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最近お腹が出てきた、ズボンがきつくなったという悩みの裏に脂肪肝が隠れているかもしれません。 肝臓に脂肪がたまる脂肪肝は、健康診断で初めて異常に気づく人も多く、日本では成人の3人に1人が該当する「国民病」となっています。 近年では食生活の欧米化や、在宅ワークの増加による運動不足によって、さらに発症リスクが高まっています。 この記事では、脂肪肝によってお腹が出るメカニズムをわかりやすく解説し、今日からできる対策や治療法まで、実践的な情報をお届けします。 放置すると肝硬変や肝がんへの進行リスクもある脂肪肝を、正しい知識で予防・改善していきましょう。 脂肪肝でお腹が出る?肥満との関係について 脂肪肝とお腹の出方には密接な関係がありますが、すべての脂肪肝患者にお腹の膨満が見られるわけではありません。 非アルコール性脂肪肝の場合、食べ過ぎや運動不足による肥満が主な原因です。(文献1) 体内の余ったエネルギーが脂肪として肝臓と内臓に蓄積され、結果的にお腹周りが膨らんでいきます。 実際に、全体の肥満者のうち約80%に脂肪肝が合併しているといわれており、非アルコール性脂肪肝と肥満には相関がみられます。 一方、アルコール性脂肪肝では痩せ型の方にも多く見られるため、お腹が出ていないから脂肪肝ではないと思われることも多いですが、脂肪肝が隠れていることがあるため注意が必要です。 見た目が標準体型でも「隠れ脂肪肝」として、肝臓に脂肪が蓄積している可能性があります。 内臓脂肪と肝脂肪の悪循環 余ったカロリーはまず内臓脂肪や肝臓の脂肪として蓄えられやすく、皮下脂肪にも広がります。 肝臓に脂肪が増えると血糖や中性脂肪が上がりやすくなります。これにより、肝臓に脂肪がたまりやすくなる悪循環が始まります。(文献2) 順天堂大学の研究では、非肥満でも脂肪肝があると筋肉の代謝が低下しやすいことを示しました。(文献3) つまり脂肪肝は内臓脂肪とは別に全身の代謝バランスを崩す要因にもなり得ます。 この流れが続くと、基礎代謝(安静時でも消費するエネルギー)が下がり、同じ食事量でも体重が増えやすい体になります。早めの生活習慣改善で悪循環を断ち切ることが重要です。 アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝について 脂肪肝はアルコール性脂肪肝(AFLD)と非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD/MASLD)の2つのタイプに分けられます。 アルコール性脂肪肝(AFLD)は、過度な飲酒が原因で発症します。 長期にわたり男性で1日平均60g、女性で40g以上の純アルコールを摂取すると発症リスクが高まります。 60gはアルコール度数5%のビール500ml缶なら3本分の量です。 お酒を飲むと、肝臓でアルコールを分解する過程で中性脂肪を合成してしまいます。 中性脂肪は体質によっては、血液中に溜まるため体型に出ない方もいます。そのため、比較的痩せ型の方でも発症する特徴があります。 日本人の主要な脂肪肝タイプである非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD/MASLD)になる原因は、「飲み過ぎ」ではなく「食べ過ぎ」です。 国内報告では有病率が男性41%、女性17.7%とされており、近年の食生活の変化やデスクワークの増加により患者数が急増しています。 BMI25以上の肥満の方では、腹囲が増えている場合は非アルコール性脂肪肝の可能性があります。 この病型では内臓脂肪の蓄積と密接に関連しており、腹囲の増大が顕著に現れます。 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の約80~90%は単純性脂肪肝で、肝硬変や肝がんのような重篤な病気に進行するリスクは低いとされています。 しかし、約10~20%は炎症を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へと進行し、将来的に肝硬変や肝がんのリスクが高まる可能性があります。早めに対策を行いましょう。 脂肪肝でお腹が出たら?食事と運動療法で改善 脂肪肝によるお腹の膨満は、適切な食事療法と運動療法により改善が期待できます。 治療の基本原則は、体重の7〜10%減量を推奨しています。(文献4) 半年で体重の5%程度のペースで進めると肝機能の数値であるAST・ALTが改善しやすいとの報告もありますので、急激な減量は避け、無理のない範囲で行いましょう。(文献5) 脂肪肝でお腹が出る主要因は総カロリー過多ですが、とくに果糖のとり過ぎは肝脂肪を増やしやすいと指摘されています。(文献2) 運動療法では、毎日30分程度の歩行など有酸素運動を中心に行いましょう。 運動時間の目安ですが、週に150 分以上でも効果があるものの、週に250 分運動することで肝脂肪や炎症の一層の改善が報告されています。