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骨壊死の分類について|股関節・肩の骨頭壊死と膝の骨壊死症 骨壊死とは骨を栄養している血管が障害されて血液が供給されなくなってしまった結果、骨の一部分が壊死してしまう病気です。怪我などの外傷による血管の障害や、アルコール、ステロイド使用者などに原因不明で生じることがあります。 この記事ではそれぞれの骨頭壊死と骨壊死の種類について解説し、重症度を決める分類方法やステージの内容について詳しく解説していきます。 骨壊死と骨頭壊死症 骨壊死は全身のあらゆる骨に起こり得ますが、代表的な部位として、股関節の大腿骨頭に起きる大腿骨頭壊死、肩関節の上腕骨に起こる上腕骨頭壊死、膝関節骨壊死などがあります。 股関節、肩関節についてはそれぞれ、大腿骨頭、上腕骨頭という部位があるので骨頭壊死という病名がつきますが、膝関節は骨頭という部位がないので骨壊死という病名となります。 大腿骨頭壊死について 大腿骨頭壊死の原因 股関節を構成している大腿骨頭を栄養している血管が障害されることによって生じます。 原因不明の特発性と股関節の骨折や脱臼などの外傷、放射線治療、潜函病などによって発症する場合があります。 大腿骨頭壊死の分類 原因不明である特発性骨頭壊死では壊死の範囲によって重症度分類がありType A~Cに分けられます。 重症になるほど、壊死範囲が大きく、大腿骨頭が潰れてしまうリスクが高くなりType Aが軽症でCになるとより重症となります。Type CはさらにC-1とより重症なC-2に分けられます。 それぞれの内容について解説します。 Type A:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3未満 Type B:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3〜2/3 Type C:壊死範囲が体重がかかる領域の2/3以上 Type C-1:壊死の範囲が骨盤の縁の内側にあるもの Type C-2:壊死の範囲が骨盤の縁の外側にあるもの 大腿骨頭壊死のステージ分類 大腿骨頭壊死の進行度についての分類です。初期には壊死部分が潰れていき、進行すると軟骨がすり減ることによって変形性関節症になってします。ステージは1〜4に分けられるので、それぞれについて簡単に解説します。 ステージ1:レントゲンで異常がなく、MRI検査などで壊死がわかる場合 ステージ2:レントゲンで異常があるものの、骨頭が潰れていない時期 ステージ3:骨頭が潰れているものの、関節軟骨があり関節の隙間が残っている時期 ステージ4:軟骨がすり減り、変形性関節症となっている時期 これらの重症度、ステージ分類とご本人の年齢や社会生活の状況、希望などを考慮して治療方針が決定されます。軽症なタイプであれば保存治療で治る方もいますが、重症なタイプや末期のステージでは手術を要する場合もあります。 上腕骨頭壊死について 上腕骨頭壊死の原因 肩関節を構成している上腕骨頭という部分を栄養している血管が障害されることによって骨が壊死してしまう病気です。 原因は、外傷性と非外傷性に分けられます。外傷性には上腕骨の骨折、脱臼などがあり、非外傷性にはステロイドの使用やアルコール、鎌状赤血球症、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの全身性疾患などがあります。 上腕骨頭壊死のステージ分類 病型の分類にはCruess分類が最も使われています。 ステージ1:レントゲンで異常がなく、CTやMRI検査で壊死がわかる場合 ステージ2:骨透亮像や骨硬化像、限局性の骨溶解像 ステージ3:軟骨下骨に骨折線を認める段階 ステージ4:上腕骨頭に加えて、肩甲骨の関節窩にも骨の変化を生じている場合 上腕骨頭壊死に対する治療法は、このステージ分類、壊死の範囲、患者の年齢、症状、全身の健康状態などの要因によって決まります。保存治療で治る方もいますが、進行してステージ末期になると人工関節が必要となる場合もあります。 膝関節骨壊死について 膝関節骨壊死の原因 膝関節の骨壊死も同じように、何らかの原因で骨が壊死してしまう病気で、膝関節では大腿骨側によく起こります。 高齢の方によく起こりますが、変形性膝関節症などの膝の痛みと比べて安静にしていても痛みが強いことが特徴です。 原因はまだはっきりとわかっていませんが、肥満やステロイド薬の使用の他、軽微な骨折が原因となる場合もあります。 膝関節骨壊死のステージ分類 いくつかのステージ分類が提唱されていますが、代表的なものを1つ紹介します。 ステージ1:レントゲンで異常がみられない時期 ステージ2:レントゲンで骨内に壊死領域がみられるもの ステージ3:レントゲンで軟骨の下に骨折線があり、関節面が凹んでいるもの ステージ4:関節の隙間が狭くなってしまっている時期 骨の壊死に対する最新の治療法 いずれの骨壊死でも、初期の段階では異常が見つからない場合もあります。しかし、症状が進行すると壊死した部分が潰れてしまい、結果として変形性関節症を起こしてしまいます。 関節が変形してしまうと、保存治療の効果は限られているので、基本的には人工関節置換術が選択されます。 しかし、最近では手術に至らないようにする治療として「再生医療」があります。再生医療は導入されたばかりの最新の治療法であり、ご自身の細胞から培養した幹細胞などを直接関節内に投与することで組織の修復を促します。それによって骨や軟骨の再生が起こり、症状がよくなる可能性があります。 治療について詳しく知りたい方はいつでもお気軽にご相談ください。 骨の壊死についてよくあるQ&A Q . 骨壊死にならないか心配ですが、気を付けることはありますか。 A . 現代医学でも骨壊死の正確な原因はわかっていません。危険因子としてわかっているのは外傷、ステロイドの使用、アルコール多飲です。 ステロイドは、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど全身性疾患の治療に必要なので、飲まないことはおすすしませんが、外傷やアルコールはご自分で気を付けることができます。無理な運動は行わず、規則正しい生活習慣を送ることが予防に必要と言えるでしょう。 Q . レントゲンで問題ないと言われましたが、大丈夫でしょうか。 A . 骨壊死は初期の段階ではレントゲンで異常がわからないことがほとんどです。壊死した領域がレントゲンでわかるまでは時間がかかりますが、MRIでは早期に病気を見つけることができます。 痛みが強く心配な場合はMRIなどの精密検査について担当の医師と相談することをおすすめします。 まとめ・骨頭壊死の分類について|股関節・肩の骨頭壊死と膝の骨壊死症 骨壊死は骨を栄養している血流が途絶えることによって発症する、現時点でも原因が不明の難病です。 