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ばね指を自分で治すためのストレッチとセルフケアについてご説明します「 「ばね指の症状を和らげる方法が知りたい」「自力でばね指を治す方法はないの?」 このような悩みのある方はいませんか? ばね指の症状を和らげるためには、適切な時期に正しいストレッチをするのがオススメです。 この記事では、ばね指を自力で治すためのセルフケアとして、ストレッチや生活で工夫するポイントなどを解説します。指の付け根の痛みやこわばりに悩む方は、ぜひ参考にしてください。 ばね指を改善するためのストレッチ方法3選 簡単に誰でもできるばね指を改善させるストレッチの方法を3種類ご紹介します。 ばね指に対するストレッチは、痛みが和らいでから行うのが原則です。なぜなら、痛みが強い時期は炎症が生じているため、無理なストレッチは逆効果になりかねません。 痛みが強い時期の対処法は後ほど解説するので、まずは正しいストレッチを学びましょう。 ストレッチの原則 ・痛みがある場合は逆効果 ・痛みが和らいでから行う 1. 腱鞘(けんしょう)ストレッチ ばね指は、指の腱が通るトンネルのような腱鞘と呼ばれる部分や、腱そのものが炎症により痛みや、動きにくくなる病気です。 そこで、腱鞘と腱の動きを滑らかにするストレッチを行う必要があり、「腱鞘ストレッチ」と言われるものになります。 このストレッチにより、腱の緊張や腱鞘で生じる摩擦を和らげる効果が期待できます。 腱鞘ストレッチの方法 1. 手首を手の甲側に軽く曲げる 2. 親指の付け根と指の腹でブロック状のもの(リモコンや小箱など)を挟む 3. 指の付け根とその隣の関節は直角になるようにする 4. 指の付け根がしっかり縮むように2のブロック状のものを押し合う 2. 親指の腱鞘ストレッチ ばね指になりやすい親指の腱鞘ストレッチです。腱鞘ストレッチは、関節を曲げたり伸ばしたりといった反復した動きを行わないのがポイントです。 親指の腱鞘ストレッチ(右手が痛む場合の例) 1. 右手首を手の甲側に軽く曲げる 2. 右親指の付け根をできる限り曲げる 3. 左親指で右親指を伸ばすように抵抗をかける 4. 右親指は抵抗に対して負けないように力を入れて押し合う 3. 指のストレッチ 指全体を伸ばすストレッチです。できるだけリラックスした状態で行いましょう。 指のストレッチ 1. 手首を手の甲側に軽く曲げる 2. 指をできるだけ伸ばす 3. 反対側の手でさらに指を伸ばす 指の腱は手首を通過していますので、手首のストレッチも柔軟性の改善につながります。 指を動かすと痛みが出る場合でも、手首なら痛みなく動かせるようであれば、手首を手の甲側に曲げたり、手のひら側に曲げたりといったストレッチも行うと良いでしょう。 ばね指でストレッチを行う場合の注意点 ばね指は、日常的に指をよく使う場合に生じやすいため、ストレッチにも注意が必要です。むやみにストレッチをして、症状を悪化させないために、以下の点に注意しましょう。 ストレッチの注意点 ・痛みのない範囲で行う ・長時間行わない ・お風呂上がりに行う それぞれの注意点について詳しく解説します。 痛みのない範囲で行うこと ストレッチは必ず痛みのない範囲で行いましょう。痛みを我慢して無理にストレッチを続けると、腱や腱鞘に過剰な負担がかかり、炎症を悪化させる危険性があります。 また、勢いよくストレッチをすると無理なストレスが生じやすく、痛みの原因になります。ストレッチはゆっくり慎重に行いましょう。 長時間行わないこと ストレッチの時間は長くても10分程度にとどめておきましょう。 前述の通り、ばね指の原因は、指を使い過ぎて腱鞘や指の腱に繰り返しかかる負担です。そのため、ストレッチを過剰に繰り返したり、長時間行ったりすると、使い過ぎになってしまいます。 ストレッチは、あくまでも固くなった部分をほぐすのが目的です。長時間、何度も繰り返さないように注意しましょう。 お風呂上がりなど、温めて行うこと 入浴後など温めると血液の循環が改善します。その結果、組織の柔軟性が高まり、その状態でストレッチを行うと通常よりも高い効果を期待することが可能です。 そのため、入浴後または、入浴中にストレッチに取り組まれることをお勧めします。 ばね指で気をつけたい2つのこと ばね指では日常生活で気をつけたいポイントが2つあります。 指を冷やさないこと 1つ目は、炎症が改善したあとは、できるだけ冷やさないことです。血流の悪化は組織の固さにつながります。 腱鞘や腱の固さが強まると、腱鞘炎のリスクが高まるため、なるべく指を温めましょう。 指を使い過ぎないこと 2つ目は、パソコンやスマホ、手芸などで指を使い過ぎないことです。 パソコンは指の負担を減らすため、肘から先を机に乗せて、手首を安定させましょう。スマホは片方の手でばかり打つのではなく、両手をバランスよく使えば負担を分散できます。 あまり長時間作業をするのを控え、休憩とストレッチを挟んで作業をするのも良いでしょう。 ばね指で痛みが強い場合は、安静や固定する ばね指の痛みが強いときは、腱鞘に炎症が生じているため、ストレッチにより症状を悪化させる可能性があります。痛みがある場合は、無理せず安静にして、テーピングやサポーターで固定するのもオススメです。 また、炎症が起きてすぐの場合は、温めるよりも、冷やす方を優先してください。アイシングをして、炎症の悪化を防ぎましょう。 ばね指は手指の使い過ぎが刺激となって生じるため、固定をすれば使いすぎを防ぎ、負担を軽減させることができます。 炎症が生じている時期には、早めに整形外科を受診して、炎症を抑える内服薬や外用薬を処方してもらうのも良いでしょう。 ばね指の注意点 ・痛みがある場合は、テーピングやサポーターで固定し、安静にする ・ばね指が起こった時点、炎症がある場合は温めないこと、アイシングなどで冷やして炎症を抑える まとめ・ばね指を自分で治すためのストレッチとセルフケア ばね指はストレッチで症状を改善!痛みがあるときは無理せず安静にしよう ばね指にはストレッチを行い、腱の動きをスムーズにすることで症状の改善が期待できます。本記事で紹介した方法を参考にして、痛みのない範囲で、無理せず継続しましょう。 ただし、痛みが強い時期は炎症を悪化させる恐れがあるため、ストレッチを控えて、安静にするよう心がけましょう。日常生活で指に負担をかけないよう注意して、サポーターなどを活用したセルフケアも大切です。 ばね指の痛みや引っかかりに悩まされないためにも、ストレッチとセルフケアに取り組みましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S123 監修:医師 加藤 秀一 ▼ばね指は、以下も参考にされませんか ばね指でやってはいけないこと!
