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- 股関節
骨壊死の分類について|股関節・肩の骨頭壊死と膝の骨壊死症 骨壊死とは骨を栄養している血管が障害されて血液が供給されなくなってしまった結果、骨の一部分が壊死してしまう病気です。怪我などの外傷による血管の障害や、アルコール、ステロイド使用者などに原因不明で生じることがあります。 この記事ではそれぞれの骨頭壊死と骨壊死の種類について解説し、重症度を決める分類方法やステージの内容について詳しく解説していきます。 骨壊死と骨頭壊死症 骨壊死は全身のあらゆる骨に起こり得ますが、代表的な部位として、股関節の大腿骨頭に起きる大腿骨頭壊死、肩関節の上腕骨に起こる上腕骨頭壊死、膝関節骨壊死などがあります。 股関節、肩関節についてはそれぞれ、大腿骨頭、上腕骨頭という部位があるので骨頭壊死という病名がつきますが、膝関節は骨頭という部位がないので骨壊死という病名となります。 大腿骨頭壊死について 大腿骨頭壊死の原因 股関節を構成している大腿骨頭を栄養している血管が障害されることによって生じます。 原因不明の特発性と股関節の骨折や脱臼などの外傷、放射線治療、潜函病などによって発症する場合があります。 大腿骨頭壊死の分類 原因不明である特発性骨頭壊死では壊死の範囲によって重症度分類がありType A~Cに分けられます。 重症になるほど、壊死範囲が大きく、大腿骨頭が潰れてしまうリスクが高くなりType Aが軽症でCになるとより重症となります。Type CはさらにC-1とより重症なC-2に分けられます。 それぞれの内容について解説します。 Type A:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3未満 Type B:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3〜2/3 Type C:壊死範囲が体重がかかる領域の2/3以上 Type C-1:壊死の範囲が骨盤の縁の内側にあるもの Type C-2:壊死の範囲が骨盤の縁の外側にあるもの 大腿骨頭壊死のステージ分類 大腿骨頭壊死の進行度についての分類です。初期には壊死部分が潰れていき、進行すると軟骨がすり減ることによって変形性関節症になってします。ステージは1〜4に分けられるので、それぞれについて簡単に解説します。 ステージ1:レントゲンで異常がなく、MRI検査などで壊死がわかる場合 ステージ2:レントゲンで異常があるものの、骨頭が潰れていない時期 ステージ3:骨頭が潰れているものの、関節軟骨があり関節の隙間が残っている時期 ステージ4:軟骨がすり減り、変形性関節症となっている時期 これらの重症度、ステージ分類とご本人の年齢や社会生活の状況、希望などを考慮して治療方針が決定されます。軽症なタイプであれば保存治療で治る方もいますが、重症なタイプや末期のステージでは手術を要する場合もあります。 上腕骨頭壊死について 上腕骨頭壊死の原因 肩関節を構成している上腕骨頭という部分を栄養している血管が障害されることによって骨が壊死してしまう病気です。 原因は、外傷性と非外傷性に分けられます。外傷性には上腕骨の骨折、脱臼などがあり、非外傷性にはステロイドの使用やアルコール、鎌状赤血球症、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの全身性疾患などがあります。 上腕骨頭壊死のステージ分類 病型の分類にはCruess分類が最も使われています。 ステージ1:レントゲンで異常がなく、CTやMRI検査で壊死がわかる場合 ステージ2:骨透亮像や骨硬化像、限局性の骨溶解像 ステージ3:軟骨下骨に骨折線を認める段階 ステージ4:上腕骨頭に加えて、肩甲骨の関節窩にも骨の変化を生じている場合 上腕骨頭壊死に対する治療法は、このステージ分類、壊死の範囲、患者の年齢、症状、全身の健康状態などの要因によって決まります。保存治療で治る方もいますが、進行してステージ末期になると人工関節が必要となる場合もあります。 膝関節骨壊死について 膝関節骨壊死の原因 膝関節の骨壊死も同じように、何らかの原因で骨が壊死してしまう病気で、膝関節では大腿骨側によく起こります。 高齢の方によく起こりますが、変形性膝関節症などの膝の痛みと比べて安静にしていても痛みが強いことが特徴です。 原因はまだはっきりとわかっていませんが、肥満やステロイド薬の使用の他、軽微な骨折が原因となる場合もあります。 膝関節骨壊死のステージ分類 いくつかのステージ分類が提唱されていますが、代表的なものを1つ紹介します。 ステージ1:レントゲンで異常がみられない時期 ステージ2:レントゲンで骨内に壊死領域がみられるもの ステージ3:レントゲンで軟骨の下に骨折線があり、関節面が凹んでいるもの ステージ4:関節の隙間が狭くなってしまっている時期 骨の壊死に対する最新の治療法 いずれの骨壊死でも、初期の段階では異常が見つからない場合もあります。しかし、症状が進行すると壊死した部分が潰れてしまい、結果として変形性関節症を起こしてしまいます。 関節が変形してしまうと、保存治療の効果は限られているので、基本的には人工関節置換術が選択されます。 しかし、最近では手術に至らないようにする治療として「再生医療」があります。再生医療は導入されたばかりの最新の治療法であり、ご自身の細胞から培養した幹細胞などを直接関節内に投与することで組織の修復を促します。それによって骨や軟骨の再生が起こり、症状がよくなる可能性があります。 治療について詳しく知りたい方はいつでもお気軽にご相談ください。 骨の壊死についてよくあるQ&A Q . 骨壊死にならないか心配ですが、気を付けることはありますか。 A . 現代医学でも骨壊死の正確な原因はわかっていません。危険因子としてわかっているのは外傷、ステロイドの使用、アルコール多飲です。 ステロイドは、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど全身性疾患の治療に必要なので、飲まないことはおすすしませんが、外傷やアルコールはご自分で気を付けることができます。無理な運動は行わず、規則正しい生活習慣を送ることが予防に必要と言えるでしょう。 Q . レントゲンで問題ないと言われましたが、大丈夫でしょうか。 A . 骨壊死は初期の段階ではレントゲンで異常がわからないことがほとんどです。壊死した領域がレントゲンでわかるまでは時間がかかりますが、MRIでは早期に病気を見つけることができます。 痛みが強く心配な場合はMRIなどの精密検査について担当の医師と相談することをおすすめします。 まとめ・骨頭壊死の分類について|股関節・肩の骨頭壊死と膝の骨壊死症 骨壊死は骨を栄養している血流が途絶えることによって発症する、現時点でも原因が不明の難病です。 大腿骨頭や上腕骨頭、膝関節によく起こり、初期のレントゲンでは異常がみつからない場合がほとんどです。放置して症状が進行すると骨切り術や、人工関節などの手術が必要になりますが、最近では骨や軟骨の再生を促す再生治療も行われ始めています。 手術に至らないようにするためにも早期に病院で診断してもらい、治療について医師と相談していくことが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S147 監修:医師 加藤 秀一 参考文献 https://www.cancertherapyadvisor.com/home/decision-support-in-medicine/shoulder-and-elbow/osteonecrosis-of-the-humeral-head/ https://radiopaedia.org/articles/cruess-classification-of-humeral-head-osteonecrosis https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK562286/
2023.10.02 -
- 膝の慢性障害
- ひざ関節
膝蓋大腿関節症は膝の皿が痛い症状が特徴!原因、治療法について 膝周辺の痛みを起こす病気に「膝蓋大腿関節症」というものがあります。この病気はスポーツをしている方や膝のケガをした方、中高年の方で起こりえます。 この記事では膝蓋大腿関節症の症状、原因、治療法について解説していきます。膝の痛みでお困りの方はぜひ参考にしてみてください。 膝蓋大腿関節症とは 膝には大腿骨と脛骨でつくられる膝関節と、大腿骨と膝蓋骨(膝の皿の骨)でつくられる膝蓋大腿関節の2つの関節があります。膝蓋大腿関節は「しつがいだいたい関節」と読み、膝の皿の骨である膝蓋骨と大腿骨との間で障害が起こり、痛みを起こす病気です。膝蓋骨はpatella、大腿骨はfemurと英語で表記するためpf関節とも呼びます。 通常、膝蓋骨と大腿骨が接触している部分は骨の表面に軟骨があり摩擦がほとんどありません。そのため、膝蓋骨は膝を屈伸する時に滑らかに動きます。しかし、膝蓋大腿関節にずれや炎症が起きたり、軟骨がすり減ってしまうと痛みを起こしてしまい、そのような状態を膝蓋大腿関節症と呼びます。 膝蓋大腿関節症の症状 膝蓋大腿関節症の主な症状は膝のお皿の痛みで、膝を伸ばすとき痛みを感じることが多いです。ケガなどによって膝蓋骨の脱臼や不安定症などがある場合には、膝の皿の横の痛みや、膝のお皿の周りの痛みを感じることもあります。 また、膝のお皿の下が痛い場合もありますが、そのような場合にはジャンパー膝や膝蓋腱炎と呼ばれるバレーボールやバスケットボールなどのジャンプするスポーツをする方に多い膝蓋骨に付着する腱の炎症が原因のこともあります。 