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- 膝部、その他疾患
- ひざ関節
膝関節捻挫の症状と原因、治療法を解説 膝をグキッとひねってしまい「歩くと痛い」「曲げ伸ばしすると痛い」という経験がある方も多いのではないでしょうか? 捻挫というと、足首の怪我を想像される方が多いと思いますが、膝にも捻挫が起こることがあります。 今回は「ぎっくり膝」と呼ばれたり検索されることもある、膝関節捻挫について解説します。膝関節捻挫には、重症な怪我が隠れている場合もありますので、膝を痛めた方はぜひ今回の記事を参考にしてください。 膝関節捻挫の原因 膝の曲げ伸ばしを安定して行うために、重要な働きをしているのが、関節を包む袋である「関節包」と関節を支える組織である「靭帯」です。関節包と靭帯がしっかりと機能しているおかげで、私たちの膝は本来動かない方向へ曲がらないようになっており、体重をかけても安定して歩くことができます。 しかし、運動中や転倒などにより関節が、通常の範囲を越えて動いてしまうことがあります。それよって、この「関節包」や「靭帯」を痛めてしまった状態を捻挫といいます。ただし、「捻挫」は軽症の場合に限ります。損傷が強く、関節が不安定になった場合は捻挫ではなく、靭帯損傷という診断になります。 多くは、スポーツ時に膝をひねったり、相手と接触して転倒してしまったりした際に起こりますが、普段の生活でも階段やちょっとした段差などで、思いがけず膝をひねってしまい受傷することがあります。 膝関節捻挫の症状 受傷直後は痛みが強いですが、機能は比較的保たれている事が多く、その後も痛みを我慢して普通に生活できる方もいます。ですが、徐々に内出血とむくみが出てきて、膝全体が腫れてきます。 膝全体が腫れると、膝を動かす際に痛みが生じます。また、左右を比較すると動かせる範囲が減ってしまう「可動域制限」がでてきます。ひどい場合は痛みで足が地面に付けないこともあります。 ただし、「捻挫」であれば、一時的な症状であり、数日で改善してきます。いつまでたっても痛みが引かない、腫れがひどくなってきたという場合は「靭帯損傷」のレベルまでいっていることがありますので、注意が必要です。 「歩けるけど痛い」、「膝がぐらぐらして不安定」は要注意! 「ただひねっただけだと思って様子を見ていたら、実は靭帯損傷だった。」という方は意外と多いです。 膝には主に4つの重要な靭帯があります。前後方向の安定性を保つ前十字靭帯と後十字靭帯、左右方向の安定性を保つ内側側副靭帯と外側側副靭帯です。これらはバスケやサッカーなどのスポーツはもちろん、転倒などでも痛めることがあります。 歩けるけれども痛みが続くとき、膝がぐらぐらして不安定だと感じるときは、これらの靭帯を痛めていることがあります。また、靭帯を痛めていると関節の中に血が溜まることが多いです。このような場合は自己判断せずに病院を受診しましょう。 また、膝のクッションや安定性を保つ役割をしている組織に、半月板があります。半月板は左右に1つずつありますが、こちらも膝をひねって痛めた際に損傷してしまうことがあります。年を取ると、徐々にすり減って切れやすくなるので、高齢の方はバスのステップなど少しの段差を下りただけでも切れてしまうことがあります。ブチッという感覚がある方もいます。半月板損傷も、病院でMRIなどを撮影しなければわからない怪我です。 捻挫には、このような損傷が隠れている場合がありますので、是非皆さんも知っておいてください。 膝関節捻挫の治療 膝をひねってしまったら、受傷直後は、まずRICE処置を行いましょう。 Rest:安静 Ice:冷やす Compression:圧迫 Elevation:挙上 スポーツはすぐに中止し、歩行もできればしない方が望ましいです。氷や保冷材などを使って膝を冷やしながら、包帯などがあれば圧迫してください。 また、寝ているときは心臓より高い位置に足をあげておくことで、膝が腫れてくるのを予防することができます。その後は、なるべく早期に整形外科医の診察を受けてください。 膝関節捻挫の診断 問診と身体診察で、どのような怪我が疑わしいのか予想がつく場合もあります。