最終更新日:2024.04.17 -
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ばね指とは?原因と重症度の段階のチェック法、治療について医師が解説 ばね指とは、指の腱や腱鞘に炎症が起こることで手指に痛みや動作時の引っかかりが起こる病気です。 以下のような特徴があります。放置して症状が悪化すると指が伸びなくなってしまうこともあるので、早めの対策が必要です。 ばね指の特徴 ・朝に症状が強くなる ・指の曲げ伸ばしでカクカクとした感じがする ばね指の治療では、注射や手術などもあり、病気の不安に加えて費用面の不安もあると思います。 この記事では、ばね指の症状や原因、検査や治療方法について解説していきます。さらに、ばね指について「よくある質問」には、Q&Aでお答えしています。参考にしていただければ幸いです。 ばね指の症状と原因 指を動かすのに必要な筋肉は前腕にあり、その力を腱が指に伝えることで曲げ伸ばしをすることができます。その通り道で、指を曲げる腱が浮き上がらないように押さえているのが腱鞘(けんしょう)と呼ばれるものです。その構造はベルトとベルト通しの関係に似ています。この腱鞘や腱に炎症を起こし、痛みが生じてしまうのが「腱鞘炎」です。 軽い腱鞘炎の状態で指を使いすぎてしまうと、摩擦のために炎症が進み、腱鞘が厚くなったり、腱が太くなってしまうことで通過しづらくなり、ばね指へと悪化してしまいます。悪化してしまうと、簡単に指を伸ばせなくなり、曲がったままとなってしまいます。 症状 症状は、指の付け根の手のひら側の痛み、腫れや引っかかり感です。朝方に症状が強く、日中は使っていると症状が軽減することも多いです。 ばね指に進行してしまうと、指の可動域が悪くなってしまう場合もあります。 原因 家事や仕事、スポーツなどによる「手や指の使い過ぎ」が主な原因となっており、ホルモンバランスの乱れる更年期、妊娠出産期の女性にも多く生じます。 また、糖尿病、関節リウマチ、透析患者さんにもよくみられる症状で、母指・中指に多くみられます。 ばね指の重症度チェック ばね指の症状の重症度は、3段階に分けられます。 軽症はバネ現象(腱の引っかかりによるカクカクとなってしまう症状)がないもの、中等症はバネ現象があるものの、指の可動域がいいもの、重症は指が曲がった状態となっており、伸ばせない状態を指します。 引っかかりが起きている状態を“ばね指”と言い、腱鞘炎が進行すると、ばね指に悪化してしまいます。 1, 軽症 バネ現象(腱の引っかかりによるカクカクとなってしまう症状)がない 2, 中等症 バネ現象があるものの、指の可動域がいい 3, 重症 指が曲がったままの状態となっており、伸ばせない ばね指の検査 一般的に症状と診察から診断は可能であり、レントゲン検査は不要です。 しかし、関節リウマチや変形性関節症などの骨、関節に生じる病気を見つけるために行われる場合もあります。 ばね指の治療/保存療法 保存治療、腱鞘内ステロイド注射、手術治療について解説します。 保存治療は痛みのみで、引っかかり感のない軽症例や注射、手術希望がない方が対象です。 ①安静(手指の使用制限、シーネ・装具など) 軽症例の自然経過は良好ですので、数日間の安静で、自然に改善する可能性があります。 また、シーネ・装具で指を良肢位で固定することが効果的です。 ②薬物療法(外用薬、消炎鎮痛薬投与など) 内服薬、外用薬はいろいろな状況下で使用されますが、非ステロイド性消炎鎮痛薬の投与は、初期治療に他の保存的療法と組み合わせて使用されます。 また、腱鞘炎の治療にエストロゲン(女性ホルモン)と類似作用のあるエクオール(大豆イソフラボンの代謝物)が有効であるという報告が散見されています。 ③理学療法 消炎鎮痛と関節拘縮予防や可動域改善目的で行われる場合があります。 腱鞘内ステロイド注射 腱鞘内ステロイド注射は軽症、重症を問わず有効な治療方法です。 局所麻酔薬とステロイドを手の平側から腱鞘に注射する方法で、症状改善が期待できます。再発する場合は再度注射が可能ですが、腱が断裂する危険性もあり3カ月以上あけることが望ましいです。 手術治療 手術の適応は、以下のような場合に検討されます。 指の付け根の手のひら側を1―1.5 cmほど切開して、腱の周囲にある腱鞘を切離します。日帰りで可能な手術であり、術後のリハビリは特に必要ありません。 手術を検討 ・保存治療が無効だった場合 ・保存治療が有効でも再発しやすく疼痛の強い場合 ・指を伸ばすのに制限があり改善しない場合 ・職業などの事情で早期に確実な回復を望む場合 ばね指についてよくある質問 ばね指についてよくある質問に、Q&A形式でお答えしています。 Q:ばね指は朝だけなぜ痛くなるのですか? A:正確な原因は明らかになっていませんが、夜間寝ている間は指を動かさないので、腱が炎症でむくむためだと推測されています。 指を動かしていると腱のむくみが減少するので、日中には症状が少なくなると考えられています。 Q:ばね指の手術費用はどの程度ですか? A:ばね指の手術は健康保険が適用されます。保険点数は2,050点のため、3割負担では6,000円前後で費用を提示している病院が多くなっています。 実際の手術では薬剤費なども含め、もう少し金額が高くなるため、事前に病院に確認するようにしましょう。 Q:注射の副作用はありませんか? A:ステロイド注射の合併症として、腱断裂、感染症があります。実際に、腱自体へのステロイド注入では腱の軟化を生じる場合がありますが、断裂自体の報告は少数です。医師もその危険性は知っており、連続で使用する場合は3ヶ月以上あけるか、手術治療をおすすめすることが多いです。 同様に感染症についても報告は少数であり、コントロール不良な糖尿病では注意を要しますが、過度な心配は不要と考えられています。 まとめ・ばね指とは?原因と重症度の段階、治療方法を医師が解説 ばね指は、中高年の方に追い病気です。指の腱や腱鞘に炎症が起こることで生じる病気で手指の痛みや動作時の引っかかりなどの症状が現れます。日常生活に支障をきたすことも少なくありません。 症状が軽いうちに無理をしてしまったり、指が伸びない状態で放置してしまうと、関節の拘縮など悪化してしまうこともある病気です。 主な原因は手や指の使い過ぎであり、更年期や妊娠出産期の女性にも多く見られます。 症状は朝に強く現れ、日中は軽減することもあります。ばね指は軽症から重症まで進行する可能性があり、重症になると指の可動域が悪化し、指を伸ばせなくなることもあります。 ばね指の治療方法には、「保存治療」「腱鞘内ステロイド注射」「手術」などがあります。 保存治療では安静や薬物療法が行われ、腱鞘内ステロイド注射は痛みの軽減が期待されます。手術は重症や保存治療が効果的でない場合に検討されます。 適切な治療を受けられるように、早めに病院で診断・治療を受けるようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.122 監修:医師 坂本貞範 ▼ばね指は、以下も参考にしていただけます ばね指を自分で治すためのストレッチとセルフケア