(文献4) 通勤時の一駅歩く習慣や階段利用などの工夫により、忙しい会社員でも継続可能な運動習慣を身につけられます。 食事での改善ポイント 近年、低糖質食による肝脂肪の改善例も報告されていますが、あくまで基本となるのは食事全体のカロリーと栄養のバランスを整えることです。(文献2) まず主食(白ごはん、パン、麺類)を1割減らすことから始めましょう。代わりに玄米や雑穀米に変更し、野菜や海藻類を増やして食物繊維を確保します。 とくに果糖は肝臓で中性脂肪に変わりやすいため、果物は1日1/2個程度に制限し、清涼飲料水は避けることが大切です。 推奨する食事パターンは以下の通りです。 朝食:必ず摂取し、血糖値の急上昇を防ぐ 昼食:定食スタイルで栄養バランスを重視 夕食:就寝3時間前までに済ませ、軽めに抑える アルコールについては、男性で純アルコール60g/日未満、女性で40g/日未満に制限し、週2日以上の休肝日を設けることが推奨されます。 アルコール性脂肪肝の場合、2-4週間の禁酒で改善効果が現れると報告されています。まずは2週間の禁酒をやってみることをおすすめします。(文献6) 筋トレと有酸素運動の黄金比 有酸素運動と筋トレの併用が肝脂肪減少には効果的と報告されています(文献5)。 有酸素運動では、ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリングなどを週5日、まずは1日30分以上実施しましょう。1日30分であれば、通勤時の一駅歩く習慣や、昼休みの散歩を取り入れることで、忙しい会社員でも実践可能です。 筋力トレーニングは週2〜3日実施を推奨しています。(文献4) 筋肉量の増加は基礎代謝の改善につながり、脂肪肝改善に役立つためです。自宅でできるスクワットや腕立て伏せ、片足立ちなどから始め、徐々に負荷を増やしていきましょう。 重要な点は、仮に体重減少がなくても運動を継続すれば脂肪肝改善効果があることです。(文献4) 体重が変わらなくても落ち込まず、まずは3カ月の運動継続で肝機能数値の改善を目指しましょう。 脂肪肝の検査と再生医療について 脂肪肝は「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓の病気のため、自覚症状がほとんどありません。 しかし、血液検査や画像検査を組み合わせると、症状が出る前に脂肪肝を見つけられる場合があります。 健康診断で肝機能の異常を指摘された場合は、必ず精密検査を受け、専門医による適切な診断と治療方針の決定を受けましょう。 脂肪肝の治療には、再生医療という選択肢もあります。進行した脂肪肝に対する治療の可能性が広がっています。 血液検査と再生医療について、それぞれ詳しく解説します。 血液検査 脂肪肝かどうかを調べる最初の手がかりは、採血で測るALTとASTという酵素です。 ALTは肝臓の細胞に多く、多くの施設で30〜40IU/L未満が目安とされますが、日本人を対象とした大規模研究では、正常上限値は男性29IU/L以下、女性23IU/L以下とされています」(文献7) ALTの軽い上昇でも脂肪がたまり始めている場合があるため、健康診断で要再検査と出たら放置しないことが大切です。 ASTは心臓や筋肉にも含まれる酵素ですが、ALTよりも高い場合はアルコールの影響が疑われます。ただし、確定には他の検査結果も総合的に判断する必要があります。(文献8) 再生医療 生活習慣の見直しでは追いつかないほど肝臓が硬くなる線維化が進むと、肝硬変に至ることがあります。 このような進行例に対しても再生医療が治療の選択肢となります。 再生医療の幹細胞治療は、患者様自身の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し、点滴により全身に投与する治療法です。 再生医療について詳しくは、以下をご覧ください。 自宅で続ける脂肪肝チェックと再発予防 脂肪肝の改善後も、継続的なセルフモニタリングと予防策の実践により、再発を防げます。 日々の体重管理では、毎朝同じ時間・同じ条件で測定し、スマートフォンアプリで記録することで変化を視覚的に把握できます。 腹囲測定も重要です。男性85cm以上、女性90cm以上でメタボリックシンドロームの疑いがあるため、おへその高さで月1回測定しましょう。 生活習慣では、主食の1割減量、週2日以上の休肝日、1日30分以上の歩行を基本とし、無理のない範囲での継続が重要です。 また、年1回の健康診断での血液検査を行い、専門医に肝機能の数値を客観的に診断してもらいましょう。 まとめ|お腹が出たら注意!脂肪肝は日々の習慣の見直しが重要 脂肪肝によるお腹の膨満は、単純な肥満ではなく、複雑な代謝異常が引き起こす医学的な病態です。 近年では、在宅勤務の増加や食事の欧米化により発症リスクが高まっていますが、適切な食事療法と運動療法により確実に改善できる疾患でもあります。 