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- 膝の慢性障害
- ひざ関節
膝蓋大腿関節症は膝の皿が痛い症状が特徴!原因、治療法について 膝周辺の痛みを起こす病気に「膝蓋大腿関節症」というものがあります。この病気はスポーツをしている方や膝のケガをした方、中高年の方で起こりえます。 この記事では膝蓋大腿関節症の症状、原因、治療法について解説していきます。膝の痛みでお困りの方はぜひ参考にしてみてください。 膝蓋大腿関節症とは 膝には大腿骨と脛骨でつくられる膝関節と、大腿骨と膝蓋骨(膝の皿の骨)でつくられる膝蓋大腿関節の2つの関節があります。膝蓋大腿関節は「しつがいだいたい関節」と読み、膝の皿の骨である膝蓋骨と大腿骨との間で障害が起こり、痛みを起こす病気です。膝蓋骨はpatella、大腿骨はfemurと英語で表記するためpf関節とも呼びます。 通常、膝蓋骨と大腿骨が接触している部分は骨の表面に軟骨があり摩擦がほとんどありません。そのため、膝蓋骨は膝を屈伸する時に滑らかに動きます。しかし、膝蓋大腿関節にずれや炎症が起きたり、軟骨がすり減ってしまうと痛みを起こしてしまい、そのような状態を膝蓋大腿関節症と呼びます。 膝蓋大腿関節症の症状 膝蓋大腿関節症の主な症状は膝のお皿の痛みで、膝を伸ばすとき痛みを感じることが多いです。ケガなどによって膝蓋骨の脱臼や不安定症などがある場合には、膝の皿の横の痛みや、膝のお皿の周りの痛みを感じることもあります。 また、膝のお皿の下が痛い場合もありますが、そのような場合にはジャンパー膝や膝蓋腱炎と呼ばれるバレーボールやバスケットボールなどのジャンプするスポーツをする方に多い膝蓋骨に付着する腱の炎症が原因のこともあります。 膝蓋大腿関節症の主な原因 原因は主に「膝蓋骨の不安定性」と「加齢」による変化です。 健康な方では、膝蓋骨は大腿骨の表面の溝にうまくはまりこみ、溝の中を滑るように動きます。膝蓋骨の不安定症とは、膝蓋骨がこの大腿骨の溝から外れやすくなってしまう症状です。生まれついての骨の形や、足がX脚になっている方では、蓋骨の脱臼・亜脱臼が起こりやすくなります。そのような状態を放置していると、膝蓋骨と大腿骨がぶつかることで、徐々に軟骨がすり減っていきます。 また、加齢も原因の1つです。中高年の女性に多く、加齢によって膝関節の軟骨が摩耗していくと、骨同士がぶつかり痛みを生じてしまいます。 膝蓋大腿関節症の診断方法 診断は身体診察と画像診断により行います。 身体診察 身体診察では視診、触診、痛みを誘発するテストなどを行います。 膝関節の診察では可動域と触診による痛みの部位の確認をまず行います。膝蓋大腿関節症では多くの場合、膝関節の前方や膝皿の痛み(膝蓋骨周辺)が主訴です。 また診察では「patella griding test(膝蓋骨圧迫テスト)」を行います。 patella griding test(膝蓋骨圧迫テスト) 膝蓋骨を上から圧迫して左右に動かすことによって、皿裏に痛み(膝蓋骨の裏側)が誘発されます。 膝蓋骨の不安定症の診察は膝関節を伸ばして、膝蓋骨を外側に押し付けるようにします。 この手技で膝蓋骨が外れるような感じがあれば、不安定症があると判断されます。 画像診断 画像診断では、レントゲン撮影により膝蓋骨の形や位置、大腿骨の溝の形、変形の程度を確認します。 関節の隙間の広さで変形の程度を判断しますが、関節の隙間が少なくなっており、骨棘(こつきょく)という余分な骨ができている場合には、膝蓋大腿関節症があると判断されます。症状が進行すると、関節の隙間がなくなり、骨同士が接触してしまいます。 また、骨の形状を3次元的に判断するためにはCT撮影が有効であり、軟骨・靭帯の状態の評価にはMRIが有用です。 膝蓋大腿関節症の治療法 治療は大きく保存療法と手術療法に分けられます。 保存療法 まず、保存治療について解説します。 加齢が原因の場合 加齢による膝蓋大腿関節症の保存治療では、患部を安静にして、正座や階段などの痛みがでる動作を控えるようにします。 また、膝の裏にタオルや枕をおいて膝関節を伸ばしたり、座っている状態から膝を伸ばす、寝ている状態で足を上げる、痛みの範囲でスクワットをするなどの大腿四頭筋の筋力訓練が有効です。さらに、鎮痛薬や湿布、外用剤などを使用することによって、痛みを軽減することができます。 また、ヒアルロン酸や痛み止めの関節内注射も行われることがあります。これらの治療で痛みが改善せず、日常生活に支障がでる場合には手術が選択されます。 膝蓋骨の不安定症が原因の場合 膝蓋骨の不安定症が原因の膝蓋大腿関節症の場合は、初回の脱臼で大きな骨折がなければ保存的に治療します。保存治療ではサポーターを使用して膝蓋骨が脱臼しないようにしながら、膝関節の可動域訓練、筋力訓練を行います。3ヶ月程度、保存治療をしても痛みや不安定感が残る場合には手術治療が行われる場合があります。 手術療法 次に手術治療について解説します。 加齢が原因の場合 加齢による軟骨損傷が原因の膝蓋大腿関節症では、主に人工関節手術が行われます。 摩耗した軟骨は自然に回復することはないので、傷んだ部分を切除して、金属に置き換え、軟骨の代わりのプラスチックを挿入することで痛みが軽減されます。 膝蓋大腿関節だけではなく、脛骨側の軟骨も傷んでいる場合が多いので、人工膝関節全置換術が行われることが一般的です。人工膝関節全置換術の場合は、治療期間はおおむね2〜4週間程度で、痛みが軽減して、膝の曲がりもよくなり、長期的にも成績が安定しています。 最近では傷んだ部分だけを手術する人工膝関節部分置換術が導入されている施設もあります。部分置換術は主に大腿脛骨関節の内側に行われることが多いのですが、膝蓋大腿関節だけが障害されている場合には膝蓋大腿関節置換術という方法もあります。しかし、手術の適応はまだしっかりと決まっておらず、長期的な成績も不明な部分が多いので、方針について担当医とよく相談することが必要です。 膝蓋骨の不安定症が原因の場合 膝蓋骨の不安定症が原因の膝蓋大腿関節症では、膝蓋腱が脛骨に付く位置を移動させたり、膝蓋骨の内側の靭帯を修復して脱臼を予防させる手術などが行われます。 このように、様々な治療法がありますが、ご自身の状態によって方針は変わってきます。信頼できる医師、病院を見つけて、主治医とよく相談し、納得できる治療を受けることが大切です。 また手術以外にも、リハビリテーションも重要です。リハビリ体制が整っているかどうかも病院選びの参考にしてみてください。 まとめ・膝蓋大腿関節症は膝の皿が痛い症状が特徴!原因、治療法について 膝蓋大腿関節症は加齢や膝蓋骨の不安定性によって、膝の皿の裏に痛みを生じる病気です。膝を曲げ伸ばしするときの痛みが多く、身体診察と画像検査によって診断されます。 治療方針は膝蓋骨の不安定性と軟骨の摩耗の程度、年齢などによって変わってきます。保存治療としてお薬、リハビリ、注射などがあり、改善しない時には手術治療の方法もあります。早めに治療をすることで、症状が早くよくなったり、悪化することを防ぐことができるので膝のお皿に痛みや違和感があり、なかなか良くならない方は早めに専門医に診察をしてもらうようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.151 監修:医師 坂本貞範
