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イップスの治し方|症状・原因・治療法を解説

イップス治し方
公開日: 2025.06.30

突然、思い通りに身体が動かなくなる「イップス」は、スポーツや仕事の現場で深刻な問題となります。

とくに、真面目で完璧を求める人ほど発症しやすいとされ、技術面だけでなく心理的要因や脳の働きが関係する複雑な現象です。

本記事ではイップスの治し方について、薬物療法・心理療法・TMS治療といった医学的アプローチに加え、競技別の具体的な対処法も解説します。

イップスに悩んでいる方はもちろん、今後の防止対策として理解を深めたい方は参考にしてください。

イップスの治し方|3つの主な治療法

イップスとは、スポーツや音楽、仕事の現場などで突然パフォーマンスが発揮できなくなる現象です。

多くは心理面が要因とされていますが、克服するには原因に応じた治療法を選択する必要があります。

ここでは、「薬物療法」「心理療法」「TMS治療」に注目し、それぞれの治療法の特徴と効果について解説します。

薬物療法

イップスでは、抗不安薬や抗うつ薬が使用されるケースが多く、不安や緊張、抑うつといった精神的要因を緩和する効果があるとされています。

イップスの根底にある精神的ストレスを軽減させて、身体の動きの改善を目指す治療法です。

代表的な薬物療法には、ボツリヌス菌が生成する「ボツリヌストキシン」を筋肉に注射する「ボツリヌス治療」があります。

筋肉が過度に緊張するなどして、無意識的に身体が動いてしまうケースで筋肉の緊張を緩め、動きやすくするのが特徴です。

ただし、費用が比較的高額であり、定期的に注射する必要があります。

内服薬には、不安や緊張を緩和する抗不安薬や、抗うつ剤の「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」などを使います。

