発作と言われており、動脈硬化などによって一時的に脳の血流が悪くなることが原因とされています。 一過性脳虚血発作がみられた場合には脳梗塞になってしまう危険性があり、早期に病院で治療することが必要です。 Q : 合併症を予防する方法はありますか? A:現代の医学でも合併症を完全に予防することは困難です。危険性を下げるために、発症してからすぐの間は医師、看護師の治療や指導を守ることが必要です。 また消化管出血については、胃潰瘍の既往がある方などでは胃酸の分泌を抑えるお薬を服用してリスクを下げる方法が取られる場合があります。 まとめ ・脳梗塞を起こさないように早期発見・治療することが最も重要 脳梗塞にはラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症の3つがあり、それぞれ発症の原因や重症度が異なるのが一般的です。 また、治療の過程で発熱や肺炎を起こす場合があり、再発予防のための血液をサラサラにする薬の使用で出血を起こしてしまうことがあります。そのため、脳梗塞を起こさないようにすることが最も重要ですので、脳梗塞に関する正しい知識を持ち、予防に努めた上で症状がある時には早期発見・治療することが大切です。 健康で充実した生活を送るためにも、ぜひ参考にしてみてください。 No.126 監修:医師 坂本貞範
2023.04.19 -
- 脳卒中
頭のこぶのようなものを押すと痛いとき、考えられる疾患とは? シャンプーのときや髪をかきあげた時など、ふとしたときに頭にこぶのようなものに触れた経験はありませんか?放置して何事もなかった場合にはよいですが、押したり触れたりすると痛みがある場合は不安ですよね。 今回は、頭にできるこぶの原因と受診の目安について解説します。 頭のこぶはどのようなものがあるか 頭のこぶは大きく、皮下血腫、感染症、皮膚炎、腫瘍に分けられます。 皮下血腫 皮下血腫はいわゆる「たんこぶ」のことです。頭をぶつけた際に、皮膚の近くの血管が切れてしまい、血溜まりを作ってしまった状態です。 皮下血腫自体は特に治療をせずに治ることが多いですが、頭を打撲して嘔吐したり、意識が悪くなったり、打撲した前後のことを覚えていなかったりする場合にはすぐに受診をするようにしましょう。 感染 ニキビは皮脂が毛穴を閉塞することで、アクネ菌が増殖することで炎症を起こします。ニキビといえば顔のイメージがありますが、頭皮にも起こることはあります。 また、毛包炎・毛嚢炎は毛穴に黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの皮膚常在菌が感染することで炎症を起こす疾患です。どちらも菌により炎症が起こるので、押すと痛い、赤く腫れることがあるのが特徴です。 皮膚炎 頭皮がシャンプーや整髪料、髪染めなどに反応してしまい、炎症を起こす接触性皮膚炎もこぶ・できものの原因になります。ただれ、水ぶくれが多く、大きなしこりはあまり起こりません。原因となるものを使用しないことが重要です。 腫瘍 腫瘍には良性のものと悪性のものがあります。 良性の腫瘍 良性の腫瘍には「粉瘤(ふんりゅう)」があります。粉瘤は、毛穴の一部に皮脂などが溜まって、袋状となった良性の腫瘍です。柔らかいしこりとして触れ、痛みはあまりありません。内部で細菌が増殖して炎症を起こしてしまうと、痛くなったり膿が出たりすることがあります。 脂肪腫も良性の腫瘍です。同じく、柔らかいしこりとして触れます。 悪性の腫瘍 頭皮にできる悪性腫瘍には、「有棘細胞癌」や「悪性黒色腫」があります。触るとごつごつしたり、硬いという特徴があります。また、潰瘍となって液体が出てきたり、血がでたりすることもあります。 一般に良性のものでは大きさは変わらずに経過することが多いです。しかし、小さなイボとして感じていたものがどんどん大きくなっている、血が出ているなどは悪性を疑う情報となります。 脳卒中との関係は? 頭は外面から、皮膚、骨膜、頭蓋骨、硬膜、くも膜、軟膜、脳とたくさんの層構造になっています。 頭蓋骨という非常に硬いもので分け隔てられているので、皮膚のできものと脳卒中に直接的な関係はありません。イボやこぶとして触れる病気は、主に頭の皮膚に起こることが多いです。 逆に脳卒中になっても、頭皮にこぶができることもありません。くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤も、皮膚の上から触れるものはありません。脳卒中が考えられる症状は、突然起こることが特徴です。 脳の発症部位によりその症状は様々ですが、代表的な脳卒中の症状には、 ・言葉が出づらい ・左右どちらかの手足が動かしにくい ・意識の状態が悪い などがあります。 頭のこぶで受診したほうがよい場合 こぶやしこりが赤く腫れて痛い場合、膿が出てくる場合は感染症の可能性があります。切開や抗菌薬を投与したほうが速やかに治る可能性があるため、数日待っても良くならない場合は受診をおすすめします。 こぶやしこりが、大きくなっていたり、数が増えたりする場合は悪性腫瘍を考えなければなりません。早めの受診をしましょう。 また、頭をぶつけた際にできたこぶが、どんどん大きくなっている、意識の状態が悪くなっている、話しづらさや手足の動きづらさが出てきたりするなどの場合は、早急に受診をするようにしましょう。 頭のこぶについてよくある質問 Q: 小さな時からある頭のこぶはどうしたらよいですか? A:幼少期から長期間ある場合は、重篤な病気である可能性はそこまで高くはないでしょう。見た目として気になる場合、赤みや痛みなど新しい症状がでた場合、大きくなる場合は受診するようにしましょう。 Q:頭のこぶは何科を受診したらよいですか? A:皮膚科や形成外科を受診するのが良いでしょう。 頭のこぶやしこりが気になるのなら、皮膚科もしくは形成外科を受診しましょう。頭をひどくぶつけて、皮下血腫(たんこぶ)ができた際には、脳外科を受診するのが良いでしょう。 受診する際は、いつ頃からできているか、できものに心当たりはあるか、痛みはどうか、他に症状がないかを言えるようにすると、正確な診断に繋がりやすいです。 Q:頭のこぶに痒みがある場合どうしたらよいですか? A:まずは頭を清潔にしましょう。シャンプーや整髪料を変えたなどがあれば、一時的に使わずに様子を見ましょう。かゆみがひどくて掻きむしってしまう場合は、皮膚科などを受診するとよいでしょう。 まとめ・頭のこぶに少しでも異常を感じたら早急に受診をしよう! 頭のこぶは自分では見えない部分なのでより不安にも感じやすいと思います。痛みや膿がある場合、大きくなっている場合、数が増えている場合は、感染症や悪性腫瘍の可能性があるので、早急に受診をしたほうが良いでしょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S125 監修:医師 加藤 秀一
2023.04.17 -
- スポーツ医療
捻挫を早く治すために!正しい応急処置方法を紹介 捻挫はスポーツや日常生活の中でよく生じる外傷の一つです。しかし、捻挫がどのようなものか、さらに応急処置の方法についてご存じでしょうか。 この記事では、捻挫とその応急処置方法を詳しくご紹介します。さらに、捻挫についてのよくある質問にもお答えしています。ぜひご参考にされてください。 捻挫とは? 関節は、骨と骨の間に構成されるものです。基本的な構造には、関節軟骨(クッションの働き)、関節包(関節の周りを包み込む外側の膜)、靱帯(関節の安定性を補強する役割で、関節内のものも、関節外のものもある。)などがあります。 捻挫とは関節に何らかの外力がかかって起こる、骨折や脱臼以外の怪我のことを指します。つまり、軟骨や靱帯、腱(筋肉と骨をつなぐもの)の怪我です。 骨折や脱臼はX線写真で判断ができますが、捻挫はX線では判断出来ません。どのような衝撃が加わって怪我をしたのか、今の関節の状態はどうなのかが重要であり、必要があればMRIを利用しながら診断を行います 捻挫の中でも靱帯の重症度は、靱帯の損傷の程度によって決められます。 ・1度:靱帯が伸びてはいるが切れてはない状態 ・2度:靱帯の一部が切れている状態 ・3度:靱帯が完全に切れている状態 捻挫の応急処置 捻挫を早く治すには、まずは応急処置と適切な診断が必要です。捻挫だと思っていたのに実は骨折だった、大したことないと思っていたら全然症状がよくならない・・・などがないように受診をしましょう。 捻挫が起きた際には「POLICE処置」がよいとされています。 「POLICE処置」 ・Protection(保護) ・Optimal Loading(適切な負荷) ・Ice(冷却) ・Compression(圧迫) ・Elevation(挙上) 以前は「RICE(Rest:安静、Ice:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上)処置」が進められていましたが、近年ではPOLICE処置に置き換わりつつあります。 