食事習慣の改善と、運動習慣の定着を目標に、継続的な取り組みを行っていきましょう。早期発見のためには、健康診断を受け、血液検査の数字を確認することが重要です。 進行例に対しては、再生医療という新しい治療法もあります。 放置すれば肝硬変や肝がんへの進行リスクもある脂肪肝ですが、今の自分の状態を正しく知り、適切な対策を講じることで健康な肝臓を取り戻せます。 当院「リペアセルクリニック」では、専門医による診察から再生医療まで、一人ひとりの状態に応じた治療を提供しています。 まずは公式LINEのオンライン診断からお試しください。一度自分の体と向き合ってみましょう。 脂肪肝に関してよくある質問 脂肪肝が進むとどうなる?放置のリスク 脂肪肝を放置すると、段階的に深刻な病態へ進行する可能性があります。 初期の脂肪肝から脂肪肝炎(NASH)へ進行すると、肝臓に慢性的な炎症が起こり、徐々に肝臓がかたくなる「線維化」が始まります。 さらに進行すると「肝硬変」となり、肝がんを発症するリスクが生じてしまいます。 脂肪肝は自覚症状がほとんどないため、気づいたときには既に進行しているケースも多く見られます。 健康診断でALT・ASTの上昇を指摘された段階での早期対応が、将来の重篤な合併症を予防する鍵となります。 初期段階で発見し、生活習慣の改善に取り組みましょう。 脂肪肝は女性に多い? 脂肪肝は一般に男性で多く見つかりますが、女性でも決してまれではありません。 女性ホルモンは脂肪を皮下に優先してため込むため、閉経前は脂肪肝が起こりにくい傾向ですが、閉経後にはホルモンが急減し脂肪のつき方が男性型へ変わり、発症リスクが一気に上昇します。 また、細身でも内臓脂肪が多い「隠れ肥満」の女性は年齢を問わず注意が必要です。 顔のむくみやおならは脂肪肝のサイン? 脂肪肝は「沈黙の臓器」といわれる肝臓の病気のため、初期にははっきりした症状がほとんど出ません。 ただ肝機能が落ち始めると、だるさや軽い不調など体の各所に細かな変化が現れることがあります。 顔や手足がむくみやすくなるのは、肝臓で作られるアルブミンというたんぱく質が不足し、水分が血管の外に漏れやすくなるためと考えられています。 一方、腸内環境が乱れるとガスがたまりやすくなり、おならのにおいが強くなるため、食事習慣の乱れが腸内環境の乱れと脂肪肝につながっている可能性はあります。 他のサインとしては、慢性的な疲労感、集中力低下、肩こり、ぼんやり感、軽い腹部の張りなどが挙げられますが、これらの症状は他の疾患でも見られるため、身体に異常があった場合は早めに専門医への相談を検討してください。 参考文献 (文献1) 日本肝臓学会「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)の診療ガイドライン2020年版」2020年 https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/nafldnash2020_add.pdf(最終アクセス:2025年6月24日) (文献2) 太田嗣人.「肥満・インスリン抵抗性がもたらす肝の炎症」『日本内科学会雑誌』109(1), pp.19-26, 2020年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/1/109_19/_pdf(最終アクセス:2025年6月27日) (文献3) 門脇聡ほか「非肥満者では内臓脂肪の蓄積よりも脂肪肝が筋肉の代謝障害と強く関連する」順天堂大学研究報告, 2019年 https://www.juntendo.ac.jp/assets/NewsRelease20190614.pdf(最終アクセス:2025年6月24日) (文献4) 日本肝臓学会「脂肪性肝疾患患者に対する肝臓リハビリテーション指針」日本肝臓学会ホームページ https://www.jsh.or.jp/medical/committeeactivity/shakaihoken/fatty.html(最終アクセス:2025年6月24日) (文献5) Koutoukidis D A, et al. (2021). The effect of the magnitude of weight loss on non-alcoholic fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis. Metabolism, 115, 154455.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33259835/ (最終アクセス:2025年6月28日) (文献6) Clevelandclinic「How Long Does It Take Your Liver to Detox From Alcohol?」Health Essentials, 2023年2月28日 https://health.clevelandclinic.org/detox-liver-from-alcohol(最終アクセス:2025年6月28日) (文献7) Tanaka K, Hyogo H, Ono M ほか.