2023.09.14 -
- 変形性膝関節症
- ひざ関節
膝の上の筋肉、ふとももが痛む場合の対策と考えられる病気 「膝の筋肉が痛む・・・いったい何が原因なの?」 「膝上が痛くてつらい・・・なぜ?」 このように「膝の上の部分が筋肉痛のように痛む」こんな症状で悩まれている方はいませんか。今回は、膝の上に痛みが出る場合の原因や対処法について解説します。 膝の上の筋肉、ふとももの周辺が痛む場合、考えられる原因は? 膝の上の筋肉に痛みがある場合は、「筋肉そのものに問題」がある場合と、膝の上の「別の組織に原因がある」場合が考えられます。それぞれの原因を詳しく紹介してまいりましょう。 膝の上の筋肉に問題がある場合 膝の上にあたる太ももには、さまざまな筋肉が存在します。 主なものとしては、太ももの前にある大腿四頭筋(だいだいしとうきん)や、太ももの裏にあるハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様、半膜様筋といった3つの筋肉の総称)といった筋肉が膝の曲げ伸ばしで働きます。 これらの筋肉が使いすぎで筋肉痛が発生したり、さらに筋肉が損傷して肉離れになったりすると筋肉が痛みを生じます。また、筋力低下により筋肉が疲労しやすかったり、力が入りすぎてしまったりして筋肉に痛み出てしまうこともあります。 筋肉の痛む原因 ・筋肉の使いすぎ ・筋肉の損傷 ・筋力の低下 ・筋肉の疲労 膝の上の筋肉が痛む場合に考えられる病気 膝上周辺には膝のお皿である膝蓋骨(しつがいこつ)があり、太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)と、すねの骨である脛骨(けいこつ)で関節を作っています。 さらにその周りには、骨や周りの組織の衝突を避けて膝の曲げ伸ばしをスムーズにする、膝蓋前滑液包や膝蓋上のうなどの組織があります。 そのため、膝の上の方に痛みが見られる場合は、これらの関節や組織に何らかの問題が発生している可能性が考えられます。 具体的には次のような病気が潜んでいる可能性があります。 ・膝蓋上のう炎 ・膝蓋前滑液包炎 ・膝蓋大腿関節症 ・変形性膝関節症 以上のように膝の上が痛む場合、筋肉以外にもさまざまな組織の炎症や変形が痛みの原因となっている可能性があるのです。そのため、痛みがある場合は無理せず早めに病院を受診して各種検査をすることが重要になります。 膝の上の筋肉、”ふともも”の周辺が痛む場合の対策は? 痛みの原因に応じて対策をすることが大切です。 筋肉の痛みだと自己判断して、むやみにほぐすようなことをしては逆効果になって痛みを悪化させる可能性もあります。以下に原因別に考えられる対策を紹介します。 ・筋肉が原因の場合の対策 筋肉痛や筋肉の損傷が起こっている場合は、無理にほぐしたりストレッチをしたりするとかえって痛みを悪化させる可能性があります。そのため痛みがある場合は病院で正しい診断を受けましょう。 痛みが治まったり、病院での治療が終了したら、損傷したり、動かさなかったりした影響で筋肉が硬くなります。そのまま放置すると怪我の再発の原因となるので、筋肉をしっかりほぐすことが必要になります。 また、筋力低下が痛みの原因となる場合もあるので、膝周辺の筋力を日頃から鍛えておくことが大切です。ストレッチやトレーニングの具体的な方法は後ほど解説します。 ・筋肉以外が原因の場合の対策 組織の炎症による痛みが起こっている場合は、無理な運動は避けて炎症がおさまるまで安静にする必要があります。また、内服薬や注射により炎症の軽減をはかることで痛みを改善させます。 滑液包には炎症により組織から漏れでた水がたまりやすく、注射を使用して水を抜くことで痛みや動きの改善を図ります。関節の変形がある場合は、膝の負担を軽減するために日常生活で次のような工夫が必要です。 ・正座をしない ・階段を避ける ・体重を増やさない、減量する 痛みが軽減すればストレッチや筋力トレーニングなどで再発を防いだり、膝にかかる負担を軽くしたりします。 膝周辺の筋肉、ストレッチとトレーニング方法 太ももにある筋肉である大腿四頭筋とハムストリングスのストレッチを紹介します。 また、膝の変形に重要な大腿四頭筋のトレーニング方法も解説します。 大腿四頭筋のストレッチ 1,バランスを崩さないように壁など支えにして立ちます。 2,片方の足の膝を曲げて足首を持って後ろに引きます。 3,太ももの前が伸びるのを感じながら15秒〜30秒キープします。 ハムストリングのストレッチ 1,両膝を伸ばして座ります。 2,つま先を触るように体を倒します。 3,太ももの裏が伸びるのを感じながら15秒〜30秒キープします。 大腿四頭筋のトレーニング 1,仰向けになって両膝を曲げます。 2,片足の膝をまっすぐ伸ばした状態で床から10cmほど離すように足を上げます。 3,そのまま10秒キープした後ゆっくり下ろします。 4,10回繰り返します。(余裕があれば回数を少しずつ増やしましょう) 以上のような運動は、数日ではなかなか効果が現れません。痛みがない状態で毎日習慣にすることで、筋肉の柔軟性や筋力が改善します。焦らず少しづつでいいので、毎日続けるようにしましょう。 まとめ・膝の上の筋肉、ふとももが痛む場合の対策と考えられる病気 膝上の痛みがある場合は筋肉とは別の原因が潜んでいることもあります。そのため、自己判断でほぐすことは症状悪化のリスクがあります。 早めに医療機関、病院やクリニックを受診することで、正しい診断を受ければ、症状にあった治療を受けることができますので、我慢しないようにしましょう。 また、日頃から膝周辺の筋肉をほぐしたり、鍛えたりすることは怪我の予防につながります。 痛みがない場合は、紹介した方法を参考にして、運動を習慣にしましょう。以上、ご参考になれば幸いです。 No.S093 監修:医師 加藤 秀一 こちらも合わせてご覧ください。
