再生医療・幹細胞の凄さ!!PS細胞、ES細胞も徹底解説!
2020.05.27【再生医療・幹細胞の凄さ!】IPS細胞、ES細胞も徹底解説!
解説/リペアセルクリニック東京院:医師 坂本貞範
はい、みなさんこんにちは。Dr.サカモトです。
本日は再生医療についてお話したいと思います。
再生医療という言葉はみなさん、テレビとか、新聞などで何回か聞いたことがある人が多いと思うのですが、ただ再生医療って、いったいどんなものかというものが、いまいち分からないと思います。
今日はその再生医療について少し分かりやすく説明したいと思います。
まず再生医療の話をするにあたって「幹細胞」というキーワードが大切になってきます。
幹細胞という文字は木の幹と書きます。
木の幹があって枝や葉が分かれていて、それぞれ枝に神経や筋肉や血管などができるという意味で、幹細胞の幹は枝の幹というところを例えられていると思います。
顕微鏡で見るとこのような細胞の形になっています。幹細胞の力についてですが、まず「トカゲの尻尾切り」というものに例えると分かりやすいと思います。
トカゲの尻尾は1度切れてしまっても数日するとまた生えてきます。これも「幹細胞の力」で再生されます。
あと身近なものでは、みなさん手の指の怪我や骨折などは1度経験したことがあるかもしれませんが、その際にも指の傷に自然にかさぶたができてまた元通りになります。
これは実は、皮膚の中に幹細胞があるからです。骨折したものが3~4週間経つと新しい骨ができます。
これも骨の中に幹細胞があるという証拠です。
このように幹細胞というものは実は私たちの体のいたるところに存在しています。全身にある様々は幹細胞について、例えば皮膚の中、脂肪の中、脳の神経の中、骨の中、もちろん肝臓や内臓にも見つかっています。
このように幹細胞は体の至る所に存在します。
みなさん幹細胞というものは「iPS細胞」や「ES細胞」というものを1度は耳にしたことはありませんか。
具体的にiPS細胞・ES細胞というものがどういうものかを説明していきたいと思います。
まずiPS細胞なのですが、iPSというものは自分の皮膚から細胞を取り出し、そこに遺伝子の操作を加えていくと人為的に作られた万能細胞であるiPS細胞が出来上がります。
この万能細胞というものは先ほど話した幹細胞とは少し違って、幹細胞よりももっといろいろなものに変化できる細胞です。
つまり、幹細胞はiPS細胞ほど、たくさん色々なものに変化しないのですが、iPS細胞は色々なものに変化することができる可能性がある細胞です。
あとES細胞は、受精卵を使って操作して作られた細胞です。
つまりこれも受精卵からできたものなので、iPS細胞と同じように色々なものに分化できる万能細胞と言われています。それではiPS細胞、ES細胞、幹細胞のこの3つの違いをこちらの表で比べていきましょう。
まず先ほどお話したように、iPS細胞とES細胞は万能細胞と言われるものです。つまり、色々な組織や血管、神経などに分化できる可能性が高いということです。
それともう1つの幹細胞は私たちの体に潜んでいる細胞です。
幹細胞はiPSやESの万能細胞より分化能力は低いのですが、ある一定のところまでは組織として変化できる細胞です。
iPS細胞とES細胞は幹細胞よりも色々なものに分化できるという特徴がありますが、倫理面ではどうでしょうか。
まずES細胞は受精卵から作られるということで、倫理上の課題があります。その点iPS細胞や幹細胞は自分の体で作成できるので、特にその問題はありません。
そして、iPS細胞とES細胞については、分化する途中で腫瘍化するという可能性もあります。まだこの点については研究段階なので、実際に臨床で患者さんに使われるということはまだできていません。
一方この幹細胞は腫瘍化するということはありませんので、現在でも患者さんに臨床で使われています。
続いて幹細胞の能力についてお話します。
例えば自分の指に傷ができたとき、その傷の中の幹細胞が自分自身を増やす自己複製能力というものがありますので、幹細胞を自分自身でたくさん作ります。
そして幹細胞の能力として分化する能力を使って、このたくさんできた幹細胞が皮膚の組織に置き換わります。そうすることで、たくさんの幹細胞が皮膚に血管を張って傷が治るという仕組みになっています。
このように幹細胞の能力というもので傷ついた組織を修復したり新しく失ったものを再生したりすることができます。
