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離断性骨軟骨炎は再発する?再発リスクをリハビリで抑えるための治療と期間 離断性骨軟骨炎は、スポーツが原因で発症することが多い病変です。 もし発症した場合は、初期のうちに治療することで完治する確率が高くなりますし、症状が進行した場合でも、重症なものでなければ手術によって痛みや引っかかりを解消することができます。 一時的にスポーツをやめて安静にしていれば治る可能性が高いのですが、運動の再開時期を間違えると再発することもあり、軟骨の状態によっては選手生命を絶たれることもあります。 しかし、術後のリハビリを正しく行うことで再発リスクを下げることが可能になります。プロのスポーツ選手やプロを目指している人はもちろん、誰にとっても再発は避けたいものですよね。 今回は、この離断性骨軟骨炎の再発と再発予防、再発リスクを予防するリハビリについて解説していきます。 離断性骨軟骨炎の症状と治療 離断性骨軟骨炎は、初期の症状がほとんどありません。 違和感や痛みは、負荷がかかった肘や膝の関節軟骨表面に亀裂が入ったことで生じます。 離断性骨軟骨炎をそのまま放っておくと、軟骨がはがれ落ち、痛みが強くなります。はがれ落ちた軟骨の欠片は関節内を浮遊し、曲げ伸ばしに影響を及ぼし、動作の際に引っかかりを感じるようになります。 進行すると、引っかかりと痛みでスムーズな動きができなくなるため、スポーツを継続することが難しくなります。しかし、発症した原因となっている運動を休止することで病巣が修復し完治する場合もあります。 無理に運動を継続すると、手術が必要になったり選手生命を絶たれることになったりする可能性が高いため、肘や膝に違和感があったら運動は中止し、早く医療機関を受診し、医師の指示に従いましょう。 離断性骨軟骨炎は再発する 注意すべきは離断性骨軟骨炎は、一旦症状が治まっても再発することがあります。なぜなら、軟骨が普通の骨よりも再生しにくいからです。 実は、離断性骨軟骨炎の症状は安静にしていると落ち着いてくるため、もう治ったと勘違いする人が多くいます。しかし、その状態で運動を始めてしまうと、まだ安定していない軟骨に負荷をかけることになり、結果として再発してしまうのです。 しばらく運動を休んでいて痛みや、引っかかりがなくなったとしても、自己判断で運動を再開するのは非常に危険です。必ず、運動を再開する前には面倒でも医師の診察を受けて運動再開の可否を確認することが大切です。 大丈夫だろう・・・といった自己判断は、結果として治療期間を長引かせる可能性があるため、避けましょう。 離断性骨軟骨炎をリハビリで抑えるために 離断性骨軟骨炎のリハビリは、保存療法として行うものと、手術の後に行うものがあります。 子どもや軽症の患者さんは、ほとんどが保存療法での治療となるため、治療開始とともにリハビリを始めます。 離断性骨軟骨炎は、運動が原因の疾患ですので、痛みがある時は安静にしていることが一番です。しかし、症状が落ち着いて来たら、ある程度動かすことも必要になります。 離断性骨軟骨炎のリハビリ治療と期間 離断性骨軟骨炎は、軽症であればリハビリと安静中心の保存療法で治療が行われます。 また、離断性骨軟骨炎のリハビリ期間は、患者さんの年齢や症状の進行具合によって変わってきます。 約1~2カ月で痛みはやわらぎ、最低でも3か月の安静は必要です。3カ月以上保存療法を行っていても回復しない場合は手術療法が適応されることもあります。また、すでにに症状が進行しており、軟骨の状態が良くない場合は、リハビリより手術を先に行います。 手術は大体が関節鏡を使ったものになりますが、患者さんの状態によっては軟骨の移植など大がかりな方法になることもあります。 関節鏡下の手術の場合は、傷口が小さく回復が早いため、早期にリハビリを開始することができます。ただ、軟骨の修復は普通の骨と比べて時間がかかるため、無理に動かすことはできません。 離断性骨軟骨炎のリハビリは重要 離断性骨軟骨炎のリハビリは、可動域訓練や筋力トレーニングを中心に行います。 リハビリの際は、理学療法士から動かし方の指導やアドバイスがありますから、それに従って、肘や膝に負荷のかからない動作を身につけていきます。 リハビリを行うことは、自分の動きや姿勢の癖に気付くことにも繋がります。体に負担のかからない動作を知ることができるため、スポーツ再開後のトレーニングやストレッチにも役立ちます。 離断性骨軟骨炎の再発予防 離断性骨軟骨炎の再発を予防するには、運動の再開時期を勝手に決めないことがポイントです。 痛みがなくても軟骨はまだ不安定な状態ですから、きちんと医師の指示に従い、完全に治ってから運動を再開してください。 また、いきなり以前と同じレベルで体を動かすのは危険です。最初のうちは無理せず、少しずつ元に戻していくようにしましょう。 まとめ・離断性骨軟骨炎は再開時期を誤ると再発するため注意が必要 離断性骨軟骨炎は、安静にしていれば症状がなくなっていきます。しかし、それを完治したと思い込んでしまうと、再発しやすくなります。リハビリを正しく行うことで症状を和らげ、再発を防ぐことができます。 自分の姿勢や動作の癖を知ることは、その後の怪我を予防することにも繋がります。また、治療後はいきなり治療前と同じトレーニングをするのではなく、少しずつ運動を再開していくようにしましょう。 きちんと軟骨が修復されれば、離断性骨軟骨炎は治すことができます。痛みや引っかかりがなくなっても、運動の再開時期は必ず一度受診し、医師の指示に従うようにし、焦らず確実に治療しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.132 監修:医師 坂本貞範
2023.05.26 -
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スノーボード、スキーなど冬のスポーツで起こりやすい膝の怪我とは 冬のウィンタースポーツ!シーズンになるとスキーやスノーボードを楽しみにしていらっしゃる方も多いと思います。 ただ、これらのスポーツは、スピードが出るために転倒や、衝突の危険性があるスポーツですので怪我のリスクについては、十分に知っておく必要があります。 本記事ではウィンタースポーツで起こりやすいスポーツ外傷、ウインタースポーツで起こりやすい膝の怪我に焦点を当てて解説していきます。 冬のスポーツ!膝の怪我で多いのは前十字靭帯損傷と半月板損傷 スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツにおいては、膝の損傷、捻挫といった怪我が多く見られます。これは滑走中に膝を捻ってしまったり、ジャンプからの着地、転倒時に大きな負担がかかってしまうためです。 