基本的には、まずレントゲンで骨折がないかどうか確認します。レントゲンだけではわからない場合は、骨をより詳しく見るためにCT検査を行うこともあります。その後、靭帯損傷や半月板損傷が疑われる場合にはMRI撮影を行うことになります。 レントゲン撮影 → CT検査 → MRI撮影 検査の結果、手術が必要な靭帯損傷などの疑いがなければ保存療法になります。 損傷された関節包や靱帯が修復する期間は、通常3週間前後とされることが多いです。この期間は、激しい運動や重労働などはせず、安静にしていましょう。安静を保つ目的で、一定期間添木や松葉杖などを使用することもあります。 痛みが強い場合は、飲み薬や湿布を処方することもありますが、鎮痛薬は痛みを止めるだけで治ったわけではないので、一番大事なのは膝の安静です。 そのまま通常の生活に戻れる場合は、治療終了となりますが、安静にしていたことによって筋力が低下したり、動きが悪くなることがあります。その際は、リハビリテーションを行い、機能を戻すとともに、次の怪我をしにくくする予防を行うことが大切です。 膝関節捻挫についてのQ&A Q1:膝関節捻挫の予防法はありますか? 運動をされる場合は、適切なストレッチやウォーミングアップが大切です。筋肉の柔軟性を保ち、温めてしっかりと動かせる状態にしてから運動を始めることで、関節に負担がかかりにくくなります。 また、普段から、下肢の筋力が衰えないように意識してトレーニングをしておくことも重要です。さらに、自分の足に合った靴を選ぶことも転倒の予防になります。 Q2:スポーツにはどのくらいで復帰できますか? スポーツ復帰には、痛みがなくなっていることが大前提です。痛みがあるまま再開すると、膝をさらに痛めたり、かばって別の部位の怪我を起こしたりすることがあります。 通常の捻挫であれば2〜3週間で痛みが落ち着いてくることが多いので、軽い運動から再開するように指導します。 膝に過度な負担をかけないよう、自分自身が意識するためにもサポーターなどの補助具を使用することも勧められます。 まとめ・膝関節捻挫の症状と原因、治療法を解説 今回は膝関節捻挫について解説しました。 捻挫は適切な治療を行えば、問題なく日常生活に復帰できる怪我です。その裏に潜む重大な怪我を見逃さないように、適切に医療機関を受診しましょう。 No.S148 監修:医師 加藤 秀一
2023.08.28 -
- 関節リウマチ
関節リウマチでやってはいけないこと 関節リウマチは、自己免疫疾患とみなされる炎症性疾患です。特定の食品や飲料を除去すること、また特定の運動や生活様式を避けることは、関節リウマチの人々の症状を緩和し、全体的に生活の質を向上させる可能性があります。 この記事では、関節リウマチを患っている場合に避けるべき飲食品、また生活様式を紹介します。 関節リウマチでやってはいけない!避けるべき食料品とは まず、関節リウマチには症状を悪化させる可能性のある飲食品があります。それについてご紹介しましょう。 砂糖に注意 砂糖の摂取は、元気な人であってもある程度の制限はすべきですが、関節リウマチを患っている場合は特に注意が必要です。 217人の関節リウマチを有する患者を対象とした、自己申告による研究では、20種類の食品のうち、砂糖入りの炭酸飲料とデザートを摂取することが、関節リウマチの症状を悪化させることと関係があると、報告しています。 (出典: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5563270/ ) さらに、約19万人の女性を対象とした大規模な疫学調査では、毎日1缶程度以上の砂糖入り炭酸飲料を摂取している人は、全く飲まない、あるいは毎月1缶未満程度しか摂取しない人に比べ、リウマチ因子陽性の関節リウマチを発症するリスクが63%上昇していました。 (出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5563270/) (出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4135503/)。 