棚障害の治し方とは?症状・原因・治療法について医師が詳しく解説
公開日: 2022.07.08更新日: 2024.12.08
棚障害に悩んでいるが、治し方がわからない。
棚障害を起こした場合、どのくらいで復帰できるの?
このようなお悩みをお持ちではないでしょうか?
運動を日常的に行う中で、突然、膝から崩れて座り込んでしまう病気は多々あります。
そのなかでも棚障害(膝滑膜ひだ障害)は、膝関節の内側にある「滑膜ひだ」と呼ばれる部位が炎症を起こす病気です。
棚障害は、症状が軽いからと放置したままだと痛みがどんどん強くなり、手術が必要になり復帰が遅れてしまう可能性もあります。そのため早い段階で適切な治療を受けることが大切です。
今回は、棚障害の治し方をメインに、原因や症状などについて詳しく解説していきます。
目次
棚障害(膝滑膜ひだ障害)とは「滑膜ひだの炎症」
棚障害(膝滑膜ひだ障害)は、膝の傷害で運動中に膝くずれを引き起こす病気で、膝の内側にある滑膜ひだに炎症を起こすことで発症します。
「症状が軽いから」と放置してしまう方もいるようですが、治療が手遅れになると重症になってしまい、痛みが強くなり、手術が必要な状態になってしまう病気です。
膝の病気、棚障害とはどんな病気なのか、原因と症状、その治療法について紹介していきます。
棚障害の症状
棚障害とは、『滑膜ひだ』という膝関節の内側にある『ひだ』に炎症が起きてしまう病気です。
滑膜とは、膝の動きを滑らかにする滑液という液体を作っている薄い膜です。滑膜に炎症が起きてしまうと、膝を滑らかに動かすことができなくなったり、膝を動かすと痛みを感じたりします。
最初の症状としては、膝のお皿と言われている部分である膝蓋骨の内側や下側に痛みを感じるのが特徴です。
徐々に『膝がぐらぐらする』といった、動かしにくさを自覚するようになり、痛みが出現し始めると動ける範囲内が制限されるようになるでしょう。
悪化すると数分歩行するだけで痛みが出現するようになり、歩行中や運動中、突然、膝くずれを起こしてしまうことも考えられます。
棚障害の原因
棚障害は、膝の曲げ伸ばしや、捻る動作の繰り返しによって「滑膜ひだ」が狭くなり、炎症を起こしてしまうことが原因で起こります。
大きな外傷がなくても、膝の曲げ伸ばしや、捻る動作を繰り返すことで、徐々に痛みが増すこともあります。
『棚障害』は、野球や、バレーボール、バスケットボール、ハンドボールなど膝の曲げ伸ばしを頻繁に繰り返し行う運動選手によくみられますが、運動習慣のある人は誰しも起こり得る病気です。
一般的な中高生の部活動で発症することも多くみられます。
棚障害の検査方法
診察では、棚テストと呼ばれる検査が行われます。
この検査は、膝蓋骨内側の下の方を医師が親指で押さえた状態で、膝を曲げるものです。
このときに痛みを自覚するときや、医師が『ひっかかり』を感じるときに『棚障害』が疑われます。
さらに、レントゲン検査や、超音波検査、M R I検査といった画像検査を行い、滑膜の状態を評価して総合的に診断が行われます。
また、棚障害の簡易的な診断は自分でも可能です。
膝の曲げ伸ばしをすると、お皿の周りで引っ掛かりがみられ「ポキッ、ポキッ」といったクリックしたような音が聞こえたり、膝に手を当てると感じる場合は可能性が高いと思われます。
棚障害における6つの治療法
棚障害(滑膜ひだ障害)は軽症か重症かによって、治療法が異なります。主な治療法は以下の6つです。
- 安静
- 非手術的療法
- 薬物療法
- 関節内注射
- 手術療法
- リハビリテーション
症状に合わせた治療やリハビリテーションを行い、再発を防ぎましょう。
安静
棚障害の治療で一番大事なことは、運動を休み、膝の安静を保つことです。
多少の動かしにくさや痛みがありながらも「症状は一時的なものだ」「このくらいなら大丈夫だろう」と考えてしまうこともあるかもしれません。
しかし棚障害であるにもかかわらず運動を継続した結果、重症化してしまうケースもゼロではないため注意が必要です。
症状が重症化したあと稀ではありますが、手術も選択肢となり治療期間も長引くことになるため、違和感等を感じた際は、早めに医療機関や整形外科等を受診して専門家の判断を仰ぐべきです。
非手術的療法
非手術的療法は、滑膜の盛り上がりが大腿骨の前面を覆わない程度の場合に効果的と言われています。
非手術的療法には、以下のような種類があります。
- 物理療法:電気、超音波、レーザー、温熱を用いる
- 膝の活動調整:膝に負担のかかりにくい動かし方を指導する
- 装具の使用:膝の装具を使用し動きを矯正する
非手術的療法で膝の筋力を増加させたり、膝の使い方を見直したりすることで、棚障害の治療を行います。
薬物療法
棚障害の症状が軽いときには、湿布を貼ったり、炎症を抑える薬を内服したりといった薬物療法を行うケースもあります。