膝の怪我の中で最も頻度が多いのが、「前十字靭帯損傷」「半月板損傷」です。 そこで、これら起こりやすい怪我について詳しく見ていきましょう。 ◇前十字靭帯損傷 前十字靭帯とは、膝の関節の中にある靭帯のうちの一つで、膝関節を安定化させる働きをしています。前十字靭帯は主に膝の捻りと、前後方向のぐらつきを抑えています。 ◇症状 受傷直後は激しい痛みのため、その場から動けなくなることが多いです。その際に「ぶちっ」という筋肉が切れるような音が聞こえることもあります。 受傷直後に動けていた方でも、約70%に関節内血腫(関節内に血がたまる)が生じるとされており、時間が経過するとともに、痛みや腫れが強くなり、動くことが出来なくなっていきます。 2~3週間後には腫れや痛みは軽減されることが多いですが、下記のような症状が継続してみられることがあります。 前十字靭帯損傷の症状 ・膝の不安定感 ・膝が外れる感じがする ・膝に力が入らない ・膝がすぐ腫れてしまう ・膝が伸びない ・正座ができない 膝を使う動作、特にスポーツ競技中などの様々な動作で症状が出ます。 ◇診断 医師による診察や、レントゲン検査で骨折の有無を確認します。 MRI検査が靭帯の評価(靭帯の形状や靭帯の走行など)に有用です。 ◇治療 前十字靭帯損傷の治療法には、保存療法と手術療法の2種類があります。それぞれについてみていきましょう。 保存療法 大腿四頭筋などの筋力訓練を行ったり、必要に応じて装具を作成して日常生活やスポーツ活動への復帰を目指します。 しかし、この場合は靭帯が完治したわけではなく、日常生活で膝が安定せず、痛みが続く場合もあります。症状が残る場合は、半月板の損傷などの二次損傷を起こすリスクが高くなります。 以前はスポーツをしない場合は、保存療法を選択する場合も多かったですが、現在では膝の老化の進行を早める可能性があり、若年者でも手術を勧められることが多くなっています。 手術療法 靭帯は自然に修復されることはなく、再建術が行われます。再建術は膝の後内側にある屈筋腱を移植する自家移植が一般的に行われます。 手術後はリハビリが必須となりますが、術後10~12か月後に元のスポーツに復帰できることが多いです。 前十字靱帯損傷を放置すると、膝が安定性を失い、膝崩れといいガクッと崩れ落ちてしまったり、膝があらゆる方向に捻じれやすくなります。 前十字靱帯損傷によって膝が安定しない状態が続くと、クッションの役割をしている半月板や、関節軟骨に負荷が多くかかってしまいます。その結果、半月板損傷など二次的な障害が生じることがあります。 ・半月板損傷 半月板とは膝関節の大腿骨と脛骨の間にある線維軟骨のことです。内側と外側にそれぞれにあり、膝にかかる衝撃を吸収する働きがあります。 ◇症状 症状としては膝の曲げ伸ばしが困難になることが挙げられます。また、動かそうとしたときに激しい痛みを伴うこともあります。 重症の場合には、膝に水(関節液)が溜まり腫れてしまったり、激痛を伴って関節が動かせなくなる「ロッキング」という症状が現れ、歩行困難になることもあります。 ◇検査 医師による診察やMRIが行われます。また、状況に応じて、関節の中に内視鏡を入れて調べる、関節鏡検査を行う場合もあります。 ◇治療法 半月板損傷の主な治療法には、保存治療と手術療法の2種類があります。 保存療法 サポーターなどで患部を固定し、抗炎症薬などの薬物療法やリハビリなどを行います。保存療法を行っても痛みや、ロッキングなどの症状が続く場合には手術を行います。 手術療法 断裂部位の幅が 1 cm以上と大きい場合や、保存療法を行っても症状が持続する場合は手術療法が検討されます。 手術法には、損傷した部分を切り取る切除術と、損傷した部分を縫い合わせる縫合術の2種類があり、関節鏡を使った鏡視下手術を行います。 切除術の場合は、半月板を取り除くことで膝軟骨の消耗が進んでしまうことがあるため、近年では縫合術が選択されることもあります。ただし、損傷した半月板の状態によって縫合が難しいと判断された場合は切除術を行います。 手術後はリハビリが必須であり、スポーツへ復帰できるタイミングは、半月板切除術で約3ヵ月、半月板縫合術で約6ヵ月程度とされています。 まとめ・スノーボード、スキーなど冬のスポーツで起こりやすい膝の怪我 スキーや、スノーボードを行う際にはプロテクターを着用するようにしましょう。 これにより、怪我のリスクが格段に下がります。また自分の実力に見合った楽しみ方をすることも重要です。 治療後はケガをした時と同じ動作を続けると、再び膝を損傷する可能性があるため、スポーツの際などは特に注意が必要です。また、股関節や足首など下肢全体の関節が柔軟だと、膝へかかる負担が軽減されやすくなり、再発予防にもつながります。 下肢の筋力トレーニングも必須です。特に大腿四頭筋とハムストリングスを強化することが重要です。 普段からストレッチや筋トレを習慣づけ、運動する際には、準備運動や整理運動をしっかり行うようにして、体全体の柔軟性を保つようにしましょう。 スキーやスノーボードを行う際は、怪我のリスクについても備えておくことが重要です。膝の怪我は日常生活にも影響が出ることが多いので、安全にスポーツを楽しみましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.111 監修:医師 坂本貞範
2023.02.01 -
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前十字靭帯断裂、復帰までの期間は?症状と治療法も併せて解説! 前十字靭帯断裂は膝のケガでよくみられ、運動する人が多く受傷するスポーツ外傷の1つでもあります。前十字靭帯はACL(anterior cruciate ligament)と省略されることもあります。 今回は、前十字靭帯が断裂したとき、気になる復帰までの期間、症状と治療法も併せて解説していきます。 前十字靭帯とは 靭帯とは、コラーゲンや弾性線維でできている多少伸び縮み可能なひも状のようなもので、関節で骨同士をつないで、過剰に骨が離れるのを防いで関節の安定性を保っています。 膝の関節は太ももの大腿骨(だいたいこつ)とすねの内側にある脛骨(けいこつ)、そして膝のお皿とよく呼ばれる膝蓋骨(しつがいこつ)の3つの骨でできています。 そのうち大腿骨と、脛骨をつないでいる靱帯は、以下の4つです。 ・内側側副靱帯 ・外側側副靱帯 ・前十字靭帯 ・後十字靭帯 内側/外側側副靱帯は、膝関節の左右にあり、膝が左右にずれすぎないような役目をしています。 前/後十字靭帯は、大腿骨と脛骨の間で交叉していて、前十字靭帯は脛骨が前に出すぎないように、後十字靭帯は脛骨が後ろにずれないような役目を担っています。 前十字靭帯の断裂とは?/損傷の分類 前十字靭帯の傷害を「前十字靭帯 損傷」と言います。 