2022.11.12 -
- 膝部、その他疾患
- ひざ関節
たな障害(膝滑膜ひだ障害)とは、その原因と症状、治療法 はじめに 運動を日常的に行う中で、突然、膝から崩れて座り込んでしまうことがあります。運動中の膝くずれの原因として、前十字靭帯の損傷や、膝蓋骨の脱臼、半月板の損傷などの膝の障害は有名であり、聞かれたことも多いのではないでしょうか。 一方で、『たな障害』と呼ばれる病気についてはご存知でしょうか。この『たな障害』も、膝の傷害で運動中に膝くずれを引き起こす病気です。たな障害は治療が手遅れになると重症になってしまい、痛みが強くなり、手術が必要な状態になってしまう病気なのです。 膝の病気、タナ障害とはどんな病気なのか、原因と症状、その治療法について紹介していきます。 たな障害の原因と症状 『たな障害』=『膝滑膜ひだ障害』とは、『滑膜ひだ』という膝にある関節の内側にある『ひだ』に炎症が起きてしまう病気です。 滑膜とは膝の動きを滑らかにする滑液という液体を作っている薄い膜です。滑膜に炎症が起きてしまうと、膝を滑らかに動かすことができなくなったり、膝を動かすと痛みを感じたりします。 『たな障害』は、野球や、バレーボール、バスケットボール、ハンドボールなど膝の曲げ伸ばしを頻繁に繰り返し行う運動選手によくみられますが、運動習慣のある人は誰しも起こり得る病気です。一般的な中高生の部活動で発症することも多くみられます。 膝の曲げ伸ばしを繰り返したり、捻ったりの動作を繰り返すと、『滑膜ひだ』が狭くなってしまい炎症を起こしてしまうのが原因で起こります。大きな外傷がなくても、曲げ伸ばしや、捻る動作を繰り返すと徐々に痛みが増えてくることもあります。 最初の症状としては、膝のお皿と言われている部分である膝蓋骨の内側や下側に痛みを自覚します。 徐々に『膝がぐらぐらする』といった、動かしにくさを自覚するようになります。やがて、痛みが出現し、動ける範囲内が制限されるようになります。徐々に痛みや動かしにくさは悪くなり、数分歩行するだけで痛みが出現するようになります。 さらに悪化すると、歩行中や運動中、突然、膝くずれを起こしてしまいます。 診察では、『たなテスト』と呼ばれる検査が行われます。この検査では、膝蓋骨の内側の下の方を医師が親指で押さえた状態で、膝を曲げます。このときに痛みを自覚するときや、医師が『ひっかかり』を感じるときに『たな障害』が疑われます。 さらに、レントゲン検査や、超音波検査、M R I検査といった画像検査を行い、滑膜の状態を評価して総合的に診断が行われます。なお、タナ障害には簡単な検査方法があります。 膝の曲げ伸ばしをすると、お皿の周りで引っ掛かかりがみられ「ポキッ、ポキッ」といったクリックしたような音が効かれたり、膝に手を当てると感じる場合は可能性が高いと思われます。 たな障害の治療 たな障害の治療で一番大事なことは、運動を休み、膝の安静を保つことです。しかし、実際には運動を続けられることが多いため、運動を続けて重症化させてしまう運動選手が多いため、注意が必要です。 症状が軽いときには、湿布を貼ったり、炎症を抑える薬を内服したりすること治ることがあります。また、膝の関節内にヒアルロン酸を注射して関節の動きを良くしたり、ステロイド剤を注射して炎症を抑えたりすることで痛みが引くこともあります。 多くの場合、タナ障害は、運動をやめる又は、減らして安静を保ちつつ、ストレッチや湿布等での冷却をはかり、大腿四頭筋の筋力維持訓練など、膝への負担を減らせば症状は落ち着きはじめます。 たな障害が重症化した場合は運動を休止し、湿布や内服、注射などの治療を開始しても痛みがひかないことが多いです。また、痛みが一時的にひいても、運動を再開したときにすぐに痛みが再発してしまうこともあります。 しかし、実際のところ運動選手は、多少の動かしにくさや、痛みがありながらも、運動を継続して行うことができるため、症状は一時的なもの、「大丈夫だろう」と思いがち、自分に都合の良い判断をした上で治療せずに我慢してしまうことが多くあります。 症状が重症化したあとでは希ではありますが、手術も選択肢となり治療期間も長引くことになるため、違和感等を感じた際は、早めに医療機関や整形外科等を受診して専門家の判断を仰ぐべきです。 手術による治療が必要になった場合は関節鏡手術という関節の内視鏡を用いて行い、『ひだ』の切除を行います。 手術自体は20分程度で終わることが多いですが、手術による傷の確認や、腫れや副作用の確認のために入院による治療が必要になります。入院期間は2日から1週間程度で行われることが多いですが、手術後の経過によって前後します。 手術の傷口が感染してまった場合などは、再び手術が必要になってしまうこともあります。尚、手術が成功すれば、すぐに運動に復帰できるかというと、そうではありません。リハビリが必要になるからです。運動に復帰するためには、およそ2週間から数ヶ月のリハビリを覚悟しなければなりません。 さらには、リハビリを行った後でも、元々のパフォーマンスがすぐに発揮できるまでは、更に時間を要することが多いです。 まとめ・たな障害(膝滑膜ひだ障害)とは、その原因と症状、治療法 『たな障害』は膝の病気で運動選手によく起こる病気の一つです。 この病気は、症状が軽いうちは手術による治療を要することは少ないです。しかし、痛みや動かしにくさを、我慢して運動を続けると症状が悪化し、手術が必要になることもある病気です。 手術した後は、リハビリが必要です。すぐに運動に復帰することはできません。軽症なうちに運動を休む期間よりも、長い期間、運動ができなくなってしまいます。いずれにしましても膝の周囲の筋力強化と柔軟性を他待つためのストレッチは欠かさず行うようにしましょう。 長い期間、休まないといけないのは、運動選手にとって致命的になってしまうことも少なくないでしょう。症状が気になる人は我慢して運動を続けようとせず、早期に病院を受診して治療を受けるようにしましょう。 以上、たな障害(膝滑膜ひだ障害)とは、その原因と症状、治療法について記載させていただきました。ご参考になれば幸いです。 No.075 監修:医師 坂本貞範 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています >
2022.07.08 -
- ひざ関節
ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎の原因と治療 はじめに スポーツ選手は日常的に、身体を動かし、気がついたら慢性的に身体にダメージを与えていることも少なくありません。スポーツ外傷と呼ばれるものです。 走ったり、ジャンプしたりなど多くのスポーツで行う動作を慢性的に繰り返すことで起こる病気の中で、ジャンパー膝』と呼ばれる、「大腿四頭筋腱付着部炎」と呼ばれる病気があります。 この記事では、通称『ジャンパー膝(大腿四頭筋腱付着部炎)』について、その症状および治療法について医師が監修し解説します。なお、本記事では一般的な注意点などについて解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 ジャンパー膝の原因 ジャンパー膝とは、スポーツを日常的に行い膝に負担がかかる人が起こりうる病気で、いろいろなスポーツが原因で起こります。 ジャンプしたり着地したりの動きを多く繰り返すスポーツ(バレーボールやバスケットボール、走り高飛びなどの陸上競技など)で多く起こります。また、突然走ったり止まったりを繰り返すスポーツ(サッカー、ラグビー、アメフトなど)でも起こりやすいです。 野球やソフトボール、テニス、バトミントンなどのスポーツでも生じることが多いと言われており、走ったり、ジャンプしたりをたくさんするスポーツならどのようなスポーツでも発症する可能性はあります。 競技のレベルや強度が上がってくる中学校以降の学生だけでなく、日常的にスポーツを行なっているプロスポーツ選手でも見られ、サッカー元日本代表の内田篤人選手もこの疾患に苦しんだと言われています。 膝蓋骨に付着する腱のオーバーユース(使いすぎ)による炎症であるジャンパー膝は、その炎症部位により以下の2つに分類されます。 ・大腿四頭筋腱の膝蓋骨付着部=膝蓋骨の上に付着する腱の炎症 ・膝蓋腱の膝蓋骨付着部または脛骨粗面付着部=膝蓋骨の下に付着する腱の炎症 いずれの場合も、腱のオーバーユースによる炎症という原因は変わりませんが、障害部位によって原因となる動作や症状、治療法は異なると言われています。日常的な腱のオーバーユースによる障害のため、通常は徐々に症状が進行していくためほとんどの患者は症状が出現してから数ヶ月後に受診するのが現状です。 ジャンプや走るなどの動作で慢性的に膝に加わると、膝の靭帯に負担がかかります。この膝への靭帯の慢性的な負担によって、靭帯や腱に炎症を起こしたり、筋繊維などを傷つけてしまうことが原因でジャンパー膝が起きると言われています。 ジャンパー膝の症状 症状は、最初は軽症のことが多いですが、徐々に悪化してきます。 最初の症状としては、世間で、『膝のお皿』と呼ばれている部位である『膝蓋骨』の下側を押すと痛みを感じたり、膝を動かした後に痛くなったりする程度のことが多いです。多くの場合では、スポーツの後に痛みが悪化することが多いです。 注意すべきは、痛みが強くても、走ったりジャンプしたりはできることが多いため、スポーツ選手は痛みを我慢して、運動を続け、どんどん症状が悪化してしまうということが非常に多いということにあります。 最初のうちは、スポーツは普通に行うことができ、スポーツの後に膝に違和感や、痛みを感じる程度のことから始まります。しかし、その痛みを我慢し、膝を使い続けて、徐々に悪化してしまうと、スポーツ中にも痛みを感じるようになります。そのような段階になると、膝蓋骨の下側を押すと、顔をしかめてしまうほどの激痛で、しばらくその場から動けなくなるようなことも多いようです。 それでも痛みを我慢して、スポーツを続けると、スポーツなど運動中だけに関わらず、日常の歩行をはじめ、常に痛みを感じるようになります。さらに悪化すると、痛みでスポーツを継続することが困難になります。さらにスポーツを続けると腱や靭帯が千切れてしまうこともあります。 ジャンパー膝は、症状が出るに至った動作・経緯である病歴とその症状から診断されることが多く、診断自体には画像検査などの特殊な検査を要しないことがほとんどです。膝関節の屈曲や進展によって誘発される、膝蓋骨の直上または直下の違和感や痛み・熱感が一般的な症状です。 しかし、膝をぶつけたなど明らかな外傷がある場合や病歴や症状が典型的でない場合は膝関節の超音波検査やMRIといった特殊な検査を要する場合もあります。 あくまでこの診断は専門家による評価を前提としているため、安易に自分や非専門家による判断を下さず、整形外科などの医療機関での評価を推奨します。 ジャンパー膝の治療 治療は重症度によって大きく変わってきます。 症状が比較的軽症の人は、膝を休めて、安静・休養をとることだけで治ります。しかし、実際には軽症のときは、スポーツ後のみの痛みで、スポーツのプレー自体に影響がないので、そのままスポーツを続けて悪化させてしまうことが多いのが現状です。 スポーツを続ける場合でも、スポーツでの膝への負担を減らし、スポーツを行う前にストレッチを行うことや、アイシングなどで冷やし炎症を抑えることも治療の一つであると言われています。 また、状況に応じては、ステロイドという薬を傷んでいる場所に注射して炎症を抑えることもありますが、腱自体を弱くしてしまい、腱を千切れさせてしまうこともあると言われています。またヒアルロン酸を注射するという治療方法もあります。 重症になってしまい、膝の靭帯や腱が千切れてしまうと、膝を伸ばすことができなくなります。このような段階になってしまうと、手術を行わなくてはなりません。 手術では膝を切り開いて行う必要があります。そのため、全身麻酔という、寝た状態で行う手術が行われることが多いです。手術した傷が感染してしまう可能性もありますし、全身麻酔でのアレルギーなどの副作用が生じる可能性もあり、1−2週間入院を行う必要があります。 ただし、手術を行い退院したからといって、すぐにスポーツに復帰できるわけではありません。手術直後は歩行するのにも練習が必要な状態です。歩けるようになった後も、リハビリを行う必要があり、スポーツへの復帰までに3−6ヶ月以上は覚悟せねばなりません。 ジャンパー膝の治療はリハビリテーションが中心となります。前に述べた通り、ジャンパー膝を含むオーバーユースによる腱の炎症の治療は一般的には以下のような過程があります。 1)原因となる動作の制限:膝関節の屈曲・伸展を中心とした炎症となる原因の動作を、理想的にはやめることが推奨されますが、やめることが困難な場合には頻度や負荷を減らすことで炎症の鎮静化を図ります。 この原因動作の制限は治療の基本となり、症状が出た後にも原因動作を続けることはしばしば症状の悪化や長期化を引き起こします。疑わしい症状が出た場合は速やかに原因動作を中止し安静を保ちながら専門家に相談しましょう。 