最終更新日:2024.04.17 -
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【突き指と骨折】分かりやすい見分け方とは? 突き指と言えば、バレーボールやバスケットボール、野球などの球技をしている人なら誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか? わりと軽くみられがちの怪我で、怪我をしてもそのまま放置というのはよくある話。しかし、その「たかが突き指」が実は大事につながることもあります。 今回は、そんな突き指に関して、ぜひ知っておいて頂きたいことをお伝えします。 出典:日本整形外科学会『マレット変形』より(https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/mallet_finger.html) 突き指と骨折は何が違う? 結論から言いますと、突き指と骨折は同じでもあり、違う場合もあります。 突き指は「現象」を表し、骨折は「状態」を表します。つまり、怪我した状況は「突き指」だが、その結果「骨折」が起きた、ということです。 突き指とは、ボールなどの物が指先に突くように当たり、その結果怪我をした場合に用いられる、指の怪我の総称です。その場合の怪我は、骨折の場合もありますし、さらに靭帯損傷や腱の断裂など、細かく分かれます。 ただし、一般的に使われている「突き指」は、骨折を伴っていないケースが多いのも事実です。 そのため、突き指をしてしまったら、一度専門の医療機関でどのような状態になっているのか詳しく検査することを推奨します。 突き指・骨折の原因は同じ? 骨折を伴う突き指と、骨折を伴わない突き指とでは、原因は大きく変わりません。ボールが強く当たったからといって、骨折するわけではありません。ボールが軽く当たっただけで骨折する場合もあります。 どちらも共通するのは、指に対して長軸方向にボールが当たった場合に発症することです。 突き指・骨折を起こしやすいスポーツ 冒頭でも軽く述べましたが、突き指は球技を行っている際に起こりやすいです。中でも、バレーボール、バスケットボール、野球は特に多くみられます。 それぞれのスポーツが、どのような場面で突き指を起こすのか説明します。 バレーボールの突き指 バレーボールでは、ブロックの時とオーバーハンドでのレシーブの時に、突き指を起こすことが多いです。特にブロックでは、ジャンプのタイミングが遅れたり、指先に力が入っていなかったりすると、突き指につながります。 ボール自体は軽いのですが、アタックの時はボールのスピードが速いため、突き指を起こすことがあるのです。 バスケットボールの突き指 バスケットボールでは、パスを受ける時、ボールをカットする時などに受傷することが多いです。特に、相手と激しくぶつかり合いながら、ダッシュ・ストップ・ターン・ジャンプなど様々な動きが伴うバスケットボール。その中で、手が遅れて出てしまったり、不意にボールが向かってくることもあります。 また、バスケットボールで用いられるボールは重く、軽く当たるだけでも怪我につながるケースも多いのです。 野球の突き指 野球で突き指を発症するシーンは、圧倒的に守備の時が多いです。特に打者が打ったゴロを捕球する際、両手で捕ろうとして、投げる側の手にぶつけてしまうケースです。 ボール自体は小さいのですが、硬さがあり、ボールが不規則なバウンドをした時は特にケガにつながりやすいでしょう。 突き指と骨折の症状の違い ここでは、骨折を伴わない突き指と、骨折の症状の違いをお伝えします。 骨折を伴わない突き指の症状 骨折のあるなしに関わらず、まず「痛み」が出ます。そして、腫れ、赤み、動かしづらさなど、「炎症」の症状がみられることが多いです。 軽症なら 1 週間程度で炎症は落ち着きます。しかし、靭帯や腱の断裂など重症な場合、指の変形や動かしづらさが長引いてしまうので、適切な診断と治療が必要です。 腱の断裂 腱の損傷や断裂を伴う突き指は、『腱性マレット指』と呼ばれます。 出典:日本整形外科学会『マレット変形』より(https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/mallet_finger.html) 指先を伸ばすための腱が切れてしまい、指の第一関節を自力で伸ばせなくなります。 出典:日本整形外科学会『マレット変形』より(https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/mallet_finger.html) 痛みが引いてもなお伸ばせない症状が続いたら、腱性マレット指の可能性があります。早急に医師の判断を仰いだ方がいいでしょう。 靭帯の損傷・断裂 突き指により、指の靭帯が損傷または断裂を起こすことがあります。その場合、横に変形したり、指が曲がったように見えます。 膝や足首同様、指にも靭帯があります。靭帯の役割は、関節を安定させることです。靭帯が無ければ、関節は動き過ぎてしまい、力が発揮できません。 肉眼では骨折との見分けも付けにくいため、専門医で詳細な検査が必要となります。 骨折の症状 突き指による骨折で多いのが、『骨性マレット指』です。 出典:日本整形外科学会『マレット変形』より(https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/mallet_finger.html) これは、指を伸ばすための腱が付いている部分が、剥がれるように骨折(剥離骨折)する疾患です。 「腱性マレット指」で紹介したものと同様の症状で、指を自力で最後まで伸ばせません。さらに、骨折を伴うため、痛みや腫れがより強く現れます。レントゲンで容易に見つかることも多いです。 場合によっては、手術が必要なケースもあるため、できるだけ早く医療機関を受診することを推奨します。 他にも、指の中間部分(骨幹部)の骨折や、指の関節が脱臼した際に起こる脱臼骨折などもあるため、自分で判断せずに専門医に相談しましょう。 突き指と骨折の落とし穴 「なんだ、突き指くらいなら大丈夫だよ」といって、軽くみられがちなケガの代表格とも言える突き指。 しかし、そんな軽い気持ちとは裏腹に、後々に大きな影響を及ぼすこともあります。 放っておいても治らない? 腱の断裂や剥離骨折(マレット指)は、痛みが引いたからといって普段通りに動かしていると、骨や腱がつながらず、指を完全に伸ばせなくなる恐れもあります。 装具やテーピングによる固定や、場合によっては手術するケースもあります。ケガの状態によって、治療方針も様々なので、まずはケガの見極めが重要です。 折れていなくても切れているかも?! レントゲンでは骨の形態しか確認できないため、症状がなかなか落ち着かない、指が完全に伸ばせないなどの症状が残存している場合は、専門医を受診しましょう。検査をすると、腱が切れていた、というパターンも少なくありません。 ケガをしてからすぐ状態を見極めて固定をしておけば保存療法で済む場合も、動かしてしまっていたから、手術が必要になることもあります。結果的に完治まで時間がかかってしまい、スポーツ復帰の遅れにつながりかねません。 「たかが突き指」と決めつけず、できるだけ早く然るべき医療機関へ受診することを推奨します。 突き指で痛みの症状が長引くときは専門医を受診しましょう/まとめ 今回は、突き指と骨折の原因や症状、見極め方についてお伝えしました。 突き指は、骨折でも骨折以外の疾患でも、受傷の仕方は大きく変わりません。しかし、同じような症状やケガの仕方をするため、自分で判断するのが難しい疾患です。 早期の完治、スポーツ復帰のためにも、早めに専門医を受診し、必要な治療を受けるようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.116 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.12.28 -