前十字靭帯損傷は程度によって1度から3度までに分類され、数字が大きいほど損傷が強いことを表しています。 1度損傷 前十字靭帯は切れておらず、軽い痛みと腫れのみ。膝の不安定さはない。 2度損傷 前十字靭帯は部分的に断裂し、膝には不安定さが現れる。 3度損傷 前十字靭帯が完全に断裂している。内出血も起きる。膝には不安定さがある。 このうち、「前十字靭帯 断裂」は2度と3度が該当します。 前十字靭帯断裂の原因 前十字靭帯は、大腿骨と脛骨をつなぐ靱帯です。 役割としては脛骨が前に移動しすぎないように制御すること、そして、膝をひねったときにひねりすぎないように制御する役割があります。 ただし、強い力で脛骨だけが前に押し出されたり、膝を過剰にひねると、前十字靭帯の限界を超えるため靱帯断裂が起こります。 前十字靭帯に負担がかかる動き ・ジャンプした後の着地 ・走っている間に急に向きを変える ・全力で走って急に止まる ・他人とぶつかる(接触プレー) とくに前十字靭帯の断裂は、バスケットボールやサッカー、バレーボールや野球などのスポーツ中に起きることが多く、上記のような激しい動きの時に発症しやすいと考えられています。 前十字靭帯断裂の症状 前十字靭帯が断裂した瞬間は膝の中で紐がちぎれたような感覚を感じることがあります。 その後、膝がガクガクしたり、膝の痛み、膝の腫れなどが見られます。多くの場合では膝の関節の中で出血もしています。 しばらく放置すると痛みと腫れは引いてきますが、靱帯は勝手に治ることは少なく、膝の不安定さが残ります。 そのまま生活していると、膝がガクッと崩れたり、長期的には膝関節の中にある半月板や軟骨も傷んできます。すると変形性膝関節症という状態になります。 そうなるのを防ぐために、検査や治療を行うのが一般的です。 前十字靭帯断裂の検査 膝の不安定さや、どのような力が加わると痛みが出るかを触って確認するなどの検査を行います。 ・ラックマンテスト ・前方引き出しテスト その他にレントゲンやMRI検査を行うこともあります。 前十字靭帯の治療方法と、気になる復帰までの期間は? 前十字靭帯が断裂すると、自然に修復されることはありません。 将来スポーツを行う可能性がある場合には、靱帯を再建する手術療法、将来的にスポーツなどをしない人であれば運動療法を行うことが一般的です。 1.自家腱移植 自分の組織を用いて再建する方法です。 腱移植は膝の内側の腱(ハムストリング腱)や、前面の腱(膝蓋骨を割った骨付きの膝蓋腱)を使う方法があります。 手術は関節鏡という鉛筆くらいの細いカメラを用いて、小さな切開で行なうことが主流です。この関節鏡で大腿骨と脛骨をつなぐトンネルをつくり、そこに加工した腱を通して、上下を金具で固定します。 最低限の切開で、早くリハビリを始められることからスポーツ選手でよく行われています。 この手術の一般的な術後経過は、1週間程度(最短4日)の入院でその間は車いす生活、退院後は松葉杖となり、きちんとリハビリを継続していれば1ヶ月で日常生活が可能となり、約半年から1年でスポーツ復帰となります。 再建術を行った後、スポーツへの復帰ができる割合は手術後1年で約6割程度と報告されています。 2.保護的早期運動療法 将来的にスポーツなどをしない人であれば、前十字靭帯専用の装具を装着して、リハビリをするという治療を選択する場合もあります。 保存的治療ではいずれは日常生活やレクレーションレベルの動作は可能ですが、競技スポーツへの復帰は困難とされています。 また前十字靭帯損傷後に手術を行わなかった場合、約6割の患者さんが変形性膝関節症となることが報告されているため、治療を選択する際にはきちんと損傷の程度を理解し、その後の生活やスポーツへの影響を考えて決めましょう。 まとめ/前十字靭帯断裂、復帰までの期間は?症状と治療法について解説! いかがでしたでしょうか。 前十字靭帯断裂は、膝の中の靭帯が切れた状態です。特にスポーツをしているときに多く発生する外傷です。 受傷直後は傷みや膝の腫れがありますが、時間が経てばその症状は軽くなります。ただし、何も治療をしないと膝が不安定なままになったり、将来「変形性膝関節症」を発症することもあります。 前十字靭帯断裂の可能性がある場合は、早期に整形外科を受診することが重要です。 前十字靭帯断裂、復帰復帰までの期間は?症状と治療法について解説しました。ご参考になれば幸いです。 No.092 監修:医師 坂本貞範 ▼ スポーツ外傷(靭帯損傷、腱)の治療に有効な再生医療とは 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.11.02 -
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- ひざ関節
前十字靭帯断裂はいつ治る?全治まではどのくらい?入院期間とリハビリについて スポーツ選手の大きな怪我としてよく耳にする「前十字靭帯断裂」。受傷された場合、全治がいつになるのか気になる方も多いのではないでしょうか。特にスポーツなどで復帰までの時間が心配な方もおられることでしょう。 そこで今回は、前十字靱帯断裂の入院期間やリハビリ、手術の費用について解説しながら、全治をしてスポーツ復帰ができるまでの期間を紹介いたします。 前十字靱帯断裂が全治後、スポーツ復帰まで 8 〜 10 カ月 前十字靱帯の断裂または損傷の全治は 8 カ月〜10 カ月とされています。 これは、前十字靱帯断裂後に手術をしてからリハビリを終えてスポーツ復帰をするまでの目安です。ただ、日常生活が問題なく送れるようになるだけなら術後約 1 カ月程度です。 前十字靭帯を損傷してしまうと自然に修復することは、ほとんど期待できないため、手術をしない場合は全治することがありません。そのため、手術をしない場合は損傷した状態のまま生活を送ることになります。 前十字靱帯損傷で損傷部分が少なく、症状があまり見られなければ、手術をしなくても通常の日常生活を送ることが可能な場合もあります。 しかし、本来、前十字靱帯が担っている膝を安定させる機能が低下してしまうため、膝にかかる負担が大きくなってしまいます。その結果、膝にある半月板などの別の組織を傷めたり、老後に関節の変形を生じたりする可能性が高くなります。 前十字靱帯断裂後の入院期間と手術の費用 前十字靭帯断裂後は断裂した靱帯を体の腱(けん)と呼ばれる部分を移植する手術を行います。 このような手術を前十字靱帯再建術と呼び、関節鏡(かんせつきょう)を使用して行います。関節鏡を使用した手術では、数ミリほどの穴からカメラを侵入させて手術を行うため傷口が小さくて、入院期間が短くなります。 詳しい入院期間と手術にかかる費用は以下の通りです。 手術後の入院期間 入院期間は短い場合で手術後 4 〜 7 日間を目安に退院することができます。 