ヒートショックが起きたらどうする?緊急時の行動手順から日常の予防策まで徹底解説

公開日:2023.12.09 スタッフ ブログ 健康 豆知識

ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく上下し、心臓や血管に負担がかかる現象です。温かいリビングから冷え込んだ脱衣所へ移動したり、冷えた体のまま熱い湯船に浸かったりすることで起こり、めまいや失神、重症の場合は脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすこともあります

周囲にヒートショックになった方がいると「自分や家族もいつかなってしまうのでは?」と不安に感じてしまいます。

本記事では、ヒートショックが起きたときの緊急対処法から、救急車を呼ぶかどうかの判断基準、日常で実践できる予防策まで幅広く紹介します。

「自分に異変が起きた場合」と「家族が倒れていた場合」では対応が異なるため、それぞれのケースを押さえておき、緊急時にも落ち着いて行動しましょう。

ヒートショックが起きたらどうする?緊急時の対処法

ヒートショックへの対処は、一刻を争う場面もあります。ここでは以下の3つのケースに分けて、具体的な行動手順を紹介します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

入浴中にめまいや異変を感じたときの行動手順

入浴中にめまいや動悸、息苦しさなどの異変を感じたら、まずは以下の手順で行動してください。

やること 理由
1.湯船の中で姿勢を低くし、急に立ち上がらない 立ち上がると血圧がさらに下がり、失神や転倒の危険がある
2.浴槽の栓を抜く 意識を失った場合の溺水リスクを減らせる
3.浴槽のふちにつかまりながらゆっくり出て、その場に座る 低い姿勢のまま出て、脱衣所や浴室の床で体を休める
4.家族に助けを求める 声が出にくいときは洗面器で壁やドアを叩いて音を出す方法も有効

少しでも意識がもうろうとする感覚があれば、自力で動こうとせず、その場で助けを待ちましょう。無理に浴槽から出ようとすると、転倒して頭を打つ危険があります。

家族が浴室で倒れていたときの対処法

家族がお風呂場で倒れている、または湯船の中で意識を失っている場面に遭遇したら、慌てずに以下の順番で対応しましょう。

やること ポイント
1.湯船の栓を抜き、周囲に助けを求める まず溺水を防ぐために排水。同時に大声で助けを呼ぶ
2.倒れた人を湯船から引き上げる 難しい場合は無理をせず、顔がお湯に沈まないよう体を支える
3.119番に通報し、救急車を呼ぶ 到着までの間、倒れた人に呼びかけて反応の有無を確認する
4.反応がなければ呼吸を確認する 胸の動きを見て、正常な呼吸があるかチェックする
5.呼吸がなければ心肺蘇生を開始する 胸骨圧迫30回+人工呼吸2回を1セットとし、救急隊到着まで繰り返す(人工呼吸が難しい場合は、胸骨圧迫のみを絶え間なく続けてください)

なお、体が濡れた状態でも心肺蘇生は実施できます。AED(自動体外式除細動器)が近くにあれば活用しましょう。

ただし、AEDを使用する際は体表面の水分を拭き取ってからパッドを貼ってください

救急車を呼ぶべき?判断に迷ったときの目安

「救急車を呼んだほうが良いのか、それとも様子を見て良いのか」と迷う場面は少なくありません。以下のような症状がみられるときは、ためらわず119番に通報してください。

  • 意識がない、呼びかけに応じない
  • 胸の痛み、激しい頭痛、体の片側の麻痺がある
  • 意識が戻っても呂律が回らない、手足にしびれがある(脳卒中の疑いがあります)

一方、軽いめまいだけで短時間のうちに回復した場合でも、油断は禁物です。念のため当日中にかかりつけ医を受診するのがおすすめです。

それでも判断に迷ったときは、「#7119(救急安心センター)」に電話しましょう。医師や看護師などの専門スタッフが症状を聞き取り、救急車を呼ぶべきかどうかアドバイスしてくれます。

24時間対応の地域も多いため、緊急時の連絡先として覚えておくと安心です。

ヒートショックの症状・特徴

ヒートショックが起きたときにどんな症状が現れるかを知っておくことで、異変にいち早く気づき、適切な対応ができます。

ヒートショックで現れる代表的な症状を確認しておきましょう。

それぞれの症状や特徴を、ひとつずつご紹介します。

めまいや立ちくらみ

ヒートショックで最も多くみられる症状が、めまいや立ちくらみです。湯船に浸かっている間は、お湯の水圧によって体全体が適度に圧迫されています。そこから急に立ち上がると水圧が一気になくなり、血管が広がって血圧が下がります。

その結果、心臓から脳へ送られる血液の量が一時的に減り、めまいや立ちくらみを引き起こすのです。とくに長時間お湯に浸かったあとに勢いよく立つと、症状が出やすくなります。