膝蓋大腿関節症の主な原因 原因は主に「膝蓋骨の不安定性」と「加齢」による変化です。 健康な方では、膝蓋骨は大腿骨の表面の溝にうまくはまりこみ、溝の中を滑るように動きます。膝蓋骨の不安定症とは、膝蓋骨がこの大腿骨の溝から外れやすくなってしまう症状です。生まれついての骨の形や、足がX脚になっている方では、蓋骨の脱臼・亜脱臼が起こりやすくなります。そのような状態を放置していると、膝蓋骨と大腿骨がぶつかることで、徐々に軟骨がすり減っていきます。 また、加齢も原因の1つです。中高年の女性に多く、加齢によって膝関節の軟骨が摩耗していくと、骨同士がぶつかり痛みを生じてしまいます。 膝蓋大腿関節症の診断方法 診断は身体診察と画像診断により行います。 身体診察 身体診察では視診、触診、痛みを誘発するテストなどを行います。 膝関節の診察では可動域と触診による痛みの部位の確認をまず行います。膝蓋大腿関節症では多くの場合、膝関節の前方や膝皿の痛み(膝蓋骨周辺)が主訴です。 また診察では「patella griding test(膝蓋骨圧迫テスト)」を行います。 patella griding test(膝蓋骨圧迫テスト) 膝蓋骨を上から圧迫して左右に動かすことによって、皿裏に痛み(膝蓋骨の裏側)が誘発されます。 膝蓋骨の不安定症の診察は膝関節を伸ばして、膝蓋骨を外側に押し付けるようにします。 この手技で膝蓋骨が外れるような感じがあれば、不安定症があると判断されます。 画像診断 画像診断では、レントゲン撮影により膝蓋骨の形や位置、大腿骨の溝の形、変形の程度を確認します。 関節の隙間の広さで変形の程度を判断しますが、関節の隙間が少なくなっており、骨棘(こつきょく)という余分な骨ができている場合には、膝蓋大腿関節症があると判断されます。症状が進行すると、関節の隙間がなくなり、骨同士が接触してしまいます。 また、骨の形状を3次元的に判断するためにはCT撮影が有効であり、軟骨・靭帯の状態の評価にはMRIが有用です。 膝蓋大腿関節症の治療法 治療は大きく保存療法と手術療法に分けられます。 保存療法 まず、保存治療について解説します。 加齢が原因の場合 加齢による膝蓋大腿関節症の保存治療では、患部を安静にして、正座や階段などの痛みがでる動作を控えるようにします。 また、膝の裏にタオルや枕をおいて膝関節を伸ばしたり、座っている状態から膝を伸ばす、寝ている状態で足を上げる、痛みの範囲でスクワットをするなどの大腿四頭筋の筋力訓練が有効です。さらに、鎮痛薬や湿布、外用剤などを使用することによって、痛みを軽減することができます。 また、ヒアルロン酸や痛み止めの関節内注射も行われることがあります。これらの治療で痛みが改善せず、日常生活に支障がでる場合には手術が選択されます。 膝蓋骨の不安定症が原因の場合 膝蓋骨の不安定症が原因の膝蓋大腿関節症の場合は、初回の脱臼で大きな骨折がなければ保存的に治療します。保存治療ではサポーターを使用して膝蓋骨が脱臼しないようにしながら、膝関節の可動域訓練、筋力訓練を行います。3ヶ月程度、保存治療をしても痛みや不安定感が残る場合には手術治療が行われる場合があります。 手術療法 次に手術治療について解説します。 加齢が原因の場合 加齢による軟骨損傷が原因の膝蓋大腿関節症では、主に人工関節手術が行われます。 摩耗した軟骨は自然に回復することはないので、傷んだ部分を切除して、金属に置き換え、軟骨の代わりのプラスチックを挿入することで痛みが軽減されます。 膝蓋大腿関節だけではなく、脛骨側の軟骨も傷んでいる場合が多いので、人工膝関節全置換術が行われることが一般的です。人工膝関節全置換術の場合は、治療期間はおおむね2〜4週間程度で、痛みが軽減して、膝の曲がりもよくなり、長期的にも成績が安定しています。 最近では傷んだ部分だけを手術する人工膝関節部分置換術が導入されている施設もあります。部分置換術は主に大腿脛骨関節の内側に行われることが多いのですが、膝蓋大腿関節だけが障害されている場合には膝蓋大腿関節置換術という方法もあります。しかし、手術の適応はまだしっかりと決まっておらず、長期的な成績も不明な部分が多いので、方針について担当医とよく相談することが必要です。 膝蓋骨の不安定症が原因の場合 膝蓋骨の不安定症が原因の膝蓋大腿関節症では、膝蓋腱が脛骨に付く位置を移動させたり、膝蓋骨の内側の靭帯を修復して脱臼を予防させる手術などが行われます。 このように、様々な治療法がありますが、ご自身の状態によって方針は変わってきます。信頼できる医師、病院を見つけて、主治医とよく相談し、納得できる治療を受けることが大切です。 また手術以外にも、リハビリテーションも重要です。リハビリ体制が整っているかどうかも病院選びの参考にしてみてください。 まとめ・膝蓋大腿関節症は膝の皿が痛い症状が特徴!原因、治療法について 膝蓋大腿関節症は加齢や膝蓋骨の不安定性によって、膝の皿の裏に痛みを生じる病気です。膝を曲げ伸ばしするときの痛みが多く、身体診察と画像検査によって診断されます。 治療方針は膝蓋骨の不安定性と軟骨の摩耗の程度、年齢などによって変わってきます。保存治療としてお薬、リハビリ、注射などがあり、改善しない時には手術治療の方法もあります。早めに治療をすることで、症状が早くよくなったり、悪化することを防ぐことができるので膝のお皿に痛みや違和感があり、なかなか良くならない方は早めに専門医に診察をしてもらうようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.151 監修:医師 坂本貞範
2023.09.14 -
- 靭帯損傷
- ひざ関節
後十字靭帯断裂の症状と治療法について医師が詳しく解説 後十字靭帯断裂という怪我をご存じですか? 後十字靭帯は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぐ重要な靭帯で、膝の裏側にあります。靭帯断裂というと、スポーツで起きるイメージを持たれるかもしれませんが、後十字靭帯断裂はスポーツだけでなく転倒や交通事故でも起こります。 今回は、後十字靭帯断裂について、症状や診断方法、治療や手術費用などについても詳しく解説します。 後十字靭帯とは 後十字靭帯は、大腿骨の内側顆と呼ばれる膝の内側の部分を起始とし、後方外側に向かってのび、脛骨の顆間隆起の後外方に停止します。 「後」十字靭帯という名前がついていることからわかるように、私たちの膝には「前」十字靭帯も存在します。膝の中でこの2つが十字型に見えることから、こう呼ばれています。 この前十字靭帯と後十字靭帯がともに機能することで、私たちの膝は安定して動かすことができます。 後十字靭帯は、前十字靭帯よりも太さと強度があり、特に脛骨(すねの骨)が後ろに脱臼しないように保持する働きをしています。また、膝をひねる動作が安定して行えるよう支える役目も担っています。 後十字靭帯断裂の原因 後十字靭帯断裂は、主に膝を曲げた状態で強く地面に打ち付けることによって発生します。交通事故でダッシュボードに膝を強く打ち付ける、転倒して膝から転ぶなどが典型的な受傷機転です。 スポーツでは、ラグビーやアメフトなどのコンタクトスポーツでの受傷が多いです。 後十字靭帯断裂の症状 多くの場合、膝を打ちつけているため、膝のお皿の下に擦り傷などの外傷があることが多いです。 関節内に、少量の血が溜まる場合もあります。靭帯のみでなく、後ろの関節包(関節を包んでいる袋、関節の安定性に寄与している)も損傷している場合には、膝後方に皮下出血があり、注意が必要です。 膝窩部(膝裏)の痛みや、膝を曲げると痛いという症状を訴える方もいます。 後十字靭帯は、一部の損傷のみにとどまることもありますが、完全に断裂し、膝の不安定性が強い場合は、階段の上り下りや、しゃがみ込み時に膝がグラグラする感覚があります。 放置するとどうなる? 膝が不安定な状態のまま日常生活を送ると、大腿骨と脛骨の動きが通常よりも大きくなり、その分、膝全体にストレスがかかります。この状態が長期間続くことによって、膝の軟骨や半月板などが徐々に損傷を受けます。 そのままさらに放置すると、膝が変形してしまい、痛みを伴いながら、極端なO脚やX脚になってしまう可能性があります。(変形性膝関節症) 後十字靭帯断裂の診断 後十字靭帯断裂を疑う外傷があった場合、身体診察と画像検査によって診断します。 徒手検査 まずは身体診察を行い、膝関節の不安定性がないかどうかをチェックします。 特に有名なものに、「後方引き出しテスト」とよばれる検査があります。 後方引き出しテスト 1. 寝た状態で膝を曲げる 2. 医師がすねの骨(脛骨)を後ろに押していく その際に、後十字靭帯が機能していないと、脛骨が後ろに落ち込んでしまうような感覚があります。 画像検査 画像診断は、レントゲンとMRIで行うことが多いです。 靭帯自体はMRIでないと評価できませんが、合併する骨折を見逃さないためにも、レントゲンでの評価も必要です。MRIでは、靱帯が完全に断裂しているのか、部分的に損傷しているのかを評価することができます。 また、半月板や側副靱帯など他部位の損傷が合併しているかどうかについてもMRIで評価します。 後十字靭帯断裂の治療 後十字靭帯の機能は、保存的治療でも比較的に良好に回復すると言われており、保存療法が選択されることが多いです。 保存療法 保存療法の場合は、膝関節の安定性を補助するための装具を2カ月程度使用します。また、膝の安定性を高めるためにはリハビリも欠かせません。 受傷から1,2週の急性期は、腫脹や痛みがある時期なので、ある程度痛みが引いてくるまでは負担をかけないように松葉杖などを使用します。痛みのない範囲で、早期から関節可動域訓練やストレッチなどは開始します。 