これは小さな傷ですむ内視鏡を使った手術だからですが、まだ普通に全体重をかけて歩けないので、松葉杖が使った状態で退院することになります。 しっかり歩けるようになり、日常生活が普通に送れるようになるまで、約1ヶ月を程度入院する場合もあります。しかし、前十字靱帯断裂は学生など若い年代に多いため、学校や仕事を1ヶ月も休むことは生活に大きな支障を及ぼします。 そのため、短い期間で退院をして、通院しながらリハビリや競技復帰を目指す場合が多いです。 手術に必要な費用 手術や入院にかかる費用は、手術の方法や入院期間、入院中の治療内容などによって異なります。目安として手術・入院費などを含めて 25 万円〜 50 万円ほど必要になることが多いです。 病院によって幅があるので、入院前におおよその目安を確認しておきましょう。早めに退院する場合でも、リハビリの継続は必要です。 特に全治してスポーツ競技に復帰できるまでは、8 カ月程度が目安になるため、それまではリハビリなどの費用が必要になります。 前十字靱帯断裂後のリハビリ 前十字靱帯再建術後のリハビリについて解説するとともに、手術をしない場合に必要なリハビリについても紹介します。 手術後のリハビリ・スケジュール 手術直後からスポーツ復帰までの流れを時系列で紹介します。 手術からの時期 リハビリ内容 手術直後 ・膝周辺の組織の柔軟性を確保する ・膝は完全に伸ばさないように装具を着用 ・膝関節の動きを伴わない筋力トレーニング ・膝以外の部分の筋力トレーニング 1 週間 ・体重1/3の荷重練習 ・関節の動きを改善する運動を開始 2 〜 3 週間 ・全体重をかける練習 ・軽く曲げる程度のスクワットなど体重をかけながらのトレーニング 4 〜 6 週間 ・自転車などマシーンでの運動 ・より積極的に体重をかけたトレーニングを進める 3 カ月 ジョギング開始 4 カ月 両足ジャンプ、ターン開始 6 カ月 スポーツ練習開始 8 カ月 競技復帰 術後は移植した腱を保護しながらのリハビリが必要になります。腱が負担に耐えられるようになるまでは 3 カ月ほどかかるため、それまではあまり無理な運動は避けます。 3 カ月以降ジョギングやジャンプなどのスポーツ動作を開始して、8 カ月以降のスポーツ競技復帰を目指します。 また、前十字靭帯断裂はスポーツでのジャンプや切り返しといった動作で発生しやすいため、それらの動作時に膝が内側に入らないようにするなど、再発を予防するための動作を習得することも重要です。 手術をしない場合もリハビリが大切 前十字靱帯損傷が一部分でも、手術をしなければ全治は難しいですが、老後のことを考えると膝にかかる負担をできるだけ減らすことが大切です。 前十字靱帯損傷の影響で、膝の力が抜けたように急に曲がる「膝くずれ」や膝の不安定さが生じるため、対策として太ももの前の筋力を強化します。 椅子に座って膝をゆっくり曲げ伸ばしたり、膝を伸ばした状態で膝の下にタオルを引いて押しつぶす運動をしたりして筋力トレーニングをしましょう。 前十字靱帯断裂は、正しい治療で全治させて復帰を目指そう 前十字靭帯断裂を全治させるには手術をする必要があります。 そして手術後に正しい順序でリハビリをすることで、再発のリスクを減らして、スポーツなどに復帰をすることが可能になります。しっかり医師や理学療法士などの専門スタッフから指導を受けながら、正しい治療で全治を目指しましょう。 以上、前十字靭帯断裂による全治までの期間についてと、その後の入院期間、リハビリについて記させて頂きました。参考になれば幸いです。 No.S090 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 靭帯損傷、スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、靭帯損傷をはじめスポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.10.24 -
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前十字靭帯損傷とは?軽度から重度までの症状と治療法 スポーツ選手にとって代表的な怪我の1つである前十字靱帯損傷。 よく耳にする怪我ですが、「軽度でも手術が必要なの?」と治療について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。今回は、前十字靱帯損傷について、軽度から重度までの症状や治療法を解説します。 前十字靱帯の役割や損傷の原因 まずは前十字靱帯について解説し、前十字靱帯損傷の病態や原因を紹介します。 前十字靭帯は膝の関節を安定させる重要な靱帯 膝の関節はスネの骨(脛骨:けいこつ)と太ももの骨(大腿骨:だいたいこつ)からなり、肩関節や足の付け根にある股関節に比べ、骨同士の固定が弱い構造をしています。 そこで骨と骨をつなぎ合わせて関節を安定させる、4本の靱帯(じんたい)が重要な役割を果たしています。その中の1つが前十字靱帯で、脛骨が大腿骨に対して前の方にずれないように制御する役割を持っています。 前十字靭帯損傷の原因の多くはスポーツ 前十字靭帯損傷はバスケットボールやサッカー、スキー、ラグビーなどのスポーツ中に多くみられます。 その原因は接触型(コンタクト)と非接触型(ノンコンタクト)に分けられます。 2つのうち多いのが非接触型で、バスケットやサッカー、スキーなどジャンプや切り返しの多いスポーツで以下のような動作が損傷の引き金になります。 ・ジャンプからの着地 ・方向転換 ・急なストップ また、接触型はラグビーや柔道などのコンタクトスポーツで膝に直接的な衝撃が加わり損傷するケースを言います。 スポーツ以外でも交通事故が原因として損傷する場合もあります。 前十字靱帯の損傷は安静では元に戻りにくい 前十字靱帯損傷の一番の特徴は、「正常に戻りにくい」という点です。 そのため、靱帯の損傷が軽いからといって、筋肉の怪我や骨折のように安静にしていれば治るという可能性が少ないとされています。 前十字靱帯損傷の症状 前十字靱帯損傷の症状は受傷から経過した時間や重症度によって異なります。 受傷直後 受傷の直後にみられる症状は「膝の痛み」と「プツッという靱帯が切れるような音」です。この音は受傷する本人にはっきりと自覚されることが多く「ポップ音」と呼ばれます。 また、膝の力が抜けたように、急激に膝が曲がってしまう膝くずれが起こります。 受傷から数時間後 受傷から時間が経過していくと靱帯損傷による出血・炎症で腫れたり、熱をもったりします。 前十字靱帯は関節の内にある靱帯です。そのため、出血した血液が関節の中にたまる関節血症が起こり、注射で血液を吸引することができます。 また、膝を完全に曲げ伸ばしをしたりすることが難しくなります。