つまり砂糖は、「関節リウマチの悪化因子」であるだけなく、「発症リスクを高める因子」でもある可能性があるということです。なお、砂糖は、キャンディー、炭酸飲料、アイスクリームだけでなく、バーベキューソースやドレッシングなどのようにあまり目立たない食料品にも含まれているので注意が必要です。 加工肉と赤身肉に注意 赤身肉や加工肉も、関節リウマチを悪化させる可能性のある食品として知られています。 前述の217人の関節リウマチ患者を対象とした研究でも、赤身の肉は共通して関節リウマチの症状を悪化させることが分かっています。 (出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5563270/) さらに、約2万5千人を対象に詳しく調査した研究でも、赤肉の大量摂取は関節リウマチの危険因子である可能性があると判定されています。 (出典:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/art.20731)。 高度に加工された食品に注意 ファーストフードや朝食用シリアルなどの加工食品は、精製された穀物や砂糖、保存料、その他炎症を引き起こす可能性のある成分を多く含んでおり、すべて関節リウマチの症状を悪化させる可能性があります。 また加工食品を多用した欧米型の食生活は、炎症や肥満などの危険因子を助長し、関節リウマチの患者における心筋梗塞や脳卒中など、心血管系の疾患を発症する可能性が高くなることもわかっています。(出典:https://link.springer.com/article/10.1007/s10067-019-04916-4) 特定の植物油に注意 植物油に多く含まれる「オメガ6系脂肪」が多く、魚油やエゴマなどに含まれる「オメガ3系脂肪」が少ない食事は、関節リウマチの症状を悪化させることがあります これらの脂肪は健康維持に必要なものです。しかし、西洋系の食事に含まれる油はオメガ6系が多く、オメガ3系が少なすぎるため、双方の比率がアンバランスとなり、炎症が増加する可能性があります。 (出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5817233/)。 植物油などのオメガ6系脂肪を多く含む食品の摂取を減らし、脂肪分の多い魚などのオメガ3系脂肪を多く含む食品の摂取を増やすと、関節炎の症状が改善される可能性があります。 関節リウマチでやってはいけない!避けるべき運動や生活様式とは 次に、関節リウマチの方の症状を悪化させる可能性のある運動や生活様式をご紹介します。 過度な運動は避けましょう 関節リウマチの方々に、適度な運動は推奨されています。しかし、痛みを堪えなければできないほどの過度な運動は避けるべきです。 よく関節リウマチの方が痛みを訴えると、安静にすることを指導されます。しかしここでいう「安静」とは「まったく動かさない」」ということではありません。 むしろまったく運動しないことによって、各関節を支える筋肉の力が低下したり、筋肉が萎縮したりして、結果として関節が固まってしまって動かせなくなってしまう、拘縮を生じることがあります。 そこで手足の筋力や関節の可動域(動かせる範囲)を維持するために、適度な運動を行うことはとても重要なことです。 ただ関節が腫れたり、熱感があったりするときは、内服だけでなく冷湿布をし、安静にし、重い荷物を長時間持ったり、長時間歩いたりなど、関節に負担がかかることは避けるようにしましょう。 関節リウマチは、関節だけでなく全身が消耗する病気です。そのため、全身と関節の安静が必要です。夜、十分な睡眠をとるとともに、日中も疲れたら休憩や昼寝など適時休息をとることが大切です。心身の疲れを溜め込みすぎないように心がけましょう。 体や関節を冷やしすぎてはいけません 関節を冷やしすぎると関節痛が強くなったり、関節が動かしづらくなったりすることがあります。 寒い時期だけでなく、夏の時期も冷房の風が直接あたるのを避け、長袖や長ズボン、ブランケットなどで関節部位の保温を心がけましょう。