その後、3週間程度経過すると、徐々に膝が動かせるようになり、筋力トレーニングやランニングなど、装具を着用したまま行えるようになります。 スポーツ復帰までどのくらい? 筋力トレーニングによって、筋力が8割程度戻ってくればスポーツ復帰となりますが、少なくとも3ヶ月程度はかかります。 ただし、保存療法を行っても、膝の不安定性が強い場合や、不安定感でスポーツなどへの復帰が傷害される場合は、再建術などの手術が検討されます。 手術療法 手術は全身麻酔で行われる場合が多いです。 切れた靱帯同士を縫合するのは難しく、強度も不十分であるため、もも裏の筋肉(ハムストリング)の一部を採取し、靱帯のように形成して移植します。 入院期間とスポーツ復帰まで 手術後は装具を使用して膝を固定します。体重をかけていいのは、術後3週間程度してからになります。入院期間は病院によって様々ですが、体重をかけられるようになることまで入院している場合が多いです。 退院後も、通院でリハビリテーションを行い、術後6ヶ月でランニングを許可し、術後10〜12ヶ月でスポーツ復帰が目安となります。 手術はどのくらい費用がかかる? かかる費用は、入院期間や処置の内容によっても前後しますが、50万前後となることが多いです。装具や通院なども含めると、さらに金額は上がってきます。 基本的には高額療養費制度の適応となりますので、自己負担は軽減されます。高額療養費制度に関しては、ご加入の健康保険窓口で問い合わせてください。 まとめ・後十字靭帯断裂の症状と治療法について医師が詳しく解説 今回は、後十字靭帯断裂について詳しく解説しました。 後十字靭帯は私たちの膝を安定させるのに非常に重要な役割を果たしています。当初は軽い症状でも、放置すると日常生活に支障が出る場合も珍しくありません。少しでも違和感を感じた場合は、早期に専門医を受診してください。 No.S150 監修:医師 加藤 秀一
2023.09.11 -
- 関節リウマチ
- 膝部、その他疾患
- ひざ関節
リウマチによる膝の関節炎とは?症状と治療について医師が解説 関節リウマチは全身の関節に炎症が起こり、痛みや腫れを起こす病気です。進行すると関節の変形や機能の障害を残してしまいます。 関節リウマチでは膝の痛み、膝の腫れも非常に多い症状の1つです。膝が痛いときは、変形性膝関節症で年のせいと思うかもしれませんが、もし関節リウマチだった場合に放置していると、悪化してしまう可能性もあります。 この記事では関節リウマチによる膝関節炎の症状や治療法について解説していきます。膝の痛みでお困りの方はぜひ参考にしてみてください。 関節炎、関節リウマチとは 関節炎とは様々な原因で関節に炎症を起こしている状態の総称であり、関節リウマチは関節炎を起こす病気の1つです。 関節リウマチでは、自分の体を細菌やウイルスから守る免疫の異常によって関節の滑膜に炎症が起こり、痛みや腫れを起こしてしまいます。関節リウマチは無治療のままで放置してしまうと、関節が変形したり、痛みだすなど、機能的な障害をきたしてしまいます。 関節リウマチの主な原因 関節リウマチの多くは40-60歳代ごろの中高年の女性に発症します。正確な原因はまだ明らかになっていませんが、自己免疫疾患と考えられており、自分の組織に対して攻撃する抗体が作られてしまい、関節内の滑膜という組織にリンパ系の細胞が集まって炎症性の物質が作られることが原因と考えられています。 発症には遺伝的な要因や喫煙、歯周病などが関連しているとわかっています。発症すると関節炎によって痛みや腫れを起こし、進行すると関節の変形を生じてしまうため、早期の発見と治療が大切です。 リウマチによる膝関節炎の症状 関節リウマチで多い症状は手や足の指の腫れ、痛み、朝のこわばりなどです。また、膝関節で滑膜が増殖して、炎症を起こすと膝関節炎をきたしてしまいます。 膝関節炎の主な症状は、膝が腫れる、膝に水が溜まる、歩く時や階段での痛み、膝が曲がらないなどです。膝の痛みは膝裏に起こることが多く、曲げ伸ばしの時に音が生じることもあります。 また、炎症が強い場合には安静にしていても激痛を感じたり、歩けないくらいの痛みを生じる場合もあります。 膝関節炎、放っておくとどうなる? 膝関節炎を放置しておくと、関節の軟骨がなくなってしまい、徐々に関節の変形が進んでいきます。その結果、徐々に膝の曲げ伸ばしが難しくなり、骨同士がぶつかることによって痛みが悪化してしまいます。関節の変形を生じさせないためにも、早期の発見と治療が大切です。 リウマチによる膝関節炎の診断方法 診断は問診、身体診察と血液検査、画像検査などを組み合わせて総合的に行います。これは関節が腫れて、痛む病気は複数あり、検査だけで関節リウマチと診断できない場合があるからです。そのため、関節リウマチの診断基準を使用して診断を行います。 現在では2010年に米国、欧州リウマチ学会が合同で発表した分類基準を使用することが一般的です。 この基準では、 ①症状がある関節の数 ②症状が続いている期間 ③血液検査での炎症反応の数値 ④血液検査でのリウマトイド因子や抗CCP抗体の数値 これらの4項目についてそれぞれ点数をつけ、合計して6点以上であれば関節リウマチと診断します。 血液検査では、リウマトイド因子や抗CCP抗体が重要で、多くの関節リウマチで陽性になります。しかし、両方とも陰性でも関節リウマチである場合や、陽性でも関節リウマチではない場合もあります。また、炎症反応は活動性を反映する指標ですが、リウマチ以外でも上昇することがあります。 画像検査は診断基準には含まれませんが、単純レントゲン写真では骨びらんという、骨の透亮像がみられる場合があります。また関節エコーやMRI検査も滑膜炎の範囲、程度を評価するのに有用です。 リウマチによる膝関節の治療法 治療の基本は、薬物治療です。リウマチと診断した早期から、抗リウマチ薬を開始します。また、痛みの程度に応じて炎症を抑えるステロイドや、鎮痛薬を併用します。 お薬を開始しても膝関節炎の症状が続く場合にはサポーターを使用したり、膝関節に注射をする方法があります。しかし、膝関節炎が治まらず、関節の変形や破壊が進行した場合には、人工関節置換術などの手術治療が行われます。 抗リウマチ薬の種類 抗リウマチ薬には複数の種類があります、日本リウマチ学会による2020年のガイドラインから代表的なお薬を紹介します。 第一段階ではメトトレキサートが推奨されます。世界中で使用されている薬剤で有効性が高いことから関節リウマチ治療の第一選択となっています。 メトトレキサートに複数の抗リウマチ薬を併用しても炎症が治らない場合には第二段階の治療として、生物学的製剤やJAK阻害薬というお薬が使用されます。バイオテクノロジーを用いて製造されたお薬で、非常に効果が高いのですが、同時に自己免疫を抑える作用があるため、専門医に処方してもらうことが必要です。 ・メトトレキサート ・生物学的製剤 ・JAK阻害薬 関節リウマチはこれまで治療が難しく、関節の変形が進行してしまう患者さんも多かったのですが、現在では薬剤の種類も多くなっており、効果が高いお薬もあるため、適切に治療することで症状を抑えることが可能になってきています。 まとめ・リウマチによる膝の関節炎とは?症状と治療について医師が解説 関節リウマチは全身の関節に炎症が起こり、痛みや腫れを起こす病気です。進行すると関節の変形や機能の障害を残してしまいます。 関節リウマチによって膝関節炎が起きている場合は、放置してしまうと関節の変形、破壊が進行してしまい、人工関節手術が必要になることもあります。そのため、早期に発見、治療することが大事な病気です。 早めに治療をすることで、悪化を防ぐことができるので、膝に痛みがあり、なかなかよくならない方は早めに病院を受診するようにしましょう。 No.S151 監修:医師 加藤 秀一
2023.09.10 -
- 靭帯損傷
- ひざ関節
後十字靭帯損傷の症状と原因、治療法について 後十字靭帯損傷(こうじゅうじじんたいそんしょう)とは、膝の関節内にある後十字靭帯の損傷をいいます。主に車の事故やバイク事故、ラグビーなどのコンタクトスポーツで他人と衝突することで生じます。 今回の記事では、後十字靭帯損傷の原因や症状、そして治療方法について解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。 後十字靭帯損傷とは? 後十字靭帯は、膝関節の中で前十字靭帯とともに関節を強固に連結している靱帯です。 大腿骨(太ももの骨)の内側と、脛骨(すねの骨)の中央を繋ぎ、前十字靭帯と十字のかたちに交差して膝関節を支えています。普段は膝関節のひねる動作を支えたり、脛骨が後ろにずれないように支えるように働いたりしています。 後十字靭帯損傷は、膝裏にあたる位置にある靭帯損傷のことであり、後十字靭帯が一部あるいは完全に断裂した状態を指します。 後十字靭帯損傷の原因 スポーツ外傷や交通事故などで、脛骨上端に、前から後ろへ向く大きな力が加わることで、後十字靭帯が損傷することが多いとされています。 具体的には、以下のような受傷機転が考えられます。 交通事故 ダッシュボード損傷とも言われ、車が急停車しダッシュボードに膝(脛骨の上端部)をぶつけることによって起こります。 転倒 膝を90°曲げた状態で転倒すると脛骨が後ろへ押し込まれるため受傷します。 コンタクトスポーツ(ラグビーなど) 膝下にタックルを受けることで、後十字靭帯を損傷することがあります。 後十字靭帯損傷の症状 後十字靭帯損傷の症状を解説します。 急性期(受傷後3週間くらい) 膝の痛みと可動域制限がみられますが、歩ける場合が多いです。しばらくすると腫れ(関節内血腫)が目立ってくる場合もあります。膝窩部の皮下出血を認めることもあります。 どこが痛いかの部位は、膝の裏となります。また、脛骨に後方へのストレスをかけると、膝窩部に激痛がみられます。 