膝の腫れは筋肉の働きを妨げるため、徐々に膝の周りにある筋力の低下を引き起こします。 受傷から数日後以降 前十字靭帯だけの損傷の場合、受傷時にみられたような痛みや腫れは徐々に軽減していき、1ヶ月ほどで日常生活に支障が出ないほどになることも多いです。 しかし、症状の改善は時間の経過とともに損傷時に生じた出血や炎症が治まっただけで、損傷自体は回復していません。 そのため、膝がグラグラするような不安定さが残ったり、膝くずれがおこったりします。損傷が重度であるほど、このような症状が強くみられます。 また、前十字靱帯損傷が重症な場合、膝関節の衝撃を吸収する役割を持つ半月板(はんげつばん)の損傷や骨折を合併することがあります。そのような場合は、受傷から時間が経過しても、痛みや膝の動きの制限が残ることがあります。 前十字靱帯損傷の治療法 前十字靱帯損傷における治療は「手術による治療」と手術を行わない「保存療法」に分けられます。 前十字靱帯損傷は手術を選択する場合が多い 前十字靱帯損傷が軽度であっても、靱帯は修復されないため膝の不安定さが残り続けます。放置すると膝への負担が強まり、半月板の損傷や関節の変形などにつながります。 そのため、スポーツに復帰をしたり、膝に負担のかかる仕事をしたりする場合は手術が行われます。また、損傷が重度だったり、他の部分の損傷を合併したりして、日常生活でも膝くずれを繰り返すような場合も手術が適応されます。 手術は前十字靱帯の代わりに使用する人工的に靱帯を使用する再建術(さいけんじゅつ)が行われます。靱帯の再建には筋肉が骨につく部分である腱(けん)を使用します。 手術後は8〜10ヶ月後にスポーツに復帰できることが多いと言われています。 年齢や活動量を踏まえて保存療法をする場合もある 長期的な視点では、靱帯が損傷したままだと将来の怪我につながったり、活動的な動きが制限されたりするため、年齢が若い場合は靱帯の再建手術をするケースが多いです。しかし、活動量が低く、損傷が軽度であれば日常生活に支障がなく過ごせることも少なくありません。 そのため、中高齢者で日常生活に支障がなかったり、スポーツや仕事で膝に負担をかけなかったりする場合は手術をしないこともあります。 保存療法としては、膝の関節を支える装具やサポーターを使用したりして膝を安定させて、膝にかかる負担を少なくします。また、自家製のサポーターとして、膝周辺の筋力を鍛えることがあります。 特に太ももの前にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の筋力強化が重要です。この筋肉は膝を伸ばす筋肉ですので、前十字靱帯損傷後にみられる膝くずれへの対策になります。 まとめ・前十字靱帯損傷は放置せずに適切な治療を選択しましょう 前十字靱帯損傷は受傷直後に、はっきりとした症状がみられるものの、軽度の損傷の場合は症状が改善していくことも少なくありません。しかし、靱帯の損傷は治りにくく、放置すると膝に負担がかかり続け、別の怪我につながる可能性があります。 そのため、自己判断で放置せずに、整形外科を受診して正しい診断と治療をしてもらいましょう。 No.089 監修:医師 坂本貞範 ▼ 靭帯損傷に対する再生医療 当院の再生医療は、靭帯損傷にも対応する最先端治療です
2022.10.21 -
- 肘関節
クリーニング手術で野球選手の肘の悩みを解決する 「野球肘」という言葉を聞いたことはありませんか。 野球肘と一言で言っても、いろいろな種類がありますが、例えば、子供時分、まだしっかり身体が出来上がっていない成長期に野球の投球動作を繰り返し行うことで肘への負担が大きくなり、肘の曲げ伸ばしに支障が出るといった症状が発生することもあります。 この場合は、離断性骨軟骨炎と言われる野球肘が疑われます。症状が進行すると肘の痛みが強くなっていき、急に肘関節が動かせなくなることもあります。 この症状の治療は、関節内に遊離した軟骨成分や関節周囲に新たに形成された骨棘を取り除く手術が必要となり、これを「クリーニング手術」と呼称しており、主に肘関節などを損傷したスポーツ選手が受ける機会が多いと考えられています。 今回は、野球選手が抱える肘の悩み、そしてその苦悩を解決するクリーニング手術に関して詳しく解説していきます。 野球選手が抱える肘の悩みについて 野球肘とは、いわゆる投球する際に必要な動作を、繰り返し行うことで発症する肘の障害を指しており、「離断性骨軟骨炎」や、「軟骨損傷」、「靭帯損傷」、さらには将来的に合併される可能性が懸念される「変形性肘関節症」などを含めた複数の病態を示しています。 野球選手がボールを投球する際には肘に大きな外力が加重されますが、そのような中でも速球を投げる、あるいは悪いフォームで無理に投球すると通常に比べて肘部分にかかる負担がかなり増加し、肘関節に無理が掛かります。 また、球数が多くなると自然と肘関節に対する負担が増大して、これら、ひとつ、ひとつの負荷があまりにも大きくなっていくと自ずと肘関節部分における骨成分や靭帯組織が損傷して故障に繋がることになります。 一般的に、肘関節は「上腕骨」、「橈骨」、「尺骨」の3つの骨で構成されており、これらをそれぞれ繋いでいる靭帯組織が内側と外側に存在します。上腕骨の内側の部分には野球ボールを握る、または投球中にスナップや、ねじりや、回転を効かせる際に動作している筋肉が付いています。 通常、ボールを投球する際には肘関節の内側部位では、その動作に伴う牽引力によって周囲の骨や靭帯が強く引っ張られる結果として剥離骨折や靭帯損傷などが引き起こされることがあります。 さらに、肘関節の外側部位では労作時における急激な圧迫力が働いて、軟骨や骨領域に障壁が起こりやすいと考えられており、関節後面では骨同士の摩擦によって疲労骨折や剥離骨折が引き起こされることが知られています。 野球選手の肘の悩みを解決するクリーニング手術とは 野球選手が競技を長年に渡って継続すると、少しずつ肘部分に変形や、関節ネズミと言われる、骨の破片(剥離片)が形成されて、障害を受けることが多いとされています。 肘関節部に大きな骨棘が認められると自然と肘関節の屈曲伸展運動がしづらくなり、離断性骨軟骨炎、肘頭骨棘骨折、軟骨損傷などによって形成された軟骨や骨の剥離片が骨間に挟まれることで強い痛み症状が出現します。 これらの症状が進行し、悪くなると、安静にしてもなかなか痛みが治らない、関節の曲げ伸ばしに支障が出たり、再燃して繰り返すなどの場合には、関節鏡を用いてクリーニング手術を勧められることがあります。 基本的には、全身麻酔下に肘関節の側方や後方に小切開を設けて、同部に細い関節鏡を挿入し、関節内に手術器具をインサートしながら、テレビモニター画面に映し出される関節内の画像を術者や助手が供覧して手術処置を実行します。 