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「足の甲が痛くて、ランニングができない」「足の甲の疲労骨折と診断されたけど、どうすればいいの?」 多くのランナーが足の甲の疲労骨折(中足骨疲労骨折)に悩まされており、ランニングを続ける上での大きな障壁となっています。足の甲の疲労骨折に気づかずランニングを続けてしまうと、症状が進行してしまい、練習や大会への参加が難しくなってしまうおそれがあります。もし足の甲の疲労骨折が疑われる症状がみられた場合は、早期の治療と再発防止が重要です。 本記事では、足の甲(中足骨)の疲労骨折の原因や治療法、ランニング時の注意点について解説します。正しい理解とケアにより、ランニングを安全に続けるためのヒントになれば幸いです。 足の甲を疲労骨折してしまい、どういった処置が必要かわからない方は、当院リペアセルクリニックのメール相談やオンラインカウンセリングもご活用ください。 疲労骨折の症状と治療期間については、以下の記事でもご覧ください。 足の甲の疲労骨折とは「足の甲の骨に微小な亀裂が生じている状態」 まずはじめに、疲労骨折とは、繰り返しのストレスによって骨に微小な亀裂が生じている状態のことです。一度の強い衝撃ではなく、長期的な負荷の蓄積が原因で起こることが多いケガです。 そして、足の甲に起こる疲労骨折は、「中足骨」という足の甲にある5本の長い骨にヒビが入っている状態です(中足骨疲労骨折)。中足骨は足の土踏まずを形成し、体重を支えるという重要な役割を担っています。ランニングでは、体重が中足骨に繰り返しかかるため、疲労骨折が起こりやすくなります。 とくに、以下のような要因が重なると、リスクが高まります。 急激なトレーニング量の増加 不適切なランニングフォーム 硬い地面でのランニング 足に合わない靴の使用 骨密度の低下 これらの原因について理解を深め、適切な予防策を講じることが大切です。 足の甲の疲労骨折には「早期発見・初期対応」が重要 足の甲の疲労骨折は、症状を理解し、見逃さないようにすることが大切です。 疲労骨折は、徐々に症状が現れることが多いため、初期段階での適切な対応が重要です。 足の甲の疲労骨折の見分け方【セルフチェック】 症状 説明 足の甲の痛み とくに第2、第3中足骨に多く見られます。この部位は体重の大部分を支えるため、疲労骨折のリスクが高くなります。 歩行時や運動時の痛み 活動により痛みが増悪するのが特徴です。ランニングや長時間の歩行で痛みを感じる場合は要注意です。 安静時の痛みの持続 疲労骨折の場合、安静にしていても痛みが続くことがあります。夜間の痛みで睡眠が妨げられる場合もあります。 腫れや圧痛 患部が腫れ、触ると痛みを感じます。腫れによって靴が窮屈に感じられる場合もあります。 皮膚の発赤や熱感 炎症によって、患部の皮膚が赤くなったり、熱を持ったりするケースがあります。 これらの症状が継続する場合は、早めに医師の診察を受けることが重要です。 セルフチェックのポイントとしては、痛みや腫れがあるか、押して痛みがあるかを確認しましょう。放置すると、症状が悪化し、回復に時間がかかってしまう可能性があります。 整形外科医に相談し、必要な検査を受けることをおすすめします。整形外科では、レントゲンやMRIなどの画像検査を行い疲労骨折の有無を診断します。 足の甲の疲労骨折の応急処置は「アイシング・安静」 足の甲の疲労骨折が疑われる場合、以下の初期対応を行いましょう。 対応 方法 安静 無理な運動は控え、患部を休ませることが大切です。継続的な負荷は症状を悪化させる原因となります。医師の指示に従って、適切な期間の安静を取りましょう。 冷却 アイスパックを用いて患部を冷やすことで、炎症と痛みを和らげることができます。1日数回、15分から20分程度行います。アイシングは、とくに初期の痛みのコントロールに効果的です。 圧迫 弾性包帯などを使って患部を適度に圧迫すると、腫れを抑える効果が期待できます。ただし、強く締めすぎないよう注意が必要です。圧迫は、炎症による腫れを軽減し、安静を補助します。 挙上 患部を心臓よりも高い位置に上げることで、重力により腫れを軽減する効果が期待できます。座ったり横になったりする際に、クッションなどを使って足を高くすると良いでしょう。挙上は、とくに安静時の腫れの管理に役立ちます。 医師の指示にしたがって、適切な期間、前述した初期対応を行うことが、回復に向けての大切なステップです。 症状が改善されない場合は、追加の治療が必要になる場合もあります。自己判断せずに、医師とよく相談しながら治療を進めていきましょう。 足の甲の疲労骨折における2つの治療法 足の甲の疲労骨折の治療は、症状の重さによって異なります。主な治療法は以下の2つです。 保存的治療法(安静・固定) 運動療法とリハビリテーション 軽度の場合は上記の治療で改善する場合がほとんどですが、重度の場合は手術が必要になることもあります。整形外科医から、症状に合わせた適切な治療法を紹介してもらうことが大切です。 本章を参考に、足の甲の疲労骨折における治療の選択肢を理解しておきましょう。 保存的治療法(安静・固定) 多くの場合、中足骨疲労骨折は安静と固定によって治癒します。ギプスやブーツを使って足を固定し、骨の回復を促します。 固定期間は症状によって異なりますが、一般的には以下の通りです。 軽度の場合:4~8週間 中等度の場合:8~12週間 重度の場合:12週間以上 固定期間中は患部に負荷をかけないように注意しましょう。松葉杖などを使って歩行し、足に体重がかからないような心がけが大切です。医師の指示に従い、定期的な診察を受けて、回復の進捗を確認しましょう。 運動療法とリハビリテーション ギプスやブーツを外した後は、徐々に日常生活や運動に復帰していきます。ただし、いきなり骨折前と同じレベルの活動を再開するのは避けましょう。 たとえば、ランニングをしている方の場合、いきなり以前と同じ距離や強度で走りはじめるのは危険です。医師と相談しながら短い距離からはじめ、徐々に走行距離を伸ばすようにしてください。 徐々に運動量を増やしていくことには、多くのメリットがあります。たとえば、足の筋力と柔軟性が改善されて、日常生活動作がスムーズに行えるようになります。 スポーツに復帰する際も、最初は短時間の練習からはじめ、体の状態を見ながら徐々に練習時間を増やしていくことが望ましいです。 このように、活動レベルを段階的に上げていくことで、再骨折のリスクを減らせるでしょう。 また、足を長期間固定していると、筋力が低下してしまうため、リハビリテーションで、足の筋力維持と柔軟性の向上を図ります。 運動療法とリハビリテーションにより、足の甲の疲労骨折の回復が促進され、患者さんの生活の質も向上するでしょう。 足の甲の疲労骨折の予防策3選 足の甲の疲労骨折を予防・再発防止策として、以下3つの方法が挙げられます。 ランニングフォームとフットウェアの調整 強化運動と柔軟性の向上 生活習慣の見直し 足の甲の疲労骨折を未然に防ぎ、ランニングやスポーツを快適に楽しみましょう。 ランニングフォームとフットウェアの調整 足の甲の疲労骨折の予防・再発防止には、ランニングフォームやフットウェアの調整が大切です。 具体的なポイントは以下のとおりです。 調整ポイント 補足 ランニングフォーム 前足部や中足部への着地を避ける ・つま先や足の中央部分から着地すると、足の甲の骨(中足骨)へのストレスが増大する。 ・かかとから着地し、足全体で衝撃を吸収するよう意識する。 過度なプロネーションを抑える ・プロネーション(足の内側への倒れ込み)が強すぎると、中足骨へのストレスが増大する。 ・足首を安定させるためのトレーニングを取り入れる。 ・足首の倒れ込みを防ぐようなインソールを使用する。 フットウェア クッション性と安定性のあるシューズを選ぶ ・衝撃の吸収性に優れ、足首の動きを適度にサポートするシューズを選ぶ。 ・着地時の衝撃を分散し、足の動きを安定させる。 オーダーメイドのインソールを検討する ・足の形状や動きに合わせてカスタマイズされたインソールの使用で、足の甲への負荷を軽減する。 ランニングフォームの改善には、ランニングコーチやスポーツ医学の専門家のアドバイスを求めることをおすすめします。また、足の状態に合わせたシューズ選びについては、ランニングショップの専門スタッフに相談するのも良いでしょう。 強化運動と柔軟性の向上 さらに、疲労骨折の再発を防ぐには、地面に足が着くときの衝撃を和らげるための全身的なバランス強化と偏りの調整を図ることがポイントになります。 体幹トレーニングをベースとして、足や下肢の筋力を維持・向上させることが重要です。 以下のような運動を定期的に行うことをおすすめします。 運動 効果 つま先立ち 下腿三頭筋(ふくらはぎ)の強化 タオルギャザー 足指の筋力強化 ワンレッグスクワット 大腿四頭筋、ハムストリングス、臀筋群の強化 アキレス腱のストレッチ 下腿三頭筋の柔軟性向上 バランス運動 足首の安定性と固有感覚の改善 これらの運動を週に2~3回、15~20分程度行うことを目安にしましょう。筋力強化と柔軟性の向上は、怪我のリスクを減らし、パフォーマンスの向上にもつながりやすいです。 自分に合ったペースで、無理なく継続的にトレーニングを行うことが大切です。必要に応じて、理学療法士やトレーナーに相談し、適切な運動プログラムを作成してもらうことをおすすめします。 生活習慣の見直し 日々の生活習慣も、足の健康に大きな影響を与えます。以下の点に注意して、足への負担を減らすことが大切です。日々の生活習慣も、足の健康に大きな影響を与えます。以下の点に注意して、足への負担を減らすことが大切です。 習慣 説明 適切な体重の維持 体重増加は足への負担を増大させ、疲労骨折のリスクを高めます。適切な体重管理が重要です。 バランスの取れた食事 骨の健康に必要なカルシウムやビタミンDを十分に摂取しましょう。乳製品、魚、野菜などを積極的に取り入れましょう。 十分な睡眠 睡眠不足は疲労を蓄積させ、怪我のリスクを高めます。1日7~8時間の睡眠を確保しましょう。 禁煙 喫煙は血流を悪化させ、骨密度の低下を招きます。禁煙は足の健康維持に欠かせません。 適度な休養 オーバートレーニングは疲労骨折のリスクを高めるため、適度な休養を取ることが大切です。疲労が蓄積しないように注意しましょう。 体重増加は足への負担を増大させ、疲労骨折のリスクを高めます。適切な体重管理が重要です。 適切な体重管理のためには、バランスの取れた食事と適度な運動が欠かせません。急激な減量や極端な食事制限は避け、自分に合ったペースで体重コントロールを行うことが重要です。また、定期的に体重や体脂肪率をチェックし、自身の体の変化を把握しておくことをおすすめします。 これらの生活習慣を見直し、改善することで、足の健康を長期的に維持しやすくなります。足の甲の疲労骨折は、ランナーにとって深刻な問題ですが、適切な治療と予防策を講じることで乗り越えられます。専門家のアドバイスを参考に、自分に合ったケア方法を見つけ、実践していくことが大切です。そうすることで、足の健康を維持し、ランニングをより長く、より快適に続けていくことができるでしょう。 まとめ|足の疲労骨折を理解し安全にランニングを続けよう 足の甲の疲労骨折は、足の甲にある中足骨にひびが入っている状況です。放置すると、手術が必要なほど症状が重くなってしまう可能性もあります。そのため、早期に足の疲労骨折に気づき、対処することが大切です。 また、足の甲の疲労骨折を繰り返さないためにフォームや生活習慣の見直しも併せて行いましょう。 足の甲の疲労骨折にお悩みの方、また疲労骨折ではないかと不安に思っている方は、当院でもメール相談やオンラインカウンセリングを行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。 ほかの部位の疲労骨折について知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。 \クリックで電話できます/ メール相談 オンラインカウンセリング 参考文献一覧 文献1 MSDマニュアル家庭版,中足骨の骨折,2022−09 文献2 MSDマニュアル家庭版,足の疲労骨折,2021−12 文献3 兵庫医科大学病院,もっとよく知る!病気ガイド,Jones(ジョーンズ)骨折(第5中足骨疲労骨折) 文献4 順天堂大学医学部附属順天堂医院整形外科・スポーツ診療科,Jones骨折・第5中足骨疲労骨折 文献5 横浜市スポーツ医科学センター,リハビリ室コラム,第2~4中足骨疲労骨折のリハビリテーション 文献6 一般社団法人日本骨折治療学会,骨折の解説,第5中足骨骨折・いわゆる下駄履き骨折と疲労骨折 文献7 一般社団法人日本骨折治療学会,骨折の解説,疲労骨折, 文献8 日本臨床整形外科学会,中足骨の疲労骨折 文献9 前園恵慈,日本臨床スポーツ医学会誌,陸上競技選手の低リスク骨盤・ 下肢疲労骨折の現状と競技復帰時期の検討,第27巻第3号 文献10 日本臨床スポーツ医学会誌,骨・関節のランニング障害に対しての提言,Vol. 13 Suppl. 2005.p243-248 文献11 日本スポーツ整形外科学会,スポーツ外傷の応急処置
2024.10.07 -