急性期を過ぎると 痛み、腫れ、可動域制限はいずれも軽快してきます。しかしこの頃になると損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。これは下り坂やひねり動作の際にはっきりすることが多いです。 慢性期の症例(受傷から時間がたった場合) 慢性期では、前十字靭帯損傷と比べると膝の機能障害は軽度ですが、脛骨の後方ストレスへの不安定感を歩行やスポーツ活動時に認めます。 また、慢性期では、関節軟骨変性のため膝蓋大腿関節や内側の関節裂隙に圧痛を認めることもあります。また、仰臥位で膝関節屈曲90°とすると、脛骨近位端が後方へ移動している落ち込み徴候(サギングサイン)を認めます。 不安定感があるままに放置しておくと新たに半月(板)損傷や軟骨損傷などを生じ、慢性的な痛みや腫れ(水腫)が出現するおそれもあります。 後十字靭帯損傷の診断方法 脛骨の後方ストレスへの不安定性の証明とMRI画像での後十字靭帯断裂を証明することで、後十字靭帯損傷を診断することができます。 また、レントゲン写真では骨折の有無についても確認することができます。 後十字靭帯損傷が見られるかというテストには、sagging(サギング)テストがあります。 sagging(サギング)テスト 仰向けの状態で膝を90度屈曲して踵を持ち上げたときに、左右を比較して、脛骨が落ち込んでいるかどうかを見るテストです。 この際に、脛骨が落ち、関節に窪みが生じていれば、後十字靱帯断裂を疑います。 後十字靭帯損傷の治療法 後十字靭帯の単独損傷では、大腿四頭筋訓練を中心とした保存療法が行われます。 膝動揺性抑制装具(サポーター)を装着して早期から痛みの無い範囲で可動域訓練を行い、筋力低下を最小限にとどめるようにします。受傷初期は疼痛緩和と安静を兼ねてギプス固定を行うこともあります。 後十字靭帯単独損傷の場合には多少の緩みが残ってもスポーツ活動に支障をきたさないことが多いことから、軽度な症状の場合には先ずは保存療法を試みるようにします。 こうした、後十字靭帯損傷のリハビリ目的の筋トレ中の禁忌として、症状を悪化させる危険性があるので、しゃがみや膝立ち、正座できないことは知っておく必要があります。 慢性期で後方ストレスへの不安定性が強く、日常動作に不自由を感じる例は靭帯再建術を行うべきとされています。 後十字靭帯損傷の完治期間 後十字靱帯損傷の完治までの期間・道のりとしては、ハムストリングスを用いた再建術後の理学療法、術直後には免荷で膝装具0° 固定し等尺性筋収縮運動を行います。 1〜2週間で部分荷重、スクワット運動開始とします。4週間で全荷重、4ヶ月でジョギング、水泳などのスポーツ復帰が可能となります。 ・1〜2週間で部分荷重、スクワット運動開始 ・4週間で全荷重 ・4ヶ月でジョギング、水泳などのスポーツ復帰 このように、全治までには数ヶ月を要します。 後十字靭帯損傷の予後は比較的良好とされています。しかしながら、後十字靭帯損傷が自然治癒するわけではない、ということには注意が必要です。 最近では、早く治すことで早期の競技復帰を望むアスリートの間などで、低侵襲な治療で靭帯組織の修復が期待できる「再生医療」が選択されるケースもあります。 まとめ・後十字靭帯損傷の症状と原因、治療法について 「靭帯が伸びるとどうなるか」という疑問を持った方がいらっしゃるかもしれませんが、靱帯損傷では靭帯の一部あるいは全部が断裂つまり切れてしまうものです。 当院では、自己脂肪由来幹細胞治療やPRP療法を行っています。後十字靭帯損傷後に膝の不安定感があったり、スポーツに早期復帰したいという方のために、膝の靭帯損傷をより早く治すために再生医療を提供しています。ご興味のある方は、ぜひ一度当院の無料相談を受けてみてください。 No.150 監修:医師 坂本貞範 参考文献 膝の最前線. 理学療法科学 第23巻2号 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/23/2/23_2_335/_pdf 「膝靭帯損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/ligament_injury_of_th_knee.html 膝の最前線. 理学療法科学 第23巻2号 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/23/2/23_2_335/_pdf プライマリケアのための関節のみかた 下肢編(2)―膝(下)[臨床医学講座より] - 医科 - 学術・研究 | 兵庫県保険医協会 http://www.hhk.jp/gakujyutsu-kenkyu/ika/101015-070000.php
2023.09.07 -
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外側側副靭帯損傷|症状と原因、治療法について解説! 外側側副靱帯(がいそくそくふくじんたい)損傷は、膝の外側にある靭帯がスポーツや交通事故で外傷による損傷する怪我です。 外側側副靱帯損傷は、いくつかある靭帯損傷の中でも、比較的まれな怪我ですが、他の靭帯と一緒に損傷することが多く、場合によっては手術が必要になります。 本記事では、外側側副靱帯の症状や原因について解説し、治療法について詳しく解説します。 外側側副靱帯損傷とは? 膝の関節は太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)とすねの骨である脛骨(けいこつ)、お皿の骨である膝蓋骨(しつがいこつ)からできています。比較的平らな面同士が合わさってできており、安定性に欠くため、大腿骨と脛骨の間を別の組織で補強しています。 靭帯は膝関節を補強する組織の1つで、骨同士を固い組織でつなぎ、膝の安定性を高めています。外側側副靱帯は膝の外側にあり、膝の内側からの衝撃に抵抗する靭帯です。 そのため、膝の内側から強い衝撃が加わると、外側側副靱帯にストレスが加わり、場合によって靭帯が傷ついたり、ちぎれたりして、外側側副靱帯損傷を引き起こします。 単独で損傷することはあまりなく、他の靭帯と同時に損傷する、複合靭帯損傷(ふくごうじんたいそんしょう)として生じることが多いです。 外側側副靱帯損傷の症状や原因 外側側副靱帯は靭帯損傷の中でも比較的めずらしい怪我です。 単独で生じることは少ないですが、外側側副靱帯が損傷している場合の特有の症状や原因があります。 どのような症状や原因があるのかを詳しく解説します。 外側側副靱帯損傷の症状 外側側副靱帯の損傷の症状は、膝の外側の痛みや腫れです。 また、膝から下が内側に傾くような動きが生じると、傷ついた靱帯が伸ばされるため、痛みを生じます。 例えば、あぐらをかいた場合に膝の外側に痛いという状態です。 外側側副靱帯を損傷した状態で放置すると、膝がグラグラするように不安定感が生じます。 外側側副靱帯損傷の原因 外側側副靱帯損傷の原因は大きく分けて、スポーツ中の接触と交通事故に分けられます。 スポーツでは、サッカーやラグビーのタックルや柔道の足払いなどで膝の内側に強い衝撃が加わり、外側側副靱帯が強制的に伸ばされて起こります。 交通事故の場合も、スポーツ同様に膝の外側が無理に伸ばされるような衝撃を受けることで、外側側副靱帯が損傷されるのです。 どちらにせよ強い衝撃が原因となるため、外側側副靱帯が単独で損傷することは少なく、他の靱帯や半月板といった組織の損傷と合わさる場合が少なくありません。 外側側副靱帯損傷の診断 外側側副靱帯が損傷しているかどうかは、以下の方法で診断されます。 ・徒手検査(としゅけんさ) ・画像診断 それぞれの診断について具体的に解説します。 徒手検査 患者を仰向けに寝かせた状態で、膝の内側と足首の外側を持ち、膝から下を内側に動かすように力を入れて、外側側副靱帯にストレスを加える内反(ないはん)ストレステストと呼ばれる検査をします。 内反ストレステストで、痛みや関節が通常より大きく動く不安定性を認めた場合は、外側側副靱帯損傷が疑われます。 膝を軽く曲げた状態と完全に伸ばした状態といった両方の姿勢で検査を行い、膝屈曲位で症状が出た場合は外側側副靱帯の損傷、伸ばした状態で症状が出た場合は、他の靱帯の損傷も疑うことが必要です。 画像診断 外側側副靱帯の損傷はレントゲンでは異常を示しづらく、詳細な診断にはMRIを用います。 MRIだと他の靭帯や半月板などの組織もはっきりと写るため、複合損傷や合併症の確認にも有効です。 外側側副靱帯損傷の治療 外側側副靱帯の損傷の治療方法は手術を行わない保存療法と、手術を行う手術療法に分けられます。 それぞれの治療方法について具体的に解説します。 保存療法 外側側副靱帯のみの損傷で、膝の不安定感が少なく、日常生活に大きな支障がなければ、手術による外科的な治療を行わない保存療法が選択されます。 保存療法には装具療法やリハビリテーションがあります。 装具療法 外側側副靱帯損傷により、膝が不安定になれば、さらなる損傷や膝周辺の痛みを伴うリスクが高まります。 そのため、装具やサポーターを着用して、膝の安定性を高めれば、外側側副靱帯へのストレスを減らすことが可能です。 また、怪我の直後は痛みや腫れが強く、膝へのかかる負担をできる限り減らすため、ギプスによる固定をする場合もあります。 リハビリテーション リハビリテーションでは、膝の安定性を高めるため筋力トレーニングを実施して、膝周辺の筋力を鍛えるトレーニングを実施します。 また、装具などで膝を固定することによる関節の動きの制限を改善するため、ストレッチや関節可動域練習を行います。 手術療法 複合靭帯損傷の場合や膝の不安定性が強い場合は、手術による治療が適応になります。 手術は損傷した靱帯を他の部分の靱帯を使って再建する靱帯再建術が実施されます。 手術後は状態に合わせて段階的なリハビリテーションが必要です。 その後、スポーツ復帰して試合などの通常に戻れるまでは、3〜6カ月の治療期間がかかります。 まとめ・外側側副靭帯損傷|症状と原因、治療法について解説! 外側側副靱帯損傷はあまり頻度の高い怪我ではありませんが、治療をせずに放置すると、膝の痛みや損傷部位の悪化を招く危険性があります。 膝の外側が痛んだり、膝がグラグラするような不安を感じたりした場合は、できるだけ早めに整形外科に受診しましょう。 多くの場合が、スポーツや交通事故での衝突によるものですので、思い当たる出来事がある場合は要注意です。 本記事を参考にいざというときに外側側副靱帯の治療がスムーズに受けられるよう、正しい知識を身につけておきましょう。 No.S149 監修:医師 加藤 秀一