POLICE処置の具体的な方法 それぞれの項目は以下の通りです。 Protection(保護) ・装具やシーネ、三角巾、サポーターなどで受傷部位を保護します ・更なる外力で損傷を悪化させるのを防ぐ目的です Optimal Loading(適切な負荷) ・以前は受傷部位の安静(Rest)がよいとされていましたが ・最近では適切な負荷が組織の修復によいのではと言われています ・適切な負荷については、医師などの専門家による指示を聞くのが良いでしょう Ice(冷却) ・氷嚢や氷を入れた袋などで冷やします ・感覚がない中、無理してまで行う必要はありません ・風邪の際に用いるような冷却シートは、表面をひんやりと冷やす程度で関節の内部まで冷やす効果はありません。 ・用いるのなら消炎鎮痛剤の入った湿布を用いましょう ・最近、神戸大学より、重症の筋挫傷に対するアイシングは筋の修復を遅らせるということが報告されました。 ・軽度の筋挫傷についてはまだ効果がわかっていないため、今は迷ったらアイシングをする方がよいでしょう Compression(圧迫) ・受傷部位の腫れや内出血の増悪を予防するために、テーピングや包帯などで圧迫をします Elevation(挙上) ・腫れを防ぐ、軽減するために、心臓よりも上に受傷部位を置きましょう ・足を怪我した際は、仰向けになって足を椅子などに置くとよいでしょう ・あくまでも応急処置としてなので、移動の必要などやむを得ない場合は足を下ろしても構いません 応急処置の後は、適切に受診を行いましょう。軽度であれば保存的に加療が行われ、関節の不安定性が高い重度の場合は手術療法も検討されます。サポーターなどを使い関節に過度な負荷がかからない程度の運動から始めましょう。 捻挫に関してよくある質問 Q:捻挫とはどのような状態ですか? A:関節に外力が加わって生じた怪我のうち、骨折と脱臼以外のものを指します。X線で骨折、脱臼がないことを確認し、必要があればMRIを撮像します。どうやって怪我をしたかも診断には重要です。 Q:捻挫を早く治すには? A:まずは適切な診断が必要です。応急処置としてはPOLICE処置がよいでしょう。炎症が起きている間は消炎鎮痛薬なども併用し、過度な負担がかからないように注意しましょう。 Q:受診するなら整形外科?整骨院? A:正しく診断をつけるという意味でも、X線やMRIでの検査を行える整形外科をおすすめします。近くに整形外科がない、診察時間外の場合には整骨院でも良いでしょう。自分で判断して自己流で治療をするのはよくありません。 まとめ・捻挫を早く治すためには正しい応急処置と整形外科の受診を! この記事では捻挫について解説しました。 スポーツだけでなく日常生活でも怪我をする可能性はあるので、もし捻挫による怪我をしてしまった際は、「POLICE」による応急処置と適切な受診を忘れないようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.125 監修:医師 坂本貞範
2023.04.14 -
- 健康
肋骨骨折、このまま放置して大丈夫?症状チェックとその治療法を解説! 肋骨骨折は、胸部の外傷で最も多くみられる疾患です。 ラグビーや柔道などの激しいスポーツ外傷や転倒、転落などのケガ、ゴルフのスイング、慢性的な咳などの繰り返しの負担で骨折する場合もあります。また、ケガをしてレントゲン写真を撮っても、骨折がわからない場合もあります。 「肋骨を骨折したかも・・・痛むけど放置してても大丈夫かな」など、痛みが続く場合、いつまで続くのか、自然に治るのか不安に感じてしまうことと思います。 この記事では、肋骨を痛めた時に病院を受診するべき目安の症状チェックと、肋骨骨折の治療法について解説していきます。 肋骨骨折の症状 肋骨は左右12対の骨で背中の胸椎から胸の前にある胸骨までかごのようになっており、その中にある心臓や肺などの臓器を保護しています。 肋骨骨折は胸部外傷の中で最も多くみられ、激しいスポーツ、転倒や打撲などの軽いケガ、交通事故などの大きいケガによって損傷してしまうことがあります。 症状は、骨折した部位の痛み、皮下出血、腫れです。