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後十字靭帯断裂の症状と治療法について医師が詳しく解説 後十字靭帯断裂という怪我をご存じですか? 後十字靭帯は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぐ重要な靭帯で、膝の裏側にあります。靭帯断裂というと、スポーツで起きるイメージを持たれるかもしれませんが、後十字靭帯断裂はスポーツだけでなく転倒や交通事故でも起こります。 今回は、後十字靭帯断裂について、症状や診断方法、治療や手術費用などについても詳しく解説します。 後十字靭帯とは 後十字靭帯は、大腿骨の内側顆と呼ばれる膝の内側の部分を起始とし、後方外側に向かってのび、脛骨の顆間隆起の後外方に停止します。 「後」十字靭帯という名前がついていることからわかるように、私たちの膝には「前」十字靭帯も存在します。膝の中でこの2つが十字型に見えることから、こう呼ばれています。 この前十字靭帯と後十字靭帯がともに機能することで、私たちの膝は安定して動かすことができます。 後十字靭帯は、前十字靭帯よりも太さと強度があり、特に脛骨(すねの骨)が後ろに脱臼しないように保持する働きをしています。また、膝をひねる動作が安定して行えるよう支える役目も担っています。 後十字靭帯断裂の原因 後十字靭帯断裂は、主に膝を曲げた状態で強く地面に打ち付けることによって発生します。交通事故でダッシュボードに膝を強く打ち付ける、転倒して膝から転ぶなどが典型的な受傷機転です。 スポーツでは、ラグビーやアメフトなどのコンタクトスポーツでの受傷が多いです。 後十字靭帯断裂の症状 多くの場合、膝を打ちつけているため、膝のお皿の下に擦り傷などの外傷があることが多いです。 関節内に、少量の血が溜まる場合もあります。靭帯のみでなく、後ろの関節包(関節を包んでいる袋、関節の安定性に寄与している)も損傷している場合には、膝後方に皮下出血があり、注意が必要です。 膝窩部(膝裏)の痛みや、膝を曲げると痛いという症状を訴える方もいます。 後十字靭帯は、一部の損傷のみにとどまることもありますが、完全に断裂し、膝の不安定性が強い場合は、階段の上り下りや、しゃがみ込み時に膝がグラグラする感覚があります。 放置するとどうなる? 膝が不安定な状態のまま日常生活を送ると、大腿骨と脛骨の動きが通常よりも大きくなり、その分、膝全体にストレスがかかります。この状態が長期間続くことによって、膝の軟骨や半月板などが徐々に損傷を受けます。 そのままさらに放置すると、膝が変形してしまい、痛みを伴いながら、極端なO脚やX脚になってしまう可能性があります。(変形性膝関節症) 後十字靭帯断裂の診断 後十字靭帯断裂を疑う外傷があった場合、身体診察と画像検査によって診断します。 徒手検査 まずは身体診察を行い、膝関節の不安定性がないかどうかをチェックします。 特に有名なものに、「後方引き出しテスト」とよばれる検査があります。 後方引き出しテスト 1. 寝た状態で膝を曲げる 2. 医師がすねの骨(脛骨)を後ろに押していく その際に、後十字靭帯が機能していないと、脛骨が後ろに落ち込んでしまうような感覚があります。 画像検査 画像診断は、レントゲンとMRIで行うことが多いです。 靭帯自体はMRIでないと評価できませんが、合併する骨折を見逃さないためにも、レントゲンでの評価も必要です。MRIでは、靱帯が完全に断裂しているのか、部分的に損傷しているのかを評価することができます。 また、半月板や側副靱帯など他部位の損傷が合併しているかどうかについてもMRIで評価します。 後十字靭帯断裂の治療 後十字靭帯の機能は、保存的治療でも比較的に良好に回復すると言われており、保存療法が選択されることが多いです。 保存療法 保存療法の場合は、膝関節の安定性を補助するための装具を2カ月程度使用します。また、膝の安定性を高めるためにはリハビリも欠かせません。 受傷から1,2週の急性期は、腫脹や痛みがある時期なので、ある程度痛みが引いてくるまでは負担をかけないように松葉杖などを使用します。痛みのない範囲で、早期から関節可動域訓練やストレッチなどは開始します。 その後、3週間程度経過すると、徐々に膝が動かせるようになり、筋力トレーニングやランニングなど、装具を着用したまま行えるようになります。 スポーツ復帰までどのくらい? 筋力トレーニングによって、筋力が8割程度戻ってくればスポーツ復帰となりますが、少なくとも3ヶ月程度はかかります。 ただし、保存療法を行っても、膝の不安定性が強い場合や、不安定感でスポーツなどへの復帰が傷害される場合は、再建術などの手術が検討されます。 手術療法 手術は全身麻酔で行われる場合が多いです。 切れた靱帯同士を縫合するのは難しく、強度も不十分であるため、もも裏の筋肉(ハムストリング)の一部を採取し、靱帯のように形成して移植します。 入院期間とスポーツ復帰まで 手術後は装具を使用して膝を固定します。体重をかけていいのは、術後3週間程度してからになります。入院期間は病院によって様々ですが、体重をかけられるようになることまで入院している場合が多いです。 退院後も、通院でリハビリテーションを行い、術後6ヶ月でランニングを許可し、術後10〜12ヶ月でスポーツ復帰が目安となります。 手術はどのくらい費用がかかる? かかる費用は、入院期間や処置の内容によっても前後しますが、50万前後となることが多いです。装具や通院なども含めると、さらに金額は上がってきます。 基本的には高額療養費制度の適応となりますので、自己負担は軽減されます。高額療養費制度に関しては、ご加入の健康保険窓口で問い合わせてください。 まとめ・後十字靭帯断裂の症状と治療法について医師が詳しく解説 今回は、後十字靭帯断裂について詳しく解説しました。 後十字靭帯は私たちの膝を安定させるのに非常に重要な役割を果たしています。当初は軽い症状でも、放置すると日常生活に支障が出る場合も珍しくありません。少しでも違和感を感じた場合は、早期に専門医を受診してください。 No.S150 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2024.02.12 -
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後十字靭帯損傷の症状と原因、治療法について 後十字靭帯損傷(こうじゅうじじんたいそんしょう)とは、膝の関節内にある後十字靭帯の損傷をいいます。主に車の事故やバイク事故、ラグビーなどのコンタクトスポーツで他人と衝突することで生じます。 今回の記事では、後十字靭帯損傷の原因や症状、そして治療方法について解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。 後十字靭帯損傷とは? 後十字靭帯は、膝関節の中で前十字靭帯とともに関節を強固に連結している靱帯です。 大腿骨(太ももの骨)の内側と、脛骨(すねの骨)の中央を繋ぎ、前十字靭帯と十字のかたちに交差して膝関節を支えています。普段は膝関節のひねる動作を支えたり、脛骨が後ろにずれないように支えるように働いたりしています。 後十字靭帯損傷は、膝裏にあたる位置にある靭帯損傷のことであり、後十字靭帯が一部あるいは完全に断裂した状態を指します。 後十字靭帯損傷の原因 スポーツ外傷や交通事故などで、脛骨上端に、前から後ろへ向く大きな力が加わることで、後十字靭帯が損傷することが多いとされています。 具体的には、以下のような受傷機転が考えられます。 交通事故 ダッシュボード損傷とも言われ、車が急停車しダッシュボードに膝(脛骨の上端部)をぶつけることによって起こります。 転倒 膝を90°曲げた状態で転倒すると脛骨が後ろへ押し込まれるため受傷します。 コンタクトスポーツ(ラグビーなど) 膝下にタックルを受けることで、後十字靭帯を損傷することがあります。 後十字靭帯損傷の症状 後十字靭帯損傷の症状を解説します。 急性期(受傷後3週間くらい) 膝の痛みと可動域制限がみられますが、歩ける場合が多いです。しばらくすると腫れ(関節内血腫)が目立ってくる場合もあります。膝窩部の皮下出血を認めることもあります。 痛い部位は、膝の裏となります。また、脛骨に後方へのストレスをかけると、膝窩部に激痛がみられます。 急性期を過ぎると 痛み、腫れ、可動域制限はいずれも軽快してきます。しかしこの頃になると損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。これは下り坂やひねり動作の際にはっきりすることが多いです。 慢性期の症例(受傷から時間がたった場合) 慢性期では、前十字靭帯損傷と比べると膝の機能障害は軽度ですが、脛骨の後方ストレスへの不安定感を歩行やスポーツ活動時に認めます。 また、慢性期では、関節軟骨変性のため膝蓋大腿関節や内側の関節裂隙に圧痛を認めることもあります。また、仰臥位で膝関節屈曲90°とすると、脛骨近位端が後方へ移動している落ち込み徴候(サギングサイン)を認めます。 不安定感があるままに放置しておくと新たに半月(板)損傷や軟骨損傷などを生じ、慢性的な痛みや腫れ(水腫)が出現するおそれもあります。 後十字靭帯損傷の診断方法 脛骨の後方ストレスへの不安定性の証明とMRI画像での後十字靭帯断裂を証明することで、後十字靭帯損傷を診断することができます。 また、レントゲン写真では骨折の有無についても確認することができます。 後十字靭帯損傷が見られるかというテストには、sagging(サギング)テストがあります。 sagging(サギング)テスト 仰向けの状態で膝を90度屈曲して踵を持ち上げたときに、左右を比較して、脛骨が落ち込んでいるかどうかを見るテストです。 この際に、脛骨が落ち、関節に窪みが生じていれば、後十字靱帯断裂を疑います。 後十字靭帯損傷の治療法 後十字靭帯の単独損傷では、大腿四頭筋訓練を中心とした保存療法が行われます。 膝動揺性抑制装具(サポーター)を装着して早期から痛みの無い範囲で可動域訓練を行い、筋力低下を最小限にとどめるようにします。受傷初期は疼痛緩和と安静を兼ねてギプス固定を行うこともあります。 後十字靭帯単独損傷の場合には多少の緩みが残ってもスポーツ活動に支障をきたさないことが多いことから、軽度な症状の場合には先ずは保存療法を試みるようにします。 こうした、後十字靭帯損傷のリハビリ目的の筋トレ中の禁忌として、症状を悪化させる危険性があるので、しゃがみや膝立ち、正座できないことは知っておく必要があります。 慢性期で後方ストレスへの不安定性が強く、日常動作に不自由を感じる例は靭帯再建術を行うべきとされています。 後十字靭帯損傷の完治期間 後十字靱帯損傷の完治までの期間・道のりとしては、ハムストリングスを用いた再建術後の理学療法、術直後には免荷で膝装具0° 固定し等尺性筋収縮運動を行います。 