2023.09.04 -
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腸脛靭帯炎(ランナー膝)とは?原因と症状、治療法 膝の外側が痛いという症状を引き起こす可能性のある病気の一つに、腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)というものがあります。 今回の記事では、腸脛靭帯炎の原因や症状、そして治療方法について解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。 腸脛靭帯炎とは 腸脛靭帯は、お尻の筋肉である大臀筋(だいでんきん)と大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)から始まって、脛骨(けいこつ;スネの骨で、膝下の2本の骨のうち太い方の骨)の前外側にある膨らみに繋がっています。 腸脛靭帯炎は、主に長時間のランニングを行う競技に頻発し、腸脛靭帯と大腿骨外側の骨の膨らみの間における摩擦障害により発症するスポーツ障害です。ランナーなどのスポーツを行う方に多いことから、ランナーズニー(runners knee)とも呼ばれます。主な症状は、ランニングの際に膝に痛みが出ることや、膝の外側が痛いということです。 腸脛靭帯炎の原因 腸脛靭帯が骨のすぐ上を通るところでは、膝の曲げ伸ばしによって靭帯と骨の摩擦が起きやすく、ランニングなどで過剰に靭帯の曲げ伸ばしを行うと炎症の原因となります。 より詳しく原因を見ていきましょう。 選手側の問題 筋力不足、筋力のアンバランス、骨の成長と筋の伸びとのアンバランス、からだの柔軟性不足などが挙げられます。 また、腸脛靭帯炎の発症要因の一つに内反膝(ないはんしつ:O脚のこと)が挙げられます。内反膝の人は、太ももからすねにかけて内側に曲がっているため、膝の外側を走行している腸脛靭帯が大腿骨外側の出っ張りに擦れやすくなります。そのため、内反膝の人は腸脛靭帯炎を起こしやすくなります。 練習や環境の問題 ランニングの練習や、環境の問題で腸脛靭帯炎が起こります。 オーバートレーニングや選手の体力や技術に合わない練習、不適切な靴、硬すぎたり軟らかすぎたりする練習場などが原因として挙げられます。早いスピードのランニングでは接地時に膝が曲がる角度がより深くなるため、腸脛靭帯の摩擦は少なくなり、腸脛靭帯炎にはなりにくいとされています。 一方、下り坂、ジョギング、不整地、雨の日のランニングでは接地時に膝が曲がる角度が浅くなるため、腸脛靭帯の摩擦が多発すると考えられています。 腸脛靭帯炎の症状 ランニングやジャンプを長時間繰り返すことで、膝に痛みが生じます。 痛みの程度によって、軽症から最重症に分けられます。重症になるにつれ、スポーツを行っていない時にも膝の痛みが生じるようになります。 軽症 スポーツは可能ですが、その後に痛みが生じます。 中等症 スポーツのプレーには支障がないものの、プレー中やプレー後に痛みが生じます。 重症 腸脛靭帯炎が重症な場合には、常に痛みやプレーに支障がでます。 スポーツを行っていない際にも、膝の痛みの症状が出てしまいます。 最重症 腸脛靭帯の断裂が生じます。スポーツ活動の中止をしなくてはなりません。 腸脛靭帯炎の診断 腸脛靭帯炎の診断としては、上記のような症状と、膝の外側にのみ圧痛があれば診断が可能となります。 予防法や治療法としては、スポーツ前にストレッチを十分に行うことが大切です。また、スポーツの後に冷却を15分ほど行うことも効果的です。 医療機関では、レントゲンやMRIなどの画像診断によって診断をつけることもあります。 腸脛靭帯炎の治療法 腸脛靭帯炎(ランナー膝)の治し方としては、保存療法が基本となります。 保存療法 膝の痛みの原因になっている要因を明らかにし、再発を防ぐことが重要になります。痛みが出た際の初期の治療は、まずランニングを中止・軽減することが大切です。 そして次に、原因となるような事項を見直していきます。一般的には、トレーニング方法やシューズの改善、腸脛靭帯のストレッチングで太ももの外側を伸ばすようにすることがあります。 また、大腿骨外側の骨の膨らみにある圧痛部位を局所冷却すること、湿布、消炎鎮痛薬の投与も有効とされています。 再生医療の選択 こうした治療に効果がない場合には、組織再生目的の再生医療として、自己脂肪由来幹細胞治療や、PRP(多血小板血漿)療法が用いられることもあります。再生医療によって幹細胞を培養し、直接関節内に投与することで、炎症を抑え、擦り減った軟骨や傷ついた組織を修復・再生することで痛みを改善することが期待できます。 ランニングなどのスポーツを再開する場合には、スポーツの前にストレッチングを十分におこない、スポーツの後にはアイシングを15分ほどおこないます。貼り薬や塗り薬も効果が期待できます。 もしランナー膝が発症しても軽症や中等症であればスポーツは続けられます。適切なコンディショニングによってそれ以上に悪化させないことが大切です。 まとめ・腸脛靭帯炎(ランナー膝)とは?原因と症状、治療法 今回の記事では、腸脛靭帯炎の原因や症状、治療法について解説しました。 腸脛靭帯炎の治療法としては、安静やストレッチなどの保存的治療が中心となりますが、そうした方法でも改善がみられない場合には、再生医療も治療法の選択肢となります。 当院では、自己脂肪由来幹細胞治療やPRP療法によって、膝の靭帯損傷をより早く治し、筋力低下などを防ぐための再生医療を提供しています。 ご興味のある方は、ぜひ一度当院の無料相談を受けてみてくださいね。 No.149 監修:医師 坂本貞範 参考文献 腸脛靭帯炎における臨床的特徴と運動療法成績について|第22回東海北陸理学療法学術大会 https://www.jstage.jst.go.jp/article/thpt/22/0/22_0_38/_pdf/-char/ja 「スポーツによる膝の慢性障害」|公益財団法人 日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/chronic_problem_with_knee_by_spor 腸脛靭帯炎(ランナー膝) | JCHO東京山手メディカルセンター https://yamate.jcho.go.jp/%E8%85%B8%E8%84%9B%E9%9D%AD%E5%B8%AF%E7%82%8E%EF%BC%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%83%BC%E8%86%9D%EF%BC%89/
2023.08.31 -
- 膝部、その他疾患
- ひざ関節
膝関節捻挫の症状と原因、治療法を解説 膝をグキッとひねってしまい「歩くと痛い」「曲げ伸ばしすると痛い」という経験がある方も多いのではないでしょうか? 捻挫というと、足首の怪我を想像される方が多いと思いますが、膝にも捻挫が起こることがあります。 今回は「ぎっくり膝」と呼ばれたり検索されることもある、膝関節捻挫について解説します。膝関節捻挫には、重症な怪我が隠れている場合もありますので、膝を痛めた方はぜひ今回の記事を参考にしてください。 膝関節捻挫の原因 膝の曲げ伸ばしを安定して行うために、重要な働きをしているのが、関節を包む袋である「関節包」と関節を支える組織である「靭帯」です。関節包と靭帯がしっかりと機能しているおかげで、私たちの膝は本来動かない方向へ曲がらないようになっており、体重をかけても安定して歩くことができます。 しかし、運動中や転倒などにより関節が、通常の範囲を越えて動いてしまうことがあります。それよって、この「関節包」や「靭帯」を痛めてしまった状態を捻挫といいます。ただし、「捻挫」は軽症の場合に限ります。損傷が強く、関節が不安定になった場合は捻挫ではなく、靭帯損傷という診断になります。 多くは、スポーツ時に膝をひねったり、相手と接触して転倒してしまったりした際に起こりますが、普段の生活でも階段やちょっとした段差などで、思いがけず膝をひねってしまい受傷することがあります。 膝関節捻挫の症状 受傷直後は痛みが強いですが、機能は比較的保たれている事が多く、その後も痛みを我慢して普通に生活できる方もいます。ですが、徐々に内出血とむくみが出てきて、膝全体が腫れてきます。 膝全体が腫れると、膝を動かす際に痛みが生じます。また、左右を比較すると動かせる範囲が減ってしまう「可動域制限」がでてきます。ひどい場合は痛みで足が地面に付けないこともあります。 ただし、「捻挫」であれば、一時的な症状であり、数日で改善してきます。いつまでたっても痛みが引かない、腫れがひどくなってきたという場合は「靭帯損傷」のレベルまでいっていることがありますので、注意が必要です。 「歩けるけど痛い」、「膝がぐらぐらして不安定」は要注意! 「ただひねっただけだと思って様子を見ていたら、実は靭帯損傷だった。」