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適切な治療とトレーニング調整で、ランニングを続けよう 「マラソン準備中にひざに激痛が走り、疲労骨折と診断された」「早く回復して、トレーニングに戻りたい」 このような悩みを抱えるランナーは少なくありません。ひざの疲労骨折は、ランニングを続ける上で大きな障害となります。適切な治療と予防策を理解することが、健康的なランニングライフを送るために不可欠です。 この記事では、ひざの疲労骨折の原因や症状、回復のためのリハビリテーション、そして再発防止のためのトレーニング調整について詳しく解説します。正しい知識とケアを通して、疲労骨折を乗り越え、ランニングを楽しみ続けるための参考になれば幸いです。 ひざの疲労骨折とは? 疲労骨折は、繰り返しのストレスがかかることによって、骨に微小な亀裂が生じる状態を指します。ランナーにとって、ひざは特に負担がかかる部位であり、疲労骨折のリスクが高くなりやすいです。 疲労骨折の原因と一般的な症状 疲労骨折は、ひざに繰り返し負荷がかかることで徐々に発生する骨の損傷です。主な原因は以下の通りです。 急激なトレーニング量の増加 不適切なランニングフォーム 硬い路面でのランニング 足に合わない靴の使用 骨密度の低下 これらの原因が重なると、ひざの骨に過度のストレスがかかり、疲労骨折のリスクが高まります。 疲労骨折の一般的な症状は次の通りです。 部位 説明 症状 すねの骨の上端前面にある出っ張り ジャンプの着地の際に、太ももの前の筋肉が繰り返し引っ張られることで疲労骨折が起こりやすい 出っ張りの周辺に痛みや押すと痛む症状が現れる すねの骨の上端内側 ランニングの際に繰り返しストレスがかかる 膝の内側に痛みや押すと痛む症状が現れる 太ももの骨の下端外側の出っ張り ジャンプやランニングの際に繰り返し負荷がかかる 膝の外側に痛みや押すと痛む症状が現れる ひざの皿(膝の前面の骨) ジャンプ動作の多いスポーツで繰り返し負荷がかかる 膝の前面に痛みや押すと痛む症状が現れる これらの原因が重なると、ひざの骨に過度の負担がかかって、疲労骨折が起こる場合があります。痛みが徐々に強くなって、放っておくと日常生活にも支障が出る可能性があります。 疲労骨折は、ランニングだけでなく、他のスポーツや活動でも起こり得ます。 また、テニス、バスケットボール、サッカーなど、急停止や方向転換が多いスポーツでは、ひざへの負担が大きくなるため、疲労骨折のリスクが高まります。 さらに、肥満や喫煙、ステロイド薬の長期使用なども、骨密度を低下させる要因です。 疲労骨折の発生率は、年齢や性別によっても異なります。 ランナーにおけるリスク要因 ランナーは、こんな要因でひざの疲労骨折のリスクが高くなりやすいです。 ・オーバートレーニング ・急激な走行距離の増加 ・不適切なランニングフォーム ・筋力や柔軟性のアンバランス 週に走る距離を急に増やしたり、坂道や階段などの負荷の高いトレーニングを行ったりすると、ひざへの負担が大きくなります。また、大腿四頭筋や下腿三頭筋などの筋力不足や柔軟性の低下も、疲労骨折のリスクを高める要因になるでしょう。 また、ランニングシューズの選択は、疲労骨折の予防において重要です。 クッション性が不足していたり、安定性が低かったりするシューズは、ひざへの負担を増大させやすいです。 また、古くなったシューズを使い続けることも、疲労骨折のリスクを高めます。ランニングシューズは、300~500kmを目安に交換しましょう。 ランニングフォームは、疲労骨折と密接に関係しています。着地の際に、ひざを深く曲げすぎると、ひざへの衝撃が大きくなります。逆に、ひざを伸ばしたままだと、衝撃を吸収できません。理想的な着地は、ひざを約150〜160度の角度でやや曲げた状態で、足裏の中央から外側で行うことです。この角度を保つことで、衝撃を適度に吸収し、膝への負担を軽減することができます。ただし、この角度はあくまでも目安であり、個人差や走行速度、路面の状態などによって変化するため、自分に合ったフォームを見つけることが大切です。 また、ストライドが大きすぎると、ひざへの負担が増えるため、小刻みなステップを心がけましょう。姿勢も重要で、上体を前傾させすぎると、ひざに余計な力がかかってしまいかねません。 診断と初期治療 疲労骨折の早期発見と適切な初期治療は、回復への第一歩です。症状を我慢せず、迅速な行動を取りましょう。 診断プロセスの詳細 ひざの疲労骨折の診断は、以下のような手順で行われる場合がほとんどです。 診断手順 内容 問診 症状の詳細や発症時期、トレーニング状況などを聞く 身体診察 ひざの圧痛や腫れ、可動域制限などをチェック 画像検査 レントゲンやMRI、骨シンチグラフィなどで骨の状態を調べる 医師は、これらの検査結果を総合的に判断して、疲労骨折の診断を行います。また、骨折の部位や重症度によって、適切な治療方針を決めます。 初期治療の選択肢とその重要性 疲労骨折と診断されたら、初期治療では安静と患部の保護が重要です。 治療方法 説明 患部の安静 痛みを悪化させないために、しばらくランニングを控える 松葉杖やサポーターの使用 患部への負荷を減らすために、医師の指示に従って使う アイシング 痛みと腫れを和らげるために、定期的に行う 鎮痛剤の使用 必要に応じて、医師の処方に従って内服する 初期治療の目的は、骨折の悪化を防いで、痛みや腫れを抑えることです。適切な初期治療を行うことで、回復までの期間を短くし、後遺症のリスクを減らすことができるでしょう。 効果的なリハビリテーション 疲労骨折の回復には、適切なリハビリテーションが欠かせません。理学療法士の指導の下、段階的にひざの機能を回復させていきます。 回復を促進するリハビリテーション技術 ひざの疲労骨折の回復を促進するリハビリテーション技術には、以下の例があります。 リハビリテーション技術 説明 関節可動域訓練 ひざの曲げ伸ばしの動きを良くする 筋力トレーニング 大腿四頭筋や下腿三頭筋などの筋力を強くする 微小電流療法 微弱な電流で骨の治癒を促す 部分荷重トレーニング 体重の一部を徐々に骨折部位にかけていく練習 これらの技術を組み合わせることで、ひざの機能回復の効果が期待できるでしょう。 またリハビリテーションの一例と注意点は以下のとおりです。 期間 注意点 急性期(骨折直後~数週間) 安静と患部の保護が中心です。痛みに応じて、患部を動かさないようにしましょう 回復期(数週間~数ヶ月) 徐々に患部の動きを取り戻していきます。関節可動域訓練や筋力トレーニングを、痛みに注意しながら始める場合があります 維持期(数ヶ月~) 個々に合わせて日常生活に必要な動きを取り戻し、徐々にランニングへの復帰を目指します 各段階で、医師と相談しながら、無理のないペースで進めることが大切です。 また、 リハビリテーション中は、痛みや違和感に注意しましょう。痛みが強い場合は、無理せず、医師や理学療法士に相談してください。 たとえ痛みが和らいでも、急激な運動量の増加は避け、徐々に負荷を上げていくことが大切です。 日常生活での調整とサポート リハビリテーションと並行して、日常生活での調整も大切です。以下のような点に注意しましょう。 ・ひざへの負担を減らす動作の工夫 ・十分な休養と睡眠の確保 ・バランスの取れた食事 ひざへの負担を減らすにはしゃがみ込みや正座などは避けましょう。 また、食事では特にカルシウム、ビタミンDの摂取が重要です。 カルシウムとビタミンDは、骨の健康を維持するために特に重要な栄養素です。 カルシウムは、骨の主成分の一つで、骨の強度を保つために欠かせません。一方、ビタミンDは、カルシウムの吸収を助けます。 また、ビタミンDは日光に当たることで体内で合成されます。適度な日光浴も、ビタミンDの供給源として重要です。 これらの栄養素が不足すると、骨密度が低下し、疲労骨折のリスクが高まる可能性があります。 カルシウムを多く含む食品は以下のとおりです。 ・乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど) ・小魚(しらす、ししゃもなど) ・大豆製品(豆腐、納豆など) ・緑黄色野菜(小松菜、ほうれん草、ブロッコリーなど) ビタミンDを多く含む食品には以下のとおりです。 ・魚(鮭、さば、まぐろなど) ・きのこ類(しいたけ、まいたけなど) ・卵黄 ・牛乳 カルシウムの1日の推奨摂取量は、成人で800~1,000mgです。ビタミンDの推奨量は、18歳以上の成人で1日あたり8.5μgとされています。 これらの栄養素は、骨の健康を維持するために重要ですが、過剰摂取はビタミンD中毒などの別の症状を引き起こす可能性があるため注意が必要です。 また、骨密度を維持するためには、バランスの取れた食事に加え、禁煙と禁酒も大切です。喫煙は、骨密度を低下させるだけでなく、骨折の治癒を遅らせる効果もあります。 同様に、飲酒も骨の健康に悪影響を及ぼします。アルコールは、カルシウムの吸収を阻害し、骨密度を低下させる可能性があります。したがって、骨折の予防と回復のためには、禁酒が推奨されます。 骨折の回復期には、家族や友人の理解とサポートも大きな力となります。周囲の人に協力を求め、サポートを受けることも大切です。 トレーニングと再発防止 ひざの疲労骨折からの回復後は、適切なトレーニング方法と再発防止策が重要です。無理のないペースで、徐々に運動量を増やしていきましょう。 適切なトレーニング方法と強度の調整 再発を防ぐためには、医師や理学療法士の指示のもと以下のようなトレーニング上の工夫が必要です。 ・徐々にトレーニング量を増やす ・十分なウォームアップとクールダウンを行う ・クロストレーニングを取り入れる ・ひざへの負担を軽減するランニングフォームを習得する また、ランニングシューズの選択や定期的な交換も重要です。医師や理学療法士、トレーナーのアドバイスを参考に、自分に合ったシューズを選びましょう。 ランニングへの復帰ステップの一例は以下のとおりです。 ウォーキングから始める 軽いジョギングを導入 ランニング距離・ペースを徐々に増加 レース出場を検討 しかし回復する過程は、骨折の状態や年齢などによって異なるため個人差が大きいです。 医師と相談しながら自分のペースですすめましょう。 また、疲労骨折の予防策と具体例は以下のとおりです。 予防策 説明 適切なランニングシューズの選択 クッション性と安定性のバランスが取れたシューズを選ぶ ランニングフォームのチェック 着地の衝撃を減らすフォームを心がける トレーニング計画の作成 急激な距離・ペースの増加は避け、徐々に負荷を上げていく 長期的な健康維持のためのストラテジー ひざの健康を長期的に維持するためには、以下のような対策を心がけましょう。 ・定期的な筋力トレーニングと柔軟性の維持 ・適切な栄養摂取と体重管理 ・オーバートレーニングの回避 ・定期的な健康チェックと早期の異変への対応 これらを日々の生活に取り入れると、ひざの疲労骨折の再発を防ぎ、健康的なランニングライフを送ることができるでしょう。 また、疲労骨折の回復には、身体的な治療だけでなく、心のケアも重要です。 長期の休養を余儀なくされることで、ストレスやフラストレーションを感じることもあるでしょう。 家族や友人、医療従事者と話をすることで、心の負担を軽くする効果が期待できます。 また、回復期間中は、ランニング以外の趣味や興味を見つけることで、生活にメリハリをつけることもおすすめです。 まとめと今後の計画 ひざの疲労骨折は、ランナーにとって深刻な問題ですが、適切な治療と予防策によって乗り越えられるでしょう。回復のためには、段階的なリハビリテーションと日常生活での調整が不可欠です。 疲労骨折の管理と競技への復帰 ひざの疲労骨折からの回復と競技への復帰には、以下のポイントが重要です。 ・医師や理学療法士との連携 ・無理のない段階的なトレーニング計画 ・痛みや違和感への注意 ・適切な休養とリカバリー 自分のペースで着実に進んでいくことが、健康的な競技復帰への近道です。 定期的なフォローアップと自己モニタリングの重要性 疲労骨折の再発を防ぐためには、定期的な体調管理と把握が欠かせません。以下のような点に注意しましょう。 ・定期的な検診 ・痛みや違和感の早期発見 ・トレーニング日誌の記録 ・体調変化への迅速な対応 自分の体の声に耳を傾け、異変に早めに気づくことが大切です。 ひざの疲労骨折は、ランナーにとって大きな問題ですが、適切な知識とケアによって乗り越えられるでしょう。回復と再発防止のためには、医師や理学療法士との連携と自己管理が不可欠です。 ランニングを楽しみ続けるために、自分の体と向き合い、健康づくりに取り組みましょう。 参考文献一覧 MSDマニュアル家庭版,骨折の概要 日本スポーツ整形外科学会,スポーツ損傷シリーズ,疲労骨折 日本臨床整形外科学会,疲労骨折・腰痛 日本生活習慣病予防協会,骨粗鬆症 ドクターズファイル,疲労骨折 日本骨折治療学会,骨折の解説,疲労骨折 厚生労働省,アルコール MSDマニュアル家庭版,足の疲労骨折 e-ヘルスネット,喫煙によるその他の健康影響 e-ヘルスネット,カルシウム 日本人の食事摂取基準(2020 年版),②ビタミン D,p178-187 農林水産省,みんなの食育,大切な栄養素カルシウム 日本陸上競技連盟,疲労骨折予防10か条
2024.10.04 -