1〜2週間で部分荷重、スクワット運動開始とします。4週間で全荷重、4ヶ月でジョギング、水泳などのスポーツ復帰が可能となります。 ・1〜2週間で部分荷重、スクワット運動開始 ・4週間で全荷重 ・4ヶ月でジョギング、水泳などのスポーツ復帰 このように、全治までには数ヶ月を要します。 後十字靭帯損傷の予後は比較的良好とされています。しかしながら、後十字靭帯損傷が自然治癒するわけではない、ということには注意が必要です。 最近では、早く治すことで早期の競技復帰を望むアスリートの間などで、低侵襲な治療で靭帯組織の修復が期待できる「再生医療」が選択されるケースもあります。 https://youtu.be/ZYOV-Er0mnU?si=krijmhYRz9t7Ggd_ ▶こちらの動画では、膝の画像を使って分かりやすく靭帯のメカニズムと再生医療を解説しています。是非ご覧ください。 まとめ・後十字靭帯損傷の症状と原因、治療法について 「靭帯が伸びるとどうなるか」という疑問を持った方がいらっしゃるかもしれませんが、靱帯損傷では靭帯の一部あるいは全部が断裂つまり切れてしまうものです。 当院では、自己脂肪由来幹細胞治療やPRP療法を行っています。後十字靭帯損傷後に膝の不安定感があったり、スポーツに早期復帰したいという方のために、膝の靭帯損傷をより早く治すために再生医療を提供しています。ご興味のある方は、ぜひ一度当院の無料相談を受けてみてください。 No.150 監修:医師 坂本貞範 参考文献 膝の最前線. 理学療法科学 第23巻2号 「膝靭帯損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる プライマリケアのための関節のみかた 下肢編(2)―膝(下)[臨床医学講座より] - 医科 - 学術・研究 | 兵庫県保険医協会
最終更新日:2024.08.30 -
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外側側副靭帯損傷|症状と原因、治療法について解説! 外側側副靱帯(がいそくそくふくじんたい)損傷は、膝の外側にある靭帯がスポーツや交通事故で外傷による損傷する怪我です。 外側側副靱帯損傷は、いくつかある靭帯損傷の中でも、比較的まれな怪我ですが、他の靭帯と一緒に損傷することが多く、場合によっては手術が必要になります。 本記事では、外側側副靱帯の症状や原因について解説し、治療法について詳しく解説します。 外側側副靱帯損傷とは? 膝の関節は太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)とすねの骨である脛骨(けいこつ)、お皿の骨である膝蓋骨(しつがいこつ)からできています。比較的平らな面同士が合わさってできており、安定性に欠くため、大腿骨と脛骨の間を別の組織で補強しています。 靭帯は膝関節を補強する組織の1つで、骨同士を固い組織でつなぎ、膝の安定性を高めています。外側側副靱帯は膝の外側にあり、膝の内側からの衝撃に抵抗する靭帯です。 そのため、膝の内側から強い衝撃が加わると、外側側副靱帯にストレスが加わり、場合によって靭帯が傷ついたり、ちぎれたりして、外側側副靱帯損傷を引き起こします。 単独で損傷することはあまりなく、他の靭帯と同時に損傷する、複合靭帯損傷(ふくごうじんたいそんしょう)として生じることが多いです。 外側側副靱帯損傷の症状や原因 外側側副靱帯は靭帯損傷の中でも比較的めずらしい怪我です。 単独で生じることは少ないですが、外側側副靱帯が損傷している場合の特有の症状や原因があります。 どのような症状や原因があるのかを詳しく解説します。 外側側副靱帯損傷の症状 外側側副靱帯の損傷の症状は、膝の外側の痛みや腫れです。 また、膝から下が内側に傾くような動きが生じると、傷ついた靱帯が伸ばされるため、痛みを生じます。例えば、あぐらをかいた場合に膝の外側に痛いという状態です。 外側側副靱帯を損傷した状態で放置すると、膝がグラグラするように不安定感が生じます。 外側側副靱帯損傷の原因 外側側副靱帯損傷の原因は大きく分けて、スポーツ中の接触と交通事故に分けられます。 スポーツでは、サッカーやラグビーのタックルや柔道の足払いなどで膝の内側に強い衝撃が加わり、外側側副靱帯が強制的に伸ばされて起こります。 交通事故の場合も、スポーツ同様に膝の外側が無理に伸ばされるような衝撃を受けることで、外側側副靱帯が損傷されるのです。どちらにせよ強い衝撃が原因となるため、外側側副靱帯が単独で損傷することは少なく、他の靱帯や半月板といった組織の損傷と合わさる場合が少なくありません。 外側側副靱帯損傷の診断 外側側副靱帯が損傷しているかどうかは、以下の方法で診断されます。 診断方法 ・徒手検査(としゅけんさ) ・画像診断 それぞれの診断について具体的に解説します。 徒手検査 患者を仰向けに寝かせた状態で、膝の内側と足首の外側を持ち、膝から下を内側に動かすように力を入れて、外側側副靱帯にストレスを加える内反(ないはん)ストレステストと呼ばれる検査をします。 内反ストレステストで、痛みや関節が通常より大きく動く不安定性を認めた場合は、外側側副靱帯損傷が疑われます。 膝を軽く曲げた状態と完全に伸ばした状態といった両方の姿勢で検査を行い、膝屈曲位で症状が出た場合は外側側副靱帯の損傷、伸ばした状態で症状が出た場合は、他の靱帯の損傷も疑うことが必要です。 画像診断 外側側副靱帯の損傷はレントゲンでは異常を示しづらく、詳細な診断にはMRIを用います。 MRIだと他の靭帯や半月板などの組織もはっきりと写るため、複合損傷や合併症の確認にも有効です。 外側側副靱帯損傷の治療 外側側副靱帯の損傷の治療方法は手術を行わない保存療法と、手術を行う手術療法に分けられます。 それぞれの治療方法について具体的に解説します。 保存療法 外側側副靱帯のみの損傷で、膝の不安定感が少なく、日常生活に大きな支障がなければ、手術による外科的な治療を行わない保存療法が選択されます。 保存療法には装具療法やリハビリテーションがあります。 装具療法 外側側副靱帯損傷により、膝が不安定になれば、さらなる損傷や膝周辺の痛みを伴うリスクが高まります。そのため、装具やサポーターを着用して、膝の安定性を高めれば、外側側副靱帯へのストレスを減らすことが可能です。 また、怪我の直後は痛みや腫れが強く、膝へのかかる負担をできる限り減らすため、ギプスによる固定をする場合もあります。 リハビリテーション リハビリテーションでは、膝の安定性を高めるため筋力トレーニングを実施して、膝周辺の筋力を鍛えるトレーニングを実施します。 また、装具などで膝を固定することによる関節の動きの制限を改善するため、ストレッチや関節可動域練習を行います。 手術療法 複合靭帯損傷の場合や膝の不安定性が強い場合は、手術による治療が適応になります。手術は損傷した靱帯を他の部分の靱帯を使って再建する靱帯再建術が実施されます。 手術後は状態に合わせて段階的なリハビリテーションが必要です。その後、スポーツ復帰して試合などの通常に戻れるまでは、3〜6カ月の治療期間がかかります。 まとめ・外側側副靭帯損傷|症状と原因、治療法について解説! 外側側副靱帯損傷は、頻度が高い怪我ではありませんが、治療をせずに放置すると、膝の痛みや損傷部位の悪化を招く危険性があります。 外側側副靱帯損傷は、膝の外側に位置する靱帯が外部からの強い衝撃によって損傷する怪我です。スポーツや交通事故が主な原因であり、特に膝の内側からの強い衝撃が発生源となります。この損傷は単独で発生することは少なく、他の靱帯や半月板とともに損傷することが多いです。症状としては膝の外側の痛みや腫れ、膝の不安定感が挙げられます。 診断は徒手検査や画像診断(特にMRI)によって行われます。徒手検査では、膝の内反ストレステストが用いられ、MRIでは詳細な損傷部位や他の合併症の有無を確認します。治療法には保存療法と手術療法があり、損傷の程度や症状によって選択することになります。 保存療法では、装具療法やリハビリテーションが中心となり、膝の安定性を高めるための筋力トレーニングやストレッチが行われ、重度の損傷や複合損傷の場合には手術が必要となり、靱帯再建術が実施されます。手術後は段階的なリハビリが必要で、完全に回復するまでには数ヶ月の時間を要します。 外側側副靱帯損傷は比較的まれな怪我ですが、適切な診断と治療を受けることで、日常生活やスポーツへの早期復帰が可能です。怪我を予防するためには、適切なトレーニングと膝の保護が大切です。 膝の外側が痛んだり、膝がグラグラするような不安を感じたりした場合は、できるだけ早めに整形外科に受診しましょう。 本記事を参考にいざというときに外側側副靱帯の治療がスムーズに受けられるよう、正しい知識を身につけておきましょう。 No.S149 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2024.05.17 -
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腸脛靭帯炎(ランナー膝)とは?原因と症状、治療法 膝の外側が痛いという症状を引き起こす可能性のある病気の一つに、腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)というものがあります。 今回の記事では、腸脛靭帯炎の原因や症状、そして治療方法について解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。 腸脛靭帯炎とは 腸脛靭帯は、お尻の筋肉である大臀筋(だいでんきん)と大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)から始まって、脛骨(けいこつ;スネの骨で、膝下の2本の骨のうち太い方の骨)の前外側にある膨らみに繋がっています。 腸脛靭帯炎は、主に長時間のランニングを行う競技に頻発し、腸脛靭帯と大腿骨外側の骨の膨らみの間における摩擦障害により発症するスポーツ障害です。 ランナーなどのスポーツを行う方に多いことから、ランナーズニー(runners knee)とも呼ばれます。主な症状は、ランニングの際に膝に痛みが出ることや、膝の外側が痛いということです。 腸脛靭帯炎の原因 腸脛靭帯が骨のすぐ上を通るところでは、膝の曲げ伸ばしによって靭帯と骨の摩擦が起きやすく、ランニングなどで過剰に靭帯の曲げ伸ばしを行うと炎症の原因となります。 より詳しく原因を見ていきましょう。 選手側の問題 筋力不足、筋力のアンバランス、骨の成長と筋の伸びとのアンバランス、からだの柔軟性不足などが挙げられます。 また、腸脛靭帯炎の発症要因の一つに内反膝(ないはんしつ:O脚のこと)が挙げられます。内反膝の人は、太ももからすねにかけて内側に曲がっているため、膝の外側を走行している腸脛靭帯が大腿骨外側の出っ張りに擦れやすくなります。