-
- 上肢(腕の障害)
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
「脛に痛みを感じるようになり、ランニングが辛くなってきた」「疲労骨折かもしれないと思うけど、どのくらい休めば治るの?」 このような悩みを抱えるランナーは少なくありません。疲労骨折は、ランニングを楽しむ上で大きな障害となります。適切な治療と予防策を理解することが、健康的なランニングライフを送るために不可欠です。 この記事では、疲労骨折の原因や症状、自然治癒のプロセス、そして予防策について詳しく解説します。正しい知識とケアを通して、疲労骨折を乗り越え、ランニングを楽しみ続けるための参考になれば幸いです。 疲労骨折の理解 疲労骨折は、繰り返しのストレスによって骨に微小な亀裂が生じる状態を指します。 まずは、疲労骨折の原因と症状を解説します。 疲労骨折の原因と典型的な症状 疲労骨折は、以下のような要因が重なると発生しやすくなります。 ・急激なトレーニング量の増加 ・不適切なランニングフォーム ・硬いランニングサーフェス ・足に合わない靴の使用 ・骨密度の低下 疲労骨折の症状は、以下のようなものがあります。 症状 説明 運動時の痛み 特に、特定の部位の痛み 安静時の痛みの持続 休んでいても痛みが続く 腫れや圧痛 患部が腫れたり、押すと痛みを感じる 皮膚の発赤や熱感 患部の皮膚が赤くなったり、熱を持つ これらの症状が継続する場合は、疲労骨折の可能性が高いと考えられます。 疲労骨折の診断プロセス 疲労骨折の診断は、以下のようなプロセスで行われます。 診断手順 内容 問診 症状や発症時期、トレーニング状況などを詳しく聴取 身体診察 圧痛や可動域制限、腫れなどを確認 画像検査 X線検査、MRI検査、骨シンチグラフィなど 早期の疲労骨折では、X線検査で異常が見つからない場合があります。 一方で、MRI検査や骨シンチグラフィは、より早期の段階で診断が可能といわれています。 自然治癒のプロセス 多くの疲労骨折は、適切な休息とケアにより自然治癒が期待できます。ただし、骨折の部位や重症度によって、治癒に必要な期間は異なります。 自然治癒に必要な条件と推奨される休息期間 多くの疲労骨折は、適切な休息とケアにより自然治癒が期待できます。ただし、骨折の部位や重症度によって、治癒に必要な期間は異なります。 自然治癒に必要な条件と推奨される休息期間 疲労骨折の自然治癒には、以下の条件が必要です。 ・十分な安静と休息 ・患部への負荷の回避 ・適切な栄養摂取 一般的に、疲労骨折の自然治癒には6~8週間程度の休息期間が推奨されます。ただし、骨折の部位や重症度によって、必要な期間は異なります。医師の指示に従って、適切な休息期間を設けることが大切です。 サポートとしての栄養と補助的治療 自然治癒を促進するためには、適切な栄養摂取が重要です。以下のような栄養素が骨の健康維持に役立ちます。 栄養素 食べ物 カルシウム ・乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど) ・小魚(しらす、小あじなど) ・大豆製品(豆腐、納豆など) ・緑黄色野菜(小松菜、ブロッコリーなど) ビタミンD ・魚(鮭、さんま、いわしなど) ・きのこ類(しいたけ、まいたけなど) ・卵黄 タンパク質 ・肉類(鶏肉、豚肉、牛肉など) ・魚介類(鮭、まぐろ、えびなど) ・大豆製品(豆腐、納豆、油揚げなど) ・卵 ・乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど) これらの食べ物を適切に組み合わせて摂取することで、骨の健康維持に必要な栄養素を効果的に補えられるでしょう。 また、補助的治療として、以下のようなものがあります。 治療法 種類 効果 アイシング - 痛みと腫れの緩和に効果的 物理療法 電気刺激療法 痛みの軽減と筋肉の緊張緩和 超音波療法 骨の治癒を促進する可能性あり マッサージ療法 血行促進と筋肉の緊張緩和 ストレッチング 関節可動域の維持と筋力低下の予防 運動療法 筋力強化と関節機能の回復 これらの補助的治療は、医師や理学療法士と相談しながら取り入れるのが良いでしょう。 治療期間の詳細 疲労骨折の治療期間は、骨折のタイプや部位によって異なります。ここでは、様々な疲労骨折のタイプと、それぞれの治療期間の目安を紹介します。 様々な疲労骨折タイプと治療期間の比較 以下は、代表的な疲労骨折のタイプと治療期間の目安です。 骨折のタイプ 治療期間の目安 脛骨(シンスプリント) 4~8週間 中足骨 6~8週間 大腿骨頸部 8~12週間 腰椎 6~12週間 ただし、これらは一般的な目安であり、個人差があります。治療期間は、症状の改善具合や画像検査の結果を見ながら、医師が判断します。 早期回復を支援するためのリハビリテーション技術 疲労骨折の回復を早めるためには、適切なリハビリテーションが重要です。リハビリテーションは、必ず医師の許可を得てから開始し、理学療法士の指導のもとで段階的に進めていきます。骨折部位のリハビリには特に注意が必要です。 種類 目的 具体的な方法(例) 注意点 段階的な運動負荷 徐々に運動量を増やしていく ・低強度から開始し、耐久性をつける ・痛みに注意しながら、負荷を徐々に上げる 骨折部位に過度な負荷をかけないよう、医師の指示に従う 全身的な筋力トレーニング 骨折部位周辺および全身の筋力維持・強化 ・体重負荷や抵抗運動を取り入れる ・患部周辺の筋肉だけでなく、全身の主要な筋群をトレーニング ・コアスタビリティトレーニング(体の中心部の筋肉を鍛える運動)の導入 骨折部位の筋力トレーニングは、完全に治癒するまで控える 関節可動域訓練 関節の柔軟性維持 ・ストレッチや筋緊張の緩和を促す ・患部の関節および全身の主要な関節を動かす運動 骨折部位の関節は、医師の許可があるまで動かさない バランス訓練 再発予防とパフォーマンス向上に有用 • 片脚立ちや不安定な面(例:バランスボール)での立位保持 ・動的なバランス運動 ・プロプリオセプション(体の位置感覚)トレーニング 骨折部位に体重をかけない方法から始める 代償動作の修正 不適切な動作パターンの改善 ・歩行分析と修正 ・日常生活動作の評価と指導 骨折部位を保護しながら行う このアプローチにより、骨折部位を適切に保護しつつ、全身のコンディショニングと再発予防に焦点を当てたリハビリテーションが可能となります。常に無理のない範囲で、徐々に活動レベルを上げていくことが大切です。痛みがある場合は必ず中止し、医師に相談してください。 日常生活での予防と管理 疲労骨折を予防し、再発を防ぐためには、日常生活での適切な管理が欠かせません。トレーニング方法の見直しとライフスタイルの調整が重要です。 予防策:適切なトレーニング方法と負荷管理 疲労骨折を予防するためには、以下のようなトレーニング上の工夫が有効です。 ・徐々にトレーニング量を増やす(週10%以下の増加が目安) ・十分なウォームアップとクールダウンを行う ・適切な休養日を設ける ・クロストレーニングを取り入れる 適切なトレーニング方法を取り入れることが、疲労骨折の予防に役立ちます。例えば、インターバル走では高強度と低強度の運動を交互に行うことで、過度な負荷を避けつつ心肺機能を強化できます。ヒルトレーニングでは緩やかな上り坂を取り入れることで、筋力強化と負荷の分散を図れます。 また、水泳や自転車などのランニング以外の運動を取り入れるクロストレーニングは、特定の部位への負担を軽減する効果が期待できます。 さらに、ランニングフォームもチェックしましょう。足はかかとから着地し、重心を前に移動させるようにします。腕は脇に近づけ、リズミカルに振ります。上体は背筋を伸ばし、顔を上げて前を見ます。 シューズ選びも重要です。つま先に1cm程度の余裕があるサイズを選び、自分の体重や走行距離に合ったクッション性を確認します。また、アーチのタイプに合ったサポート機能も必要です。 専門家のアドバイスを元に自分に合ったものを選びましょう。 疲労骨折の再発を防ぐためのライフスタイルの調整 疲労骨折の再発を防ぐには、以下のようなライフスタイルの調整が役立ちます。 ライフスタイルの調整 具体的な方法 バランスの取れた食事 ・カルシウム豊富な食品(乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜など)を摂取する ・ビタミンD含有食品(鮭、さんま、きのこ類、卵黄など)を取り入れる 適度な日光浴 ・1日15~30分程度、日中の太陽光を浴びる 禁煙 ・ニコチン代替療法(ニコチンパッチ、ガムなど)を活用する ・禁煙外来や禁煙プログラムに参加する ・禁煙に理解のある友人や家族に協力を求める 過度なアルコール摂取の制限 ・1日の飲酒量を、男性は20g、女性は10g未満に抑える ・アルコールを含まない飲み物を積極的に摂取する ・アルコールの代わりにストレス解消法を見つける 疲労骨折の再発を防ぐには、適切な栄養摂取が欠かせません。 カルシウムは1日800mg程度、ビタミンDは400~800IU程度の摂取が推奨されています。 カルシウムは乳製品、小魚、大豆製品などから、ビタミンDは魚類、きのこ類、卵黄などから効率的に摂取することが可能です。 また、適度な日光浴も重要です。1日15~30分程度、週に2~3回行うのが適切とされています。朝10時から午後2時までの間が理想的ですが、紫外線の強い夏場は早朝や夕方の時間帯を選ぶようにしましょう。 さらに喫煙は骨密度を低下させる要因の一つです。禁煙のためには、ニコチン代替療法や禁煙外来の利用、禁煙アプリの活用などの方法があります。 また、定期的な骨密度検査を受け、骨の健康状態をチェックすることも大切です。 まとめ:疲労骨折の治療と予防のための完全ガイド 疲労骨折は、ランナーにとって深刻な問題ですが、適切な治療と予防策によって治りやすくなるでしょう。自然治癒を目指すためには、十分な休息とケアが不可欠です。 総合的な回復と健康維持のアプローチ 疲労骨折の回復と予防には、以下のような総合的なアプローチが有効です。 ・早期発見と適切な治療 ・十分な休息と栄養摂取 ・段階的なリハビリテーション ・トレーニング方法の見直しとライフスタイルの調整 これらを組み合わせることで、効果的な回復と再発予防が可能となります。 定期的な医療チェックの重要性 疲労骨折の早期発見と予防には、定期的な医療チェックが欠かせません。特に、リスクの高い人は、より注意深く医療チェックを行う必要があります。 リスクの高い人とその具体的な対策 リスクの高い人 具体的な対策 女性アスリート(特に月経不順や低体重の方) ・3~6ヶ月ごとの骨密度検査 ・婦人科での定期検診 ・ホルモンバランスのチェック 急激にトレーニング量を増やした人 ・トレーニング計画の細やかな調整 ・専門のコーチや理学療法士との連携 過去に疲労骨折の経験がある人 ・より頻繁な受診や検診 ・代替トレーニングの導入 骨密度が低い人 ・6ヶ月ごとの骨密度検査 ・カルシウムやビタミンDの摂取量チェック 偏った食生活や栄養不足の人 ・専門家による食事指導 ・栄養状態の定期的なチェック これらのリスクの高い人に限らず、以下のような場面では医療機関を受診しましょう。 ・疲労骨折の症状が疑われる場合 ・トレーニング計画の見直しが必要な場合 ・定期的な骨密度検査(リスクの高い人は6ヶ月ごと、それ以外の人は1年ごと) 疲労骨折の早期発見のために、運動時の痛み、安静時の痛みの持続、腫れや圧痛などの症状に注意が必要です。これらの症状が見られた場合は、早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。 医療専門家と連携しながら、自分に合った予防策を見つけていくことが大切です。疲労骨折は、ランナーにとって起こる可能性のある問題ですが、適切な知識とケアによって、その影響を最小限に抑えられる可能性があります。 骨の回復を促進し、再発を防ぐためには、総合的なアプローチが重要です。これには、適切な休養、段階的なトレーニング再開、栄養管理、そして医療専門家による適切な治療が含まれます。 ランニングを長く楽しみ続けるために、自分の体に注意を払い、リスク管理を行うことが重要です。定期的な健康チェックと、体の変化に敏感になることで、潜在的な問題を早期に発見し、対処することができるでしょう。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 MSDマニュアル家庭版,骨折の概要 日本スポーツ整形外科学会,スポーツ損傷シリーズ,疲労骨折 日本臨床整形外科学会,疲労骨折・腰痛" 日本生活習慣病予防協会,骨粗鬆症 ドクターズファイル,疲労骨折 日本骨折治療学会,骨折の解説,疲労骨折 厚生労働省,アルコール MSDマニュアル,足の疲労骨折 e-ヘルスネット,喫煙によるその他の健康影響 e-ヘルスネット,カルシウム 日本人の食事摂取基準(2020年版),②ビタミン D,p178-187 農林水産省,みんなの食育,大切な栄養素カルシウム 国立環境研究所,体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定-札幌の冬季にはつくばの3倍以上の日光浴が必要-