ただし、薬物療法は即効性が期待できる一方、根本的な解決には至らない場合も少なくありません。

他の治療法と併用しながら改善を目指していくことが大切です。

心理療法

イップスの根本的な要因には、過度なプレッシャーや自己否定感など心理的な問題が関与していることがあります。

心理療法は、こうした心の問題にアプローチする手段の一つです。

代表的な方法には「自律訓練法」があり、呼吸や筋弛緩を通じて心身の緊張を緩和し、自己コントロール感を高める効果があるとされています。

また、思考のクセを修正し、パフォーマンス時の不安や恐怖を軽減する目的で「認知行動療法」も取り入れます。

再発を防ぐための長期的な支えとなる心理療法は、継続的な実施が必要です。

TMS治療

TMS(経頭蓋磁気刺激)治療は、イップスに対する先進的なアプローチとして注目されています。

磁気を使って脳のある部分にやさしい刺激を与えることで、脳の働きのバランスを整える治療方法です。

とくに、動きや気持ちをコントロールする「前頭前野」という場所の働きを整えることで、緊張しすぎたり、不安を感じすぎたりする状態をやわらげる効果が期待されています。

また、一定期間の継続により、長期的な効果が得られやすいのも特徴です。

TMS治療は薬物を使用しないため、副作用のリスクが低く、薬剤の効果が限定的な方や薬物に抵抗がある方におすすめです。ただし、医療機関での的確な実施が不可欠です。

なお、アメリカなど欧米では普及が進んでいるものの、日本では受けられる医療機関が限られます。

イップスのシーン別治し方|克服・対処法

イップスは誰にでも起こり得る現象ですが、発症の場面や影響は人によって異なります。

発症する状況に応じた原因や克服法を理解することが、回復への近道です。

ここでは、野球、ゴルフ、仕事のイップスで求められる具体的な対処法や、実際に効果が認められているアプローチを紹介します。

野球イップスの治し方

野球におけるイップスは、送球や投球動作に突然支障が出る現象です。

競技継続に深刻な影響を及ぼすため、技術面と心理面の両方からアプローチしなければなりません。

具体的には、以下のような方法に効果があるとされています。

脳をリセットする期間を設ける

イップスは、間違った動作を繰り返す中で脳がその動作を学習してしまった状態です。

そのため、まずは2週間ほどボールを投げない期間を設け、脳に定着した誤ったフォームの記憶を薄めていきましょう。

無理に続けるよりも、一度「手を止める」ことが回復の第一歩になります。

正しいフォームを再習得する

イップス克服に向けて再スタートを切る際には、単に投げ方を変えるのではなく、理にかなった動作を仕組みから理解し直すことが大切です。

例えば、どこに重心を置くべきか、体のどの部位をどう使うかといった基本動作を見直します。

正しい投球フォームを脳と体に再インプットし、誤って学習してしまった内容に上書きする意識を持ちましょう。

上半身と下半身のスムーズなつながりを意識する

イップスの状態では腕と脚が連動せず、ぎこちない動作になって体全体の動きがバラバラになっているケースが多く見られます。

改善するには、下半身の踏み込みと上半身の振りがスムーズにつながる感覚を取り戻すトレーニングが効果的です。

フォームを整えるだけでなく、体全体の調和を意識することを心がけましょう。

反復練習で再現性を高める

フォームの修正と動作の連動ができてきたら、いよいよ投球練習に戻るタイミングです。

遠投や投げ込みを通じて、修正後のフォームを無意識でも自然にできるよう、再現性を高めていきます。

ここで大切なのは、正しい動作を反復して本来の投球感覚を取り戻すことです。

ゴルフイップスの治し方

ゴルフにおけるイップスとは、パッティングやアプローチなどで手が動かなくなる、もしくは意図しない動きが出る状態を指します。

克服するには、以下のように身体の感覚と精神的安定の両面から対処することが不可欠です。

  • スイング動作の再構築:反射的に動作が出るフォームに修正する
  • ルーティンの確立と徹底:毎回同じリズム・手順で打ち、心身の安定を図る
  • 「打たなければならない」という思考の解消:結果よりもプロセスに集中する

また、イップスを「悪いこと」と捉えず、単なる一時的な現象と受け入れる心の持ち方も重要です。

状況によっては、スポーツ心理学的アプローチやTMS治療の導入も選択肢になります。

ゴルフイップスを治すには、日常の練習内容や意識の持ち方を根本から見直していきましょう。

仕事イップスの治し方

仕事におけるイップスとは、プレゼンや電話対応、会議発言など特定の業務で極度の緊張や動揺が生じ、うまくパフォーマンスできなくなる状態を指します。

仕事イップスを治すには、以下のように心理的な負荷の軽減と自己肯定感の回復が重要です。

  • 失敗体験の適切な整理:過去のミスやトラウマを放置せず、専門家の支援を受けながら認知を修正する
  • 段階的な自己露出法:まずは少人数での発表やロールプレイなどから始め、徐々に自信を取り戻していく
  • 自律訓練法や呼吸法の活用:不安や緊張を和らげるリラクゼーション技法を取り入れる

