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肩腱板断裂の症状を医師が解説|夜間痛・有痛弧・力が入らないの見分け方

「肩を上げたときにズキッと痛む」「夜眠ろうとすると肩の痛みで目が覚めてしまう」
その症状の背景にある代表的な病気のひとつが肩腱板断裂です。
腱板部分に損傷が起こると、ちょっとした動作でも痛みや違和感を感じやすくなります。
肩腱板断裂は、年齢や生活習慣によって誰にでも起こりうる病気ですが、五十肩(四十肩)と似た症状で区別しにくいため、受診が遅れてしまう方も少なくありません。
この記事では、肩腱板断裂の特徴的な症状や検査方法、治療法、リハビリテーション、再発予防などについて解説します。
適切な受診や治療の判断に役立つ情報としてご活用ください。
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肩腱板断裂について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。
目次
肩腱板断裂の症状4選
肩に痛みや動かしにくさを感じると、日常生活にも支障が出てきます。
肩腱板断裂の代表的な症状は、「痛み」「動かしにくさ」「力の入りにくさ」「異音」の4つです。
この章では、代表的な症状4選を日常生活に当てはめて解説します。
肩の痛み(運動時痛、夜間痛など)
肩腱板断裂の最も一般的な症状は肩の痛みです。
代表的な症状 | 説明 | 具体的な例 |
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肩の痛み (運動時痛・夜間痛) |
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腕を上げたり、特定の動作をしたりする際に痛みを感じることが多く、これを運動時痛と呼びます。(文献1)
「洗濯物を干す」「高い棚に手を伸ばす」「上着を着る」など、腕をやや外側に広げたり、ひねるタイミングで痛みが走りやすいです。
腕を横に上げる途中(60度から120度の間)で鋭い痛みを感じる有痛弧(ゆうつうこ)という症状も肩腱板損傷の判断基準とされています。
また、夜間痛も特徴的な症状の一つです。
夜間に寝返りを打ったり、横向きに寝るときに患側の肩を下にすると圧迫され、ズキズキとした痛みが現れ、睡眠を妨げます。
肩の動かしにくさ(可動域制限)
肩腱板が断裂してしまうと、腕を上げたり回したりする動作が制限され、日常生活に支障をきたすことがあります。
代表的な症状 | 説明 | 具体的な例 |
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肩の動かしにくさ (可動域制限) |
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特定の動きでつっかえる感覚が出やすいのが特徴で、「腕を上げようとして途中で止まる」「上着の袖に腕が通しづらい」「腰の後ろに手が回しにくい」など、日常の細かな不自由が増えます。
筋力低下、脱力感
肩腱板が断裂すると、肩の痛みだけではなく、腕に力が入らない、または突然力が抜けるような脱力感を感じるといった症状が現れることがあります。
代表的な症状 | 説明 |
具体的な例 |
---|---|---|
筋力低下・脱力感 |
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「買い物袋などの重いものを持とうとしても腕が上がらない」「ものを持ち上げ続けられない」など、痛み以外の症状が現れたら、肩腱板断裂のサインかもしれません。
音(ジョリジョリ音、ゴリゴリ音など)
肩を動かしたときに、ジョリジョリ音やゴリゴリといった異音が鳴ることがあります。
これは、断裂した腱板が骨と擦れ合うことで発生する音です。
音は必ずしも肩腱板断裂を示すものではありませんが、関節の中で何かが引っかかったり、擦れたりするような感覚がありましたら、他の症状と合わせて診断の参考になります。
肩腱板断裂の症状と五十肩(四十肩)の違い
肩の痛みや動かしにくさを感じた際、「五十肩(四十肩)かな?」と考える方は少なくありません。
しかし、肩腱板断裂と五十肩は、症状が似ているようで異なる病態です。
適切な治療を受けるためには、この二つの違いを理解することが非常に重要です。
症状 | 肩腱板断裂 | 五十肩(四十肩) |
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原因 |
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痛み |
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可動域 |
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筋力 |
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自然治癒 |
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五十肩(四十肩)は、肩関節の炎症によって引き起こされる病気で、関節全体が硬くなり、痛みを伴いながら徐々に可動域が制限されていくのが特徴です。