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「疲労骨折は自然治癒する?」「どのくらい休めば治るの?」 このような悩みを抱えるランナーは少なくありません。疲労骨折について、自然治癒するのか、病院に行くべきか悩む方もいるのではないでしょうか。 結論からいえば、疲労骨折は安静にすることで自然治癒するケガです。早く治してまたランニングを楽しむためには、疲労骨折について理解を深め、正しくケアする必要があります。 この記事では、疲労骨折の原因や症状、自然治癒のプロセス、そして復帰目安と予防策について詳しく解説します。正しい知識とケアを通して、疲労骨折を乗り越え、ランニングを楽しみ続けるための参考になれば幸いです。 疲労骨折は自然治癒できる!早く治すには「安静にすること」が大切 結論からいえば、疲労骨折は自然治癒するケガです。しかし、なにも対策せずに放置していても早く治るわけではありません。 疲労骨折を早く自然治癒させるには、疲労骨折がどうして発症するのか、どのような状態なのかを理解する必要があります。本章をしっかりと確認し、疲労骨折についての理解を深めてください。 疲労骨折の原因と典型的な症状 疲労骨折は、以下のような要因が重なると発生しやすくなります。 急激なトレーニング量の増加 不適切なランニングフォーム 硬いランニングサーフェス 足に合わない靴の使用 骨密度の低下 疲労骨折の症状は、以下のようなものがあります。 症状 説明 運動時の痛み 特定の部位の痛み 安静時の痛みの持続 休んでいても痛みが続く 腫れや圧痛 患部が腫れたり、押すと痛みを感じる 皮膚の発赤や熱感 患部の皮膚が赤くなったり、熱を持つ これらの症状が継続する場合は、疲労骨折の可能性が高いと考えられます。 疲労骨折は足をはじめ、膝や腰などにも発症しやすいケガです。以下の記事では、ランナーに多い「膝」と「足の甲」の疲労骨折について解説しています。気になる方はぜひ一度ご覧ください。 疲労骨折は通常の骨折と違い使いすぎによるもの 疲労骨折は運動などで体を使いすぎたことによって生じるケガです。病名には「骨折」とありますが、通常の骨折とは発症のメカニズムが異なります。 通常の骨折は転倒などの衝撃によって骨が折れるのに対し、疲労骨折は走った際の衝撃や筋肉が引っ張る力が繰り返し同じカ所に加わることで生じるケガです。 そのため、疲労骨折を治すためにはケガしたカ所への負担を減らし、安静にすることが大切といえます。もし疲労骨折と診断されたら、治るまでは運動を中止しましょう。 ちなみに以下の記事では脛(すね)の使いすぎによって生じるシンスプリントについて解説しています。疲労骨折でお悩みの方はぜひご覧ください。 【自然治癒】疲労骨折を早く治す3つの方法! 疲労骨折を早く治す方法として、以下3つが挙げられます。 6〜8週間は安静にし、休息時間を取る 自然治癒を促進する栄養を摂取する 整形外科を受診し、運動療法や物理療法などのリハビリを受ける 疲労骨折で早く自然治癒させるためには、一旦運動せずに体を休めて安静期間を作りましょう。安静が必要な期間は疲労骨折の重症度によって変わり、症状が重たい場合にはより長く安静にする必要があります。 ここからは、自然治癒を早めるために大切な方法を3つご紹介します。本章を参考に、正しい疲労骨折のセルフケアを実施しましょう。 6〜8週間は安静にし、休息時間を取る 疲労骨折には6〜8週間の安静と休息時間が必要といわれています。ただし、骨折の部位や重症度によって、治癒に必要な期間は異なるので、まずは整形外科で検査を受けることをおすすめします。医師に疲労骨折の程度を確認してもらい、適切な指示を受けましょう。 疲労骨折のタイプと治癒の目安期間は以下のとおりです。 骨折のタイプ 治療期間の目安 脛骨(シンスプリント) 4~8週間 中足骨 6~8週間 大腿骨頸部 8~12週間 腰椎 6~12週間 ただし、これらは一般的な目安であり、治癒期間には個人差があるので注意してください。 また、疲労骨折の自然治癒には、以下の条件が必要といわれています。 ・十分な安静と休息 ・患部への負荷の回避 ・適切な栄養摂取 これらの条件を守れば、疲労骨折の自然治癒を早められる可能性があります。疲労骨折で悩んでいる方は、ぜひ実践してみてください。 自然治癒を促進する栄養を摂取する 自然治癒を促進するためには、適切な栄養摂取が重要です。以下の栄養素は、疲労骨折の自然治癒を早めてくれる可能性がある、おすすめの食材です。 栄養素 食べ物 カルシウム ・乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど) ・小魚(しらす、小あじなど) ・大豆製品(豆腐、納豆など) ・緑黄色野菜(小松菜、ブロッコリーなど) ビタミンD ・魚(鮭、さんま、いわしなど) ・きのこ類(しいたけ、まいたけなど) ・卵黄 タンパク質 ・肉類(鶏肉、豚肉、牛肉など) ・魚介類(鮭、まぐろ、えびなど) ・大豆製品(豆腐、納豆、油揚げなど) ・卵 ・乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど) 上記の食材を食事にバランス良く取り入れ、疲労骨折の回復効果を高めましょう。 整形外科を受診し、運動療法や物理療法などのリハビリを受ける 疲労骨折の回復を早めるためには、整形外科を受診し、運動療法や物理療法など適切なリハビリを受けることをおすすめします。リハビリは自己判断で行わず、必ず医師の許可を得てから開始し、理学療法士の指導のもとで段階的に進めましょう。 疲労骨折時のリハビリの種類は以下のとおりです。 種類 目的 具体的な方法(例) 注意点 段階的な運動負荷 徐々に運動量を増やしていく ・低強度から開始し、耐久性をつける ・痛みに注意しながら、負荷を徐々に上げる 骨折部位に過度な負荷をかけないよう、医師の指示に従う 全身的な筋力トレーニング 骨折部位周辺および全身の筋力維持・強化 ・体重負荷や抵抗運動を取り入れる ・患部周辺の筋肉だけでなく、全身の主要な筋群をトレーニング ・コアスタビリティトレーニング(体の中心部の筋肉を鍛える運動)の導入 骨折部位の筋力トレーニングは、完全に治癒するまで控える 関節可動域訓練 関節の柔軟性維持 ・ストレッチや筋緊張の緩和を促す ・患部の関節および全身の主要な関節を動かす運動 骨折部位の関節は、医師の許可があるまで動かさない バランス訓練 再発予防とパフォーマンス向上に有用 ・片脚立ちや不安定な面(例:バランスボール)での立位保持 ・動的なバランス運動 ・プロプリオセプション(体の位置感覚)トレーニング 骨折部位に体重をかけない方法から始める 代償動作の修正 不適切な動作パターンの改善 ・歩行分析と修正 ・日常生活動作の評価と指導 骨折部位を保護しながら行う このアプローチにより、骨折部位を適切に保護しつつ、全身のコンディショニングと再発予防に焦点を当てたリハビリが可能となります。常に無理のない範囲で、徐々に活動レベルを上げていくことが大切です。痛みがある場合は必ず中止し、医師に相談してください。 また、リハビリには上記のような運動療法だけでなく電気や超音波を利用した物理療法もおこないます。物理療法では骨への血流促進効果や炎症を抑える作用があり、疲労骨折の治療として有効です。物理療法には以下のようなものがあります。 種類 効果 アイシング 痛みと腫れの緩和に効果的 電気刺激療法 痛みの軽減と筋肉の緊張緩和 超音波療法 骨の治癒を促進する可能性あり 物理療法は疲労骨折による痛みの軽減や骨の自然治癒促進に働く可能性があります。効果には個人差がありますが、疲労骨折を早く自然治癒したい方は積極的に取り入れてみてください。 【再発に注意】疲労骨折後に運動復帰する2つの目安 疲労骨折から運動を再開するときに注意すべきなのは疲労骨折の再発です。 疲労骨折の治療中、安静にしていた体は想像以上に筋力・体力が衰えている可能性があります。そのため、運動復帰時の強度に注意が必要です。 これからご紹介する2つの目安を参考に運動を再開し無理をしないように心がけてください。それでも判断に迷う場合には、必ず医師の判断を仰いでから運動を再開しましょう。 なお、当院リペアセルクリニックでおこなっている再生医療は疲労骨折にも効果が期待できます。興味がある方はメール相談もしくはオンラインカウンセリングでお気軽にご相談ください。 骨折部位を押したり叩いたりして痛みがない 骨折部位を押したり叩いたりして痛みがない場合、運動を再開できる目安といえます。 疲労骨折時は、骨折部位を押したり叩いたりすると痛みを感じることが多くあります。 痛みがなければ疲労骨折が治癒している可能性があるため、少しずつ運動を再開しても良いでしょう。 逆に押したり叩いたりしたときに少しでも痛みを感じるようであれば、無理せず安静にすることをおすすめします。 運動動作をしてみて痛みがない ジョギングなどの軽い運動動作をしてみて痛みがない場合も、運動再開の目安です。 運動再開時は疲労骨折する前と同じ運動量ではなく、負荷をかけすぎないように注意してください。走るときもまずはジョギング程度から開始し、時間・距離を短くして軽く走ると良いでしょう。 安静期間が長いほど体は衰えている可能性が高いため、急に激しく動かすと疲労骨折の再発の原因になりかねません。 軽めのジョギング程度から開始し、徐々に時間・距離を伸ばして体を運動に慣らしましょう。 また、疲労骨折の再発を予防するためのポイントは次項で詳しく紹介しています。疲労骨折後に運動復帰する上で大切なことなので、ぜひチェックしてみてください。 疲労骨折を予防する2つのポイント 疲労骨折を予防するためにはトレーニング方法の見直しとライフスタイルの調整が重要です。ここから疲労骨折を予防するためのポイントを2つご紹介しますので、ぜひ実践してみてください。 トレーニングは自分に合った方法と負荷で行う 疲労骨折を予防するためには、自分に合った方法・負荷で行うことが大切です。トレーニングでは、以下4つのポイントを抑えておきましょう。 トレーニングのポイント 詳細 段階的にトレーニング量を増やす 増やす負荷は「週10%以下」が目安 たとえば10kg→11kg程度で、1週間の間でそれ以上は上げない 十分なウォームアップとクールダウンを行う ウォーミングアップは運動をするための準備が整い、怪我を予防できる クールダウンは疲労回復効果があり、疲労骨折を予防できる 適切な休養日を設ける 体を休めることで、使いすぎによる疲労骨折を予防できる 具体的に、週1回以上の休息がおすすめ クロストレーニングを取り入れる 全身を使う水泳などのクロストレーニングは一部位への負担を軽減し、疲労骨折の予防につながる 急激に大きな負荷をかけたり、休まず動かし続けたりすると、疲労骨折のリスクが高くなります。 トレーニングの負荷は段階的に増やすよう意識し、週1回以上は身体を休めるようにしましょう。 規則正しいライフスタイルで骨を休ませる 疲労骨折を予防するには、十分な休息で骨を休ませる規則正しいライフスタイルが重要です。以下のようなライフスタイルの調整が役立ちます。 ライフスタイルの調整 具体的な方法 バランスの取れた食事 ・カルシウム豊富な食品(乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜など)を摂取する ・ビタミンD含有食品(鮭、さんま、きのこ類、卵黄など)を取り入れる 適度な日光浴 ・1日15~30分程度、日中の太陽光を浴びる 禁煙 ・ニコチン代替療法(ニコチンパッチ、ガムなど)を活用する ・禁煙外来や禁煙プログラムに参加する ・禁煙に理解のある友人や家族に協力を求める 過度なアルコール摂取の制限 ・1日の飲酒量を、男性は20g、女性は10g未満に抑える ・アルコールを含まない飲み物を積極的に摂取する ・アルコールの代わりにストレス解消法を見つける 疲労骨折の予防には、適切な栄養摂取が欠かせません。 また、意識的に太陽の光を浴びたり、喫煙や過度な飲酒を避けたりすることも、疲労骨折の予防につながります。 定期的な骨密度検査を受け、骨の健康状態をチェックすることも大切です。疲労骨折の予防や早期発見のためにも、整形外科にて定期的な骨密度検査や診察を受けておくと安心です。 まとめ|疲労骨折を早く自然治癒させるためには安静が重要! 疲労骨折は身体の使い過ぎによって起こるケガであり、自然治癒するケースが多くあります。疲労骨折を早く自然治癒させるためには、しっかりと安静にすることが大切です。 また、自然治癒を早めてくれる栄養の摂取や、運動復帰後のトレーニングの進め方も大切です。この記事で紹介したことを実践し、疲労骨折の予防や再発防止に努めましょう。 ちなみに当院リペアセルクリニックでおこなっている再生医療は、疲労骨折をはじめとするスポーツ障害の治療にも有効です。気になる方はメール相談もしくはオンラインカウンセリングでお気軽にご相談ください。 この記事が少しでも役に立てば光栄です。 \クリックで電話できます/ メール相談 オンラインカウンセリング 疲労骨折についてよくある質問 疲労骨折は自然治癒しますか? 疲労骨折は自然治癒するケガです。安静にし、骨折部位に負担をかけなければ自然治癒していくでしょう。しっかりと栄養を摂り、運動療法や物理療法を併用すればより早く自然治癒する可能性もあります。 疲労骨折で多い部位はどこですか? 足の中足骨や膝・肋骨・腰椎・脛に多く発症します。 これらの部位はあらゆるスポーツでよく使われる骨です。とくに長い距離を走ったり、体を捻ったりするスポーツ選手は注意が必要なため、疲労がたまらないようケアを心がけてください。
2024.09.06 -