頭痛

ヒートショックでは頭痛が起こる場合もあります。温かい場所から寒い場所へ移動したときに血管が収縮すると、脳への血流が一時的に減少して頭痛の原因になります。

また反対に、湯船に浸かって体温が急上昇し、血管が拡張することで強い痛みを引き起こすケースも少なくありません。

いずれにしても、血管の急激な変化が引き金となるため、温度差の大きい環境の行き来には十分な注意が必要です。

嘔吐

吐き気や嘔吐もヒートショックの症状の一つです。温かい場所と寒い場所を行き来するたびに血圧が乱高下し、心臓や血管に大きな負担がかかります。この負担が原因で血流が不安定になり、気分が悪くなって吐き気や嘔吐につながるのです。

なお、嘔吐の際に気道が詰まると、呼吸困難に陥る危険もあります。入浴中に吐き気を感じたら、まず浴槽の栓を抜き、体勢を安定させて顔を横に向け、気道を確保するよう心がけてください。

失神

短時間で意識を失う「失神」も、ヒートショックの深刻な症状です。めまいと同じメカニズムで、湯船から立ち上がった際に水圧から解放されて血圧が急降下し、脳への血流が不足して意識を失います。

浴室内で失神すると、そのまま湯船に沈んでしまい溺水の危険が生じます。浴槽内で少しでもふらつきを感じたら、立ち上がらずにその場で安静にしましょう。

脳梗塞や心筋梗塞のような後遺症も

ヒートショックによる急激な血圧変動は、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患を引き起こす場合があります。血圧の乱高下によって脳や心臓の血管に大きな負荷がかかり、血管が詰まったり破れたりするためです。

これらの疾患は命に関わるだけでなく、後遺症としてその後の生活に大きな影響を与える可能性があります。入浴中に激しい胸の痛みや手足の麻痺を感じた場合は、一刻も早く救急車を呼びましょう。

ヒートショックになりやすい人

ヒートショックは誰にでも起こりうるものですが、なかでもリスクが高い方がいます。自分や家族が該当するかどうかを知っておけば、日頃の備えに役立ちます。

以下の表でチェックしてみてください。

カテゴリ リスクが高い人の特徴
年齢 65歳以上の高齢者(血管の柔軟性が低下し、血圧変動の影響を受けやすい)
持病 生活習慣病や循環器系の疾患がある方
体質 肥満、睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に呼吸が止まる状態)、不整脈のある方
入浴習慣 一番風呂や42度以上の熱いお湯を好む方、長湯の習慣がある方
生活習慣 入浴前に飲酒する習慣がある方、食後すぐに入浴する方
住環境 脱衣所やお風呂場に暖房設備がない住宅にお住まいの方

上の表に複数当てはまる方は、とくに注意が必要です。たとえば「65歳以上で高血圧、さらに脱衣所に暖房がない」といった条件が重なると、ヒートショックの発症リスクは大きく高まります。

また、40代や50代でも高血圧や糖尿病などの基礎疾患を抱えている方、あるいは飲酒後に入浴する習慣がある方は十分にリスクがあります。

年齢に関係なく、上記の特徴に心当たりがある方は、次に紹介する予防法を日常に取り入れてみてください。

ヒートショックが起きる前にできる予防法

ヒートショックは、日常のちょっとした工夫で発症リスクを大幅に下げられます。また「起きてから対処する」よりも「起こさないための環境を整える」ほうが、体への負担も小さくて済みます。

ここでは、今日から実践できる6つの予防法を紹介します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

入浴前に脱衣所や浴室を暖める

ヒートショックを防ぐには、入浴の前に脱衣所や浴室(お風呂場)の室温を上げることが大切です。リビングとの温度差を小さくしておけば、移動の際に血圧が急変動するリスクを減らせます。具体的には、温度差を10度以内に抑えましょう。

脱衣所はファンヒーターや小型の電気暖房器具で暖めるのが手軽です。お風呂場については、入浴前にシャワーでお湯を出して蒸気を充満させる方法や、浴槽のふたを開けたままお湯を張る方法が効果的です。

また、床が冷たい場合は、すのこやバスマットを敷くのも良いでしょう。

お湯の温度は40度を目安にする

湯船に張るお湯の温度は40度を目安にしましょう。42度以上の熱いお湯への入浴は深部体温を急激に上昇させ、心臓や血管への負担が大きくなりヒートショックを引き起こす危険性が高まります。

ぬるめに感じるかもしれませんが、40度前後でもゆっくり浸かれば体は十分に温まります。

家族に声をかけてから入浴する

ご家族と一緒に暮らしている方は、先に声をかけてからお風呂に入ることもポイントです。先にご家族に声をかけておけば、お風呂に入っている間に異変が起きても気づいてもらいやすくなります