大腿骨頭や上腕骨頭、膝関節によく起こり、初期のレントゲンでは異常がみつからない場合がほとんどです。放置して症状が進行すると骨切り術や、人工関節などの手術が必要になりますが、最近では骨や軟骨の再生を促す再生治療も行われ始めています。 手術に至らないようにするためにも早期に病院で診断してもらい、治療について医師と相談していくことが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S147 監修:医師 加藤 秀一 参考文献 https://www.cancertherapyadvisor.com/home/decision-support-in-medicine/shoulder-and-elbow/osteonecrosis-of-the-humeral-head/ https://radiopaedia.org/articles/cruess-classification-of-humeral-head-osteonecrosis https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK562286/
2023.10.02 -
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リウマチによる膝の関節炎とは?症状と治療について医師が解説 関節リウマチは全身の関節に炎症が起こり、痛みや腫れを起こす病気です。進行すると関節の変形や機能の障害を残してしまいます。 関節リウマチでは膝の痛み、膝の腫れも非常に多い症状の1つです。膝が痛いときは、変形性膝関節症で年のせいと思うかもしれませんが、もし関節リウマチだった場合に放置していると、悪化してしまう可能性もあります。 この記事では関節リウマチによる膝関節炎の症状や治療法について解説していきます。膝の痛みでお困りの方はぜひ参考にしてみてください。 関節炎、関節リウマチとは 関節炎とは様々な原因で関節に炎症を起こしている状態の総称であり、関節リウマチは関節炎を起こす病気の1つです。 関節リウマチでは、自分の体を細菌やウイルスから守る免疫の異常によって関節の滑膜に炎症が起こり、痛みや腫れを起こしてしまいます。関節リウマチは無治療のままで放置してしまうと、関節が変形したり、痛みだすなど、機能的な障害をきたしてしまいます。 関節リウマチの主な原因 関節リウマチの多くは40-60歳代ごろの中高年の女性に発症します。正確な原因はまだ明らかになっていませんが、自己免疫疾患と考えられており、自分の組織に対して攻撃する抗体が作られてしまい、関節内の滑膜という組織にリンパ系の細胞が集まって炎症性の物質が作られることが原因と考えられています。 発症には遺伝的な要因や喫煙、歯周病などが関連しているとわかっています。発症すると関節炎によって痛みや腫れを起こし、進行すると関節の変形を生じてしまうため、早期の発見と治療が大切です。 リウマチによる膝関節炎の症状 関節リウマチで多い症状は手や足の指の腫れ、痛み、朝のこわばりなどです。また、膝関節で滑膜が増殖して、炎症を起こすと膝関節炎をきたしてしまいます。 膝関節炎の主な症状は、膝が腫れる、膝に水が溜まる、歩く時や階段での痛み、膝が曲がらないなどです。膝の痛みは膝裏に起こることが多く、曲げ伸ばしの時に音が生じることもあります。 また、炎症が強い場合には安静にしていても激痛を感じたり、歩けないくらいの痛みを生じる場合もあります。 膝関節炎、放っておくとどうなる? 膝関節炎を放置しておくと、関節の軟骨がなくなってしまい、徐々に関節の変形が進んでいきます。その結果、徐々に膝の曲げ伸ばしが難しくなり、骨同士がぶつかることによって痛みが悪化してしまいます。関節の変形を生じさせないためにも、早期の発見と治療が大切です。 リウマチによる膝関節炎の診断方法 診断は問診、身体診察と血液検査、画像検査などを組み合わせて総合的に行います。これは関節が腫れて、痛む病気は複数あり、検査だけで関節リウマチと診断できない場合があるからです。そのため、関節リウマチの診断基準を使用して診断を行います。 現在では2010年に米国、欧州リウマチ学会が合同で発表した分類基準を使用することが一般的です。 この基準では、 ①症状がある関節の数 ②症状が続いている期間 ③血液検査での炎症反応の数値 ④血液検査でのリウマトイド因子や抗CCP抗体の数値 これらの4項目についてそれぞれ点数をつけ、合計して6点以上であれば関節リウマチと診断します。 血液検査では、リウマトイド因子や抗CCP抗体が重要で、多くの関節リウマチで陽性になります。しかし、両方とも陰性でも関節リウマチである場合や、陽性でも関節リウマチではない場合もあります。また、炎症反応は活動性を反映する指標ですが、リウマチ以外でも上昇することがあります。 画像検査は診断基準には含まれませんが、単純レントゲン写真では骨びらんという、骨の透亮像がみられる場合があります。また関節エコーやMRI検査も滑膜炎の範囲、程度を評価するのに有用です。 リウマチによる膝関節の治療法 治療の基本は、薬物治療です。リウマチと診断した早期から、抗リウマチ薬を開始します。また、痛みの程度に応じて炎症を抑えるステロイドや、鎮痛薬を併用します。 お薬を開始しても膝関節炎の症状が続く場合にはサポーターを使用したり、膝関節に注射をする方法があります。しかし、膝関節炎が治まらず、関節の変形や破壊が進行した場合には、人工関節置換術などの手術治療が行われます。 抗リウマチ薬の種類 抗リウマチ薬には複数の種類があります、日本リウマチ学会による2020年のガイドラインから代表的なお薬を紹介します。 第一段階ではメトトレキサートが推奨されます。世界中で使用されている薬剤で有効性が高いことから関節リウマチ治療の第一選択となっています。 メトトレキサートに複数の抗リウマチ薬を併用しても炎症が治らない場合には第二段階の治療として、生物学的製剤やJAK阻害薬というお薬が使用されます。バイオテクノロジーを用いて製造されたお薬で、非常に効果が高いのですが、同時に自己免疫を抑える作用があるため、専門医に処方してもらうことが必要です。 ・メトトレキサート ・生物学的製剤 ・JAK阻害薬 関節リウマチはこれまで治療が難しく、関節の変形が進行してしまう患者さんも多かったのですが、現在では薬剤の種類も多くなっており、効果が高いお薬もあるため、適切に治療することで症状を抑えることが可能になってきています。 まとめ・リウマチによる膝の関節炎とは?症状と治療について医師が解説 関節リウマチは全身の関節に炎症が起こり、痛みや腫れを起こす病気です。進行すると関節の変形や機能の障害を残してしまいます。 関節リウマチによって膝関節炎が起きている場合は、放置してしまうと関節の変形、破壊が進行してしまい、人工関節手術が必要になることもあります。そのため、早期に発見、治療することが大事な病気です。 早めに治療をすることで、悪化を防ぐことができるので、膝に痛みがあり、なかなかよくならない方は早めに病院を受診するようにしましょう。 No.S151 監修:医師 加藤 秀一
