ADL障害とは?原因・評価指標から自立を取り戻す最新の再生医療まで解説

公開日:2021.02.22 スタッフ ブログ 豆知識

ADL障害は主に高齢者に多く見られ、身体機能や認知機能の低下が原因で食事や排泄、移動など日常の生活動作に支障を来すのが特徴です。

脳血管障害や整形外科的疾患、骨折、認知症、廃用症候群などが主な原因で、治療を怠ると寝たきりのリスクが高くなるため注意が必要です。

政府の調べによると、65歳以上のおよそ3人に1人が認知症もしくは軽度認知障害を発症すると考えられており、ADL障害を予防するためにも早期の治療やリハビリが欠かせません。(文献1

本記事ではADL障害の原因や評価指標、改善するための一般的なアプローチ方法などについて解説します。

ADL障害の正しい知識を身につけ、早期発見・早期治療につなげましょう。

ADL障害とは?できなくなる動作と日常生活への影響

ADLは英語の「Activities of Daily Living」の頭文字を取った略語で、日常生活動作と日本語に訳されています。

ADL障害は日常生活を送る上で最低限度の以下の動作に支障を来す状態を指します。

  • 更衣
  • 移乗
  • 食事
  • 移動
  • 排泄
  • 入浴
  • 起居動作
  • 整容など

ADL障害を発症すると日常生活を営む上で不便が生じるだけでなく、抑うつ状態や無気力に陥りやすくなり、認知機能の低下を招く恐れがあります。

パートナーや家族にとっては介護の負担が増大する上、手すりを設置したり介護用ベッドを導入したりするなど、住環境の整備が求められます。

九州大学が実施した研究ではADL障害を発症した、重度の介護を要する認知症患者数の増加が示唆されており、高齢化が進む日本では喫緊の課題です。(文献2

ADL障害と似た症状にIADLがあります。

IADLは英語の「Instrumental Activities of Daily Living」の頭文字を取った略語で、手段的日常生活動作と和訳されます。

IADLは以下の動作や行動に支障を来す状態を指します。

  • 日常の買い物
  • 料理や洗濯
  • 金銭や服薬の管理
  • 公共交通機関の利用など

ADLよりも先に低下しやすい傾向にあり、認知機能低下の指標にもなります。ただし、ADLは生命維持に直結するため、IADLより優先的に対処する必要があります。

ADL障害を引き起こす主な原因と疾患

ADL障害を引き起こす主な原因と疾患は以下のとおりです。

  • 加齢に伴う身体機能の低下(フレイル・サルコペニア)
  • 骨関節疾患|変形性膝関節症・股関節症による移動能力の低下
  • 脳血管疾患|脳梗塞・脳出血後遺症による麻痺と動作障害
  • 認知症や精神疾患による意欲低下と実行機能障害

それぞれについて解説します。

加齢に伴う身体機能の低下(フレイル・サルコペニア)

ADL障害を引き起こす原因の一つが加齢に伴う身体機能の低下で、専門的にフレイル・サルコペニアと呼ばれています。

フレイルおよびサルコペニアには以下の特徴があります。

  定義 特徴 お互いの関係
フレイル 健康状態から要介護へと向かう途中の段階 身体・精神ともに虚弱状態に陥る サルコペニアを含む状態
サルコペニア 加齢や病気が原因で全身の筋力が低下する状態 ADLが低下する フレイルの原因・中核