最終更新日:2024.09.19 -
- 上肢(腕の障害)
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
正しい理解と適切なケアで、健康な腰を取り戻そう 「重い物を持ち上げたら、急に腰に激痛が走った」「医師から腰椎の疲労骨折の疑いがあると言われたけど、どうすればいいの?」 このような悩みを抱える方は少なくありません。 特に、重労働に従事する人にとって、腰椎の疲労骨折は、日常生活や仕事に大きな影響を与え、不安や苦痛を伴う深刻な問題となるでしょう。適切な治療と予防策を理解することが、健康な腰を維持するために不可欠です。 この記事では、腰椎疲労骨折の原因や症状、治療法、そして再発防止策について詳しく解説します。正しい知識と適切なケアを通して、再発のリスクを減らし、健康的な生活を送ることができるでしょう。 腰椎疲労骨折の概要 腰椎疲労骨折は、腰の骨(腰椎)に生じる骨折の一種で、重労働や繰り返しの負荷が主な原因となります。 腰椎疲労骨折とは何か? 腰椎疲労骨折は、腰椎の「椎体」と呼ばれる部分に微小な亀裂が生じる状態を指します。椎体は、腰椎を構成する主要な骨の部分で、体重を支える重要な役割を担っています。一度の強い衝撃ではなく、長期的な負荷の蓄積によって引き起こされます。重い物を繰り返し持ち上げるような作業は、腰椎疲労骨折のリスクを高めます。 発症する主な原因と症状 腰椎疲労骨折の主な原因は、以下のとおりです。 重労働や繰り返しの負荷 不適切な姿勢や体の使い方 加齢に伴う骨密度の低下 骨粗鬆症などの基礎疾患 腰椎疲労骨折の症状は、単なる腰痛とは異なり、特有の特徴があります。 安静時にも持続する鈍い痛み 特定の姿勢や動作で増悪する痛み 腰の特定の場所を押すと痛みを感じる(圧痛) 腰の特定の場所をトントンとたたくと痛みを感じる(叩打痛) これらの症状は、時間の経過とともに徐々に悪化する場合が多いです。最初は軽度の痛みで済んでいても、放置すれば日常生活や仕事に大きな支障をきたすようになります。 特に、建設作業員のような重労働に従事する方は、症状が悪化しやすい傾向にあります。重い物を持ち上げる動作を繰り返すことで、腰椎への負担が蓄積し、椎体の微小な亀裂が進行してしまうのです。 そのため、疲労骨折が疑われる場合は、早期の診断と適切な治療が不可欠です。症状が軽度のうちから、医師の指導の下で安静や薬物療法、リハビリテーションなどを開始することが大切です。適切な治療を行うことで、痛みの軽減と日常生活の質の向上が期待できます。 症状の特定と初期対応 腰椎疲労骨折の症状に気づいたら、早めの対処が大切です。症状を見逃さないよう注意し、速やかに行動しましょう。 腰椎疲労骨折の典型的な症状 腰椎疲労骨折の症状は、以下のとおりです。 症状 説明 腰の痛み 特に、特定の部位に限局した痛みが特徴的 お尻の痛み 片側または両側のお尻の痛み、座った際の痛みなど 太ももの痛みやしびれ 太ももの前面や外側の痛みやしびれ、感覚の変化など 運動時や体重負荷時の痛みの増悪 動作によって痛みが悪化する 安静時の痛みの持続 休んでいても痛みが持続する 腰の可動域制限 腰の動きが制限され、硬くなる 圧痛や叩打痛 腰の特定の場所を押したりたたいたりすると痛む 腰椎疲労骨折の症状は、腰の痛みだけでなく、お尻や太ももにも現れるケースがあります。これは、腰椎の骨折により、神経が圧迫されることで起こります。 お尻や太ももの痛み、しびれ、筋力低下などの症状は、腰椎疲労骨折のサインかもしれません。これらの症状が継続する場合は、医師の診察を受ける必要があります。 早期発見と適切な治療が、スムーズな回復につながるでしょう。 医師は、症状や検査結果を総合的に判断し、症状の重症度や原因に応じて、最適な治療方針を提案します。 疲労骨折を疑ったらすぐに行うべきこと 腰椎疲労骨折が疑われる場合、まずは以下の初期対応を行いましょう。 対処法 説明 安静 無理な活動を控え、医師の指示に従って適切な期間の安静を取る 痛みの緩和 アイシング(冷却)や医師の指示に従った鎮痛剤の使用で痛みを和らげる 医師の診察 早めに受診し、詳しい症状の聞き取りと必要な検査で正確な診断を得る 医師の診察では、症状や経過を詳しく聞き取り、必要な検査を行って正確な診断を下します。適切な診断に基づいて、適切な治療方針を決定します。 腰椎疲労骨折は、初期対応が適切であれば、痛みの軽減と日常生活動作の回復が期待できます。しかし、症状を放置すると、骨折がさらに進行し、回復が遅れかねません。疲労骨折が疑われる場合は、早期の診断と適切な治療が不可欠です。 治療オプションと回復プロセス 腰椎疲労骨折の治療は、重症度によって異なります。保存的治療から外科的治療まで、医師と相談しながら最適な方法を選択しましょう。 保存的治療法:安静と物理療法 多くの場合、腰椎疲労骨折は保存的治療で改善します。安静と物理療法が治療の中心です。 保存的治療の内容(例) 説明 安静 4~8週間の安静期間が一般的。この間は腰への負担を避ける コルセットの使用 疲労骨折の状態によってはコルセットを装着する。腰椎を固定し、安静を補助するための装具であり骨折部位の安定化と痛みの軽減に役立つ 物理療法 腰椎の可動域維持や筋力強化を図る。姿勢の改善やボディメカニクス(体の動かし方)の指導も行う 腰椎疲労骨折の急性期には、無理な活動を控え、安静を保つことが大切です。安静期間中は骨折の状況に応じてコルセットを使用し、腰椎への負担を最小限に抑える場合もあります。 デスクワークの場合は、長時間の座位は避け、こまめに休憩を取りましょう。また、重量物を扱う作業は控えるべきです。 安静期間後、医師の許可が出たら、徐々に活動量を増やしていきます。急激な活動の再開は避け、腰への負担を徐々に増やしていくことが大切です。 物理療法は、医師の指示に従って、適切な時期に開始します。初期は、ストレッチや軽度の筋力トレーニングから始め、徐々に強度を上げていき、必要に応じて日常生活動作の指導をします。 腰部の疲労骨折からの回復期には、腰への負担を最小限に抑えることが重要です。 以下は、日常生活での動作例です。 ベッドから起き上がる際は、腰を反らさないよう注意し、横向きになってから腕の力を用いて上体を起こします。腰に力を入れず、体幹全体を一つの単位として動かすようにします 椅子から立ち上がる際は、両手で椅子の座面を押し、腰を前後に動かさずに膝を伸ばして立ち上がります。腰に負担をかけないよう、脚の力を使って立ち上がることが大切です 重い物を持ち上げる際は、腰を曲げるのではなく、膝を曲げて腰を落とし、背筋をまっすぐに保ったまま持ち上げます。腰を捻らないよう、体全体で向きを変えるようにします このように、日常生活のさまざまな場面で、腰への負担を減らし、腰部の可動を制限するための動作の仕方を身につけることが大切です。特に「腰を反らない」「腰に力を入れない」「腰を捻らない」ことを意識しましょう。 理学療法士が、患者一人一人の状態や疲労骨折の部位、程度に合わせて、適切な指導を行います。回復の各段階に応じて、徐々に活動レベルを上げていくことが重要です。 また、痛みに対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や筋弛緩薬、鎮痛薬などが処方されます。これらの薬は、炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待されます。 外科的治療法の検討とその時期 保存的治療で十分な改善が見られない場合や、重度の骨折、神経症状を伴う場合などは、外科的治療が検討されます。手術の方法は、骨折部位の固定や骨移植などです。 手術は、痛みの軽減、脊柱の安定化、神経症状の改善などを目的として行われます。 手術後は、リハビリテーションが重要です。理学療法士の指導の下、徐々に活動レベルを上げていきます。 手術が必要かどうかは、症状や画像所見、全身状態などを総合的に判断して決定されます。一般的な判断基準は、以下のとおりです。 保存的治療を3〜6ヶ月間行っても、十分な改善が得られない場合 骨折部位の不安定性が高く、脊柱の変形や神経症状の悪化が懸念される場合 骨折によって神経が圧迫され、重篤な神経症状が現れている場合 ただし、手術の適応は個々のケースによって異なります。医師が患者の状態を詳しく評価し、手術のメリットとリスクを十分に説明した上で、患者と相談しながら治療方針を決定します。 日常生活での予防策と再発防止 腰椎疲労骨折を経験した人にとって、再発防止は重要でしょう。日常生活での姿勢の改善や、仕事中の安全対策が欠かせません。 日常生活での姿勢の改善と運動療法 腰椎疲労骨折の予防には、以下のようなポイントがあります。 適切な姿勢の保持 重量物の正しい持ち上げ方の習得 定期的な運動による腰部や体幹の筋力維持 骨密度の維持(バランスの取れた食事、適度な日光浴など) 日常生活の中で、腰への負担を減らす工夫を心がけるのが大切です。 腰椎疲労骨折は、早期発見と適切な治療が重要です。症状を見逃さないようにすることが大切です。医師や理学療法士と相談しながら、しっかりと治療に取り組み、痛みを和らげ、仕事や趣味活動への復帰を目指しましょう。 また、継続的な予防策を実践することで、将来的な疲労骨折のリスクを抑えられやすくなります。 仕事中のリスク管理と安全な作業手順 仕事中のリスク管理と安全な作業手順は、腰椎疲労骨折の予防に欠かせません。 特に重労働に従事する人は、以下の点に注意をする必要があります。 項目 ポイント 詳細 1. 適切な重量制限の順守 ・持ち上げる物の重量が自分の体力に合っているか確認する ・可能な限り、重量物を分割して運ぶ ・重量制限を超える物は、同僚と協力して持ち上げる 自分の体力を過信せず、無理をしないことが重要です。重量物を扱う際は、常に安全を優先しましょう。 2. 重量物を持ち上げる際の正しい体の使い方 ・身体の重心を低くし、物を体に近づけて持ち上げる ・膝を曲げ、腰ではなく脚の力で持ち上げる ・急な動作は避け、ゆっくりと持ち上げる 正しい姿勢と技術を用いることで、腰への負担を大幅に軽減できます。定期的に正しい持ち上げ方の訓練を受けることをお勧めします。 3. 休憩の確保と作業の分散 ・長時間の連続作業は避け、こまめに休憩を取る ・同じ姿勢を長時間続けない ・作業内容を変化させ、特定の部位への負担を避ける 適切な休憩と作業の分散は、疲労の蓄積を防ぎ、怪我のリスクを低減します。作業スケジュールを適切に管理することが重要です。 4. 必要に応じた補助具の使用 ・重量物の運搬には、台車や手押し車を使用する ・高所での作業には、脚立や昇降台を使用する ・重い物を持ち上げたり、力を入れて押したりする作業では、腰ベルトの着用を検討する 適切な補助具の使用は、作業効率を上げるだけでなく、身体への負担を軽減します。腰ベルトは、重量物を扱う際に腰部を安定させ、怪我のリスクを減らすのに役立ちます。ただし、正しい使用方法を守ることが重要です。 さらに、定期的な健康チェックを受け、腰の状態を確認することも重要です。 仕事と腰の健康は、切り離せない関係にあります。自分の体を守るためにも、リスク管理と予防策の実践を心がけましょう。