「Upper limit of normal serum alanine aminotransferase levels in Japanese subjects」Hepatology Research 44(12), pp.1196-1207, 2014年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24372862/(最終アクセス:2025年6月28日) (文献8) Giannini E, & Testa R. (2013). The De Ritis ratio: the test of time. Digestive and Liver Disease, 45(3), e1–e2. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3866949/ (最終アクセス:2025年6月28日)
2025.06.30 -
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「健康診断で肝臓の数値が少し高いですね」と医師に言われて、不安になっていませんか。 「でも薬はまだ出されなかったし大丈夫かな」と思っていても、実は脂肪肝が進んでいるかもしれません。 忙しい毎日の中で病院に通う時間がなかなか取れないときでも、適切なサプリメントを活用することで肝臓の健康をサポートできる可能性があります。 本記事では、脂肪肝の栄養管理に役立つサプリメントについて、専門医の視点から詳しく解説します。 サプリメントの選び方から使い方、さらには生活習慣の改善方法まで、あなたが知りたい情報を網羅的にお伝えします。 ただし、サプリメントはあくまで補助的な役割であり、根本的な改善には生活習慣の見直しが欠かせません。 万が一、数値の改善が見られない場合には、専門的な治療法についてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。 脂肪肝とサプリの基礎知識 脂肪肝は、食べすぎや運動不足などが原因で肝臓に脂肪がたまった状態のことです。 サプリメントは、あくまで補助的な役割として肝臓の働きを助けたり、脂肪がたまりにくくなるようにサポートしたりする効果が期待されています。 まずは脂肪肝がどうして起こるのか。基本的な仕組みを理解しましょう。 肝細胞に脂がたまる仕組み 肝臓に脂肪がたまる主な原因は、エネルギーのバランスが崩れることにあります。 食べすぎや運動不足により、体内で使われなかったエネルギーが中性脂肪に変わって肝臓に蓄積されていきます。(文献1) 正常な肝臓では、全肝細胞の30%未満が脂肪ですが、全肝細胞の30%以上に脂肪が蓄積すると脂肪肝と診断されます。 この状態になると、肝臓本来の機能である解毒作用や代謝機能が低下し始め、放置すると肝炎や肝硬変といった深刻な状態に進行する可能性があります。 また、アルコールの摂取も肝臓での脂肪合成を促進する要因の一つです。 アルコールが分解される過程で生成される物質が、脂肪の分解を抑制させてしまうのです。 脂肪肝の初期段階では自覚症状がほとんどないため、多くの方が気づかないうちに進行してしまいます。 健康診断で肝機能の数値が基準値を上回った場合は、脂肪肝の可能性を疑いましょう。 サプリで期待できる三つの作用 脂肪肝に対してサプリメントに期待できる作用は、大きく分けて三つあります。 余分な脂を分解して外に出す 肝細胞をサビから守る 炎症をしずめる 余分な脂を分解して外に出す 余分な脂を分解して外に出す作用がある成分として、オメガ3脂肪酸とスルフォラファンがあります。 オメガ3脂肪酸(EPA/DHA)には肝臓で脂肪をエネルギーに変える「β酸化」を高め、肝内脂肪を減らすことが臨床試験で確認されています。(文献8) また、スルフォラファンは脂肪を作る酵素を抑え、溜まりにくくする性質があります。これら2つの成分を効果的に組み合わせると、肝臓に溜まった余分な脂肪を効率的に減らせる可能性があります。(文献10) 肝細胞をサビから守る 肝細胞をサビから守るアスタキサンチンは、ビタミンEより強い抗酸化力で「身体のサビ」となる活性酸素を減らし、肝臓の炎症や繊維化を抑えます。(文献2)(文献9) また、シリマリンは肝臓の機能を測る数値であるALT・ASTを下げた臨床報告があります。 (文献3) アスタキサンチンとシリマリンをうまく取り入れ、サビにくい肝細胞を手に入れましょう。 炎症をしずめる サプリメントには、肝臓の炎症をしずめる効果もあります。 炎症をしずめる代表例として、オメガ3は炎症性の物質であるサイトカインを減らす作用が報告されています。(文献8) また、アスタキサンチンにも肝臓での炎症反応を弱める働きが確認されています。 (文献2)(文献9) ただし、これらの作用はあくまで食事や運動などの基本的な生活習慣の改善と組み合わせることで、より効果的に発揮されます。 サプリメントだけに頼るのではなく、総合的なアプローチが重要であることを理解しておきましょう。 脂肪肝の栄養管理に使用されるサプリ・成分5選 脂肪肝の栄養管理において注目されている5つの成分をご紹介します。 それぞれの成分には独自の特徴と効果があり、あなたの生活スタイルや体質に合わせて選択することが大切です。 以下の成分について、その特徴と期待できる効果、どのような方に適しているかを詳しく解説します。 スルフォラファン オメガ3脂肪酸 シリマリン アスタキサンチン オルニチン スルフォラファン スルフォラファンは、ブロッコリーの新芽(ブロッコリースプラウト)に豊富に含まれる天然の化合物です。 この成分の最大の特徴は、強力な抗酸化作用と解毒酵素の活性化にあります。 肝臓は体内の解毒を担っているため、この機能をサポートするスルフォラファンは脂肪肝の改善に役立つとされています。 また、肝細胞を酸化ストレスから守る働きも確認されており、脂肪肝の悪化を遅らせると報告されています。(文献10) とくに、偏った食事で野菜不足が気になる人にとっては、不足分を補う選択肢になります。 外食が多く野菜不足が気になる方にとって、手軽に摂取できるサプリメントです。 オメガ3脂肪酸 オメガ3脂肪酸は、青魚に多く含まれる必須脂肪酸で、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)が代表的です。 オメガ3脂肪酸は、EPA・DHAは体内にあるPPAR-αというスイッチを入れ、脂肪を作る酵素を抑えつつ、脂肪を分解する作用があると研究で示されています。(文献8) これにより、肝臓に溜まった余分な脂肪を効率的に減らせると考えられています。 さらに、EPA・DHAは中性脂肪を約10〜30%下げるという研究結果があります。(文献8) そのため、有効に摂取すれば脂肪肝の根本的な改善につながる可能性があります。 これらの効果から、脂っこい食事を好む方や、魚を食べる機会が少ない方に適した成分といえるでしょう。 現代の食生活では肉類の摂取が多くなりがちで、相対的にオメガ3脂肪酸が不足しやすい傾向にあります。 不足する栄養素はサプリメントで補って、脂肪酸のバランスを整えましょう。 シリマリン シリマリンは、マリアアザミ(ミルクシスル)という植物の種子から抽出される天然成分です。 この成分は、肝機能サポートのサプリメントとして広く利用されています。(文献3) シリマリンの主な作用は、肝細胞の再生を助け、肝臓を有害物質から保護することです。(文献12) また、抗炎症作用により肝臓内の炎症を抑制し、脂肪肝の進行を遅らせる効果も期待されています。(文献12) 長期的な肝臓の健康維持を考えている方や、お酒を飲む機会が多い方におすすめの成分です。 シリマリンは副作用として、まれに胃腸の不調を引き起こすことがあります。 一般的な摂取目安は製品表示に従い、医師の指示を優先して服用しましょう。 アスタキサンチン アスタキサンチンは、鮭やエビ、カニなどに含まれる赤い色素成分で、強力な抗酸化作用を持っています。 脂肪肝の状態では、肝細胞内で活性酸素が増加し、細胞にダメージを与えてしまいます。 アスタキサンチンは、これらの有害な活性酸素を効率的に除去し、肝細胞を酸化ストレスから保護します。 また、炎症を抑制する作用もあり、脂肪肝に伴う肝臓の炎症を軽減する効果が期待されています。(文献9) 金沢大学の研究では、マウス実験で高コレステロールの餌を与えた群と、高コレステロールの餌にアスタキサンチンを混ぜて与えた群を比較したところ、アスタキサンチンを混ぜた群がAST・ALTの上昇を抑えた報告もありました。(文献2) オルニチン オルニチンは、しじみに豊富に含まれるアミノ酸の一種で、アンモニアを尿素に変えるサイクルのカギとなるアミノ酸で、解毒を支えます。(文献4) アンモニアは体内で発生する有毒な物質で、適切に処理されないと疲労感や集中力の低下を引き起こします。 脂肪肝の状態では、アンモニアの処理能力にも影響が出ることがありますが、オルニチンを補給することで解毒機能をサポートできます。 また、成長ホルモンの分泌を促進する作用もあり、肝機能の修復を助ける可能性があります。 肝臓の負担を軽減することで、脂肪肝の改善にも間接的に寄与すると考えられています。 脂肪肝でサプリを使用するリスクと使い方 サプリメントは健康食品として手軽に利用できる一方で、正しい方法で使わないと体に悪影響を与える可能性があります。 とくに肝臓に関するサプリメントは、使い方を間違えると肝臓に負担をかけてしまうことがあるため、注意深く使用する必要があります。 本章では、サプリメントを活用するために知っておきたい重要なポイントについて解説します。 肝障害報告の多い成分 サプリメントの中には、成分によっては過剰摂取や体質に合わない場合に肝障害を引き起こす可能性があります。 