2023.09.10 -
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膝関節捻挫の症状と原因、治療法を解説 膝をグキッとひねってしまい「歩くと痛い」「曲げ伸ばしすると痛い」という経験がある方も多いのではないでしょうか? 捻挫というと、足首の怪我を想像される方が多いと思いますが、膝にも捻挫が起こることがあります。 今回は「ぎっくり膝」と呼ばれたり検索されることもある、膝関節捻挫について解説します。膝関節捻挫には、重症な怪我が隠れている場合もありますので、膝を痛めた方はぜひ今回の記事を参考にしてください。 膝関節捻挫の原因 膝の曲げ伸ばしを安定して行うために、重要な働きをしているのが、関節を包む袋である「関節包」と関節を支える組織である「靭帯」です。関節包と靭帯がしっかりと機能しているおかげで、私たちの膝は本来動かない方向へ曲がらないようになっており、体重をかけても安定して歩くことができます。 しかし、運動中や転倒などにより関節が、通常の範囲を越えて動いてしまうことがあります。それよって、この「関節包」や「靭帯」を痛めてしまった状態を捻挫といいます。ただし、「捻挫」は軽症の場合に限ります。損傷が強く、関節が不安定になった場合は捻挫ではなく、靭帯損傷という診断になります。 多くは、スポーツ時に膝をひねったり、相手と接触して転倒してしまったりした際に起こりますが、普段の生活でも階段やちょっとした段差などで、思いがけず膝をひねってしまい受傷することがあります。 膝関節捻挫の症状 受傷直後は痛みが強いですが、機能は比較的保たれている事が多く、その後も痛みを我慢して普通に生活できる方もいます。ですが、徐々に内出血とむくみが出てきて、膝全体が腫れてきます。 膝全体が腫れると、膝を動かす際に痛みが生じます。また、左右を比較すると動かせる範囲が減ってしまう「可動域制限」がでてきます。ひどい場合は痛みで足が地面に付けないこともあります。 ただし、「捻挫」であれば、一時的な症状であり、数日で改善してきます。いつまでたっても痛みが引かない、腫れがひどくなってきたという場合は「靭帯損傷」のレベルまでいっていることがありますので、注意が必要です。 「歩けるけど痛い」、「膝がぐらぐらして不安定」は要注意! 「ただひねっただけだと思って様子を見ていたら、実は靭帯損傷だった。」という方は意外と多いです。 膝には主に4つの重要な靭帯があります。前後方向の安定性を保つ前十字靭帯と後十字靭帯、左右方向の安定性を保つ内側側副靭帯と外側側副靭帯です。これらはバスケやサッカーなどのスポーツはもちろん、転倒などでも痛めることがあります。 歩けるけれども痛みが続くとき、膝がぐらぐらして不安定だと感じるときは、これらの靭帯を痛めていることがあります。また、靭帯を痛めていると関節の中に血が溜まることが多いです。このような場合は自己判断せずに病院を受診しましょう。 また、膝のクッションや安定性を保つ役割をしている組織に、半月板があります。半月板は左右に1つずつありますが、こちらも膝をひねって痛めた際に損傷してしまうことがあります。年を取ると、徐々にすり減って切れやすくなるので、高齢の方はバスのステップなど少しの段差を下りただけでも切れてしまうことがあります。ブチッという感覚がある方もいます。半月板損傷も、病院でMRIなどを撮影しなければわからない怪我です。 捻挫には、このような損傷が隠れている場合がありますので、是非皆さんも知っておいてください。 膝関節捻挫の治療 膝をひねってしまったら、受傷直後は、まずRICE処置を行いましょう。 Rest:安静 Ice:冷やす Compression:圧迫 Elevation:挙上 スポーツはすぐに中止し、歩行もできればしない方が望ましいです。氷や保冷材などを使って膝を冷やしながら、包帯などがあれば圧迫してください。 また、寝ているときは心臓より高い位置に足をあげておくことで、膝が腫れてくるのを予防することができます。その後は、なるべく早期に整形外科医の診察を受けてください。 膝関節捻挫の診断 問診と身体診察で、どのような怪我が疑わしいのか予想がつく場合もあります。基本的には、まずレントゲンで骨折がないかどうか確認します。レントゲンだけではわからない場合は、骨をより詳しく見るためにCT検査を行うこともあります。その後、靭帯損傷や半月板損傷が疑われる場合にはMRI撮影を行うことになります。 レントゲン撮影 → CT検査 → MRI撮影 検査の結果、手術が必要な靭帯損傷などの疑いがなければ保存療法になります。 損傷された関節包や靱帯が修復する期間は、通常3週間前後とされることが多いです。この期間は、激しい運動や重労働などはせず、安静にしていましょう。安静を保つ目的で、一定期間添木や松葉杖などを使用することもあります。 痛みが強い場合は、飲み薬や湿布を処方することもありますが、鎮痛薬は痛みを止めるだけで治ったわけではないので、一番大事なのは膝の安静です。 そのまま通常の生活に戻れる場合は、治療終了となりますが、安静にしていたことによって筋力が低下したり、動きが悪くなることがあります。その際は、リハビリテーションを行い、機能を戻すとともに、次の怪我をしにくくする予防を行うことが大切です。 膝関節捻挫についてのQ&A Q1:膝関節捻挫の予防法はありますか? 運動をされる場合は、適切なストレッチやウォーミングアップが大切です。筋肉の柔軟性を保ち、温めてしっかりと動かせる状態にしてから運動を始めることで、関節に負担がかかりにくくなります。 また、普段から、下肢の筋力が衰えないように意識してトレーニングをしておくことも重要です。さらに、自分の足に合った靴を選ぶことも転倒の予防になります。 Q2:スポーツにはどのくらいで復帰できますか? スポーツ復帰には、痛みがなくなっていることが大前提です。痛みがあるまま再開すると、膝をさらに痛めたり、かばって別の部位の怪我を起こしたりすることがあります。 通常の捻挫であれば2〜3週間で痛みが落ち着いてくることが多いので、軽い運動から再開するように指導します。 膝に過度な負担をかけないよう、自分自身が意識するためにもサポーターなどの補助具を使用することも勧められます。 まとめ・膝関節捻挫の症状と原因、治療法を解説 今回は膝関節捻挫について解説しました。 捻挫は適切な治療を行えば、問題なく日常生活に復帰できる怪我です。その裏に潜む重大な怪我を見逃さないように、適切に医療機関を受診しましょう。 No.S148 監修:医師 加藤 秀一
2023.08.28 -