そのため、内反膝の人は腸脛靭帯炎を起こしやすくなります。 練習や環境の問題 ランニングの練習や、環境の問題で腸脛靭帯炎が起こります。 オーバートレーニングや選手の体力や技術に合わない練習、不適切な靴、硬すぎたり軟らかすぎたりする練習場などが原因として挙げられます。 早いスピードのランニングでは接地時に膝が曲がる角度がより深くなるため、腸脛靭帯の摩擦は少なくなり、腸脛靭帯炎にはなりにくいとされています。 一方、下り坂、ジョギング、不整地、雨の日のランニングでは接地時に膝が曲がる角度が浅くなるため、腸脛靭帯の摩擦が多発すると考えられています。 腸脛靭帯炎の症状 ランニングやジャンプを長時間繰り返すことで、膝に痛みが生じます。 痛みの程度によって、軽症から最重症に分けられます。重症になるにつれ、スポーツを行っていない時にも膝の痛みが生じるようになります。 軽症 スポーツは可能ですが、その後に痛みが生じます。 中等症 スポーツのプレーには支障がないものの、プレー中やプレー後に痛みが生じます。 重症 腸脛靭帯炎が重症な場合には、常に痛みやプレーに支障がでます。 スポーツを行っていない際にも、膝の痛みの症状が出てしまいます。 最重症 腸脛靭帯の断裂が生じます。スポーツ活動の中止をしなくてはなりません。 腸脛靭帯炎の診断 腸脛靭帯炎の診断としては、上記のような症状と、膝の外側にのみ圧痛があれば診断が可能となります。 予防法や治療法としては、スポーツ前にストレッチを十分に行うことが大切です。また、スポーツの後に冷却を15分ほど行うことも効果的です。 医療機関では、レントゲンやMRIなどの画像診断によって診断をつけることもあります。 腸脛靭帯炎の治療法 腸脛靭帯炎(ランナー膝)の治し方としては、保存療法が基本となります。 保存療法 膝の痛みの原因になっている要因を明らかにし、再発を防ぐことが重要になります。痛みが出た際の初期の治療は、まずランニングを中止・軽減することが大切です。 そして次に、原因となるような事項を見直していきます。一般的には、トレーニング方法やシューズの改善、腸脛靭帯のストレッチングで太ももの外側を伸ばすようにすることがあります。 また、大腿骨外側の骨の膨らみにある圧痛部位を局所冷却すること、湿布、消炎鎮痛薬の投与も有効とされています。 再生医療の選択 こうした治療に効果がない場合には、組織再生目的の再生医療として、自己脂肪由来幹細胞治療や、PRP(多血小板血漿)療法が用いられることもあります。 再生医療によって幹細胞を培養し、直接関節内に投与することで、炎症を抑え、擦り減った軟骨や傷ついた組織を修復・再生することで痛みを改善することが期待できます。 https://youtu.be/2GCVH-Jw5Ps?si=opu2whYbIK2lU_gk ▶こちらの動画も是非ご覧ください。再生医療についてわかりやすく解説しています。 ランニングなどのスポーツを再開する場合には、スポーツの前にストレッチングを十分におこない、スポーツの後にはアイシングを15分ほどおこないます。貼り薬や塗り薬も効果が期待できます。 もしランナー膝が発症しても軽症や中等症であればスポーツは続けられます。適切なコンディショニングによってそれ以上に悪化させないことが大切です。 まとめ・腸脛靭帯炎(ランナー膝)とは?原因と症状、治療法 今回の記事では、腸脛靭帯炎の原因や症状、治療法について解説しました。 腸脛靭帯炎の治療法としては、安静やストレッチなどの保存的治療が中心となりますが、そうした方法でも改善がみられない場合には、再生医療も治療法の選択肢となります。 当院では、自己脂肪由来幹細胞治療やPRP療法によって、膝の靭帯損傷をより早く治し、筋力低下などを防ぐための再生医療を提供しています。 ご興味のある方は、ぜひ一度当院の無料相談を受けてみてください。 No.149 監修:医師 坂本貞範 ▼以下もご参考にしていただけます 腸脛靭帯炎(ランナー膝)治療のストレッチ、テーピングと靴選びについて 参考文献 腸脛靭帯炎における臨床的特徴と運動療法成績について|第22回東海北陸理学療法学術大会 「スポーツによる膝の慢性障害」|公益財団法人 日本整形外科学会 腸脛靭帯炎(ランナー膝) | JCHO東京山手メディカルセンター
最終更新日:2024.09.19 -
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MCL【内側側副靭帯損傷】の症状と治療法について解説 内側側副(ないそく そくふく)靭帯損傷は、内側側副靭帯という膝の内側の安定性を保っている靭帯が何らかの原因で損傷を受けることです。 今回の記事では、内側側副靭帯損傷の症状や治療法について解説します。 内側側副靭帯の役割や損傷の原因 では、まず内側側副靭帯の役割や損傷の原因について解説します。 内側側副靭帯の役割 内側側副靭帯(Medial Collateral Ligament: MCL)は、膝の靭帯の一つであり、内側に位置しています。 膝の関節は太ももの骨(大腿骨:だいたいこつ)と、脛(すね)の骨(脛骨:けいこつ)からなります。 関節の中には、前十字靭帯と後十字靭帯という靭帯があり、関節の外側には内側側副靭帯と、外側側副靭帯という靭帯があります。それぞれ、関節を安定させる働きを担っています。 その中でも、内側側副靭帯は、特に膝の内側の安定性を保つという役割をしています。 内側側副靭帯損傷の原因 スポーツ外傷や、交通事故などで、膝に外反強制(がいはんきょうせい:すねを無理に外側に向けられること)するような大きな力が加わった際に、内側側副靭帯損傷(MCL損傷)が起こりやすいとされています。 内側側副靭帯損傷は、膝の靭帯損傷の中で最も多いとされています。 内側側副靭帯損傷の症状や検査方法 では次に、内側側副靭帯損傷の症状や重症度、検査方法について説明します。 内側側副靭帯損傷の症状①痛みや腫れ 急性期(怪我をしてから3週間頃)に、膝の痛みと可動域制限がみられます。しばらくして腫れ(関節内血腫)が目立ってくることもあります。 急性期が過ぎると、痛みや腫れ、可動域制限は軽快してきます。 内側側副靭帯の損傷の症状②膝の不安定性 この頃になると損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。ひねり動作の際にはっきりすることが多いです。 内側側副靭帯損傷の場合は、すねから下が外へずれてしまうような不安定感が出ます。この状態のまま放置しておくと、新たに半月(板)損傷や軟骨損傷などを生じ、慢性的な痛みや腫れ(水腫)になってしまうこともあります。 内側側副靭帯損傷の重症度 内側側副靭帯損傷は、1〜3度に分類できます。 ・1度 軽症で特に治療を必要としません。 ・2度 中等症で、膝の外反動揺性つまりぐらぐら感を中程度に認めます。 初期治療(ギ プス固定、装具療法など)が重要となります。 ・3度 重症で、膝の外反動揺性が顕著であり、手術を要する場合が多いです。 内側側副靭帯損傷の検査方法 それでは、次に内側側副靱帯の検査方法について解説します。 ストレステスト 診察では膝関節にストレスを加えて緩みの程度を健側と比較します。 ① 外反ストレステスト(valgus stress test) 患者が仰向けになり、膝を伸ばした姿勢と30°膝に曲げた姿勢の2パターンでチェックをします。 医師などの検査者が膝関節の外側に一方の手を置き、他方の手で足関節を持ち膝関節に外反強制力つまりすねを外側に向ける力を加え、膝関節の外反不安定性をみます。 この際、30°屈曲位で外反不安定性があれば、MCL損傷を疑います。 MCL単独損傷では伸展位での不安定性は認めません。 ② 内反ストレステスト(varus stress test) 外反ストレステストとは逆に、医師などの検査者が膝関節の内側に一方の手を置き、他方の手で足関節を持ち膝関節に内反強制力つまりすねを内側に向ける力を加え、膝関節の内反不安定性をみます。 この際、30°屈曲位で内反不安定性があれば、外側側副靱帯損傷を疑います。 画像検査 画像診断ではMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像診断装置)が有用です。 X線(レントゲン)写真では靭帯は写りませんがMRIでは損傷した靭帯を描出できます。 また、半月(板)損傷合併の有無も同時に評価できます。 内側側副靭帯損傷の治療法 内側側副靭帯損傷の治療法は、損傷の程度や症状に基づいて決められます。 保存的治療 内側側副靭帯の単独靱帯損傷の場合には、手術ではなくリハビリテーション治療による保存的治療が選択されます。 受傷後急性期には、 RICE(安静または短期の固定、冷却、弾力包帯などによる圧迫、患肢の挙上)処置に引き続いて、できるだけ早期から筋力訓練を開始します。 サポーター装着 膝に不安定性がある場合は、損傷靱帯保護の目的で支柱付きのサポーター装用を考慮します。 手術療法 前十字靭帯や半月板との混合損傷や、重症度3度であり保存的治療では治らないことが予想される場合には手術療法が行われます。 内側側副靱帯損傷についてよくある質問 Q1 内側側副靱帯損傷は自然に治りますか? A1 内側側副靱帯損傷は、損傷の程度が軽い場合や部分的な断裂では、尺骨動脈という栄養動脈があるので治癒しやすく保存療法が行いやすいといえます。 しかし完全な断裂など、重症の場合は自然治癒は期待しがたいので、靭帯の再腱術を行うことが必要になります。 Q2 内側側副靱帯損傷の固定期間はどれくらいですか? A2 個人差はありますが、約1〜2週間程度ギプスシーネやニーブレースなどで固定後、靭帯矯正サポーターを装着し、リハビリテーションとして可動域、歩行訓練を行っていきます。 膝装具は一般的には約6週間以上装着します。 膝の可動域と不安定性が、怪我をしていない方の膝と同じレベルまで改善したらスポーツ復帰が可能となります。 まとめ・MCL【内側側副靭帯損傷】の症状と治療法について解説 今回の記事では、内側側副靭帯損傷の症状や治療法について解説しました。 内側側副靱帯損傷が起こると、その治療には数週間を要する場合が多いです。しかしながら、再生医療によって、治療期間や回復までの時間を短くできる可能性があります。 https://youtu.be/ZYOV-Er0mnU?si=ka6C0oujvcAaaLKY ▶こちらの動画も是非ご覧ください。膝の靭帯のメカニズムと再生医療について解説。 また当院では、自己脂肪由来幹細胞治療を行うことで、膝の靭帯損傷をより早く治し、筋力低下などを防ぐための再生医療を提供しています。ご興味のある方は、ぜひ一度当院の無料相談を受けてみてください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S146 監修:医師 加藤 秀一 参考文献 膝の最前線|理学療法科学23(2):335−340,2008.p336 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/23/2/23_2_335/_pdf 「膝靭帯損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/ligament_injury_of_th_knee.htm 膝のスポーツ外傷・障害と装具 東京女子体育大学小出清一|日本技師装具学会誌4(4):291〜295,1988.p292 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo1985/4/4/4_4_291/_pdf/-char/en スポーツ理学療法で必要となる 整形外科徒手検査と徴候|理学療法科学23(2):337−362,2008.p361 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/23/3/23_3_357/_pdf スポーツにおける膝外傷・障害に対する リハビリテーション治療 p1029 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/12/56_56.1027/_pdf