さらに、職場環境の見直しや上司との信頼関係の構築も効果が期待できます。

また、必要に応じてTMS治療や薬物療法を組み合わせれば、より本質的な改善を目指せるでしょう。

仕事イップスの克服には、自分自身の心の動きを理解し、適切にケアしていく姿勢が大切です。

イップスの症状・原因

イップスは、突然重い症状が出るわけではなく、最初は小さな変化として現れます。また、原因はひとつではありません。

プレッシャーや不安といった心理的なものから、神経系の機能異常による身体的な要因まで、さまざまな背景が複雑に絡み合っているのです。

ここでは、イップスの見逃されがちな初期症状と、主な原因となる「ジストニア」「競技不安」について解説します。

初期症状

イップスは、突然深刻な症状が現れるわけではなく、初期段階では小さな違和感として始まります。

たとえば、今まで問題なくできていた動作が引っかかる、力加減を誤る、緊張で体が固まるなどの微細な変化です。

こうしたパフォーマンスの低下に本人が戸惑い、自信を失うことで悪循環に陥ってしまいます。

「何かがおかしい」と感じた時点での早めの対応が、イップスの重症化を防ぐカギです。

ジストニア症状

イップスの症状のひとつに「ジストニア」と呼ばれる神経疾患に似た運動障害があります。

意図しない筋肉の緊張や、動作の乱れを引き起こすのが特徴です。

たとえば、投球時に腕が勝手にねじれたり、文字を書く際にペンがうまく動かなくなったりといった現象が起こります。

ジストニアは、脳の運動制御に関わる領域の異常な神経活動が原因とされており、心理的要因だけでなく神経生理学的な背景が存在するとされています。

TMS治療や薬物療法の組み合わせで症状の改善を目指していきますが、単なる精神的な問題と誤診されやすいため専門的な評価と治療が必要です。

競技不安

イップスの原因として、一般的なのが過度な「競技不安」です。

試合や練習などで「失敗してはならない」「期待に応えなければ」という強いプレッシャーを感じ、身体が思うように動かなくなる状態を指します。

特に真面目で責任感の強い性格の人ほど、過去の失敗経験が記憶に残って体が萎縮し、普段通りの動きができなくなってプレーに影響を及ぼすとされています。

競技不安は、認知行動療法や自律訓練法で適切に対処すれば、イップスの発症や悪化を予防につなげられます。

心理的なケアを軽視せず、早期の支援を受けることが回復への近道です。

まとめ|イップスの治し方を理解して早期治療に取り組もう

イップスは一時的な現象であり、専門的な支援や治療を受けることで克服できる症状です。

その背景には、心理的ストレスや脳の神経活動、繰り返し動作への過剰な意識など、さまざまな要因が複雑に絡んでいます。

イップスに悩んでいるなら一人で抱え込まず、早期に専門機関での相談を検討しましょう。

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イップスの治し方に関するよくある質問

イップスになりやすいのはどんな人?

イップスを発症しやすいのは、真面目で責任感が強く、完璧を求める傾向がある人がなりやすいとされています。

ミスを過度に恐れる、また自分に対して過剰なプレッシャーをかけやすい方は注意しましょう。

また、指導者や周囲からの期待が強い環境や、過去の失敗経験がトラウマとなって特定の場面で極度の不安を感じるようになると、イップスの発症リスクが高まります。

イップスになった有名人は?

著名選手の実例は、イップスに悩む多くの人にとって希望と励みになります。

世界的に有名な元野球選手イチロー氏も、かつてイップスを経験したとされる一人です。

プロ入り直後の時期、外野からの送球が思うようにできず、試合では中継役に任せる場面があったとされています。

トップアスリートであっても、心理的要因によって身体の動きに影響が出る可能性があるという一例です。

イップスの原因が脳活動にあるのは本当?

イップスの原因が脳の働きと関係していると、広島大学の研究で報告されています。(文献1

イップスの悩みを抱えるアスリートの脳波を分析した結果、動作開始時に前頭前野を中心とした脳活動に特徴的な異常が見られました。

イップスが単なる心理的な問題ではなく、神経生理学的な要因を伴う現象である可能性を示唆しており、科学的根拠に基づいた治療の重要性を強調しています。

イップスになりやすいスポーツは?

イップスはすべての競技に起こり得ますが、特に「精密な動作」や「繰り返しの動作」が求められるスポーツに多いのが特徴です。

たとえば、スポーツ心理学の研究では、野球、ゴルフ、アーチェリーなどでイップスの発症例が多いことが報告されています。文献2

これらの競技は結果へのプレッシャーが集中しやすく、動作の微細なズレが直接ミスにつながるため、心理的影響がパフォーマンスに強く現れやすいと考えられます。

イップスの予防には技術面だけでなく、メンタルトレーニングや心理的サポートの併用が重要だといえるでしょう。

参考文献

(文献1)
広島大学「【研究成果】イップスを発症しているアスリートでは運動時に特徴的な脳活動が見られることを解明〜イップス克服方法の確立に期待〜」
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/64744#:~:text=%E3%81%BE%E3%81%9F%E3%80%81%E9%81%8B%E5%8B%95%E7%B5%82%E4%BA%86%E6%99%82%E3%81%AB%E3%81%BF,%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AF%E4%B8%8D%E6%98%8E%E3%81%A7%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

(文献2)
スポーツ心理学研究 2022年 第49巻 第 1 号 5-19頁「スポーツにおけるイップスのアセスメント・症状・対処」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspopsy/49/1/49_2021-2103/_pdf/-char/ja

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