ただし、関節が腫れて熱感があるときは、関節の炎症が起きている可能性もがありますので、その際は温めないようにしましょう。 首に負担のかかる行動を避ける 関節リウマチは、進行すると頚椎の炎症を起こし、頸部痛や頸部の運動制限を来します。そのような状況で、過度に首に負担がかかる行動をすると、頚椎の亜脱臼を起こして脊髄神経を圧迫し、四肢の痺れや麻痺、また呼吸障害をきたす可能性があります。 したがって、朝はできる限りベッドから急に立ち上がらず、一度腰を掛け間を置いて立つ習慣をつける。そして朝は不用意に首を回さないようにすることです。 また運動する時も首の運動は原則として禁止しましょう。首の骨に異常のないことが医師の診察のもと確認できていれば、指導を受けながら首の運動をすることは構いません。 まとめ・関節リウマチでやってはいけないこと 関節リウマチを患っている場合、健康的な食事とライフスタイルが症状の改善に役立つ可能性があります。加工度の高い食品、赤身の肉、揚げ物、砂糖を多く含む食品など、特定の食品や飲料を避けるべきであることがお分かりいただけたのではないかと思います。 是非、少しでも健康的な生活を送ることができるよう、この記事を参考にしていただけましたら幸いです。以上、関節リウマチでやってはいけないことについて記させていただきました。 No.085 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療の幹細胞治療に関する詳細は以下をご覧下さい 当院の再生医療は、自己脂肪由来の幹細胞治療を推進しています
2022.08.19 -
- ひざ関節
膝の裏が痛む、腫れる!ベーカー嚢腫の原因と治療について はじめに ベーカー嚢腫という病気をご存知でしょうか?!この病気について、あまり聞いたことがない方も多いと思います。しかし、ベーカー嚢腫は膝の病気で誰でも起こる可能性があり、治療が遅れると重症になりうる病気です。 日常生活の中で『膝に違和感を感じる』という経験をされたことはありませんか?膝の違和感と言っても、運動後に違和感を感じたり、何もしていないのに徐々に痛みが悪化してきたり、膝の違和感と一口に言っても症状は様々です。 その中で「膝の裏が腫れたり」「曲げた際に違和感を感じたりする」場合や、膝を伸ばしたときに「膝の裏に痛みを感じる」ようなときにはベーカー嚢腫の可能性があることを知っておきましょう。 ベーカー嚢腫の疑い ・膝の裏が腫れる ・膝を曲げた際に違和感を感じる ・膝を伸ばすと膝の裏に痛みを感じる ベーカー嚢腫とは ベーカー嚢腫は、膝の関節の隙間の裏側に袋ができて、その中に滑液という、膝の動きを滑らかにしている液体が溜ることで起こります。激しい運動などで膝を使いすぎたり、関節リウマチや変形性関節症といった病気が誘引となって膝の関節の中にある関節液が大量に作られたことで袋の中に滑液が溜ることがあり、それが原因でベーカー嚢腫ができると言われています。 そのため、ベーカー嚢腫は、関節リウマチや変形性関節症の起こりやすい50代~70代によく生じます。しかしながら、ベーカー嚢腫は、原因が不明なこともあり、若いからと安心もできません。年齢関係なく、誰でも起こりうるものなのです。さらに、4歳~7歳くらいの子供にもできることもあります。 ベーカー嚢腫の症状と検査 ベーカー嚢腫の症状としての特徴は、最初の頃は「痛みがない」ことが多いというのが特徴の一つです。 最初は、膝の裏が腫れたり、曲げたときに、なんとなく違和感や不快感を感じる程度のことが多くあります。この初期段階で終われば腫れが自然に小さくなることがあり、違和感が自然となくなることも少なくないです。 ただ、注意すべきは初期の症状は、膝の違和感程度で、痛みがないため放置されることが多くあることです。しかし、治療せずに放置していると、しだいに腫れが大きくなります。 膝の裏の腫れがニワトリの卵くらい大きくなると、膝を曲げようとした際や、正座をしようとしたときに、引っかかるような感じがして、姿勢を保てなくなります。 さらに悪化すると、滑液を包んでいる袋が破裂することがあります。