最終更新日:2024.08.30 -
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スノーボード、スキーなど冬のスポーツで多い膝の怪我について解説 冬のウィンタースポーツ!シーズンになるとスキーやスノーボードを楽しみにしていらっしゃる方も多いと思います。 ただ、これらのスポーツは、スピードが出るために転倒や、衝突の危険性があるスポーツですので怪我のリスクについては、十分に知っておく必要があります。 本記事ではウィンタースポーツで起こりやすいスポーツ外傷、ウインタースポーツで起こりやすい膝の怪我に焦点を当てて解説していきます。 冬のスポーツ!膝の怪我で多いのは前十字靭帯損傷と半月板損傷 スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツにおいては、膝の損傷、捻挫といった怪我が多く見られます。これは滑走中に膝を捻ってしまったり、ジャンプからの着地、転倒時に大きな負担がかかってしまうためです。 膝の怪我の中で最も頻度が多いのが、「前十字靭帯損傷」「半月板損傷」です。 そこで、これら起こりやすい怪我について詳しく見ていきましょう。 前十字靭帯とは ・膝の関節の中にある靭帯のうちの一つ ・膝関節を安定化させる ・前十字靭帯は膝の捻りと前後方向のぐらつきを抑えている 前十字靭帯損傷の症状 受傷直後は激しい痛みのため、その場から動けなくなることが多いです。その際に「ぶちっ」という筋肉が切れるような音が聞こえることもあります。 受傷直後に動けていた方でも、約70%に関節内血腫(関節内に血がたまる)が生じるとされており、時間が経過するとともに、痛みや腫れが強くなり、動くことが出来なくなっていきます。。 2~3週間後には腫れや痛みは軽減されることが多いですが、下記のような症状が継続してみられることがあります。 前十字靭帯損傷の症状 ・膝の不安定感 ・膝が外れる感じがする ・膝に力が入らない ・膝がすぐ腫れてしまう ・膝が伸びない ・正座ができない 膝を使う動作、特にスポーツ競技中などの様々な動作で症状が出ます。 診断 医師による診察や、レントゲン検査で骨折の有無を確認します。MRI検査が靭帯の評価(靭帯の形状や靭帯の走行など)に有用です。 治療 前十字靭帯損傷の治療法には、保存療法と手術療法の2種類があります。それぞれについてみていきましょう。 保存療法 大腿四頭筋などの筋力訓練を行ったり、必要に応じて装具を作成して日常生活やスポーツ活動への復帰を目指します。 しかし、この場合は靭帯が完治したわけではなく、日常生活で膝が安定せず、痛みが続く場合もあります。症状が残る場合は、半月板の損傷などの二次損傷を起こすリスクが高くなります。以前はスポーツをしない場合は、保存療法を選択する場合も多かったですが、現在では膝の老化の進行を早める可能性があり、若年者でも手術を勧められることが多くなっています。 手術療法 靭帯は自然に修復されることはなく、再建術が行われます。再建術は膝の後内側にある屈筋腱を移植する自家移植が一般的に行われます。手術後はリハビリが必須となりますが、術後10~12か月後に元のスポーツに復帰できることが多いです。 前十字靱帯損傷を放置すると、膝が安定性を失い、膝崩れといいガクッと崩れ落ちてしまったり、膝があらゆる方向に捻じれやすくなります。前十字靱帯損傷によって膝が安定しない状態が続くと、クッションの役割をしている半月板や、関節軟骨に負荷が多くかかってしまいます。その結果、半月板損傷など二次的な障害が生じることがあります。 半月板損傷とは 半月板とは膝関節の大腿骨と脛骨の間にある線維軟骨のことです。内側と外側にそれぞれにあり、膝にかかる衝撃を吸収する働きがあります。 症状 症状としては膝の曲げ伸ばしが困難になることが挙げられます。また、動かそうとしたときに激しい痛みを伴うこともあります。重症の場合には、膝に水(関節液)が溜まり腫れてしまったり、激痛を伴って関節が動かせなくなる「ロッキング」という症状が現れ、歩行困難になることもあります。 検査 医師による診察やMRIが行われます。また、状況に応じて、関節の中に内視鏡を入れて調べる、関節鏡検査を行う場合もあります。 治療法 半月板損傷の主な治療法には、保存治療と手術療法の2種類があります。 保存療法 サポーターなどで患部を固定し、抗炎症薬などの薬物療法やリハビリなどを行います。保存療法を行っても痛みや、ロッキングなどの症状が続く場合には手術を行います。 手術療法 断裂部位の幅が 1 cm以上と大きい場合や、保存療法を行っても症状が持続する場合は手術療法が検討されます。手術法には、損傷した部分を切り取る切除術と、損傷した部分を縫い合わせる縫合術の2種類があり、関節鏡を使った鏡視下手術を行います。 切除術の場合は、半月板を取り除くことで膝軟骨の消耗が進んでしまうことがあるため、近年では縫合術が選択されることもあります。ただし、損傷した半月板の状態によって縫合が難しいと判断された場合は切除術を行います。 手術後はリハビリが必須であり、スポーツへ復帰できるタイミングは、半月板切除術で約3ヵ月、半月板縫合術で約6ヵ月程度とされています。 まとめ・スノーボード、スキーなど冬のスポーツで多い膝の怪我について解説 スキーや、スノーボードを行う際にはプロテクターを着用するようにしましょう。これにより、怪我のリスクが格段に下がります。また自分の実力に見合った楽しみ方をすることも重要です。 治療後はケガをした時と同じ動作を続けると、再び膝を損傷する可能性があるため、スポーツの際などは特に注意が必要です。また、股関節や足首など下肢全体の関節が柔軟だと、膝へかかる負担が軽減されやすくなり、再発予防にもつながります。 下肢の筋力トレーニングも必須です。特に大腿四頭筋とハムストリングスを強化することが重要です。普段からストレッチや筋トレを習慣づけ、運動する際には、準備運動や整理運動をしっかり行うようにして、体全体の柔軟性を保つようにしましょう。 スキーやスノーボードを行う際は、怪我のリスクについても備えておくことが重要です。膝の怪我は日常生活にも影響が出ることが多いので、安全にスポーツを楽しみましょう。この記事がご参考になれば幸いです。 No.111 監修:医師 坂本貞範 ▼以下もご参考にしてください 膝の痛みを引き起こすスポーツ上の慢性障害について
最終更新日:2024.04.08 -
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前十字靭帯断裂、復帰までの期間は?症状と治療法も併せて解説! 前十字靭帯断裂は膝のケガでよくみられ、運動する人が多く受傷するスポーツ外傷の1つでもあります。前十字靭帯はACL(anterior cruciate ligament)と省略されることもあります。 今回は、前十字靭帯が断裂したとき、気になる復帰までの期間、症状と治療法も併せて解説していきます。 前十字靭帯とは 靭帯とは、コラーゲンや弾性線維でできている多少伸び縮み可能なひも状のようなもので、関節で骨同士をつないで、過剰に骨が離れるのを防いで関節の安定性を保っています。 膝の関節は太ももの大腿骨(だいたいこつ)とすねの内側にある脛骨(けいこつ)、そして膝のお皿とよく呼ばれる膝蓋骨(しつがいこつ)の3つの骨でできています。 そのうち大腿骨と、脛骨をつないでいる靱帯は、以下の4つです。 ・内側側副靱帯 ・外側側副靱帯 ・前十字靭帯 ・後十字靭帯 内側/外側側副靱帯は、膝関節の左右にあり、膝が左右にずれすぎないような役目をしています。 前/後十字靭帯は、大腿骨と脛骨の間で交叉していて、前十字靭帯は脛骨が前に出すぎないように、後十字靭帯は脛骨が後ろにずれないような役目を担っています。 前十字靭帯の断裂とは?/損傷の分類 前十字靭帯の傷害を「前十字靭帯 損傷」と言います。 前十字靭帯損傷は程度によって1度から3度までに分類され、数字が大きいほど損傷が強いことを表しています。 1度損傷 前十字靭帯は切れておらず、軽い痛みと腫れのみ。膝の不安定さはない。 2度損傷 前十字靭帯は部分的に断裂し、膝には不安定さが現れる。 3度損傷 前十字靭帯が完全に断裂している。内出血も起きる。膝には不安定さがある。 このうち、「前十字靭帯 断裂」は2度と3度が該当します。 前十字靭帯断裂の原因 前十字靭帯は、大腿骨と脛骨をつなぐ靱帯です。 役割としては脛骨が前に移動しすぎないように制御すること、そして、膝をひねったときにひねりすぎないように制御する役割があります。 ただし、強い力で脛骨だけが前に押し出されたり、膝を過剰にひねると、前十字靭帯の限界を超えるため靱帯断裂が起こります。 前十字靭帯に負担がかかる動き ・ジャンプした後の着地 ・走っている間に急に向きを変える ・全力で走って急に止まる ・他人とぶつかる(接触プレー) とくに前十字靭帯の断裂は、バスケットボールやサッカー、バレーボールや野球などのスポーツ中に起きることが多く、上記のような激しい動きの時に発症しやすいと考えられています。 前十字靭帯断裂の症状 前十字靭帯が断裂した瞬間は膝の中で紐がちぎれたような感覚を感じることがあります。 その後、膝がガクガクしたり、膝の痛み、膝の腫れなどが見られます。多くの場合では膝の関節の中で出血もしています。 しばらく放置すると痛みと腫れは引いてきますが、靱帯は勝手に治ることは少なく、膝の不安定さが残ります。 そのまま生活していると、膝がガクッと崩れたり、長期的には膝関節の中にある半月板や軟骨も傷んできます。