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正しい理解と適切なケアで、健康な腰を取り戻そう 「重い物を持ち上げたら、急に腰に激痛が走った」「医師から腰椎の疲労骨折の疑いがあると言われたけど、どうすればいいの?」 このような悩みを抱える方は少なくありません。 特に、重労働に従事する人にとって、腰椎の疲労骨折は、日常生活や仕事に大きな影響を与え、不安や苦痛を伴う深刻な問題となるでしょう。適切な治療と予防策を理解することが、健康な腰を維持するために不可欠です。 この記事では、腰椎疲労骨折の原因や症状、治療法、そして再発防止策について詳しく解説します。正しい知識と適切なケアを通して、再発のリスクを減らし、健康的な生活を送ることができるでしょう。 腰椎疲労骨折の概要 腰椎疲労骨折は、腰の骨(腰椎)に生じる骨折の一種で、重労働や繰り返しの負荷が主な原因となります。 腰椎疲労骨折とは何か? 腰椎疲労骨折は、腰椎の「椎体」と呼ばれる部分に微小な亀裂が生じる状態を指します。椎体は、腰椎を構成する主要な骨の部分で、体重を支える重要な役割を担っています。一度の強い衝撃ではなく、長期的な負荷の蓄積によって引き起こされます。重い物を繰り返し持ち上げるような作業は、腰椎疲労骨折のリスクを高めます。 発症する主な原因と症状 腰椎疲労骨折の主な原因は、以下のとおりです。 重労働や繰り返しの負荷 不適切な姿勢や体の使い方 加齢に伴う骨密度の低下 骨粗鬆症などの基礎疾患 腰椎疲労骨折の症状は、単なる腰痛とは異なり、特有の特徴があります。 安静時にも持続する鈍い痛み 特定の姿勢や動作で増悪する痛み 腰の特定の場所を押すと痛みを感じる(圧痛) 腰の特定の場所をトントンとたたくと痛みを感じる(叩打痛) これらの症状は、時間の経過とともに徐々に悪化する場合が多いです。最初は軽度の痛みで済んでいても、放置すれば日常生活や仕事に大きな支障をきたすようになります。 特に、建設作業員のような重労働に従事する方は、症状が悪化しやすい傾向にあります。重い物を持ち上げる動作を繰り返すことで、腰椎への負担が蓄積し、椎体の微小な亀裂が進行してしまうのです。 そのため、疲労骨折が疑われる場合は、早期の診断と適切な治療が不可欠です。症状が軽度のうちから、医師の指導の下で安静や薬物療法、リハビリテーションなどを開始することが大切です。適切な治療を行うことで、痛みの軽減と日常生活の質の向上が期待できます。 症状の特定と初期対応 腰椎疲労骨折の症状に気づいたら、早めの対処が大切です。症状を見逃さないよう注意し、速やかに行動しましょう。 腰椎疲労骨折の典型的な症状 腰椎疲労骨折の症状は、以下のとおりです。 症状 説明 腰の痛み 特に、特定の部位に限局した痛みが特徴的 お尻の痛み 片側または両側のお尻の痛み、座った際の痛みなど 太ももの痛みやしびれ 太ももの前面や外側の痛みやしびれ、感覚の変化など 運動時や体重負荷時の痛みの増悪 動作によって痛みが悪化する 安静時の痛みの持続 休んでいても痛みが持続する 腰の可動域制限 腰の動きが制限され、硬くなる 圧痛や叩打痛 腰の特定の場所を押したりたたいたりすると痛む 腰椎疲労骨折の症状は、腰の痛みだけでなく、お尻や太ももにも現れるケースがあります。これは、腰椎の骨折により、神経が圧迫されることで起こります。 お尻や太ももの痛み、しびれ、筋力低下などの症状は、腰椎疲労骨折のサインかもしれません。これらの症状が継続する場合は、医師の診察を受ける必要があります。 早期発見と適切な治療が、スムーズな回復につながるでしょう。 医師は、症状や検査結果を総合的に判断し、症状の重症度や原因に応じて、最適な治療方針を提案します。 疲労骨折を疑ったらすぐに行うべきこと 腰椎疲労骨折が疑われる場合、まずは以下の初期対応を行いましょう。 対処法 説明 安静 無理な活動を控え、医師の指示に従って適切な期間の安静を取る 痛みの緩和 アイシング(冷却)や医師の指示に従った鎮痛剤の使用で痛みを和らげる 医師の診察 早めに受診し、詳しい症状の聞き取りと必要な検査で正確な診断を得る 医師の診察では、症状や経過を詳しく聞き取り、必要な検査を行って正確な診断を下します。適切な診断に基づいて、適切な治療方針を決定します。 腰椎疲労骨折は、初期対応が適切であれば、痛みの軽減と日常生活動作の回復が期待できます。しかし、症状を放置すると、骨折がさらに進行し、回復が遅れかねません。疲労骨折が疑われる場合は、早期の診断と適切な治療が不可欠です。 治療オプションと回復プロセス 腰椎疲労骨折の治療は、重症度によって異なります。保存的治療から外科的治療まで、医師と相談しながら最適な方法を選択しましょう。 保存的治療法:安静と物理療法 多くの場合、腰椎疲労骨折は保存的治療で改善します。安静と物理療法が治療の中心です。 保存的治療の内容(例) 説明 安静 4~8週間の安静期間が一般的。この間は腰への負担を避ける コルセットの使用 疲労骨折の状態によってはコルセットを装着する。腰椎を固定し、安静を補助するための装具であり骨折部位の安定化と痛みの軽減に役立つ 物理療法 腰椎の可動域維持や筋力強化を図る。姿勢の改善やボディメカニクス(体の動かし方)の指導も行う 腰椎疲労骨折の急性期には、無理な活動を控え、安静を保つことが大切です。安静期間中は骨折の状況に応じてコルセットを使用し、腰椎への負担を最小限に抑える場合もあります。 デスクワークの場合は、長時間の座位は避け、こまめに休憩を取りましょう。また、重量物を扱う作業は控えるべきです。 安静期間後、医師の許可が出たら、徐々に活動量を増やしていきます。急激な活動の再開は避け、腰への負担を徐々に増やしていくことが大切です。 物理療法は、医師の指示に従って、適切な時期に開始します。初期は、ストレッチや軽度の筋力トレーニングから始め、徐々に強度を上げていき、必要に応じて日常生活動作の指導をします。 腰部の疲労骨折からの回復期には、腰への負担を最小限に抑えることが重要です。 以下は、日常生活での動作例です。 ベッドから起き上がる際は、腰を反らさないよう注意し、横向きになってから腕の力を用いて上体を起こします。腰に力を入れず、体幹全体を一つの単位として動かすようにします 椅子から立ち上がる際は、両手で椅子の座面を押し、腰を前後に動かさずに膝を伸ばして立ち上がります。腰に負担をかけないよう、脚の力を使って立ち上がることが大切です 重い物を持ち上げる際は、腰を曲げるのではなく、膝を曲げて腰を落とし、背筋をまっすぐに保ったまま持ち上げます。腰を捻らないよう、体全体で向きを変えるようにします このように、日常生活のさまざまな場面で、腰への負担を減らし、腰部の可動を制限するための動作の仕方を身につけることが大切です。特に「腰を反らない」「腰に力を入れない」「腰を捻らない」ことを意識しましょう。 理学療法士が、患者一人一人の状態や疲労骨折の部位、程度に合わせて、適切な指導を行います。回復の各段階に応じて、徐々に活動レベルを上げていくことが重要です。 また、痛みに対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や筋弛緩薬、鎮痛薬などが処方されます。これらの薬は、炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待されます。 外科的治療法の検討とその時期 保存的治療で十分な改善が見られない場合や、重度の骨折、神経症状を伴う場合などは、外科的治療が検討されます。手術の方法は、骨折部位の固定や骨移植などです。 手術は、痛みの軽減、脊柱の安定化、神経症状の改善などを目的として行われます。 手術後は、リハビリテーションが重要です。理学療法士の指導の下、徐々に活動レベルを上げていきます。 手術が必要かどうかは、症状や画像所見、全身状態などを総合的に判断して決定されます。一般的な判断基準は、以下のとおりです。 保存的治療を3〜6ヶ月間行っても、十分な改善が得られない場合 骨折部位の不安定性が高く、脊柱の変形や神経症状の悪化が懸念される場合 骨折によって神経が圧迫され、重篤な神経症状が現れている場合 ただし、手術の適応は個々のケースによって異なります。医師が患者の状態を詳しく評価し、手術のメリットとリスクを十分に説明した上で、患者と相談しながら治療方針を決定します。 日常生活での予防策と再発防止 腰椎疲労骨折を経験した人にとって、再発防止は重要でしょう。日常生活での姿勢の改善や、仕事中の安全対策が欠かせません。 日常生活での姿勢の改善と運動療法 腰椎疲労骨折の予防には、以下のようなポイントがあります。 適切な姿勢の保持 重量物の正しい持ち上げ方の習得 定期的な運動による腰部や体幹の筋力維持 骨密度の維持(バランスの取れた食事、適度な日光浴など) 日常生活の中で、腰への負担を減らす工夫を心がけるのが大切です。 腰椎疲労骨折は、早期発見と適切な治療が重要です。症状を見逃さないようにすることが大切です。医師や理学療法士と相談しながら、しっかりと治療に取り組み、痛みを和らげ、仕事や趣味活動への復帰を目指しましょう。 また、継続的な予防策を実践することで、将来的な疲労骨折のリスクを抑えられやすくなります。 仕事中のリスク管理と安全な作業手順 仕事中のリスク管理と安全な作業手順は、腰椎疲労骨折の予防に欠かせません。 特に重労働に従事する人は、以下の点に注意をする必要があります。 項目 ポイント 詳細 1. 適切な重量制限の順守 ・持ち上げる物の重量が自分の体力に合っているか確認する ・可能な限り、重量物を分割して運ぶ ・重量制限を超える物は、同僚と協力して持ち上げる 自分の体力を過信せず、無理をしないことが重要です。重量物を扱う際は、常に安全を優先しましょう。 2. 重量物を持ち上げる際の正しい体の使い方 ・身体の重心を低くし、物を体に近づけて持ち上げる ・膝を曲げ、腰ではなく脚の力で持ち上げる ・急な動作は避け、ゆっくりと持ち上げる 正しい姿勢と技術を用いることで、腰への負担を大幅に軽減できます。定期的に正しい持ち上げ方の訓練を受けることをお勧めします。 3. 休憩の確保と作業の分散 ・長時間の連続作業は避け、こまめに休憩を取る ・同じ姿勢を長時間続けない ・作業内容を変化させ、特定の部位への負担を避ける 適切な休憩と作業の分散は、疲労の蓄積を防ぎ、怪我のリスクを低減します。作業スケジュールを適切に管理することが重要です。 4. 必要に応じた補助具の使用 ・重量物の運搬には、台車や手押し車を使用する ・高所での作業には、脚立や昇降台を使用する ・重い物を持ち上げたり、力を入れて押したりする作業では、腰ベルトの着用を検討する 適切な補助具の使用は、作業効率を上げるだけでなく、身体への負担を軽減します。腰ベルトは、重量物を扱う際に腰部を安定させ、怪我のリスクを減らすのに役立ちます。ただし、正しい使用方法を守ることが重要です。 さらに、定期的な健康チェックを受け、腰の状態を確認することも重要です。 仕事と腰の健康は、切り離せない関係にあります。自分の体を守るためにも、リスク管理と予防策の実践を心がけましょう。疑問や不安があれば、主治医や職場の安全管理者に相談しましょう。 長期管理と健康の維持 腰椎疲労骨折を予防し、健康な腰を維持するには、長期的な視点が必要です。定期的な検診と継続的な運動が鍵となります。 定期的な医療チェックアップの重要性 腰椎疲労骨折のリスクがある人は、定期的な医療チェックアップを受けることが強く推奨されます。これにより、腰椎の状態を詳しく評価し、疲労骨折の兆候を早期に発見することができます。チェックアップでは、以下のような検査が行われます。 検査項目 目的 腰椎X線検査 腰椎の構造や骨折の有無を確認する 骨密度測定 骨密度を評価し、骨粗鬆症の有無を調べる 血液検査(骨代謝マーカーなど) 骨の新陳代謝の状態を評価する これらの検査結果を総合的に評価することで、腰椎疲労骨折のリスクを判断し、必要に応じて予防策や治療方針を決定します。 定期的なチェックアップの間隔は、個人のリスク因子によって異なります。一般的には、以下のような場合に、より頻繁なチェックアップが推奨されます。 過去に腰椎疲労骨折の既往がある 骨粗鬆症と診断されている ステロイド薬を長期間使用している 喫煙や過度のアルコール摂取などの生活習慣がある 定期的な検診を継続することで、腰椎疲労骨折の早期発見と予防に役立つでしょう。 腰の健康は、私たちの日常生活の質に直結する重要な問題です。定期的な医療チェックアップを活用し、自分の腰の状態を把握することから始めましょう。 継続的な体力強化と予防のための運動 長期的な腰椎疲労骨折の予防には、継続的な体力強化が欠かせません。以下のような運動を日課に取り入れることをおすすめします。 ウォーキングやスイミングなどの有酸素運動 腰椎周囲の筋力トレーニング 柔軟性を高めるストレッチ バランス運動 運動の種類 効果 具体例 有酸素運動 全身の血行を促進し、体重管理に役立つ ウォーキング、水中歩行、エアロバイク 体幹筋力トレーニング 腰椎を支える筋肉を強化し、安定性を高める プランク、サイドブリッジ、腹筋運動 下肢筋力トレーニング 腰部での動作を下肢で補い、全体的な安定性を向上させる スクワット、ランジ、レッグプレス ストレッチ 筋肉の柔軟性を維持し、腰椎への負担を軽減する ハムストリングストレッチ、腰回りのストレッチ バランス運動 転倒防止と姿勢の改善に役立つ 片足立ち、バランスボールでの運動 運動の種類や強度は、自分の体力レベルや健康状態に合わせて医師と相談しながら、調整しましょう。無理のない範囲で、継続的に運動を続けることが長期的な健康維持につながります。腰椎疲労骨折は、重労働に従事する人にとって深刻な問題ですが、適切な治療と予防策を実践することで、リスクを最小限に抑えられるでしょう。 正しい知識を身につけ、自分に合ったケア方法を見つけることが重要です。健康的な生活習慣を身につけ、仕事もプライベートも充実した毎日を送りましょう。 参考文献一覧 MSDマニュアル家庭版."骨折の概要" 日本スポーツ整形外科学会."スポーツ損傷シリーズ-疲労骨折" 日本臨床整形外科学会."疲労骨折・腰痛" 日本脊椎脊髄病学会."脊椎脊髄疾患について・主な症状" 日本生活習慣病予防協会."骨粗鬆症” 村山医療センター."腰椎分離症" 教えて!先生!腰痛の専門医による安心アドバイス."腰の疲労骨折・脊椎分離症(腰椎分離症) 日本脊髄外科学会."腰椎分離症・分離すべり症" 徳島県医師会." 腰椎分離症 -病期・病態に応じて治療-" 日本整形外科学会."「腰椎分離症・分離すべり症」" 厚生労働省."腰痛予防対策” 厚生労働省."職場における腰痛予防対策指針及び解説" ドクターズファイル."疲労骨折" 医療法人大場整形外科."腰椎疲労骨折" 日本骨折治療学会."骨折の解説-疲労骨折"
2024.07.29 -