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突き指は正しい応急処置で早く治す|湿布やテーピング方法 「突き指の応急処置はどうしたらいいの?」「突き指を早く治す方法が知りたい」 多くの方が経験のある突き指ですが、どのような応急処置をすれば、少しでも早く治るのか知りたい方も多いのではないでしょうか。今回は突き指の正しい応急処置について紹介します。 湿布やテーピングの方法についても解説するので、正しい知識を知って、対応できるようにしましょう。 突き指とは ボールやものが指先に当たって生じる怪我をまとめて「突き指」と呼びます。 子どものころドッジボールなどの球技で突き指を経験した方も多いかもしれません。何もせずに自然と治ったという場合もある突き指ですが、正しい治療をしなければ症状が悪化する危険性もあります。 まずは、突き指とはどのような怪我なのか詳しく解説します。 特徴 突き指は指先にものが強くぶつかって、指にまっすぐな力が加わって起こります。放っておいても自然に治る場合もあれば、骨折や関節を安定させる靭帯(じんたい)の損傷、関節が外れてしまう脱臼といった治療が必要な怪我が潜んでいる場合もあります。 中には手術が必要になる場合もあるため、整形外科を受診して、適切な診断や早めの治療が必要です。 症状 突き指の症状には以下のようなものがあります。 ・腫れ ・痛み ・内出血 ・関節の動きの制限(指の曲げ伸ばしがしにくい、関節が曲がったまま伸びない、関節が完全に曲がらない) このような症状は怪我の程度によって異なります。 また、突き指により指先が曲がったまま伸びなくなってしまう状態を、槌指(つちゆび)またはマレット変形と呼びます。 マレット変形には、指を伸ばすための腱が損傷することによって起こる腱性のマレット変形と、骨折によって起こる骨性のマレット変形があります。 原因 突き指の原因は次のようなものがあります。 ・球技でボールがぶつかる ・転倒して地面に指を打ちつける ・スポーツで人と衝突する ・事故で指先をぶつける 指先を強くぶつけるような出来事が原因となるため、いろいろな状況で生じる怪我です。 突き指の正しい応急処置 突き指になった場合にすぐできる対応として、「RICE処置」を覚えておきましょう。 RICE処置は4つの対応の頭文字をとった名前です。 RICE処置 R:Rest(安静) I:Icing(冷却) C:Compression(圧迫・固定) E:Elevation(挙上) それぞれの具体的な対応方法について紹介します。 Rest(安静) 怪我をした直後は無理に動かさずに、安静にしましょう。炎症や痛みがあるのに無理に動かしてしまうと、怪我の状態や症状を悪化させる恐れがあります。 Icing(冷却) 怪我により急激に生じる炎症症状を和らげるため、怪我をした部分を冷やしましょう。バケツや洗面器に氷水を入れて指を直接冷やします。 また、氷嚢やビニール袋に氷を入れて、指に当てる方法もよいでしょう。凍傷しないように気をつけながら、しっかり冷やすようにします。氷がない場合は、代わりに流水で冷やします。 Compression(圧迫・固定) 腫れや指を曲げると痛い場合は、圧迫して腫れを抑えたり、固定して動きにくくしたりします。木や金属の板を指に沿うように当てたり、テーピングや包帯を用いて固定しましょう。 Elevation(挙上) 腫れを防いだり、軽減させるために、怪我をした部分を心臓より高い位置まで挙上しましょう。高く上げることで、怪我によりたまった血液が流れやすくなります。 また、心臓より高くすることで、血液が心臓に戻りやすくなります。 突き指の誤った応急処置 「突き指をしたらすぐに引っ張ったほうがよい」「痛い部分をもんだら治る」このような応急処置は間違いです。 脱臼を元に戻すために、医師などの専門家が引っ張る場合はあります。しかし、怪我で損傷した部位を引っ張ると、かえって症状の悪化を引き起こす恐れがありますので行わないようにしましょう。 また、炎症が生じたばかりの部分を揉むことは、炎症を助長したり、損傷部位を悪化させたりする可能性があります。痛みを和らげるマッサージのつもりで揉むようなことは避けましょう。 突き指に対する湿布やテーピング 突き指に対する応急処置として湿布やテーピングの使用を思い浮かぶかもしれません。それぞれを正しく使えば、応急処置として使用できます。 そこで、具体的に使用方法や適応となる症状について解説します。 突き指に対する湿布 湿布は痛みや炎症を抑える成分が含まれるため、それらの症状を和らげる効果があります。そのため、突き指で痛みや腫れがある場合は、湿布を使用して症状の緩和を図るのはよいでしょう。 また、湿布には、温湿布や冷湿布といった種類がありますが、突き指の応急処置としては、炎症で熱を持った状態に貼るため、冷湿布を貼るのが一般的です。 突き指に対するテーピング 突き指でテーピングをするのは、指の動きを固定して、無理な動きによる痛みや炎症の悪化を防ぐためです。 テーピングには、怪我をした指だけテーピングをする方法と、怪我をした指に隣の指を一緒に固定するバディテーピングがあります。 応急処置としてはバディテーピングで強く固定しましょう。 指を曲げると痛い場合は、指を伸ばしたまま固定して、曲がらないようにしましょう。少し動かせるようになれば、保護するために怪我をした指のみに変更するとよいでしょう。 突き指で正しい応急処置をして症状の悪化を防ごう/まとめ 突き指の腫れや痛みを少しでも和らげるために、まずはRICE処置などの正しい応急処置をしましょう。 また、たかが突き指と思っても、どのような状態がひそんでいるかわかりません。応急処置をしたら、できるだけ早く整形外科を受診して、適切な治療を受けましょう。 固定にはテーピング、痛みの緩和には湿布の活用ができます。ただし、誤った使い方をすると症状の改善につながらないため、整形外科の受診時などに正しい使い方を教えてもらいましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.114 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.12.28 -
