ヒートショックとは?原因や予防法・起こった場合の対策を解説!

公開日:2023.12.09 スタッフ ブログ 健康 豆知識

周囲にヒートショックになった方がいると「自分もいつかなってしまうのでは?」と不安に感じるものです。ヒートショックは冬場のお風呂場で多く発生しますが、事前に原因・症状や予防法などを知ることで備えられます。

ヒートショックのリスクを避けるには、どのような症状なのかを知って注意を払うことが大切です。

本記事ではヒートショックについて、原因や予防法・発生時の対策などとともに解説します。

日常生活でのリスクを減らせるよう、正しい知識を身につけましょう

ヒートショックとは?急激な温度変化に注意!

ヒートショックとは、急激な温度変化による血圧の乱高下で、心臓や血管に疾患をもたらす現象です。温かい場所から冷えた場所へなどと、温度差が大きい環境の間を行き来したときなどに起こります。

人間の身体は寒い場所に移動した際に、体温を保持するため血管が収縮し、血圧が上がる仕組みです逆に温かい場所に移動すると、体温の上昇に応じて血圧が下がります。

しかし、温度差の大きい環境の間で移動を繰り返すと、血圧が激しくアップダウンする分、心臓や血管にも大きな負担がかかります。心臓などに過重な負担がかかった結果、めまいや頭痛などに見舞われるのがヒートショックです。

ヒートショックは、とくに11月~4月の気温が大きく下がる時期に発生の危険性が高まるとされています。リビングなどで暖房機器を使って室温を上げている一方、お風呂場や脱衣所などでは外気温の影響で室温が下がることが原因です。入浴中に心筋梗塞や脳卒中を起こした結果、意識を失った状態で体が湯船に沈み、溺れるケースがあります。

ヒートショックの症状・特徴

寒い時期を中心に起こりやすいヒートショックに備えるには、主に発生する症状や特徴を知ることが重要です。よくある症状や特徴として、以下のものが挙げられます。

それぞれの症状や特徴を、ひとつずつご紹介します。

めまいや立ちくらみ

ヒートショックでは、めまいや立ちくらみがよくみられる症状です。お風呂に入っている間は湯船のお湯によって体に水圧がかかっていますが、湯船から立ち上がるとその水圧がなくなり、血管が広がります。

その結果、血圧の低下で一時的に心臓から脳へ送られる血液の量が減少し、めまいや立ちくらみの原因となります。

頭痛

ヒートショックでは、頭痛に悩まされる方もいます。頭痛は温かい場所から寒い場所に移動した際の血管の収縮や、湯船に入った際の温熱による血管の拡張が原因です。

血管が収縮した場合は、心臓から脳への血流が減ることで一時的に酸欠に陥り、頭痛を引き起こすケースがあります。逆に湯船に浸かっていて体温が急上昇したときも、強めの頭痛が発生する場合があるため、注意が必要です。

嘔吐

ヒートショックではときに吐き気を感じるうえ、よりひどいと吐き戻すケースもあります。温かい場所と寒い場所の行き来による血圧の乱高下の繰り返しで、心臓と血管に大きな負担がかかるためです。

心臓や血管に過度な負担がかかった結果、血流が大きく変わるなどして気分が悪くなり、吐き気を感じたり摂取した食べ物を戻したりします。吐き戻そうとして気道が詰まって倒れるケースもある分、なおさら注意が必要です。

失神

短時間で意識を失う失神の状態も症状の1つです。メカニズムはめまいに見舞われた場合と同じで、お湯を張った湯船から出ようと立ち上がった際に、それまで身体が受けていた水圧から解放されることが原因と考えられます。

水圧からの解放で血圧が下がり、心臓から脳への血流が減ることで、意識を失う流れです。

脳梗塞や心筋梗塞のような後遺症も

ヒートショックでは血圧が大きくアップダウンする分、脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な後遺症に見舞われる場合もあります。急激な血圧の変化に脳や心臓の血管に大きな負担がかかったあげく、血栓で詰まったり血管自体が破れるためです。

脳梗塞や心筋梗塞は、ともにその後の人生に多大な悪影響をもたらしかねない疾患です。命を落とす危険さえある分、もしもご家族がお風呂に入っている最中に倒れたときは、すぐさま救急車を呼ぶ必要があります。