骨折部を軽く圧迫すると骨がきしむ音がすることがあります。また、体をそらしたり、肩を動かしたりした時や、咳、深呼吸で痛みが強くなることが特徴です。 肋骨骨折の診断 診断は、問診と胸部の触診、レントゲンが一般的ですが、病院によってはエコーで診断を行うことがあります。 肋骨は肺や肋骨同士の重なりがあるためレントゲンでの判断が難しく、特に小さい骨折はレントゲンでは見つからない場合も多いことがあります。レントゲン写真のメリットとして、肋骨骨折に合併する気胸(肺を損傷して空気が漏れてしまうこと)を診断できることがあります。 エコーでは、レントゲンで明らかにならない小さいひびを見つけることも可能ですが、実施していない医療機関もあるので注意が必要です。 病院受診の目安 病院を受診する目安ですが、胸をぶつけた後に押して痛みがある、呼吸やくしゃみで痛みが悪化する、内出血がある場合には、骨折をしている可能性があるので受診をすることが勧められます。 また、息苦しさがある場合には気胸を起こしていることがあるので、できるだけ早めに受診するようにしましょう。 肋骨骨折の治療法 明らかな骨折、不全骨折(いわゆる“ひび”)、X線で骨折がはっきりしない打撲の場合でも、治療はほぼ同じです。 痛みが軽い場合には、消炎鎮痛薬の内服と湿布などで痛みを和らげます。 痛みが強い場合には、バストバンドやトラコバンドとよばれる固定帯で、骨折した部分を圧迫固定します。呼吸で胸が広がることによって、骨折した肋骨に負担がかかり痛みが出てしまいますが、息を吐いた状態でバンドを巻くことで、骨折部の動きが少なくなり痛みが緩和されます。 これらの治療で、多くは数週間で痛みが軽快します。骨折部のずれが大きいときや、複数の肋骨が折れている時には手術が行われることもありますが、かなり稀です。 また、大きいケガで血気胸(胸の中に血液や空気がたまること)がある場合には、呼吸の管理や胸にチューブを挿入する治療が行われる場合もあります。 肋骨骨折についてよくある質問 Q:肋骨が痛いのですが、どのような病気が考えられますか。 A:ケガなど明らかな原因がある場合には打撲、肋骨骨折が最も考えられます。また、ゴルフなどのスポーツ、慢性的な咳などがある時にも肋骨の疲労骨折の可能性があります。 これらの原因がない場合には、肋間神経痛という神経の痛みや、帯状疱疹、稀ですが骨の“がん”などを考える必要があります。帯状疱疹では皮膚のぶつぶつができますが、皮膚の症状より先に痛みがでることが多いので、肋骨周辺の痛みがあるときには皮膚の見た目にも注意するようにしてください。 Q:肋骨骨折はどのくらいで治りますか? A:骨折の痛みが軽減するまでは数週間、骨癒合するまでは2-3ヶ月を要するのが一般的です。 肋骨骨折は自然に骨が癒合する確率が高いので、固定のバンドは痛みが和らぐまでの数週間の装着で問題ありません。骨折を起こした後、骨折した部分には3週間程度で仮骨(骨のもと)が作られ、これによって骨折部が安定化することで痛みが和らぎます。その後徐々に骨形成が進むことで骨癒合していき、症状がなくなります。 Q:肋骨骨折をした後にしてはいけないことはありますか? A:大きなケガで血気胸がなければ、痛みの範囲で日常生活に制限はありません。ただし、重いものを持つなどの重労働、激しいスポーツなどの衝撃は痛みが悪化することにつながるので、控えるようにしてください。 まとめ・肋骨骨折の放置は禁物!症状が出た場合は早めに病院を! 胸部の外傷で最も多い肋骨骨折について解説しました。 動いた時や呼吸で痛みが悪化するので、症状がよくなるか心配になりますし、レントゲンでも明らかにならないことが多いケガの1つです。 通常は数週間で痛みがよくなり、特別な治療も必要がない骨折ですが、肺などの臓器の損傷や別の病気が隠れている可能性もあります。そのため、上記のような症状が出た後は早めに病院で診断してもらい治療を受けることが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S124 監修:医師 加藤 秀一
2023.04.12 -
- 脳卒中