袋が破裂すると関節液が漏れ出てきて、周りの組織が炎症を起こしてしまったりします。すると、膝の腫れがさらにひどくなったり、腫れが熱をもったり、痛くなったりします。 診察では、変形性関節症や関節リウマチなどの病気が合併していないか調べることが大切になりますです。また医師による触診や、超音波検査やM R I検査などの精密な画像検査を行い、大きさや位置の正確な評価が行われます。 ベーカー嚢腫の治療 ベーカー嚢腫の治療方法は、合併している疾患の有無や、ベーカー嚢腫の大きさや重症度によって大きく変わってきます。 関節リウマチや変形性関節症などが合併している疾患があるときは、基本的にその治療を行うことがベーカー嚢腫の治療にもつながります。合併している病気の治療が進まないとベーカー嚢腫の治療が進まないことも多く、治療しても再発を繰り返してしまいます。 合併している病気の症状が落ち着いているときや、合併している病気がないときは、ほとんどの場合では手術を行わなくても治療が可能なことが多くあります。 手術を行わない際の治療としては、湿布を貼ったり、炎症を抑えるような薬を内服したりします。また、袋の中に関節液がたくさんたまっているときは、注射器により関節液の吸引を行います。吸引を繰り返してもベーカー嚢腫が頻回にできてしまう際や、周囲の組織に炎症を伴うときはステロイド剤の注射を行うこともあります。 治療が遅れて炎症が激しくなってしまったときや、治療を行っても、なかなかよくならないときは手術による治療が行われます。 手術を行う場合は、膝の裏を2cm程度切り開いて行います。手術方法としては袋を取り出したり、関節から嚢腫へ関節液が漏れ出している穴を塞いだり、様々な方法がありますが、いずれの手術も全身麻酔で行われます。 手術を行う場合は手術後の感染や麻酔によるアレルギーなどの副作用の確認を行うために入院による治療になります。入院期間は1~2週間のことが多いのですが、合併症の有無など、術後の経過によって前後します。 ただ、残念なことに手術をした場合でも、再びベーカー嚢腫ができてしまうことも少なくありません。膝の裏には神経や血管がたくさんあって、すべての袋を取り除くのは難しいからです。 まとめ・膝の裏が痛む、腫れる!ベーカー嚢腫の原因と治療について ベーカー嚢腫は、初期には痛みなどがなく、自然に小さくなることもあるので、放置してしまうことも多い病気です。しかし、症状が悪化したりすると、重症になって手術が必要な状態になることもあります。 手術には入院が必要で、入院は、誰しも望まないものだと思います。最近では感染対策で入院中での面会が制限されている病院が多く、家族や友人に会えず、寂しく辛い経験をされる人も非常に多いと聞きます。 そのためにも治療が手遅れになる前に、膝の裏に違和感を感じたら、自分判断で判断したり、放置せずに、病院等、医療機関に受診し、専門家に診てもらうのことがよいでしょう。 以上、膝の裏が痛む!腫れるベーカー嚢腫の原因と治し方について記させていただきました。 No.074 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療の幹細胞治療に関する詳細は以下をご覧下さい 当院の再生医療は、自己脂肪由来の幹細胞治療を推進しています
2022.07.06 -
- 関節リウマチ
関節リウマチの治療|生物学的製剤は有効だけど副作用に気をつけて 関節リウマチで悩まれている人はいませんか?この関節リウマチの治療方法で使われる薬物療法も日々進歩を重ね、現在では「生物学的薬剤」による治療が行われるようになってきました。 そこで、今回は関節リウマチに悩んでいる人が知りたい以下の疑問点について解説してまいります ・生物学的薬剤は効果があるのか? ・生物学的薬剤はどの程度、効果を期待できるのか ・生物学的薬剤に副作用の心配はないのか 関節リウマチの治療で使われる生物学的薬剤とは 生物学的薬剤とは、科学的に合成されたものではなく、バイオテクノロジー技術を駆使して生体がつくる物質を薬剤として使用するものです。2003年から日本でも使われるようになりました。 