ヒートショックの予防法

ヒートショックは事前にさまざまな対策を打っておくことで、発症を防げます。主な予防法は次のとおりです。

それぞれの方法を、ひとつずつ解説します。

入浴前に脱衣所や浴室を温める

ヒートショックを防ぐには、入浴の前に脱衣所や浴室(お風呂場)の室温を上げることが大切です。あらかじめ着替える場所やお風呂場を温めておけば、リビングなど温かい場所との気温差を小さくできる分、発症の可能性も下がります。気温差については、ヒートショックに見舞われやすいプラスマイナス10度よりも小さくなるようにするのが理想的です。

脱衣所については、お風呂に入る前にファンヒーターなどの暖房器具で温めるのがおすすめです。一方お風呂場の温度を上げる方法として、以下のものがあります。

  • 湯船にふたをしない状態でお湯を張る
  • お風呂場専用の暖房器具を活用する
  • シャワーによる給湯:室温が15分で10度上昇
  • 入浴中はお風呂場の換気扇を止めておく
  • お風呂場の床に簀子(すのこ)やマットを敷く

以上の方法で着替える場所やお風呂場を温めることが、予防への第1歩です。

お湯の温度は40度を目安にする

湯船に張るお湯の温度は40度を目安にしましょう。これ以上熱い42度以上のお湯に10分間浸かると体温が高熱といえる水準の38度以上に急上昇してしまい、ヒートショックを引き起こす危険性が高まります。

無理なく温まれる40度前後を目安にすることで、安全で快適な入浴につながるのです。もし可能であれば、湯温をよりぬるめの38度にする方法もおすすめといえます。

家族に声をかけてから入浴する

ご家族と一緒に暮らしている方は、先に声をかけてからお風呂に入ることもポイントです。先にご家族に声をかけておけば、お風呂に入っている間に異変が起きても気付いてもらえます。

もし、同居のご家族がいない場合は、お風呂場に近い場所にスマートフォンや携帯電話を持ち込むのがおすすめです。万が一、不測の事態が起きたときにもすぐに救急車を呼べます。

お金に余裕があれば、IT見守り機器を設置するのもひとつの手段です。お風呂場への入退室をチェックする用途に使える分、異常があった際に近くに住むご家族に知らせられ、いち早く対策を講じられます。

かけ湯や入浴時間にも注意する

お風呂に入る際は湯船に入る前のかけ湯や、湯船に入る時間への意識も大切です。

お湯に浸かる直前にかけ湯しておけば、冷え切った体が温かいお湯に慣れられる分、急激な温度変化を防げます。なお、手足など心臓から離れている部位からゆっくりとお湯をかけていきましょう。

加えてお風呂に浸かる時間は、長くても10分程度に留めることも大切です。あまりにも長い時間湯船に浸かると、体温が上昇するにつれて体が受ける負担も大きくなるためです。

湯船からゆっくり出る

湯船から出る際は、急がずゆっくり出ることが重要です。すぐに湯船から立ち上がると、血圧が一気に下がって心臓から脳への血流が一時的に減ります。立ちくらみに見舞われるだけでなく、失神したり溺れたりする危険さえあります。

湯船から出る際も、ゆったりした動作を心掛けることで、めまいなどの予防が可能です。なお、湯船のふちや手すりにつかまった状態でゆっくり立てば、より発症の危険性を下げられます。

入浴後は十分に水分を取る

お風呂から上がった後の十分な水分補給も欠かせません。湯船に浸かっている間は発汗によって体内の水分が排出されます。ただ、体内の水分が不足すると、血栓ができたり血圧が上がったりする分、脳梗塞などで重篤な状態に陥る危険性が高まります。

お風呂から上がった後の失神を防ぐ意味でも、水分補給は欠かせません。なお、時間に余裕があれば入浴前の水分補給もおすすめします。

ヒートショックが起きた時の対策

万が一ヒートショックが起きてしまった場合も、事前にできる対策を知っていれば落ち着いて対応できます。起きた場合にできる対策として、以下の方法がおすすめです。

気分が落ち着くまで立ち上がらない

湯船に浸かっている最中に気分が悪くなったときは、落ち着くまで立ち上がることは避けます。急に湯船から立ち上がると、急激に血管が広がったり血圧が上がったりして、めまいなどに襲われるためです。