という方は意外と多いです。 膝には主に4つの重要な靭帯があります。前後方向の安定性を保つ前十字靭帯と後十字靭帯、左右方向の安定性を保つ内側側副靭帯と外側側副靭帯です。これらはバスケやサッカーなどのスポーツはもちろん、転倒などでも痛めることがあります。 歩けるけれども痛みが続くとき、膝がぐらぐらして不安定だと感じるときは、これらの靭帯を痛めていることがあります。また、靭帯を痛めていると関節の中に血が溜まることが多いです。このような場合は自己判断せずに病院を受診しましょう。 また、膝のクッションや安定性を保つ役割をしている組織に、半月板があります。半月板は左右に1つずつありますが、こちらも膝をひねって痛めた際に損傷してしまうことがあります。年を取ると、徐々にすり減って切れやすくなるので、高齢の方はバスのステップなど少しの段差を下りただけでも切れてしまうことがあります。ブチッという感覚がある方もいます。半月板損傷も、病院でMRIなどを撮影しなければわからない怪我です。 捻挫には、このような損傷が隠れている場合がありますので、是非皆さんも知っておいてください。 膝関節捻挫の治療 膝をひねってしまったら、受傷直後は、まずRICE処置を行いましょう。 Rest:安静 Ice:冷やす Compression:圧迫 Elevation:挙上 スポーツはすぐに中止し、歩行もできればしない方が望ましいです。氷や保冷材などを使って膝を冷やしながら、包帯などがあれば圧迫してください。 また、寝ているときは心臓より高い位置に足をあげておくことで、膝が腫れてくるのを予防することができます。その後は、なるべく早期に整形外科医の診察を受けてください。 膝関節捻挫の診断 問診と身体診察で、どのような怪我が疑わしいのか予想がつく場合もあります。基本的には、まずレントゲンで骨折がないかどうか確認します。レントゲンだけではわからない場合は、骨をより詳しく見るためにCT検査を行うこともあります。その後、靭帯損傷や半月板損傷が疑われる場合にはMRI撮影を行うことになります。 レントゲン撮影 → CT検査 → MRI撮影 検査の結果、手術が必要な靭帯損傷などの疑いがなければ保存療法になります。 損傷された関節包や靱帯が修復する期間は、通常3週間前後とされることが多いです。この期間は、激しい運動や重労働などはせず、安静にしていましょう。安静を保つ目的で、一定期間添木や松葉杖などを使用することもあります。 痛みが強い場合は、飲み薬や湿布を処方することもありますが、鎮痛薬は痛みを止めるだけで治ったわけではないので、一番大事なのは膝の安静です。 そのまま通常の生活に戻れる場合は、治療終了となりますが、安静にしていたことによって筋力が低下したり、動きが悪くなることがあります。その際は、リハビリテーションを行い、機能を戻すとともに、次の怪我をしにくくする予防を行うことが大切です。 膝関節捻挫についてのQ&A Q1:膝関節捻挫の予防法はありますか? 運動をされる場合は、適切なストレッチやウォーミングアップが大切です。筋肉の柔軟性を保ち、温めてしっかりと動かせる状態にしてから運動を始めることで、関節に負担がかかりにくくなります。 また、普段から、下肢の筋力が衰えないように意識してトレーニングをしておくことも重要です。さらに、自分の足に合った靴を選ぶことも転倒の予防になります。 Q2:スポーツにはどのくらいで復帰できますか? スポーツ復帰には、痛みがなくなっていることが大前提です。痛みがあるまま再開すると、膝をさらに痛めたり、かばって別の部位の怪我を起こしたりすることがあります。 通常の捻挫であれば2〜3週間で痛みが落ち着いてくることが多いので、軽い運動から再開するように指導します。 膝に過度な負担をかけないよう、自分自身が意識するためにもサポーターなどの補助具を使用することも勧められます。 まとめ・膝関節捻挫の症状と原因、治療法を解説 今回は膝関節捻挫について解説しました。 捻挫は適切な治療を行えば、問題なく日常生活に復帰できる怪我です。その裏に潜む重大な怪我を見逃さないように、適切に医療機関を受診しましょう。 No.S148 監修:医師 加藤 秀一
2023.08.28 -
- 膝部、その他疾患
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離断性骨軟骨炎|膝での症状、原因、治療法について詳しく解説 膝に痛みを起こす原因の1つに、離断性骨軟骨炎があります。若いスポーツ選手に起こることが多く、膝の軟骨の損傷なので、初期のレントゲン写真ではわからない場合もあります。 この記事では膝の離断性骨軟骨炎の症状、原因、治療法について解説していきます。膝の痛みで悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。 離断性骨軟骨炎とは 膝の離断性骨軟骨炎の読み方は“りだんせいこつなんこつえん”であり、膝関節の軟骨が関節内に剥がれ落ちて膝に様々な症状を起こしてしまう病気です。 好発部位は大腿骨の内側が最も多く85%で、外側に15%、膝蓋骨にも稀に起こります。また、外側では円板上半月板がみられることもあります。 離断性骨軟骨の症状 離断性骨軟骨の症状は、病気が発症して初めの段階では傷んだ軟骨は遊離せずに、運動後の不快感や鈍い痛み以外には特に症状はありません。 軟骨の表面に亀裂や変化が生じると痛みも強くなり、スポーツなどに支障を来してしまいます。病気が進行していき、軟骨が剥離してしまうと引っかかる感じや膝のズレ感を自覚します。また、大きな軟骨の欠片が関節内に剥がれ落ちると、膝の中でゴリッと音がする場合があります。 離断性骨軟骨の主な原因 離断性骨軟骨炎は、約2:1の割合で男性に多く、成長期に野球やサッカー、バスケットボールなど運動を行う10代によくみられます。 正確な原因についてはまだ明らかにはされていませんが、成長期のスポーツ選手に起こりやすいことから、繰り返されるストレスや外傷によって軟骨下の骨に負荷がかかる事が原因と考えられています。血流障害によって、骨軟骨片が分離して剥がれ落ちてしまいます。 離断性骨軟骨の診断方法 軟骨の損傷なので初期には通常のレントゲン写真で診断することが難しいことが特徴です。そのため、初期に診断するためにはMRI検査を行い、確定診断をします。病気が進行して、骨軟骨片が分離してくる時期ではレントゲン写真で診断することが可能になってきます。 また、肘の離断性骨軟骨炎はエコーでスクリーニング検査と診断をすることが可能であり、膝の離断性骨軟骨炎についてもエコーでの診断が可能と報告されてきています。 離断性骨軟骨の治療 治療には保存療法、手術療法があります。 保存療法 身長が伸びている発育期で軟骨片が離れていなければ、自然に修復されることを期待して、免荷や膝関節の安静、サポーター(装具)を使用などの保存治療が選択されます。 痛みに対しては鎮痛薬や関節内注射などを行い、レントゲンやMRIで修復されている傾向が見られれば徐々に負荷を上げていきます。一部の骨折では超音波治療による骨癒合までの期間が短縮することから保険適応がありますが、現状では離断性骨軟骨炎に対しては超音波治療の適応はありません。 手術療法 手術治療に関しては、軟骨の修復が長引いている場合や、病気の範囲が大きい場合、発育期以降ではよい適応とされます。 手術治療はマイクロフラクチャー法、整復内固定術、骨軟骨移植術などの方法があります。 マイクロフラクチャー法 骨髄刺激法ともいわれます。膝関節鏡を関節内に入れて、患部の数カ所に小さい穴を開けて出血させて治癒を促進させます。骨髄に含まれる幹細胞が損傷部に誘導されることで修復させることを目的とさせる治療です。比較的小さな範囲の軟骨が損傷されている場合がよい適応です。 整復内固定術 軟骨片が剥離して、遊離している例では整復固定術の適応があります。不安定な骨軟骨片を骨釘や生体吸収性ピンなどを使用して固定します。 骨軟骨移植術 損傷範囲が比較的大きく、遊離した軟骨片の状態が悪く骨癒合を期待できない時に選択されます。大腿骨の体重がかからない部分から円柱状の軟骨片を採取して、損傷した部分に移植する自家骨軟骨柱移植術と採取した正常軟骨を培養して軟骨組織を作成して移植する自家培養軟骨移植術が主な方法です。 このように様々な手術治療法がありますが、いずれの方法も適応、術式については患者さんの状態や希望、術者によって異なってきます。ご自身の状態をしっかりと把握して治療法について、主治医とよく相談し、納得できる治療を受けることが大切です。 また手術だけではなく、その後のしっかりとしたリハビリテーションも治療の上で重要ですので、リハビリ体制が整っているかも病院選びの参考にすることがおすすめです。 まとめ・離断性骨軟骨炎|膝での症状、原因、治療法について詳しく解説 膝離断性骨軟骨炎は10歳代の若いスポーツ選手に起こりやすい病気で、膝関節の軟骨が関節内に剥がれ落ちて、痛みや引っかかりなどの様々な症状を起こしてしまいます。 初期にはレントゲン写真でわからない場合が多いので、MRIでの精密検査が必要です。 治療法は保存治療、手術治療があります。特に手術治療は骨髄刺激法や整復内固定術、骨軟骨柱移植術などの様々な方法がありますが、遊離した軟骨片の大きさや状態などを総合的に判断して決定されます。 膝に違和感や痛みがあるものの、なかなかよくならない方は早めに専門医に診察をしてもらうようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.147 監修:医師 坂本貞範
2023.08.24 -