これは、それまで使用されていた抗リウマチ薬で効果がなかった人にも効果があるなど、今では関節リウマチの薬物療法の切り札的存在になっていいる薬剤です。 今や多くの種類の生物学的薬剤が使われるようになってきました。使用に際しては患者さんの状態、「基礎疾患があるか」「高齢であるか」を踏まえて医師が適切なものを使い分けることで、より高い効果が期待できるようになっています。 医師が状態を鑑みて判断 ・基礎疾患があるか ・高齢であるか 効果|炎症を抑える 生物学的薬剤は、関節リウマチによる炎症を抑える効果を期待できるものです。関節リウマチは免疫の異常によって起こり、症状としては体内の細胞や組織を攻撃して炎症を起こし、腫れや痛みを生じさせるものです。 その際に、身体にはサイトカインという物質が多く分泌されていて、このサイトカインが炎症を広げていくことで更に炎症が悪化していくことになります。 これに対して生物学的薬剤は、このサイトカインの働きを抑える効果が期待でき、炎症を抑制し、関節リウマチの症状が悪化することを抑える効果があります。 効果|関節が破壊されるのを抑制 生物学的薬剤の大きな特徴は、関節リウマチによって関節が破壊されていくのを抑制する効果が優れている点です。関節リウマチは、免疫の異常によって起こり、炎症が生じると関節の内側を覆う滑膜が腫れあがり、関節や骨を破壊します。 生物学的薬剤は、この破壊を抑制する効果が期待できるのです。また、破壊を抑制するだけでなく、破壊された関節や骨を修復する効果も期待できることも分かってきています。 ただし、破壊された関節や骨が完全に修復されるというわけではなく、既に完全に破壊されてしまった関節や骨には効果が期待できません。つまり、生物学的薬剤による治療は、できるだけ早めに開始するのがおすすめです。 生物学的薬剤の効果 ・炎症を抑える ・関節の破壊を防ぐ ・崩壊した関節を修復(早期治療が条件) 関節リウマチ治療の生物学的製剤に副作用はあるか 生物学的製剤を使ったリウマチ治療はとても有効です。しかし、治療を受けてみようと思っている人なかには、副作用が心配だという人も少なくないでしょう。そこで、リウマチ治療に使用される生物学的製剤にはどのような副作用があるのかについて解説します。 また、副作用に対して自分で予防できることについても紹介します。 副作用|感染症に注意 生物学的製剤を使った関節リウマチの治療による副作用で注意したいのは「感染症」です。リウマチは免疫の異常によって、体内の組織や細胞を攻撃してしまうのが原因と考えられています。 そのため、免疫の働きを抑える効果がある生物学的製剤を使用するわけですが、免疫の働きを抑えると、体内に侵入したウイルスや細菌などを攻撃して身体を守るという免疫本来の働きも抑制されてしまいます。 その結果、肺炎や結核などの感染症にかかりやすくなります。そのため、仮に感染症になった場合は、治りにくくなってしまいかねません。こうした感染のリスクを抑えるために医療機関は、生物学的製剤の治療前に採血を行い感染症の原因となるウイルスや細菌の有無をチェックします。 これら感染症に対して自分ができる予防法としては、手洗いや、うがいを小まめに行ったり、マスクを付ける等があります。また、咳や熱が出たという場合は、症状が軽くてもできるだけ早めに医師に伝えることが大切です。 副作用|アレルギー 生物学的製剤を使ったリウマチ治療では副作用としてアレルギーが出る可能性もあります。例えば、生物学的製剤のなかの1つであるレミケードにはマウスのタンパクが含まれているので、それが体質に合わずにアレルギー反応が出ることがあります。 また、他の種類のエンブレルは人のタンパクなので、大きなアレルギー反応が出ることは、ほぼありませんが、それでも体質が合わずに「アレルギー反応」が出る可能性があります。 副作用|注射時 関節リウマチ治療での主な副作用は感染症とアレルギーですが、注射時に副作用が出ることもあります。関節リウマチ治療の生物学的製剤の投与方法には点滴注射や皮下注射がありますが、点滴注射では頭痛や発疹、皮下注射では注射箇所に赤みや腫れなどの症状が出ることがあります。 しかし、こうした症状が出た場合でも多くは一時的で、すぐに治まります。