頭痛で吐き気を伴うときは危険!考えられる病気やその対処法とは? 頭痛はありふれた疾患であり、日本人の約4割は、慢性的な頭痛持ちとも言われています。慢性的ではなくても、頭が痛いと感じたことがない人は、ほとんどいないのではないでしょうか。 「頭痛」といっても様々なタイプがあり、国際頭痛分類では、数百種類の頭痛が示されています。 今回は、そんな頭痛のなかでも危険な「吐き気を伴う頭痛」について、具体的にどのような病気が考えられるか、どのように対処したらよいのかなどを中心に解説します。 頭痛の種類について まず、頭痛の種類について詳しくみていきます。 頭痛にはたくさんの種類がありますが、大きく分類すると一次性頭痛と二次性頭痛にわけられます。 一次性頭頭痛とは、頭痛の原因となる疾患が特定できないものをいい、二次性頭痛は原因の疾患が特定できる頭痛です。 具体例としては以下の通りです。 一次性頭痛 片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛 二次性頭痛 脳卒中、脳腫瘍、髄膜炎、慢性硬膜下血種、緑内障、副鼻腔炎 一次性頭痛は、直接命にはかかわらない頭痛です。命に関わることもあり特に注意しなければならないのが、二次性頭痛です。 怖い頭痛の種類の特徴とは ではどうやって、一次性頭痛と二次性頭痛をみわければよいのでしょうか。頭痛診療ガイドラインでは、以下のような症状の場合は、注意が必要といわれています。 ・発熱や意識の低下を伴う場合 ・がんや免疫不全疾患などを患っている ・急激に発症する今まで経験したことのない痛み ・50歳以上で初めて経験する症状 ・最近発症した新しい頭痛 ・ろれつが回らない、目が見えにくいなどの症状を合併している 頭痛にこれらのような症状を伴う場合は、原因となる疾患が隠れている可能性があります。我慢せずに、病院を受診し、検査を受けることをおすすめします。 吐き気を伴う頭痛の種類と対処法 頭痛が強いと、吐き気も伴うという方も多いかもしれません。ここからは、吐き気を伴う頭痛について、詳しく見ていきます。吐き気を伴う頭痛は、主に3つあります。脳卒中、髄膜炎、片頭痛です。 脳卒中 脳卒中は、脳の血管が破れたり詰まったりすることで起こる疾患の総称です。具体的には、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3つを指すことが多いです。脳卒中による頭痛は吐き気を伴うことが多く、注意が必要です。 くも膜下出血の場合は、「突然発症し、今までに経験したことがない強い頭痛」が特徴といわれています。 脳出血や脳梗塞の場合は、頭痛に意識障害やろれつが回らない、目が見えないなどの脳神経が障害されている症状を合併します。また、頭がふらふらする感じやめまいを伴うこともあります。 このような症状がある場合は、すぐに病院を受診しましょう。 髄膜炎 髄膜炎は脳や神経を包む「髄膜」という膜に炎症が起きたものです。細菌やウイルスが原因のこともありますが、がんや薬剤が原因で起こることもあります。 頭痛や嘔吐を伴うものが多く、髄膜刺激症状と呼ばれる首を前に曲げると痛みがあるといった特徴的な症状を起こすことが多いです。発熱や下痢を伴うことも多く、風邪と間違われることもあります。 子供でも起こることがあり、子供が頭痛を訴えて嘔吐している場合はすぐに病院を受診して検査を受けるようにして下さい。 片頭痛 吐き気を伴う一次性頭痛として割合が多いのが、片頭痛です。 片頭痛は20〜40代の女性に多く発症し、こめかみから側頭部にかけてズキンズキンと脈打つような頭痛が生じます。また、頭痛が起きる前には、閃輝暗点(せんきあんてん)といって、視野にギザギザした光がちらつく前兆がある場合もあります。 片頭痛を発症した際には、光や音、においなどに過敏になることもあるので、暗く静かな場所で安静にするのが良いといわれています。 また、血管が開いて血行がよくなると症状が増悪するため、リラックスするために長風呂をしたり、マッサージを受けたり、お酒を飲んだりすることは逆効果なので避けましょう。 あまりにもひどい片頭痛の場合は、薬で症状を軽くすることもできるため、悩んでいる方は病院を受診するようにしてください。 頭痛でよくある質問 Q:片頭痛持ちですが、食事で気を付けることはありますか。 A:赤ワイン、チョコレート、チーズ、ピーナッツ、豚肉などは片頭痛を誘発する可能性があるアミン類を含んでおり、控えるべきといわれています。 また、緑茶やコーヒーなどに含まれているカフェインは、摂取しすぎると悪化の原因となるため控えましょう。 