すると変形性膝関節症という状態になります。 そうなるのを防ぐために、検査や治療を行うのが一般的です。 前十字靭帯断裂の検査 膝の不安定さや、どのような力が加わると痛みが出るかを触って確認するなどの検査を行います。 ・ラックマンテスト ・前方引き出しテスト その他にレントゲンやMRI検査を行うこともあります。 前十字靭帯の治療方法と、気になる復帰までの期間は? 前十字靭帯が断裂すると、自然に修復されることはありません。 将来スポーツを行う可能性がある場合には、靱帯を再建する手術療法、将来的にスポーツなどをしない人であれば運動療法を行うことが一般的です。 1.自家腱移植 自分の組織を用いて再建する方法です。 腱移植は膝の内側の腱(ハムストリング腱)や、前面の腱(膝蓋骨を割った骨付きの膝蓋腱)を使う方法があります。 手術は関節鏡という鉛筆くらいの細いカメラを用いて、小さな切開で行なうことが主流です。この関節鏡で大腿骨と脛骨をつなぐトンネルをつくり、そこに加工した腱を通して、上下を金具で固定します。 最低限の切開で、早くリハビリを始められることからスポーツ選手でよく行われています。 この手術の一般的な術後経過は、1週間程度(最短4日)の入院でその間は車いす生活、退院後は松葉杖となり、きちんとリハビリを継続していれば1ヶ月で日常生活が可能となり、約半年から1年でスポーツ復帰となります。 再建術を行った後、スポーツへの復帰ができる割合は手術後1年で約6割程度と報告されています。 2.保護的早期運動療法 将来的にスポーツなどをしない人であれば、前十字靭帯専用の装具を装着して、リハビリをするという治療を選択する場合もあります。 保存的治療ではいずれは日常生活やレクレーションレベルの動作は可能ですが、競技スポーツへの復帰は困難とされています。 また前十字靭帯損傷後に手術を行わなかった場合、約6割の患者さんが変形性膝関節症となることが報告されているため、治療を選択する際にはきちんと損傷の程度を理解し、その後の生活やスポーツへの影響を考えて決めましょう。 まとめ/前十字靭帯断裂、復帰までの期間は?症状と治療法について解説! いかがでしたでしょうか。 前十字靭帯断裂は、膝の中の靭帯が切れた状態です。特にスポーツをしているときに多く発生する外傷です。 受傷直後は傷みや膝の腫れがありますが、時間が経てばその症状は軽くなります。ただし、何も治療をしないと膝が不安定なままになったり、将来「変形性膝関節症」を発症することもあります。 前十字靭帯断裂の可能性がある場合は、早期に整形外科を受診することが重要です。 前十字靭帯断裂、復帰復帰までの期間は?症状と治療法について解説しました。ご参考になれば幸いです。 No.092 監修:医師 坂本貞範 ▼ スポーツ外傷(靭帯損傷、腱)の治療に有効な再生医療とは 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
最終更新日:2024.08.30 -
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前十字靭帯断裂はいつ治る?全治に向けて、入院期間とリハビリを解説 スポーツ選手の大きな怪我としてよく耳にする「前十字靭帯断裂」。受傷された場合、全治がいつになるのか気になる方も多いのではないでしょうか。特にスポーツなどで復帰までの時間が心配な方もおられることでしょう。 そこで今回は、前十字靱帯断裂の入院期間やリハビリ、手術の費用について解説しながら、全治をしてスポーツ復帰ができるまでの期間を紹介いたします。 前十字靱帯断裂が全治後、復帰までの期間 前十字靱帯の断裂または損傷の全治は 、8 カ月〜10 カ月とされています。 これは、スポーツ選手の場合、前十字靱帯断裂後に手術をしてからリハビリを終えて復帰をするまでの目安です。ただ、日常生活が問題なく送れるようになるだけ、一般人なら術後約 1 カ月程度です。 前十字靭帯を損傷してしまうと自然に修復することは、ほとんど期待できないため、手術をしない場合は全治することがありません。そのため、手術をしない場合は損傷した状態のまま生活を送ることになります。 前十字靱帯損傷で損傷部分が少なく、症状があまり見られなければ、手術をしなくても通常の日常生活を送ることが可能な場合もあります。 しかし、本来、前十字靱帯が担っている膝を安定させる機能が低下してしまうため、膝にかかる負担が大きくなってしまいます。その結果、膝にある半月板などの別の組織を傷めたり、老後に関節の変形を生じたりする可能性が高くなります。 全治まで期間の目安 ・スポーツ選手の復帰:8~10か月 ・一般人の場合:1か月程度 前十字靱帯断裂後の入院期間と手術の費用 前十字靭帯断裂後は断裂した靱帯を体の腱(けん)と呼ばれる部分を移植する手術を行います。 このような手術を前十字靱帯再建術と呼び、関節鏡(かんせつきょう)を使用して行います。関節鏡を使用した手術では、数ミリほどの穴からカメラを侵入させて手術を行うため傷口が小さくて、入院期間が短くなります。 詳しい入院期間と手術にかかる費用は以下の通りです。 手術後の入院期間 入院期間は短い場合で手術後 4 〜 7 日間を目安に退院することができます。 これは小さな傷ですむ内視鏡を使った手術だからですが、まだ普通に全体重をかけて歩けないので、松葉杖が使った状態で退院することになります。 しっかり歩けるようになり、日常生活が普通に送れるようになるまで、約1ヶ月を程度入院する場合もあります。しかし、前十字靱帯断裂は学生など若い年代に多いため、学校や仕事を1ヶ月も休むことは生活に大きな支障を及ぼします。 そのため、短い期間で退院をして、通院しながらリハビリや競技復帰を目指す場合が多いです。 手術に必要な費用 手術や入院にかかる費用は、手術の方法や入院期間、入院中の治療内容などによって異なります。目安として手術・入院費などを含めて 25 万円〜 50 万円ほど必要になることが多いです。 病院によって幅があるので、入院前におおよその目安を確認しておきましょう。早めに退院する場合でも、リハビリの継続は必要です。 特に全治してスポーツ競技に復帰できるまでは、8 カ月程度が目安になるため、それまではリハビリなどの費用が必要になります。 前十字靱帯断裂後のリハビリ 前十字靱帯再建術後のリハビリについて解説するとともに、手術をしない場合に必要なリハビリについても紹介します。 手術後のリハビリ・スケジュール 手術直後からスポーツ復帰までの流れを時系列で紹介します。 手術からの時期 リハビリ内容 手術直後 ・膝周辺の組織の柔軟性を確保する ・膝は完全に伸ばさないように装具を着用 ・膝関節の動きを伴わない筋力トレーニング ・膝以外の部分の筋力トレーニング 1 週間 ・体重1/3の荷重練習 ・関節の動きを改善する運動を開始 2 〜 3 週間 ・全体重をかける練習 ・軽く曲げる程度のスクワットなど体重をかけながらのトレーニング 4 〜 6 週間 ・自転車などマシーンでの運動 ・より積極的に体重をかけたトレーニングを進める 3 カ月 ジョギング開始 4 カ月 両足ジャンプ、ターン開始 6 カ月 スポーツ練習開始 8 カ月 競技復帰 術後は移植した腱を保護しながらのリハビリが必要になります。腱が負担に耐えられるようになるまでは 3 カ月ほどかかるため、それまではあまり無理な運動は避けます。 3 カ月以降ジョギングやジャンプなどのスポーツ動作を開始して、8 カ月以降のスポーツ競技復帰を目指します。 また、前十字靭帯断裂はスポーツでのジャンプや切り返しといった動作で発生しやすいため、それらの動作時に膝が内側に入らないようにするなど、再発を予防するための動作を習得することも重要です。 手術をしない場合もリハビリが大切 前十字靱帯損傷が一部分でも、手術をしなければ全治は難しいですが、老後のことを考えると膝にかかる負担をできるだけ減らすことが大切です。 前十字靱帯損傷の影響で、膝の力が抜けたように急に曲がる「膝くずれ」や膝の不安定さが生じるため、対策として太ももの前の筋力を強化します。 椅子に座って膝をゆっくり曲げ伸ばしたり、膝を伸ばした状態で膝の下にタオルを引いて押しつぶす運動をしたりして筋力トレーニングをしましょう。 前十字靱帯断裂は、正しい治療で全治させて復帰を目指そう 前十字靭帯断裂を全治させるには手術をする必要があります。 そして手術後に正しい順序でリハビリをすることで、再発のリスクを減らして、スポーツなどに復帰をすることが可能になります。しっかり医師や理学療法士などの専門スタッフから指導を受けながら、正しい治療で全治を目指しましょう。 以上、前十字靭帯断裂による全治までの期間についてと、その後の入院期間、リハビリについて記させて頂きました。参考になれば幸いです。 No.S090 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 靭帯損傷、スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、靭帯損傷をはじめスポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
最終更新日:2024.05.21 -
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前十字靭帯損傷とは?軽度から重度までの症状と治療法 スポーツ選手にとって代表的な怪我の1つである前十字靱帯損傷。 よく耳にする怪我ですが、「軽度でも手術が必要なの?」と治療について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。今回は、前十字靱帯損傷について、軽度から重度までの症状や治療法を解説します。 前十字靱帯の役割や損傷の原因 まずは前十字靱帯について解説し、前十字靱帯損傷の病態や原因を紹介します。 前十字靭帯は膝の関節を安定させる重要な靱帯 膝の関節はスネの骨(脛骨:けいこつ)と太ももの骨(大腿骨:だいたいこつ)からなり、肩関節や足の付け根にある股関節に比べ、骨同士の固定が弱い構造をしています。 そこで骨と骨をつなぎ合わせて関節を安定させる、4本の靱帯(じんたい)が重要な役割を果たしています。その中の1つが前十字靱帯で、脛骨が大腿骨に対して前の方にずれないように制御する役割を持っています。 前十字靭帯損傷の原因の多くはスポーツ 前十字靭帯損傷はバスケットボールやサッカー、スキー、ラグビーなどのスポーツ中に多くみられます。 その原因は接触型(コンタクト)と非接触型(ノンコンタクト)に分けられます。 2つのうち多いのが非接触型で、バスケットやサッカー、スキーなどジャンプや切り返しの多いスポーツで以下のような動作が損傷の引き金になります。 ・ジャンプからの着地 ・方向転換 ・急なストップ また、接触型はラグビーや柔道などのコンタクトスポーツで膝に直接的な衝撃が加わり損傷するケースを言います。 