棚障害は、運動をやめる又は、減らして安静を保ちつつ、ストレッチや湿布等での冷却をはかり、大腿四頭筋の筋力維持訓練など、膝への負担を減らせば症状は落ち着きはじめます。
現在現れている症状を、医師に十分に説明しましょう。
関節内注射
膝の関節内にヒアルロン酸を注射して関節の動きを良くしたり、ステロイド剤を注射して滑膜の炎症を抑えたりすることで痛みが引くこともあります。
関節内注射の効果は永続的ではないため、他の治療法と組み合わせて用いられます。
手術療法
手術による治療が必要になった場合は関節鏡手術という関節の内視鏡を用いて行い、『ひだ』の切除を行います。
手術自体は20分程度で終わることが多いですが、手術による傷の確認や、腫れや副作用の確認のために入院治療が必要です。
入院期間は2日から1週間程度で行われることが多いですが、手術後の経過によって前後します。
手術の傷口が感染してしまった場合などは、再び手術が必要になってしまうこともあります。なお、手術が成功すれば、すぐに運動に復帰できるかというと、そうではありません。
リハビリが必要になるからです。運動に復帰するためには、およそ2週間から数カ月のリハビリを覚悟しなければなりません。
さらには、リハビリを行った後でも、元々のパフォーマンスがすぐに発揮できるまでは、さらに時間を要することが多いです。
リハビリテーション
痛みや炎症を抑えたあとには、リハビリテーションを行い筋力をつけたり、バランスを整えたりすることで再発を防げます。
棚障害のリハビリテーションでは、運動療法やストレッチ、バランス訓練を行い、筋肉の増強や柔軟性の向上を目指します。
主には大腿四頭筋やハムストリングスを強くする筋力トレーニングや、片足立ち、スクワットなどを医師、理学療法士の指示に基づき行います。
棚障害が重症化した場合は運動を休止し、湿布や内服、注射などの治療を開始しても痛みがひかないことが多いです。また、痛みが一時的にひいても、運動を再開したときにすぐに痛みが再発してしまう可能性もあります。
棚障害の予防やセルフケアの方法
棚障害の予防には、膝に負担をかけすぎないことが大切です。
ウォーミングアップを行い、膝周辺の筋肉を温めてから運動をしましょう。
また日頃から膝関節付近の筋肉増強に努めたり、柔軟性を向上させたりするのも効果的です。とくに大腿筋を鍛えることで、バランスが安定し、棚障害が起こりにくくなります。
また、棚障害があっても試合や練習に参加しなければいけない場合には、テーピングで膝への負担を和らげるようにしましょう。
そして、動いたあとにはアイシングを行い、膝関節を休ませる必要もあります。
日頃から棚障害を起こさないよう気をつけること、また適切なセルフケアで重症化を防ぎましょう。
まとめ|棚障害は我慢して運動を続けず、早期の受診を!
「棚障害(滑膜ひだ障害)」は膝の病気で運動選手によく起こる病気の一つで、滑膜の炎症が原因で起こります。
軽症のうちは手術を要することは少なく、安静・薬の内服などの治療を行います。
しかし治療せず痛みや動かしにくさを我慢して運動を続けると、重症化して手術が必要になることもあります。
手術した後は、リハビリを行う必要があり、すぐに運動に復帰することはできません。軽症なうちに運動を休む期間よりも、長い期間、運動ができなくなってしまいます。
いずれにしても膝の周囲の筋力強化と柔軟性を保つためのストレッチは欠かさず行うようにしましょう。
長い期間、休まないといけないのは、運動選手にとって致命的になってしまうことも少なくないでしょう。症状が気になる人は我慢して運動を続けようとせず、早期に病院を受診して治療を受けるようにしましょう。
また、当院「リペアセルクリニック」では、棚障害を含む膝の痛みの治療として再生医療を行っています。
この記事が、棚障害の治療に悩む方の参考になれば幸いです。
また、スポーツによって膝の痛みを起こす慢性障害については、以下の記事もご覧ください。
棚障害についてよくある質問
棚障害と半月板損傷の違いは何ですか?
棚障害と半月板損傷は、いずれも膝の痛みが起こる疾患ですが、原因となる部位が異なります。
棚障害は膝の内側にある「滑膜ひだ」と呼ばれる部位の炎症ですが、半月板損傷は、膝関節の内側と外側に一枚ずつある「半月板」と呼ばれる部位が炎症を起こすことで起こります。
棚障害は冷やした方が症状が和らぎますか?
棚障害には、冷却を含む「RICE処置」が効果的です。
RICE処置とは、応急処置のやり方の1つで、以下の頭文字をとったものです。
- Rest(安静):なるべく動かさない
- Ice(冷却):痛みや熱を持っている部位を冷やす
- Compression(圧迫):適度に圧迫する
- Elevation(挙上):患部を心臓よりも高い位置に置く
強い痛みがあったり患部が熱を持っていたりする場合は、上記を試してみてください。