大気汚染が健康に与える影響とは?わかりやすく解説|症状・対策・原因

公開日:2022.07.13 スタッフ ブログ 健康 豆知識

近年、PM2.5や黄砂といった言葉を、ニュースで目にする機会が増えましたね。

大気汚染と健康の関係に、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

世界保健機関(WHO)や環境省の報告では、PM2.5をはじめとする大気汚染物質と、呼吸器や循環器の健康影響との関連が示唆されています。影響の受け方は、曝露の程度や個人の健康状態によって異なることが指摘されています。(文献1)(文献2

この記事では、大気汚染が身体に与える影響、日常生活の中で実践できる対策などを解説します。

過度に心配しすぎる必要はありません。ご自身やご家族の健康を守るための、前向きなヒントとして読み進めてみてください。

大気汚染による健康への影響

大気汚染による健康への影響は、いくつかの側面から示唆されています。

  • 呼吸器への影響
  • 循環器への影響
  • 免疫への影響

大気汚染は環境の問題にとどまらず、私たちの身体の中まで関わることがわかってきています。

順番にみていきましょう。

呼吸器への影響|咳・ぜんそく・COPD

大気中の微小な粒子や有害なガスは、呼吸とともに体内へ入り込み、気道や肺で炎症反応を引き起こす可能性があります。こうした影響が積み重なることで、咳やぜんそくの悪化、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺がんなどの発症や進行と関わると考えられています。(文献3

とくにPM2.5のような非常に小さな粒子は、鼻やのどのフィルター機能をすり抜け、気管支や肺胞にまで届くと考えられています。

世界保健機関(WHO)の評価では、PM2.5を含む大気汚染が肺がんのリスク因子のひとつとして認識されています。(文献1

日本の環境省が実施した大規模疫学調査では、交通量の多い幹線道路周辺において、ぜんそく自体よりも慢性的な咳・たん・息切れといった呼吸器症状の頻度が比較的高い傾向が見られることが示されています。(文献2

大気汚染は、すでに肺の病気がある人だけの問題ではありません。健康な人にとっても、日常的に呼吸器へ負担をかけ続ける環境要因のひとつです。

循環器への影響|心疾患・脳卒中リスク

大気汚染では、心血管疾患リスクの増加も指摘されています。

とくに、PM2.5への長期的な曝露は、高血圧や動脈硬化といった心血管疾患リスク因子との関連が示されているためです。

こうしたリスク因子の増加は、心筋梗塞、脳卒中、心不全、不整脈などの心血管疾患の発症リスクを高める可能性があると考えられています。(文献4

大気汚染は目に見えないため見過ごされがちですが、知らないうちに血管へ負担をかけ続ける環境要因の一つといえます。

呼吸器症状がなくても、循環器への影響についても意識しておくことが大切です。

免疫への影響|慢性炎症、感染症リスク

大気汚染が体の防御反応に影響を及ぼす可能性が示された研究があり、呼吸器の感染症リスクと関連する可能性が指摘されています。文献5

また、世界保健機関(WHO)は、大気汚染と呼吸器感染症との関連が複数の研究で示唆されていることを報告しています。せきや鼻水、のどの不快感などの症状についても指摘されていますが、必ず起こるものではありません。(文献6

大気汚染は、特定の病気をすぐに引き起こすものではありませんが、体の免疫の働きに少しずつ影響を与える可能性があります。

大気汚染の影響を疑うべき症状

大気汚染は目に見えないため、体への影響に気づきにくい場合があります。

しかし、長期的に曝露されることで、次のような症状として現れることがあります。

  • 慢性的な咳・たん・息切れ
  • のどの痛み・鼻水・せき・発熱などの風邪症状
  • 頭痛
  • 目のかゆみ・違和感

これらの症状は、大気汚染だけが原因とは限りません。症状が続く場合は、自己判断せず医療機関に相談しましょう。

大気汚染から健康を守るためにできる対策

ここでは、日常生活で取り入れやすい対策を、外出するとき・室内の環境・体の健康管理の3つに分けて紹介します。

空気の汚れに触れる量を少しでも減らし、呼吸器や心臓、免疫への負担軽減につなげましょう。

できるところから、無理なく取り入れてみましょう。

外出|マスク・時間帯・情報チェック

外の空気が気になる日に行動するときは、次のポイントを意識してみましょう。

  • PM2.5対応の不織布マスクを着用する
  • 交通量の多い幹線道路沿いを長時間歩かない
  • 大気汚染が悪化しやすい時間帯(朝夕の交通量ピーク)を避ける
  • その日のPM2.5や黄砂情報をチェックして行動を調整する