疑問や不安があれば、主治医や職場の安全管理者に相談しましょう。 長期管理と健康の維持 腰椎疲労骨折を予防し、健康な腰を維持するには、長期的な視点が必要です。定期的な検診と継続的な運動が鍵となります。 定期的な医療チェックアップの重要性 腰椎疲労骨折のリスクがある人は、定期的な医療チェックアップを受けることが強く推奨されます。これにより、腰椎の状態を詳しく評価し、疲労骨折の兆候を早期に発見することができます。チェックアップでは、以下のような検査が行われます。 検査項目 目的 腰椎X線検査 腰椎の構造や骨折の有無を確認する 骨密度測定 骨密度を評価し、骨粗鬆症の有無を調べる 血液検査(骨代謝マーカーなど) 骨の新陳代謝の状態を評価する これらの検査結果を総合的に評価することで、腰椎疲労骨折のリスクを判断し、必要に応じて予防策や治療方針を決定します。 定期的なチェックアップの間隔は、個人のリスク因子によって異なります。一般的には、以下のような場合に、より頻繁なチェックアップが推奨されます。 過去に腰椎疲労骨折の既往がある 骨粗鬆症と診断されている ステロイド薬を長期間使用している 喫煙や過度のアルコール摂取などの生活習慣がある 定期的な検診を継続することで、腰椎疲労骨折の早期発見と予防に役立つでしょう。 腰の健康は、私たちの日常生活の質に直結する重要な問題です。定期的な医療チェックアップを活用し、自分の腰の状態を把握することから始めましょう。 継続的な体力強化と予防のための運動 長期的な腰椎疲労骨折の予防には、継続的な体力強化が欠かせません。以下のような運動を日課に取り入れることをおすすめします。 ウォーキングやスイミングなどの有酸素運動 腰椎周囲の筋力トレーニング 柔軟性を高めるストレッチ バランス運動 運動の種類 効果 具体例 有酸素運動 全身の血行を促進し、体重管理に役立つ ウォーキング、水中歩行、エアロバイク 体幹筋力トレーニング 腰椎を支える筋肉を強化し、安定性を高める プランク、サイドブリッジ、腹筋運動 下肢筋力トレーニング 腰部での動作を下肢で補い、全体的な安定性を向上させる スクワット、ランジ、レッグプレス ストレッチ 筋肉の柔軟性を維持し、腰椎への負担を軽減する ハムストリングストレッチ、腰回りのストレッチ バランス運動 転倒防止と姿勢の改善に役立つ 片足立ち、バランスボールでの運動 運動の種類や強度は、自分の体力レベルや健康状態に合わせて医師と相談しながら、調整しましょう。無理のない範囲で、継続的に運動を続けることが長期的な健康維持につながります。腰椎疲労骨折は、重労働に従事する人にとって深刻な問題ですが、適切な治療と予防策を実践することで、リスクを最小限に抑えられるでしょう。 正しい知識を身につけ、自分に合ったケア方法を見つけることが重要です。健康的な生活習慣を身につけ、仕事もプライベートも充実した毎日を送りましょう。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 MSDマニュアル家庭版."骨折の概要" 日本スポーツ整形外科学会."スポーツ損傷シリーズ-疲労骨折" 日本臨床整形外科学会."疲労骨折・腰痛" 日本脊椎脊髄病学会."脊椎脊髄疾患について・主な症状" 日本生活習慣病予防協会."骨粗鬆症” 村山医療センター."腰椎分離症" 教えて!先生!腰痛の専門医による安心アドバイス."腰の疲労骨折・脊椎分離症(腰椎分離症) 日本脊髄外科学会."腰椎分離症・分離すべり症" 徳島県医師会." 腰椎分離症 -病期・病態に応じて治療-" 日本整形外科学会."「腰椎分離症・分離すべり症」" 厚生労働省."腰痛予防対策” 厚生労働省."職場における腰痛予防対策指針及び解説" ドクターズファイル."疲労骨折" 医療法人大場整形外科."腰椎疲労骨折" 日本骨折治療学会."骨折の解説-疲労骨折"
最終更新日:2024.09.19 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
- 上肢(腕の障害)
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
幻肢痛の全て!原因から治療法、心理的影響まで徹底解説 幻肢痛(げんしつう)とは、事故や病気で四肢を切断しなければならなくなった方が、切断して失ったはずの腕や足の痛みやしびれを感じる現象です。 別名ファントムペインとも呼ばれる神経障害性疼痛です。 「切断したはずの足が痛くて眠れない」 「失った部分にしびれを感じる」 日常生活がままならないほどの痛みやしびれを感じるケースもあり、幻肢痛は心理的にも大きな負担となります。痛みは、不快で嫌なもののため、早くどうにかしたいと考える人が多いでしょう。 また、痛みに耐える姿を見る家族や周囲の方も、同様の気持ちです。幻肢痛は、四肢を失ったほとんどの方が経験するといわれており、珍しい現象ではありません。脳卒中や脊髄損傷などの運動麻痺でも生じる場合があります。 今回の記事では、幻肢痛の原因や治療法、心理的影響について徹底解説します。幻肢痛に悩まされている本人だけでなく、その方を支える身近な方にも知ってもらいたい内容です。ぜひ、最後までお読みください。 幻肢痛の主な原因は脳内の認識と感覚の不一致 以前は、幻肢痛の原因は心理的なものだと考えられていました。 現在、幻肢痛の主な原因として、脳内にある身体の地図が書き換わってしまうために、脳内の認識と感覚の不一致が起こると考えられています。 切断されてしまったために、あったはずの手足からの感覚が脳へ伝わらなくなります。そのため、脳内の感覚運動をつかさどる部分で認識の不適応を起こすのです。その不適応が、痛みとしてあらわれる原因と考えられています。 なぜ脳内の身体の地図が書き換えられてしまうのか、なぜ脳が不適応を起こしてしまうのか、詳しく解明はされておらず、不明な点がまだまだ多いのが現状です。脳が不適応を起こしてしまう原因を解消するため、鏡療法をもとにVRを使った「バーチャル幻肢」やAIで脳を解析し「脳のリプログラミング」を使った最新の治療法が研究されています。 幻肢痛の治療法の主な4つとは? 現在、一般的におこなわれている幻肢痛の治療方法は、主に4つあります。 ・薬物療法 ・鏡療法 ・電気刺激療法 ・リハビリテーション ひとつの治療法で痛みが緩和され、一定の効果が得られる場合もありますが、さまざまな方法を組み合わせて治療を進めていくケースが多いです。 <薬物療法> 薬物療法では、以下のような種類の薬を使用します。 ・鎮痛薬 ・抗けいれん薬 ・抗うつ薬 ・抗てんかん薬 ・抗不整脈薬 オピオイド系鎮痛薬(モルヒネやドラマドール)が使われるケースもありますが、依存や乱用のリスクが高く副作用も懸念されるため、使用は慎重におこなうべきだと考えられています。 局所療法として、カプサイシンクリームの塗布やリドカインスプレーの噴霧などがおこなわれる場合があります。 いずれにしても、薬物療法は作用と副作用のバランスを考え投与するのが望ましいため、主治医と十分コミュニケーションを取りましょう。 <鏡療法> 鏡療法は、ミラーセラピーとも呼ばれている方法です。健常な四肢を幻肢があるかのように鏡に映します。健常な四肢を動かすと、鏡にも同様に映るため、あたかも幻肢を動かしていると錯覚するのです。 これを繰り返すうちに、「幻肢が企図どおりに動いている」と脳が認識するようになります。知覚と運動の情報伝達が脳内で再構築され、幻肢痛が軽減していきます。 具体的な方法は以下のとおりです。 身体の正面中央付近に適切な大きさの鏡を設置します。 切断部位が見えないようにし、健常肢が鏡に映るように調整します。 鏡に映った健常肢の像がちょうど幻肢の位置と重なるようにします。 健常肢側から鏡を見ると、幻肢があるかのように鏡に映ります。 その状態で健常肢でさまざまな動きをし、鏡の像を集中して見ます。 鏡療法をおこなう時間は決められていませんが、15分~30分程度おこなうのが一般的です。 ただし、疲労状況や集中できる時間を考慮して、調整しましょう。 <電気刺激療法> 電気刺激療法には、3つの種類があります。 ・脊髄刺激 ・視床刺激 ・大脳皮質刺激 脊髄刺激を与えると、痛みのシナプスが脳に伝わりにくくなります。刺激を与えると、痛みの伝達を抑制する物質が増加するため、神経の興奮を抑制して痛みの緩和につながるのです。 また、大脳皮質にある一時運動野や視床へ電気刺激を与えても、幻肢痛を和らげるケースが報告されています。刺激を与える部位は、切断部位や神経の残っている部分によって治療方法が異なります。 <リハビリテーション> 義肢や装具には、失った機能や役割を補うだけでなく、幻肢痛を和らげる効果があります。個人に合わせて作るため作成には時間がかかり、義肢や装具を使うためにはリハビリが必要です。 義肢や装具の装着は、鏡療法と同様に脳に失った四肢を認識させるため、幻肢痛が和らぐと考えられています。そのため、義肢の装着が日常的になると、幻肢痛は消失していく場合が多いです。 ただし、幻肢痛がひどく、義肢や装具の装着ができない場合もあります。リハビリは、医師をはじめ、理学療法士や義肢装具士など、医療者と相談しながら進めていきましょう。幻肢痛は、常に一定に感じているわけではなく、突然襲われる場合もあります。 寝ていても飛び起きてしまうような突然の痛みに襲われたり、幻肢が締め付けられるように感じたり、痙攣している、幻肢がねじれる、しみるなど、感じ方や程度はさまざまです。 数年で幻肢痛がなくなる方もいれば、長年痛みと闘い苦しめられる方もいます。そのため治療法の選択は、医師をはじめとするさまざまな医療者と相談し、それぞれの痛みの程度やライフスタイルに合わせた継続できる治療法の選択が必要でしょう。 幻肢痛治療経験者の中には、幻肢痛治療に成功し、徐々に痛みが緩和され消失した方もたくさんいます。 「なるべく痛みではなく、他に意識が向くようにしていると徐々に痛みが引いた」 「義足をつけてリハビリを続けていると幻肢痛が緩和した」 幻肢痛はすぐになくすことはできませんが、治療を続け徐々に痛みから解放された経験がある方は多くいます。 しかし、長年幻肢痛に悩まされているケースもあります。幻肢痛の治療には、痛みとの戦いと根気強い治療を続けていくモチベーションが必要です。 幻肢痛と心理的影響 一般的に痛みは不快な感覚であり、その状態は人の心理に大きな影響を与えます。痛みは主観的なものであるため、感じ方はそれぞれで個人差も大きいです。特に、幻肢痛は周囲から十分に理解してもらえない場合も多いでしょう。 幻肢痛患者は、痛みによって、不安や怒り、恐れなど、さまざま感情が入り混じっている心理状態です。 以下の表は、四肢の一部を失った方のニーズです。 自己実現のニーズ 自尊心のニーズ 四肢切断をしても目標が達成できる。 自分の希望や役割があり、社会に適応する。 四肢切断をしてもやりたいことができる。 四肢の切断で引け目を感じない。 愛情のニーズ 安全のニーズ 身体的ニーズ 家族や社会の一員だと感じられる。 自分の立場の保証。 断端部の痛みや幻肢痛がない。 他人を尊重し、意識を向けられる。 収入の確保。 食事・排泄・移動などの方法がある 四肢を切断した方は、ストレスの上手なコントロールと、どのようにしてニーズを満たしていくかが課題となります。ニーズが満たされない状態は、いわゆる我慢をしている状態です。いっぺんにすべてのニーズを満たすことはできませんが、満たされない状態が長く続くと、ストレスが溜まります。うまくストレスをコントロールできなければ、ストレスフルな状態となり、以下のようなさまざまな影響が出やすくなります。 ・イライラ ・憂うつ ・集中力や思考力の低下 ・気分の落ち込み ・無気力 ・自律神経失調症状 慢性的なストレスは、痛みを過敏に感じます。そのため、ストレスが溜まった状態は、幻肢痛の悪化原因です。ストレス管理も幻肢痛のコントロールに影響を与えるため、ストレス管理や周囲からの心理的サポートも重要です。 良い精神状態を保つことで、前向きに治療に取り組む意欲にもなるでしょう。 <自分でできるストレス管理> 自分でできるストレス管理としては、以下のようなものがあります。 ・趣味に没頭する ・散歩をする ・映画やドラマを見る ・好きな物を食べる ・お風呂にゆっくりつかる 幻肢痛が悪化するようなものは避け、まずは自分ができそうなものから始めてみましょう。 <家族や支援者ができる心理的サポート> 自分が一番ストレスになっているものを考えてみましょう。 ・痛みが一番のストレスなら、痛みを取り除けるよう医師に相談する ・リハビリがストレスなら、リハビリのやり方やメニューを相談する ・生活の不自由さがストレスなら、補助グッズの使用や利用できる支援の導入を検討する 自分がストレスに感じていることは何かを、家族やサポートしてくれる人に伝えておくことは大切です。 また、精神的な状態によっては、精神科の受診やカウンセリングを受けるなども検討しましょう。 幻肢痛を乗り越え、生活の再構築をするために 幻肢痛は、四肢を切断したあとにあらわれる、失ったはずの四肢(幻肢)に痛みが生じる現象です。四肢を失った人は、痛みだけでなく、生活の中でさまざまな問題やストレスを抱えている場合が多いです。そのため、家族や周囲のサポートは重要といえます。 また、幻肢痛の治療には、麻酔科や整形外科、精神科、リハビリテーション科など、さまざまな面からの総合的なアプローチが必要です。四肢の一部を失った方が、幻肢痛を乗り越え、生活の再構築をしていくのは、とても困難な道のりでしょう。 しかし、いきいきとその人らしく生活していくためには、医療関係者だけでなく、さまざまなサポートが必要です。幻肢痛患者の交流会やVRを使った最新治療の体験会なども開かれています。 「つらい幻肢痛を乗り越えた」「今も幻肢痛と戦っている」など、同じ状況の方と交流が持てる場は大きなメリットになるでしょう。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献 著者:住谷昌彦 バイオメカニズム学会誌「幻肢の感覚表象と幻肢痛」2015年 人と情報のエコシステム インタビュー「最先端の幻肢痛治療に見る、「脳のリプログラミング」の可能性」 2022年9月22日 UTokyo 「バーチャルリアリティー治療で緩和される幻肢痛の特徴」 2019年3月29日 著者:住谷昌彦、他 「幻肢痛の脳内メカニズム」 2008年8月 UTokyo 「失った手足の痛みを感じる仕組み」 2015年9月10日 日本ペインクリニック学会 「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版」 2016年 https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/kaiin_guideline06.html 著者:緒方徹、住谷昌彦 「幻肢痛の機序と対応」2018年 脳梗塞集中リハビリセンター 「ミラーセラピー」2010年 著者:大内田裕 「幻肢・幻肢痛を通してみる身体知覚」2017年 著者:片 山 容 一 、笠 井 正 彦 「幻肢痛に対する神経(脊髄,視 床,大脳皮質)」2003年 著者:落合芙美子 日本義肢装具学会誌「義肢装具に対するチームアプローチ」P 124 1997年
最終更新日:2024.09.19 -
- 野球肘
- 腱板損傷・断裂
- 上肢(腕の障害)
- インピンジメント症候群
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
- スポーツ外傷
- 再生治療
野球選手の肩の怪我で多い野球肩には種類があります!原因と最新治療法について メジャーリーグのドジャース山本由伸選手の肩の怪我は、最新の治療方法である「再生医療」で治療できる可能性が高いといえます。 投球やバッティングなど、腕の動作を繰り返す野球選手にとって「肩の怪我」は珍しいことではありません。 肩に問題を生じたら速やかに治療を開始する必要がありますが、どのような原因で、どのような症状を呈するのかについて知っておくことも重要です。 そこで、野球選手の肩の怪我の原因や症状、治療法について解説します。また、最近注目を集めている再生医療についてもご紹介します。 野球選手の肩の怪我は野球肩が原因の可能性が高い! 野球選手の肩の怪我の主な原因は「野球肩」によるものであると考えられます。 野球肩とは、野球の投球動作のように腕を大きく振る動作を繰り返すことにより、肩関節に関わる腱や筋、骨が損傷や炎症を起こしている状態の総称です。 そして、野球肩には種類があります。 野球肩の種類 ・腱板損傷 ・上腕骨骨端線離開(リトルリーグショルダー) ・動揺性肩関節症(ルーズショルダー) ・肩甲上神経損傷 ・インピンジメント症候群 「腱板損傷」とは 肩の中にある筋肉の腱の複合体である腱板が損傷を起こしている症状で、日常生活における肩の痛みにより生活の質を大きく落とす可能性が高いです。 「上腕骨骨端線離開」とは 「リトルリーグショルダー」とも呼ばれ、成長期に起こる投球障害です。成長期における過度の投球により成長軟骨が損傷することで、投球時や投球後に痛みを生じます。 「動揺性肩関節症」とは「ルーズショルダー」とも呼ばれています。上腕骨と肩甲骨の間にある靭帯などが先天的に緩い状態にあり、その状態で肩を酷使することで周囲の組織を損傷してしまい、肩の痛みや不安定感を覚えます。 「肩甲上神経損傷」とは、 棘下筋を支配する肩甲上神経が投球動作により引っ張られる、或いは圧迫されるなどによって損傷を起こし、肩の痛みや肩の疲労感を覚えます。 「インピンジメント症候群」とは、 野球肩の中で最も多くみられる症状で、靭帯や肩峰に上腕骨頭が衝突することで腱板が挟まれ、炎症を起こすことで肩の痛みを生じます。 メジャーの山本由伸選手の肩の怪我は再生医療で早期回復を目指せる 野球選手の肩の怪我はさまざまで、その症状次第で適切な治療法は異なります。そして、概ね数週間から、長ければ年単位での肩の安静が必要です。 そこで注目されているのが「再生医療」です。 再生医療は有名野球選手も利用実績のある治療法であり、手術や入院を避けることができるため、体への負担が少なく、治療にかかる期間が短めであるというメリットがある治療法です。 肩の症状を早く改善し、スポーツへの早期復帰を目指せる可能性がある治療法として、画期的な方法です。最近非常に注目されています。 もしも、早くスポーツに復帰したいと考えるのであれば「再生医療」を検討してみる価値が大いにあります。 まとめ・野球選手の肩の怪我で多い野球肩の種類!原因と最新治療法について 野球選手にとって肩の怪我は避けられないリスクの一つですが、その中でも「野球肩」一般的に起こりえる問題です。 野球肩とは、投球動作やバッティングなど、腕を激しく使うことで肩関節周囲の筋や腱、骨が損傷や炎症を起こす状態を指します。この野球肩には、腱板損傷、リトルリーグショルダー(上腕骨骨端線離開)、ルーズショルダー(動揺性肩関節症)、肩甲上神経損傷、インピンジメント症候群など、さまざまな種類があります。 各症状は投球時や日常生活での痛み、肩の不安定感、疲労感などを引き起こし、生活の質を大きく損なう可能性があります。従来の治療法としては、痛みの軽減や肩の安静を目的としたリハビリテーションや、重症の場合は手術というものでしたが、これらの方法は長期の休養が必要な場合も多く、選手にとって大きな負担となることがあります。 そこで注目されているのが「再生医療」です。 再生医療は、体への負担が少なく、手術や入院を避けることができるため、治療期間が短縮されるというメリットがあります。この治療法は、多くの有名野球選手も実績があり、スポーツへの早期復帰を目指すための画期的な方法として今注目の最新の治療方法です。 メジャーリーグのドジャースに所属する山本由伸選手も、ぜひ再生医療を用いた治療を考えて欲しものです。なぜなら、選手生命を護ることが出来るからです。 肩の痛みや違和感を感じたら、早めの受診と適切な診断を受けることが重要です。肩の怪我を適切に治療し、スポーツを続けるためには最新の医療情報を活用し、専門医の指導を受けることが肝要です。 スポーツ選手は自分を護るためにも再生医療といった最新の治療法を知ることも大切です。 早期の回復を目指せる再生医療は、肩の怪我に悩む野球選手の救世主となり得ます。再生医療に興味があれば豊富な実績で症例数をリードする当院までお問い合わせください。 監修:リペアセルクリニック 坂本貞範 ▼肩の腱板損傷の回復を目指す再生医療とは https://fuelcells.org/treatment/shoulder/ ▼スポーツ選手の選手生命を護る再生医療をご存知でしょうか https://fuelcells.org/treatment/sports/
最終更新日:2024.09.19 -
- 野球肘
- 幹細胞治療
- 腱板損傷・断裂
- 上肢(腕の障害)
- インピンジメント症候群
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
- スポーツ外傷
- 再生治療
メジャーリーグ(ドジャース)山本由伸選手が発症!肩腱板損傷とは? 負傷者リストに入ってしまったようで心配です。野球選手にも多い肩腱板の損傷についてその原因と治療法を詳しく説明いたします。 日常生活の中で何気なく動かしているように思う肩ですが、思わぬケガが原因で強い痛みが出たり、動かせなくなったりすることがあります。 スポーツ障害でも多い腱板損傷は、そのような状態を引き起こすもののひとつです。 今回は、その腱板損傷について詳しくご紹介します。 肩腱板損傷とは?その症状について 腱板は肩に存在する筋で、板のように広がっているので腱板といいます。 腱板を構成するのは「肩甲下筋腱」「棘上筋腱」「棘下筋腱」「小円筋腱」という4つの筋肉です。これらが肩の骨を囲み、肩関節の安定性に働きかける重要な存在です。 その腱板が部分的、または完全に断裂するのが腱板損傷です。主な症状は痛みですが、軽い場合もあれば、動かせないほどの激痛、夜間に起こる痛みなど程度に差があります。 部分的な断裂では、肩を動かせないということはあまりありません。損傷が激しい場合、腕が上がらなくなったり、肩が動かしにくいという症状が出ることもあります。 肩腱板損傷の原因とは? 腱板損傷の原因について見ていきましょう。腱板損傷の原因は大きく3つにわけられます。 外傷 腱板損傷の原因で多いのが外傷、つまりケガです。転んで肩を強く打つ、手をついたときに肩に衝撃が加わるというのが腱板を傷つけてしまうことがあるのです。 オーバーユース スポーツ医療でも注目される腱板損傷ですが、ケガというよりも肩の使い過ぎが原因のことが多いです。 その代表的なスポーツが野球です。何度も繰り返しボールを投げることで、肩関節や腱板に負荷がかかってしまうのです。 加齢によるもの 加齢によって腱板損傷が起こることもあります。年齢を重ねると腱や軟骨など、身体の組織も衰えてしまいます。そのため、自分でも気が付かないうちに腱板が傷ついていることもあるのです。 肩腱板損傷の治療法とは? 肩の腱板損傷の治療法をご紹介します。近年期待されている治療方法についても見ていきましょう。 保存療法 肩の腱板損傷の治療は基本的には保存療法です。急性期には三角巾で固定し、患部の安静を保ちます。痛みや腫れがある場合は痛み止めの注射やヒアルロン注射を行うこともあります。 また、腱板が損傷した状態で無理に動かすと再発したり、ひどくなったりすることがあるので、リハビリも大切です。 手術 保存療法で痛みが改善しない、損傷がひどく肩の動きが悪いという場合には手術を検討します。損傷した腱板を手術によって直接修復するというものです。 近年は関節鏡といって皮膚を大きく切らない手術が行われています。術後1~2週間ほどで痛みが落ち着くことが多いですが、正常な肩関節の状態に戻すにはリハビリ期間を含めて6か月程度かかることが多いです。 再生医療 これまで腱板損傷の治療は保存療法と手術がメインでした。しかし、手術となれば治療やリハビリを含めてスポーツ復帰までの期間が長くなります。 そんな中、近年、腱板損傷の治療法として再生医療が注目されています。 再生医療は、自身の脂肪から採取した幹細胞を肩腱板に注射します。そして幹細胞が傷ついた腱板や組織を修復するというものです。 外科的な手術をしないで治療できるため、治療期間の短縮も期待できます。 まとめ・メジャーリーグ(ドジャース)山本由伸が発症!肩腱板損傷について 今回は肩の腱板損傷についてご紹介しました。 今回の山本由伸選手をはじめとして、肩を酷使する野球などのスポーツで使い過ぎによって肩の腱板が傷つくことがありますし、加齢によって腱板損傷を起こすこともあります。 プロの選手のように日常からケアをしていても、発症することがあるため、注意が必要です。プロ野球選手のように選手生命という問題がある場合は無理もできません。 そこで近年、治療法として注目を集めているのが再生医療です。特に幹細胞治療は、自分の幹細胞を用いるので、副作用のリスクが少なく、治療期間も短くて済むというメリットがありスポーツをされている方に最適です。 もちろん、再生医療はスポーツ選手ではなくとも有効です。 肩の痛み、肩の腱板損傷でお悩みの方は、再生医療による治療を検討してみてはいかがでしょうか。お気軽にご相談ください。 監修:リペアセルクリニック 坂本貞範 ▼肩の腱板損傷の回復を目指す再生医療とは https://fuelcells.org/treatment/shoulder/ ▼スポーツ選手の選手生命を護る再生医療をご存知でしょうか https://fuelcells.org/treatment/sports/