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MCL【内側側副靭帯損傷】の症状と治療法について解説 内側側副(ないそく そくふく)靭帯損傷は、内側側副靭帯という膝の内側の安定性を保っている靭帯が何らかの原因で損傷を受けることです。 今回の記事では、内側側副靭帯損傷の症状や治療法について解説します。 内側側副靭帯の役割や損傷の原因 では、まず内側側副靭帯の役割や損傷の原因について解説します。 内側側副靭帯の役割 内側側副靭帯(Medial Collateral Ligament: MCL)は、膝の靭帯の一つであり、内側に位置しています。 膝の関節は太ももの骨(大腿骨:だいたいこつ)と、脛(すね)の骨(脛骨:けいこつ)からなります。 関節の中には、前十字靭帯と後十字靭帯という靭帯があり、関節の外側には内側側副靭帯と、外側側副靭帯という靭帯があります。それぞれ、関節を安定させる働きを担っています。 その中でも、内側側副靭帯は、特に膝の内側の安定性を保つという役割をしています。 内側側副靭帯損傷の原因 スポーツ外傷や、交通事故などで、膝に外反強制(がいはんきょうせい:すねを無理に外側に向けられること)するような大きな力が加わった際に、内側側副靭帯損傷(MCL損傷)が起こりやすいとされています。 内側側副靭帯損傷は、膝の靭帯損傷の中で最も多いとされています。 内側側副靭帯損傷の症状や検査方法 では次に、内側側副靭帯損傷の症状や重症度、検査方法について説明します。 内側側副靭帯損傷の症状①痛みや腫れ 急性期(怪我をしてから3週間頃)に、膝の痛みと可動域制限がみられます。しばらくして腫れ(関節内血腫)が目立ってくることもあります。 急性期が過ぎると、痛みや腫れ、可動域制限は軽快してきます。 内側側副靭帯の損傷の症状②膝の不安定性 この頃になると損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。ひねり動作の際にはっきりすることが多いです。 内側側副靭帯損傷の場合は、すねから下が外へずれてしまうような不安定感が出ます。この状態のまま放置しておくと、新たに半月(板)損傷や軟骨損傷などを生じ、慢性的な痛みや腫れ(水腫)になってしまうこともあります。 内側側副靭帯損傷の重症度 内側側副靭帯損傷は、1〜3度に分類できます。 ・1度 軽症で特に治療を必要としません。 ・2度 中等症で、膝の外反動揺性つまりぐらぐら感を中程度に認めます。 初期治療(ギ プス固定、装具療法など)が重要となります。 ・3度 重症で、膝の外反動揺性が顕著であり、手術を要する場合が多いです。 内側側副靭帯損傷の検査方法 それでは、次に内側側副靱帯の検査方法について解説します。 ストレステスト 診察では膝関節にストレスを加えて緩みの程度を健側と比較します。 ① 外反ストレステスト(valgus stress test) 患者が仰向けになり、膝を伸ばした姿勢と30°膝に曲げた姿勢の2パターンでチェックをします。 医師などの検査者が膝関節の外側に一方の手を置き、他方の手で足関節を持ち膝関節に外反強制力つまりすねを外側に向ける力を加え、膝関節の外反不安定性をみます。 この際、30°屈曲位で外反不安定性があれば、MCL損傷を疑います。 MCL単独損傷では伸展位での不安定性は認めません。 ② 内反ストレステスト(varus stress test) 外反ストレステストとは逆に、医師などの検査者が膝関節の内側に一方の手を置き、他方の手で足関節を持ち膝関節に内反強制力つまりすねを内側に向ける力を加え、膝関節の内反不安定性をみます。 この際、30°屈曲位で内反不安定性があれば、外側側副靱帯損傷を疑います。 画像検査 画像診断ではMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像診断装置)が有用です。 X線(レントゲン)写真では靭帯は写りませんがMRIでは損傷した靭帯を描出できます。 また、半月(板)損傷合併の有無も同時に評価できます。 内側側副靭帯損傷の治療法 内側側副靭帯損傷の治療法は、損傷の程度や症状に基づいて決められます。 保存的治療 内側側副靭帯の単独靱帯損傷の場合には、手術ではなくリハビリテーション治療による保存的治療が選択されます。 受傷後急性期には、 RICE(安静または短期の固定、冷却、弾力包帯などによる圧迫、患肢の挙上)処置に引き続いて、できるだけ早期から筋力訓練を開始します。 サポーター装着 膝に不安定性がある場合は、損傷靱帯保護の目的で支柱付きのサポーター装用を考慮します。 手術療法 前十字靭帯や半月板との混合損傷や、重症度3度であり保存的治療では治らないことが予想される場合には手術療法が行われます。 内側側副靱帯損傷についてよくある質問 Q1 内側側副靱帯損傷は自然に治りますか? A1 内側側副靱帯損傷は、損傷の程度が軽い場合や部分的な断裂では、尺骨動脈という栄養動脈があるので治癒しやすく保存療法が行いやすいといえます。 しかし完全な断裂など、重症の場合は自然治癒は期待しがたいので、靭帯の再腱術を行うことが必要になります。 Q2 内側側副靱帯損傷の固定期間はどれくらいですか? A2 個人差はありますが、約1〜2週間程度ギプスシーネやニーブレースなどで固定後、靭帯矯正サポーターを装着し、リハビリテーションとして可動域、歩行訓練を行っていきます。 膝装具は一般的には約6週間以上装着します。 膝の可動域と不安定性が、怪我をしていない方の膝と同じレベルまで改善したらスポーツ復帰が可能となります。 まとめ・MCL【内側側副靭帯損傷】の症状と治療法について解説 今回の記事では、内側側副靭帯損傷の症状や治療法について解説しました。 内側側副靱帯損傷が起こると、その治療には数週間を要する場合が多いです。しかしながら、再生医療によって、治療期間や回復までの時間を短くできる可能性があります。 当院では、自己脂肪由来幹細胞治療を行うことで、膝の靭帯損傷をより早く治し、筋力低下などを防ぐための再生医療を提供しています。ご興味のある方は、ぜひ一度当院の無料相談を受けてみてください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S146 監修:医師 加藤 秀一 参考文献 膝の最前線|理学療法科学23(2):335−340,2008.p336 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/23/2/23_2_335/_pdf 「膝靭帯損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/ligament_injury_of_th_knee.htm 膝のスポーツ外傷・障害と装具 東京女子体育大学小出清一|日本技師装具学会誌4(4):291〜295,1988.p292 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo1985/4/4/4_4_291/_pdf/-char/en スポーツ理学療法で必要となる 整形外科徒手検査と徴候|理学療法科学23(2):337−362,2008.p361 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/23/3/23_3_357/_pdf スポーツにおける膝外傷・障害に対する リハビリテーション治療 p1029 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/12/56_56.1027/_pdf
2023.08.21 -
- 肘関節
- ひざ関節
離断性骨軟骨炎は再発する?再発リスクをリハビリで抑えるための治療と期間 離断性骨軟骨炎は、スポーツが原因で発症することが多い病変です。 もし発症した場合は、初期のうちに治療することで完治する確率が高くなりますし、症状が進行した場合でも、重症なものでなければ手術によって痛みや引っかかりを解消することができます。 一時的にスポーツをやめて安静にしていれば治る可能性が高いのですが、運動の再開時期を間違えると再発することもあり、軟骨の状態によっては選手生命を絶たれることもあります。 しかし、術後のリハビリを正しく行うことで再発リスクを下げることが可能になります。プロのスポーツ選手やプロを目指している人はもちろん、誰にとっても再発は避けたいものですよね。 今回は、この離断性骨軟骨炎の再発と再発予防、再発リスクを予防するリハビリについて解説していきます。 離断性骨軟骨炎の症状と治療 離断性骨軟骨炎は、初期の症状がほとんどありません。 違和感や痛みは、負荷がかかった肘や膝の関節軟骨表面に亀裂が入ったことで生じます。 離断性骨軟骨炎をそのまま放っておくと、軟骨がはがれ落ち、痛みが強くなります。はがれ落ちた軟骨の欠片は関節内を浮遊し、曲げ伸ばしに影響を及ぼし、動作の際に引っかかりを感じるようになります。 進行すると、引っかかりと痛みでスムーズな動きができなくなるため、スポーツを継続することが難しくなります。しかし、発症した原因となっている運動を休止することで病巣が修復し完治する場合もあります。 無理に運動を継続すると、手術が必要になったり選手生命を絶たれることになったりする可能性が高いため、肘や膝に違和感があったら運動は中止し、早く医療機関を受診し、医師の指示に従いましょう。 離断性骨軟骨炎は再発する 注意すべきは離断性骨軟骨炎は、一旦症状が治まっても再発することがあります。なぜなら、軟骨が普通の骨よりも再生しにくいからです。 実は、離断性骨軟骨炎の症状は安静にしていると落ち着いてくるため、もう治ったと勘違いする人が多くいます。しかし、その状態で運動を始めてしまうと、まだ安定していない軟骨に負荷をかけることになり、結果として再発してしまうのです。 