マスク素材が高性能でも、顔とのすき間があると、PM2.5のような微小粒子は隙間を通じて入り込む可能性があります。文献7

そのため、大気汚染対策としては性能の表示だけでなく、顔にしっかり密着する形状かどうかも重要なポイントです。鼻や頬、あごのラインにフィットするよう意識しましょう。

室内|換気・空気清浄機・掃除

室内でできる大気汚染対策のポイントは、次のとおりです。

  • HEPAフィルター搭載の空気清浄機を使用する
  • 窓を開ける時間帯を選び、短時間で効率よく換気する
  • 床・カーテン・玄関まわりを中心に、こまめに掃除をして粒子の再飛散を防ぐ
  • 帰宅時に衣服や髪についた花粉や粉じんを玄関で落とす習慣をつける

HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)は、空気中に浮遊する非常に小さな粒子を高い効率で捕集できる高性能フィルターです。

花粉やハウスダストに加え、PM2.5のような微小粒子についても、室内空気中の濃度を低下させることが報告されています。(文献8

PM2.5は軽く、一度室内に入り込むと長時間空気中を漂う性質があります。外だけでなく、室内の空気環境にも目を向けましょう。

体調管理|睡眠・栄養・水分

大気汚染物質は、体の中で炎症や酸化ストレスと呼ばれる、細胞に負担がかかる状態を起こしやすいと考えられています。文献9

日頃の体調管理を通じて、身体の抵抗力を維持しましょう。

  • 十分な睡眠をとり、炎症を抑える力を保つ
  • 抗酸化作用のある食品(野菜・果物・魚など)を意識してとる
  • こまめに水分補給を行い、のどや鼻の粘膜の乾燥を防ぐ
  • 軽い運動で血流を保ち、全身の巡りを整える

特別な対策をする必要はありませんが、上記のような生活習慣の積み重ねは、環境の影響を受けにくい体づくりにつながると考えられています。

大気汚染の原因

大気汚染の主な原因は、以下のとおりです。

  • :ガソリンや軽油の燃焼によって発生した汚染物質が道路周辺の空気に広がる
  • 工場や発電所など:燃料の燃焼により発生した汚染物質が大気中に排出される
  • 越境汚染(黄砂・PM2.5):海外で発生した汚染物質が風に乗って日本まで運ばれる
  • 自然由来の要因:火山灰や土ぼこり、花粉などが空気中に広がる

大気汚染は、ひとつの原因だけで起こるものではありません。

生活、社会、そして自然のさまざまな要因が重なって生じるものと考えられています。

そのため完全に避けることは難しい一方で、日々の行動や環境の整え方によって、曝露を減らす工夫は可能と考えられています。

健康に影響する主な大気汚染物質

大気汚染物質は性質の違いから、気体として存在する物質と、空気中に浮遊する粒子状の物質に大きく分けられます。

どちらも呼吸とともに体内へ取り込まれます。

ただし、体への影響の仕方や到達する部位が異なると考えられているため、分けて見ていきましょう。

気体状物質

気体状物質は、呼吸とともに気道へ入り、のどや気管支、肺を刺激する可能性があります。

物質 主な発生源 身体への影響
硫黄酸化物(SOx)
  • 石油・石炭などの燃焼
  • 工場
  • 発電所など
のど・気管支を刺激し、せき・気道炎症の原因になることがある
窒素酸化物(NOx)
  • 自動車排ガス
  • 工場
  • 家庭の燃焼機器など
呼吸器を刺激し、ぜんそくの悪化と関連があると考えられている
光化学オキシダント(Ox) 主にNOxが紫外線により化学反応を起こして生まれる 目の痛み、頭痛、吐き気などを引き起こすことがある

これらの気体状物質は、単独で気道を刺激するだけではありません。空気中での化学反応を通じて、別の汚染物質を生み出すこともあるとされています。

そのため、呼吸器への直接的な影響と、間接的な影響の両面から身体に負担をかける可能性があります。

粒子状物質

粒子状物質とは、空気中に浮遊する非常に小さな固体や液体の粒子のことです。

自動車や工場の排気、燃焼によって発生した物質のほか、気体状物質(SOx・NOxなど)が空気中で化学反応を起こして生まれるもの、土ぼこりや黄砂などの自然由来のものも含まれます。

粒子の大きさによって体内への入り込み方が異なり、小さいほど肺の奥深くや血流へ到達する可能性があります。

分類 サイズ 身体への影響
粒子状物質(PM) さまざま 呼吸器の不調との関連があると考えられている
浮遊粒子状物質(SPM) 10μm以下 気道に入り込み、咳や痰、気道症状を引き起こすことがある
微小粒子状物質(PM2.5) 2.5μm以下 肺の奥や血管内へ入り込む可能性があり、呼吸器や循環器に影響すると考えられている

