【なぜ?】膝が腫れるのは病気?痛みの原因と対処法を解説【医師監修】
公開日: 2022.06.07更新日: 2024.12.08
この記事に辿り着いたあなたは、突然膝が腫れ、原因がわからず悩んでいるのではないでしょうか。
心当たりがないのに、膝の赤みや熱感、痛みがひどくなり、不安になる方もいるかもしれません。
膝の腫れは、炎症反応によるもので、なんらかの病気によるものが隠れている可能性も考えられます。
場合によっては、長期的な治療を必要とするものもあるでしょう。
本記事では、膝が腫れる原因の病気と対処法について詳しく解説しています。本記事が膝の腫れを改善させるきっかけとなれれば幸いです。
目次
膝が腫れる原因は病気による炎症の可能性あり
膝が腫れて炎症が起こっている原因には、以下のような病気が隠れている可能性があります。
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 関節リウマチ
- 痛風
- その他の病気(糖尿病や感染症)
本章では、膝が腫れる原因の病気について解説します。紹介した症状に心当たりのある方は、受診を検討しましょう。
また、膝に水が溜まっている感じがする方は、下記の記事も参考にしてみてください。
変形性膝関節症
膝が腫れて痛む有名な病気としては「変形性膝関節症」があげられます。
変形性膝関節症の原因は、加齢や遺伝的要因、もしくは体重増加による膝関節への過度な負担です。膝関節に負担がかかると関節軟骨が摩擦ですり減り、強い痛みを感じやすくなります。
初期症状は軽度(膝のこわばりや違和感)の場合があり、病気に気づきにくいケースもあります。
悪化すると、膝の可動域が狭くなり、歩行や正座など日常の動作が痛みでつらくなるでしょう。
末期には動いていないときでも痛みを感じ、日常生活に支障をきたす場合も少なくありません。
変形性膝関節症の初期症状や治療法は、以下の記事も参考にしてください。
半月板損傷
膝の腫れを伴う症状として「半月板損傷」も疑われます。半月板は膝関節の中にある三日月の形をした軟骨組織です。膝にかかる負荷を和らげるクッションの役割を果たしています。
スポーツや事故などにより膝に急激な負担や強い衝撃を与えると、半月板損傷になる可能性があります。
変形性膝関節症のほとんどは高齢者であるのに対し、半月板損傷は激しいスポーツをする若年層でも多くみられるのが特徴です。
半月板損傷になると、膝の痛みや腫れで動かしにくくなり、スイッチが入ったように膝関節が動かなくなる「ロッキング」が起こります。
関節リウマチ
「関節リウマチ」は、軟骨や骨組織が「免疫異常」によって攻撃されて関節部位の炎症が起こる病気です。この炎症反応により、関節の腫れ・強い痛みを自覚することもあるでしょう。
関節リウマチの症状の特徴は、手足の指の関節が左右対称性に腫れることです。
初期段階では指のような小さい関節に多くみられますが、膝や股関節など大きな関節に出る場合もあります。(文献1)
そのため、関節リウマチによって膝が腫れることも考えられるでしょう。
関節の症状に加えて発熱や倦怠感、貧血など全身症状を伴う場合もあります。また、病気が進行すると軟骨の破壊が始まり、関節の曲げ伸ばしがつらくなる場合もあるでしょう。
関節リウマチについてより詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
痛風
膝関節部が腫脹を認める疾患として「痛風」も考えられます。痛風は尿酸値が高い「高尿酸血症」に付随する症状のひとつです。
生体内で尿酸成分が過剰に貯留されると、膝関節を始めとする関節部位に尿酸の結晶が溜まり、炎症を引き起こして腫れを生じます。
痛風は足の親指が有名ですが、膝関節にも症状があらわれるケースもあります。
痛風を放置すると関節の激痛や腫れを繰り返し、最終的には腎不全にまで進行する可能性も考えられるでしょう。放置せずに適切な処置をとることが大切です。
尿酸はビールや甲殻類に多く含まれる「プリン体」が体内で分解されてつくられる成分です。そのため、カロリーの高い食事やアルコールの過剰摂取など食生活の乱れは痛風の一因と考えられています。(文献2)
痛風が出る部位や症状について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
その他に考えられる病気
糖尿病や感染症なども膝が腫れる一因として考えられます。
手術やケガなどでできた傷口から細菌が入り、炎症を引き起こします。
症状が悪化すると敗血症のリスクがあるため注意が必要でしょう。(文献3)
感染症により膝の腫れを引き起こす「化膿性関節炎」について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
日常生活に関する習慣性によって膝が腫れる場合もあります。
普段から立ち仕事や激しいスポーツなど膝への負担が多い場合は注意が必要です。無理をせず適当なタイミングで休憩するようにしましょう。
また、肥満状態は膝に大きな負担をかけています。肥満による体重増加は、膝の腫れを悪化させる大きな要素です。
バランスの良い食事や定期的な運動で適正体重を保つように注意しましょう。
膝が腫れて痛い場合は冷やして安静にする
膝に熱感があり、腫れて痛い場合は冷やして安静にして様子をみましょう。
自宅や突然膝の腫れを感じた場合の応急処置は、下記の「RICE」が基本です。(文献4)
R(Rest):患部を固定して安静にする