フレイルは筋力低下だけでなく孤独や認知機能の低下が原因で活動性が低下し、心身が弱った状態(虚弱)を意味します。

サルコペニアは加齢や病気が原因で全身の筋力や筋肉量が減少し、日常生活動作に支障を来すのが特徴です。

サルコペニアはフレイルの原因・中核で、ADL障害が進行するとフレイルへと移行しやすくなります。

変形性膝関節症・股関節症による移動能力の低下

ADL障害の原因としては骨関節疾患も挙げられます。

代表的な骨関節疾患が変形性膝関節症や変形性股関節症です。

変形性膝関節症は中年期以降の女性に多く見られる疾患で、加齢に伴う関節軟骨の摩耗や老化、体重増加、筋力の低下、および過去のケガなどが原因で発症リスクが増加します。

初期には膝の曲げ伸ばしの際に痛みが出る程度ですが、進行すると歩く際に痛みが生じて日常生活動作が大きく障害されます。

変形性股関節症も中年期以降の女性に多く見られ、徐々に進行するのが特徴です。

初期には運動開始時の違和感や痛みが出る程度ですが、末期になると安静時や夜間にも痛みが生じ、日常生活に多大な支障を来します。

変形性股関節症の主な原因は寛骨臼形成不全ですが、大腿骨頭壊死症やペルテス病がきっかけで発症するケースもあります。

脳血管疾患|脳梗塞・脳出血後遺症による麻痺と動作障害

脳血管障害もADL障害を引き起こす原因の一つです。

ADL障害の原因となる主な脳血管障害は以下のとおりです。

  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • くも膜下出血
  • 血管性認知症など

脳卒中の多くを占める脳梗塞を発症すると、脳の血管がつまって運動機能が障害され、ADL障害を発症しやすくなります。

脳の血管が破れて脳出血やくも膜下出血を発症すると、脳細胞が壊死して出血した場所と反対側の半身に麻痺や感覚障害が生じます。

脳梗塞や脳出血を繰り返すと血管性認知症を発症し、次第に日常生活動作に支障を来すようになるため注意が必要です。

脳梗塞や脳出血などが原因のADL障害は要介護の主要な原因で、発症から3〜6カ月以内にリハビリを実施しないと、廃用症候群を併発して寝たきりのリスクが増加します。

認知症や精神疾患による意欲低下と実行機能障害

認知症や精神疾患が原因で意欲の低下や実行機能障害が生じ、ADL障害のリスクを高めるケースがあります。

認知症には以下の4種類があります。

認知症の種類 原因 症状の特徴
アルツハイマー型認知症 アミロイドβの蓄積 失語・失認・失行・判断力や理解力の低下など
レビー小体型認知症 レビー小体の蓄積 パーキンソン症状・幻覚・自律神経症状など
血管性認知症 脳卒中による血流低下 記憶障害・運動障害・意欲低下など
前頭側頭型認知症 原因不明 怒りっぽくなる・我慢がきかなくなるなど

65歳以上を対象とした2022年の調査では、およそ3人に1人が認知症および軽度認知障害の疑いがあると判明しました。(文献3

うつ病や統合失調症などの精神疾患も意欲の低下や認知障害を引き起こし、日常生活動作を著しく障害します。

ADL障害の評価指標|Barthel Index(BI)とFIMの違い

ADL障害の評価指標として、Barthel Index(バーセルインデックス)とFIM(機能的自立度評価法)の2つがよく知られています。

評価指標 評価対象 特徴
Barthel Index(バーセルインデックス) 日常生活動作10項目 できるADLを評価
FIM(機能的自立度評価法) 運動13項目・認知5項目 実際に行っているADLを評価

Barthel Index(バーセルインデックス)は、リハビリテーションや介護の現場でADLの維持・改善を評価するための国際的基準です。

FIM(機能的自立度評価法)は、リハビリの効果や介護負担を把握するために用いられる指標です。

それぞれの特徴について解説します。

Barthel Index(バーセルインデックス)|自立度を測る国際的基準

Barthel Index(バーセルインデックス)は自立度を測る国際的基準で、特別な器具が必要なく、短時間で評価できる点が特徴です。

以下の10項目について、それぞれ0点〜15点で評価します(100点満点)。(文献4

  • 整容:0点(介助)~5点(自分で洗面や歯磨きが可能)
  • 入浴:0点(介助)~5点(自立)
  • 歩行:0点(介助)~15点(自立)
  • 更衣:0点(介助)~10点(自立)
  • 排尿:0点(全介助)~10点(自立)
  • 排便:0点(全介助)~10点(自立)
  • 食事:0点(全介助)~10点(自立)
  • 移乗:0点(全介助)~15点(車いすからベッドに移乗可能)
  • 階段昇降:0点(介助)~10点(自立)
  • トイレ動作:0点(全介助)~10点(自立)

10項目のうち、歩行や移乗に重点を置いているのが特徴です。

FIM(機能的自立度評価法)|介助量まで詳細に数値化する指標

FIM(機能的自立度評価法)は、Barthel Index(バーセルインデックス)に比べて介助量まで詳細に数値化するのが特徴の指標です。

以下の運動13項目・認知5項目について、それぞれ1点(全介助)〜7点(完全自立)で評価します(合計18〜126点)。(文献5

  • 食事
  • 整容
  • 清掃
  • 更衣(上半身)
  • 更衣(下半身)
  • トイレ動作
  • 排尿コントロール
  • 排便コントロール
  • トイレへの移乗
  • ベッド・椅子・車椅子への移乗
  • 浴室・シャワーへの移乗
  • 歩行および車いすでの移動
  • 階段昇降
  • 理解(視覚・聴覚)
  • 表出(音声・非音声)
  • 社会的交流
  • 問題解決
  • 記憶

運動と認知の両面から評価でき、専門家でなくても実施できる点がメリットです。

Barthel Index(バーセルインデックス)が「できる動作」を評価するのに対し、FIM(機能的自立度評価法)は「実際に行っている日常生活動作」を評価する点が大きな違いです。

ADL障害を改善するための一般的なアプローチ(理学療法・作業療法)