大気汚染物質は、ひとつずつ単独で存在するわけではありません。同時に空気中に存在し、複合的に体へ影響すると考えられています。

そのため、大気汚染は特定の病気の原因というよりも、身体に少しずつ負担をかける環境要因として捉えられています。

過去に起きた大気汚染による健康被害

大気汚染は、実際に多くの人の健康被害として現れてきた歴史があります。

以下では、日本と海外の代表的な事例を紹介します。

  • 四日市ぜんそく
  • ロンドンスモッグ事件

原因となる物質の一部は現在も観測されており、大気汚染が健康に影響しうる環境要因であることは今も変わりません。一方で、これらの事例をきっかけに環境基準の整備や監視体制の強化が進み、空気の質は改善されてきました。

四日市ぜんそく

1960年代、三重県四日市市の石油化学コンビナート周辺で、咳やぜんそくなどの呼吸器症状を訴える住民が増加しました。

その後、慢性的な咳やたん、息切れなどの症状に悩む人が多くみられ、気管支ぜんそくや気管支炎などの呼吸器疾患が問題となりました。

そのため、公害による健康被害として国に認定されています。(文献10

比較項目 四日市ぜんそく(当時) 現在の大気汚染
物質 二酸化硫黄(SO₂)やPM(粒子状物質) 硫黄酸化物(SOx)やPM(粒子状物質)
発生源 石油化学コンビナートから排出された煙 石油・石炭などの燃焼、工場、越境汚染(PM2.5)など
身体に起きた影響 ぜんそく、肺気腫など呼吸器疾患の増加 呼吸器症状や循環器への影響との関連が研究されている

当時は工場の煙が主な発生源でした。現在では、自動車排ガスや越境汚染(PM2.5)、燃焼による排出などに変化しています。

発生源は時代とともに変化していますが、原因となる物質の種類は当時と大きく変わっておらず、大気汚染が健康に影響しうる環境要因であることは今も変わりません。

ロンドンスモッグ事件

1952年、イギリス・ロンドンでは寒冷による暖房用石炭の使用増加と気象条件が重なり、大気汚染物質が地表付近に滞留して大規模なスモッグが発生しました。

気管支炎やぜんそくの悪化、気管支拡張などの呼吸器症状が増加し、死亡数の増加も報告されています。

ロンドンスモッグの主な原因とされたのは、家庭用ストーブや工場・発電所における石炭燃焼によって発生した二酸化硫黄(SO₂)や粒子状物質でした。(文献11

当時の原因物質は、現在も都市部や交通量の多い地域で観測されているものと同じ種類にあたります。

このような健康被害は、日本だけでなく世界でも発生してきました。大気汚染は、国や地域を問わず共通する環境課題といえます。

まとめ|身近な健康問題である大気汚染を正しく知って対策しよう

大気汚染は、遠い国の出来事や、過去の公害の話だけではありません。私たちの身の回りにも関わる、身近な環境要因のひとつと言えます。

実際に、世界保健機関(WHO)や環境省の報告でも、PM2.5をはじめとする大気汚染物質が呼吸器や循環器、免疫機能に影響を与える可能性が示されています。

大気汚染の影響は、目に見えにくいからこそ不安を感じやすいものですが、正しい知識を持つことで過度に恐れる必要はありません。

外出時の工夫や室内環境の整備、体調管理など、できることを積み重ねましょう。

また、大気汚染や加齢、生活習慣の乱れなどにより、私たちの体では酸化ストレスや慢性炎症が生じやすくなり、免疫バランスが崩れやすい状態になることが知られています。

こうした背景から、近年は免疫機能へのアプローチとして再生医療という治療選択肢が挙げられます。

再生医療は、本来備わっている免疫機能のサポートを目的とした医療です。

当院では、血液から採取した免疫細胞を培養し、活性化させたうえで体内に戻す高活性NK細胞免疫療法を提供しています。

再生医療について詳しく知りたい方は、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEをご覧ください。

 

参考文献

(文献1)
大気汚染が人々の健康に及ぼす影響|公益社団法人日本WHO協会

(文献2)
局地的大気汚染の健康影響に関する疫学調査|環境省環境保健部

(文献3)
大気PM2.5汚染への曝露が呼吸器疾患リスクに与える影響:コホート研究のメタアナリシス|PubMed

(文献4)
PM2.5と心血管疾患:最先端のレビュー|PubMed

(文献5)
PM2.5が呼吸器系の宿主防御に与える影響|frontiers

(文献6)
大気汚染と健康に関するガイダンス|WHO

(文献7)
北京市民を粒子状大気汚染から守るためのマスクの効果|PubMed

(文献8)
高速道路近くの住宅におけるエアロゾル粒子除去における携帯型空気清浄機の効果|PubMed

(文献9)
空気中の微細粒子状物質はヒトの鼻上皮細胞に酸化ストレスと炎症を引き起こす|PubMed

(文献10)
あらまし─大気汚染|四日市公害と環境未来館

(文献11)
大気汚染の歴史|環境省