そのな場合、心配や不安があれば、すぐ医師に相談しましょう。 まとめ・関節リウマチの治療|生物学的製剤は有効だけど副作用に気をつけて 以上、関節リウマチの治療方法として生物学的薬剤に期待できる効果と副作用について紹介しました。生物学的薬剤は、従来使われていた抗リウマチ薬よりも高い効果を期待することができます。 しかし、治療を受けるのが遅れると期待するほど回復しないなど、思うような効果が得られないこともあるので我慢せずに早めに医療機関を受診するようにしましょう 関節リウマチ治療に使用される生物学的製剤の副作用について、副作用は必ず出るものではありません。医師も事前の検査で患者に合った生物学的製剤を使用するなど副作用のリスクを極力抑えた状態で治療を行います。 ただ患者自身も、どのような副作用があるかを把握しておくことは大切です。心配な症状が出たら、すぐに医師に相談できるからです。少しでもリスクを減らすために、医師に自分の状態をしっかりと伝える、そして予防できることはしっかりとおこなうことも大切です。 そして、関節リウマチは、早期治療が非常に大切です。身体や関節に異変、違和感を感じたら放置しないで早めに医療機関を受診することをおススメいたします。 No.S043 監修:医師 加藤 秀一
2022.02.25 -
- 関節リウマチ
関節リウマチは自らの免疫反応の異常で発症!注意したい初期症状と治療法 「関節リウマチ」という病気を耳にしたことがありますか。 この病気は、身体に自己免疫反応の異常で引き起こされます。関節内部には関節を覆っている滑膜と呼ばれる場所に炎症が引き起こされて起こります。 この病気は、 すでに1980年代の時点で確認されていて、発症すると数年以内に関節を破壊し、症状を変化させながら進行していくことが報告されています。しかも1990年頃まで、この関節リウマチに対する有効な薬物治療が存在しませんでした。 関節リウマチは進行すると関節の破壊を伴いながら骨格系の機能障害を引き起こし、日常生活における動作や、能力を極めて低下させていくやっかいな病気です。 現在のところ、わが国では人口の約1%程度の方に発症する可能性があるとされる全身性の自己免疫疾患であり、男女比はおよそ1:3と、女性のほうが男性より多い病気と言われています。 今回は、放置すると危険な「関節リウマチ」という病気の症状や治療法を中心に解説してまいります。 関節リウマチとは、どんな病気なのか? 関節リウマチとは、関節を覆っている滑膜で炎症が慢性的におこり、患部に疼痛(痛み)や腫れ、そして関節の機能障害がおこった結果、身体的な構造に異常をきたしてしまいます。その結果として日常生活が制限され、社会活動への参加を制約せざるを得なくなる怖い病です。 そもそも自己免疫学的な面から滑膜部に炎症が起こってしまうと、滑膜が増殖して周囲の軟骨や骨組織を溶かしてしまうため、関節の患部に長期に渡って炎症がおこります。結果として変化が続き、関節の変形をきたし、関節機能に様々な障害が現れます。 関節リウマチは、本来であれば自分を守るはずの免疫機能が何らかの異常を起こし、関節部位に対して攻撃的に働くことで同部の疼痛(痛み)や炎症を引き起こすと考えられています。 なぜ発症するのか? 実は、詳しい発症原因は現代においても明確になってはいないのですが、どうやら先天性の遺伝的要因と、周辺の環境的要素が複雑に組み合わさって発症するのではないかと考えられています。 昨今の研究によりますと、関節リュウマチの発症に関しては遺伝的要因がおよそ10%程度関与しており、症状を発症しやすい遺伝子として、約100種類程度が存在すると考えられています。 その一方、発症リスクという観点(環境的な原因)として重要視されるのが喫煙歴です。それ以外にも歯周病や、慢性呼吸器感染症など免疫機構などからの複数の要因が挙げられています。 画像検査は、レントゲンを中心に行われ、患部の手足部を実際に撮影して骨の表面が欠けて欠損しているか否か、あるいは骨隙間の距離が縮んでいないかどうかを診断します。 関節リウマチの初期症状 さてここからは、関節リウマチの初期症状について紹介していきます。 