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失ったはずの腕や脚が痛むのはどうして? 幻肢痛に効果的な治療法はあるの? この記事に辿り着いたあなたは、幻肢痛に悩んでおり、なんとかして痛みを和らげたいと感じているのではないでしょうか。 幻肢痛の治療法には「薬物療法」や「鏡療法」などの選択肢があり、複数の方法を組み合わせて治療を進めることもあります。ご自身の状態に合った治療法を試すことが大切です。 本記事では、幻肢痛でよく用いられる治療法やセルフケア、そして新しい治療法について解説します。幻肢痛に悩んでいる、また幻肢痛に苦しむ方の力になりたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。 幻肢痛に対する4つの治療法 幻肢痛(げんしつう)とは、事故や病気で四肢を切断したあと、失ったはずの腕や足に痛み・しびれを感じる現象です。四肢の切断によって脳内にある身体の地図が書き換わり、認識と感覚の不一致が生じて起こるといわれています。 幻肢痛の一般的な治療方法は、以下の4つです。 薬物療法 鏡療法 電気刺激療法 リハビリテーション ひとつの治療法で痛みが緩和され、一定の効果が得られる場合もありますが、さまざまな方法を組み合わせて治療を進めていくケースが多いです。 本章を参考に、幻肢痛における治療法の選択肢を知っておきましょう。 薬物療法 薬物療法では、以下のような種類の薬を使用します。 鎮痛薬 抗けいれん薬 抗うつ薬 抗てんかん薬 抗不整脈薬 オピオイド系鎮痛薬(モルヒネやドラマドール)が使われるケースもありますが、依存や乱用のリスクが高く副作用も懸念されるため、使用は慎重におこなうべきだと考えられています。 また、局所療法として、カプサイシンクリームの塗布やリドカインスプレーの噴霧などがおこなわれる場合があります。 いずれにしても、薬物療法は作用と副作用のバランスを考え投与するのが望ましいため、主治医と十分コミュニケーションを取りましょう。 鏡療法 鏡療法は、ミラーセラピーとも呼ばれている方法です。 健常な四肢を幻肢があるかのように鏡に映します。健常な四肢を動かすと、鏡にも同様に映るため、あたかも幻肢を動かしていると錯覚するのです。 これを繰り返すうちに、「幻肢が思った通りに動いている」と脳が認識するようになります。知覚と運動の情報伝達が脳内で再構築され、幻肢痛が軽減していきます。 具体的な方法は以下のとおりです。 1. 身体の正面中央付近に適切な大きさの鏡を設置します。 2. 切断部位が見えないようにし、健常肢が鏡に映るように調整します。 3. 鏡に映った健常肢の像がちょうど幻肢の位置と重なるようにします。 4. 健常肢側から鏡を見ると、幻肢があるかのように鏡に映ります。 5. その状態で健常肢でさまざまな動きをし、鏡の像を集中して見ます。 鏡療法をおこなう時間は決められていませんが、15分~30分程度おこなうのが一般的です。ただし、疲労状況や集中できる時間を考慮して、調整しましょう。 電気刺激療法 電気刺激療法には、3つの種類があります。 脊髄刺激 視床刺激 大脳皮質刺激 脊髄刺激を与えると、痛みが脳に伝わりにくくなります。刺激を与えると、痛みの伝達を抑制する物質が増加するため、神経の興奮を抑制して痛みの緩和につながるのです。 また、大脳皮質にある一時運動野や視床へ電気刺激を与えても、幻肢痛を和らげるケースが報告されています。刺激を与える部位は、切断部位や神経の残っている部分によって治療方法が異なります。 リハビリテーション 義肢や装具には、失った機能や役割を補うだけでなく、幻肢痛を和らげる効果があります。 義肢や装具の装着は、鏡療法と同様に脳に失った四肢を認識させるため、義肢の装着が日常的になると幻肢痛も消失していく場合が多いです。 ただし、幻肢痛がひどく、義肢や装具の装着ができない場合もあります。リハビリは、医師をはじめ、理学療法士や義肢装具士など、医療者と相談しながら進めていきましょう。幻肢痛は、常に一定に感じているわけではなく、突然襲われる場合もあります。 寝ていても飛び起きてしまうような突然の痛みに襲われたり、失った手足が締め付けられるように感じたり、痙攣している、幻肢がねじれる、しみるなど、感じ方や程度はさまざまです。 数年で幻肢痛がなくなる方もいれば、長年痛みに苦しめられる方もいます。そのため治療法の選択は、医師をはじめとするさまざまな医療者と相談し、それぞれの痛みの程度やライフスタイルに合わせた継続できる治療法の選択が必要でしょう。 幻肢痛治療経験者の中には、治療に成功し、徐々に痛みが緩和され消失した方もたくさんいます。 「なるべく痛みではなく、他に意識が向くようにしていると徐々に痛みが引いた」「義足をつけてリハビリを続けていると幻肢痛が緩和した」など、幻肢痛はすぐになくすことはできませんが、治療を続け徐々に痛みから解放された方は多くいます。 しかし、長年幻肢痛に悩まされているケースもあります。幻肢痛の治療は、根気強く治療を続けていくモチベーションが必要です。 幻肢痛のセルフケア方法2つ 幻肢痛のセルフケアをする方法として、以下2つが挙げられます。 ストレスをコントロールする 家族・支援者によるサポートを受ける 本章で幻肢痛のセルフケア方法を知り、医療機関での治療以外にできることがないか検討してみましょう。 ストレスをコントロールする 適切なストレス管理で痛みを和らげることもできます。 幻肢痛患者は、痛みによって、不安や怒り、恐れなど、さまざま感情が入り混じっている心理状態です。慢性的なストレスは、痛みを過敏に感じさせるため、幻肢痛が悪化する原因にもつながります。 自分でできるストレスのコントロール方法は、以下の通りです。 趣味に没頭する 散歩をする 映画やドラマを見る 好きな物を食べる お風呂にゆっくりつかる 規則的な睡眠をとる 香りを楽しむ 声を出して笑う 日光を浴びる 過度な運動などの幻肢痛が悪化するようなものは避け、まずは自分ができそうなものから始めてみましょう。暴飲暴食、過度な飲酒・喫煙などはかえって体調不良や睡眠不足の原因となり、痛みの悪化を招くため注意が必要です。 家族・支援者によるサポートを受ける ストレス管理は本人だけでなく、周囲からのサポートが必要になるケースもあります。 なるべくストレスを抱え込まず、周りの人の力を借りながらうまくコントロールすることが大切です。 家族・支援者ができるサポートは、以下の通りです。 痛みが一番のストレスなら、残存した方の腕や足を軽くマッサージしてもらう リハビリがストレスなら、リハビリのやり方やメニューを主治医と相談する 生活の不自由さがストレスなら、補助グッズの使用や利用できる支援の導入を検討する まずは自分がストレスに感じていることは何かを、家族やサポートしてくれる人に話して理解してもらう必要があります。 また、精神的に不安定になっている場合は、心療内科・精神科の受診やカウンセリングを受けることなども検討しましょう。 新たな技術を用いた幻肢痛の治し方2選 四肢の一部を失った方が、幻肢痛を乗り越え、生活の再構築をしていくのは、とても困難な道のりでしょう。 幻肢痛には、従来先述したような4つの治療法が用いられていますが、IT技術の進化に伴い、以下2つのような新しい治療法も登場しています。 VR技術による「遠隔セラピー」 BCI(ブレインコンピューターインターフェイス)による「脳のトレーニング」 体験を行う交流会もあるため、積極的に参加することで新たな発見があるかもしれません。お住まいの地域での開催がないか調べてみましょう。 VR技術による「遠隔セラピー」 VR空間のなかで、失った四肢を補間し、脳を錯覚させるセラピーも開発されています。幻肢痛を感じる患者とセラピストが一緒にVR空間の中に入り、手足を動かすイメージを共有する手法です。 3Dを利用したリアルな空間なので、実際にリハビリをしているような雰囲気が味わえます。 さらに、VR空間でセラピーを行うため、セラピストが近くにいなくても、いつでもどこでも実施が可能です。 鏡療法は切断部位によって有効でない場合もありますが、VR技術による遠隔セラピーならばより多くのケースに対応できます。 BCI(ブレインコンピューターインターフェイス)による「脳のトレーニング」 BCIによる「脳のトレーニング」では、脳活動を計測し、得られた計測信号から脳情報を読み解き、それに基づいて架空の手足の映像をオンラインで動かします。 架空の手足を動かすことで、脳の変化を促し、新しい感覚を得られたり、治療につながっていくことを目的としたものです。 この訓練を3日間行うことで、訓練後5日間の痛みが30%以上減弱した調査結果もあります。 まとめ|自分に適した幻肢痛の治療法を検討しよう 本記事では、幻肢痛の治療法とセルフケアの方法について詳しく解説しました。 治療の際には、失った部位や痛みの状態に合わせた方法を選択する必要があります。 また、IT技術を活かし、リアルに失った四肢を感じられるような遠隔セラピーやBCIによるトレーニングといった新しい治療法も開発されています。日々情報収集をおこないながら、自分に合った治療法を見つけましょう。 当院「リペアセルクリニック」は、幹細胞の働きを活かし、本来の機能ができなくなった臓器や骨などを修復する「再生医療」を扱うクリニックです。再生医療には、膝や腰の痛みを改善させる治療もあります。再生医療に興味を持たれた方は、ぜひ当院のホームページをご覧ください。 参考文献一覧 (文献1) 住谷昌彦 幻肢の感覚表象と幻肢痛 バイオメカニズム学会誌Vol. 39,No.2(2015) (文献2) インタビュー「最先端の幻肢痛治療に見る、「脳のリプログラミング」の可能性」 (文献3) UTokyo バーチャルリアリティー治療で緩和される幻肢痛の特徴 (文献4) 住谷昌彦、宮内哲ほか 幻肢痛の脳内メカニズム 日本ペインクリニック学会誌Vol.17No.1 2017 (文献5) UTokyo 失った手足の痛みを感じる仕組み (文献6) 日本ペインクリニック学会 「神経障害制疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版」 (文献7) 緒方徹、住谷昌彦「幻肢痛の機序と対応」Jpn J Rehabil Med 2018;55:384-387 (文献8) ミラーセラピーについて | 脳梗塞集中リハビリセンター │ 社会医療法人 生長会 (文献9) 大内田裕 「幻肢・幻肢痛を通してみる身体知覚」2017年 (文献10) 片山容一、笠井正彦 「幻肢・幻肢痛を通してみる身体知覚」2017年 (文献11) 落合芙美子 日本義肢装具学会誌「義肢装具に対するチームアプローチ」日本義肢装具学会誌Vol.13 No.2 1997 (文献12) 幻肢痛VR遠隔多人数セラピーシステム|JDP (文献13) 事故で失った幻の手の痛みが脳活動を変える訓練により軽減 - ResOU
2024.06.19 -
- 野球肘
- 腱板損傷・断裂
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- インピンジメント症候群
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
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野球選手の肩の怪我で多い野球肩には種類があります!原因と最新治療法について メジャーリーグのドジャース山本由伸選手の肩の怪我は、最新の治療方法である「再生医療」で治療できる可能性が高いといえます。 投球やバッティングなど、腕の動作を繰り返す野球選手にとって「肩の怪我」は珍しいことではありません。 肩に問題を生じたら速やかに治療を開始する必要がありますが、どのような原因で、どのような症状を呈するのかについて知っておくことも重要です。 そこで、野球選手の肩の怪我の原因や症状、治療法について解説します。また、最近注目を集めている再生医療についてもご紹介します。 野球選手の肩の怪我は野球肩が原因の可能性が高い! 野球選手の肩の怪我の主な原因は「野球肩」によるものであると考えられます。 野球肩とは、野球の投球動作のように腕を大きく振る動作を繰り返すことにより、肩関節に関わる腱や筋、骨が損傷や炎症を起こしている状態の総称です。 そして、野球肩には種類があります。 野球肩の種類 ・腱板損傷 ・上腕骨骨端線離開(リトルリーグショルダー) ・動揺性肩関節症(ルーズショルダー) ・肩甲上神経損傷 ・インピンジメント症候群 「腱板損傷」とは 肩の中にある筋肉の腱の複合体である腱板が損傷を起こしている症状で、日常生活における肩の痛みにより生活の質を大きく落とす可能性が高いです。 「上腕骨骨端線離開」とは 「リトルリーグショルダー」とも呼ばれ、成長期に起こる投球障害です。成長期における過度の投球により成長軟骨が損傷することで、投球時や投球後に痛みを生じます。 「動揺性肩関節症」とは「ルーズショルダー」とも呼ばれています。上腕骨と肩甲骨の間にある靭帯などが先天的に緩い状態にあり、その状態で肩を酷使することで周囲の組織を損傷してしまい、肩の痛みや不安定感を覚えます。 「肩甲上神経損傷」とは、 棘下筋を支配する肩甲上神経が投球動作により引っ張られる、或いは圧迫されるなどによって損傷を起こし、肩の痛みや肩の疲労感を覚えます。 「インピンジメント症候群」とは、 野球肩の中で最も多くみられる症状で、靭帯や肩峰に上腕骨頭が衝突することで腱板が挟まれ、炎症を起こすことで肩の痛みを生じます。 メジャーの山本由伸選手の肩の怪我は再生医療で早期回復を目指せる 野球選手の肩の怪我はさまざまで、その症状次第で適切な治療法は異なります。そして、概ね数週間から、長ければ年単位での肩の安静が必要です。 そこで注目されているのが「再生医療」です。 再生医療は有名野球選手も利用実績のある治療法であり、手術や入院を避けることができるため、体への負担が少なく、治療にかかる期間が短めであるというメリットがある治療法です。 肩の症状を早く改善し、スポーツへの早期復帰を目指せる可能性がある治療法として、画期的な方法です。最近非常に注目されています。 もしも、早くスポーツに復帰したいと考えるのであれば「再生医療」を検討してみる価値が大いにあります。 まとめ・野球選手の肩の怪我で多い野球肩の種類!原因と最新治療法について 野球選手にとって肩の怪我は避けられないリスクの一つですが、その中でも「野球肩」一般的に起こりえる問題です。 野球肩とは、投球動作やバッティングなど、腕を激しく使うことで肩関節周囲の筋や腱、骨が損傷や炎症を起こす状態を指します。この野球肩には、腱板損傷、リトルリーグショルダー(上腕骨骨端線離開)、ルーズショルダー(動揺性肩関節症)、肩甲上神経損傷、インピンジメント症候群など、さまざまな種類があります。 各症状は投球時や日常生活での痛み、肩の不安定感、疲労感などを引き起こし、生活の質を大きく損なう可能性があります。従来の治療法としては、痛みの軽減や肩の安静を目的としたリハビリテーションや、重症の場合は手術というものでしたが、これらの方法は長期の休養が必要な場合も多く、選手にとって大きな負担となることがあります。 そこで注目されているのが「再生医療」です。 再生医療は、体への負担が少なく、手術や入院を避けることができるため、治療期間が短縮されるというメリットがあります。この治療法は、多くの有名野球選手も実績があり、スポーツへの早期復帰を目指すための画期的な方法として今注目の最新の治療方法です。 メジャーリーグのドジャースに所属する山本由伸選手も、ぜひ再生医療を用いた治療を考えて欲しものです。なぜなら、選手生命を護ることが出来るからです。 肩の痛みや違和感を感じたら、早めの受診と適切な診断を受けることが重要です。肩の怪我を適切に治療し、スポーツを続けるためには最新の医療情報を活用し、専門医の指導を受けることが肝要です。 スポーツ選手は自分を護るためにも再生医療といった最新の治療法を知ることも大切です。 早期の回復を目指せる再生医療は、肩の怪我に悩む野球選手の救世主となり得ます。再生医療に興味があれば豊富な実績で症例数をリードする当院までお問い合わせください。 ▼肩の腱板損傷の回復を目指す再生医療とは https://fuelcells.org/treatment/shoulder/ ▼スポーツ選手の選手生命を護る再生医療をご存知でしょうか https://fuelcells.org/treatment/sports/