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離断性骨軟骨炎|膝での症状、原因、治療法について詳しく解説 膝に痛みを起こす原因の1つに、離断性骨軟骨炎があります。若いスポーツ選手に起こることが多く、膝の軟骨の損傷なので、初期のレントゲン写真ではわからない場合もあります。 この記事では膝の離断性骨軟骨炎の症状、原因、治療法について解説していきます。膝の痛みで悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。 離断性骨軟骨炎とは 膝の離断性骨軟骨炎の読み方は“りだんせいこつなんこつえん”であり、膝関節の軟骨が関節内に剥がれ落ちて膝に様々な症状を起こしてしまう病気です。 好発部位は大腿骨の内側が最も多く85%で、外側に15%、膝蓋骨にも稀に起こります。また、外側では円板上半月板がみられることもあります。 離断性骨軟骨の症状 離断性骨軟骨の症状は、病気が発症して初めの段階では傷んだ軟骨は遊離せずに、運動後の不快感や鈍い痛み以外には特に症状はありません。 軟骨の表面に亀裂や変化が生じると痛みも強くなり、スポーツなどに支障を来してしまいます。病気が進行していき、軟骨が剥離してしまうと引っかかる感じや膝のズレ感を自覚します。また、大きな軟骨の欠片が関節内に剥がれ落ちると、膝の中でゴリッと音がする場合があります。 離断性骨軟骨の主な原因 離断性骨軟骨炎は、約2:1の割合で男性に多く、成長期に野球やサッカー、バスケットボールなど運動を行う10代によくみられます。 正確な原因についてはまだ明らかにはされていませんが、成長期のスポーツ選手に起こりやすいことから、繰り返されるストレスや外傷によって軟骨下の骨に負荷がかかる事が原因と考えられています。血流障害によって、骨軟骨片が分離して剥がれ落ちてしまいます。 離断性骨軟骨の診断方法 軟骨の損傷なので初期には通常のレントゲン写真で診断することが難しいことが特徴です。そのため、初期に診断するためにはMRI検査を行い、確定診断をします。病気が進行して、骨軟骨片が分離してくる時期ではレントゲン写真で診断することが可能になってきます。 また、肘の離断性骨軟骨炎はエコーでスクリーニング検査と診断をすることが可能であり、膝の離断性骨軟骨炎についてもエコーでの診断が可能と報告されてきています。 離断性骨軟骨の治療 治療には保存療法、手術療法があります。 保存療法 身長が伸びている発育期で軟骨片が離れていなければ、自然に修復されることを期待して、免荷や膝関節の安静、サポーター(装具)を使用などの保存治療が選択されます。 痛みに対しては鎮痛薬や関節内注射などを行い、レントゲンやMRIで修復されている傾向が見られれば徐々に負荷を上げていきます。一部の骨折では超音波治療による骨癒合までの期間が短縮することから保険適応がありますが、現状では離断性骨軟骨炎に対しては超音波治療の適応はありません。 手術療法 手術治療に関しては、軟骨の修復が長引いている場合や、病気の範囲が大きい場合、発育期以降ではよい適応とされます。 手術治療はマイクロフラクチャー法、整復内固定術、骨軟骨移植術などの方法があります。 マイクロフラクチャー法 骨髄刺激法ともいわれます。膝関節鏡を関節内に入れて、患部の数カ所に小さい穴を開けて出血させて治癒を促進させます。骨髄に含まれる幹細胞が損傷部に誘導されることで修復させることを目的とさせる治療です。比較的小さな範囲の軟骨が損傷されている場合がよい適応です。 整復内固定術 軟骨片が剥離して、遊離している例では整復固定術の適応があります。不安定な骨軟骨片を骨釘や生体吸収性ピンなどを使用して固定します。 骨軟骨移植術 損傷範囲が比較的大きく、遊離した軟骨片の状態が悪く骨癒合を期待できない時に選択されます。大腿骨の体重がかからない部分から円柱状の軟骨片を採取して、損傷した部分に移植する自家骨軟骨柱移植術と採取した正常軟骨を培養して軟骨組織を作成して移植する自家培養軟骨移植術が主な方法です。 このように様々な手術治療法がありますが、いずれの方法も適応、術式については患者さんの状態や希望、術者によって異なってきます。ご自身の状態をしっかりと把握して治療法について、主治医とよく相談し、納得できる治療を受けることが大切です。 また手術だけではなく、その後のしっかりとしたリハビリテーションも治療の上で重要ですので、リハビリ体制が整っているかも病院選びの参考にすることがおすすめです。 まとめ・離断性骨軟骨炎|膝での症状、原因、治療法について詳しく解説 膝離断性骨軟骨炎は10歳代の若いスポーツ選手に起こりやすい病気で、膝関節の軟骨が関節内に剥がれ落ちて、痛みや引っかかりなどの様々な症状を起こしてしまいます。 初期にはレントゲン写真でわからない場合が多いので、MRIでの精密検査が必要です。 治療法は保存治療、手術治療があります。特に手術治療は骨髄刺激法や整復内固定術、骨軟骨柱移植術などの様々な方法がありますが、遊離した軟骨片の大きさや状態などを総合的に判断して決定されます。 膝に違和感や痛みがあるものの、なかなかよくならない方は早めに専門医に診察をしてもらうようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.147 監修:医師 坂本貞範
2023.08.24 -
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膝の裏側の腫れや痛み、膝下のむくみはリンパの詰まりが原因か?! 次のような症状で不安になっている方はいませんか?膝の裏側の腫れや痛み、膝から下のむくみは「リンパのつまり」が原因かもしれません。 「膝から下がむくんでいて気になる」 「膝の裏がふくらんでいるけど何が原因なの?」 このように膝下がむくむという症状は、多くの人が経験したことがあるのではないでしょうか。特に長時間の立ち仕事や座り仕事、飛行機やバスなどの移動で足が下がったままになるときなどに起こります。 このように膝下がむくむのは何故なのでしょうか?今回は、膝裏のリンパの詰まりに関して、原因や具体的な対処法を解説します。 膝裏でリンパが詰まる原因 膝裏にはリンパの流れる管(リンパ管)が太くなっている部分があります。このような部分を「リンパ節」と呼び、膝裏のリンパ節は「膝窩リンパ節(しっかリンパせつ)」と言います。 リンパ管を流れるリンパは体内の老廃物や細菌を運ぶ下水道のような役割を果たしています。そしてリンパ節はリンパ管を通ってきた異物を取り除くための部分です。 リンパそのものの流れが悪くなると、リンパ節でリンパ液がうまく循環しなくなってしまい、リンパ節が詰まってしまうような状態を引き起こします。 リンパの流れが悪くなる原因としては以下のようなものが挙げられます。 ・運動不足 ・肥満 ・偏った食生活 ・長時間同じ姿勢を続ける など 運動不足や肥満、長い時間同じ姿勢を続けることに共通して言えることは、「筋肉の働きが低下する」ことです。 