一方、肩腱板断裂は、肩の腱が切れることで起こります。他人に腕を動かしてもらうと、ある程度動かせますが、自分では痛くて動かせないという特徴があります。
腱板断裂と五十肩(四十肩)の違いについて、詳しくは以下の記事も併せてお読みください。
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肩腱板断裂の症状を確認するセルフチェック|安全な手順
自宅でも簡易的に確認できるセルフチェックの方法を紹介します。
ただし、これから紹介するセルフチェックは受診の判断材料にするための簡易チェックです。
痛みを感じる場合は無理に行わず、中断してください。
ドロップアームの手順と注意点
ドロップアームとは、腕を支える筋力を確認するテストです。
腕を肩の高さまで上げ、腕を上げた状態を保持できるかを確認します。
手順
- 患者様は、椅子に座る、または立ち姿勢をとります。
- 検査者は、患者様の腕を肩の高さまで真横に上げます。患者様の手のひらは下に向けます。
- 検査者は、患者様の腕を支持をしていた手を離します。
- 患者様は、腕をその位置でキープします。
腕の高さを保持できない場合は、陽性と判断されます。痛みがある場合は無理に行わないでください。
ホーキンス・ケネディの手順と注意点
ホーキンス・ケネディとは、肩峰下インピンジメント症候群(肩の痛みや運動制限を引き起こす病気)や腱断裂を確認するテストです。
腕を上げ、内側に回したときに痛みを感じるかを確認します。
手順
- 椅子に座る、または立ち姿勢をとります。
- 腕を肩の高さまで前に上げ(肩関節90度屈曲)、肘を90度に曲げます。
- その状態で、腕を内側に回します(内旋させます)。
腕を内旋させた際に、痛みを感じた場合は、陽性と判断されます。痛みがある場合は無理に行わず、必ず医師の診断を受けてください。
棘下筋テストの手順と注意点
棘下筋テストとは、棘下筋(腕を外にひねる動作で作用する筋肉)が、断裂によって筋力低下していないかを確認するテストです。
手順
- 患者様は、椅子に座る、または立ち姿勢をとります。
- 患者様は、脇をしめた状態で、肘を90度に曲げます。
- その状態で、腕を外側に開いていきます。
- 検査者は、内旋方向に抵抗をかけていきます。
力が入らず、腕が内側へ戻されてしまう場合は、陽性と判断されます。
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肩腱板断裂の症状が続く時の受診目安
肩腱板断裂を放置すると、症状が進んで日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
「夜間痛が2週間以上続く」「物が持てない・腕が上がらない」などが一つの受診の目安になります。
痛みがある場合は、我慢せず早めに受診するようにしましょう。
症状 | 受診の目安 | 受診の重要性 |
---|---|---|
夜間痛 | 夜間痛が2週間以上続く |
腱板断裂の可能性が高い 早期診断が重要 |
脱力感・筋力低下 |
物を持ち上げられない 物を持ち続けた状態を維持できない |
腱板断裂の可能性が高い 早期診断が重要 |
診断方法(MRI検査、レントゲン検査、超音波検査など)
肩腱板断裂の診断は、問診、視診・触診、そして画像検査を組み合わせて行います。問診では、いつから痛み始めたのか、どんな時に痛みが増すのか、日常生活でどのような動作が困難になっているのかなど、詳しくお話を伺います。
視診・触診では、肩の腫れや変形、圧痛の有無などを確認します。また、腕をさまざまな方向に動かしてもらい、肩関節の可動域や筋力、痛みやしびれの有無などをチェックします。
これらの情報に加えて、画像検査を行うことで、より正確な診断が可能になります。代表的な画像検査は以下の3つです。
レントゲン検査:骨の状態を調べます。肩腱板は筋肉と骨をつなぐ腱なので、レントゲン写真には写りません。しかし、骨棘(こつきょく:骨の突起)といった腱板断裂に合併する症状や、他の骨の異常がないかを確認するために有用です。
超音波検査(エコー):超音波を使って腱板の状態をリアルタイムで観察します。手軽に検査でき、腱板の断裂の有無や大きさ、炎症の程度などを評価できます。
MRI検査:磁気と電波を使って、肩関節の断面画像を撮影します。腱板の状態を最も詳細に確認できる検査で、断裂の大きさや場所、周りの組織の状態などを正確に把握できます。レントゲンや超音波検査ではわからない小さな断裂や、断裂の周りの筋肉の状態まで詳しく知れます。
これらの検査結果は、診断の参考となります。場合によっては、他の病気との鑑別が必要になることもあります。
肩腱板断裂の症状に基づく治療法
肩の痛みや動かしにくさ、もしかしたら腱板断裂かも…と心配になりますよね。
でも、自己判断は禁物です。まずは医療機関を受診して、適切な検査と診断を受けることが大切です。
この章では、肩腱板断裂の検査方法とさまざまな治療法について、わかりやすく解説します。
具体的な検査方法や治療の選択肢を知ることで、不安を軽減し、治療への第一歩を踏み出せるはずです。
保存療法(投薬、リハビリテーション、注射など)
肩腱板断裂の治療は、断裂の大きさや症状、患者様の年齢や生活スタイル、仕事内容などを考慮して決定します。