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ばね指でやってはいけないこととは? 「ばね指ってなに?」「ばね指になったときにやってはいけないこと?」 ばね指は手をよく使う方に起こりやすく、発症すると痛みや指の動かしづらさを感じます。 この記事では、ばね指について、またばね指になってしまった場合にやってはいけないことを紹介します。 ばね指とは? バネ指とは、「指に起こる腱鞘炎」のことで、弾発指とも呼ばれます。 手の指は、骨・筋肉・神経などが共に働くことで曲げ伸ばしをしています。指を曲げる時に使う筋肉は、指の手のひら側についておりそれらの筋肉はそれぞれ骨と繋がっています。筋肉と骨がつながっている部分を「腱」と呼び、その腱の周りをトンネルのように覆っているものを「腱鞘」と呼びます。 この腱鞘は、指を曲げる筋肉(屈筋)が指の骨から浮き上がらないようにする働きを持ちます。この働きをもつ腱鞘を靱帯性腱鞘と呼び、浮き上がらないようにすることで曲げる力を逃すことなく、滑らかに指を曲げることが可能になります。 ばね指とは、この腱鞘に何らかの原因で炎症が起こることで指の動きが悪くなる病気です。 ばね指の症状 腱鞘に炎症が起こると腫れが生じます。腱鞘が腫れると、腱が腱鞘の間をスムーズに通りづらくなり、圧迫されたりします。そのため、腫れてしまうと関節のスムーズな動きが阻害され指を曲げた後に伸ばしづらくなり、動かす際に強い痛みを生じます。 曲がった状態の指を伸ばそうとする時ばね指の場合、最初は腱鞘に腱が引っかかるため伸ばすことができません。 しかし、ある一定のところで急に腱との引っかかりが外れると、ガクンとばねのように指が急に伸びます。この現象をばね現象と呼び、ばね指の特徴的な症状です。 ばね指の原因 ばね指は腱や腱鞘に負荷がかかることで発症します。そのため、日常から手や指を使う動作を繰り返す場合ばね指となる可能性が高くなります。 それ以外にホルモンバランスでも腱や腱鞘が弱くなるため、日常から家事をする女性(特に更年期や妊娠前後、妊娠中)に認めることが多いです。また糖尿病の方や人工透析をおこなっている方、関節リウマチなど膠原病をお持ちの方は、手や指の血行が悪くなりやすいため腱や腱鞘に十分な栄養が行き届かず弱くなりやすく、ばね指のリスクが高くなります。 ばね指でやってはいけないこと ばね指の症状や原因について紹介しました。ここからは、ばね指になってしまった場合にやってはいけないことについて、ばね指は治療が遅れるとさまざまな問題が生じます。放置し症状が進行すると痛みが今まで以上に強くなり、関節の動きも悪くなります。 指が全く伸ばせなくなるまで進行してしまうと、手術で腱鞘を切開しなければなりません。 また、手の指は1本1本が協調して動いているため、ばね指になったのが1本だけであったとしても他の指の動きも悪くなり、手を握ることが難しくなってしまうこともあります。 強い炎症が起こった影響で、最終的に関節が変形する場合もあるため、放置せずしっかり病院を受診しましょう。 無理に伸ばす 指が曲がって動きにくくなっている場合、無理に伸ばそうとしてしまう方がいらっしゃいます。確かに、ばね指の発症を予防するために軽いストレッチは有効かもしれません。しかし、すでに腱と腱鞘に炎症が起こっている場合は、無理に動かそうとするとそれ以上の負担を患部にかけることになります。 無理に伸ばすことでさらに強い痛みが起こったり、それ以降指がさらに伸ばしにくくなることもあるでしょう。ばね指の症状がある場合は動かさず、安静を保ってください。 患部をマッサージする ばね指は指を動かしたときに痛みが強く出ます。そのためマッサージをすれば症状が緩和されると思われている方も多いです。 しかし、炎症が起こっている部位をマッサージで強く押さえるなどすると、さらに炎症の範囲を広げてしまう可能性があり、むしろ痛みは悪化します。触らず安静を保ちましょう。 放置する 患者さんの中には症状が引っかかりのみであったり、痛みも軽度のため病院を受診せず放置してしまう方もいらっしゃいます。確かに腱や腱鞘の炎症が軽い場合は、指を一定期間安静にしていれば自然に治ることもあります。しかし安静を保たずに負荷がかかり続けると、当然のことながら自然に治らず状態は悪くなります。 まとめ・ばね指でやってはいけないこと ばね指でやってはいけないことを紹介しました。 この記事で述べたようにばね指の原因のほとんどが腱鞘炎です。しかし、まれに腱鞘炎ではなく腫瘍などそれ以外の影響でばね指となっていることもあります。 また、ばね指は手の指をよく使う仕事をしている方がよくなる病気です。ばね指の治療はまず安静です。安静にすることで仕事に支障をきたしてしまうため、なかなか安静を保つことは難しいかもしれませんが、そうしなければ症状が悪化し、今後仕事を継続すること自体が難しくなってしまうかもしれません。 少しでも疑う場合は、まず病院を受診してください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S110 監修:医師 加藤 秀一 ▼こちらも参考にされませんか ばね指とは?放置すると重症化のリスクが大!原因と治療法を医師が解説
最終更新日:2024.04.17 -
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ドケルバン病とは?その症状と原因、治療法を紹介 親指や手首を動かすと手首の親指側が痛い、それはドケルバン病かもしれません。 この病気をはじめて発表した、スイスの医師にちなんで名付けられたドケルバン(de Quervain)病。日本では別名『狭窄性腱鞘炎』ともよばれています。 どの場所の病気? 症状が出るのは手首の親指側です。この場所は親指を動かす2本の腱が通っています。 ●短母指伸筋腱:主に親指の第2関節を伸ばす役目をしている ●長母指外転筋腱:親指をひろげる役目をしている 腱とは筋肉の両端にあり、筋肉が骨に癒着する部分です。この腱のまわりを腱鞘(けんしょう)という組織が筒のように包んでいます。 別の言い方をすれば、腱鞘というトンネルを腱がくぐりぬけているようなイメージです。脂肪や筋肉の中に、この腱鞘というトンネルがあることで、腱が滑るように動くことができ、スムーズに筋肉を伸び縮みさせることができます。 親指を動かす短母指伸筋腱と長母指外転筋腱は、手首の部分で手背第一コンパートメントと呼ばれる腱鞘を通り抜けています。この部分の腱鞘が炎症を起こしたり厚みが増すと、腱の滑りが悪くなって痛みが現れる、これがドケルバン病です。 ドケルバン病の症状 ドケルバン病では手首の親指側に痛みや熱を持つといった症状が現れます。とくに親指や手首を動かす動作で症状が強くなりやすいという特徴があります。患部を上から押さえると痛みが増します。 ・親指をひろげる ・物をつかむ/握る ・タオルを絞る などの動作で、症状が強くなることが多いと言われています。長期間放置すると、手に力が入らなくなることもあります。 原因 ドケルバン病の原因として多いのは、手や指の使い過ぎと、女性ホルモンの変化です。 