2)鎮痛:痛みが強い場合にはそのほかの動作に支障をきたすこともあるため、症状に応じて鎮痛薬を内服したり、場合によっては膝関節周囲に注射したりすることもあります。しかし、多くの場合は原因となる動作の制限が鎮痛の効果も果たすため、原因動作の制限でも症状が改善しない場合や痛みが強い場合に鎮痛薬の使用を考慮することになります 3)原因となる動作への復帰:炎症の改善の経過を見ながら、徐々に膝関節の使用を再開します。ジャンパー膝の治療を行う医療機関では、症状に応じたリハビリテーションプログラムを使用することが多く、早期に競技へ復帰するためにこのリハビリテーションは必要不可欠となります。多くの場合は、軽い負荷から徐々に通常または重い負荷をかけて膝関節の運動を行っていきます。負荷の制御は専門のリハビリテーションプログラムに基づくステップアップを要するため、受診している医療機関での継続的な評価を受けるようにしましょう。 まとめ・ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎の原因と治療 ジャンパー膝はスポーツを行う人にとって誰でも起こりうる病気です。 ジャンパー膝は、「大腿四頭筋腱」または、「膝蓋腱」のオーバーユース(使いすぎ)による炎症で、ジャンプ・着地、走る・止まるなどの急激な動作を繰り返すスポーツ外傷では比較的よく知られた疾患です。 重症度によって治療の方法は異なり、早く治療を開始することが重症化を防ぐことできる病気です。『症状が軽いから大丈夫』『スポーツが継続してできるから大丈夫だ』と考えて、無理してスポーツを継続すると、重症化してしまい、スポーツへの復帰がかえって長引いてしまいます。 個々の事例によって状況が大きく異なるため、膝に違和感を感じたら早めに医療機関等、病院を受診して医師の診察を受けることを推奨します。 以上、今回の記事ではジャンパー膝(大腿四頭筋腱付着部炎)とその症状および治療法について解説しました。参考にしていただければ幸いです。 No.069 監修:医師 坂本貞範 ▼ ジャンパー膝をはじめとしたスポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.06.20 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
膝が腫れているときに考えられる病気とは はじめに 日常生活において両足を揃えて左右を比較してみた際に両膝の大きさや形が異なっているのに気づいたことはありませんか。 また、膝が腫れてその部分に発赤所見や熱成分を認める、そして膝が急に痛みを覚えてよくよく見てみると腫脹がひどくなっているという経験をした方も少なからずいらっしゃるでしょう。 膝という人体組織は、太ももに位置する大腿骨、足のすねに存在している脛骨や腓骨、そしてお皿と呼ばれる膝蓋骨などの筋骨格系に関するパーツが組み合わさって出来ています。 膝は普段の生活を送る、もしくは運動を実行する際などに膝を曲げ伸ばしを行う動きを司り、上半身などの体重を支える重要な役割を有していますので、その膝が腫れて痛くなると、どうしても日常生活に支障をきたすことに繋がっていきます。 そこで今回、「膝が腫れているときに疑うべき病気」と題し、それらに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 膝が腫れているときに考えられる病気とは 変形性膝関節症 膝が腫れて痛む有名な病気としては「変形性膝関節症」が挙げられます。 変形性膝関節症は、加齢や遺伝的要因、もしくは肥満による重量増加が引き金になる膝関節への過度な負担によって関節部の炎症や変形を生じさせて、膝の痛みや腫れなどが引き起こされる病気と認識されています。 この疾患では、ひざ部分における関節軟骨が摩擦や摩耗などですり減ることによって膝部位に強い痛みが長期に渡って自覚される病気であり、年齢を重ねれば重ねるほど病状が進行して安静時にも痛みが緩和されずに歩行することすら困難になる進行性のある病気です。 変形性膝関節症の直接的な原因は、先にあげた加齢、肥満以外にも、O脚、閉経してからの女性ホルモンの変動などが挙げられるほか、日常生活において布団の上げ下ろしなど、膝の曲げ伸ばしを頻繁に行う行為や、正座を長時間保持するなどといった動作を日常的に行うことによってひざに負担がかかる場合に起こりやすくなります。 半月板損傷 膝の腫れを伴う症状として、「半月板損傷」も疑われます。半月板は膝関節の中にある三日月の形をした軟骨組織です。膝の内と外に2枚あって、走る、歩く、跳ねるなどの動きからくる負荷を和らげるクッションとしての役割があり、膝の安定性に欠かせない存在です。 半月板損傷の原因は、スポーツや事故などで急激な負荷や、強い衝撃、無理な動きがあった場合に傷つくことがあります。これが「半月板損傷」といわれるものです。また加齢によって組織がもろくなって起こる場合は先天的に症状を持っている場合があります。 関節リウマチ 次に、膝が腫れやすい代表疾患として「関節リウマチ」があります。「関節リウマチ」という病気は、自己免疫の異常が原因となって関節部位で炎症が引き起こされて、その結果として膝の腫れや強い痛みを自覚するものです。 この疾患では、軟骨や骨組織が「免疫異常」によって攻撃されることで関節部が破壊され、変形し、健常な関節機能が喪失する病気であることが知られており、その罹患患者数は我が国で80万人程度存在すると伝えられています。 一般的に、女性に多く発症し、発症年齢としては30代~50代前後という、若年から中年層がメインです。初期段階では手足の指の関節が左右対称性に腫れあがり、それ以外にも発熱や倦怠感など全身症状を自覚することもがあります。 以前は関節リウマチに対する治療薬も限定的でありましたが、最近では生物学的製剤などの薬品開発が進歩しているため、できるだけ早期から治療に入いることができれば炎症所見を改善させて膝関節の機能の回復を見込めるようになりました。それによって日常生活内のQOLが向上することが期待することができます。 痛風 次に、膝関節部が腫脹を認める疾患として、「痛風」が考えられます。 生体内で尿酸成分が過剰に貯留されると、膝関節を始めとする関節部位に尿酸の結晶がたまることで、その部分に炎症を引き起こして腫れを生じます。 尿酸と呼ばれる成分はビールや甲殻類などに多く含まれる「プリン体」が体内で分解されて形成されるものです。