Q:デスクワークだと頭痛が起こりやすいですか? A:ストレスや長時間のデスクワークが原因となって発症する、「緊張型頭痛」と呼ばれるものがあります。頭や首の筋肉の緊張によって引き起こされるといわれており、頭を締め付けられるような痛みがおこります。同じ姿勢を長時間続けることで悪化するため、30分に1回程度は休憩をとるようにしましょう。 また、筋肉の緊張をほぐすために、肩や首などをこまめに動かすストレッチを行いましょう。 まとめ ・吐き気を伴う頭痛は脳卒中や髄膜炎の可能性も!早めに病院の受診を! 今回は頭痛について解説しました。吐き気を伴う頭痛には脳卒中や髄膜炎などの二次性頭痛が隠れている場合があります。 頭痛はよくある症状ですが、たかが頭痛と甘く見ず、いつもと違うと思ったら早めに病院を受診するようにしてください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.124 監修:医師 坂本貞範
2023.04.10 -
- 手
ばね指は治せる?自力での治し方!【ストレッチでセルフケア】 「ばね指の症状を和らげる方法が知りたい」「自力でばね指を治す方法はないの?」 このような悩みのある方はいませんか? ばね指の症状を和らげるためには、適切な時期に正しいストレッチをするのがオススメです。 この記事では、ばね指を自力で治すためのセルフケアとして、ストレッチや生活で工夫するポイントなどを解説します。指の付け根の痛みやこわばりに悩む方は、ぜひ参考にしてください。 ばね指に対する簡単ストレッチの方法3つ 簡単に誰でもできるストレッチの方法を3つ紹介します。 ばね指に対するストレッチは、痛みが和らいでから行うのが原則です。なぜなら、痛みが強い時期は炎症が生じているため、無理なストレッチは逆効果になりかねません。 痛みが強い時期の対処法は後ほど解説するので、まずは正しいストレッチを学びましょう。 1. 腱鞘(けんしょう)ストレッチ ばね指は指の腱が通るトンネルのような腱鞘と呼ばれる部分や腱そのものが、炎症により動きにくさが生じる病気です。 そこで、腱鞘と腱の動きをなめらかにするストレッチが腱鞘ストレッチです。 1. 手首を手の甲側に軽く曲げる 2. 親指の付け根と指の腹でブロック状のもの(リモコンや小箱など)を挟む 3. 指の付け根とその隣の関節は直角になるようにする 4. 指の付け根がしっかり縮むようにブロック状のものを押し合う 腱の緊張や腱鞘で生じる摩擦を和らげる効果が期待できます。 2. 親指の腱鞘ストレッチ ばね指になりやすい親指の腱鞘ストレッチです。 (右手が痛む場合) 1. 右手首を手の甲側に軽く曲げる 2. 右親指の付け根をできる限り曲げる 3. 左親指で右親指を伸ばすように抵抗をかける 4. 右親指は抵抗に対して負けないように力を入れて押し合う 腱鞘ストレッチは、関節を曲げたり伸ばしたりといった反復した動きをともなわないのがポイントです。 3. 指のストレッチ 指全体を伸ばすストレッチです。できるだけリラックスした状態で行いましょう。 1. 手首を手の甲側に軽く曲げる 2. 指をできるだけ伸ばす 3. 反対側の手でさらに指を伸ばす 指の腱は手首を通過していますので、手首のストレッチも柔軟性の改善につながります。 指を動かすと痛みが出る場合でも、手首なら痛みなく動かせるようであれば、手首を手の甲側に曲げたり、手のひら側に曲げたりといったストレッチも行うと良いでしょう。 ばね指に対してストレッチを行う場合の注意点 ばね指は日常的に指をよく使う場合に生じやすいため、ストレッチにも注意が必要です。むやみにストレッチをして、症状を悪化させないために、以下の点に注意しましょう。 ・痛みのない範囲で行う ・長時間行わない ・お風呂上がりに行う それぞれの注意点について詳しく解説します。 痛みのない範囲で行う ストレッチは必ず痛みのない範囲で行いましょう。痛みを我慢して無理にストレッチを続けると、腱や腱鞘に過剰な負担がかかり、炎症を悪化させる危険性があります。 また、勢いよくストレッチをすると無理なストレスが生じやすく、痛みの原因になります。ストレッチはゆっくり慎重に行いましょう。 長時間行わない ストレッチの時間は長くても10分程度にとどめておきましょう。 前述の通り、ばね指の原因は、指を使い過ぎて腱鞘や指の腱に繰り返しかかる負担です。そのため、ストレッチを過剰に繰り返したり、長時間行ったりすると、使い過ぎになってしまいます。 