手の使い過ぎ ドケルバン病は仕事やスポーツ、ゲームなどで、手や指をよく使う人にみられます。 親指の使い過ぎで腱鞘の壁が分厚くなったり、腱の表面に傷がついて、それがさらに刺激となって症状が強くなると考えられます。 スマートフォンの画面をよく親指で操作する人にもドケルバン病を発症する人が多かったことから、スマートフォンが原因で発症したドケルバン病のことを「テキストサム損傷」(サムは“親指”の意味)という言葉で表現する場合もあります。 女性ホルモンの変化 女性では妊娠出産期や更年期にドケルバン病が多くなります。その理由として、この時期には女性ホルモンの量が大きく変化するためと考えられています。 プロゲステロン: 出産後に増加するホルモン。本来はゆるんだ子宮や骨盤を縮めて元に戻すために増加するが、このホルモンが増加すると腱鞘も縮み、腱とこすれやすくなるため、腱鞘炎を引き起こしやすくなります。 エストロゲン: 腱や腱鞘を柔らかく保つ働きがあります。更年期にこのホルモンが減少すると腱や腱鞘が硬くなり、腱鞘炎を起こしやすくなります。 出産後の女性にドケルバン病が増えるのは、女性ホルモンの変化に加え、手をひろげて赤ちゃんの頭を支える動作が、親指をひろげる負荷となることも関連していると考えられています。 診断方法 ドケルバン病の診断は基本的に医師が視診と触診で診断を行います。また、手指及び手首を動かすテストで診断します。 ●手首の親指側に腫れがあるかどうかをみる ●痛い場所を押さえて痛みが増すかどうかみる ●フィンケルシュタインテスト:症状のある手を小指が一番下になるように(前にならえのように)前へ差し出します。そのままで親指を内側に折り曲げ(手で数字の「4」を表す形にして)、親指を小指側に引っ張る。手首が小指側に曲がると痛みが強くなる。 ●フィンケルシュタインテスト変法:親指を中にして握りこぶしを作ります。そのまま手首を小指側に直角に曲げていくと手首や親指の付け根に痛みが現れます。 ●岩原・野末テスト:手首を屈曲し(手のひらで手首を触ろうする向きに折り曲げ)、その後親指をできるだけ外へ伸ばします。これで痛みが強くなれば、ドケルバン病の可能性があります。 治療 治療には、保存療法から手術療法まで様々な方法があります。 ●局所の安静 ドケルバン病の多くは、手首の負担を減らすことで改善します。 ●装具による手首の固定 仕事などでどうしても腕や手首を使う場合は装具で手首を固定します。 ●投薬 消炎鎮痛剤のシップや塗り薬を使用します。 ●腱鞘内ステロイド注射 腱や腱鞘に炎症があると、その刺激で炎症のない部分にまで炎症がひろがることもあり、早めに炎症を抑える目的で1回目からステロイドの注射を行うこともあります。 1回の注射でほとんどの人が1週間程度で症状がかなり軽くなります。 しかし、手の使い方をかえなければ、約半数の人が1年以内に再発します。 ●腱鞘切開(手術) 手術は30分程度で日帰りで行なうことが一般的です。 局所麻酔、もしくは腕だけの麻酔を行ない、手首の親指側に小切開を行い腱鞘を露出して、腱の通っている方向に合わせて切開します。これにより腱が腱鞘に包まれている状態が解除されるため、病状が改善します。 数日は切開部分の防水が必要、約1週間後に抜糸、力仕事などは2週間程度経過してから可能となります。 まとめ/ドケルバン病とは?その症状と原因、治療法を紹介 ドケルバン病は手首の親指側が痛くなる病気で、手の使い過ぎや女性ホルモンの変化で発症します。 症状が軽い場合はできるだけ手を使わないようにすれば改善しますが、手の安静が難しい場合などは装具や注射が必要になることもあるので、整形外科での相談をおすすめいたします。 今回は、ドケルバン病についてとその症状と原因、治療法を紹介しました。ご参考になれば幸いです。 No.S087 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2023.12.28 -
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TFCC損傷とは、使いすぎたり転倒など強い衝撃で発症する手首の障害です TFCC損傷という聞きなれない症状をご存知でしょうか? このTFCCとは「三角線維軟骨複合体(Triangular Fibrocartilage Complex)」の略であり、手首の小指側にある関節の病気です。例えば外傷として転倒時に手をつく、あるいはバトミントンなどのスポーツ活動を行って手首を捻る動作を繰り返すことで引き起こされる障害です。 そもそも「三角線維軟骨複合体」とは、手首の小指側にあるぐりぐりした関節部に存在している軟部組織を指しています。本疾患を発症すれば、日常的に腕をひねる動作、もしくは手首を小指側に曲げることによって手関節部の疼痛症状を自覚するようになます。 そのため、患部安静を保持して手首にサポーターなどの装具を装着しながら運動を制限する必要が出てまいります。そこで、今回はTFCC損傷とはどのような病気なのか、その原因、症状、治療方法などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 ・TFCC損傷の原因 TFCCは、橈骨と尺骨の遠位端同士および尺側手根靭帯とを接合している靭帯の役割を担っています。 橈骨(とうこつ) ひじから手首まで2本ある前腕骨のうち、前腕の親指側の骨を指す 尺骨(しゃっこつ) ひじから手首まで2本ある前腕骨のうち、小指側にあり、橈骨と平行している骨を指す 解剖学的に前腕部の橈骨と尺骨間には、いくつかの靭帯あって、これらの骨を支持していますが、前腕の手首側の遠位部に位置するこのTFCCが損傷してダメージを受けると手関節全体において機能障害を引き起こすことが懸念されます。 TFCC損傷における主たる要因としては、手関節部に対する強い衝撃や手首における過剰な負荷の繰り返し動作によって引き起こされることが知られています。 したがって、テニスなどラケットを用いるスポーツ競技者において手首を構成している三角線維軟骨複合体(TFCC)という組織が損傷を受けることでTFCC損傷を罹患したり、あるいは自分で転倒したことによる外傷や、繰り返される振動など作業時に手関節を酷使することによって本疾患が発症します。 この症状は、テニス以外にもバトミントンや野球、ゴルフなどの道具を強振する動きに関連して発症するスポーツ外傷ですが、例えば重い鍋やフライパンを不規則に持ったり、振るような動作を継続的に続けた場合においてもTFCC損傷は起こります。 また、加齢によって手関節部の組織が変性することを原因として起こることがあります。更に外傷を認めることなく、尺骨が橈骨に対して長くなる、解剖学的な異常(尺骨突き上げ症候群)によっても引き起こされることがあります。 原因(繰り返しの動作が多い) スポーツ テニス、バドミントン、ゴルフ、野球など(道具を用いて強振) 職業 重い荷物の持ち運び、料理(重いフライパン) 加齢 手関節の変性 その他 解剖学的な異常 ・TFCC損傷の症状 TFCCとは、本来ふたつの橈骨と尺骨で構成されている遠位橈尺関節を安定化させている支持組織です。