この尿酸の血液中における濃度が高値である状態が慢性的に継続すると、関節内で結晶化してしまい、この結晶化した尿酸を白血球が破壊処理する反応に伴って炎症を引き起こすと考えられています。 昨今の医療技術の進歩によって良好な薬剤も開発されており、的確な治療を実施すれば健康な生活を送ることができますが、痛風状態を放置すると関節部の激痛を引き起こして膝の腫れをきたすなどを繰り返し、全身的に痛風結節と呼ぶ「こぶ」が表れ運動機能障害が起こるほか、最終的には腎不全にまで進行する可能性があるため、放置することなく、十分に手当することが大切になります。 痛風の原因となる尿酸値は、食事に大きな影響を受けるため、カロリーの高い食事や、アルコールの採りすぎなどに注意が必要です。食生活全般にわたり見直し、改善を行いましょう。 また、肥満を防ぐ意味でも、代謝を整える意味でも適度なスポーツは有効です、ただ激しいスポーツは逆効果になることもありますので注意が必要です。 その他 その他にも、膝靭帯損傷、血友病、オスグッド・シュラッター病などが考えられます。また、日常生活に関する習慣性によって膝が腫れる場合も考えられています。 普段から立ち仕事が多かったり、スポーツで膝への負担が多い場合、膝の痛みや、腫れを発症することがありますので、適当なタイミングで休憩するよう気を付けましょう。その際に、ストレッチや体操などを少しであっても挟むなど、工夫することで膝を定期的にケアするよう心がてください。 最後に肥満状態は、膝に大きな負担をかけています。肥満による体重増加は、膝の腫れを悪化させる大きな要素と考えられていますので、年齢を重ねても健全で安定した膝の良好な状態を維持するためにも適正体重を保つように注意しましょう。 まとめ・膝が腫れているときに考えられる病気とは 今回は膝が腫れているときに考えられる病気について詳しく解説してきました。膝の腫れをきたす原因の多くのは、関節疾患や骨の病気、外傷など様々です。 ふと膝が腫れていることを自覚した際には、かかりつけ医など医療機関を受診し、担当医に症状出現前後のイベントや出来事はあったか、そして普段からスポーツを活発に実践しているかどうか、あるいは膝に負担がかかりやすい仕事や、習慣、スタイルを送っていないかなどを詳細に伝えてください。 また、急激に膝部分に激しい痛みを覚えて、腫れを認める場合、そして日常動作をする際やスポーツ運動時に膝が腫れて痛みが悪化するようなケースでは、「無理に膝を動かさずに安静を保つ」ように努めて早期に専門医を受診することが重要です。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.060 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療で膝の治療を行えることを知っていますか?! 膝の痛みなどの悩みに対する新たな選択肢、再生医療について
2022.06.07 -
- ひざ関節
- オスグッドシュラッター病
オスグッド・シュラッター病は成長期の少年に発症しやすいスポーツ障害!痛む膝の治療法 オスグッド・シュラッター病という病気をご存知でしょうか? 普段あまり聞き慣れないかも病名ですが、脛骨結節部という膝の皿(膝蓋骨)の下に存在している骨が飛び出してくることで膝痛が引き起こされる病気です。 この疾患は、患部が赤く腫れあがる、あるいは熱感を認めることもあって、傾向的には成長期に該当する少年に発症しやすいスポーツ障害のひとつと言われています。 特に、サッカーや陸上、バスケットボールなどの競技において、跳ねる行為やボールを蹴る動作を頻繁に必要とされる場合によく遭遇する病気と考えられています。 今回は、そのようなオスグッド・シュラッター病という病気の原因、症状、検査、治療などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 オスグッド・シュラッター病の「原因」 オスグッド・シュラッター病が引き起こされる原因は、膝を伸ばす力が繰り返されることによって脛骨結節部分が引っ張られて成長期に認められる膝軟骨部が剥離することと言われています。 オスグッド-シュラッター病という疾患は大腿四頭筋の過剰使用によるスポーツ障害の一種とされており、骨が軟骨から急激に成長する時期である概ね10歳から15歳頃の成長期における男児に多い病気です。 もともと、膝の曲げ伸ばし運動は太ももにある大腿四頭筋という筋肉によって常日頃から行われており、この筋肉が膝蓋腱を介して脛骨結節を引っ張っているため、跳躍運動やボールなどを蹴る動作で脛骨結節に過剰な負荷がかかると本疾患を発症しやすいと言えます。 一般的には、成長期が過ぎてしまえば自然と症状が軽快する病気であり、疼痛症状が改善すればスポーツや運動行為を再開することが出来ます。 オスグッド・シュラッター病の「症状」 オスグッド・シュラッター病における主な症状としては、「脛骨結節部の隆起と痛みや腫れ、あるいは患部が熱感」を持つことなどが挙げられます。 通常であれば、それらの症状は片脚にのみ認められることが多く、痛み症状は膝を動かすときに出現しやすく、休息している際には緩和されていることが知られています。 成長期においては、骨成長スピードに周囲の筋肉が追いつけずにアンバランスになっている状態であり、筋肉自体に強度と柔軟性が乏しいためにスポーツなどを過度に実践すると、大腿四頭筋から繋がっている脛骨粗面部に負荷がかかりやすくなります。 その結果として、膝軟骨が一部剥離するなど物理的な刺激が生じて、かつ成長期の脛骨結節部は通常よりも柔らかい構造であるがゆえに外的刺激がより過重されて、患部の熱感や腫脹などに伴って疼痛症状を引き起こされやすいと考えられます。 オスグッド・シュラッター病の「検査」 オスグッド・シュラッター病の診断は、基本的には医師による診察と症状、あるいは画像検査などに基づいて評価されます。 この疾患では特徴的な症状を捉えると同時に、患部の隆起所見や圧痛の有無などによって診断されますし、より確実な診断に繋げるためにX線レントゲン検査を行って脛骨結節の剥離があるかどうかを確認する作業が行われます。 膝部分のX線検査を施行することで、脛骨粗面の腫脹の有無、あるいは剥離破片が形成されているか否かも判断できます。また、必要に応じて超音波検査、CT検査やMRI検査などの画像的評価を追加して実施することも往々にしてあります。 オスグッド・シュラッター病の「治療」 オスグッド・シュラッター病は成長期に一時的に認められる病気とされており、通常では成長を重ねると共に自然と治癒傾向を示します。 