ストレッチは、あくまでも固くなった部分をほぐすのが目的です。長時間、何度も繰り返さないように注意しましょう。 お風呂上がりに行う 入浴後に血液の循環が改善すると、組織の柔軟性が高まります。その状態でストレッチをすれば、通常より高い効果が期待できます。 そのため、入浴後または入浴中にストレッチをしましょう。 ばね指で気をつけたいこと2つ ばね指では日常生活で気をつけたいポイントが2つあります。 指を冷やさない 1つ目は、炎症が改善したあとは、できるだけ冷やさないことです。血流の悪化は組織の固さにつながります。 腱鞘や腱の固さが強まると、腱鞘炎のリスクが高まるため、なるべく指を温めましょう。 指を使い過ぎない 2つ目は、パソコンやスマホ、手芸などで指を使い過ぎないことです。 パソコンは指の負担を減らすため、肘から先を机に乗せて、手首を安定させましょう。スマホは片方の手でばかり打つのではなく、両手をバランスよく使えば負担を分散できます。 あまり長時間作業をするのを控え、休憩とストレッチを挟んで作業をするのも良いでしょう。 ばね指の痛みが強い場合は安静や固定によるセルフケアが大切 ばね指の痛みが強いときは腱鞘に炎症が生じているため、ストレッチにより症状を悪化させる可能性があります。痛みがある場合は、無理せず安静にして、テーピングやサポーターで固定するのもオススメです。 また、炎症が起きてすぐは、温めるよりも冷やす方が良いです。アイシングをして、炎症の悪化を防ぎましょう。 ばね指は手指の使い過ぎが刺激となって生じるため、固定をすれば使いすぎを防ぎ、負担を軽減させることができます。 炎症が生じている時期には、早めに整形外科を受診して、炎症を抑える内服薬や外用薬を処方してもらうのも良いでしょう。 まとめ・ばね指はストレッチで症状を改善!痛みがあるときは無理せず安静にしよう ばね指にはストレッチを行い、腱の動きをスムーズにすることで症状の改善が期待できます。本記事で紹介した方法を参考にして、痛みのない範囲で、無理せず継続しましょう。 ただし、痛みが強い時期は炎症を悪化させる恐れがあるため、ストレッチを控えて、安静にするよう心がけましょう。日常生活で指に負担をかけないよう注意して、サポーターなどを活用したセルフケアも大切です。 ばね指の痛みや引っかかりに悩まされないためにも、ストレッチとセルフケアに取り組みましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S123 監修:医師 加藤 秀一
2023.04.07 -
- 脳卒中
脳出血は発症時の意識レベルが予後を左右する!その回復過程とは 脳出血は日本における三大死亡原因のひとつである重症な病気です。社会復帰できる方もいますが、中には意識不明の重症となってしまい、意識が戻らず亡くなってしまう場合もあります。 脳出血を起こしてしまった方にとって、余命はどのくらいなのか、生存率・死亡率はどの程度で、退院後の生活はできるのか、長生きをすることができるのかなど、とても心配になってしまうと思います。 この記事では、脳出血を起こした後の予後予測、生存率や回復過程について解説していきます。 脳出血後の予後予測と死亡率 脳卒中は、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血に分けられますが、2022年の脳卒中データバンクでは、「脳出血」の頻度は18.0%と多くを占めていることが報告されています。また、脳出血の死亡率は高く、発症した方の13.8%が入院中に亡くなってしまっています。 脳出血の発症で死亡してしまう方が多いタイプとは 死亡してしまう方が多いタイプとして、血腫の量が多い、混合型の出血、脳幹の出血、急性閉塞性水頭症を合併している場合などがあります。血腫量が多い場合は血腫の除去、水頭症に対しては脳脊髄液を排出して圧力を下げるドレナージ手術の方法があり、同じく2022年のデータでは手術率は12.6%と報告されています。 このように、脳出血の大部分は保存的に治療されますが、約1割程度は手術を必要とする重症であると考えられます。 脳出血の予後は発症時の意識レベルが重要 脳出血の重症度、死亡率に影響するものとして、発症時の意識レベルがあります。一般的に発症時に意識状態が悪いほど、後遺症も重くなり、死亡率が高くなってしまいます。 