最終更新日:2024.09.19 -
- 上肢(腕の障害)
- スポーツ外傷
- その他、整形外科疾患
胸郭出口症候群とは?症状、原因と治療法、病気を解説します 胸郭出口症候群とは、腕を上げる動作や、上げたままの姿勢が続くと肩や腕、手にしびれや痛み、だるさなど、上肢に症状が現れる病気です。 とくに、なで肩の女性や筋トレ習慣のある男性をはじめ、野球やバレーボール、バドミントン、テニスなどのように、腕をよく回すアスリートや運動部の学生によく見られるスポーツ障害でもあります。 そこでこの記事では、胸郭出口症候群とは?と題して、その特徴や原因、リハビリや手術などの治療法について紹介しますのでご一読ください。 胸郭出口症候群の原因と症状 胸郭出口とは、手や腕を動かす神経や血管が走っている首と胸の間にある通路のことです。この通路は、首の付け根にあり、その隙間にある神経や血管が締め付けられたり、圧迫されたりすると、胸郭出口症候群の原因になります。 なお、胸郭出口にあるどの筋肉と関係するかによって、次の3つの症候群があり、胸郭出口症候群とは、下記の3つの症候群をまとめた病名なのです。 胸郭出口症候群とは以下の症候群をまとめた病名 ・ 斜角筋(しゃかくきん)症候群 ・ 肋鎖(ろくさ)症候群 ・ 小胸筋(しょうきょうきん)症候群(≒過外転症候群) 原因(動作) 胸郭出口症候群は、日常生活やスポーツで次のような動作をよく行った場合、原因となります。 胸郭出口症候群の原因(一例) ・ 野球でボールを投げる ・ テニスでラケットを振る ・ 剣道で竹刀を上下に動かす ・ 水泳のクロールで繰り返し腕を回す ・ つり革を持つ ・ 洗濯を物干し竿に干す ・ 腕や肩の筋トレを繰り返す ・ なで肩や片肩でバッグを持つなどの姿勢不良 上記のうち4つ目までは、そのスポーツでの独特な動きが発症原因となっています。 スポーツ障害と胸郭出口症候群 先程紹介したように、胸郭出口症候群は、なで肩や良くない姿勢、日常動作の動きのクセ(リュックサックや肉体労働など)によって起きるといわれています。 一方で、野球やバレーボール、バドミントンなど、プレーの中で腕を上げたり、よく腕を回転させたりするスポーツでも発症する病気です。そのため、オスグッド病、シンスプリント、野球肘など、繰り返し同じ動きによって痛みが続く「スポーツ障害」の一種でもあります。 日頃からスポーツや運動、トレーニングなどをしている方で上肢や肩、腕や手の違和感がある場合、胸郭出口症候群の可能性があることを知っていただき意識の上、注意しておきましょう。 胸郭出口症候群の「症状」 胸郭出口症候群になると腕を上げる動作を取ることで、肩や腕、手、肩甲骨周辺などに「しびれ」や「痛み」、「だるさ」が生じます。 症状が進行すると、前腕から手の指(とくに小指側)に強い痛みや、しびれ、ピリピリ感が走る、握力が低下する、指先を使う作業が不器用になる、といった症状も加わります。 このように胸郭出口症候群を発症すると上肢に痛みやしびれが生じ、運動麻痺の症状が重なるは、日常生活に支障をきたす病気です。 人によっては、手の甲の骨の間が凹んだり、手のひらの小指側の小指球筋と呼ばれる盛り上がりが痩せてくることもあります。さらに、血行不良によって腕が白っぽくなったり、青紫色になったりするケースも少なくありません。 胸郭出口症候群の「治療法」 胸郭出口症候群の治療には、次の 4つがあります。とくに 3 番目のリハビリは、整形外科に通院して効果が期待できる方法なのでぜひチェックしましょう。 胸郭出口症候群の治療法 1. 生活指導 2. 薬物療法 3. リハビリ 4. 手術 1. 生活指導 原因となっている日常生活での腕を挙げる動作やスポーツ・運動を控えることが大切です。また、正しい姿勢を維持したり、生活動作を腕に負担のないように見直す必要もあります。 ストレッチやエクササイズなどの運動療法で筋肉の緊張や血行不良を改善する方法も有効です。 2. 薬物療法 痛みを和らげる消炎鎮痛剤(ロキソニン・ボルタレンなど)や神経の痛みに対する薬(プレガバリン・ミロガバリンなど)といった内服薬の処方が一般的です。 痛みが強い場合は、ブロック注射を行うこともあります。 3. リハビリ(理学療法) 整形外科に通院して、理学療法士から正しい姿勢を学んだり、手技で胸郭出口周辺の筋肉の緊張を和らげたり、神経や血管への刺激を緩めたりして痛みの緩和を目指します。 生活指導と理学療法を合わせて受けられるケースが多いため、今後の予防にもつながる方法です。 4. 手術 症状が重くて日常生活やスポーツに大きな支障をきたしているときは、原因となっている筋肉や肋骨の一部を切除して隙間を広げ、神経や血管の圧迫を取る手術を選択することがあります。 近年、手術のほかカテーテルによる治療が行われるケースも増えています。 まとめ:胸郭出口症候群とは?原因と治療法についても詳しく解説! 今回紹介した胸郭出口症候群には、次のようなポイントがありました。 胸郭出口症候群の原因 ・ 腕を挙げると動作で肩や腕、手のしびれや痛みが生じる ・ 胸郭出口周辺の神経や血管の圧迫が原因 ・ 日常動作や姿勢、スポーツが原因で発症する ・ 治療法は内服薬やリハビリが中心 ・ 重度の場合は手術を選択することもある 胸郭出口症候群は、日常の腕を上げる動作や、スポーツなどで発症しやすい疾患です。原因は主に胸郭出口における神経や血管の圧迫であり、特になで肩の女性やスポーツ選手に多く見られます。 症状は上肢にしびれや痛みが生じ、日常生活に支障をきたします。治療法は生活指導や薬物療法、リハビリ、手術などですが、リハビリを用いた治療が大切です。また、手術は症状が著しい場合に選択される場合があります。適切な治療法を選択し、生活指導やリハビリを積極的に行うことが重要です。 普段から姿勢が気になっている方、スポーツを楽しんでいる方で腕や手のしびれや痛みがある場合、胸郭出口症候群かもしれません。 この記事を読まれて、身体の違和感に気が付かれたなら、症状が進行する前に、整形外科を受診しましょう。 以上、参考にしていただければ幸いです。 No.115 監修:医師 坂本貞範 ▼胸郭出口症候群について以下も参考にされませんか 【胸郭出口症候群】自分でできる!症状チェック法を紹介!
最終更新日:2024.05.20 -
- 上肢(腕の障害)
- テニス肘
- スポーツ外傷
- 肘関節
テニス肘とは、テニス経験がなくても発症します!肘の痛みでお悩みの方へ テニス肘をご存知でしょうか?テニスをされている方は、テニスエルボーと言った方が早いかもしれません。 テニスという名前がついていることからテニスをしない人には関係がないと思われがちなテニス肘。実は、テニスをしていても、していなくても、その経験に関係なく、頻回に繰り返し腕を使う仕事やスポーツをしている人にも発症する病気です。 ただ、最初は軽い痛みながら、放置したまま原因を絶たずにいると、悪化しかねません。 今回は、テニス肘について、治療法と症状、原因についてご説明いたします。この記事を読んでいただくことで、テニス肘に対する理解が深まり、適切に対処できるようになれば幸いです。 テニス肘とは? テニス肘とは正式には「外側上顆炎」といい、一般的には、ラケットを強く振るテニスプレーヤーが発症しやすいと言われています。しかし、肘の痛みを伴うこの症状は、スポーツ選手だけでなく、誰にでも発症する可能性があります。 特に前腕に負荷がかかる動きを繰り返すと、上腕の骨に筋肉が付着する腱が炎症を起こし、同じ動きを続けるうちに腱が変性し、最終的には切れてしまいます。 テニス肘は、腕を曲げたり、まっすぐにしたり、ものを握ったり、持ち上げたり、振ったりするときに、「肘の外側」に痛みを起こす可能性があります。早く治療したり、その症状を起こした原因を排除すれば症状を軽減させることができます。 どんな人がテニス肘になるのか? テニス肘は、30才から50才の人に多く、男女性別に関係なく幅広く発症する可能性があります。プロのスポーツ選手だけでなく、前腕、手首、手を激しく、かつ反復的に使う活動を定期的に行っている人は、誰でもテニス肘になる可能性があります。 テニス選手のほかにも、野球やソフトボールの選手、テニスやラケットボールの選手なども危険因子です。 例えば組立ラインの工場労働者や自動車整備士、肉屋、料理人、大工、清掃員、塗装工、配管工、歯科医、造園家、音楽家など、特定の職業に就いている人も、テニス肘になりやすいと言われています。 テニス肘の原因 手首や指を曲げたり伸ばしたりして、腕を繰り返し動かすと、前腕の筋肉が疲労してきます。テニス肘と関係のある腱は、「肘の外側」にある骨の隆起(上腕骨外側上顆)にこの前腕の筋肉を付着させています。 筋肉が疲労すると、腱により多くの負荷がかかるようになります。この過負荷が、腱鞘炎と呼ばれる炎症と痛みを引き起こしています。さらに時間が経つと、この過負荷は腱の変性を起こし、最終的には腱断裂につながります。 多くの場合は長期にわたる負荷が原因ですが、突然の腕や肘の怪我が原因で発症することもあります。まれに、原因不明で発症する人もいます。 テニス肘の症状 テニス肘の症状はゆっくりと現れる傾向があります。痛みは数週間から数ヶ月の間に悪化します。テニス肘の症状の多くは痛みにあり、には次のようなものがあります。 ・肘の外側の痛み、手首の痛み ・腕をひねったり曲げたりするときの痛み(ドアノブを回すときや瓶を開けるときなど) ・腕を伸ばしたときのこわばりや痛み ・肘関節の腫れ、触ると痛い ・ラケットやペン、または人の手などを持とうとしたときに痛みが出たり、握力が弱くなる テニス肘の診断 痛みを引き起こす可能性のある動作について質問します。また、肘関節の痛みや腫れなどをチェックするために身体診察を行います。診断のために、以下のような検査が行われることがあります。 ・骨折などを除外するための単純X線検査 ・超音波検査、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンなどの画像検査を用いて、腱や筋肉の損傷の状態を評価 ・筋電図検査は、筋肉や神経の電気的活動を測定し、神経が圧迫されていないかどうかを調べる テニス肘の治療方法 テニス肘は、特別に治療をしなくても、自然に良くなることがあります。しかし、その反面、1年ほどかかることもあるので注意が必要です。 低侵襲な治療法 そこで、回復を早めることができる手術以外の方法をまずご紹介します。 ・安静:腱の治癒を待つために、数週間は痛みのある側の腕を使う活動を停止するか、作業量を減らすことを検討します ・痛み止め:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):NSAIDsは、痛みや炎症を和らげることが期待できます ・痛み止め:ステロイドの注射により、関節の痛みや炎症が一時的に緩和されます ・テニス肘用のサポーター:取り外し可能なテニス肘用のサポーターを痛みのある前腕部に装着します。この装具は、腱や筋肉の緊張を和らげるものです ・理学療法:理学療法による運動は、前腕のストレッチを含め、筋肉と握力を強化します 外科的治療法 低侵襲な療法を6~12カ月続けても症状が改善しない場合、関節鏡下または切開による手術を行います。手術では、通常、変性した腱を除去します。回復には4~6ヶ月かかることが一般的です。テ ニス肘になった後は、症状が再発しないように、サポーターなど装具の着用が必要となることもあります。 まとめ・テニス肘とは、テニス経験がなくても発症します!肘の痛みでお悩みの方へ 以上、今回はテニス肘についてご説明しました。 テニスをしていない人にとっては関係がないと思われがちかもしれませんが、ご説明した通り、必ずしもテニスと関係がない方でも起こりうる病態です。もしも「肘の痛み」で悩んでいる方がおられたら、早めにかかりつけの整形外科医にご相談ください。参考にしていただければ幸いです。 No.076 監修:医師 坂本貞範 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