実際の手術現場では、関節内の病変について、くまなく確認することから始まり、肘部の痛みや引っ掛かりの主たる要因となっている病変部位を切除摘出することになります。 具体的な手技手順としては、まずは高周波電気メスにより異常滑膜を切除して、損傷軟骨部位をきれいにトリミングします。 次に、肘関節を伸展および屈曲する際に疼痛症状の原因となっている骨棘形成部位に対して関節鏡を視野に入れながらシェーバーという細い吸引付ドリルで骨切除するように処置します。 関節ネズミと呼ばれる関節遊離体が認められる場合には、関節鏡手術によって同時に遊離体を摘出除去することも可能です。これをクリーニング手術と言います。 順調にいけば通常では手術時間自体は約1~2時間で完遂できますし、術後約1週間前後で徐々に投球練習を再開してリハビリを実践し、手術してから概ね1か月後には競技に復活でいる可能性が高くなります。 > スポーツ選手が、手術を避けて取り組める再生医療はこちら まとめ・クリーニング手術で野球選手の肘の悩みを解決する 今回は野球選手が抱える肘の悩みとその解決策になり得るクリーニング手術について詳しく解説してきました。 野球の投球動作などによって知らぬ間に肘関節部分に過剰な負担がかかり、肘の痛みや関節可動域制限などの様々な症状を呈する病気を野球肘と呼んでいます。 従来では、野球肘を始めとする肘関節障害に対しては大きく皮膚切開することで周囲の正常な腱組織や筋肉をかき分けて関節部に至る必要があったために手術治療は復帰期間も含めて野球選手にとっても非常に侵襲的(体への負担が大きい、今回の場合は手術による傷が大きくなる)で負担が大きかったと考えられます。 しかし、近年では、特に画像検査技術により、早期的に野球肘を発見できた場合には、関節鏡手術の技術進歩や手術成績の向上によって低侵襲での手術が可能となり、そのために術後経過も良好になるといった傾向があり、短期間で競技に復帰できる割合も増加していると言います。 以上、クリーニング手術で野球選手の肘の悩みを解決すると題して説明させて頂きました。本記事が参考になれば嬉しく思います。 No.052 監修:医師 坂本貞範 ▼関連記事はこちら 野球肘の予防法|ストレッチで選手生命を伸ばす 野球肘・離断性骨軟骨炎はスポーツする子供に多い!その症状と治療法
2022.04.25 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 靭帯損傷
膝の関節が痛い!放置厳禁!そんな時に疑われる病気と注意すべきこと 日常の生活で、階段の昇り降りや、立ったり、座ったり、ふとした時に膝に痛みや、違和感を自覚したことはありませんか? そんな時、その痛みに不安を感じはするものの、普通の状態で痛くなければ、「大丈夫だろうと・・・」医療機関を受診することなく放置しがちです。 いやいや、お待ちください! 膝の痛みを放置すると重大な病気に繋がることがあります。膝の痛みからくる疾患も早期発見、早期治療が大切。けして放置してはなりません! 痛みは、身体のサインです!ここでは膝に痛みを感じたときに疑われる病気について解説してまいります。 そもそも、膝関節という部分は大腿骨、脛骨、膝蓋骨と呼ばれる3種類の骨形成群が組み合わさって構成されています。私たちが膝を曲げ伸ばしするということは、脛骨の上を大腿骨が前後になめらかに転がっているきをサポー状態だとお考え下さい。 これらの骨の表面には弾力性に富み、膝のスムーズな動きをサポートするための軟骨という、やわらかいクッションで覆われています。そして、もう一つ大腿骨と脛骨の間に位置する半月板と呼ばれる部分があり、膝関節にかかる物理的な衝撃を吸収するという役割を果たしてくれています。 膝関節に痛みを感じるということはこれらの部分で何らかも問題が起きていると考えて良いでしょう。 そこで膝に関する正しい知識を知って日々の適切なケアを継続することができれば痛いといった疼痛症状を緩和させることが期待できます。 今回は、膝に痛みを感じた際には「どういった病気が疑われるのか」、そして膝の痛みを自覚するようになった場に「放置することなく、どのような対応策があるのか」という2つの観点から解説してまいりましょう。 膝が痛む場合、どのような病気が疑われるのか 通常、膝に痛みを生じさせる代表的な病気に、「変形性膝関節症」と言われるものが最も多くみられます。 その他、運動などのスポーツ障害として「半月板損傷や、前十字靱帯損傷等」などが良く知られています。 また、一部に「関節リウマチ」という場合もあります。それ以外、膝の障害には以下のように多岐にわたる疾患があるため、独自に判断するのは難しいとお考え下さい。やはり、初期の段階、早めの受診が必要です。 「膝が痛む」ときに多い疾患 変形性膝関節症 関節リウマチ 膝骨壊死症ほか 半月板損傷 前十字靱帯損傷等 後十字靱帯損傷 内側・外側々副靱帯損傷 離断性骨軟骨炎 関節ネズミ オスグッド病 軟骨損傷ほか 変形性膝関節症について 変形性膝関節症は、加齢によって発症することが多く、原因としては、年齢を重ねるごとに軟骨が少しずつ摩耗し、半月板が損傷、炎症が起こり関節の変形がみられるようになるものです。 変形性膝関節症の初期段階では座った状態から立ち上がる瞬間や、歩行動作を開始する時などに限定して膝に痛みを感じますが、休息すれば自然と症状が改善する傾向にあります。 ところが、病状が進行すると正座の姿勢を取る、あるいは階段を昇り降りすることが困難となり、さらに悪化すると安静にしている時でさえも膝の痛みがとれずに膝関節の変形が顕著になると歩行することが出来なくなってしまうという進行性がある怖い病気です。 「変形性膝関節症」は、進行する怖い病気です ・初期の頃;立ち上がる瞬間や、歩行動作を開始する時などに限定して膝に痛みを感じます ・進行を始めると:正座の姿勢を取る、あるいは階段を昇り降りすることが困難となります ・悪化すると:安静にしている時でも膝が痛み、膝関節の変形が顕著になると歩行も出来なくなります 本疾患における原因としては、加齢に伴って膝の関節内にある軟骨組織が老化することのみならず、肥満体形であることや、元々の遺伝的素因、そして膝関節周囲における骨折、病変や半月板損傷を始めとした外傷などの後遺症として発症することも往々にしてあります。 変形性膝関節症は進行性の病気で元の状態に回復させることが困難な病気です。いかに現状の状態を維持できるかといったことが治療の主眼となり、保存療法を中心としたリハビリが有効な治療法となります。 注意すべきは最終的に手術が必要になることです。それが「人工関節」という選択です。そうならないためにも、膝に違和感を感じたら、早めに病院等にて診察を受け、リハビリ等にて進行を、可能な限り遅らせるような取組みを行いましょう。 