とくに注意が必要なのは、ウコン(クルクミン)を含む製品です。 ウコンは肝臓に良いとされる一方で、大量摂取により肝障害を起こした事例が報告されています。(文献5) これには複数の要因があり、ウコンの効能が肝臓の負担となり引き起こされる事例もあれば、ウコンに含まれる鉄分が肝臓に蓄積しやすく、酸化ストレスを増加させる事例もあります。 また、茶葉から抽出される成分も、まれに肝障害を引き起こすことがあります。 通常の飲み物として摂取する分には問題ありませんが、濃縮された形でのサプリメント摂取には注意が必要です。 これらの成分を含むサプリメントを使用する際は、まず少量から始めて体調の変化を注意深く観察することが大切です。 肝機能に不安がある方は、使用前に医師に相談することをおすすめします。 薬とサプリの併用は医師に相談する 現在、薬を服用している方は、サプリメントとの併用について必ず医師に相談してください。 薬やサプリメントの成分が肝臓に損傷を起こし、肝機能に影響を及ぼす可能性があるからです。(文献6) サプリメントと薬を同時に飲むと、出血・低血糖・低血圧・薬効増減などの思わぬ副作用が起こることがあります。 とくにワルファリンなどの抗凝固薬、糖尿病薬、高血圧薬、そして肝臓で代謝される薬を使っている人は要注意です。 必ず医師や薬剤師に飲んでいる薬やサプリメントを全部伝え、併用の可否とモニタリング方法を相談しましょう。 副作用が出たらすぐに使用を中止する サプリメントを使用していて体調不良を感じた場合は、すぐに使用を中止してください。 副作用の症状としては、腹痛、下痢、吐き気、頭痛、発疹、かゆみなどがあります。 肝臓に関連する症状である、疲労感の増強、食欲不振、黄疸(皮膚が黄色くなる)、尿の色が濃くなるなどが現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。 これらの症状は肝機能の低下を示している可能性があります。 また、アレルギー反応として呼吸困難や全身の発疹が現れた場合は、緊急性が高いため直ちに医療機関を受診する必要があります。 副作用が疑われる場合は、使用していたサプリメントの製品名や成分、使用期間、摂取量などの情報を医師に正確に伝えることが大切です。 これらの情報は、原因の特定と適切な治療につながります。 サプリメントは「天然」や「自然由来」と表示されていても、すべての人に安全とは限りません。 体質や体調により、予期しない反応が起こる可能性があることを理解しておきましょう。 サプリだけでは不十分|生活習慣の改善が脂肪肝治療の基本 サプリメントは脂肪肝の改善をサポートする有用なツールですが、それだけに頼っていては根本的な解決には至りません。 脂肪肝治療の基本は、食事療法と運動療法による生活習慣の改善です。 食事面では、カロリーの過剰摂取を避け、バランスの取れた栄養摂取を心がけることが重要です。 とくに糖質や脂質の摂取量をコントロールし、野菜や魚を中心とした食事に切り替えることで、肝臓への脂肪蓄積を減らせます。 また、コーヒーに含まれるクロロゲン酸は脂肪酸の酸化を促し、カフェインはエネルギー消費を高める作用が示唆されています。 ある観察研究では1日2〜3杯のコーヒー習慣が脂肪肝や線維化リスクを下げると報告されています。(文献7) 運動については、30分〜60分程度の有酸素運動を週3〜4回行うことが推奨されています。 ウォーキングや水泳などの軽い運動でも十分効果があり、無理なく続けられる運動を選択することが大切です。 これらの生活習慣の改善と併せてサプリメントを活用することで、より効果的な脂肪肝の改善が期待できます。 サプリメントは補助的な役割として位置づけ、基本的な生活習慣の見直しを最優先に取り組むことをおすすめします。 また、定期的な健康診断でASTやALTのような血液検査の数値をモニタリングし、改善の程度を客観的に評価することも重要です。 脂肪肝の再生医療 生活習慣の見直しやサプリメントによる栄養管理の他に、再生医療(幹細胞治療)の選択肢があります。 再生医療は、からだが本来もつ修復力を利用して、傷んだ臓器の働きを取り戻すことを目指す先進的な方法です。 当院「リペアセルクリニック」では、脂肪肝に対する再生医療として幹細胞治療を行っています。 自己細胞を使うため拒絶反応が起こりにくく、通院で受けられるのが特徴です。 脂肪肝に対する再生医療について、詳しくは以下をご覧ください。 まとめ|自分で気づきにくい脂肪肝はすぐに相談を! 脂肪肝は初期段階では自覚症状がほとんどなく、多くの方が気づかないうちに進行してしまう疾患です。 しかし、放置すると肝炎や肝硬変といった深刻な状態に進行する可能性があるため、早期の対策が重要です。 本記事でご紹介したサプリメントは、脂肪肝の栄養管理において有用な選択肢の一つですが、あくまで補助的な役割であることを理解しておきましょう。 根本的な改善には、食事療法と運動療法による生活習慣の見直しが不可欠です。 