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肘頭滑液包炎とは、その症状と原因、治療法 肘頭の滑液包に炎症が起こった状態である肘頭滑液包炎をご存知でしょうか?肘を頻回に使って酷使したり、感染症が原因で起こる病気です。 肘の痛みや、腫れをきたすため、日常生活に支障をきたすこともあります。この記事では、肘頭滑液包炎の症状や原因について説明し、治療法についても説明いたします。 肘の解剖 肘頭滑液包炎を理解するため必要な、肘の解剖を簡単にご説明します。まず肘頭は、肘の先端にある尖った部分です。わたしたちが机に肘をつくとき、机に接しているところが肘頭になります。 この肘の先端である肘頭と皮膚の間には、滑液包と呼ばれる液体に満たされた薄い袋があります。滑液包は肩、腰、膝、踵などの関節の近くにもあり、骨、筋肉、腱のクッションになります。肘の滑液包は、皮膚が肘頭の骨の上をスムーズにスライドする動きを助けます。 肘頭滑液包炎は、肘頭の滑液包に炎症が起こった状態です。続けて、肘頭滑液包炎の症状や原因、そして治療法を説明します。 肘頭滑液包炎の症状 滑液包が炎症を起こすと、まず痛みを伴うようになります。炎症を起こした滑液包からの痛みは、突然起こることもありますし、時間をかけて徐々に悪化していくこともあります。また最初は肘を動かしたときに痛みを感じますが、進行するとじっとしていても痛みを感じるようになります。 また肘の関節の周りに腫れや発赤を生じます。感染症が原因となっている場合は、局所に熱感を伴うこと、また発熱することもあります。 痛みや腫れなどの症状に加えて、肘頭滑液包炎が悪化すると、肘を使うことが困難になります。慣れた日常生活の動作も、痛みのために辛くなるかもしれません。 肘頭滑液包炎の原因 肘頭滑液包炎の原因には、外傷、過度に肘を使うこと、また黄色ブドウ球菌による感染などがあります。 過度に肘を使うこととして、例えば野球ボールを投げる動作を繰り返すこと、肘に負担のかかる姿勢を長時間続けることなどがあります。肘や腕を使った動作を繰り返し行うことで、肘の滑液包にかかる圧力が高くなり、炎症を起こします。 そのほか大工仕事、ガーデニング、絵を描くことなどでも起こることがあります。また、音楽家は肘頭滑液包炎になるリスクが高いと言われています。 肘頭滑液包炎の治療法 肘頭滑液包炎の治療は、感染症が原因か、そうでないかでわかれます。 感染症による肘頭滑液包炎の治療法 感染症が原因である場合、抗菌薬による治療は必須です。通常は1週間程度、黄色ブドウ球菌に有効な抗菌薬を飲む必要があります。症状が良くなっても、体内に残っている病原菌を確実に除去ために、処方された期間は抗菌薬を服用する必要があります。 感染した滑液をできるだけ除去するために、針を刺して滑液包も吸引することがあります。吸引した滑液を詳しく調べることで、病原菌がわかることもありますので、診断を目的に吸引する場合もあります。 感染症が原因ではない肘頭滑液包炎の治療法 感染症が原因ではない場合は、自宅でもある程度治療ができます。 まず、運動や仕事で滑液包炎の原因となった腕の動きを避けることは、症状の緩和に役立ちます。痛みを我慢して仕事をしたり、スポーツをしたりしないようにしましょう。 またNSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)は、滑液包炎によって引き起こされる痛みや炎症を軽減するために役立ちます。装具を利用して肘が動かないように固定すると、症状は改善しやすくなります。三角巾などで手を吊るだけでも構いません。 これらの治療が3~6週間経っても効果がない場合は、滑液包の周りの過剰な液体を吸引すると同時に、炎症を抑えるためにステロイド薬の注射をすることがあります。 感染症が原因ではない肘頭滑液包炎は、3~6週間程度安静にすることで治ることが一般的です。肘頭滑液包炎は完治が期待できますので、肘に負担をかけずに仕事や学業ができるのであれば、治療中に仕事や学校を休む必要はありません。 なお肘頭滑液包炎は通常問診と診察だけで診断できますが、治療してもなかなかよくならない、あるいは再発を繰り返す場合は、X線やMRIなどを用いての画像検査を行うこともあります。 肘頭滑液包炎の手術 肘頭滑液包炎は、重症化しても手術を必要とすることはまれです。ただし、症状が非外科的治療に反応しない場合、または抗菌薬を服用しても良くならないほど重度の感染症がある場合、手術が必要な場合があります。 