スポーツ以外でも交通事故が原因として損傷する場合もあります。 前十字靱帯の損傷は安静では元に戻りにくい 前十字靱帯損傷の一番の特徴は、「正常に戻りにくい」という点です。 そのため、靱帯の損傷が軽いからといって、筋肉の怪我や骨折のように安静にしていれば治るという可能性が少ないとされています。 前十字靱帯損傷の症状 前十字靱帯損傷の症状は受傷から経過した時間や重症度によって異なります。 受傷直後 受傷の直後にみられる症状は「膝の痛み」と「プツッという靱帯が切れるような音」です。この音は受傷する本人にはっきりと自覚されることが多く「ポップ音」と呼ばれます。 また、膝の力が抜けたように、急激に膝が曲がってしまう膝くずれが起こります。 受傷から数時間後 受傷から時間が経過していくと靱帯損傷による出血・炎症で腫れたり、熱をもったりします。 前十字靱帯は関節の内にある靱帯です。そのため、出血した血液が関節の中にたまる関節血症が起こり、注射で血液を吸引することができます。 また、膝を完全に曲げ伸ばしをしたりすることが難しくなります。膝の腫れは筋肉の働きを妨げるため、徐々に膝の周りにある筋力の低下を引き起こします。 受傷から数日後以降 前十字靭帯だけの損傷の場合、受傷時にみられたような痛みや腫れは徐々に軽減していき、1ヶ月ほどで日常生活に支障が出ないほどになることも多いです。 しかし、症状の改善は時間の経過とともに損傷時に生じた出血や炎症が治まっただけで、損傷自体は回復していません。 そのため、膝がグラグラするような不安定さが残ったり、膝くずれがおこったりします。損傷が重度であるほど、このような症状が強くみられます。 また、前十字靱帯損傷が重症な場合、膝関節の衝撃を吸収する役割を持つ半月板(はんげつばん)の損傷や骨折を合併することがあります。そのような場合は、受傷から時間が経過しても、痛みや膝の動きの制限が残ることがあります。 前十字靱帯損傷の治療法 前十字靱帯損傷における治療は「手術による治療」と手術を行わない「保存療法」に分けられます。 前十字靱帯損傷は手術を選択する場合が多い 前十字靱帯損傷が軽度であっても、靱帯は修復されないため膝の不安定さが残り続けます。放置すると膝への負担が強まり、半月板の損傷や関節の変形などにつながります。 そのため、スポーツに復帰をしたり、膝に負担のかかる仕事をしたりする場合は手術が行われます。また、損傷が重度だったり、他の部分の損傷を合併したりして、日常生活でも膝くずれを繰り返すような場合も手術が適応されます。 手術は前十字靱帯の代わりに使用する人工的に靱帯を使用する再建術(さいけんじゅつ)が行われます。靱帯の再建には筋肉が骨につく部分である腱(けん)を使用します。 手術後は8〜10ヶ月後にスポーツに復帰できることが多いと言われています。 年齢や活動量を踏まえて保存療法をする場合もある 長期的な視点では、靱帯が損傷したままだと将来の怪我につながったり、活動的な動きが制限されたりするため、年齢が若い場合は靱帯の再建手術をするケースが多いです。しかし、活動量が低く、損傷が軽度であれば日常生活に支障がなく過ごせることも少なくありません。 そのため、中高齢者で日常生活に支障がなかったり、スポーツや仕事で膝に負担をかけなかったりする場合は手術をしないこともあります。 保存療法としては、膝の関節を支える装具やサポーターを使用したりして膝を安定させて、膝にかかる負担を少なくします。また、自家製のサポーターとして、膝周辺の筋力を鍛えることがあります。 特に太ももの前にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の筋力強化が重要です。この筋肉は膝を伸ばす筋肉ですので、前十字靱帯損傷後にみられる膝くずれへの対策になります。 まとめ・前十字靱帯損傷は放置せずに適切な治療を選択しましょう 前十字靱帯損傷は受傷直後に、はっきりとした症状がみられるものの、軽度の損傷の場合は症状が改善していくことも少なくありません。しかし、靱帯の損傷は治りにくく、放置すると膝に負担がかかり続け、別の怪我につながる可能性があります。 そのため、自己判断で放置せずに、整形外科を受診して正しい診断と治療をしてもらいましょう。 No.089 監修:医師 坂本貞範 ▼ 靭帯損傷に対する再生医療 当院の再生医療は、靭帯損傷にも対応する最先端治療です
最終更新日:2024.08.30 -
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膝へのヒアルロン酸注射が効かない!?効果がないと感じた場合をご説明します 膝のご病気、痛みをかかえている方で、定期的に膝にヒアルロン酸の注射を受けている方は非常に多くおられます。その中で、『最初の頃、注射をすれば膝の痛みがひいたのに、最近は効かなくなってきた』『注射しても効かないどころか、余計にひどくなった気がする』という経験をされている方も少なくないのではないでしょうか? 膝のヒアルロン酸注射が効かなくなる原因と、効果が乏しいときの対処法について紹介していきます。 膝の痛みにヒアルロン酸注射で痛みが軽減する 『ヒアルロン酸』とは、水分をたくさん含む物質で、我々の身体の色々な場所で様々は役割を担当している物質です。目や皮膚に対しては潤いを保つように働きかけています。関節の中では動きをよくする潤滑油のような役割を担っています。 ヒアルロン酸を治療のために使用する場面はたくさんあります。眼の乾燥にもヒアルロン酸の目薬を行いますし、最近では美容目的に皮膚にヒアルロン酸の注射を行うこともあります。 色々な用途に用いられるヒアルロン酸ですが、膝にヒアルロン酸の注射を行う必要がある病気も多くあります。その中で、代表的なのが「変形性膝関節症」です。膝にヒアルロン酸注射を行うことの一番の目的は、膝関節の動きを滑らかにするためです。 もともと、膝の関節の中はヒアルロン酸をたくさん含んでいる滑液という物質で満たされています。この滑液という液体が膝の滑らかな動きを保つのに重要な役割を担っています。 しかし、年齢を重ねることや、外傷や他の疾患などの影響で、滑液の中のヒアルロン酸の量が減ることがあります。ヒアルロン酸の量が減ってくると、膝を滑らかに動かすことが難しくなってしまいます。すると、膝にある骨や軟骨がこすれて、次第に膝に痛みが出現するようになります。 このような場合にヒアルロン酸注射を膝に行うことで、膝の動きが滑らかになり、その結果、痛みを軽減させることが可能になります。 https://youtu.be/c76WELu1YHE?si=jOZaGw_k92o_cYPF ヒアルロン酸注射が効かない|病気が進行している可能性 変形性関節症も初期の頃にヒアルロン酸注射を行うと動きも滑らかになり、痛みも速やかに軽減したり、改善することが多くあります。しかし、病気が進行し、膝の変形が重度になってくると、ヒアルロン酸注射をしても効果が得られ難くなってきます。 これは、ヒアルロン酸注射自体の問題や治療の失敗などではなく、例えば膝自体に炎症がある場合、ヒアルロン酸注射は、効かないことが多くあります。さらに膝に感染があるときは、ヒアルロン酸注射をすること自体が余計に症状を悪化させてしまうこともあります。 変形性膝関節症は、年齢を重ねると進行する病気なので、誰でも変形が強くなっていく可能性はあるのですが、体重が重かったり、もともと運動習慣がなかったりすることも、変形が進行する原因になるとも言われています。 膝の変形性関節症の重症度や膝の組織を評価するために、病院では、レントゲン検査やM R I検査などの画像検査が行われます。M R I検査では、膝の軟骨や靭帯、半月板という組織が傷ついていないかも診ることもできるため治療方法の選択をするためにも非常に重要な検査です。 膝へのヒアルロン酸注射が効かなくなったら ヒアルロン酸注射は、はじめは効いても徐々に効かなくなるときがあります。そのためには、ヒアルロン酸注射以外の治療法を併用していくことも大事です。膝変形性関節症には、病院に受診しなくても自分自身で行える治療があります。体重が重い方については、体重を減量することも治療のために非常に重要です。 その他には運動療法を実施することも非常に大事であると言われており、規則正しい有酸素運動や筋力トレーニング、関節可動域運動を実施して継続していくことが大事です。膝をサポーターで保護することや、テーピングを実施することも推奨されていますので実施していくのがよいでしょう。 また、超音波を用いて行う超音波療法や、温める温泉療法なども推奨されています。 膝に炎症があるときは、ヒアルロン酸の注射ではなく、ステロイドという薬を膝に注射する必要があることもあります。また炎症を抑える薬を飲む必要があることもあります。その中でリハビリなど保存療法を進めていくことになります。 重症になってしまい、注射が効かない状態になると手術が必要になります。 ヒアルロン酸が効かなくなった ▼ ステロイド薬の投与 ▼ 炎症を抑える薬 ▼ リハビリの継続 症状が進行すると手術(人工関節)が必要になる ▼ リハビリ(数か月) 手術では人工関節と言い関節の代用となる部品を、実際の関節の変わりに埋め込むという治療が行われます。そのため、皮膚を切って開く必要があるため、全身麻酔で手術が行われます。 全身麻酔とは寝た状態で手術を行う麻酔の方法なので、患者さんの目が覚めた時には手術は終わっています。手術は、傷口が感染しないか、麻酔によるアレルギーなどがないかを診るためにも入院で行われます。 入院自体は数日〜数週間の期間のことが多いですが、もともとの歩行状態に戻るためには膝のリハビリが必要で、数ヶ月程度のリハビリが必要になります。 手術(人工関節)を避ける再生医療という選択肢 また、最近では手術の代わりに「PRP療法」や、「幹細胞治療」という新しい先端治療を選択するできるようになってきました。PRP療法は、患者さんの血液から抽出した「血小板血漿(P R P)」を傷んでいるところに注射し、「幹細胞治療」は、ほんの少しの脂肪を採取し、その中から幹細胞を抽出、数千から億の単位まで培養し、増やした細胞を患部に注射で投与します。 再生医療 ・幹細胞治療 ・PRP療法 https://youtu.be/W2JZQekWJ8w?si=ftQZD5z4fREGLlAt どちらも患者さんの自然治癒力を高めて治療するもので手術や入院の必要はありません。弱った部分、痛んだ部分を修復くする「再生医療」です。 PRP療法、幹細胞療法、共に副作用はほとんどなく、患者さんのお身体の負担が非常に少ない治療法です。 詳しくは、お問い合わせください。 まとめ・膝へのヒアルロン酸注射が効かない!?効果ないと感じたら読んで欲しいこと 膝へのヒアルロン酸注射は膝の動きを滑らかにするために非常に有用な治療法です。 最初、効果があっても、治療の過程で効果が乏しくなる可能性があります。それは治療の失敗やヒアルロン酸注射自体の問題ではなく、膝の状態が良くないということも考えられます。 そのため、効果が乏しいのにも関わらず、漫然と注射を重ねるのは良くないと思われます。その場合は、ヒアルロン酸の注射以外の治療を考えるべきかもしれません。 現在では再生医療(幹細胞治療、PRP療法)といった先端医療も考慮できます。 いずれにしましてもヒアルロン酸の注射の効果が以前に比して減ったように感じているなら、漫然と治療を継続するのではなく、医療機関をはじめ、かかりつけ医など、専門家に相談し、評価を受けて、適切な治療に切り替えを検討してはいかがでしょうか。 ただ再生医療は、先端医療であるため厚生労働省から認められている限られたクリニックでしか受けることができない治療方法です。手術も入院も避けることができる身体にやさしい治療方法です。興味があればお問い合わせください。 以上、膝へのヒアルロン酸注射が効かない!その原因と対策について記させて頂きました。参考になれば幸いです。 No.073 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が膝の治療を変える!ヒアルロン酸が効かなくなったらお問い合わせください! 変形性膝関節症や半月板損傷、その他膝の不具合や痛みに新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療 ▼以下もご参照ください 膝の痛みに最新の治療法!再生医療(幹細胞治療とPRP療法)について