気分が一通り落ち着くまでは、湯船でじっとしているようにします。なお、溺れないように手すりなどにつかまることもポイントです。

意識があるうちに浴槽の栓を抜く

加えて、気分が悪くなったときには、意識があるうちに浴槽(湯船)の栓を抜きましょう。意識を失ったときにお湯が残っていると、体が湯船の中に沈み、溺れてしまうためです。

もし先に栓を抜いておけば、お湯が排水溝から流れ出ていく分、溺れる危険性は下がります。

家族が見つけた時にできる対策

もしお風呂場でヒートショックを起こしたご家族がいた場合、落ち着いた対処が重要です。湯船や床に倒れているご家族を見つけたら、以下の順番で対応しましょう。

  1. 湯船の栓を抜くとともに、他のご家族やご近所の方に助けを求める。
  2. 倒れた人を湯船から救い出す(難しいときは、倒れている人の身体をふたに載せるなどして沈まないようにする)。
  3. 119番で救急車を呼ぶ。救急車が駆け付けるまで反応の有無を確認する。
  4. 反応がないときは呼吸の有無を確認する。
  5. 呼吸がなければ、救急車が着くまで心臓マッサージや人工呼吸を試みる。心臓マッサージ30回・人工呼吸2回を1セットとして繰り返す。

なお、救急車を呼ぶべき状況なのかを判断できない場合は、「#7119(救急相談センター)」に連絡してください。医師や看護師などの専門家が対応する窓口であるため、緊急性を判断してもらえたりアドバイスを受けられたりします。

ヒートショックになりやすい人の特徴

ヒートショックを防ぐには、なりやすい人の特徴を知っておくことも有効な手立てです。とくに以下の特徴に当てはまる方は日頃から十分にご注意ください。

  • 65歳以上の高齢者
  • 高血圧や糖尿病、動脈硬化の持病を抱えている方
  • 肥満や睡眠時無呼吸症候群、不整脈の方
  • 一番風呂や熱めのお風呂が好きな方
  • 日頃から長湯の習慣がある方
  • 入浴前にお酒を飲む習慣がある方
  • お風呂場などに暖房設備がない方

65歳以上の高齢者や高血圧などの持病がある方、熱いお湯や長湯を好む方などはヒートショックを引き起こす危険性が高くなる傾向にあります。

まとめ|ヒートショックは事前の対策で防げる

ヒートショックは冬場の温かい場所と気温が低い場所との温度差が原因で生じる症状ですが、事前にさまざまな対策をしておくことで防げます。とくに入浴前に脱衣所やお風呂場を温めたり、入浴時のかけ湯や短い入浴時間などを心掛けることが大切です。

仮に症状が発生しても、ゆっくり立ち上がることやご家族の助けを借りることで深刻な事態を防げます。日頃からヒートショックに対する理解や対策を心掛けて、症状が起きないようにしましょう。

ヒートショックに関するよくある質問

ヒートショックは夏にも起こることはある?

ヒートショックは冬場だけでなく、夏に起きることもあります。とくにエアコンで冷えた部屋と、エアコンの風が届かない廊下や屋外とでは、気温差が10度以上になるために、注意が必要です。

夏場のヒートショックに備えるには、エアコンの設定温度を低くしすぎないことや、リフォームなどで自宅の断熱性を高めることなどの方法があります。

ヒートショックは若い人もなることはある?

高齢者がなりやすいイメージのヒートショックは、若い人でもなるケースがあります。とくにストレスが溜まる生活を送っている方や睡眠を十分にとれていない方は、気温差が大きい環境の行き来で発症する可能性に注意が必要です。

ヒートショックで死亡するケースはある?

ヒートショックが起きた場合、ときとして死亡するケースがあります。とくに多いのが、入浴中の体調不良により湯船の中で溺れて亡くなる事例です。

高温のサウナはヒートショックのリスクが高い?

高温のサウナも、冬場のお風呂場と同じようにヒートショックのリスクが高い場所です。サウナの場合は、水風呂や外との気温差が大きいことが要因になります。

加えて、サウナは湯船に入っている場合以上に体内の水分が汗として大量に流れ出るため、血管内に血栓ができやすい状態です。これらの要因から、高温サウナでもヒートショックが起きる恐れは十分にあります。

とくにご高齢の方や持病のある方は、高温のサウナは避けた方が良いでしょう。