リンパ管は筋肉に挟まれながら、体を巡っています。そのため、身体の曲げ伸ばし、しゃがんだり、伸ばしたり、押してみたり筋肉をほぐすことでリンパ管を刺激してリンパの流れを促します。 筋肉の働きが低下すると、リンパ管への刺激が少なくなり、リンパの流れを悪くしてしまうのです。 また、肥満は脂肪が邪魔して筋肉が働きにくくなるのに加えて、リンパ菅を狭くしてしまいリンパの流れを妨げます。 偏った食生活は、肥満に繋がるのはもちろんのこと、老廃物を増やしリンパ節の働きを妨げてしまうためリンパ節が詰まる原因となるのです。 膝下がむくむんだ場合の3つの対策 膝裏のリンパが詰まっている場合は、先ほど説明したリンパの流れが悪くなる原因を考慮した対応が必要です。その際の具体的な解消方法を3つ紹介しましょう。 1,適度な運動 筋肉を動かし血液やリンパの流れを促すことを「筋ポンプ作用」と呼びます。筋ポンプ作用を働かせるためには、筋肉を適度に動かす運動が必要です。 運動不足は筋肉量や代謝率の低下につながります。適度な運動は筋肉量や代謝率を向上させるだけでなく、血液やリンパ液の循環も促進します。 おすすめは膝や足首の屈伸運動です。特につま先を上げ下げする足首の運動は、第二の心臓と呼ばれるふくらはぎの筋肉を刺激して、血液やリンパ液の循環を促すのでおすすめです。 「テレビを見ながら」「トイレで座りながら」など、「ながら運動」でこまめに行うようにしましょう。 筋肉痛になるほど、きつい運動をすると疲労が蓄積してしまうため、無理な運動は控えるようにしましょう。 具体的は足首を回す。足首を時計回りや反時計回りに回すことで、筋肉のポンプ作用を促し、血液やリンパ液の流れを改善します。 2,マッサージ リンパの流れを良くするためのマッサージを行いましょう。 膝裏やふくらはぎを軽くさする、推すなどの程度から始めて、徐々にほぐすようにしていきましょう。足裏からふくらはぎに向かって優しくマッサージすることで、血管やリンパ管の収縮力を高め、血液やリンパ液の排出を助けます 押すなどして圧迫した場合に、痛みや違和感を感じる場合はリンパの流れが悪いだけではなく、他の病気が潜んでいる可能性があるので無理に行わないで中止しましょう。 専門家によるマッサージではなく、自分で行う場合は、あくまで気持ちいい程度の加減で行うことが大切です。 3,生活の工夫 リンパの流れを妨げる肥満を予防・改善するために、バランスの良い食事や運動の継続といった規則正しい生活習慣をすることは重要です。 また、生活の中で膝を圧迫したり、足を下ろし続けたりといった長時間椅子に座ることは膝窩リンパ節への負担の原因になります。 適度に休憩して歩いたり、しゃがんでみたり、伸ばしてみたり、運動やマッサージをしたりしましょう。 自宅にいる時などは、足を高くして休む。足を心臓より高い位置に置くことで、重力に逆らわずに血液やリンパ液を戻しやすくします。 そうすることで、足が心臓より高く位置することになり、リンパの流れを体の方に戻す効果があります。 また、食事や水分摂取に気を付けましょう。塩分やカフェインなどの摂り過ぎは水分代謝を悪化させるので控えましょう。また、水分不足もむくみの原因になるので、適度に水分補給しましょう。 膝裏が腫れている場合に注意したいポイント 膝の裏が腫れている場合に、リンパ節のむくみだけではなく、他の病気が潜んでいる可能性もあります。 以下のポイントを参照にして、気になる場合は自己判断で治療したり、放置したりせずに整形外科や循環器内科などを受診しましょう。 全身にむくみがある 全身にむくみがある場合は、心臓や腎臓など内科系の疾患によるむくみの可能性があります。 膝裏のむくみに気づいた場合には、他の部位にもむくみがないかどうかをチェックしましょう。 膝周辺に痛みや熱がある 膝裏のむくみだけでなく、痛みや熱がある場合は、膝関節の炎症や怪我などの可能性があります。また、リンパ節に細菌が入って感染症を起こしてしまうこともあります。 このような症状の場合は、早めの医療機関で適切な治療を受けることが大切ですので注意しましょう。 だんだん浮腫がひどくなる このような場合も病気が潜んでいる可能性があるので気をつけましょう。 膝裏にリンパ以外のものが詰まっている可能性として、「ベイカー嚢腫(のうしゅ)」という病気の場合があります。 ベイカー嚢腫は膝裏にある袋状の部分が肥大してしまう病気で、50歳以降の女性に多く見られます。 また、膝の変形が進んでいくことで、膝の関節に炎症が生じて関節に水が溜まってしまうことがあります。 いずれにせよ、専門家による適切な治療が必要です。 膝下のむくみは、規則正しい生活で改善しましょう 膝裏のリンパの詰まりは運動やマッサージの継続、正しい食事による肥満の予防などの対策があります。 何よりも継続が大切です。できることから始めて無理ないペースで続けましょう。 また、膝裏のむくみがリンパ以外の可能性もありますので、気になる場合は早めの受診がおすすめです。特に痛みや熱など他の症状がみられる場合は、放置しないように注意しましょう。 まとめ・膝の裏側の腫れや痛み、膝下のむくみはリンパの詰まりが原因か?! 膝下がむくむのは何故かという問いには、血液やリンパ液の循環不良が原因でした。その対策としては、足を高くして休む、足首を回す、マッサージする、食事や水分摂取に気を付ける、適度な運動をするという方法があります。 これらの方法を実践することで、膝下のむくみを予防や改善することができます。膝下がむくむと感じたら、ぜひ試してみてください 以上、「膝下のむくみは、膝裏のリンパの詰まりが原因!」を解説させていただきました。参考になれば幸いです。 No.S095 監修:医師 加藤 秀一
2022.11.25 -
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- 膝部、その他疾患
- ひざ関節
『膝から下が痛い!重い・・・だるい!』こんな症状から考えられる病気とその治療法 誰しも身体に言葉には言い表せないような痛みや、違和感を覚えると、とても不安な気持ちになりますよね。 今回は、そんな痛みの中でも「膝から下が痛い」や「膝から重い」「膝から下がだるい」といった症状から、考えられる病気や原因、治療法について述べてまいりましょう。 「膝から下が痛い!」という症状に不安を感じる 痛みが出る原因が以下のようにハッキリしている場合は、なんとなく「あれかな?」ということが思い当たると、落ち着いて対処できるのではないでしょうか? 「タンスに足の小指をぶつけた」 「頑張って運動をやりすぎた」 「足を挫いてしまった」 しかし、ある日突然、 「何もしていないのに足が痛い!」 「膝から下が重だるい」 「ふくらはぎがジンジンする」 などといった症状など、前触れもなく、これまで感じたことのないような痛みや違和感が襲ってくると、怖くなりますよね。大丈夫かなと?! 