最終更新日:2024.08.30 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
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- 靭帯損傷
膝の水を抜く理由と注意すべき合併症について解説します 多くの方を悩ませる「膝の痛み」。膝痛の症状が長期にわたると日常生活に支障をきたすようにもなってきます。このような膝の痛みを抱える方によくある症状のひとつに「膝に水が溜まる」というものがあります。 この症状のある方は医療機関を受診した際に膝に溜った水を抜く処置を受ける場合が往々にしてあります。この記事では、主に膝に溜った水を抜いたあとの注意点について医師が解説したいと思います。 なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 膝の水はなぜ溜まるのか? 膝の関節は、関節包というもので覆われ、更にその中には、滑膜と言われる膜があり、関節がスムーズに動くための潤滑油のような役割を果たす「関節液」が存在します。この関節液は、健常者においても常に作られながら吸収され、一定の量になるように調整されています。 これが半月板損傷や、変形性関節症など関節の炎症をはじめとして、骨折や何らかの感染や外傷、靭帯損傷、痛風、偽痛風、関節リウマチなどといった原因により関節液が作られるスピードが吸収されるスピードを超えてしまうことがあります。 これにより「膝に水が溜まる」という症状が起こります。 膝に水が溜る原因(病気) ・半月板損傷 ・変形性関節症 ・靭帯損傷 ・痛風、偽痛風 ・関節リウマチ 何らかの関節の炎症 ・骨折 ・何らかの感染や外傷 なぜ膝に溜った水を抜くのか?その理由 膝の痛みで医療機関を受診した際に膝の水を抜くことがありますが、医療用語でこの診療行為を「関節穿刺」といいます。 この関節穿刺には主に診断と治療の2つの目的があります。 ①膝に水(関節液)が溜まる原因を調べるとき(診断) ・膝に水が溜まる原因はさまざま ・原因によって適切な治療が変わる可能性がある。 ・膝の水(関節液)を検査して水が溜まる原因を知る(関節穿刺) ②関節の痛みを和らげるとき(治療) ・膝に水がたまると、たまった水が膝の痛みをより悪くする可能性がある。 ・膝の水を抜いて、状況に応じて関節内注射を行い症状を和らげることがある。 ・治療目的に関節穿刺(膝の水を抜く)を行う場合があります。 膝の水を抜いた後の注意|合併症 膝の水を抜いた(関節穿刺)後に注意することは、関節穿刺によって起きる別の症状や病気、つまり合併症です。そこで、以下に一般的な合併症について解説します。 ①感染 ・通常、関節内は無菌状態です。 ・関節穿刺を行うことで細菌が関節内に入ってしまうことがあります。 ・細菌が関節内に入り感染を起こす可能性があります。 ・症状は、膝が赤く腫れたり、熱持ったり、痛みを伴うことがあります。 通常、関節穿刺を行った後数時間は穿刺を行ったことによる痛みが生じることがありますが、これが長引く場合はこの感染の可能性があります。 一般的な目安としては48時間以上持続する症状、48時間以内でも悪化を伴う症状を認めた場合には感染などの可能性を考慮し、可能な限り処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ②出血 ・関節穿刺で関節周囲の血管を傷つけることがあります。 ・血管が傷つくと出血を起こすことがあります。 ・多くの場合は細い血管の損傷にとどまり、自然に止まることがほとんどです。 ・穿刺後に貼付していたテープなどを剥がした際に出血が起きても、しばらく圧迫すれば止血が可能です。 他の持病などで血液をサラサラにする薬を飲まれている方や、もともと血が固まりにくい病気の方、またより大きな血管を損傷してしまった場合などは自然に止血できないことがあります。 ※圧迫しても止まらない出血は、速やかに処置を行った医療機関にご相談ください。 ③その他 ・アレルギー反応は、関節内に薬剤を注射した場合に起こりやすい合併症。 ・数時間以内に、発疹・呼吸困難感・腹痛などの多彩な症状を生じます。 ・多くの場合は投与後すぐに発症し、医療機関で発見される場合がほとんどです ・まれに帰宅後に発症することもあるため注意してください。 血管以外の神経、靭帯、腱などの損傷も稀な合併症の例です。穿刺のみでこれらの組織に重大な損傷をきたすことは稀ですが、薬剤注入などを伴うと症状をきたす可能性があります。 膝の水を抜いた後に注意したいこと 膝の水を抜いたあと、気になる症状が出現した場合、どこまで様子を見て良いのか判断に迷うことがあると思います。悩んだ場合はまず処置を行った医療機関に相談することをお勧めしますが、一般的な観察項目について解説します。 ・症状が長く続いている 通常、痛みなどの症状は処置をしたことにより生じたものであれば数時間から1日程度で消失します。しかし、なかなか症状が消失せず持続期間が長い場合は合併症を疑うサインとなります。 ・症状がどんどん悪くなっている 処置からあまり時間が立っていなくても、どんどん悪化する症状は合併症を疑うサインになります。通常徐々に改善する痛みが、ぶつけたなどのきっかけもなく悪くなる場合は速やかに相談しましょう。 まとめ・膝の水を抜く理由と注意すべき合併症について 今回の記事では膝に水がたまる病気と、水を抜いたあと注意すべきことについて解説しました。 症状が出現した際に自己判断で放置せず気になる場合は速やかに処置を行った医療機関に相談しましょう。処置を行った医療機関が時間外などで対応できない場合は夜間救急などの受診を検討しましょう。 https://youtu.be/IyBCkOjTPi8?si=NqgIWpsWtI96eVEh No.072 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が膝の治療を変える! 変形性膝関節症をはじめ膝の障害に対する新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療 ▼以下もご参考にしてください 膝の上の筋肉、ふとももが痛む場合の対策と考えられる病気
最終更新日:2024.08.30 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 関節リウマチ
- 靭帯損傷
- 膝部、その他疾患
膝関節は、大腿骨、脛骨および腓骨、また膝蓋骨などが組み合わさって作られています。日常生活で安定して自由な伸展運動などがスムーズに実行できるよう半月板や複数個の靭帯などを始めとする周囲の構造物が補助しています。 これらの膝を形成している組織が「スポーツなどの外傷」、あるいは「加齢」や「自己免疫異常」などの要因に伴って異常をきたして損傷が起こると、膝の裏の部位で疼痛(痛み)が生じることに繋がります。 【膝の裏が痛い原因の代表例】 ・スポーツなどの外傷 ・加齢 ・自己免疫異常 そこで、「膝の裏が痛い原因、考えられる病気と対策」と題して解説してまいります。 膝の裏が痛いときに考えられる9つの病気 膝の裏が痛む際に原因として考えられる膝疾患には、「変形性膝関節症」や「関節リウマチ」の他、膝部位に存在する「靱帯の損傷」などがあります。 膝の裏が痛い場合に考えられる疾患 ・変形性膝関節症 ・半月板損傷 ・ベーカー嚢腫(のうしゅ) ・関節リウマチ ・靭帯の損傷(事故や、スポーツなど) 以下でそれぞれ詳しく解説していきます。 変形性膝関節症 中高年の女性によくみられます。 関節の軟骨がすり減り、膝の内側や膝の裏からふくらはぎにかけて痛くなり正座もしにくくなります。変形が進行してひどくなるとO脚になり、いよいよ歩行困難になると人工関節の手術となります。 膝の関節が硬くなり、膝を伸ばすときに裏が痛くなったりします。 膝の屈伸の時に『ミシミシ』『ゴリゴリ』とした音が鳴る時もあります。 膝に水が溜まると、膝の裏から太ももの前側にかけて全体的に痛くなります。(文献1) ▶変形性膝関節症についてこちらもご参考にされてください。 半月板損傷 膝関節のクッションの役目があり、スポーツや怪我、加齢に伴って断裂などの損傷が生じます。 膝が伸びなくなるロッキングを起こしたり、正座やしゃがんだり、立ったりするときに膝の裏側が痛くなります。 ベーカー嚢腫 何らかの原因で膝関節が炎症を起こし、増えた関節液が膝の裏の滑液包に流入し袋状のコブになったものを言います。ゴルフボールぐらいの大きさにボッコリ腫れることもあり、大きくなると膝の裏が突っ張った状態になります。 放置していて腫れが治ることもありますが、痛みが強いときは、針で水を抜くこともあります。 変形性膝関節症、半月板損傷、関節リウマチ、化膿性関節炎などが原因とされています。(文献2) ▶ベーカー嚢腫についてこちらでも詳しく解説していますのでよろしければご覧ください。 関節リウマチ 関節リウマチの患者数は、現時点でおおむね80万人と言われており、その発症原因は自己免疫系統の異常とされていて、自分自身の軟骨組織や骨成分を攻撃し、破壊することとなり、関節部位に炎症を引き起こします。(文献3) 特に膝裏部に疼痛症状を認めると考えられます。