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クリーニング手術で野球選手の肘の悩みを解決する

クリーニング手術で野球選手の肘の悩みを解決する

「野球肘」という言葉を聞いたことはありませんか。

野球肘と一言で言っても、いろいろな種類がありますが、例えば、子供時分、まだしっかり身体が出来上がっていない成長期に野球の投球動作を繰り返し行うことで肘への負担が大きくなり、肘の曲げ伸ばしに支障が出るといった症状が発生することもあります。

この場合は、離断性骨軟骨炎と言われる野球肘が疑われます。症状が進行すると肘の痛みが強くなっていき、急に肘関節が動かせなくなることもあります。

この症状の治療は、関節内に遊離した軟骨成分や関節周囲に新たに形成された骨棘を取り除く手術が必要となり、これを「クリーニング手術」と呼称しており、主に肘関節などを損傷したスポーツ選手が受ける機会が多いと考えられています。

今回は、野球選手が抱える肘の悩み、そしてその苦悩を解決するクリーニング手術に関して詳しく解説していきます。

野球肘に注意

野球選手が抱える肘の悩みについて

野球肘とは、いわゆる投球する際に必要な動作を、繰り返し行うことで発症する肘の障害を指しており、「離断性骨軟骨炎」や、「軟骨損傷」、「靭帯損傷」、さらには将来的に合併される可能性が懸念される「変形性肘関節症」などを含めた複数の病態を示しています。

野球選手がボールを投球する際には肘に大きな外力が加重されますが、そのような中でも速球を投げる、あるいは悪いフォームで無理に投球すると通常に比べて肘部分にかかる負担がかなり増加し、肘関節に無理が掛かります。

また、球数が多くなると自然と肘関節に対する負担が増大して、これら、ひとつ、ひとつの負荷があまりにも大きくなっていくと自ずと肘関節部分における骨成分や靭帯組織が損傷して故障に繋がることになります。

一般的に、肘関節は「上腕骨」、「橈骨」、「尺骨」の3つの骨で構成されており、これらをそれぞれ繋いでいる靭帯組織が内側と外側に存在します。上腕骨の内側の部分には野球ボールを握る、または投球中にスナップや、ねじりや、回転を効かせる際に動作している筋肉が付いています。

通常、ボールを投球する際には肘関節の内側部位では、その動作に伴う牽引力によって周囲の骨や靭帯が強く引っ張られる結果として剥離骨折や靭帯損傷などが引き起こされることがあります。

さらに、肘関節の外側部位では労作時における急激な圧迫力が働いて、軟骨や骨領域に障壁が起こりやすいと考えられており、関節後面では骨同士の摩擦によって疲労骨折や剥離骨折が引き起こされることが知られています。

野球選手の肘の悩みを解決するクリーニング手術とは

野球選手が競技を長年に渡って継続すると、少しずつ肘部分に変形や、関節ネズミと言われる、骨の破片(剥離片)が形成されて、障害を受けることが多いとされています。

肘関節部に大きな骨棘が認められると自然と肘関節の屈曲伸展運動がしづらくなり、離断性骨軟骨炎、肘頭骨棘骨折、軟骨損傷などによって形成された軟骨や骨の剥離片が骨間に挟まれることで強い痛み症状が出現します。

これらの症状が進行し、悪くなると、安静にしてもなかなか痛みが治らない、関節の曲げ伸ばしに支障が出たり、再燃して繰り返すなどの場合には、関節鏡を用いてクリーニング手術を勧められることがあります。

基本的には、全身麻酔下に肘関節の側方や後方に小切開を設けて、同部に細い関節鏡を挿入し、関節内に手術器具をインサートしながら、テレビモニター画面に映し出される関節内の画像を術者や助手が供覧して手術処置を実行します。

実際の手術現場では、関節内の病変について、くまなく確認することから始まり、肘部の痛みや引っ掛かりの主たる要因となっている病変部位を切除摘出することになります。

具体的な手技手順としては、まずは高周波電気メスにより異常滑膜を切除して、損傷軟骨部位をきれいにトリミングします。

次に、肘関節を伸展および屈曲する際に疼痛症状の原因となっている骨棘形成部位に対して関節鏡を視野に入れながらシェーバーという細い吸引付ドリルで骨切除するように処置します。  

関節ネズミと呼ばれる関節遊離体が認められる場合には、関節鏡手術によって同時に遊離体を摘出除去することも可能です。これをクリーニング手術と言います。

順調にいけば通常では手術時間自体は約1~2時間で完遂できますし、術後約1週間前後で徐々に投球練習を再開してリハビリを実践し、手術してから概ね1か月後には競技に復活でいる可能性が高くなります。

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まとめ・クリーニング手術で野球選手の肘の悩みを解決する

今回は野球選手が抱える肘の悩みとその解決策になり得るクリーニング手術について詳しく解説してきました。

野球の投球動作などによって知らぬ間に肘関節部分に過剰な負担がかかり、肘の痛みや関節可動域制限などの様々な症状を呈する病気を野球肘と呼んでいます。

従来では、野球肘を始めとする肘関節障害に対しては大きく皮膚切開することで周囲の正常な腱組織や筋肉をかき分けて関節部に至る必要があったために手術治療は復帰期間も含めて野球選手にとっても非常に侵襲的(体への負担が大きい、今回の場合は手術による傷が大きくなる)で負担が大きかったと考えられます。

しかし、近年では、特に画像検査技術により、早期的に野球肘を発見できた場合には、関節鏡手術の技術進歩や手術成績の向上によって低侵襲での手術が可能となり、そのために術後経過も良好になるといった傾向があり、短期間で競技に復帰できる割合も増加していると言います。

以上、クリーニング手術で野球選手の肘の悩みを解決すると題して説明させて頂きました。本記事が参考になれば嬉しく思います。

 

No.052

監修:医師 坂本貞範

 

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