思い当たることが無いにも関わらず、自分が経験したことのない感覚が襲ってくると、人間誰しも不安に駆られます。 そこで今回は、急にくる「膝から下が痛い・重い・だるい」を医学的に紐解いていきましょう。これを読めばあなたの不安も少しは軽くなり、落ち着いて行動できることでしょう。 「膝から下が痛い」原因として考えられる疾患 以下に「膝から下が痛い」と感じた時に、考えられる疾患を挙げます。 ①下肢静脈瘤 ②閉塞性動脈硬化症 ③深部静脈血栓症 ④脊柱管狭窄症 なかなか難しい字が並んでいますよね。仰々しく、かえって不安になる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、これらの疾患について、できるだけ簡単に説明してまいります。 ①下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう) 下肢静脈瘤とは、足の血管(静脈)に異常が起こる病気です。 血管がコブ(瘤)のように膨れ上がり、体表からはボコボコしたように見えます。 静脈の中には、血液の逆流を防ぐための弁がついており、ふくらはぎの筋肉などの力で下から上に血液を戻してくれます。 しかし、その弁が壊れて正常に働かない場合は、血液が滞ってしまい、下の方に溜まってしまうのです。その血液が溜まった状態を下肢静脈瘤と言います。 出典:日本血管外科学会 https://www.jsvs.org/common/kasi/index.html 下肢静脈瘤の症状 ・ふくらはぎのだるさ、重さ ・湿疹や皮膚の変症、皮膚炎 ・足がむくむ ・足がつる(こむら返り) ・血管が目立つ(ボコボコなる) 下肢静脈瘤の原因 ・加齢による筋肉や血管機能の低下 ・立ち仕事 ・妊娠や出産 ・遺伝的な要素 ・激しいスポーツ 以上のように下肢静脈瘤の症状や原因はさまざまあります。見た目的にも分かりやすいため、自分で気づきやすい病気です。 また、加齢による血管のしなやかさがなくなったり、立ちっぱなしの仕事を続けたりなど、誰にでも起こりうる病気です。まずは医療機関に相談しましょう。 ②閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう) 閉塞性動脈硬化症とは、足の血管の動脈硬化が進んでしまい、血液が流れづらくなったり、つまったりする病気です。 足の血流が悪くなるので、歩くときに足の痛みや痺れ、冷たさを感じることがあります。進行すると、安静にしていても同様の症状が出てきますので、注意が必要です。 動脈硬化が進んだ血管(上)と正常な血管(下) 閉塞性動脈硬化症の症状 ・足の痺れや冷感(しびれ・冷える) ・歩行の時の足の痛み ・間欠性跛行(しばらく歩行していると、足の痛みが強くなり歩行困難となる症状) ・安静時の足の痛み ・足の潰瘍・壊死 閉塞性動脈硬化症の原因 ・肥満 ・高血圧 ・喫煙 ・糖尿病 以上のように、主な原因は生活習慣の乱れによるものが大きいようです。「動脈硬化」は全身に起こりやすいものなので、足だけでなく手にも同様の症状が出てくる可能性もあります。 安静時の足の痛みや足の潰瘍、壊死はだいぶ進行している状態です。治療には早めの対処が必要となりますので、足の痺れや痛み、冷たい感覚などが出てきたら早めに相談しましょう。 以下の症状を感じたら、スグに医療機関へ! ・足の痺れや痛み ・冷たい感覚 ③深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう) 深部静脈血栓症とは、足の奥深くに通る静脈血管のなかに、血の塊(血栓)ができてしまう病気です。 この血栓が心臓や肺に流され詰まってしまうと、心筋梗塞や肺塞栓症などの命に関わる重大な疾患を引き起こす危険性があります。 特に足の整形外科の手術後や長時間のフライトなどで多くみられ、別名「エコノミークラス症候群」と呼ばれることもあります。 出典:日本血管外科学会 https://www.jsvs.org/common/sinbu/index.html 深部静脈血栓症の症状 ・片足が大きく腫れ上がる ・赤黒く変色する ・ジンジンとした痛みが伴う ・肺塞栓症へ移行した場合、呼吸が荒くなり、胸が痛くなる 深部静脈血栓症の原因 ・手術や怪我による静脈血管の損傷 ・長期の臥床(寝たきり)など、足を動かしていない期間が長い ・喫煙 ・脱水 ・その他血流の低下が起こりうる場合 以上のように、手術やケガによる不動の期間が長くなってしまった場合によく起こります。 放置しておくと、重篤な肺塞栓症へと進行してしまう可能性もあるため、おかしいと思ったらただちに専門の医療機関へ行きましょう。 ④脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう) 脊柱管狭窄症とは、脊髄や抹消神経が通るトンネル(脊柱管)が何らかの影響を受けて狭くなってしまい、発症する疾患です。 中高年で腰痛を伴う代表的なもので、長時間歩くことができなくなる間欠性跛行がみられます。 出典:日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html 脊柱管狭窄症の症状 ・お尻から足にかけて痛みや痺れがある ・長く歩いたり、立ったままになるのが辛い ・足に力が入りにくい ・体を反らす動きがしづらい ・体を前屈みにすることで症状が楽になる ・尿漏れなどの排尿・排便障害がある 脊柱管狭窄症の原因 ・加齢による背骨の変形や、周辺の軟部組織の変性 ・先天的なもの ・猫背などの偏った姿勢 ・反り腰 ・仕事などで腰に負担のかかる動作の繰り返し 脊柱管狭窄症で悩む中高年の患者さんは数多くいます。それゆえ、見過ごされやすいのも事実です。 しかし、ひどいものでは足に力が入らない、排尿障害がでるなど、日常生活に大きく影響してくる場合もあります。 気になる症状が出たら、できるだけ早く専門医に受診しましょう。 膝から下が痛い、重い、だるい!と感じた人は何科を受診すべきか 「膝から下が痛い」と感じた時に、考えうる疾患について説明しました。 一見、全く違う病気のようにみえますが、似ている症状も数多くあります。そのため、疾患の見分け方は専門医でなければ難しいことが多々あります。 「じゃあ、何科を受診すればいいの?」と不安になる方もいらっしゃると思います。 そこで、下記に疾患ごとのおすすめ受診科目を挙げています。早めの対処が必要な疾患もありますので、気になる症状がみられましたら、下記を参考に専門医へご相談ください。 ①下肢静脈瘤・・・ 血管外科、心臓血管外科、皮膚科、形成外科、循環器内科 ②閉塞性動脈硬化症・・・ 血管外科、循環器内科 ③深部静脈血栓症・・・ 血管外科、循環器内科、整形外科 ④脊柱管狭窄症・・・ 整形外科 上記で多く紹介した「血管外科」は、実のところ現時点において日本にあまり多く展開しておりません。 そのため、近くに無い場合は、「循環器内科」や「皮膚科」、「整形外科」などの他の診療科も視野に入れて、何より早めに相談されることをおすすめします。 まとめ・膝から下が痛い・重い・だるい!こんな症状から考えられる病気と治療法 今回は「膝から下が痛い・重い・だるい」という症状で、考えられる疾患についてお話しました。 本記事で挙げた疾患の中には命に関わる重大な疾患も含まれている為、気になる症状がありましたらできるだけ早めに専門医へ相談してください。 難しい言葉が並び、読むのも嫌になるかもしれませんが、これらの疾患は誰にでも起こりうるものです。深部静脈血栓症から肺塞栓症へ移行してしまうと、一刻も争う状態になります。 「あの時、もっと早く相談しておけば良かった・・・」 そんな声が1人でも少なくなるよう、本記事を読んでいただけると幸いです。 No.S094 監修:医師 加藤 秀一