サプリメントを選ぶ際は、ご自身の生活スタイルや体質に合った成分を選択し、安全性を最優先に考慮してください。 また、現在服用している薬がある方は、必ず医師に相談してから使用を開始しましょう。 もし生活習慣の改善やサプリメントによる対策を継続しても数値の改善が見られない場合は、専門医による詳しい検査や治療を受けることをおすすめします。 当院「リペアセルクリニック」では、脂肪肝に関する無料相談を承っているので、お気軽にご相談ください。患者様一人ひとりの状態に応じた治療法をご提案します。 あなたの肝臓の健康を守るために、今すぐできることから始めてみませんか。 参考文献 (文献1) 沢井製薬株式会社「本当はコワイ脂肪肝」サワイ健康推進課, 2014年12月 https://kenko.sawai.co.jp/healthcare/201412.html(最終アクセス:2025年06月24日 (文献2) 金沢大学「サケやカニ由来の赤い色素『アスタキサンチン』にNASHの予防・抑制作用があることを発見!」2015年頃 https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/32091/(最終アクセス:2025年06月24日) (文献3) 科学技術振興機構「J-GLOBAL学術論文データベース」2010年頃 https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201002214886689414(最終アクセス:2025年06月24日) (文献4) 協和発酵バイオ株式会社「オルニチンのはたらきと効果-02」 https://www.kyowahakko-bio-healthcare.jp/healthcare/ornithine/effect02.html(最終アクセス:2025年06月24日) (文献5) 東邦大学医療センター大森病院検査部「ウコンと肝障害について」 https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/kensa/column/column_079.html(最終アクセス:2025年06月24日) (文献6) Merck & Co., Inc.「薬による肝臓の損傷」MSDマニュアル(家庭版), 2020年1月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/04-%E8%82%9D%E8%87%93%E3%81%A8%E8%83%86%E5%9A%A2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%96%AC%E3%81%A8%E8%82%9D%E8%87%93/%E8%96%AC%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E8%82%9D%E8%87%93%E3%81%AE%E6%90%8D%E5%82%B7(最終アクセス:2025年06月24日) (文献7) 株式会社創新社「コーヒーが糖尿病や脂肪肝のリスクを低下」糖尿病ネットワーク, 2023年1月12日 https://dm-net.co.jp/calendar/2023/037302.php(最終アクセス:2025年06月24日) (文献8) Gao M. ほか「Omega-3 Fatty Acids and Non-Alcoholic Fatty Liver Disease: A Systematic Review」Nutrients 11(5), 2019年 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6355343/(最終アクセス:2025年06月27日) (文献9) Han JH ほか「Astaxanthin Alleviates Hepatic Inflammation in Diet-Induced NASH Model」Scientific Reports 8, 2018年 https://www.nature.com/articles/s41598-018-32497-w(最終アクセス:2025年06月27日) (文献10) Li J, et al. (2021). Sulforaphane Attenuates Nonalcoholic Fatty Liver Disease by Inhibiting Hepatic Steatosis and Apoptosis. Nutrients, 14(1), pp.76. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35010950/(最終アクセス:2025年6月24日)
2025.06.30 -