この病気を発症しやすい年齢は、30代~50代前後の中年齢層で、性別に関しては男性よりも女性で発症率が高いことが指摘されています。 初期の段階では、手足における特に手指部の関節領域が左右対称に腫れる以外にも、倦怠感や、食欲不振など自覚症状が合併することも懸念されています。 関節リウマチの特徴 ・原因:自己免疫系統の異常 ・年齢:30代~50代前後 ・性別:女性の発症率が高い 靭帯損傷 膝関節には4つの靱帯が存在して重要な役割を担っています。 そのうち膝の左右両側にあるのが内側側副靱帯、外側側副靱帯で、前後部位には前十字靱帯、後十字靱帯が走行しています。 例えば、交通事故に遭う、もしくはスポーツ活動中に怪我を負うなど、受傷を引き起こすことによって大きな物理的衝撃が膝関節に負荷となってかかると、膝の靱帯部に強い損傷や断裂などが起こり、膝の裏側が痛むことが考えられます。 特に後十字靱帯の損傷の場合、膝裏を伸ばすとピキッとした痛みが出ることが多くみられます。(文献4) 通常の場合、内側側副靱帯と前十字靱帯が外力によって損傷を受けやすいと言われていますが、受傷してから3週間前後の発症してまだ間もない頃には膝痛と膝の伸展運動がしにくいなどといったサインが認められます。 受傷後1か月程度、しばらく経過した段階では、膝関節内部に血腫が貯留して腫れの所見が目立つこともありますし、損傷部位によっては膝関節の不安定さが少しずつ顕著化してくることもあります。 膝の裏側の筋肉の損傷 膝の裏には膝窩筋があり、身体が硬かったり無理な運動や動きで筋肉や腱が損傷します。 損傷すると次のような症状が出ます。(文献5) ・しゃがむと痛い ・しゃがんで立つと膝の裏が痛い ・膝を伸ばすとふくらはぎや太ももの裏が痛い ・膝を曲げると膝の裏が痛い ・階段上り下りの時に膝の裏からふくらはぎが痛い 腰椎ヘルニア・坐骨神経痛 太ももの後ろからふくらはぎにかけて痛みがある場合は、腰椎ヘルニアや坐骨神経痛も考えられます。 痺れやズキズキした痛みを感じることもあります。安静時に痛みがあるのも特徴です。 リンパによる膝の裏の痛みや腫れ 同じ姿勢で長時間いたり、肥満や食事の偏りでリンパの流れが悪くなり膝の裏に痛みや腫れが生じます。 リンパ管には体の老廃物を運ぶ役目があり、リンパ節でその老廃物が処理されます。リンパ管の流れが悪くなることで、リンパ節が腫れて痛くなります。 反張膝 太ももの前と後ろの筋肉のバランスが悪かったり、大腿四頭筋や腸腰筋、前脛骨筋の筋力の低下で起こります。 そのため膝が後ろに飛び出るような形に曲がるため、膝の裏が痛くなるのです。 膝の裏が痛いときの治療法 前章では、主に膝裏が痛む代表疾患に関して触れてまいりました。 ここからはそれぞれの疾患について対処法や治療法を解説していきます。 変形性膝関節症の治療法は幹細胞やPRPによる再生医療 初期の頃は、ヒアルロン酸注射やリハビリ、内服で様子を見ます。 変形が進むと、骨切り術や人工関節置換術などが行われます。最近では幹細胞やPRPによる再生医療も行われていて新しい治療の選択肢として注目されています。 半月板損傷の治療法は手術か再生医療 日常生活に支障が出たり、スポーツ復帰を目指す場合は関節鏡による手術が行われます。断裂部を切除や縫合して治療します。 こちらも新しい選択肢として再生医療が注目されています。 ベーカー嚢腫の治療法は水を抜くか自然に治す 自然に治ることもありますが、膝の裏の腫れや突っ張りや違和感がある時には水を抜くこともあります。 関節リウマチは病勢進行を可能な限り抑制 関節リウマチに対する治療について、近年では特に目覚ましく進歩しています。 早期に適切な治療を行えば関節の変形も抑えられて、痛みも生活する上で特に困らない程度にもなります。 関節リウマチの病勢進行を可能な限り抑制して、症状を少しでも改善させるためには普段から関節に大きな負荷をかけないように認識しながら対策を講じることが重要な観点となります。 例えば、携帯電話を操作するときに片手ではなく、両手を使って動作すると、手首の関節にも優しい姿勢になりますし、デスクワークするときに両腕部分を机やクッションなどで支えるように対策すると関節にかかる負担を軽減させることが期待できます。 膝の靭帯損傷の治療法は手術治療 膝の靭帯損傷については、急激にストップするような動作をした際、あるいは方向を突然転換するときに膝を強く捻ることによって発症します。 一般的に、外側側副靱帯や内側側副靱帯は、膝が左右に動くのを制御しています。前十字靱帯は膝から足側の部分が前方に突出しないようにストップをかける役割を担っており、後十字靱帯でも前十字靭帯と協調して膝が安定的に可動するように機能しています。 これらの靱帯組織が仮に断裂して受傷してしまうと、膝の安定性が減り、下半身における踏み込み動作や切り返しの作業が難しく実施できなくなるのみならず半月板損傷など合併する場合もあります。 内側側副靭帯損傷の場合には手術せずに治療するケースが多く、後十字靭帯が損傷を受けたケースでは、ほとんどの症例で手術治療が適応となります。 膝受傷して靱帯を損傷した直後は、迅速にアイシング(冷却)を行ってから患部を固定し、患部に極力負担が掛からないように免荷処置をしましょう。 症状によっては、手術治療を検討する場合もあります。その際は、術後に理学療法士やトレーナーなど専門職と相談しながら状況に応じて適切なストレッチやリハビリテーションを実践して、筋力を鍛えて早期復帰できるように努めることになります。 特に、膝の再受傷や二次的な外傷を回避するために、体幹を鍛える、柔らかいボールなどを膝下で転がすように動かす、あるいは座位の状態になって膝を伸展させる、そして大腿部の筋を鍛えることなどが主なリハビリ療法の内容となります。 膝の裏が痛い場合のストレッチの仕方 膝の裏をストレッチしたりマッサージを行うことで、筋肉の柔軟性を持たせ血流促進にもつながります。 ふくらはぎの筋肉と太ももの後ろの筋肉を中心にストレッチやマッサージの仕方を紹介しています。注意点として、ストレッチによる痛みを感じたときには、直ちにかかりつけの医師との相談をお勧めします。 https://youtu.be/WQZfXd6s1iA 膝の裏が痛いときにとるべき行動 結論、膝の裏が痛いときは早めに医師へ相談するべきです。 膝の裏が痛い原因(病気)はさまざまで、比較的軽度なものから、自身では気づけない思いもよらぬ重度なものまで存在します。 また、「そのうち治るだろう」「大した症状ではないだろう」と自身で判断し、膝の痛みを放置してしまうと歩行や日常生活に大きな支障をきたしてしまいます。最悪の場合には歩くことが次第に困難となり、後に治療したとしても後遺症が残ってしまう可能性もあります。 膝の裏の痛みを軽視せずに最寄りの医療機関に受診するか、リペアセルクリニックに気軽にご相談ください。 まとめ|膝裏の痛みが長引くときは迷わず治療を 今回は、膝の裏が痛い原因で考えられる病気と対策について詳しく解説してきました。 膝裏部が痛む原因としては、主に変形性膝関節症、関節リウマチや、膝靱帯損傷などが考えられます。 関節リウマチについては薬剤の治療成績が著しく向上していますし、初期段階できちんと診断して的確な治療を実践すれば治癒が期待できる病気になってきました。膝靱帯損傷した際には早期的にアイシング(冷却)して患部固定で症状緩和に繋がります。 このような対処策を自分なりに実践しても症状が軽快しない際や膝裏部の疼痛症状がひどくて悪化するような際には、早期的に整形外科など専門医を受診するように心がけましょう。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 監修:医師 坂本貞範 参考文献 文献1^ Øiestad BE, Juhl CB, Culvenor AG, Berg B, Thorlund JB. Knee extensor muscle weakness is arisk factor for the development of knee osteoarthritis: an updated systematic review and metaanalysis including 46 819 men and women. Br J Sports Med. 2022 Mar;56(6):349-355. doi:10.1136/bjsports-2021-104861. Epub 2021 Dec 16. PMID: 34916210. 文献2^ Abate M, Di Carlo L, Di Iorio A, Salini V. Baker's Cyst with Knee Osteoarthritis:Clinical and Therapeutic Implications. Med Princ Pract. 2021;30(6):585-591. doi:10.1159/000518792. Epub 2021 Aug 2. PMID: 34348320; PMCID: PMC8739941. 文献3^ Maderbacher G, Greimel F, Schaumburger J, Grifka J, Baier C. Kniegelenk bei rheumatoiderArthritis – aktuelle orthopädisch-chirurgische Therapieoptionen [The knee joint in rheumatoidarthritis-current orthopaedic surgical treatment options]. Z Rheumatol. 2018 Dec;77(10):882-888.German. doi: 10.1007/s00393-018-0534-2. PMID: 30194490. 文献4^ Schüttler KF, Ziring E, Ruchholtz S, Efe T. Verletzungen des hinteren Kreuzbands [Posteriorcruciate ligament injuries]. Unfallchirurg. 2017 Jan;120(1):55-68. German. doi: 10.1007/s00113-016-0292-z. Erratum in: Unfallchirurg. 2017 Jun;120(6):530. doi: 10.1007/s00113-017-0353-y. PMID: 28058447. 文献5^ Covey DC. Injuries of the posterolateral corner of the knee. J Bone Joint Surg Am. 2001Jan;83(1):106-18. doi: 10.2106/00004623-200101000-00015. PMID: 11205847.
最終更新日:2024.09.03