関連記事 変形性膝関節症の人がしてはいけない仕事とその理由 関節リウマチ 膠原病という自己免疫が関連した病気で膝関節のみならず手指、手関節、肘関節などを中心に身体のあらゆる関節で炎症が引き起こされる病気です。 関節リウマチを引き起こす要因としては未だに明確なことは判明していませんが、どうやら生体の自然免疫システムが発症に深く関係していると言われており、病状が悪化するメカニズムは最近の医学研究などによって少しずつ明らかになってきています。 本疾患における初期症状としては、関節自体に炎症が起こることに伴って関節部の腫れが認められ、それが膝部分で発症すると膝の関節に痛みが出現することになります。 さらに病状が進行してしまうと関節を構成している骨や軟骨などが破壊されることによって関節が変形して屈曲拘縮や関節脱臼など日常生活に多大に支障をきたすことに繋がっていまいります。 ▼合わせて読みたい 関節リウマチ放置してはいけない!初期症状と治療法 膝骨壊死症 骨壊死の特徴として、急な痛みがあります。変形性膝関節症にように病気が進行することで徐々に痛みが進行していくものとは違って骨壊死は、急に、突然に!痛みが発症する場合が多いと報告されています。 原因としては、軟骨の土台になっている軟骨下骨に微小骨折が生じて骨の壊死が発症していくと推測されています。夜間など寝ている時や、体を動かしていないのに膝の痛みがある場合に膝骨壊死(大腿骨内顆骨壊死、脛骨内顆骨壊死)が考えられます。 半月板損傷、前十字靱帯損傷等 これらの損傷は、比較的若い世代で起こることが多く、運動や、スポーツによって強い力を受けたときに生じる外傷によって膝に痛みがみられる場合に疑われます。 半月板損傷などは、年をとって弱くなった半月板に力が掛かると損傷することもあります。この場合は、日常の軽い怪我、転んだりした場合にも起こるため、年齢を重ねた場合は転倒や、つまずきに注意すべきでしょう。 半月板損傷や前十字靱帯損傷、軟骨損傷などでは膝が伸びないロッキングと言われる症状が出ることがあったり、膝が痛みと共に、曲がらなくなったり、走れなくなる場合があります。 また、前十字靭帯損傷には完全断裂や部分断裂、弛緩といった症状があります。前十字靭帯は、膝関節の脛骨と大腿骨を繋いでいる靱帯で、この部分に強い力が加わることで断裂や伸びてしまったりして損傷が起こります。 この症状はスポーツや運動を行うことで発症することが多く、サッカーやラグビー、バレーボール、バスケットボール、スキーやスノボード。柔道や空手などの格闘技等、激しいぶつかり合いやジャンプしたり、急な捻りが起こったり、転倒が起こることで損傷することが多く見られます。 ▼こちらも合わせてご覧ください 半月板損傷は自然には治らない/その症状と治療法 膝に痛みを自覚する病気になった時の注意点 膝関節痛の原因が変形性膝関節症の場合には 日常生活において、ふとももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛えて、出来る限り「正座」の姿勢を取らないように心がけましょう。 また、肥満気味と指摘されれば食生活を見直して運動習慣を持って減量に努める、また膝部分を冷房などで極力冷やさずに血行を良好に保つ、そして和式トイレで長時間膝を屈曲した状態を保持せずになるべく洋式トイレを使用するように認識しておきましょう。 変形性膝関節症を患った患者さんの場合、膝関節の痛みが軽度であれば鎮痛剤を内服するあるいは湿布などの外用薬を貼付する、あるいは膝関節内にヒアルロン酸を注射する処置を実施することもあります。 その上で並行して大腿四頭筋を強化するリハビリ訓練を受ける、関節可動域を改善させるための理学療法を実践する、膝を温める物理療法を試みる、あるいは膝関節にかかる負担を補助するための足底板や膝専用装具を作成するなどの工夫策を組み合わせてみましょう。 これらの保存的な治療でも症状が改善しない場合には関節内視鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術などを中心とした手術治療を考慮することになります。 関節リウマチ疾患の治療 膝関節の疼痛症状のみならず発熱や体重減少などの全身症状を合併することも多いため、病状の活動性が盛んな際には絶対的安静も必要になるでしょう。 本疾患の病状進行度は患者さん自身の日常生活の習慣と密接に関与していると考えられているため、周囲のサポート環境がリウマチ患者さんに日常生活指導を実践して生活習慣を改善させることで膝関節の痛みなどを代表とする症状を軽減させる効果が期待できます。 普段の食生活においてはタンパク質やビタミン成分、そして微量ミネラル元素などを中心にバランスに優れた食事内容を摂取することをお勧めしますし、体重が増加し過ぎて肥満にならないように心がけることが重要な観点となります。 関節リウマチに対する薬物療法としては、抗リウマチ薬や生物製剤を用いた免疫療法、ならびに原疾患に伴う炎症所見や痛みを緩和させる非ステロイド系鎮痛消炎剤などを用いた対症療法が主流となります。 膝関節における屈曲制限などを含めた機能障害の重症度によっては、その機能を回復させることを主目的として滑膜切除術や人工膝関節置換術などの手術療法を検討するケースも考えられます。 前十字靭帯損傷の治療について 損傷が起こった場合は、リハビリを中心とした運動療法を中心に理学療法、装具療法等の保存療法を行います。それでも症状が改善しない場合は、手術療法を検討することになります。 手術療法には、関節鏡視下にて行う低侵襲の手術であるため、術後の回復も早く、スポーツの場合では競技への復帰、また社会への復帰も早く見込めます。 ただし、注意点としては、靭帯損傷で適切な治療を行わないままに運動や、スポーツを継続すると半月板等、周囲の軟骨を損傷することとなりかねません。そうなると変形性膝関節症に移行しかねない危険性があります。 上記、どんな症状であっても初期の治療が非常に大切です。また、治りきらないまま放置したり、運動を行うのは危険であることをご理解いただければ幸いです。 まとめ・膝の関節が痛い!放置禁止!そんな時に疑われる病気と注意したいこと 膝関節痛を来す病気として代表的なものは変形性膝関節症や、半月板損傷、前十字靱帯損傷、関節リウマチが挙げられます。 これらの関節疾患に罹患した場合には、疼痛症状の度合い、病状の進行度、日常生活における支障度などにはそれぞれ個人差があるので、個々のケースに応じて状態を評価して綿密な治療計画を立案する必要があります。 これらの病気に対する治療や予防に関しては、まずは膝関節を含めて自分の身体の状態を適切に知ることが重要です。その詳細な症状や具体的な治療法、薬剤効果などを本人や家族自身が十分に向き合って理解することが重要な視点となります。 膝に痛みや違和感などがあって心配であれば、最寄りの整形外科クリニックや専門病院などの医療機関を受診して相談されることを検討しましょう。けして放置しないでください。 以上、関節の痛み!そんな時、どういった病気が疑われるのかについて記載しました。今回の記事、情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼こちらの動画も是非ご覧ください https://fuelcells.org/channel/12570/ No.S074 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療の幹細胞治療で膝の関節症を治療する 膝に起こる各種関節の問題を再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善する