また、時間経過とともに、症状が進行することも予後が悪い原因となります。実際に2022年のデータでは、脳出血において19.6%の方は発症時に昏睡状態(Japan Coma Scale 100以上)を呈しています。 脳出血後の5年生存率は報告によってばらつきがありますが、27〜57%程度と報告されており、発症した時の年齢が高齢で意識状態が悪い方ほど死亡率が高くなってしまいます。 参照:「脳卒中レジストリを用いた我が国の脳卒中診療実態の把握(日本脳卒中データバンク)報告書 2022年」 参照:「PubMed®初めての脳卒中後の5年生存率」 脳出血の回復過程について 脳出血を起こした後の回復過程は、急性期、回復期、生活期の3段階に分かれていて、それぞれの段階に応じた治療、リハビリが必要です。 回復過程は3段階 急性期(発症~3か月) 急性期は発症直後から2週間程度の期間です。 出血が広がらないように血圧を下げる治療や呼吸・循環を補助する治療が行われ、場合によって手術治療が行われます。急性期のリハビリは筋肉が衰えたり、関節が固くならないように無理のない範囲で行います。 回復期(3~6か月) 回復期は、急性期の終了後の3か月から6ヶ月までの期間です。 麻痺や動作の障害に対しては理学療法や作業療法を行い、しゃべり辛さ、飲み込みの障害に対しては言語聴覚療法を行います。 生活期(6か月以降) その後の生活期のリハビリでは軽めの運動を取り入れながら、生活の範囲を広げ、動作に慣れるリハビリを行っていきます。 実際に、2022年の脳卒中データバンクでは脳出血後のリハビリは、理学療法を86.4%、作業療法を84.4%、言語聴覚療法を74.3%の方が受けており、55.4%の方がリハビリ目的に転院できています。 しかし、同じく2022年のデータでは、自宅に退院できた方は約26%で、リハビリ目的以外の病院への転院が12.4%、その他の施設(介護老人保険施設、老人ホーム等)への退院が5.4%となっており、急性期を過ぎた後に自宅へ退院できる方は少なく、約2割程度の方は生活機能が低下してしまっていて、療養型病院への転院や施設へ入所していることがわかります。 脳出血についてよくある質問 Q: 脳出血の予防方法はありますか。 A:脳出血の原因は、高血圧性脳出血が約8割と最多です。 高血圧は基本的には無症状ですが、動脈硬化による脳梗塞や脳出血の原因になってしまうため、異常値を指摘されている方は早めに医療機関を受診して治療することをお勧めします。 Q:意識障害はよくなりますか。 A:脳出血の症状と治療は、出血した場所、出血の量によって異なります。 意識障害を起こしている場合は、脳幹という神経が集まっている部位の出血や、出血の量が多く脳が浮腫を起こしている可能性があります。 高血圧に対する降圧、脳の浮腫を和らげる点滴、呼吸状態が悪い場合には、呼吸の補助をするための人工呼吸を行い、場合によっては血腫を取り除くために開頭手術などが必要となることもあります。これらの治療によって意識状態が回復する場合もありますが、損傷した神経自体を回復させる治療はまだないため、重度の意識障害では症状が残ってしまう可能性が高くなると言われています。 そのため、脳出血を発症しないように、血圧管理を含めて日常的な生活習慣に気をつけることが重要です。 Q:脳出血はどこまで回復しますか。 A:脳出血による後遺症、回復の程度は、発症時の症状とその後リハビリにより大きく異なります。 発症した時に意識障害がある場合や高度の麻痺がある場合には、一般的に後遺症が残ってしまいます。また、発症後6ヶ月までは回復する見込みがあり、その期間に集中してリハビリを行うことが勧められます。 ご自身の想定される回復の程度、リハビリが必要な期間について担当の医師とよく相談するようにしましょう。 まとめ・脳出血は発症の予防、早期治療が最も大切! 脳出血は、生命はもちらん、一命を取り留めてもその後の生活に関わる重症な病気であり、発症の予防、早期治療が最も大切です。 現代の医療でも損傷された神経を完全に回復させることはできませんが、適切に治療をすることによって残された機能を回復させることができます。少しでも発症前の生活に戻れるようにリハビリを頑張っていただくことが必要です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.123 監修:医師 坂本貞範
2023.04.05