保存療法は、手術をせずに痛みや炎症を抑え、肩関節の機能を回復させることを目的とした治療法です。
保存療法には、主に以下のような方法があります。
方法 | 説明 |
---|---|
投薬 | 痛みや炎症を抑える薬を内服します。よく使われるのは、痛み止めや炎症を抑える薬です。 |
リハビリテーション |
固まってしまった肩関節の動きを改善し、弱くなった筋力を強化するための運動療法を行います。 |
関節内注射 |
肩関節内にヒアルロン酸やステロイドを注射し、痛みや炎症を軽減します。ヒアルロン酸は関節の潤滑作用、ステロイドは強力な抗炎症作用により効果を発揮します。 |
保存療法は、軽症の肩腱板断裂や、手術のリスクが高い場合、手術を希望されない場合などに選択されます。
手術療法(関節鏡手術)
保存療法で効果が得られない場合や、断裂の程度が大きい場合、スポーツ選手や肉体労働者など肩を良く使う職業の方の場合には、手術療法が検討されます。
手術療法は、傷ついた腱板組織を修復し、肩の機能を回復させることを目指す治療法です。
関節鏡手術:内視鏡を用いて行う手術です。皮膚に小さな穴を数カ所開け、そこからカメラや手術器具を挿入します。
モニターを見ながら手術を行うため、傷が小さく、体への負担が少ないというメリットがあります。ただし、
外科的治療には、術後感染や神経障害など、さまざまな合併症が起こる可能性があります。
肩腱板断裂の手術と入院期間について、併せてお読みください。
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ただし、腱板が元の正常な組織に戻るわけではありません。手術では、あくまで腱の切れた部分を縫い合わせるだけとなります。
腱板の治療としては、幹細胞による再生医療があります。
肩腱板断裂の症状に対する再生医療|手術不要
肩腱板断裂に対する治療としては、再生医療という選択肢もあります。再生医療には主に幹細胞治療とPRP療法があります。
幹細胞治療では、脂肪組織由来の細胞を採取・培養し、患部に注射で投与します。
PRP療法は、患者様の血液から血小板を抽出した多血小板血漿(PRP)を患部に注射する方法です。
どちらも手術不要で身体への負担が少ない治療法なため、手術に不安がある方や長期間のリハビリを避けたい方は再生医療をご検討ください。
肩腱板断裂に対する再生医療の症例を以下の記事で紹介してます。再生医療の治療内容について興味をお持ちの方は、ぜひご覧ください。
患者様の状態によって、再生医療の実施可否、治療計画、想定される経過、リスクなどが異なります。
詳細については、当院リペアセルクリニックまでご相談ください。
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肩腱板断裂の症状を理解して治療の第一歩へ
ここまで、肩腱板断裂の症状、五十肩との違い、セルフチェックの方法、診断方法、そして治療法について紹介しました。
症状が続く場合は早めに受診し、専門医から正確な診断を受けることが大切です。
保存療法、手術療法、損傷した組織を再生させる再生医療など、ご自身の生活や目標に合わせた治療法を選択しましょう。
痛みのない快適な日常生活を取り戻すために、適切な治療への第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
肩腱板断裂の症状に関するよくある質問
肩腱板断裂の症状はどのくらいで治る?
肩腱板断裂の症状が治るまでの期間は、断裂の大きさ、治療法、患者様の年齢や仕事や日常の活動レベルによって大きく異なります。
まず、手術をしない保存療法(薬・注射・リハビリなど)の場合、断裂が小さければ数週間〜数か月で痛みが和らぐことがあります。
手術を受けた場合は、縫った部分がくっつくまで安静が必要です。そのため、普段の生活に戻るまでおおよそ半年〜1年ほどかかるのが一般的です。
痛みを和らげるためにできることはある?
痛みを和らげるためには、以下のような方法があります。
方法 | 説明 | ポイント |
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安静 |
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薬物療法 |
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アイシングまたは温める |
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サポーターを使用する |
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しびれは肩腱板断裂の症状に含まれる?
肩や腕に広がるしびれは、肩腱板断裂の直接的な症状ではありません。神経の圧迫など、他の原因も考えられます。
しかし、肩腱板断裂の可能性も否定はできませんので、痛みと一緒にしびれを感じる場合は、整形外科専門医も受診し、適切な診断を受けるようにしてください。
夜間痛を防ぐための寝方の工夫はある?
うつ伏せや患側を下にする寝方は避けましょう。
仰向けで寝る場合には、胸と肘の間に丸めたタオルや小さな枕を入れて腕を支えると痛さが軽減されます。
横向きで寝る場合には、健側を下にして、抱き枕で患側の腕を胸の前に預けると肩が安定して、痛さが軽減されます。
参考文献