2022.04.18 -
- 肘関節
野球肘(離断性骨軟骨炎)は野球以外でもスポーツする子供に発症の可能性! 子供にスポーツを習わせているとき、親として最も心配なのが、怪我ではないでしょうか。 スポーツには怪我がつきものですが、練習を頑張れば頑張るほど、気づかずに手術が必要になってしっまたり、痛みがずっと残ってしまったりして結果的にスポーツを諦めないければならない事例が実際にあります。 しかし、正しい知識を持っていることで子供の痛みにも適切な対応ができ、体に負担が少ない治療ができる可能性があります。 今回は、野球の投球動作や、体操などの選手に起こりやすい「肘離断性骨軟骨炎」について解説していきます。肘離断性骨軟骨炎は、やや珍しい病気ですが、早期発見により手術が回避できる可能性のある病気です。 ぜひ正しい知識を身につけて、子供の身体を守ってください。 肘離断性骨軟骨炎:スポーツ(野球や体操、サッカーでも)をしている子供に多く見られる症状です 肘離断性骨軟骨炎とは何か 肘離断性骨軟骨炎とは、肘の外側の部分(上腕骨小頭)の軟骨に傷がつき、肘の痛みや関節の動きが悪くなってしまう病気です。「野球のようなピッチング、投球といった動作を伴うスポーツ」をやっている子供に多く、年齢としては9-12歳に多く見られます。 競技人口の多さから日本では野球を習っている子供に多く見られていますが、体操競技やサッカーをしている子供でも報告されており、この病気が発症する原因は正確にはわかっていません。 遺伝などの要素に加えて、投球などによって肘に繰り返し負荷がかかることで発症するのではないかと言われています。 肘離断性骨軟骨炎 発症部位 肘の外側の部分(上腕骨小頭) 状況 軟骨に傷がつき、肘の痛みや関節の動きが悪くなる 原因 ピッチングのような投球動作、体操競技、サッカー競技、その他 発症年齢 9~12歳といった子供に多くみられる 肘離断性骨軟骨炎の症状 肘離断性骨軟骨炎の最も多い症状としては肘の痛みと言われますが、特に投球時に肘の外側が痛くなるのが特徴です。また、痛みが出る前に肘の動かしにくさ(可動域制限)を訴えることもあります。 軽傷であれば手術などをしなくても改善することが多く、早期発見・早期治療が重要な病気ですが、痛みが出てきたときには病気が進行していることも多いため注意が必要です。 無症状の9歳から12歳までの野球選手に対し検査を行ったところ、1-3%程度の割合で肘離断性骨軟骨炎が見つかったという報告もあり、「軽い痛みであっても肘の痛みを感じるようであれば整形外科の受診」をお勧めします。 肘離断性骨軟骨炎の治療方針 肘離断性骨軟骨炎の治療は、病状の進行度によって異なります。正しい治療方針を決定するためには、病気の進行度をしっかりと判断する必要があります。そのため、肘離断性骨軟骨炎を疑った場合には単純レントゲン写真やCT、MRI、超音波検査など様々な検査を駆使して評価を行います。 これらの検査により、軟骨が傷ついただけなのか、傷ついた軟骨が剥がれ落ちてしまっているのかを評価して、以下の3段階に分類します。 1:初期(透亮期) 肘離断性骨軟骨炎の初期と診断されるのは、ほとんどが小学生です。 この時期に診断された場合には、手術はせずに様子を見る「保存的加療」を行っていきます。病巣の改善までは1年以上と時間はかかるものの、肘の酷使を避けるなどの指導により90%以上で改善したという報告もあり、早期発見によるメリットは非常に大きいです。 2:進行期(離断期) 進行期であっても、基本的には手術をしない「保存的加療」が選択されます。 ただし初期のうちに診断されたものと異なり、半分ほどの患者さんでは思うように治らず、手術が必要になる患者さんも多いです。症状や病気の状態にもよりますが、3か月から半年ほどで評価を行い、手術が必要かどうかを判断していきます。 3:終末期(遊離期) 終末期であっても全く症状がない場合には手術はせずに様子を見ていくこともあります。ただしこの時期には、傷ついた軟骨が剥がれ落ち、遊離骨と呼ばれる骨のかけらが痛みを引き起こすことも多く、手術が必要になることも多いです。これは、肘関節遊離体といわれるもので「関節ねずみ」とも呼ばれます。 野球肘と言われる肘離断性骨軟骨炎の手術と術後 肘離断性骨軟骨炎の手術では、剥がれた骨の破片の位置や損傷している軟骨の程度などによって、患者さん一人一人に合わせた手術が行われます。 例えば、関節鏡と呼ばれるカメラを使って傷や体の負担をできるだけ小さくする手術であったり、膝関節から骨軟骨柱という組織を採り肘に移植する骨軟骨移植術と呼ばれる大掛かりな手術が行われたり、様々な手術があります5。 早期に発見して骨や軟骨の損傷をできるだけ抑えることで、同じ「手術」であっても負担の軽い手術が選択できる可能性があります。 手術後は肘の可動域訓練や、体幹部・下半身などのトレーニングなどを行いつつ、少しずつ競技復帰を目指してリハビリを行っていきます。 手術によっても違いますが、早ければ1か月程度から半年程度での投球練習が可能になることが多いです。主治医の先生の指示に従って、リハビリを行っていきましょう。 まとめ・野球肘(離断性骨軟骨炎)は野球以外でもスポーツする子供に発症の可能性! 今回は肘離断性骨軟骨炎の症状と治療についてまとめてみました。 ・野球肘は、9歳から12歳までの投球動作を伴うスポーツをやっている児童に多い疾患である ・症状としては、肘の外側の痛みや肘の動かしにくさを訴えることが多い ・早期に見つかった場合は手術をしなくても改善することが多い ・手術が必要になった場合には、競技復帰までには手術後、半年程度かかることがある 早期発見によって手術が防げる可能性がある病気ですので、子供が「肘が痛い」と言ってきたときに、様子を見ることなく、症状が悪化する前、早めに整形外科に受診させるようにしてください。 大切 お子様の「肘が痛い!」→ 聴き逃さない → 野球肘・肘離断性骨軟骨炎の可能性!→「すぐ整形外科へ」 No.S029 監修:医師 加藤 秀一
2021.12.28