この病気に伴う症状は通常であれば数週間から数カ月後の間に消失することが多く、激しい運動ならびに深く膝を屈伸する動作などを避けると症状の軽減に繋がります。 本疾患による症状の悪化を回避するために、大腿四頭筋のストレッチング、あるいは患部のアイシングなどを実践すると同時に、万が一疼痛症状がひどい際には鎮痛剤の服用や湿布を貼付することも考えられます。 症状が改善されればスポーツ活動や運動動作を再開することも可能ですが、スポーツする前後に出来る限りストレッチングやアイスマッサージをする、そして膝にベルトなど固定具を装着するなどの対策を講じると有用ですので心がけましょう。 まとめ・オスグッド・シュラッター病は成長期の少年に発症しやすいスポーツ障害!痛む膝の治療法 今回はオスグッド・シュラッター病とはいったいどのような病気なのか、また本疾患の原因、症状、検査、治療などについて詳しく解説してきました。 オスグッド・シュラッター病とは、主に成長期の子どもたちが膝前下部に痛みや熱感を自覚する疾患であり、激しい運動を繰り返すことで発症しやすいと考えられています。 スポーツ活動中に万が一にも膝部に疼痛を認める際には我慢せずに安静にして休息することが重要であり、症状改善後には運動前後にウォーミングアップやクーリングダウンを確実に実践することで、スポーツ障害の発生を回避できると考えられます。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S048 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ外傷(オスグッド・シュラッター病、筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.10 -
- ひざ関節
- 野球肘
- PRP治療
- 肘関節
- スポーツ外傷
PRP-FDはメジャーリーグで田中選手や大谷選手が靱帯損傷に使った治療法 膝のPRP-FD注射は、再生医療の新たな選択肢!になるか? 従来、膝の変形性膝関節症などに対する注射療法として、ヒアルロン酸の関節内注射が一般的に普及していた時代がありました。その後、近年には再生医療として血液中の血小板中に含まれる多種の成長因子多血小板血漿(Platelet Rich Plasma: 略してPRP)の関節内注射の効果が報告されてきました。 この自己・多血小板血漿注入療法とも呼ばれる「PRP療法」は、実は海外においては10年以上の使用実績があることをご存知でしょうか。海外では比較的ポピュラーな治療方法なのです。 例えば、プロ野球選手、アメリカのメジャーリーグで当時、ニューヨーク ヤンキースの田中将大選手、あるいは、今も大活躍のロサンゼルス エンゼルスの大谷翔平選手」が右肘の「靱帯損傷」に対して「PRP療法」を行なったことはよく知られています。 一方で、さらにPRP療法は、PRP-FD(又はPFC-FD)療法という新たな再生医療となり注目され始めています。今回は、このPRP-FDに注目して解説してまいりたいと思います。 PRP-FDとは、 Platelet Rich Plasma Freeze Dryの略であり血小板由来因子濃縮物を指します。同様にPFC-FDとは、Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dryの略称であり日本語に訳すと「血小板由来成長因子濃縮液を凍結乾燥保存」したものという意味の頭文字になります。 これらの療法は、患者さんご自身の血液中の血小板に含まれる「成長因子」を活用するバイオセラピー(再生医療)と呼ばれるもので、関節や筋肉、腱の疾患または損傷に対して「手術をすることなく、注射でのアプローチする再生医療」であることを意味しています。 そこで今回は、再生医療の新たな選択肢となり得る膝のPRP-FD注射について解説してまいりましょう。 1)PRP-FD(PFC-FD)の成り立ちとPRPとの違い 従来からあった「PRP療法」は、自己多血小板血漿注入療法のことであり、患者さん自身の血液中に含まれる血小板の要素を利用した再生医療です。 この療法は、血液中の「血小板の成分だけを高い濃度で抽出して、患部に直接的に注射」する方法です。 これによって関節部の損傷した組織へ、血小板の修復能力を用いた自己治癒力を高めることが可能になり、痛みを含めた損傷した患部の改善を目指し、手術などを避けて治癒できることを期待するものです。 この方法は、歴史的にまだ浅いもののイランの医師であるDr.Raeissadatらが過去の研究をもとにPRP関節内注射の方が従来のヒアルロン酸の関節内注射よりも変形性膝関節症における症状を改善させると発表したことにはじまりました。 このPRP関節内投与は、他の再生医療同様、手術等を回避しながら、症状の改善効果が期待できることから、患者さんのQOL(※1)を向上させることにもつながります。 一般的な治療法では解決できなかった「変形性膝関節症」をはじめとした各種関節症の患者さんに対する治療の有効なオプションになり得ると報告されています。 (※1)QOLは、英語でQuality of Lifeの略です Quality of Lifeを医療面から考えると「自分らしい生活、毎日が充実し、心身が満たされた納得のいく生活」を考慮した上で治療を行うというものになります。 患者さんへの治療方針を定めるに場合に治療方法や、その後の療養生活が患者さんへ与える肉体的、精神的はもちろん社会的、経済的といった生活の質といえる各要素を維持すべきではないかというものです。 病気の内容や治療方針によっては、その後の症状や副作用などによって治療する前と同様な生活が不可能になることがあります。そこで治療法を選択する場合には、単に症状の改善や、回復といった治療の効果だけに目を向けるのではなく、QOLの維持にも目を向けて治療方法を選択したいものです。 その意味で今後、再生医療は従来の手術による治療方法を転換させるさせるものとしてQOLに沿った治療法と言えるのではないかと思われます。再生医療は最新の医療技術で手術や入院そのものを避けることができるからです。 だからメジャーリーグをはじめ、スポーツ選手は再生医療に着目する このように再生医療は、治療結果だけに着目するものではなく、治療後を考えた治療方法といえるのです。なぜならスポーツ選手なら誰しも手術を避け、入院を避け、治療後にパフォーマンスを落とすことのない治療が条件になるからです。 スポーツ選手にとって、このパフォーマンスの維持こそがQOLになり、それを維持することこそが治療の条件になります。