最終更新日:2023.12.28 -
- 上肢(腕の障害)
- ゴルフ肘
- スポーツ外傷
- 肘関節
ゴルフ肘は、なぜゴルフ経験がなくても発症するのか?ゴルフ肘の治し方 肘に違和感があるな・・・と思い、病院を受診した際に、「ゴルフ肘」との診断されることがあります。これは、ゴルフの経験がない場合にもおこります。なぜゴルフの経験がないの「ゴルフ肘」との診断を受けるのでしょうか?ひょっとして『診断が間違っているのでは?』などと考えてしまうかもしれません。 しかし実際、ゴルフ肘という症状はゴルフをする人に限った病気ではなく、誰でも起こりうる病気なのです。この記事を読んで『この症状はゴルフ肘かも?』と思ったら、早く治すためにも治療が手遅れになる前に、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。 ゴルフ肘とは 通称、ゴルフ肘と呼ばれる病気は、正式名称は『上腕骨内側上顆炎』と言います。 『上腕骨』とは、肩から肘の間の骨のことで、『内側上顆』とは、肘の内側のことを言います。手のひらヘソの方向にむけた際に、同様にヘソの方向をむく肘の場所のことを言います。 その上腕骨の内側上顆にある筋肉や腱に炎症が起こった場合に発症するのが、「上腕骨内側上顆炎」つまり、「ゴルフ肘」です。ゴルフでクラブをスイングをした際、肘に痛みが出現することから、ゴルフ肘と呼ばれるようになったといいます。 ゴルフ肘で炎症が起こる内側上顆という場所に付いている筋肉は、手のひらを内側に向けて動かす動きや、物を握るような動きなど、腕のあらゆる動作に関わっています。そのような腕の動作を何度も繰り返し行ったり、使いすぎると、筋肉が引っ張られ、炎症を起こし、ゴルフ肘を発症すると言われています。 この病気ですが、ゴルフの他にもテニスに選手にも発症すると言われています。しかし、実際には、スポーツが原因の人は少ないと言われています。肘の関節を曲げたり、伸ばしたりする動作を繰り返したり、肘関節をたくさん使うような職業の方は誰でも起こりうる病気です。 さらに、仕事をしていない方でも、日常的に肘を酷使している場合、主婦などの一般人にも生じる病気なのです。 ・上腕骨:肩から肘の間の骨を指す ・内側上顆:肘の内側のこと ゴルフ肘の症状と診断 ゴルフ肘の症状は、肘の痛みですが、痛みは、日常生活の過ごし方によって、様々な形で出現します。ゴルフ以外のスポーツ、テニスであれば、ラケットのグリップを強く握った時や、強くラケットを振った場合に痛みを感じると言われています。 日常的に仕事で肘を使う人でしたら、例えば、重い物の積み下ろしを繰り返し行ったり、釘を打ったりする動作を繰り返す時に痛みを感じます。そのため、引っ越し業や大工さんにもよく発症すると言われています。 主婦の方は、料理で包丁を使う動作などの反復作業の中で症状が出現することもあります。ゴルフ肘は、いわゆる肘の使い過ぎによって起こる病気です。そのため、医師の診察でも、肘の曲げ伸ばしを日常的に繰り返ししているか聞かれ、診断の材料になります。 実際の診察現場では、手のひらを上に向けた状態で、テーブルの上に置き、医師が手首を押さえ、手首を上に向けてあげようよう指示をした際に、肘の内側が痛くなるような時に、ゴルフ肘が疑われます。 さらに、レントゲン検査で骨が変形していることや、超音波検査やM R I検査などの画像検査を行い、炎症を確認して総合的に診断が行われます。 ゴルフ肘の治し方 ゴルフ肘の治し方、治療法は、その重症の度合によって変わります。 ほとんどの場合で、肘の使い過ぎをやめ、安静を保てば痛みがひくことが多くあります。肘をなるべく使わないようにすることが必要になるため、場合によってはサポーター等の装具や、テーピングなどを行い、肘を安定させ、肘の安静を保つようにします。 肘を使わないことで自然と炎症が治り、症状が改善してまいりますが、安静を保つことに加えてストレッチや、筋力トレーニングなどのリハビリを併用して行うこともあります。 ただ、痛みが酷い場合などは、薬物による治療も行われます。ステロイドと呼ばれる薬剤を傷んでいる場所に注射したり、痛み止めの薬を服用します。また炎症を抑える薬を飲んだり、湿布を行ったりする治療を行います。 ゴルフ肘の治し方(治療) ・サポーター(装具)肘を安定させ、安静に保つ ・リハビリによる保存療法(ストレッチ、無理のない筋力トレーニング) ・痛み止め、湿布などの薬物の使用 ・悪化すると手術の可能性もあり しかし、治療が遅れたり、症状がよくならない、重症である場合は、手術という選択も行われることがあります。手術などしたくないものですが酷くなると、腱が傷ついていたり、千切れたようになることもあり、そうした場合は、手術が必要になります。 手術を行えば、ほとんどの場合、痛みは改善することが多いのですが、注しなければならないこととして、手術は皮膚を切って傷ついた腱を修復します。そのため、手術することで合併症など傷が感染するリスクもあります。また、少ないながら麻酔によるアレルギーや、副作用の出現もあり得ない話ではありません。 また手術を行った場合は、入院での加療となることで仕事への影響や、ご家族様の負担が増えてしまうのは遺憾ともしがたいものです。 いずれにしましても、このような心配をしなくても良いように、肘に違和感を感じたら早く治すために積極的に医療機関に足を運び治療を開始するようにしましょう。 それでも悪化して手術という場合に、手術を避ける方法があります。それは、再生医療という最新の治療法です。再生医療なら手術をせずに、入院も不要という新しい方法です。興味があれば以下のリンクから詳細を知ることができます。 ▼筋・腱・靭帯損傷に対する再生医療 再生医療は、手術を避けて入院も不要な最新治療方法です まとめ・ゴルフ肘は、なぜゴルフ経験がなくても発症するのか?ゴルフ肘の治し方 ゴルフ肘は、ゴルフを行わない人でも誰でも、起こりうる病気です。 早く治すためには、早く治療に入ることが大切です。手遅れになって重症化しないうちに治療を開始しましょう。治療が遅れると悪化し、結果として手術を選択しなければならないこともあるので、「この程度なら」との自己判断は禁物です。 手術自体、症状の改善以外の部分、感染症のリスクなどもあり、手術後には痛みもあります。さらには昨今の新型コロナウイルスの関係で入院中は面会もできない病院が多く、入院は、辛い体験だったと感じる患者さんも少なくないといいます。 『自分はゴルフをしないから大丈夫だ』と考えず、肘に違和感を感じたら、スポーツ以外、仕事であっても我慢したりせず、手遅れになる前に病院等にて医師の診察を受けられることをお勧めします。 以上、ゴルフ肘は、なぜゴルフ経験がなくても発症するのかについて記させていただきました。参考にして頂ければ幸いです。 No.066 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.12.28 -
- 上肢(腕の障害)
- テニス肘
- スポーツ外傷
- 肘関節
テニス肘は、テニスの経験がなくてもテニス肘と診断されることがあります テニス肘(テニスエルボー)は、手首や腕の反復運動によって肘の腱に負荷がかかり、痛みを伴う疾患です。通常はテニスをされる人に多く見られる状態です。しかし、テニスを一度もしたことがないのに、テニス肘と診断されることがあるのです。 この記事では、テニス肘について説明し、テニスが未経験であっても、どのような状況になるとテニス肘を発症するのか?ご説明してまいります。 テニス肘とは? テニス肘について簡単に説明します。テニス肘はテニスエルボーとも言われます。その痛みは、主に前腕の筋肉の腱が肘の外側にある骨の隆起に付着する部分に発生します。また、前腕や手首に痛みが広がることもあります。 通常安静にしているときには痛みは感じませんが、例えばドアノブを回す、タオルを絞る、またキーボードを操作するなどのように、手首を捻ったり反らせたり、また指を伸ばす動作をすると、肘の外側に痛みが誘発されます。場合によっては、コーヒーカップを持ち上げるだけでも痛みを感じることがあります。 症状が進行すると、安静時でも肘に痛みを感じるようになり、なかなか痛みが消えなくなります。 テニス肘の原因 テニス肘には、腕の使いすぎと筋肉疲労が背景にあります。原因は、手首を動かしたり、指を曲げたり伸ばしたりするための前腕筋を、繰り返し収縮させることです。 手首を反らせたり、手で握ったりすると、前腕の筋肉(伸筋)が収縮します。繰り返される動作と組織へのストレスにより、前腕の伸筋が上腕骨の肘の外側にある骨の突起に付着する部位に傷がついてしまい、炎症が起きることがあります。 この骨の突起は、「上腕骨外側顆」、前腕の筋肉は「短橈側手根伸筋」という名前がついています。尚、テニス肘の正式名称は「上腕骨外側顆炎」と呼ばれるものです。 テニス肘は、その名が示すようにテニスプレーにおいて、特にバックハンドストロークを技術が未熟なうちから、繰り返し行うことで肘の外側部分に負担を掛けてしまうことが原因で起こります。しかし、テニス以外、他の多くの一般的な腕の動きでも、テニス肘を引き起こす可能性があります。 なお、テニス肘は発症してからの時間が経つにつれて、炎症を抑えることができなくなります。そのような状況になると筋肉や腱の繊維組織はその強度を失ってしまいます。繊維組織はもろくなり、折れたり、傷つきやすくなったります。 そして繊維組織は傷つくたびに、瘢痕を形成します。やがて、腱は瘢痕組織によって肥厚していきます。 このような状況になると、腱はもはや正しく機能せず、痛みが続くようになり、運動していないときでさえ痛みが生じるようになります。 テニス肘は発症後時間が経つと進行すると ・炎症を抑えることができなくなり、筋肉や腱の繊維組織は強度を失っていきます。 ・繊維組織がもろくなり、折れたり、傷つきやすくなり、瘢痕を形成します。 ・腱は瘢痕組織によって肥厚します。 ・腱は正しく機能せず、痛みが続くようになる。 ・運動していない場合でも痛みが生じるようになる。 テニス肘の治療 安静と鎮痛薬で、テニス肘の痛みが和らぐことが一般的です。痛みが激しい場合は、炎症が起こっている肘の周囲にステロイド薬を注射することもあります。 症状が慢性化すると、定期的なストレッチを含む理学療法が有用だと言われています。このような保存的治療が効かない場合や、症状が重篤な場合は、手術が必要となることもあります。 テニス未経験なのにテニス肘と診断されることがある 手首や腕の使いすぎが原因となっているテニス肘は、テニスをする人によくみられる状態であることは間違いありません。しかし、テニスのほかにも同じような動作を繰り返すような動作を行えばテニス肘を発症することになりかねません。 次に、どのような場合にテニス以外にテニス肘がみられるのか、ご紹介します。 腕をよく使うスポーツ 一部のスポーツを除き、頻繁に腕を使うスポーツは多くあります。そのなかでも特にテニスと同じようにラケットを使うスポーツであるバドミントンや卓球、スカッシュでも、テニス肘はよく起こります。 そのほかにもゴルフや、ウェイトリフティングでも、同様の症状がみられることがあります。 