現在進められている再生医療の研究なのですが、例えば足の血管が詰まってしまうASOバージャー病というものが再生医療で血管の通りをよくするということもされています。
その他やけどの方の皮膚の再生や、目の網膜の再生、近頃では心臓の筋肉のシートを作成してそれを移植する手術など、様々な分野で研究がなされています。
再生医療というものには厚生労働省の届出が必要です。厚生労働省の届出には3種類存在します。まず第1種がiPS細胞やES細胞によるもの。第2種は幹細胞によるもの、第3種は主にPRPを使った治療です。
この3つに分かれます。
当院を含め、再生医療を行えるクリニックは、この第2種と第3種を使った治療をしています。再生医療の治療の流れですが、脂肪の細胞の中にある幹細胞を使った再生医療が主に行われています。
当院では、ちょうどおへその横のお腹に約5mmぐらいを切開して、そこから米粒2つか3つぐらいの脂肪を取るだけで、その中の幹細胞を取り出します。
その幹細胞を1億もしくは何千万個と約4~6週間くらいをかけて培養で増やしていきます。例えば膝の変形性関節症であれば、この増やした幹細胞を膝の関節に注射をするだけです。
その他糖尿病などの疾患に関してはこの幹細胞を点滴で注射をしていきます。
このように再生医療の治療の流れでは、麻酔をかけて手術をしなければいけないとか入院しなければいけないということもなく、日帰りで簡単に治療をすることができます。
続いて従来の治療と再生医療の違いについてお話していきたいと思います。
再生医療の第3種の「PRP治療」ですが、これは自分の血を採血して、遠心分離機にかけてそれを抽出したものの中の成長因子というたくさん栄養素が詰まったところを取り出して、痛めた場所に注射をします。
そうすることによって、炎症が取れたり組織の回復を早めることができます。
ただ、幹細胞の治療と違って、細胞が入っていないので組織の再生、例えば軟骨が増えるという作用はありません。
あと幹細胞の第2種の治療ですが、直接血管に注射をすることにより、全身に幹細胞を巡らせるという治療があります。
この静脈注射による治療によって、例えば「脳梗塞・脳出血」などの「脳卒中の回復」、その他「糖尿病による膵臓の回復」、「心臓病やパーキンソン、認知症」などにも効果があると言われています。
こちらのレントゲンは当院で治療された患者さんの写真なのですが、変形性膝関節症と変形性股関節症の患者さんです。レントゲンで見るとかなり変形が進んでおり、従来ではヒアルロン酸の注射が効かなかった場合、人工関節が選択されます。
ただ、患者さんは「手術をしたくない!」ということで再生医療をしました。
この方たちには幹細胞を取り出して、それを4~6週間培養し、5000万個から1億個に増やした幹細胞を膝に注射をし、そしてもう1人の方は股関節に注射をしました。
注射をすることによって、約1~2か月ぐらいから、徐々に痛みが取れて、半年や1年後ぐらいには、最初の痛みが中10だったとすると、どんどん1か2の痛みで日常生活が送れるようになりました。
このように幹細胞の注射で劇的に痛みがとれて人工関節をしなくて済むということは、今までの保険診療では全く考えられなかったことです。
幹細胞の可能性というものはとても期待できるものではありますが、ただ保険が全くきかないということが現状です。
従来のヒアルロン酸注射や人工関節の手術などといったものはもちろん保険が適用となりますが、この幹細胞による再生医療は今のところ保険の適用はありません。
例えばPRPは濃度によって値段が違うのですが、大体10~15万円くらいします。
幹細胞による膝の関節の治療については、大体100万円前後はすると思われます。
さらに点滴として、血管に入れる静脈注射による幹細胞の治療になると、おそらく200万円以上はすると思われます。このように高額ではありますが、従来の保険診療ではできなかったことが再生医療ではできる可能性がとても高くなっています。
今回は再生医療についてと、再生医療のメリットデメリットについてお話しました。
あと再生医療について何かわからないことがあればこちらまでお問合せください。
本日は再生医療についてお話しました。ありがとうございました。
幹細胞の自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした再生医療は最先端の医療です
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