だからメジャーリーグをはじめ、スポーツ選手は再生医療を目指すのです。 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています PRP-FD(PFC-FD)療法について、 これは、PRP療法と同様に患者さん自身の血液から「PRP-FD(PFC-FD)」を作製します。投与方法も患部に直接注射して行うという治療法の面でも同じになります。 期待する効果としても同様でPRP-FD(PFC-FD)を注射した後には、PRP療法と同じく損傷した組織において自然治癒力が促進されて患部の早期修復や、疼痛軽減に繋がる再生医療としての効果を期待されるものです。 PRP-FD(PFC-FD)療法とPRP療法の決定的な違いは何でしょうか? PRP-FD(PFC-FD)療法では患者さんの血液からいったん作製したPRPをさらに活性化させて、「血小板に含まれる成長因子だけを抽出し、無細胞化した上で濃縮する」ため、成長因子の総量がPRP療法の約2倍程度に及ぶところが大きな相違点です。 また投与のスケジュールも違いがあります。PRP療法であれば採血当日に限り投与が可能ですがPRP-FD(PFC-FD)療法の場合には、採血から投与ができるまでに約1週間~3週間必要です。 尚、PRP-FD(PFC-FD)療法では、濃縮した血小板由来成長因子をフリーズドライ加工するため、長期保存が可能となります。そのため約半年の間に複数回、タイミングを見て何度か投与することが可能になります。 PRP療法 PRP-FD療法 分野 再生医療 再生医療 投与方法 患部に注射で投与 患部に注射で投与 投与タイミング 採血した当日 採血後1~3週間後 保管 できない フリーズドライ化にて長期可能 回数 当日一回 回数を分けて複数回投与可能 有効成分(成長因子) ― PRPの約2倍 期待する効果 損傷した組織の自己治癒力を高めて改善を目指す 2)膝のPRP-FD注射で期待できる効果や実際の治療法 さてここからは、膝のPRP-FD(PFC-FD)注射に期待できる効果や実際の治療法などについて紹介していきます。 このPRP-FDは、従来のPRP療法と効用効能は、ほぼ同じと考えられていますが、PRP-FD(PFC-FD)療法では患者さんから単回の採血で作製する量が多く、フリーズドライ化しているおかげで保存も長期に可能です。 そのため、症状が重いなど、複数回にわたって関節内注射を打つ必要があるケースでは、PRP-FD(PFC-FD)療法が期間を設けて複数回打つことができるため、その面ではPRPよりも適しているとみることもできます。 また、これらのPRP-FD (PFC-FD)注入療法によって、「テニス肘(テニスエルボー)」や、「ゴルフ肘」と呼ばれる肘内側部あるいは外側上顆炎、そして「ジャンパー膝」と呼ばれる「膝蓋腱炎」を修復できる可能性があります。 また、アキレス腱炎、足底腱膜炎などの腱付着部における疾患や、肉離れ(筋不全断裂)や靱帯損傷などの病気をより早期に治癒させる確率を高める効果を期待できます。 そのため、PRP-FD(PFC-FD)治療では、比較的早く、腱や靱帯由来の関節部の痛みを軽減する効果が見込まれるため、手術といった回復が長期化する治療法を避けることができ、重要なシーズンまでに回復しなければならないなど一日も早く復帰を必要とするプロアスリートや、トップアスリートなどに対して有効な治療法となる可能性があります。 また、変形性膝関節症では膝関節部における変形度の進行に伴って、軟骨がすり減り、半月板が擦り減って傷み、さらには滑膜炎など炎症が起きて膝部に水を溜めるような場合にも、PRP-FD(PFC-FD)治療を実践すると軟骨や半月板などの組織の改善を促すと同時に関節部の滑膜炎を抑制して症状を軽減、回復させる効果を期待できるものです。 これら従来の方法では、変形性膝関節症に対する薬物療法としては、一般的な鎮痛剤の内服やヒアルロン酸を含む関節内注射などを施行されてきました。 ところが、これらの既存的治療が最初から効かない場合、あるいは効かなくなってしまった場合でも、PRP-FD(PFC-FD)を関節内注射することで痛みが軽減した例が多く存在します。 PRP-FD(PFC-FD)療法の実際の手順を簡単に紹介します。 まずは、患者さんに問診、診察を行うことから開始します。 次に、治療内容の説明をして同意を得られた患者様から、約50mlの血液を採血します。その後、血液検査結果からHBV、HCV、HIV、梅毒など感染症の除外を行なった上で、PRP-FD(PFC-FD)を実際に作製します。 この際、活性化成分のみを抽出してフリーズドライ化するのに約1~3週間かかることを念頭に置いておきましょう。そして、最後にPRP-FD(PFC-FD)を患部に直接的に注射することになります。 これらのPRP-FD(PFC-FD)療法は、体外で成長因子を抽出して無細胞化する作業を行うため、PRP療法より、痛みが少ない治療法であると言われています。 まとめ・PRP-FDはMLBで田中選手や大谷選手が靱帯損傷に使った治療法です 従来におけるPRP療法(自己多血小板血漿注入療法)は、患者さん自身の血液中に含まれる血小板を活用した再生医療でした。 そして昨今、注目されている再生医療の一つであるPRP-FD(PFC-FD)療法は、血小板が傷を治す際に放出する成長因子の働きに着目したものでPRP療法を応用した技術を使える上、それらを濃縮活用し、我々の生体が生理的に元来有している「自然治癒力」を高めることで治療効果を向上させるものです。 このように、PRP-FD(PFC-FD)療法はPRPと同様に急性あるいは慢性問わず関節症、あるいは関節周囲の靭帯や半月板など軟部組織疾患に対して治療応用が開始されていますので今後の進展に期待が持てます。 尚、今回ご紹介したPRP療法やPRP-FD療法には、更に高度な最先端医療といわれる「幹細胞を培養して患部に投与する幹細胞療法」があり、症状や軽減だけでなく、「軟骨そのものを再生することができ、再生医療の本命」といわれる治療法があります。 当院は、患者様の生活の質、QOLを大切にできる再生医療を推進しています。これまで多くの症例を有する国内でも唯一のクリニックです。いつでもお問い合わせください。 治療後や、療養生活の質を高める再生医療にご注目ください。 S007 監修:医師 加藤 秀一 ▼QOLを大切にするPRP療法を用いた 再生医療の詳細は以下をご覧下さい PRP療法は、自ら再生しようとする自然治癒力を活かした最先端の治療方法です
2021.10.19