手関節部の尺側部(小指側)痛をきたす代表的な疾患としてTFCC損傷が挙げられます。 特に、手関節部のなかでも「尺骨茎状突起」と呼ばれる部位に局所的に疼痛を認めることがTFCC損傷における症状の特徴の一つでもあります。 通常では、患部の靭帯が損傷したことによる関節面の不安定性に伴って軟骨同士の適合性が悪化して、特にdiscと呼ばれる円盤状の軟骨組織が断裂することで痛みといった症状を引き起こすと考えられています。 具体的にはタオルを絞る、運転時に車のカギを回す、あるいはドアノブを回すなど手首を捻るような動作をした際に手関節部の特に尺骨側(小指側)において疼痛症状が顕著になって出現します。 一般的に、物を持つ際に手関節部に強い痛みを自覚して力が入らないこともあり、これらの症状は掌を上側に向けると少し軽減することが知られています。 病状が悪化して症状がさらに進展した場合には、安静時でも患部に痛みが出るといた症状を自覚することがありますし、同時に動作開始時に手が抜けそうになる感覚を覚える、あるいは手首が腫れて可動域が制限されるなどの所見を認めることもあります。 ・TFCC損傷の治療 まず、TFCC損傷を患った場合における初期的な治療としては運動を中止してサポーターやギプスによって患部を固定することで局所の安静を図り、消炎鎮痛剤などの服薬治療が行われます。 特に、装具を用いた治療方法に関しては軟骨の変性を悪化させないため、あるいは橈骨尺骨間の可動性を正常に復帰させるためにも前向きに実践されることをお勧めします。 疼痛症状がひどいケースでは、局所麻酔剤を含有して炎症を抑制する効果を狙ってステロイド注射を実施することで数か月単位で症状が改善することを期待します。 数か月間に渡ってこれらの保存的な治療策が奏効しない際には、手術加療が検討されます。 最近では、TFCC損傷している部位が深い場所にあって組織自体も小さいために切開手術よりも術野がよく確保できるように関節鏡や内視鏡を用いて病変部位の縫合処置や部分切除術なども頻繁に実施されるようになってきています。 まとめ・TFCC損傷とは、使いすぎたり転倒など強い衝撃で発症する手首の障害です 今回はTFCC損傷とはどのような病気なのか、その原因、症状、治療方法などについて詳しく解説してきました。 TFCC損傷とは、遠位橈尺関節を安定化させている支持組織である三角線維軟骨複合体が転倒して手をつくなどの外傷やスポーツや作業などで繰り返される過度の負担などでストレスがかかることで手関節部に疼痛症状が出現する疾患です。 尺側手関節痛の原因疾患は多岐に渡りますので、万が一普段の日常生活で手首の小指側が痛みを覚え、安静にしてもなかなか症状が改善しないという人は最寄りの手外科専門医の診察を受けて適切な治療に結び付けるように心がけましょう。 以上、TFCC損傷とは、その原因、症状と治療法について解説いたしました。今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S059 監修:医師 加藤 秀一 ▼ TFCC損傷等のスポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
最終更新日:2023.12.28 -
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腱鞘炎とは!箸が持てない!原因と種類、治療に加え予防を解説 腱鞘炎の痛みで「お箸も持てない」「ドアノブも掴めない」などと、悩んでいる人はいませんか? 腱鞘炎になると手首や手の指に激痛が走り、日常生活にも支障をきたすようになります。「このまま痛みが続いたらどうしよう」「治らないとかも」と不安になりますよね。 しかし、腱鞘炎は適切に対応すれば、早期の回復が可能な病気です。ここでは腱鞘炎の種類と症状、原因と効果的な治療法。そして予防についても解説します。 腱鞘炎の原因 腱鞘炎は、指を動かし過ぎるために、腱の通り道にあるトンネル状の腱鞘が炎症のために厚くなることや、腱鞘の中を通っているロープ状の腱が腫れることで起きます。 以前は楽器の演奏者、ラケットを使う競技、テニスやバドミントン、ゴルフなどのスポーツ選手、作家や重い鍋を振る料理人など一部の人に多く現れるため、職業病とされていました。 ただ、最近では、パソコンやスマホで手指を長時間使用することから一般の人にも増えています。 その他、スーパーなどでレジの操作、子供の抱きおろしなど育児でも起こったり、編み物を頻繁にするなど普段手指をよく使うなど、手を頻繁に使う人に起こりやすい傾向があります。 またホルモン分泌の変化に伴い、妊婦や更年期の女性にもよく見られ、糖尿病やリウマチの患者さんにも多く発症しています。腱鞘炎は、痛みが生じるため、仕事や日常生活にも支障をきたしてしまいます。 腱鞘炎の原因(頻繁に繰り返される動作により起こる) ・スポーツ選手▷ ラケット競技の多い(テニス、バドミントン、ゴルフほか) ・事務▷ パソコンをはじめとしたキーボードを頻繁に使う職務 ・料理▷ 中華等で重い鍋を繰り返し使う職務 ・育児▷ 乳児の抱きおろしなど ・その他▷ 作家(文筆業)、一般人(スマホを頻繁に使う) ・その他▷ ホルモンの関係で妊婦や更年期の女性に多い ・その他▷ 糖尿病やリウマチへの罹患 腱鞘炎の種類 腱鞘炎は、2種類に分けられます。 一つは、手首に症状が現れる「ドケルバン病」と言われるものと、指に症状が現れる「ばね指」というものです。 ドケルバン病 ドケルバン病は、狭窄性腱鞘炎といい、親指側の手首の腫れや力が入らなくなるという症状が主な特徴です。これは指と手首を繋いでいる2本の腱と、その2本の腱を覆ってトンネル状になっている腱鞘といわれる部分が炎症を起こして痛みが生じます。 また圧倒的に女性に多いという特徴があります。 (こちらで詳しく解説 > ドケルバン病とは) ばね指 ばね指は指を曲げたり、伸ばす場合に痛みが出たり、動きにくくなるなどの症状が起こります。これは指の手のひら側にある腱をカバーするように覆っているトンネル状の腱鞘と呼ばれる部分に炎症が起こる病気です。 発症すると指を上手く動かせなくなります。症状が進むと急に指が伸びるようなバネ現象が起こる特徴があるため、ばね指と言われています。 (こちらで詳しく解説 > ばね指とは) 腱鞘炎の種類 ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎) ・手首に起こる ・女性に多い ばね指 指に起こる これら、いずれの症状も仕事や日常の動作が関係しているため、慢性化することが多くなります。中には腱鞘炎が原因で、やむを得ず転職するはめになったという方もいます。 手首や指に痛みや違和感を感じたら放置せずに、安静にし、それでも痛みなどが残る場合は、軽いうちに治せるよう整形外科等の病院、医療機関を受診してください。 腱鞘炎の治療 腱鞘炎の原因は手の使いすぎですから、軽症であれば一定期間、手の使用を控えるようにしていれば治ることがあります。 手に違和感がある場合は、湿布で冷やすことや、テーピングにも効果が期待できます。 1)保存的治療 まずは、親指や手首を休ませることです。