もし、同居のご家族がいない場合は、お風呂場の近くにスマートフォンや携帯電話を持ち込むのがおすすめです。万が一、不測の事態が起きたときにもすぐに救急車を呼べます。

また、お金に余裕があれば、IT見守り機器を設置するのもひとつの手段です。お風呂場の入退室状況をチェックできるため、万が一異常があった際もご家族にすぐ通知され、いち早く適切な対応をとれます。

かけ湯や入浴時間にも注意する

お風呂に入る際は湯船に入る前のかけ湯や、湯船に入る時間への意識も大切です。

お湯に浸かる直前にかけ湯しておけば、冷え切った体が温かいお湯に慣れるため、急激な温度変化を防げます。なお、手足など心臓から離れている部位からゆっくりとお湯をかけていきましょう。

加えてお風呂に浸かる時間は、長くても10分程度に留めることも大切です。あまりにも長い時間湯船に浸かると、体温が上昇するにつれて体が受ける負担も大きくなります。

湯船からゆっくり出る

湯船から出る際は、急がずゆっくり出ることが重要です。すぐに湯船から立ち上がると、血圧が一気に下がって心臓から脳への血流が一時的に減ります。立ちくらみに見舞われるだけでなく、失神したり溺れたりする危険さえあります。

なお、湯船のふちや手すりにつかまった状態でゆっくり立てば、より発症の危険性を下げられます。

入浴後は十分に水分を取る

ヒートショックの予防には、お風呂から上がった後の十分な水分補給も欠かせません。湯船に浸かっている間は発汗によって体内の水分が排出されます。しかし、体内の水分が不足すると血液が濃くなり、血栓ができやすくなるため、脳梗塞などで重篤な状態に陥る危険性が高まります。

お風呂から上がったあとは、必ず水分補給をしましょう。また、時間に余裕があれば入浴前の水分補給もおすすめします。

一人暮らしでヒートショックが起きたらどうする?

一人暮らしの場合、入浴中に異変が起きても周囲が気づけない点が大きな不安材料です。だからこそ、日頃の予防策の徹底に加えて、万が一の備えが重要です。

もしも一人で入浴中にヒートショックの症状を感じたら、以下のポイントを思い出してください。

  • 無理に立ち上がらない(転倒や溺水を防ぐ)
  • 浴槽の栓を抜く(意識を失った場合のリスクを下げる)
  • 浴槽からゆっくり出て、その場で安静にする
  • 呼吸を整え、落ち着いてから行動する

また、事前にできる対策として次のような工夫が役立ちます。

  • スマートフォンをお風呂場の近くに置いておく(防水ケースに入れておくとより安心です)
  • 入浴時間を家族や友人にメッセージで知らせておく(一定時間連絡がなければ確認してもらう)
  • 見守りサービスやセンサー機器を活用する(浴室への入退室を検知し、異常があれば通知する仕組みもあります)

一人暮らしだからこそ、「自分は大丈夫」と過信せず、ふだんから予防と備えの両方を意識しておきましょう。

まとめ|ヒートショックは事前の対策で防げる

ヒートショックは冬場の温かい場所と気温が低い場所との温度差が原因で起きる現象ですが、事前にさまざまな対策をしておくことで防げます。とくに入浴前に脱衣所やお風呂場を暖めたり、入浴時のかけ湯や短い入浴時間などを心掛けましょう

仮に症状が発生しても、ゆっくり立ち上がることやご家族の助けを借りることで深刻な事態を防げます。日頃からヒートショックに対する理解や対策を心掛けて、症状が起きないようにしましょう。

ヒートショックに関するよくある質問

ヒートショックの治し方はある?

ヒートショック自体に特効薬や決まった治療法があるわけではありません。発症時は、めまいや失神、心筋梗塞や脳梗塞など、現れた症状に応じた医療処置が行われます。

なお、軽いめまい程度で症状が回復した場合でも、原因となる持病(高血圧など)の管理が再発防止の鍵になります。

後遺症が残った場合はリハビリテーションでの回復を目指すことになりますが、もっとも大切なのは「治す」よりも「起こさない」ことです。本記事で紹介した「日頃の予防策」をぜひ実践してみてください。

ヒートショックは若い人でも起きる?

ヒートショックは、若い方でも以下のような状況ではリスクが高まります

  • 飲酒後や食後すぐの入浴(血管拡張や血流の偏りで血圧が不安定になる)
  • 長風呂の習慣がある
  • 睡眠不足や疲労がたまっている
  • 過度なダイエットや水分不足で脱水ぎみ

また、糖尿病や不整脈などの持病がある方は年齢を問わず注意が必要です。「食後は少なくとも1時間あける」「飲酒時は入浴を避ける」といった習慣を心がけましょう。