2024.06.18 -
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メジャーリーグ(ドジャース)山本由伸選手が発症!肩腱板損傷とは? 負傷者リストに入ってしまったようで心配です。野球選手にも多い肩腱板の損傷についてその原因と治療法を詳しく説明いたします。 日常生活の中で何気なく動かしているように思う肩ですが、思わぬケガが原因で強い痛みが出たり、動かせなくなったりすることがあります。 スポーツ障害でも多い腱板損傷は、そのような状態を引き起こすもののひとつです。 今回は、その腱板損傷について詳しくご紹介します。 肩腱板損傷とは?その症状について 腱板は肩に存在する筋で、板のように広がっているので腱板といいます。 腱板を構成するのは「肩甲下筋腱」「棘上筋腱」「棘下筋腱」「小円筋腱」という4つの筋肉です。これらが肩の骨を囲み、肩関節の安定性に働きかける重要な存在です。 その腱板が部分的、または完全に断裂するのが腱板損傷です。主な症状は痛みですが、軽い場合もあれば、動かせないほどの激痛、夜間に起こる痛みなど程度に差があります。 部分的な断裂では、肩を動かせないということはあまりありません。損傷が激しい場合、腕が上がらなくなったり、肩が動かしにくいという症状が出ることもあります。 肩腱板損傷の原因とは? 腱板損傷の原因について見ていきましょう。腱板損傷の原因は大きく3つにわけられます。 外傷 腱板損傷の原因で多いのが外傷、つまりケガです。転んで肩を強く打つ、手をついたときに肩に衝撃が加わるというのが腱板を傷つけてしまうことがあるのです。 オーバーユース スポーツ医療でも注目される腱板損傷ですが、ケガというよりも肩の使い過ぎが原因のことが多いです。 その代表的なスポーツが野球です。何度も繰り返しボールを投げることで、肩関節や腱板に負荷がかかってしまうのです。 加齢によるもの 加齢によって腱板損傷が起こることもあります。年齢を重ねると腱や軟骨など、身体の組織も衰えてしまいます。そのため、自分でも気が付かないうちに腱板が傷ついていることもあるのです。 肩腱板損傷の治療法とは? 肩の腱板損傷の治療法をご紹介します。近年期待されている治療方法についても見ていきましょう。 保存療法 肩の腱板損傷の治療は基本的には保存療法です。急性期には三角巾で固定し、患部の安静を保ちます。痛みや腫れがある場合は痛み止めの注射やヒアルロン注射を行うこともあります。 また、腱板が損傷した状態で無理に動かすと再発したり、ひどくなったりすることがあるので、リハビリも大切です。 手術 保存療法で痛みが改善しない、損傷がひどく肩の動きが悪いという場合には手術を検討します。損傷した腱板を手術によって直接修復するというものです。 近年は関節鏡といって皮膚を大きく切らない手術が行われています。術後1~2週間ほどで痛みが落ち着くことが多いですが、正常な肩関節の状態に戻すにはリハビリ期間を含めて6か月程度かかることが多いです。 再生医療 これまで腱板損傷の治療は保存療法と手術がメインでした。しかし、手術となれば治療やリハビリを含めてスポーツ復帰までの期間が長くなります。 そんな中、近年、腱板損傷の治療法として再生医療が注目されています。 再生医療は、自身の脂肪から採取した幹細胞を肩腱板に注射します。そして幹細胞が傷ついた腱板や組織を修復するというものです。 外科的な手術をしないで治療できるため、治療期間の短縮も期待できます。 まとめ・メジャーリーグ(ドジャース)山本由伸が発症!肩腱板損傷について 今回は肩の腱板損傷についてご紹介しました。 今回の山本由伸選手をはじめとして、肩を酷使する野球などのスポーツで使い過ぎによって肩の腱板が傷つくことがありますし、加齢によって腱板損傷を起こすこともあります。 プロの選手のように日常からケアをしていても、発症することがあるため、注意が必要です。プロ野球選手のように選手生命という問題がある場合は無理もできません。 そこで近年、治療法として注目を集めているのが再生医療です。特に幹細胞治療は、自分の幹細胞を用いるので、副作用のリスクが少なく、治療期間も短くて済むというメリットがありスポーツをされている方に最適です。 もちろん、再生医療はスポーツ選手ではなくとも有効です。 肩の痛み、肩の腱板損傷でお悩みの方は、再生医療による治療を検討してみてはいかがでしょうか。お気軽にご相談ください。 ▼肩の腱板損傷の回復を目指す再生医療とは https://fuelcells.org/treatment/shoulder/ ▼スポーツ選手の選手生命を護る再生医療をご存知でしょうか https://fuelcells.org/treatment/sports/
2024.06.18 -
- 上肢(腕の障害)
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- その他、整形外科疾患
「肩が重い原因って何?」「腕がしびれるのは胸郭出口症候群の症状?」 このような疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。 胸郭出口症候群は、デスクワークや姿勢の悪さが引き起こす症状です。 放っておくと「肩こり」や「しびれ」だけでなく、腕の痛みや手の脱力まで現れることもあるため、原因を把握し症状に合わせた治療が大切です。 そこで本記事では、胸郭出口症候群の主な原因・症状と4つの治療法を徹底解説いたします。 原因を理解し早期治療を検討したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。 リペアセルクリニックでは「メール」や「オンラインカウンセリング」でのご相談も受け付けておりますので、お気軽にお問合せください。 胸郭出口症候群の5つの原因 胸郭出口症候群は、日常生活における何気ない習慣や体の特徴が関係していることも多く、主な原因は以下の5つが挙げられます。 「なで肩」や骨の異常による圧迫 長時間のデスクワークや悪い姿勢 肩や腕を頻繁に使うスポーツによる負荷 重い荷物の持ち運びや肩への負担 過度な筋トレによる影響 それぞれ詳しく解説していきますので、ご自身の状況と合わせて確認してみましょう。 「なで肩」や骨の異常による圧迫 生まれつきの「なで肩」や骨の形状異常がある方は、胸郭出口症候群の大きな原因となります。 なで肩の場合、肩が前に倒れやすく首から肩にかけての神経や、血管が圧迫されやすい状態になってしまいます。 また、まれに第一肋骨の位置が高かったり、余分な肋骨(頚肋)があったりするため、神経や血管が圧迫される場合もあります。 そのため、胸郭出口症候群が疑われる際には、早めに専門医への相談をおすすめします。 長時間のデスクワークや悪い姿勢 長時間のデスクワークやスマートフォン使用時の姿勢が、胸郭出口症候群を引き起こす可能性もあります。 とくに猫背や前かがみの姿勢が続くと、首や肩の筋肉が緊張し神経や血管を圧迫してしまいます。 そのため、パソコン作業が多い方やスマートフォンをよく使う方は要注意です。 日常的に、定期的な休憩と適切な姿勢を意識すると症状の予防や改善が期待できます。 肩や腕を頻繁に使うスポーツによる負荷 胸郭出口症候群は、プレー中に腕を上げたり、よく腕を回転させたりするスポーツも原因となります。 胸郭出口症候群になりやすい代表的なスポーツは以下のとおりです。 野球 テニス 水泳 バレーボール バドミントン 肩関節を頻繁に使用すると、首から肩にかけての筋肉に過度な負担がかかります。 そのため、炎症や腫れが生じて神経や血管が圧迫され、胸郭出口症候群の症状が出ることもあるのです。 とくにスポーツ選手の方は、適切なフォームの確認とケアが重要です。ウォーミングアップとクールダウンも忘れずに行いましょう。 重い荷物の持ち運びや肩への負担 重い荷物の持ち運びも、実は胸郭出口症候群の原因の1つといえます。 片方の肩だけに重いものが入った鞄などを掛け続けていると、肩周りの筋肉に大きな負担がかかり神経や血管が圧迫されてしまうためです。 とくに、教科書やパソコンを頻繁に持ち運ぶ学生さんや、買い物に行くことが多い主婦の方は、胸郭出口症候群のリスクが高いため、注意が必要です。 過度な筋トレによる影響 近年の筋トレブームにより、過度なトレーニングが原因で発症するケースも増えています。 とくに上半身の筋トレを集中的に行うと、筋肉が肥大し神経や血管を圧迫してしまう可能性があります。 そのため、適切な重量設定や、正しいフォーム、トレーニング後のストレッチも重要です。 日常的に無理のない範囲でトレーニングを行うよう心がけましょう。 胸郭出口症候群の主な症状4つ 胸郭出口症候群は「肩や首の痛み・腕のしびれ」など、放置すると悪化する症状もあります。 とくに代表的な4つの症状は以下のとおりです。 肩や首の痛み 腕や手のしびれ・力が入らない 肩や腕の冷え・感覚の鈍さ 息苦しさや胸の圧迫感 1つずつ詳しく見ていきましょう。 肩や首の痛み 肩や首の痛みは、胸郭出口症候群の最も代表的な症状です。 朝起きた時や長時間のデスクワーク後に、肩から首にかけて重だるい痛みを感じることがあります。 また、痛みが腕の付け根まで広がることもあり、日常生活に支障をきたすほどの痛みに悩む方も少なくありません。 専門医には早めに相談し、適切な治療で早期改善を目指しましょう。 腕や手のしびれ・力が入らない 腕や手のしびれは、多くの方が経験する「胸郭出口症候群の辛い症状」の1つです。 朝目覚めたときや、同じ姿勢で作業を続けたあとに感じやすいのが特徴的です。 ペンを握る、パソコンのマウスを操作するなどの細かな作業が困難になることもあります。 また、症状が進行すると物を落としやすくなったり、手に力が入りにくくなったりするので早めの治療が必要です。 肩や腕の冷え・感覚の鈍さ 肩や腕の冷えは、胸郭出口症候群による血行不良で引き起こされる症状です。 指先まで十分な血液が届かないため、手足の感覚が鈍くなったり、ピリピリとした違和感を覚えたりします。 とくに寒い季節は症状が強くなりやすく、手袋をしても温まりにくいと感じる方もいるようです。 ストレッチや軽い運動で血行を促すことで、症状の緩和につながります。 息苦しさや胸の圧迫感 息苦しさや胸の圧迫感は、胸郭出口症候群において見過ごしがちな症状の1つです。 深い呼吸をしたときや、腕を上げた状態を続けた後に感じやすい傾向があります。胸の締め付けられるような不快感には、不安を感じる方も多いはずです。 呼吸がしづらい、胸が苦しいなどの症状が続く場合は、胸郭出口症候群の可能性もあります。 そのため、できるだけ早めに医師への相談をお勧めします。 また、胸郭出口症候群の症状を自分でチェックする方法については、以下の記事も参考にしていただけると幸いです。 ためしてガッテンで紹介された胸郭出口症候群のセルフケア2選 NHK「ためしてガッテン」では、胸郭出口症候群の方に効果的なセルフケア方法が紹介されました。 とくに「なで肩」の方に向けた自宅でできる筋トレとストレッチ方法に注目が集まっています。 2つの方法をそれぞれ解説していきます。 なで肩さんの肩こり解消筋トレ 番組内で紹介された手順は次のとおりです。 両手と両ひざを床につける 両手は肩幅に両脚は腰幅に開く 顔を前に向けながら、腰を落としていく この状態を3秒間保つ 次に、頭を下に向けながら背中を丸めるようにして腰を引き上げていき3秒間保ちます。 以上が「なで肩さんの肩こり解消筋トレ」です。 なで肩さんの肩こり解消ストレッチ もう1つが「肩こり解消ストレッチ」です。 両手と両ひざを床につき、肩幅に開く 片方の手を反対側の手の平の前に、内側に90度ひねって置く ひねって置いた前の手と同じ側のひざを少し後ろに引き、すねの辺りを反対側の足につける 前の手で床を押しながら、お尻を後ろに引く 3秒間保ち元に戻す 反対側も同様に行います 以上が「なで肩さんの肩こり解消ストレッチ」として紹介されていました。 また、胸郭出口症候群の効果的なマッサージやストレッチ方法は以下の記事でも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。 胸郭出口症候群に効果的な4つの治療法 胸郭出口症候群には主に以下4つの治療法があります。 生活指導 薬物療法 リハビリ 手術 軽度な場合は日常生活の改善から始め、必要に応じて薬物療法やリハビリを組み合わせて治療を進めるのが一般的です。ただし改善が見られない場合や重症なケースでは、手術を検討することもあります。 それぞれ詳しく見ていきましょう。 生活指導|日常生活での改善点 生活指導によって、日常生活の中で改善点を見つけるのは、胸郭出口症候群における治療の第一歩です。 