一般的に知られている関節リウマチの主な症状としては、「関節のこわばり」や、「関節部の疼痛」に「関節の腫れ」があります。なお、関節のこわばりとは、関節が自分で思ったように動かない機能障害が起こっている状況です。 痛みを発症する関節部位は、全身の中で、あらゆる場所で生じる可能性がありますが、特に手首や手指の関節部で引き起こされる傾向があり、多くの場合には患部はたった一か所だけではなく複数で認めることができます。 もし仮に関節部の炎症が長期間にわたって継続されると、関節の軟骨や骨組織自体が少しずつ破壊されていき、病状が進行すると関節の変形や、関節の脱臼をはじめとして、関節が硬くこわばってしまい曲げ伸ばしが困難になるほどの変化を引き起こしてしまうことになります。 さらに、炎症が強くなると発熱や全身の倦怠感、また体重の減少や、食欲不振といった全身症状を伴うこともあるために日常生活に著しく支障を来すことになりかねません。 注意すべき初期症状 ・関節のこわばり ・関節の疼痛 ・関節の腫れ ・関節の機能障害 関節リウマチの治療法 関節リウマチの治療法は、「薬物療法」や「手術療法」が挙げられます。 それぞれの治療方法にメリットや、デメリットがあり、どれを選択するかは重症度や、合併症の有無、あるいは日常生活でいかに支障が起こっているかという不自由度の具合などを多角的に評価して判断することになります。 一般的には、関節リウマチにおける関節の破壊的な変化は、発症して概ね2年以内という期間で急速に進行することが判明しているため、いったん破壊されてしまった軟骨や骨関節は、元の正常な状態に戻すことができませんので、この疾患に対しては早期診断および早期治療が重要になります。 まずは、関節リウマチという病気がいかなるものかを理解して、適度な運動と安静のバランスを考えながら、食生活などを含めた規則正しい生活習慣を送ることが重要です。 前述した通り、喫煙歴や歯周病の有無が関節リウマチという病気の活動性に影響しているとも考えられているため、患者さんが喫煙している場合には、禁煙の指導を行うことも考えられます。 次に、薬物療法についてお話しします。薬物療法は、関節リウマチにおける治療の中心的存在となっており、関節リウマチ患者における関節部位の炎症を抑えて、症状改善を目指すために行います。 治療薬としては、まずは抗リウマチ薬や、生物学的製剤があります。 この生物学的製剤とは、生物が産生するたんぱく質などの成分を改良して作製された新薬です。目下のところ関節リウマチに対する治療薬として使用できる生物学的製剤は、8種類程度あると言われています。 生物学的製剤に関しては、特に関節破壊を抑制する効果が際立って優れていると言われており、関節リウマチの症状をより軽度な状態に改善して維持することが可能になりました。 また、患者様の中にはいろんな薬物療法などの治療を実施しても関節変形による機能障害が後遺症として残るような場合には、人工関節置換術や滑膜切除術などの手術治療が選ばれることもあります。 まとめ・関節リウマチは自らの免疫反応の異常で発症!注意したい初期症状と治療法 関節リウマチという病気は「自己免疫疾患」のひとつとして捉えられており、例えば手指や手関節部に炎症が起きて、同部に疼痛や変形、腫れが現れる病気です。 近年では、治療法も大きな変貌を遂げており、その大きな役割を担っているのは2003年に初めて登場した生物学的製剤です。 生物学的製剤は、免疫機構において重要な役割を果たす炎症性サイトカインという物質に直接的に作用することで関節リウマチの活動を抑えることができ、従来の他の薬剤に比較して有効性が高いと評価されています。 実際に医療機関などで患者さんが関節リウマチを疑われた際には、血液検査や画像検査と自覚的な症状を診断して総合的に専門医が判断することになります。 いずれにしても関節リウマチは、初期症状を覚えたら放置してはいけない病気です。関節に違和感に感じたら専門の医療機関を早めに受診してください。 何といっても早期発見、早期治療が大原則です。 No.s019 監修:医師 加藤 秀一
2021.12.10