ADL障害を改善するための一般的なアプローチ方法が、理学療法および作業療法です。

理学療法では身体機能の改善を目的に体力向上や筋力増強、関節の可動域向上に取り組み、起き上がりや歩行、階段昇降、立つ・座るなどの動作訓練を実施します。

身体機能の改善や動作訓練を実施するため杖を作成したり、歩行器や車椅子を選定・調整したりするケースもあります。

作業療法では日常生活動作をスムーズに行うため、食事や着替え、トイレ、整容などのトレーニングを実施するのが基本です。

ADL障害の程度に応じて箸の代わりにスプーンを用いたり、靴ベラやボタン留めなどを利用したりします。

その他、コミュニケーション能力を高めたり、嚥下能力を向上させたりする目的で言語聴覚療法が実施されます。

ADL障害の回復には「再生医療」も注目されている

ADL障害の回復には「再生医療」も注目されています。

再生医療では損傷した機能や組織を回復し、生活自立度の向上を目指します。

京都大学で行われた臨床試験では、特発性大腿骨頭壊死症において再生医療により壊死範囲が縮小し、骨再生が確認できたと報告されました。(文献6

当院の再生医療では、患者様自身の脂肪細胞から抽出した幹細胞を分離して培養し、増殖させた上で点滴を用いて静脈内に注入します。

自分の細胞を利用した治療法のため副作用のリスクが低く、拒絶反応を起こしにくい点がメリットです。

治療は日帰りで受けられるため、手術を避けたい方にとって選択肢の一つです。再生医療をご検討の方は、当院「リペアセルクリニック」までお気軽にお問い合わせください。

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ADL障害の治療に再生医療を検討する際の注意点

ADL障害からの回復手段として注目されている再生医療ですが、検討する際には以下の点に注意が必要です。

  • 医療機関が限定される
  • 効果には個人差がある
  • 即効性が期待できない

高度な技術および設備が必要なため、再生医療を検討してもすぐには施術を受けられない可能性があります。

患者様自身の細胞に左右されるため効果に個人差が出る上、即効性が期待できないのも注意点の一つです。

まとめ:ADL障害を治療して「できない」を「できる」に変えましょう

ADL障害を発症すると自立した生活に必要な動作が次第にできなくなり、最悪のケースでは寝たきりになる恐れがあります。

前段階としてIADL(手段的日常生活動作)があらわれるケースが多いため、日常の買い物や料理、洗濯、公共交通機関の利用に支障が出てきた場合は注意が必要です。

ADL障害の原因はさまざまですが、運動機能や認知機能は訓練次第で改善する可能性があります。

そのため、なるべく早めにADL治療を開始し「できない」を「できる」に変えていくことが大切です。

当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。

ADL障害について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。

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ADL障害に関するよくある質問

ADL障害に関して、以下3つの質問が多く寄せられています。

  • 一度低下したADLは高齢になっても改善しますか?
  • リハビリを一生懸命やっていますが完治は目指せますか?
  • 再生医療はどのような状態でも受けられますか?

それぞれの質問にお答えします。

一度低下したADLは高齢になっても改善しますか?

ADL障害は日常生活動作に支障を来す状態であり、運動機能や認知機能が失われる訳ではありません

適切なリハビリテーションや生活習慣の改善、栄養管理、自立支援によって運動機能や認知機能の向上が期待できます。

寝たきりになった場合でも、離床時間を増やすなどの自立支援により、症状が改善するケースがあります。

リハビリを一生懸命やっていますが完治は目指せますか?

ADL障害がリハビリによって完治するかどうかは、原因となるケガや病気に左右されると言わざるを得ません。

手術後に見られる一時的な後遺症や骨折などが原因のADL障害であれば、リハビリによって完治する可能性があります。

一方、高齢になってからの重度の認知症や進行性の神経疾患が原因の場合は、リハビリでの完治が困難と考えられます。

再生医療はどのような状態でも受けられますか?

再生医療はどのような状態でも受けられる治療法ではありません。

たとえば、ガンや自己免疫疾患をお持ちの方や、細胞の状態および病気の進行度によっては、再生医療が受けられないケースがあります。

再生医療は、厚生労働省へ「再生医療等提供計画」を届け出た医療機関のみが実施できる治療です。再生医療を検討している方は、届出を行っている医療機関を受診し、ご自身の状態で治療が受けられるか確認してください。

参考文献

(文献1)
認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計|厚生労働省

(文献2)
日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究|厚生労働科学研究成果データベース

(文献3)
知っておきたい認知症の基本|政府広報オンライン

(文献4)
バーセルインデックス(Barthel Index)|産業医科大学

(文献5)
日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要|厚生労働省

(文献6)
特発性大腿骨頭壊死症に対する再生医療の良好な結果|京都大学