インピンジメント症候群は温めるべき?冷やすべき?正しい対処法を解説

公開日:2024.05.15 スタッフ ブログ 関節

「インピンジメント症候群」とは、肩の痛みや可動域の制限を引き起こす状態です。

スポーツや日常動作で肩を酷使する人に多く見られますが、「温めるべきか」「冷やすべきか」といった対処法に迷う方も多いのではないでしょうか。

本記事では、インピンジメント症候群の症状や種類をわかりやすく解説しながら、「温める・冷やす」の正しい使い分け方を紹介します。

さらに、自宅でできるセルフケアや予防法、病院で行われる治療法までわかりやすく解説しますので、肩の痛みで悩んでいる方は参考にしてください。

インピンジメント症候群とは|温めるのは有効か

インピンジメント症候群とは肩の関節内で骨や靱帯、筋肉の腱などが衝突し、炎症や痛みを引き起こす状態です。

発症初期や急性期の炎症が強い時期は患部を冷やすのが基本です。ただし、慢性的な痛みに対しては温めることで筋肉の血行が促進され、痛みの軽減につながるケースもあります。(文献1

蒸しタオルや温熱パッドで肩周囲を温めたり、入浴で全身を温めながら筋肉をリラックスさせたりなどを試してみましょう。

ただし、肩の衝突が起きる部位によって、以下のように症状や対処法が異なる場合があります。

肩峰下(けんぼうか)インピンジメント

肩峰下インピンジメントは、上腕骨の上部と肩甲骨の肩峰との間にある腱板(けんばん)が挟み込まれて炎症を起こす状態です。

腕を上げる動作で痛みが強くなり、肩の可動域が制限されます。慢性期は温めて血流を促し、肩周囲の筋緊張を和らげましょう。

予防としては、過度な反復動作を避け、肩周囲筋のストレッチや肩甲骨の動きを改善するエクササイズがおすすめです。

後上方(こうじょうほう)インピンジメント

後上方インピンジメントは、肩の後上方で腱板が肩甲骨の関節窩や関節唇と衝突して炎症を起こす状態です。とくにバレーボールや野球の投球動作など、腕を大きく後方に引くスポーツで発症しやすい傾向があります。

症状が慢性化している場合は温めて筋肉の柔軟性を高め、肩甲骨や胸郭の可動域の改善を目指しましょう。

予防するには、肩関節後方のストレッチや、インナーマッスル強化トレーニングを継続的に行うことが重要です。

烏口下(うこうか)インピンジメント

烏口下インピンジメントは、上腕骨頭と肩甲骨の烏口突起の間で腱板や腱が挟まれることで発症します。

肩の前方に痛みが出やすく、腕を前に上げる動作や水平屈曲動作で症状が強くなるのが特徴です。慢性期は温めることで血行を促進し、筋肉のこわばりを緩和しましょう。

予防としては、肩前面の筋緊張を減らすストレッチや、肩甲骨位置を安定させるエクササイズを取り入れるのがおすすめです。

インピンジメント症候群の急性期と慢性期で異なる温めの効果

インピンジメント症候群では、発症時期によって温めの効果や適用が異なります。発症初期や炎症が強い急性期は、まず患部を冷やして炎症や腫れを抑えることが重要です。

一方、慢性期には炎症が落ち着き、筋肉や腱のこわばりが主な不調の原因となります。蒸しタオルや温熱パッドを肩に当てる、入浴で全身を温めるなどによって血行を促進し、柔軟性を高めましょう。

症状の段階を見極めて、冷やす・温めるを適切に使い分けることが回復を早めるポイントとなります。

インピンジメント症候群の温め方・注意点

インピンジメント症候群の慢性期は温めて血行を促し、筋肉や腱の柔軟性を高めることで症状の改善が期待できます。
温め方としては、蒸しタオルを肩に10〜15分当てる方法や、入浴で全身を温める方法が一般的です。(文献2

温熱パックや使い捨てカイロを利用する場合は、直接肌に触れないようタオルで包み、低温やけどを防ぎましょう。

なお、炎症や腫れ、熱感がある急性期に温めると、症状が悪化する可能性があります。必ず医師の指導を受けてから行いましょう。

インピンジメント症候群の状態を見極めたうえで、適切に温めることが重要です。

インピンジメント症候群の自分でできるセルフケア

インピンジメント症候群が悪化すると日常動作にも支障が出るため、早期の予防が重要です。

ここでは、自宅で簡単に取り入れられるセルフケアや予防法を紹介します。

冷やす(アイシング)

炎症や腫れがある場合は、冷却によって症状の悪化を防ぎます。

保冷剤や氷をタオルで包み、痛みのある部位に10〜15分ほど当てましょう。とくに、運動後や肩を酷使した後に行うと、炎症を抑える効果が期待できます。

ただし、直接肌に氷を当てると凍傷の危険があるため、必ず布やタオルを挟んでください。

筋力トレーニングを行う

肩関節周囲の筋肉を鍛えれば関節の安定性を高められ、インピンジメント症候群のセルフケアが可能です。

例えば、軽いダンベルやチューブを使った外旋・内旋運動、壁押し運動などがあります。ただし、痛みがある場合は無理をせず、少ない回数から始めましょう。

筋力強化はインピンジメント症候群の予防だけでなく、再発防止にもおすすめです。

肩の動きを制限する

急性期や痛みが強い場合は、肩の可動範囲を制限して炎症を悪化させないように注意が必要です。

無理に腕を高く上げたり、後方に大きく引いたりする動作は避けましょう。

通勤や家事で動かす必要がある場合は、三角巾やサポーターを活用して負担を減らす方法があります。

インピンジメント症候群の防止には、休養期間中も痛みのない範囲で軽く動かして、関節のこわばりを防ぐのがポイントです。

ツボ押し

ツボ押しは、血行促進や筋肉の緊張緩和に役立ちます。

以下に挙げたツボがインピンジメント症候群に適しているとされているので、参考にしてみてください。

  • 膏肓(こうこう):肩甲骨の内側に位置するツボ
  • 肩髃(けんぐう):肩の前面、腕との境目にあるツボ
  • 肩井(けんせい):首の付け根と肩先を結んだ線の中央に位置しているツボ