添え木を用いて手首を固定し、安静にする場合もあります。湿布で冷やしたり、痛み止め、テーピング、痛み止めの内服などの使用が保存療法的な主な治療法です 2)ステロイド注射(トリアムシノロン) 投薬治療をしても改善されない場合は、ステロイドを注射する方法もあります。 3)手術 腱鞘炎の再発を繰り返し、改善がみられない場合は、手術という選択が必要になる場合もあります。手術は、局所麻酔による日帰り手術が可能です。 手指をよく使う腱鞘炎のリスクが高い職種の方は、日頃から手や指のストレッチや、マッサージなどのケアをしっかり行い予防を行うことが大切でしょう。 腱鞘炎の予防 腱鞘炎の予防は、日頃からのケアが大事です。腱鞘炎は、手の使い過ぎだけでなく、血行不足でも生じることがあります。その予防策について以下を参照してください。 予防法 ・手と手首のストレッチで血流を良くする▷ 仕事の前後、合間など気が付いたら行う ・手や指、手首に違和感や痛みがある▷ 温冷法(熱めのお湯と冷水を交互に30秒ずつ5セット) ・スマートフォンは、両手で操作する▷ 片手操作は、親指と手首に負担がかかる 普段から長時間同じ作業を続けないように意識しましょう。 ときどき休憩を挟んで手を休ませることが必要です。作業の前後にストレッチを取り入れるのも有効です。パソコンであれば、強くキーボードを叩かないなどの工夫をしてみることも効果があります。 そして、症状が軽いうちにケアをして、痛みを長引かせないことが大切です。 痛みが続くようなら病院等、医療機関を受診してください。症状に合わせて塗り薬を使う、炎症を抑えるステロイド薬を注射をする、またリハビリを行うなどの治療方法があります。 それでも改善が見られない場合は手術になることもあります。また、近年は、スポーツ医療の分野でも話題になっている「再生医療」で治療するという方法を検討することもできます。 まとめ・腱鞘炎とは!箸が持てない!原因と種類、治療法に加え予防を解説 腱鞘炎は、スポーツをはじめとして手や指を使う職業、そして育児など子供の抱きおろしでも発症します。 一度発症すると治るまでに時間がかかってしまう場合がありますが、治らない疾患ではありません。悪化する前に早めに対応してください。 また、手を酷使しないよう定期的に休憩をして手を休ませるなど予防に努めましょう。 腱鞘炎は手や指を頻繁に使う仕事に起こりやすい症状です。腱鞘炎というものを意識して日頃から予防をすれば避けることができます。 治療法については、保存的治療、注射、手術の3つの治療を説明しました。 近年は再生医療による治療を選択することもできます。手術以外の選択肢として、この治療法は、患者さんの負担を抑えることができ、副作用も少ないため、注目を集めている治療方法のひとつです。 慢性化した腱鞘炎の治療としては、薬物療法やリハビリテーション、手術、再生医療など、さまざまな方法があります。痛みや違和感が長く続く場合は、整形外科をはじめ専門の医療機関で相談してください。 以上、腱鞘炎!箸が持てない!そんな悩みを解消する治療法と予防についてを説明させていただきました。この記事が参考になれば幸いです。 No.S047 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2024.04.17 -
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TFCC損傷は、どこに、どんな痛みが出るのか 「手首が痛い!」というとき、それは捻挫かもしれないし、腱鞘炎かもしれません。 転倒した際、手をついたり、その後に痛みが出れば「捻挫」かもしれない?と思うかもしれませんし、手首を酷使するような仕事やスポーツをした後なら「腱鞘炎」を疑うかもしれません。 しかし、実際に病院に行ってみたところ「TFCC損傷」だと診断されることがあります。ただ、多くの場合、TFCC損傷と言われても聞きなれない言葉で、どんな症状か不明なことが多いと思います。 そこで今回は「TFCC損傷について」どんな痛みが、どんな時に起こるのか解説してみたいと思います。また、併せてTFCC損傷の治療法についてもご紹介しましょう。 TFCC損傷は、「小指側の手首の付け根の部分」に痛みが出ます。ただし、安静にしているときは傷みません。 こんな動作をすると痛む ・手首の小指側を押したら痛い ・手首を外にひねると痛い ・手首をつくと痛い ・手首を小指側に曲げると痛い 日常生活の中で傷む場面 ・ドアノブやドアの鍵を回す ・タオルを絞る ・蛇口をひねる また、痛みを感じる場面としては調理時、フライパンや、水の入ったヤカンや鍋などの重みのあるモノを持つと痛みを感じます。スポーツではテニスのラケットを握ったときなどに痛みが出ます。 TFCC損傷の診断は難しい 実は、TFCCは骨の損傷ではないのでレントゲン写真では異常が見られず、捻挫として診断されてしまうことが多くあります。しかし、上記で紹介したような動作をしたときに痛みが出たり、痛みが長引いたりするようであれば、TFCC損傷の可能性があります。 そんな意味でも上で示したような痛みの部位と、痛みが出る動作を覚えておき、専門の医療機関を受診すると共に、その旨を伝えて正しい診断を得るようにしてください。 尚、TFCC損傷の診断は、触診、MIR検査や関節造影などを用いて行われます。 TFCC損傷の治療法 TFCC損傷の治療法は、安静を保つ保存療法が一般的で、保存療法では改善が見られない場合は手術を選択することもあります。しかし、TFCC損傷は完治が難しいです。 そこで紹介したいのが、体の自然治癒力を生かして完治を目指す「再生医療」という治療法です。 TFCC損傷の治療に効果的な再生医療「PRP療法」とは? 血液の中には多くの成長因子をもつ血小板が存在し、血小板は、損傷を受けた部位を修復する機能を持っています。 患者さん自身の血液から血小板を取り出し濃縮し、濃縮されることによって修復能力が増幅した血小板を損傷個所に注入し、修復するのがPRP療法です。 プロ野球選手の肘の治療にも使われるなど、スポーツ医療の分野で注目を集め、話題になっています。「慢性化した痛みがある」「早くスポーツに復帰したい」「薬剤アレルギーがある」などに当てはまる方にはおすすめの治療法です。 まとめ/TFCC損傷は、どこに、どんな痛みが出るのか TFCC損傷は、安静時に痛みは出ず、手首の小指側にひねると痛みが出ることが特徴です。 痛みは、大きなストレスになりますし、日常生活や仕事に影響が出ることもあります。早く治すためにも自分に合った最善の治療法を選ぶことが必要です。近年、話題になっている再生医療による治療も、選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。 以上、TFCC損傷は、どこに、どんな痛みが出るのかについて記させて頂きました。参考にしていただけるなら幸いです。 No.S036 監修:医師 加藤 秀一 ▼ PRP治療法・再生医療に関する詳細は以下をご覧下さい TFCC損傷へのPRP(再生医療)治療に関してご説明しています
最終更新日:2023.10.09