2022.11.14 -
- 変形性膝関節症
- 膝部、その他疾患
- ひざ関節
O脚とは?O脚の原因とおすすめの治し方を知りたい方へ必見です! 「よくO脚って聞くけど、どういう状態なの?」 O脚という言葉は聞いたことがあっても、詳しい状態や原因、治し方まで知らない方も多いのではないでしょうか。 子供の頃にみられる「X脚」や「O脚」の中でも、成人以降でみられる「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」などの病気もあります。 今回はO脚とはどのようなものかを紹介し、原因や治し方を解説します。 O脚とは脚が外側にカーブした状態 O脚とは別名「内反膝(ないはんひざ)」と呼ばれ、脚が外側にカーブしてしまい、膝から下が内側に曲がった姿勢になります。両脚を合わせたときに太ももから膝、そしてすねで作られる形が英語の「O」になることから「O脚」と呼ばれています。 左右のくるぶしをくっつけるように立ったときに、膝の内側に目立った隙間ができてしまうのも特徴です。 O脚の原因 O脚は子どもの頃にみられる場合と、大人でみられる場合があります。それぞれ原因について紹介します。 子どもの頃にみられるO脚の原因 乳幼児から2歳までの子どもはO脚になるのが普通で、この時期のO脚を「生理的O脚」と呼びます。 2歳以降はO脚の反対で膝から下が外側に曲がって、両足を揃えた時に「X」になる「X脚」という状態になります。 そして、成長するにつれてX脚の程度が弱まっていき、成人になるとわずかに膝から下が外側に曲がった状態で止まります。 しかし、生まれながら骨に異常があったり、成長の過程で骨に関する病気になったりすると異常なO脚になる場合があります。 また、怪我や関節を支える靱帯の異常によりO脚がみられることもあります。 成人以降でみられるO脚の原因 成人以降では加齢や肥満などにより関節の変形が進む「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」や関節の炎症が続く「関節リウマチ」などの病気がO脚の原因になります。 また、姿勢が影響してO脚になることもあります。具体的には、背中が丸くなるような、いわゆる「猫背」になると、体の各関節が連動して変化して結果的にO脚につながります。 猫背が強まり骨盤は後ろに倒れてしまうと重心が後ろに偏ってしまいます。そのままでは後ろにバランスを崩してしまうので、重心を前に保つために膝が曲がってガニ股のような姿勢になってしまい、O脚の傾向が強まりやすくなります。 実際に姿勢が連動してO脚になっていく感覚はすぐに試せます。大げさに猫背&骨盤を後ろに倒す姿勢になってみて体感してみましょう。 おすすめのO脚の治し方3つ 子どもの頃の病気で起こるO脚は、原因に応じて医師による専門的な治療が必要になります。 ここでは、成人以降でみられるO脚に対する治し方として、「筋力トレーニング」「ストレッチ」「姿勢の改善」について解説します。 詳しくはここでは解説しませんが、体重の増加もO脚の原因ですので、気になる方は食事の工夫や有酸素運動で体重のコントロールをするのもオススメです。 1.筋力トレーニング 膝にかかる負担を減らすために、筋肉を鍛えて膝の関節を守るトレーニングが必要です。特に膝を伸ばす筋肉や内もも、お尻の横の筋肉を鍛えることで、膝が左右にブレにくくなるため、O脚の改善につながります。 オススメの運動はボールやクッションといった厚みのある柔らかいものを両膝で挟みながらのスクワットです。内ももの筋肉を働かせながら、膝を伸ばす筋肉も同時に鍛えられます。 ただし、スクワットは以下の注意点を守らなければ、膝に負担がかかるので注意しましょう。 スクワットをする場合の注意点 ・膝を深く曲げすぎない ・曲げた膝がつま先より前に出ないようにする ・膝を内ひねらないようにする(内股にならないようにする) ・勢いをつけずゆっくり曲げ伸ばしする また、横を向いて寝た状態で、上になっている脚を斜め後ろ方向に持ち上げる運動によりお尻の横の筋肉が鍛えられます。 2.ストレッチ 太ももの裏にある筋肉をハムストリングスと言いますが、この筋肉は膝を曲げるときに働くため硬くなると膝が伸びにくくなってしまい、O脚につながります。 今回は床や椅子に座って簡単にできるハムストリングスのストレッチを紹介します。 【床でできるハムストリングスのストレッチ】 1.ストレッチする方の脚をまっすぐ伸ばして、つま先を上に向けます。 2.ゆっくり体を倒しながら、片手でつま先を触りにいきます。 3.伸びているのを感じた状態で15秒ほどキープします。 4.体を倒す場合に背中が丸くならないように気をつけましょう。 【椅子でできるハムストリングスのストレッチ】 1.椅子に浅く腰掛けてストレッチする方の脚をまっすぐ伸ばします。 2.踵を床につけてつま先を上に向けます。 3.ゆっくり体を前に倒して太ももの裏が伸びているのを感じながら15秒ほどキープします。 4.背中を丸くするのではなく足の付け根から曲げるように体を倒すのがポイントです。 3.姿勢の改善 O脚の原因になるような猫背の姿勢を改善することが重要です。座った状態で猫背にして骨盤が後ろに倒れた状態から、軽く下腹を凹ますように力を入れると、背筋が伸びて骨盤が立ってくる感覚が得られると思います。 日頃から下腹に力を入れる習慣をつけることで、最初は意識しないと改善できなかった姿勢が、徐々に無意識でも維持できるようになります。まずは、テレビを見ている間や食事の間というように決まった時間から行って習慣化させてO脚を防ぎましょう。 まとめ・O脚とは?O脚の原因と治し方を知りたい方へ必見です! 膝が外側にカーブするO脚は、誰にでも起こる可能性がある変形です。膝関節の変形や悪い姿勢などにより起こることを知り、正しい対策をする必要があります。 そして、何よりも大事なのは、O脚の原因を知り、対策である正しい運動や姿勢の改善を継続することです。一度に全ての対策をするのは難しくても、解説した方法のうち、1つからでも始めて、その後は、継続して続けるようにしましょう。 今回は、O脚とはどのようなものかを紹介し、原因や治し方を解説しました。気になる方は病院の整形外科などを受診されてはいかがでしょうか。以上、参考になれば幸いです。 No.088 監修:医師 坂本貞範 再生医療を求めて日本全国からご来院多数 ・リペアセルクリニック大阪院(福島区)へは、 ・新大阪からタクシーで15~20分(交通状況で変動)。JR線、阪神線の福島駅から徒歩圏内(3~8分) ・リペアセルクリニック東京院(港区)へは、 ・浜松町駅からタクシーで5分(交通状況で変動)、徒歩10分。ゆりかもめ線、竹芝駅から徒歩3分