指やマッサージボールで心地よい程度の圧をかけるのを数回繰り返しましょう。

ただし、強く押しすぎると筋肉や神経を傷める恐れがあるため、無理のない範囲で心地良く感じる程度の強さを意識してください。

上記で紹介したセルフケアは、インピンジメント症候群の予防や軽症時の改善に役立ちますが、痛みが長引く場合や可動域が著しく制限される場合は、早めに整形外科を受診しましょう。

インピンジメント症候群の治し方

インピンジメント症候群は適切な治療を行うことで、症状の改善が期待できる場合があります。

放置すると肩関節の動きが制限され、日常生活に大きな支障をきたす恐れがあるため注意が必要です。

ここでは、一般的に行われる3つの治療法を解説します。

ストレッチ・マッサージ

肩周囲の筋肉や腱の柔軟性を高めるストレッチやマッサージは、関節内の骨同士の衝突を減らす効果があります。

とくに、肩甲骨と上腕骨をつなぐ4つの筋肉「ローテーターカフ(回旋筋腱板)」のストレッチが有効で、可動域の改善にもつながるので取り入れてみましょう。

さらに、肩や首の血流を促し、筋肉の緊張を緩めるマッサージを習慣にすることで、回復促進や予防にもつながります。

インピンジメント症候群の具体的なリハビリとストレッチの方法については、以下の記事でも詳しく紹介しているので参考にしてみてください。

ステロイド注射・ヒアルロン酸注射

痛みや炎症が強い場合、関節内や関節の周りにある袋状の組織「滑液包(かつえきほう)」へのステロイド注射・ヒアルロン酸注射といった局所注射療法が行われます。(文献3

ステロイド注射は強い抗炎症作用があり、短期間で痛みを軽減させる効果が期待できるのが特徴です。

一方、ヒアルロン酸注射は関節の潤滑性を高め、動きを滑らかにする働きがあります。

いずれも症状の緩和に役立ちますが、効果は一時的であり、リハビリや生活習慣の改善との併用が重要である点に留意しておきましょう。

手術

ステロイド注射で改善が見られない場合や、腱板損傷などの構造的な障害がある場合は手術が検討されます。

代表的な方法は、肩峰や骨棘を削って腱板との摩擦を減らす「肩峰下除圧術」です。(文献4)多くは関節鏡を用いた低侵襲手術で行われ、術後はリハビリによる可動域の回復と筋力強化が必要となります。

ただし、手術は最終手段であり、十分な診断と治療計画のもとで実施されなければなりません。

インピンジメント症候群の治療は、症状の程度や生活スタイルに合わせて選択する必要があります。軽症であっても自己判断せず、整形外科医の指導のもとで適切な方法を選びましょう。

まとめ|肩の痛みや違和感を感じたら早めに対処しよう

インピンジメント症候群を放置すると肩の可動域が狭まり、日常生活に大きな影響を及ぼす恐れがあるため注意しなければなりません。とはいえ、適切な治療やセルフケアを継続すれば、症状の改善や再発を予防する効果が期待できます。

痛みを感じたら早めに初期対応を行い、必要に応じて医療機関を受診しましょう。

また、日頃から正しい姿勢やストレッチ、筋力トレーニングなど行うことも大切です。

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インピンジメント症候群に関するよくある質問

腱板断裂(けんばんだんれつ)との違いは何ですか?

インピンジメント症候群は、肩の関節内で骨や腱、靱帯が衝突して炎症や痛みを起こす状態です。

一方、腱板断裂は腱板そのものが部分的、または完全に切れてしまった状態を指します。

インピンジメント症候群を放置すると腱板断裂につながるケースもあるため、早期の対応が重要です。

腱板断裂については、以下の記事で詳しく解説しています。

インピンジメント症候群にマッサージガンは有効ですか?

現時点で、マッサージガンがインピンジメント症候群に有効であるという科学的根拠はありません。

強い振動が炎症部位を刺激し、かえって痛みや症状を悪化させる場合もあるため、自己判断での使用は控えましょう。

使用を検討する場合は、必ず医師や理学療法士などの専門家に相談してください。

インピンジメント症候群は自然治癒しますか?

軽度のインピンジメント症候群は安静や姿勢改善、ストレッチなどで症状が軽減するケースもありますが、必ずしも自然治癒するとは限りません。

放置すると炎症が慢性化し、腱板損傷など重症化する恐れがあります。

痛みや動かしにくさが続く場合は、早めに整形外科を受診して適切な治療を受けましょう。

参考文献

(文献1)
肩の痛みを解消!原因と治療法について|さくら通り整形外科クリニック

(文献2)
温熱療法とは‥|寺島整形外科

(文献3)
インピンジメント症候群|順天堂大学医学部附属順天堂医院 整形外科・スポーツ診療科

(文献4)
肩を上げると痛い|入谷整形外科