腕をよく使う職業 その名前にもかかわらず、テニス肘を発症するのは、アスリートだけではありません。テニス肘になるような職業もあります。特に力を入れて手首や腕を動かす必要のある、配管工、塗装工、大工などが、テニス肘を発症しやすい職業として知られています。 そのほかにも、特に肉を切るように力を入れて包丁を扱ったり、重い鍋を持って動かしたりする料理人、また特に体を動かすわけでもないタイピングやマウス操作を繰り返し行う人も、テニス肘を発症することがあります。 テニス肘の危険因子 そのほか、テニス肘の発症リスクを高める要因としては、以下のようなものがあります。 ・年齢:テニス肘はすべての年齢層で発症しますが、特に30~50歳の成人に最も多くみられます ・職業:手首や腕の動きを繰り返すような仕事をしている人は、テニス肘になりやすい ・例えば、配管工、塗装工、大工、料理人などが挙げられます ・特定のスポーツ:ラケットを使用するスポーツに参加すると、テニス肘のリスクが高まります。 まとめ・テニス肘は、テニス未経験でもそう診断されることがあります テニス肘の概要、またテニスをしたことがなくても、どのような状況であればテニス肘を発症することがあるか、ご説明しました。 抵抗に逆らって手首を反らせると痛い、肘の外側の骨のあたりを押すと圧痛がある場合は、このテニス肘の可能性が高いと考えられます。しかし、テニス肘は、最終的には医療機関で正確な診断を受ける必要があります。 もし肘の痛みを感じる方がおられるようであれば、慢性化して治療が困難となる前に、整形外科医の診療を受けることをお勧めします。以上、テニス肘は、テニス経験がないのにテニス肘と診断されることがあるについて記させて頂きました。参考になれば幸いです。 No.063 監修:医師 坂本貞範 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 再生医療は、生活の質を守る治療です(詳しくは(詳しくはこちらから)
最終更新日:2024.09.04 -
- 肘関節
- 野球肘
- 上肢(腕の障害)
- スポーツ外傷
クリーニング手術で野球選手の肘の悩みを解決する 「野球肘」という言葉を聞いたことはありませんか。 野球肘と一言で言っても、いろいろな種類がありますが、例えば、子供時分、まだしっかり身体が出来上がっていない成長期に野球の投球動作を繰り返し行うことで肘への負担が大きくなり、肘の曲げ伸ばしに支障が出るといった症状が発生することもあります。 この場合は、離断性骨軟骨炎と言われる野球肘が疑われます。症状が進行すると肘の痛みが強くなっていき、急に肘関節が動かせなくなることもあります。 この症状の治療は、関節内に遊離した軟骨成分や関節周囲に新たに形成された骨棘を取り除く手術が必要となり、これを「クリーニング手術」と呼称しており、主に肘関節などを損傷したスポーツ選手が受ける機会が多いと考えられています。 今回は、野球選手が抱える肘の悩み、そしてその苦悩を解決するクリーニング手術に関して詳しく解説していきます。 野球選手が抱える肘の悩みについて 野球肘とは、いわゆる投球する際に必要な動作を、繰り返し行うことで発症する肘の障害を指しており、「離断性骨軟骨炎」や、「軟骨損傷」、「靭帯損傷」、さらには将来的に合併される可能性が懸念される「変形性肘関節症」などを含めた複数の病態を示しています。 野球選手がボールを投球する際には肘に大きな外力が加重されますが、そのような中でも速球を投げる、あるいは悪いフォームで無理に投球すると通常に比べて肘部分にかかる負担がかなり増加し、肘関節に無理が掛かります。 また、球数が多くなると自然と肘関節に対する負担が増大して、これら、ひとつ、ひとつの負荷があまりにも大きくなっていくと自ずと肘関節部分における骨成分や靭帯組織が損傷して故障に繋がることになります。 一般的に、肘関節は「上腕骨」、「橈骨」、「尺骨」の3つの骨で構成されており、これらをそれぞれ繋いでいる靭帯組織が内側と外側に存在します。上腕骨の内側の部分には野球ボールを握る、または投球中にスナップや、ねじりや、回転を効かせる際に動作している筋肉が付いています。 通常、ボールを投球する際には肘関節の内側部位では、その動作に伴う牽引力によって周囲の骨や靭帯が強く引っ張られる結果として剥離骨折や靭帯損傷などが引き起こされることがあります。 さらに、肘関節の外側部位では労作時における急激な圧迫力が働いて、軟骨や骨領域に障壁が起こりやすいと考えられており、関節後面では骨同士の摩擦によって疲労骨折や剥離骨折が引き起こされることが知られています。 野球選手の肘の悩みを解決するクリーニング手術とは 野球選手が競技を長年に渡って継続すると、少しずつ肘部分に変形や、関節ネズミと言われる、骨の破片(剥離片)が形成されて、障害を受けることが多いとされています。 肘関節部に大きな骨棘が認められると自然と肘関節の屈曲伸展運動がしづらくなり、離断性骨軟骨炎、肘頭骨棘骨折、軟骨損傷などによって形成された軟骨や骨の剥離片が骨間に挟まれることで強い痛み症状が出現します。 これらの症状が進行し、悪くなると、安静にしてもなかなか痛みが治らない、関節の曲げ伸ばしに支障が出たり、再燃して繰り返すなどの場合には、関節鏡を用いてクリーニング手術を勧められることがあります。 基本的には、全身麻酔下に肘関節の側方や後方に小切開を設けて、同部に細い関節鏡を挿入し、関節内に手術器具をインサートしながら、テレビモニター画面に映し出される関節内の画像を術者や助手が供覧して手術処置を実行します。 実際の手術現場では、関節内の病変について、くまなく確認することから始まり、肘部の痛みや引っ掛かりの主たる要因となっている病変部位を切除摘出することになります。 具体的な手技手順としては、まずは高周波電気メスにより異常滑膜を切除して、損傷軟骨部位をきれいにトリミングします。 次に、肘関節を伸展および屈曲する際に疼痛症状の原因となっている骨棘形成部位に対して関節鏡を視野に入れながらシェーバーという細い吸引付ドリルで骨切除するように処置します。 関節ネズミと呼ばれる関節遊離体が認められる場合には、関節鏡手術によって同時に遊離体を摘出除去することも可能です。これをクリーニング手術と言います。 順調にいけば通常では手術時間自体は約1~2時間で完遂できますし、術後約1週間前後で徐々に投球練習を再開してリハビリを実践し、手術してから概ね1か月後には競技に復活でいる可能性が高くなります。 > スポーツ選手が、手術を避けて取り組める再生医療はこちら まとめ・クリーニング手術で野球選手の肘の悩みを解決する 今回は野球選手が抱える肘の悩みとその解決策になり得るクリーニング手術について詳しく解説してきました。 野球の投球動作などによって知らぬ間に肘関節部分に過剰な負担がかかり、肘の痛みや関節可動域制限などの様々な症状を呈する病気を野球肘と呼んでいます。 従来では、野球肘を始めとする肘関節障害に対しては大きく皮膚切開することで周囲の正常な腱組織や筋肉をかき分けて関節部に至る必要があったために手術治療は復帰期間も含めて野球選手にとっても非常に侵襲的(体への負担が大きい、今回の場合は手術による傷が大きくなる)で負担が大きかったと考えられます。 しかし、近年では、特に画像検査技術により、早期的に野球肘を発見できた場合には、関節鏡手術の技術進歩や手術成績の向上によって低侵襲での手術が可能となり、そのために術後経過も良好になるといった傾向があり、短期間で競技に復帰できる割合も増加していると言います。 以上、クリーニング手術で野球選手の肘の悩みを解決すると題して説明させて頂きました。本記事が参考になれば嬉しく思います。 No.052 監修:医師 坂本貞範 ▼関連記事はこちら 野球肘の予防法|ストレッチで選手生命を伸ばす 野球肘・離断性骨軟骨炎はスポーツする子供に多い!その症状と治療法
最終更新日:2023.12.28 -
- 野球肘
- 上肢(腕の障害)
- スポーツ外傷
- 肘関節
大谷翔平やダルビッシュをはじめ、ピッチャーが頼るトミー・ジョン手術について トミー・ジョン手術という言葉、何か聞き覚えがあったり、テレビや雑誌、新聞等で耳にされた経験のある方も多いのではないでしょうか。 例えばアメリカのMLB(メジャーリーグ)のメジャーリーガー、有名日本人プロ野球選手である「大谷翔平選手」「ダルビッシュ有選手」など、この手術を受けて復活し大きな注目を浴びています。 もちろんこの二人以外にも実に多くの選手がこの手術を受けています。MLB(メジャーリーグ)に関わらず日本球界にも手術経験者が数多く存在します。 メジャーリーグで活躍!日本人でトミージョン手術を受けた選手の例 前田健太 ミネソタ・ツインズ 大谷翔平 ロサンゼルス・エンゼルス ダルビッシュ有 テキサス・レンジャース 藤川球児 シカゴ・カブス 松坂大輔 レッドソックス 野球の中でも、とりわけピッチング(投げる)という動作では、速球や変化球を何度も繰り返すことになり、腕に大きな負担を掛けるリスクがあります。 これらの症状に用いられるトミー・ジョン手術とは、肘関節部の腱や靱帯の損傷あるいは断裂といった症状に対して腱や靱帯を再建するための術式です。 ちたみにトミー・ジョン手術という名称は、医学用語でも、術式の名前でもありません。 実は、1974年にフランク・ジョーブ医師がこの術式を考案し、歴史的に初めてこの手術を受けた投手がこそ「トミー・ジョン氏」という野球選手で彼の名称にちなんでこのように呼称されるようになりました。 今回は、肘の問題を抱えた野球選手が復活を目指すために行うトミー・ジョン手術の概要と本手術における利点や、欠点などに関して詳しく解説します。 トミー・ジョン手術に至る原因となるピッチング動作 一般的に、野球競技で投球を繰り返すことで体幹や胸郭などのバランスが悪くなると肩や肘の力でサポートしたり、カバーしようと身体が反応し、意図せず働いてしまいます。 その際、上腕骨と尺骨を連結している肘関節部分に位置する内側側副靱帯に過剰な負担がかかり損傷が生じることがあります。 肘の靱帯が正常な状態の投手が、実際の投球中に靱帯をいきなり切ることはまずありません。しかし、小学生のころからプレーを続け、何度も繰り返される動作は負荷となって最初は小さなほころびでも積み重なることで切れてしまったり、大きな損傷となってしまうのです。 つまり、幼少期、小学生時代から繰り返し、肘部に負荷が積み重なって成人してから靱帯が断裂するという説です。 これに対して一部の整形外科医や球界関係者らは、これらの靭帯損傷を引き起こす最大の原因は、積み重ねは大きな要因ながらも、一番の原因は、投球フォームにあるとも主張しています。肘に負担が掛かる投球フォームが問題とする説です いずれの説も間違っていないと思いますが実際のところは両者の意見が組み合わさったところにあるのではないかと考えます。幼少期よりの負担の積み重ねが問題という説も正しく、フォームの問題も正しいのだと思います。 いずれにしろ野球選手にとって避けては通れないスポーツ外傷というほかありません。 トミー・ジョン手術に至る原因 ・幼少期からの積年にわたる肘(靭帯)の使いすぎ ・肘に負担が掛かる投球フォーム上の問題 ・これらの複合 野球の投手が復活をかけるトミー・ジョン手術とは トミー・ジョン手術とは、損傷した腱や靱帯をいったん切除します。 そののちに、患側と反対側あるいは同側の前腕部にある長掌筋腱や下腿、臀部、膝蓋腱から正常な腱の一部を摘出してこれを上腕骨と尺骨に作成した孔を介して両端にテンションをかけた状態で固定して靭帯の代わりになるように移植する処置を実施します。 この移植した腱組織がちょうど靱帯の代わりとして患部周囲に定着させることになります。ただ定着するまでにある程度の時間がかかると言われており、トミー・ジョン手術を行ってすぐに戻るものではなく、長期的なリハビリによる加療を実践することが求められます。 リハビリは、大体2か月程度かけて肘関節の可動域を元の状態に復帰させていきます。その上で日常生活レベルで支障なく肘を動かせるようになれば、今度は軽い負荷からのウェイトトレーニングを開始することになります。 これらのリハビリは手術と同じ位大切です。患部の状況、選手の意識を加味しながら正常へと導いていく技術や経験、そして選手からの信頼が求められます。 