I(Ice):氷をアイスバッグや袋に入れて、患部を冷やす
C(Compression):テープや包帯などで患部を圧迫ぎみに固定する
E(Erevation):患部を心臓より高い位置に挙げる
上記はあくまですぐにできる応急処置です。不安があれば翌日または当日に受診をしましょう。
また、冷やすことで膝の痛みが悪化する場合は、筋肉の凝りや血流の悪化からきている可能性があります。その場合は冷やさず、湯船やカイロなどで温めましょう。
何科に受診すべきか悩むときは整形外科へ
膝の腫れで受診する際、何科に受診するか悩んだ際は「整形外科」を受診しましょう。
整形外科では今回解説した「変形性膝関節症」「半月板損傷」「痛風」など膝の症状があらわれる病気を対象に診療しています。
関節リウマチの特徴がみられる場合は、専門診療科の「リウマチ科」を受診しても良いでしょう。関節リウマチも他の病気と同様で、整形外科で診てもらうことも可能です。
また、膝の腫れや痛みで受診を悩む場合もあるでしょう。下記のいずれかに該当する場合は病院で診察を受けることをおすすめします。
- 突然膝の腫れや痛みが出た
- 膝の腫れが数日間も続く
- 冷やしても改善しない
- スポーツやケガなど、膝が腫れた原因が思い当たらない
- だるさや発熱など、他の症状もあらわれている
- 膝が動かしにくい、または動かない
上記に限らず膝の腫れや痛みに不安を感じる場合も、専門医に診てもらい適切な処置を受けましょう。
病院では手術・リハビリで治療する場合もある
膝の腫れに対する治療は、原因によってさまざまです。症状や医師の判断によっては、病院でリハビリや手術による治療を行う場合があります。
膝の腫れや痛みが生じる病気の治療は、以下のような処置がとられます。
症状・病気 |
治療の一例 |
手術 |
変形性膝関節症(文献5) |
|
あまり行われないが、場合によっては手術の可能性あり> |
半月板損傷 |
|
手術の可能性あり
※手術によりスポーツの復帰が難しい可能性あり(文献4) |
関節リウマチ(文献1) |
|
リハビリや鎮痛剤で症状が緩和しない場合は手術も検討する
|
痛風(文献2) |
|
患部の感染や関節機能の異常が大きい場合は手術する場合もある |
いずれの疾患でも、医師と患者の両者の意見に基づいて治療方針が決まります。病気の治療に不安があれば、主治医に相談してみましょう。
まとめ | 膝が腫れる原因がわからないときは医療機関に相談しよう
膝が腫れる原因は、関節の病気や外傷などさまざまです。
膝の腫れで受診した際には、症状出現前後のイベント、スポーツや立ち仕事など心当たりのあることを医師に伝えてください。
今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。
膝が腫れるときによくあるQ&A
運動後に膝が腫れるのはなぜですか?
運動により膝が腫れるのは「半月板損傷」である可能性が高いです。
下記のようなスポーツ種目は、膝のひねりや無理のある方向転換により半月板損傷になる可能性があります。
- マラソン
- ゴルフ
- バレー
- バスケ
- 野球
定期的にスポーツをされる方は、無理な膝の使い方をすると半月板を傷めやすいので注意しましょう。
膝の腫れはどのくらいで治りますか?
膝の腫れが治る期間は、原因の病気や程度によってさまざまです。数カ月で治る場合もあれば、数年以上かかることもあります。
早期に適切な処置を行うことで比較的早めの改善も期待できます。膝の腫れに違和感があれば早めに専門医に診てもらいましょう。
当院「リペアセルクリニック」では、再生医療にて膝の腫れや変形性膝関節症の治療が可能です。気になる方は下記のページも参考にしてください。
膝が腫れてブヨブヨで痛いのですが…
膝に水が溜まっている可能性があります。
普段は関節の潤滑油として役割を果たしている「関節液」が炎症反応により過剰につくられているため、膝に水が溜まる現象が起こります。(文献6)
病院で水を抜く処置をしてもらうと、ブヨブヨの解消が期待できるでしょう。
また、場合によっては水を抜いた後に痛みや炎症を抑える目的でヒアルロン酸を注入する治療も可能です。受診した際に相談してみてください。
膝と同様、肘にも炎症が起こる「肘頭滑液包炎」の可能性があります。詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
参考文献一覧
文献1
日本リウマチ学会. 関節リウマチ診療ガイドライン2020. , 診断と治療社, 数カ月2021年,初版, p171
文献2
日本痛風・尿酸核酸学会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン[2022年追補版]. 第3版, 診断と治療社, 2022年, p73
文献4
日本整形外科スポーツ医学会広報委員会.3.スポーツ外傷の応急処置(RICE). スポーツ損傷シリーズ, 2023.5.
文献5
日本整形外科学会診療ガイドライン実行委員会/変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会. 変形性膝関節症診療ガイドライン2023. 初版, 株式会社南江堂, 2023, p147
文献6
斉藤 聖二,関節痛(炎):診断と治療の進歩1.関節の構造と関節痛(炎)の原因, 日本内科学会雑誌, 1994年, 第83巻, 第11号, p1871-1875