膝の裏が痛む、腫れる!ベーカー嚢腫の原因と治療について
目次
膝の裏が痛む、腫れる!ベーカー嚢腫の原因と治療について
はじめに
ベーカー嚢腫という病気をご存知でしょうか?!この病気について、あまり聞いたことがない方も多いと思います。しかし、ベーカー嚢腫は膝の病気で誰でも起こる可能性があり、治療が遅れると重症になりうる病気です。
日常生活の中で『膝に違和感を感じる』という経験をされたことはありませんか?膝の違和感と言っても、運動後に違和感を感じたり、何もしていないのに徐々に痛みが悪化してきたり、膝の違和感と一口に言っても症状は様々です。
その中で「膝の裏が腫れたり」「曲げた際に違和感を感じたりする」場合や、膝を伸ばしたときに「膝の裏に痛みを感じる」ようなときにはベーカー嚢腫の可能性があることを知っておきましょう。
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ベーカー嚢腫とは
ベーカー嚢腫は、膝の関節の隙間の裏側に袋ができて、その中に滑液という、膝の動きを滑らかにしている液体が溜ることで起こります。激しい運動などで膝を使いすぎたり、関節リウマチや変形性関節症といった病気が誘引となって膝の関節の中にある関節液が大量に作られたことで袋の中に滑液が溜ることがあり、それが原因でベーカー嚢腫ができると言われています。
そのため、ベーカー嚢腫は、関節リウマチや変形性関節症の起こりやすい50代~70代によく生じます。しかしながら、ベーカー嚢腫は、原因が不明なこともあり、若いからと安心もできません。年齢関係なく、誰でも起こりうるものなのです。さらに、4歳~7歳くらいの子供にもできることもあります。
ベーカー嚢腫の症状と検査
ベーカー嚢腫の症状としての特徴は、最初の頃は「痛みがない」ことが多いというのが特徴の一つです。
最初は、膝の裏が腫れたり、曲げたときに、なんとなく違和感や不快感を感じる程度のことが多くあります。この初期段階で終われば腫れが自然に小さくなることがあり、違和感が自然となくなることも少なくないです。
ただ、注意すべきは初期の症状は、膝の違和感程度で、痛みがないため放置されることが多くあることです。しかし、治療せずに放置していると、しだいに腫れが大きくなります。
膝の裏の腫れがニワトリの卵くらい大きくなると、膝を曲げようとした際や、正座をしようとしたときに、引っかかるような感じがして、姿勢を保てなくなります。
さらに悪化すると、滑液を包んでいる袋が破裂することがあります。袋が破裂すると関節液が漏れでてきて、周りの組織が炎症を起こしてしまったりします。すると、膝の腫れがさらにひどくなったり、腫れが熱をもったり、痛くなったりします。
診察では、変形性関節症や関節リウマチなどの病気が合併していないか調べることが大切になりますです。また医師による触診や、超音波検査やM R I検査などの精密な画像検査を行い、大きさや位置の正確な評価が行われます。
ベーカー嚢腫の治療
ベーカー嚢腫の治療方法は、合併している疾患の有無や、ベーカー嚢腫の大きさや重症度によって大きく変わってきます。
関節リウマチや変形性関節症などが合併している疾患があるときは、基本的にその治療を行うことがベーカー嚢腫の治療にもつながります。合併している病気の治療が進まないとベーカー嚢腫の治療が進まないことも多く、治療しても再発を繰り返してしまいます。
合併している病気の症状が落ち着いているときや、合併している病気がないときは、ほとんどの場合では手術を行わなくても治療が可能なことが多くあります。
手術を行わない際の治療としては、湿布を貼ったり、炎症を抑えるような薬を内服したりします。また、袋の中に関節液がたくさんたまっているときは、注射器により関節液の吸引を行います。吸引を繰り返してもベーカー嚢腫が頻回にできてしまう際や、周囲の組織に炎症を伴うときはステロイド剤の注射を行うこともあります。
治療が遅れて炎症が激しくなってしまったときや、治療を行っても、なかなかよくならないときは手術による治療が行われます。
手術を行う場合は、膝の裏を2cm程度切り開いて行います。手術方法としては袋を取り出したり、関節から嚢腫へ関節液が漏れ出している穴を塞いだり、様々な方法がありますが、いずれの手術も全身麻酔で行われます。
手術を行う場合は手術後の感染や麻酔によるアレルギーなどの副作用の確認を行うために入院による治療になります。入院期間は1~2週間のことが多いのですが、合併症の有無など、術後の経過によって前後します。
ただ、残念なことに手術をした場合でも、再びベーカー嚢腫ができてしまうことも少なくありません。膝の裏には神経や血管がたくさんあって、すべての袋を取り除くのは難しいからです。
まとめ・膝の裏が痛む、腫れる!ベーカー嚢腫の原因と治療について
ベーカー嚢腫は、初期には痛みなどがなく、自然に小さくなることもあるので、放置してしまうことも多い病気です。しかし、症状が悪化したりすると、重症になって手術が必要な状態になることもあります。
手術には入院が必要で、入院は、誰しも望まないものだと思います。最近では感染対策で入院中での面会が制限されている病院が多く、家族や友人に会えず、寂しく辛い経験をされる人も非常に多いと聞きます。
そのためにも治療が手遅れになる前に、膝の裏に違和感を感じたら、自分判断で判断したり、放置せずに、病院等、医療機関に受診し、専門家に診てもらうのことがよいでしょう。
以上、膝の裏が痛む!腫れるベーカー嚢腫の原因と治し方について記させていただきました。
No.074
監修:医師 坂本貞範
当院の再生医療は、自己脂肪由来の幹細胞治療を推進しています