たとえば、デスクワーク中は背筋を伸ばし、長時間同じ姿勢を続けないよう「1時間に1回は軽い休憩を取る」のがおすすめです。 また、スマートフォンの使用時間を制限したり、就寝時の枕の高さを調整したりするなど小さな習慣の見直しから始められます。 薬物療法|痛みや炎症の緩和 胸郭出口症候群の痛みや腫れが強い場合は、薬物療法が効果的です。 医師の判断のもと、痛みを和らげる鎮痛剤や炎症を抑える薬が処方されます。 症状がとくに強い場合は、局所注射で痛みを直接的に緩和しますが、薬物療法は一時的な対処療法です。 そのため、根本的な改善には他の治療法と組み合わせながら、継続的な治療を進めていく必要があるでしょう。 リハビリ|筋肉の柔軟性と姿勢の改善 リハビリでは理学療法士の指導のもと、首や肩周りの筋肉をストレッチで柔軟にし、正しい姿勢を保つための筋力トレーニングを行います。 肩甲骨周りの筋肉を強化すると、姿勢が改善して神経への圧迫が軽減されていきます。 自宅でも続けられる運動を指導してもらえるため、長期的な改善が期待できるでしょう。 手術|重症例での圧迫解除 保存的治療で効果が見られない重症例に対しては、手術療法を検討します。 手術では圧迫で痛みを引き起こす神経や血管周辺の組織を切除して症状を改善します。 近年は医療技術の進歩により、傷跡が小さく体への負担が少ない手術も増えてきました。 ただし、手術には感染症や神経損傷といったリスクも伴いますので医師と相談を重ねた上で判断してください。 まとめ|胸郭出口症候群の原因を理解して早めの受診を検討しよう 胸郭出口症候群は、なで肩や姿勢の悪さ、デスクワークなど日常生活に潜む要因で発症するケースが多い症状です。 放置すると肩や腕のしびれや痛みが悪化する可能性があるため、早めの対策が大切です。 本記事で紹介した治療法やセルフケアを参考に、必要に応じて専門医への相談も検討してください。 また、当院では腕や手のしびれなどの症状への治療法について「メール」や「オンラインカウンセリング」でのご相談も受け付けております。お気軽にご相談ください。 \クリックで電話できます/ メール相談 オンラインカウンセリング 胸郭出口症候群に関するQ&A Q. ザック症と胸郭出口症候群はどう違うのですか? どちらも似た症状ですが、それぞれ以下の違いがあります。 ザック症は重いリュックサックの負荷で肩の筋肉が炎症を起こす症状 胸郭出口症候群は神経や血管が圧迫されて起こる症状 ザック症は原因となる負荷を取り除けば改善しやすいのですが、胸郭出口症候群は専門的な治療が必要になるケースが多くあります。 症状が気になる場合は、医師による正確な診断を受けることをお勧めします。 Q. 胸郭出口症候群は完治しますか? 症状の程度や原因によって回復の見通しは変わってきます。 しかし、早期発見・早期治療で完治するケースも多くみられます。 姿勢の改善や生活習慣の見直しで改善するケースもあれば、リハビリや投薬による治療が必要な場合もあります。 また、重症例では手術を検討するケースもあるため、医師と相談しながら自分に合った治療法を見つけて完治を目指しましょう。 胸郭出口症候群の症状が気になる方は「メール」や「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 \クリックで電話できます/ メール相談 オンラインカウンセリング
2023.02.15 -
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テニス肘とは、テニス経験がなくても発症します!肘の痛みでお悩みの方へ テニス肘をご存知でしょうか?テニスをされている方は、テニスエルボーと言った方が早いかもしれません。 テニスという名前がついていることからテニスをしない人には関係がないと思われがちなテニス肘。実は、テニスをしていても、していなくても、その経験に関係なく、頻回に繰り返し腕を使う仕事やスポーツをしている人にも発症する病気です。 ただ、最初は軽い痛みながら、放置したまま原因を絶たずにいると、悪化しかねません。 今回は、テニス肘について、治療法と症状、原因についてご説明いたします。この記事を読んでいただくことで、テニス肘に対する理解が深まり、適切に対処できるようになれば幸いです。 テニス肘とは? テニス肘とは正式には「外側上顆炎」といい、一般的には、ラケットを強く振るテニスプレーヤーが発症しやすいと言われています。しかし、肘の痛みを伴うこの症状は、スポーツ選手だけでなく、誰にでも発症する可能性があります。 特に前腕に負荷がかかる動きを繰り返すと、上腕の骨に筋肉が付着する腱が炎症を起こし、同じ動きを続けるうちに腱が変性し、最終的には切れてしまいます。 テニス肘は、腕を曲げたり、まっすぐにしたり、ものを握ったり、持ち上げたり、振ったりするときに、「肘の外側」に痛みを起こす可能性があります。早く治療したり、その症状を起こした原因を排除すれば症状を軽減させることができます。 どんな人がテニス肘になるのか? テニス肘は、30才から50才の人に多く、男女性別に関係なく幅広く発症する可能性があります。プロのスポーツ選手だけでなく、前腕、手首、手を激しく、かつ反復的に使う活動を定期的に行っている人は、誰でもテニス肘になる可能性があります。 テニス選手のほかにも、野球やソフトボールの選手、テニスやラケットボールの選手なども危険因子です。 例えば組立ラインの工場労働者や自動車整備士、肉屋、料理人、大工、清掃員、塗装工、配管工、歯科医、造園家、音楽家など、特定の職業に就いている人も、テニス肘になりやすいと言われています。 テニス肘の原因 手首や指を曲げたり伸ばしたりして、腕を繰り返し動かすと、前腕の筋肉が疲労してきます。テニス肘と関係のある腱は、「肘の外側」にある骨の隆起(上腕骨外側上顆)にこの前腕の筋肉を付着させています。 筋肉が疲労すると、腱により多くの負荷がかかるようになります。この過負荷が、腱鞘炎と呼ばれる炎症と痛みを引き起こしています。さらに時間が経つと、この過負荷は腱の変性を起こし、最終的には腱断裂につながります。 多くの場合は長期にわたる負荷が原因ですが、突然の腕や肘の怪我が原因で発症することもあります。まれに、原因不明で発症する人もいます。 テニス肘の症状 テニス肘の症状はゆっくりと現れる傾向があります。痛みは数週間から数ヶ月の間に悪化します。テニス肘の症状の多くは痛みにあり、には次のようなものがあります。 ・肘の外側の痛み、手首の痛み ・腕をひねったり曲げたりするときの痛み(ドアノブを回すときや瓶を開けるときなど) ・腕を伸ばしたときのこわばりや痛み ・肘関節の腫れ、触ると痛い ・ラケットやペン、または人の手などを持とうとしたときに痛みが出たり、握力が弱くなる テニス肘の診断 痛みを引き起こす可能性のある動作について質問します。また、肘関節の痛みや腫れなどをチェックするために身体診察を行います。診断のために、以下のような検査が行われることがあります。 ・骨折などを除外するための単純X線検査 ・超音波検査、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンなどの画像検査を用いて、腱や筋肉の損傷の状態を評価 ・筋電図検査は、筋肉や神経の電気的活動を測定し、神経が圧迫されていないかどうかを調べる テニス肘の治療方法 テニス肘は、特別に治療をしなくても、自然に良くなることがあります。しかし、その反面、1年ほどかかることもあるので注意が必要です。 低侵襲な治療法 そこで、回復を早めることができる手術以外の方法をまずご紹介します。 ・安静:腱の治癒を待つために、数週間は痛みのある側の腕を使う活動を停止するか、作業量を減らすことを検討します ・痛み止め:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):NSAIDsは、痛みや炎症を和らげることが期待できます ・痛み止め:ステロイドの注射により、関節の痛みや炎症が一時的に緩和されます ・テニス肘用のサポーター:取り外し可能なテニス肘用のサポーターを痛みのある前腕部に装着します。この装具は、腱や筋肉の緊張を和らげるものです ・理学療法:理学療法による運動は、前腕のストレッチを含め、筋肉と握力を強化します 外科的治療法 低侵襲な療法を6~12カ月続けても症状が改善しない場合、関節鏡下または切開による手術を行います。手術では、通常、変性した腱を除去します。回復には4~6ヶ月かかることが一般的です。テ ニス肘になった後は、症状が再発しないように、サポーターなど装具の着用が必要となることもあります。 まとめ・テニス肘とは、テニス経験がなくても発症します!肘の痛みでお悩みの方へ 以上、今回はテニス肘についてご説明しました。 テニスをしていない人にとっては関係がないと思われがちかもしれませんが、ご説明した通り、必ずしもテニスと関係がない方でも起こりうる病態です。もしも「肘の痛み」で悩んでいる方がおられたら、早めにかかりつけの整形外科医にご相談ください。参考にしていただければ幸いです。 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.07.12 -
- ゴルフ肘
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ゴルフ肘は、なぜゴルフ経験がなくても発症するのか?ゴルフ肘の治し方 肘に違和感があるな・・・と思い、病院を受診した際に、「ゴルフ肘」との診断されることがあります。これは、ゴルフの経験がない場合にもおこります。なぜゴルフの経験がないの「ゴルフ肘」との診断を受けるのでしょうか?ひょっとして『診断が間違っているのでは?』などと考えてしまうかもしれません。 しかし実際、ゴルフ肘という症状はゴルフをする人に限った病気ではなく、誰でも起こりうる病気なのです。この記事を読んで『この症状はゴルフ肘かも?』と思ったら、早く治すためにも治療が手遅れになる前に、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。 ゴルフ肘とは 通称、ゴルフ肘と呼ばれる病気は、正式名称は『上腕骨内側上顆炎』と言います。 『上腕骨』とは、肩から肘の間の骨のことで、『内側上顆』とは、肘の内側のことを言います。手のひらヘソの方向にむけた際に、同様にヘソの方向をむく肘の場所のことを言います。 その上腕骨の内側上顆にある筋肉や腱に炎症が起こった場合に発症するのが、「上腕骨内側上顆炎」つまり、「ゴルフ肘」です。ゴルフでクラブをスイングをした際、肘に痛みが出現することから、ゴルフ肘と呼ばれるようになったといいます。 ゴルフ肘で炎症が起こる内側上顆という場所に付いている筋肉は、手のひらを内側に向けて動かす動きや、物を握るような動きなど、腕のあらゆる動作に関わっています。そのような腕の動作を何度も繰り返し行ったり、使いすぎると、筋肉が引っ張られ、炎症を起こし、ゴルフ肘を発症すると言われています。 この病気ですが、ゴルフの他にもテニスに選手にも発症すると言われています。しかし、実際には、スポーツが原因の人は少ないと言われています。肘の関節を曲げたり、伸ばしたりする動作を繰り返したり、肘関節をたくさん使うような職業の方は誰でも起こりうる病気です。 さらに、仕事をしていない方でも、日常的に肘を酷使している場合、主婦などの一般人にも生じる病気なのです。 ・上腕骨:肩から肘の間の骨を指す ・内側上顆:肘の内側のこと ゴルフ肘の症状と診断 ゴルフ肘の症状は、肘の痛みですが、痛みは、日常生活の過ごし方によって、様々な形で出現します。ゴルフ以外のスポーツ、テニスであれば、ラケットのグリップを強く握った時や、強くラケットを振った場合に痛みを感じると言われています。 日常的に仕事で肘を使う人でしたら、例えば、重い物の積み下ろしを繰り返し行ったり、釘を打ったりする動作を繰り返す時に痛みを感じます。そのため、引っ越し業や大工さんにもよく発症すると言われています。 主婦の方は、料理で包丁を使う動作などの反復作業の中で症状が出現することもあります。ゴルフ肘は、いわゆる肘の使い過ぎによって起こる病気です。そのため、医師の診察でも、肘の曲げ伸ばしを日常的に繰り返ししているか聞かれ、診断の材料になります。 実際の診察現場では、手のひらを上に向けた状態で、テーブルの上に置き、医師が手首を押さえ、手首を上に向けてあげようよう指示をした際に、肘の内側が痛くなるような時に、ゴルフ肘が疑われます。 さらに、レントゲン検査で骨が変形していることや、超音波検査やM R I検査などの画像検査を行い、炎症を確認して総合的に診断が行われます。 ゴルフ肘の治し方 ゴルフ肘の治し方、治療法は、その重症の度合によって変わります。 ほとんどの場合で、肘の使い過ぎをやめ、安静を保てば痛みがひくことが多くあります。肘をなるべく使わないようにすることが必要になるため、場合によってはサポーター等の装具や、テーピングなどを行い、肘を安定させ、肘の安静を保つようにします。 肘を使わないことで自然と炎症が治り、症状が改善してまいりますが、安静を保つことに加えてストレッチや、筋力トレーニングなどのリハビリを併用して行うこともあります。 ただ、痛みが酷い場合などは、薬物による治療も行われます。ステロイドと呼ばれる薬剤を傷んでいる場所に注射したり、痛み止めの薬を服用します。また炎症を抑える薬を飲んだり、湿布を行ったりする治療を行います。 ゴルフ肘の治し方(治療) ・サポーター(装具)肘を安定させ、安静に保つ ・リハビリによる保存療法(ストレッチ、無理のない筋力トレーニング) ・痛み止め、湿布などの薬物の使用 ・悪化すると手術の可能性もあり しかし、治療が遅れたり、症状がよくならない、重症である場合は、手術という選択も行われることがあります。手術などしたくないものですが酷くなると、腱が傷ついていたり、千切れたようになることもあり、そうした場合は、手術が必要になります。 手術を行えば、ほとんどの場合、痛みは改善することが多いのですが、注しなければならないこととして、手術は皮膚を切って傷ついた腱を修復します。そのため、手術することで合併症など傷が感染するリスクもあります。また、少ないながら麻酔によるアレルギーや、副作用の出現もあり得ない話ではありません。 また手術を行った場合は、入院での加療となることで仕事への影響や、ご家族様の負担が増えてしまうのは遺憾ともしがたいものです。 いずれにしましても、このような心配をしなくても良いように、肘に違和感を感じたら早く治すために積極的に医療機関に足を運び治療を開始するようにしましょう。 それでも悪化して手術という場合に、手術を避ける方法があります。それは、再生医療という最新の治療法です。再生医療なら手術をせずに、入院も不要という新しい方法です。興味があれば以下のリンクから詳細を知ることができます。 ▼筋・腱・靭帯損傷に対する再生医療 再生医療は、手術を避けて入院も不要な最新治療方法です まとめ・ゴルフ肘は、なぜゴルフ経験がなくても発症するのか?ゴルフ肘の治し方 ゴルフ肘は、ゴルフを行わない人でも誰でも、起こりうる病気です。 早く治すためには、早く治療に入ることが大切です。手遅れになって重症化しないうちに治療を開始しましょう。治療が遅れると悪化し、結果として手術を選択しなければならないこともあるので、「この程度なら」との自己判断は禁物です。 手術自体、症状の改善以外の部分、感染症のリスクなどもあり、手術後には痛みもあります。さらには昨今の新型コロナウイルスの関係で入院中は面会もできない病院が多く、入院は、辛い体験だったと感じる患者さんも少なくないといいます。 『自分はゴルフをしないから大丈夫だ』と考えず、肘に違和感を感じたら、スポーツ以外、仕事であっても我慢したりせず、手遅れになる前に病院等にて医師の診察を受けられることをお勧めします。 以上、ゴルフ肘は、なぜゴルフ経験がなくても発症するのかについて記させていただきました。参考にして頂ければ幸いです。