肘のみならず腕全体を強化する為に様々な訓練を受けて、通常レベルの運動労作ができるまで回復した時点で、実戦的に投球練習を再開していくスケジュールになることが多いようです。 トミージョン手術について ・リハビリが手術と同じほど大切 ・手術後、長期(2か月ほど)のリハビリ(可動域拡大)が必要 ・日常生活レベルに回復後、トレーニング(付加をかけて)を行う ・その後、実践へ導くには、高度の経験と技術が求められる トミー・ジョン手術における利点と欠点 この章では、損傷した靭帯を切除して同部に患者さん自身の他部位からの靭帯代用組織を移植することにより負傷箇所の修復を狙うトミー・ジョン手術における利点及び欠点について解説していきます。 トミー・ジョン氏がこの手術を受けた1970年代は、手術自体の成功率が何と1%未満とされていましたが、1986年から2012年までに本手術を実施された野球投手を調査した結果、約80%~90%もの人々が実戦復帰を果たせるまでに手術の成功率が格段に向上しています。 この手術における成功率が向上した要因としては、手術そのものの技術的な進歩のみならず術後のリハビリテーションの知識と経験の蓄積が顕著な治療成績の改善を生み出したと考えられています。 ただし、通常ではトミー・ジョン手術による治療からリハビリ加療を含めて実戦復帰するためには約12か月から18か月前後要すると考えられており、仮に実戦復帰できたとしても所属球団の方針によっては厳しく球数を制限されることがデメリットとして想定されます。 あるいは、術中操作に伴う尺骨神経の障害は、トミー・ジョン手術後の合併症において頻繁に起こる可能性があります。 トミージョン手術のメリット、デメリット ・メリット:トミージョン手術の成功率:80~90%が実践復帰 ・デメリット:手術後のリハビリ期間が1年~程度必要 ・デメリット:手術とリハビリからくる期間的リスク ・デメリット:合併症の危険性がある まとめ・大谷翔平やダルビッシュといった野球選手が復活をかけるトミー・ジョン手術とは 今回は、「野球の投手が復活をかけるトミー・ジョン手術」について、その概要や本手術における利点や欠点などに関して詳しく解説してきました。 特に野球投手では、無理な投球フォームを繰り返して行うことで肘関節の内側部が痛みだして、さらに肘の屈曲あるいは伸展運動もしづらい状況となり、医療機関での精査の結果、肘の内側側副靭帯損傷と診断されることもあるかと考えられます。 その際に、投球練習や実戦登板をいったん中止することで疼痛症状などが改善する場合もありますが、損傷程度が重症になれば手術をしないと復帰が困難であることも考えられ、そんな時に実施される一つの手術術式がいわゆる「トミー・ジョン手術」です。 手術の成功率が80~90%と飛躍的に伸びていることからも、最近多くの野球選手が受けている肘内側側副靱帯を再建するトミー・ジョン手術は選手にとって希望ある選択肢として捉えられている傾向があります。 本手術においては野球選手にとってメリット・デメリットが挙げられますので、十分に専門家や医療機関及び主治医とよく相談して方針決定されることをお勧めします。 今回の記事の情報が肘の故障で悩まれている方々へ少しでも参考になれば幸いです。 No.S075 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています ▼関連記事はこちら 野球肘の予防法|ストレッチで選手生命を伸ばす 野球肘・離断性骨軟骨炎はスポーツする子供に多い!その症状と治療法
最終更新日:2024.09.13 -
- 肘関節
- 野球肘
- 上肢(腕の障害)
- スポーツ外傷
野球肘を予防する!ストレッチで選手生命を伸ばす スポーツをする上で気を付けたいのが何といってもケガや故障です。 今回ご説明する「野球肘」は少年野球の選手のうち5人に1人が発症するとされるスポーツ障害の一種です。野球肘は、ボールを投げる動作を繰り返すことで起こります。 特に子供さんが野球チームに入り、ピッチャーの才能があることが分かっても手放しで喜んではいけません。ピッチング、投球のしずぎで肘の故障を起こして結果的に野球を断念…といこともあり得るからです。 せっかくの才能をつぶさないで伸ばしてあげるためにも野球肘には十分注意してあげなければなりません。子供さんからの肘が痛いというサインを見逃さないでください。 日本は、とかく根性論に走りがちです。根性は大切ですが万一、症状が悪化してしまっては本末転倒、選手生命を奪いかねません。そこで野球肘の原因や予防方法を知って是非、選手生命を伸ばす方向で取り組んで頂ければと思うのです。 野球肘とは 野球肘とは、ピッチングなど、ボールを投球する動作が原因で起こる「肘関節の損傷をまとめた呼び方」です。 野球肘|起こる原因 野球肘は、肘に反復して過度な負担がかかることが原因で発症します。野球のボールを投げる動作は、腕を大きく振りかぶった状態から肘の機能を使って力いっぱい投げおろすため、肘への負担が大きな動作となります。この動作を繰り返すことで肘の靱帯や軟骨に大きな負担がかかってしまうのです。 野球肘|種類 野球肘は肘関節のさまざまな部位で起こりますが、痛めた部分によって大きく3種類に分けられます。 野球肘が起こる部位 ・肘の内側の骨である橈骨側の靱帯や軟骨を損傷してしまうもの ・肘の外側の骨である尺骨側の軟骨を損傷してしまうもの ・尺骨自体を損傷してしまうもの 肘の内側には骨や靱帯が引き離される方向に力がかかりますが、この引っ張られる力は、関節を痛めやすいため、橈骨側の靭帯は野球肘の起こりやすい部位です。 一方、肘の外側と後ろ側には骨がぶつかり合う方向で力がかかります。そのため、骨自体に損傷を与えてしまうことで発症すると重症化しやすく、注意が必要になります。 野球肘|症状 野球肘は、ボールを投げるときの痛み、違和感が代表的な症状です。痛みについては、投げるときのみの場合と、投げた後しばらく痛む場合がありますが、軽症の場合なら、安静にすることで痛みは引きます。 これは良いことのようですが実は、この痛みが引いてしまうこと困りものと言えるのです。 なぜなら、少々痛くても休んたら大丈夫と勘違いしてしまうからです。その結果、治療せず放置し、痛みが継続的に出るようになり、こうなると重症化して治りにくくなります。 無理は禁物ということですが、この部分は本人だけでなく、周りの意識も非常に重要です。肘が痛いという言葉に敏感にならなければなりません。 野球肘|治療法 野球肘の発症後、その治療は、何よりも安静が第一です。短くても数週間、長いと数年、野球肘と付き合いが続く可能性があります。そのためにも、症状や違和感を感じたら、少しぐらいと我慢してはいけません。 軽症のうちから医療機関を受診し、指導を受けて重症化を防ぐことが必要です。 すでに野球肘の症状がある場合 野球肘の心配がある場合は、初期の段階から医療機関で診察を受けることをお勧めします。野球肘の症状がある場合は、何年も肘の安静を強いられることがないように、重症化を防ぐ必要があります。 まずは投球する回数を減らし、肘を休ませましょう。そして、長くプレーを続けるためには、肘に負担が掛かる投げ方をしていないか指導者を交えての指導が必要です。肘に負担が掛かるような投げ方を改善する必要があります。 治療については、スポーツ外来などがある医療機関を受診し、治療はもちろん、リハビリを含め、以後の取り組みについて指導を受けるようにしましょう。エコー検査やレントゲンなど検査を受け状態を確認し、早期に治療を開始することが大切です。 野球肘|予防にはストレッチが有効 肘の関節や靭帯を守るため、動かす前に準備が大切!野球肘を予防するには、プレー前に関節をしっかり伸ばすストレッチを行いましょうす。スポーツの前後にストレッチをしっかり行うことは、大切ですが肘周りのストレッチだけで安心していてはいけません。 野球肘の予防には、肘の関節だけでなく、全身の柔軟性を上げることが重要だからです。そこで以下に野球肘の予防に効果的なストレッチをご紹介します。 野球肘を予防するストレッチの種類 運動前に準備運動を行ったり、ストレッチを行うことは一般的に知られています。野球肘の予防にもストレッチは大切です。肘周り、肩回り、下半身と全身の柔軟性を上げてから練習に挑むことでケガや故障を防ぐことが可能になるからです。 野球肘は肘の酷使が原因ですから、まずは、肘の負担を減らすために肘周りの関節をほぐしていきましょう。痛みがあるときは無理して行わず、専門家に相談することをお勧めします。 手首・肘の内側を伸ばすストレッチ 片手をまっすぐ前に伸ばします。この時、手の甲は天井を向き、手首と腕が90度になるようにします。そして、伸ばしている手と反対の手で、指先を体の方に引き寄せましょう。 次の動作は、そのまま手のひらを反時計回りに180度回転させ、手の甲が地面を向くようにします。そのまま手のひらを机などの平らなところに着き、ゆっくりと体重をかけていきます。 肩・肩甲骨をほぐすストレッチ 投球動作では、肩にも大きな負担がかかります。肩甲骨周りの可動域を広げることは、きれいな投球フォームを作ることにもつながります。 肩回りを伸ばすストレッチ 身体の前で肘を体に対して直角に上げ、手の平から肘までをピッタリつけて肩甲骨を開きます。(肘の角度は90度でキープ!)次にゆっくりと胸を張るように、腕を後ろに引きましょう。この時、肩甲同士を骨を内側に寄せるイメージで行ってください。 体幹と下半身のストレッチ 投球は足を大きく踏み込み、体の回転をボールに伝えることでより肘への負担を軽減できます。そのためには体幹のストレッチも忘れず行いましょう! 体幹と股関節のストレッチ 足を開いて座り、片方の足は体側に引き寄せます。腕を頭上にまっすぐ伸ばし、曲げた足側の手を反対の手で引っ張りながら伸ばしている足の方へ体を倒しましょう。反対側も同様に行います。 ストレッチにはコツがあります。そのコツを抑えるだけで野球肘の予防効果をアップさせることができます。せっかくストレッチを行うのですから次に紹介するポイントを守って、より効果的なストレッチを行いましょう。 ストレッチをする時に気を付けるポイント 第一に、ストレッチの動作はゆっくり行いましょう。急に関節を伸ばすと、痛めてしまうこともあります。具体的には、1つの部位を伸ばすのに20秒程度かけるのが理想的です。 加えて、ストレッチをしてすぐに激しい動きをするのはNGです。緊張がゆるんだ関節を急に動かすと思わぬケガにつながりますから、軽い運動を行ってから練習を始めてくださいね。 野球肘治療後のストレッチは専門家に相談する ストレッチは関節の可動域を広げるために重要です。ただし、野球肘の治療後にストレッチを始める場合は、医師の指示に従って行うようにしましょう。 また、リハビリにストレッチのメニューが加えられた場合、専門家の指導のもとで行うことも大切です。安易な自己判断で野球肘を悪化させることがないように気を付けてください。 まとめ・野球肘をスチレッチで予防して選手生命を伸ばす 野球の投球は全身で行うことが理想で、手だけの力で投げ続けると、野球肘発症の引き金となってしまいます。練習前に時間をかけてストレッチを行うことで、野球肘の予防だけでなく、練習後の疲労も軽減できるでしょう。 野球肘の原因は肘の使い過ぎです。最初から強く投げたり、いきなり投球するのではなく準備が必要です。プレーや練習前、練習後には入念なストレッチを行うことが必要です。 練習計画に前後のストレッチを取り入れて野球肘を予防しましょう。 それでも肘の違和感がある、痛みがあるというような場合は重症化を防ぐためにも肘を安静にし、早めに医療機関を受診しましょう。せっかくの才能ですから伸ばすためには身体の手入れが一番の練習だとご理解ください。 以上、野球肘を予防する!ストレッチで選手生命を伸ばすと題して説明させていただきました。参考になれば幸いです。 No.S044 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ外傷、野球肘をはじめとした再生医療という手段について 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
最終更新日:2023.12.28