しばらく運動を休んでいて痛みや、引っかかりがなくなったとしても、自己判断で運動を再開するのは非常に危険です。必ず、運動を再開する前には面倒でも医師の診察を受けて運動再開の可否を確認することが大切です。 大丈夫だろう・・・といった自己判断は、結果として治療期間を長引かせる可能性があるため、避けましょう。 離断性骨軟骨炎をリハビリで抑えるために 離断性骨軟骨炎のリハビリは、保存療法として行うものと、手術の後に行うものがあります。 子どもや軽症の患者さんは、ほとんどが保存療法での治療となるため、治療開始とともにリハビリを始めます。 離断性骨軟骨炎は、運動が原因の疾患ですので、痛みがある時は安静にしていることが一番です。しかし、症状が落ち着いて来たら、ある程度動かすことも必要になります。 離断性骨軟骨炎のリハビリ治療と期間 離断性骨軟骨炎は、軽症であればリハビリと安静中心の保存療法で治療が行われます。 また、離断性骨軟骨炎のリハビリ期間は、患者さんの年齢や症状の進行具合によって変わってきます。 約1~2カ月で痛みはやわらぎ、最低でも3か月の安静は必要です。3カ月以上保存療法を行っていても回復しない場合は手術療法が適応されることもあります。また、すでにに症状が進行しており、軟骨の状態が良くない場合は、リハビリより手術を先に行います。 手術は大体が関節鏡を使ったものになりますが、患者さんの状態によっては軟骨の移植など大がかりな方法になることもあります。 関節鏡下の手術の場合は、傷口が小さく回復が早いため、早期にリハビリを開始することができます。ただ、軟骨の修復は普通の骨と比べて時間がかかるため、無理に動かすことはできません。 離断性骨軟骨炎のリハビリは重要 離断性骨軟骨炎のリハビリは、可動域訓練や筋力トレーニングを中心に行います。 リハビリの際は、理学療法士から動かし方の指導やアドバイスがありますから、それに従って、肘や膝に負荷のかからない動作を身につけていきます。 リハビリを行うことは、自分の動きや姿勢の癖に気付くことにも繋がります。体に負担のかからない動作を知ることができるため、スポーツ再開後のトレーニングやストレッチにも役立ちます。 離断性骨軟骨炎の再発予防 離断性骨軟骨炎の再発を予防するには、運動の再開時期を勝手に決めないことがポイントです。 痛みがなくても軟骨はまだ不安定な状態ですから、きちんと医師の指示に従い、完全に治ってから運動を再開してください。 また、いきなり以前と同じレベルで体を動かすのは危険です。最初のうちは無理せず、少しずつ元に戻していくようにしましょう。 まとめ・離断性骨軟骨炎は再開時期を誤ると再発するため注意が必要 離断性骨軟骨炎は、安静にしていれば症状がなくなっていきます。しかし、それを完治したと思い込んでしまうと、再発しやすくなります。リハビリを正しく行うことで症状を和らげ、再発を防ぐことができます。 自分の姿勢や動作の癖を知ることは、その後の怪我を予防することにも繋がります。また、治療後はいきなり治療前と同じトレーニングをするのではなく、少しずつ運動を再開していくようにしましょう。 きちんと軟骨が修復されれば、離断性骨軟骨炎は治すことができます。痛みや引っかかりがなくなっても、運動の再開時期は必ず一度受診し、医師の指示に従うようにし、焦らず確実に治療しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.132 監修:医師 坂本貞範
2023.05.26 -
- 半月板損傷
- 靭帯損傷
- ひざ関節
スノーボード、スキーなど冬のスポーツで起こりやすい膝の怪我とは 冬のウィンタースポーツ!シーズンになるとスキーやスノーボードを楽しみにしていらっしゃる方も多いと思います。 ただ、これらのスポーツは、スピードが出るために転倒や、衝突の危険性があるスポーツですので怪我のリスクについては、十分に知っておく必要があります。 本記事ではウィンタースポーツで起こりやすいスポーツ外傷、ウインタースポーツで起こりやすい膝の怪我に焦点を当てて解説していきます。 冬のスポーツ!膝の怪我で多いのは前十字靭帯損傷と半月板損傷 スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツにおいては、膝の損傷、捻挫といった怪我が多く見られます。これは滑走中に膝を捻ってしまったり、ジャンプからの着地、転倒時に大きな負担がかかってしまうためです。 膝の怪我の中で最も頻度が多いのが、「前十字靭帯損傷」「半月板損傷」です。 そこで、これら起こりやすい怪我について詳しく見ていきましょう。 ◇前十字靭帯損傷 前十字靭帯とは、膝の関節の中にある靭帯のうちの一つで、膝関節を安定化させる働きをしています。前十字靭帯は主に膝の捻りと、前後方向のぐらつきを抑えています。 ◇症状 受傷直後は激しい痛みのため、その場から動けなくなることが多いです。その際に「ぶちっ」という筋肉が切れるような音が聞こえることもあります。 受傷直後に動けていた方でも、約70%に関節内血腫(関節内に血がたまる)が生じるとされており、時間が経過するとともに、痛みや腫れが強くなり、動くことが出来なくなっていきます。 2~3週間後には腫れや痛みは軽減されることが多いですが、下記のような症状が継続してみられることがあります。 前十字靭帯損傷の症状 ・膝の不安定感 ・膝が外れる感じがする ・膝に力が入らない ・膝がすぐ腫れてしまう ・膝が伸びない ・正座ができない 膝を使う動作、特にスポーツ競技中などの様々な動作で症状が出ます。 ◇診断 医師による診察や、レントゲン検査で骨折の有無を確認します。 MRI検査が靭帯の評価(靭帯の形状や靭帯の走行など)に有用です。 ◇治療 前十字靭帯損傷の治療法には、保存療法と手術療法の2種類があります。それぞれについてみていきましょう。 保存療法 大腿四頭筋などの筋力訓練を行ったり、必要に応じて装具を作成して日常生活やスポーツ活動への復帰を目指します。 しかし、この場合は靭帯が完治したわけではなく、日常生活で膝が安定せず、痛みが続く場合もあります。症状が残る場合は、半月板の損傷などの二次損傷を起こすリスクが高くなります。 以前はスポーツをしない場合は、保存療法を選択する場合も多かったですが、現在では膝の老化の進行を早める可能性があり、若年者でも手術を勧められることが多くなっています。 手術療法 靭帯は自然に修復されることはなく、再建術が行われます。再建術は膝の後内側にある屈筋腱を移植する自家移植が一般的に行われます。 手術後はリハビリが必須となりますが、術後10~12か月後に元のスポーツに復帰できることが多いです。 前十字靱帯損傷を放置すると、膝が安定性を失い、膝崩れといいガクッと崩れ落ちてしまったり、膝があらゆる方向に捻じれやすくなります。 前十字靱帯損傷によって膝が安定しない状態が続くと、クッションの役割をしている半月板や、関節軟骨に負荷が多くかかってしまいます。その結果、半月板損傷など二次的な障害が生じることがあります。 ・半月板損傷 半月板とは膝関節の大腿骨と脛骨の間にある線維軟骨のことです。内側と外側にそれぞれにあり、膝にかかる衝撃を吸収する働きがあります。 ◇症状 症状としては膝の曲げ伸ばしが困難になることが挙げられます。また、動かそうとしたときに激しい痛みを伴うこともあります。 重症の場合には、膝に水(関節液)が溜まり腫れてしまったり、激痛を伴って関節が動かせなくなる「ロッキング」という症状が現れ、歩行困難になることもあります。 ◇検査 医師による診察やMRIが行われます。また、状況に応じて、関節の中に内視鏡を入れて調べる、関節鏡検査を行う場合もあります。 ◇治療法 半月板損傷の主な治療法には、保存治療と手術療法の2種類があります。 保存療法 サポーターなどで患部を固定し、抗炎症薬などの薬物療法やリハビリなどを行います。保存療法を行っても痛みや、ロッキングなどの症状が続く場合には手術を行います。 手術療法 断裂部位の幅が 1 cm以上と大きい場合や、保存療法を行っても症状が持続する場合は手術療法が検討されます。 手術法には、損傷した部分を切り取る切除術と、損傷した部分を縫い合わせる縫合術の2種類があり、関節鏡を使った鏡視下手術を行います。 切除術の場合は、半月板を取り除くことで膝軟骨の消耗が進んでしまうことがあるため、近年では縫合術が選択されることもあります。ただし、損傷した半月板の状態によって縫合が難しいと判断された場合は切除術を行います。 手術後はリハビリが必須であり、スポーツへ復帰できるタイミングは、半月板切除術で約3ヵ月、半月板縫合術で約6ヵ月程度とされています。 まとめ・スノーボード、スキーなど冬のスポーツで起こりやすい膝の怪我 スキーや、スノーボードを行う際にはプロテクターを着用するようにしましょう。 これにより、怪我のリスクが格段に下がります。また自分の実力に見合った楽しみ方をすることも重要です。 治療後はケガをした時と同じ動作を続けると、再び膝を損傷する可能性があるため、スポーツの際などは特に注意が必要です。また、股関節や足首など下肢全体の関節が柔軟だと、膝へかかる負担が軽減されやすくなり、再発予防にもつながります。 下肢の筋力トレーニングも必須です。特に大腿四頭筋とハムストリングスを強化することが重要です。 普段からストレッチや筋トレを習慣づけ、運動する際には、準備運動や整理運動をしっかり行うようにして、体全体の柔軟性を保つようにしましょう。 スキーやスノーボードを行う際は、怪我のリスクについても備えておくことが重要です。膝の怪我は日常生活にも影響が出ることが多いので、安全にスポーツを楽しみましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.111 監修:医師 坂本貞範
2023.02.01