2022.06.16 -
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テニス肘は、テニスの経験がなくてもテニス肘と診断されることがあります テニス肘(テニスエルボー)は、手首や腕の反復運動によって肘の腱に負荷がかかり、痛みを伴う疾患です。通常はテニスをされる人に多く見られる状態です。しかし、テニスを一度もしたことがないのに、テニス肘と診断されることがあるのです。 この記事では、テニス肘について説明し、テニスが未経験であっても、どのような状況になるとテニス肘を発症するのか?ご説明してまいります。 テニス肘とは? テニス肘について簡単に説明します。テニス肘はテニスエルボーとも言われます。その痛みは、主に前腕の筋肉の腱が肘の外側にある骨の隆起に付着する部分に発生します。また、前腕や手首に痛みが広がることもあります。 通常安静にしているときには痛みは感じませんが、例えばドアノブを回す、タオルを絞る、またキーボードを操作するなどのように、手首を捻ったり反らせたり、また指を伸ばす動作をすると、肘の外側に痛みが誘発されます。場合によっては、コーヒーカップを持ち上げるだけでも痛みを感じることがあります。 症状が進行すると、安静時でも肘に痛みを感じるようになり、なかなか痛みが消えなくなります。 テニス肘の原因 テニス肘には、腕の使いすぎと筋肉疲労が背景にあります。原因は、手首を動かしたり、指を曲げたり伸ばしたりするための前腕筋を、繰り返し収縮させることです。 手首を反らせたり、手で握ったりすると、前腕の筋肉(伸筋)が収縮します。繰り返される動作と組織へのストレスにより、前腕の伸筋が上腕骨の肘の外側にある骨の突起に付着する部位に傷がついてしまい、炎症が起きることがあります。 この骨の突起は、「上腕骨外側顆」、前腕の筋肉は「短橈側手根伸筋」という名前がついています。尚、テニス肘の正式名称は「上腕骨外側顆炎」と呼ばれるものです。 テニス肘は、その名が示すようにテニスプレーにおいて、特にバックハンドストロークを技術が未熟なうちから、繰り返し行うことで肘の外側部分に負担を掛けてしまうことが原因で起こります。しかし、テニス以外、他の多くの一般的な腕の動きでも、テニス肘を引き起こす可能性があります。 なお、テニス肘は発症してからの時間が経つにつれて、炎症を抑えることができなくなります。そのような状況になると筋肉や腱の繊維組織はその強度を失ってしまいます。繊維組織はもろくなり、折れたり、傷つきやすくなったります。 そして繊維組織は傷つくたびに、瘢痕を形成します。やがて、腱は瘢痕組織によって肥厚していきます。 このような状況になると、腱はもはや正しく機能せず、痛みが続くようになり、運動していないときでさえ痛みが生じるようになります。 テニス肘は発症後時間が経つと進行すると ・炎症を抑えることができなくなり、筋肉や腱の繊維組織は強度を失っていきます。 ・繊維組織がもろくなり、折れたり、傷つきやすくなり、瘢痕を形成します。 ・腱は瘢痕組織によって肥厚します。 ・腱は正しく機能せず、痛みが続くようになる。 ・運動していない場合でも痛みが生じるようになる。 テニス肘の治療 安静と鎮痛薬で、テニス肘の痛みが和らぐことが一般的です。痛みが激しい場合は、炎症が起こっている肘の周囲にステロイド薬を注射することもあります。 症状が慢性化すると、定期的なストレッチを含む理学療法が有用だと言われています。このような保存的治療が効かない場合や、症状が重篤な場合は、手術が必要となることもあります。 テニス未経験なのにテニス肘と診断されることがある 手首や腕の使いすぎが原因となっているテニス肘は、テニスをする人によくみられる状態であることは間違いありません。しかし、テニスのほかにも同じような動作を繰り返すような動作を行えばテニス肘を発症することになりかねません。 次に、どのような場合にテニス以外にテニス肘がみられるのか、ご紹介します。 腕をよく使うスポーツ 一部のスポーツを除き、頻繁に腕を使うスポーツは多くあります。そのなかでも特にテニスと同じようにラケットを使うスポーツであるバドミントンや卓球、スカッシュでも、テニス肘はよく起こります。 そのほかにもゴルフや、ウェイトリフティングでも、同様の症状がみられることがあります。 腕をよく使う職業 その名前にもかかわらず、テニス肘を発症するのは、アスリートだけではありません。テニス肘になるような職業もあります。特に力を入れて手首や腕を動かす必要のある、配管工、塗装工、大工などが、テニス肘を発症しやすい職業として知られています。 そのほかにも、特に肉を切るように力を入れて包丁を扱ったり、重い鍋を持って動かしたりする料理人、また特に体を動かすわけでもないタイピングやマウス操作を繰り返し行う人も、テニス肘を発症することがあります。 テニス肘の危険因子 そのほか、テニス肘の発症リスクを高める要因としては、以下のようなものがあります。 ・年齢:テニス肘はすべての年齢層で発症しますが、特に30~50歳の成人に最も多くみられます ・職業:手首や腕の動きを繰り返すような仕事をしている人は、テニス肘になりやすい ・例えば、配管工、塗装工、大工、料理人などが挙げられます ・特定のスポーツ:ラケットを使用するスポーツに参加すると、テニス肘のリスクが高まります。 まとめ・テニス肘は、テニス未経験でもそう診断されることがあります テニス肘の概要、またテニスをしたことがなくても、どのような状況であればテニス肘を発症することがあるか、ご説明しました。 抵抗に逆らって手首を反らせると痛い、肘の外側の骨のあたりを押すと圧痛がある場合は、このテニス肘の可能性が高いと考えられます。しかし、テニス肘は、最終的には医療機関で正確な診断を受ける必要があります。 もし肘の痛みを感じる方がおられるようであれば、慢性化して治療が困難となる前に、整形外科医の診療を受けることをお勧めします。以上、テニス肘は、テニス経験がないのにテニス肘と診断されることがあるについて記させて頂きました。参考になれば幸いです。 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 再生医療は、生活の質を守る治療です(詳しくは(詳しくはこちらから)
2022.06.08 -
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クリーニング手術で野球選手の肘の悩みを解決する 「野球肘」という言葉を聞いたことはありませんか。 野球肘と一言で言っても、いろいろな種類がありますが、例えば、子供時分、まだしっかり身体が出来上がっていない成長期に野球の投球動作を繰り返し行うことで肘への負担が大きくなり、肘の曲げ伸ばしに支障が出るといった症状が発生することもあります。 この場合は、離断性骨軟骨炎と言われる野球肘が疑われます。症状が進行すると肘の痛みが強くなっていき、急に肘関節が動かせなくなることもあります。 この症状の治療は、関節内に遊離した軟骨成分や関節周囲に新たに形成された骨棘を取り除く手術が必要となり、これを「クリーニング手術」と呼称しており、主に肘関節などを損傷したスポーツ選手が受ける機会が多いと考えられています。 今回は、野球選手が抱える肘の悩み、そしてその苦悩を解決するクリーニング手術に関して詳しく解説していきます。 野球選手が抱える肘の悩みについて 野球肘とは、いわゆる投球する際に必要な動作を、繰り返し行うことで発症する肘の障害を指しており、「離断性骨軟骨炎」や、「軟骨損傷」、「靭帯損傷」、さらには将来的に合併される可能性が懸念される「変形性肘関節症」などを含めた複数の病態を示しています。 野球選手がボールを投球する際には肘に大きな外力が加重されますが、そのような中でも速球を投げる、あるいは悪いフォームで無理に投球すると通常に比べて肘部分にかかる負担がかなり増加し、肘関節に無理が掛かります。 また、球数が多くなると自然と肘関節に対する負担が増大して、これら、ひとつ、ひとつの負荷があまりにも大きくなっていくと自ずと肘関節部分における骨成分や靭帯組織が損傷して故障に繋がることになります。 一般的に、肘関節は「上腕骨」、「橈骨」、「尺骨」の3つの骨で構成されており、これらをそれぞれ繋いでいる靭帯組織が内側と外側に存在します。上腕骨の内側の部分には野球ボールを握る、または投球中にスナップや、ねじりや、回転を効かせる際に動作している筋肉が付いています。 通常、ボールを投球する際には肘関節の内側部位では、その動作に伴う牽引力によって周囲の骨や靭帯が強く引っ張られる結果として剥離骨折や靭帯損傷などが引き起こされることがあります。 さらに、肘関節の外側部位では労作時における急激な圧迫力が働いて、軟骨や骨領域に障壁が起こりやすいと考えられており、関節後面では骨同士の摩擦によって疲労骨折や剥離骨折が引き起こされることが知られています。 野球選手の肘の悩みを解決するクリーニング手術とは 野球選手が競技を長年に渡って継続すると、少しずつ肘部分に変形や、関節ネズミと言われる、骨の破片(剥離片)が形成されて、障害を受けることが多いとされています。 肘関節部に大きな骨棘が認められると自然と肘関節の屈曲伸展運動がしづらくなり、離断性骨軟骨炎、肘頭骨棘骨折、軟骨損傷などによって形成された軟骨や骨の剥離片が骨間に挟まれることで強い痛み症状が出現します。 これらの症状が進行し、悪くなると、安静にしてもなかなか痛みが治らない、関節の曲げ伸ばしに支障が出たり、再燃して繰り返すなどの場合には、関節鏡を用いてクリーニング手術を勧められることがあります。 基本的には、全身麻酔下に肘関節の側方や後方に小切開を設けて、同部に細い関節鏡を挿入し、関節内に手術器具をインサートしながら、テレビモニター画面に映し出される関節内の画像を術者や助手が供覧して手術処置を実行します。 実際の手術現場では、関節内の病変について、くまなく確認することから始まり、肘部の痛みや引っ掛かりの主たる要因となっている病変部位を切除摘出することになります。 具体的な手技手順としては、まずは高周波電気メスにより異常滑膜を切除して、損傷軟骨部位をきれいにトリミングします。 次に、肘関節を伸展および屈曲する際に疼痛症状の原因となっている骨棘形成部位に対して関節鏡を視野に入れながらシェーバーという細い吸引付ドリルで骨切除するように処置します。 関節ネズミと呼ばれる関節遊離体が認められる場合には、関節鏡手術によって同時に遊離体を摘出除去することも可能です。これをクリーニング手術と言います。 順調にいけば通常では手術時間自体は約1~2時間で完遂できますし、術後約1週間前後で徐々に投球練習を再開してリハビリを実践し、手術してから概ね1か月後には競技に復活でいる可能性が高くなります。 > スポーツ選手が、手術を避けて取り組める再生医療はこちら まとめ・クリーニング手術で野球選手の肘の悩みを解決する 今回は野球選手が抱える肘の悩みとその解決策になり得るクリーニング手術について詳しく解説してきました。 野球の投球動作などによって知らぬ間に肘関節部分に過剰な負担がかかり、肘の痛みや関節可動域制限などの様々な症状を呈する病気を野球肘と呼んでいます。 従来では、野球肘を始めとする肘関節障害に対しては大きく皮膚切開することで周囲の正常な腱組織や筋肉をかき分けて関節部に至る必要があったために手術治療は復帰期間も含めて野球選手にとっても非常に侵襲的(体への負担が大きい、今回の場合は手術による傷が大きくなる)で負担が大きかったと考えられます。 しかし、近年では、特に画像検査技術により、早期的に野球肘を発見できた場合には、関節鏡手術の技術進歩や手術成績の向上によって低侵襲での手術が可能となり、そのために術後経過も良好になるといった傾向があり、短期間で競技に復帰できる割合も増加していると言います。 以上、クリーニング手術で野球選手の肘の悩みを解決すると題して説明させて頂きました。本記事が参考になれば嬉しく思います。 ▼関連記事はこちら 野球肘の予防法|ストレッチで選手生命を伸ばす 野球肘・離断性骨軟骨炎はスポーツする子供に多い!その症状と治療法
2022.04.25