手術では、炎症を起こしている肘の滑液包を切除します。術後は、肘を固定するための装具が必要になります。回復には1カ月ほどかかります。 まとめ・肘頭滑液包炎とは、その症状と原因、治療法 以上、肘頭滑液包炎について、症状や原因、治療法について説明しました。 肘頭滑液包炎を予防する最善の方法は、できるだけ肘を酷使しないことです。肘を使う激しい運動や活動のあとは、体を休め、回復するための時間を設けましょう。 また仕事や趣味で肘を使うことが多い場合は、肘当てをつけるなどして、保護具を使うとよいでしょう。もし、それでも中々よくならない肘の痛みがある場合は、早めに整形外科をはじめ、医療機関にご相談されることをお勧めいたします。 No.078 監修:医師 坂本貞範 ▼ 今注目の「再生医療」は最新の医療分野です 自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした最先端の医療です
最終更新日:2023.12.28 -
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肘が痛い!肘の関節が痛いときに疑われる病気と対策について解説します 肘は、腕を伸ばしたり曲げたりして生活をする上で重要な役割を果たしている関節です。 肘関節構成する骨や靭帯、そして筋肉などは、複雑に連携しあってその機能を果たしていますが、さまざまな原因によって痛みを生じることがあります。 この記事では、肘関節について簡単に説明したのちに、肘が痛くなる原因についてご説明いたします。この記事を読むことで、肘が痛いときに考えられる原因や対処法について知っていただくことができるでしょう。 肘が痛いときに疑われる病気 肘が痛いとき、疑われる病気がいくつかあります。ここでは、それぞれの症状や原因、また対処法についてご紹介します。 肘の病気 ・上腕骨内側上顆炎 ・上腕骨外側上顆炎 ・肘頭滑液包炎 ・変形性肘関節症 ・肘の脱臼または骨折 ・肘の靭帯損傷 上腕骨内側上顆炎 上腕骨内側上顆炎は、一般にリトルリーガー肘、ゴルフ肘とも呼ばれています。野球の投球動作やゴルフのダウンスイングを繰り返し行うことが原因です。そのほかにも、仕事で毎日ハンマーを振るなど、手の動きを繰り返した結果、発症することもあります。 上腕骨内側上顆炎は、肘の内側に沿って痛みが生じます。特に手首を掌側に曲げる動きや物を持って肘を曲げることが、痛みの引き金になることがあります。繰り返し手首を曲げたり、指を握ったりして動かすことで、上腕骨の内側に付着する筋肉の腱が炎症を起こすことが原因です。 対策 痛みを感じる間は安静にし、患部をアイシングしたり、NSAIDsと呼ばれる非ステロイド性消炎鎮痛薬を使用したりすることで、多くの場合は改善します。発症時は運動するときだけの痛みですが、悪化すると安静にしていても痛みを感じるようになります。 上腕骨外側上顆炎 上腕骨外側上顆炎は、別名テニス肘とも呼ばれます。ラケットを使うスポーツをしたり、またハンマーを打ち付けたりするなど、ラケットを使ったスポーツと同じような動きをする特定の腕の動きを繰り返していると、この症状を生じることがあります。 アスリート以外に、シェフ、大工、自動車修理工、配管工、また音楽家なども上腕骨外側上顆炎を起こします。上腕骨外側上顆炎では、肘の外側にある腱が影響を受けています。肘の外側に沿って痛みや熱感などの症状が現れます。また、握ることに問題が生じることもあります。 対策 これらの症状は通常、痛みの強いときは非ステロイド性消炎鎮痛薬を内服の上安静にする、患部をアイシングする、また局部を圧迫するバンドを利用する、理学療法をするなどの方法で、多くの場合は改善します。 肘頭滑液包炎 肘を曲げたときにできる肘の後方の出っ張りが肘頭ですが、この肘頭の皮下に存在するクッションの役割を果たしている滑液包に生じる炎症です。 肘への直接の打撃、長時間肘をついて肘に圧力をかけていた場合、感染症、リウマチなどの内科疾患などが原因となっています。 局所の腫れが最初の症状です。腫れが大きくなってくると、滑液包が大きくなり、周囲の神経を刺激するために痛みを感じるようになります。感染症の場合、発赤や熱感が生じることがあります。適切に治療が行われないと、徐々に肘を動かすことも難しくなってきます。 対策 感染症が原因であれば、抗菌薬の内服が必要です。滑液包の内部の液体が多いときは、注射により液体を抜きます。また感染症が原因ではない場合は、アイシングや圧迫、非ステロイド性消炎鎮痛薬の内服で管理します。