2022.10.10 -
- 膝部、その他疾患
- ひざ関節
たな障害(膝滑膜ひだ障害)とは、その原因と症状、治療法 はじめに 運動を日常的に行う中で、突然、膝から崩れて座り込んでしまうことがあります。運動中の膝くずれの原因として、前十字靭帯の損傷や、膝蓋骨の脱臼、半月板の損傷などの膝の障害は有名であり、聞かれたことも多いのではないでしょうか。 一方で、『たな障害』と呼ばれる病気についてはご存知でしょうか。この『たな障害』も、膝の傷害で運動中に膝くずれを引き起こす病気です。たな障害は治療が手遅れになると重症になってしまい、痛みが強くなり、手術が必要な状態になってしまう病気なのです。 膝の病気、タナ障害とはどんな病気なのか、原因と症状、その治療法について紹介していきます。 たな障害の原因と症状 『たな障害』=『膝滑膜ひだ障害』とは、『滑膜ひだ』という膝にある関節の内側にある『ひだ』に炎症が起きてしまう病気です。 滑膜とは膝の動きを滑らかにする滑液という液体を作っている薄い膜です。滑膜に炎症が起きてしまうと、膝を滑らかに動かすことができなくなったり、膝を動かすと痛みを感じたりします。 『たな障害』は、野球や、バレーボール、バスケットボール、ハンドボールなど膝の曲げ伸ばしを頻繁に繰り返し行う運動選手によくみられますが、運動習慣のある人は誰しも起こり得る病気です。一般的な中高生の部活動で発症することも多くみられます。 膝の曲げ伸ばしを繰り返したり、捻ったりの動作を繰り返すと、『滑膜ひだ』が狭くなってしまい炎症を起こしてしまうのが原因で起こります。大きな外傷がなくても、曲げ伸ばしや、捻る動作を繰り返すと徐々に痛みが増えてくることもあります。 最初の症状としては、膝のお皿と言われている部分である膝蓋骨の内側や下側に痛みを自覚します。 徐々に『膝がぐらぐらする』といった、動かしにくさを自覚するようになります。やがて、痛みが出現し、動ける範囲内が制限されるようになります。徐々に痛みや動かしにくさは悪くなり、数分歩行するだけで痛みが出現するようになります。 さらに悪化すると、歩行中や運動中、突然、膝くずれを起こしてしまいます。 診察では、『たなテスト』と呼ばれる検査が行われます。この検査では、膝蓋骨の内側の下の方を医師が親指で押さえた状態で、膝を曲げます。このときに痛みを自覚するときや、医師が『ひっかかり』を感じるときに『たな障害』が疑われます。 さらに、レントゲン検査や、超音波検査、M R I検査といった画像検査を行い、滑膜の状態を評価して総合的に診断が行われます。なお、タナ障害には簡単な検査方法があります。 膝の曲げ伸ばしをすると、お皿の周りで引っ掛かかりがみられ「ポキッ、ポキッ」といったクリックしたような音が効かれたり、膝に手を当てると感じる場合は可能性が高いと思われます。 たな障害の治療 たな障害の治療で一番大事なことは、運動を休み、膝の安静を保つことです。しかし、実際には運動を続けられることが多いため、運動を続けて重症化させてしまう運動選手が多いため、注意が必要です。 症状が軽いときには、湿布を貼ったり、炎症を抑える薬を内服したりすること治ることがあります。また、膝の関節内にヒアルロン酸を注射して関節の動きを良くしたり、ステロイド剤を注射して炎症を抑えたりすることで痛みが引くこともあります。 多くの場合、タナ障害は、運動をやめる又は、減らして安静を保ちつつ、ストレッチや湿布等での冷却をはかり、大腿四頭筋の筋力維持訓練など、膝への負担を減らせば症状は落ち着きはじめます。 たな障害が重症化した場合は運動を休止し、湿布や内服、注射などの治療を開始しても痛みがひかないことが多いです。また、痛みが一時的にひいても、運動を再開したときにすぐに痛みが再発してしまうこともあります。 しかし、実際のところ運動選手は、多少の動かしにくさや、痛みがありながらも、運動を継続して行うことができるため、症状は一時的なもの、「大丈夫だろう」と思いがち、自分に都合の良い判断をした上で治療せずに我慢してしまうことが多くあります。 症状が重症化したあとでは希ではありますが、手術も選択肢となり治療期間も長引くことになるため、違和感等を感じた際は、早めに医療機関や整形外科等を受診して専門家の判断を仰ぐべきです。 手術による治療が必要になった場合は関節鏡手術という関節の内視鏡を用いて行い、『ひだ』の切除を行います。 手術自体は20分程度で終わることが多いですが、手術による傷の確認や、腫れや副作用の確認のために入院による治療が必要になります。入院期間は2日から1週間程度で行われることが多いですが、手術後の経過によって前後します。 手術の傷口が感染してまった場合などは、再び手術が必要になってしまうこともあります。尚、手術が成功すれば、すぐに運動に復帰できるかというと、そうではありません。リハビリが必要になるからです。運動に復帰するためには、およそ2週間から数ヶ月のリハビリを覚悟しなければなりません。 さらには、リハビリを行った後でも、元々のパフォーマンスがすぐに発揮できるまでは、更に時間を要することが多いです。 まとめ・たな障害(膝滑膜ひだ障害)とは、その原因と症状、治療法 『たな障害』は膝の病気で運動選手によく起こる病気の一つです。 この病気は、症状が軽いうちは手術による治療を要することは少ないです。しかし、痛みや動かしにくさを、我慢して運動を続けると症状が悪化し、手術が必要になることもある病気です。 手術した後は、リハビリが必要です。すぐに運動に復帰することはできません。軽症なうちに運動を休む期間よりも、長い期間、運動ができなくなってしまいます。いずれにしましても膝の周囲の筋力強化と柔軟性を他待つためのストレッチは欠かさず行うようにしましょう。 長い期間、休まないといけないのは、運動選手にとって致命的になってしまうことも少なくないでしょう。症状が気になる人は我慢して運動を続けようとせず、早期に病院を受診して治療を受けるようにしましょう。 以上、たな障害(膝滑膜ひだ障害)とは、その原因と症状、治療法について記載させていただきました。ご参考になれば幸いです。 No.075 監修:医師 坂本貞範 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています >
2022.07.08