重症な場合は、手術が必要になることもあります。 変形性肘関節症 変形性関節症は、関節内に存在しクッションの役割を果たしている軟骨が侵される病気で、軟骨が摩耗する結果、クッションを失った関節が損傷を受けます。変形性肘関節症では、肘の怪我や関節炎などによって引き起こされる場合があります。 主に肘の内側では、骨棘と呼ばれる骨の過剰な突起物ができ、そのために肘の動きが制限されます。また骨棘が折れてしまうと関節内で遊離体となり、関節の動きを止めてしまうことも生じえます(ロッキング)。 肘の痛み、肘の曲げ伸ばしが困難になる、肘の曲げ伸ばしの動きが急に制限されてロックされるような感覚がする、肘を動かすときの異常な音、肘関節の腫れなどの症状を認めます。進行すると、肘部管症候群と呼ばれる肘の内側にある尺骨神経が圧迫される状態になり、薬指と小指の感覚の力が入りにくくなり、感覚も鈍くなります。 対策 通常、固定具を用いた安静、消炎鎮痛薬の使用などの薬物療法、そして理学療法で治療を開始します。ただ重症の場合は、人工関節置換術を含む手術が行われます。 肘の脱臼または骨折 肘を伸ばした状態で転倒するなど、肘に強い衝撃が加わると脱臼や骨折を起こすことがあります。 症状としては、痛みのほかに肘の腫れや変色など、肘周囲の見た目の変形がみられます。また、激しい痛みのために、通常は肘関節を動かすことができなくなります。 対策 脱臼を伴う場合は専門医により骨を元の位置に戻し、脱臼または骨折した肘をギブス等で固定し、鎮痛薬を投与します。ギプスを外した後は、可動域の回復を目的とした理学療法が役立ちます。 肘の靭帯損傷 肘の靭帯損傷は、肘関節にある靭帯のいずれかに発生するもので、外傷、または投球動作など肘への繰り返すストレスの影響を受けて生じます。部分的な断裂と完全断裂があり、肘関節の脱臼や骨折に伴うこともよくあります。症状は、肘の痛み、肘関節の不安定さ、腫れ、可動域の制限などです。 対策 受傷直後は肘を固定して安静にし、患部をアイシングして鎮痛薬による鎮痛を図ります。通常は数週間の固定を要し、固定が解除されてから理学療法に取り組みます。ときに手術が必要となります。 肘関節について 肘関節は、上腕と前腕の間にある関節で、上腕骨と前腕の橈骨と尺骨の3つの骨によって関節が形成されています。 3つの骨の間にはそれぞれ関節があるため、肘には3つの関節が含まれており、共通の関節包で覆われています。関節の関節面は、軟骨の層で隔てられており、関節のスムーズな動きは、潤滑油の役割をする粘性の高い滑液によってもたらされます。 肘関節を形成する骨同士をつなぐ複数の靭帯があり、関節の安定性に寄与しています。また肘関節は曲げる(屈曲)、伸ばす(伸展)、内側に捻る(回内)、外側に捻る(回外)といった動きができますが、同時に手首を曲げて捻るなど、他の関節の動きと連動して動くこともできます。そしてこれらの複雑な動きは、それぞれ関係する筋肉の収縮によるものです。 まとめ・肘が痛い!肘の関節が痛むときに疑われる病気と対策 以上、肘が痛いときに考えられる病気、その原因や対処法についてご説明しました。肘は日常的によく使う関節です。それだけに痛みがあると日常生活に大きな支障をきたしかねません。 上腕骨内側上顆炎(リトルリーガー肘・ゴルフ肘)や上腕骨外側上顆炎(テニス肘)は、特定の動作を繰り返すことによって生じる炎症が主な原因です。肘頭滑液包炎は、肘の打撲や圧迫、感染症などが原因で発症します。変形性肘関節症は、軟骨の摩耗によって関節が損傷される病気であり、進行すると関節の可動域が制限されます。 肘の脱臼や骨折、靭帯損傷は、外傷によって引き起こされ、早急な治療が必要です。これらの病気は、痛みや腫れ、関節の不安定さなどの症状を引き起こし、治療には安静やアイシング、非ステロイド性消炎鎮痛薬の使用、理学療法などが有効です。 症状が改善しない場合や重症の場合は、医師の診察を受け、適切な治療を受けることが重要です。肘の健康を保つためには、日常的なケアと無理のない運動が欠かせません。 肘の痛みで悩んでいる方がおられたら、ぜひお近くの整形外科をはじめ医療機関にご相談ください。 No.077 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療に関する詳細は以下をご覧下さい 自分自身の自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした最先端の医療です
最終更新日:2024.05.21