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「健診で脂肪肝と言われたけれど、薬で治療できるのだろうか?」 このような疑問を抱いている方は多いのではないでしょうか。 脂肪肝は痛みや自覚症状がほとんどないため、つい放置してしまいがちな病気です。 しかし、そのまま放っておくと肝臓がかたくなり、肝炎や肝硬変といった重篤な病気につながる可能性があります。(文献1) 最近では、飲み薬や注射などさまざまな治療選択肢が広がっており、早期に適切な治療を始めることで肝臓の状態をしっかりと改善が期待できます。 本記事では、脂肪肝の薬物治療について詳しく解説いたします。 薬の種類や効果、副作用のリスク、市販薬との違い、そして治療を受ける際の注意点まで、専門医の視点からお伝えします。 ぜひ記事を最後までご覧いただき、脂肪肝治療への理解を深めてください。 脂肪肝の薬の種類 脂肪肝の治療では、主に以下の薬が使用されます。 抗酸化剤(ビタミンE) 糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬など) 肝庇護薬(ウルソデオキシコール酸) 脂質異常症治療薬(スタチン系) その他の補助的治療薬 これらの薬は主に、肝臓を保護したり炎症を抑えたりするためのものです。 それぞれ異なる機能で肝臓の改善に働きかけますが、どの薬が適しているかは患者様の症状や併存疾患によって決まります。 次に、それぞれの薬について詳しく見ていきましょう。 抗酸化剤(ビタミンE) ビタミンEは、肝臓の炎症や酸化ストレスを軽減する強力な抗酸化剤として脂肪肝治療の補助として使用されることがあります。 主な働きは、肝細胞を傷つける活性酸素を除去し、炎症を引き起こすサイトカインという物質を抑制することです。(文献2) 肝酵素(ALT、AST)の低下、肝臓の炎症軽減、インスリン感受性の改善といった効果が見られた例があります。 ただし、副作用のリスクも理解しておく必要があります。 高用量での長期使用では、死亡率の増加や出血性脳卒中のリスクが報告されています。(文献3) そのため、糖尿病を合併していない患者様で、肝生検でNASH(非アルコール性脂肪肝炎)が確認された場合に限定して、抗酸化剤(ビタミンE)の使用が推奨されています。 使用する際は必ず医師の指導のもとで適切な用量を守ることが重要です。 GLP-1受容体作動薬 GLP-1受容体作動薬は、もともと糖尿病治療薬として開発された薬ですが、脂肪肝の改善効果も報告されています。 この薬の作用メカニズムは、血糖値に応じてインスリンの分泌を促進し、食欲を抑制して体重減少を促すことです。(文献4) 代表的な薬剤には、リラグルチド(ビクトーザ)やセマグルチド(オゼンピック)があります。 この薬の特徴は、主に体重減少を介した改善が示唆されており、肝脂肪への直接作用は検証中です。 副作用としては、下痢や便秘、吐き気や嘔吐もあるため、定期的な診察が必要です。 SGLT2阻害薬 SGLT2阻害薬は、腎臓でのブドウ糖再吸収を阻害することで血糖値を下げる糖尿病治療薬です。脂肪肝の改善効果も注目されています。 代表的な薬剤には、エンパグリフロジン(ジャディアンス)、ダパグリフロジン(フォシーガ)、カナグリフロジン(カナグル)などがあります。 台湾で行われた大規模な研究では、糖尿病患者における脂肪肝の発症率が有意に低下することが報告されています。(文献5) 副作用としては、多尿・口渇などが挙げられます。 とくに高齢者では脱水のリスクが高まるため、十分な水分摂取と定期的な検査が必要です。 肝庇護薬(ウルソデオキシコール酸) ウルソデオキシコール酸は、もともと胆石症の治療に使用されてきた薬です。肝細胞を保護する効果があることから脂肪肝治療にも応用されています。 この薬は親水性胆汁酸と呼ばれる物質で、肝細胞の膜を安定化し、炎症やアポトーシス(細胞死)を抑制する働きがあります。(文献6) ただし、単独での治療効果は限定的であることがわかっており、生活習慣の改善や他の薬剤との併用でより効果的とされています。 副作用は軽度の下痢や胃部の不快感がありますが、間質性肺炎の重大な副作用がまれにあるため、異常が認められた場合は専門医に相談しましょう。 推奨用量は通常、成人1回あたり50mgを1日3回経口投与します。 スタチン系薬剤 スタチン系薬剤は、コレステロールを下げる薬として広く使用されていますが、脂肪肝の改善にも多面的な効果を発揮することがわかってきました。 代表的な薬剤には、アトルバスタチン(リピトール)、ロスバスタチン(クレストール)、シンバスタチン(リポバス)などがあります。 この薬の作用は、HMG-CoA還元酵素を阻害してコレステロール合成を抑制するだけでなく、抗炎症作用、抗線維化作用、抗酸化作用も併せ持つことです。(文献7) 大規模な研究では、脂肪肝患者における心臓や血管で起こる重大なトラブルを68%減少させた報告もあります。 副作用としては、筋肉痛、肝酵素上昇、まれに横紋筋融解症などが挙げられます。 脂肪肝は市販薬やサプリで改善できる?処方薬との違い 「病院に行く前に、まずは市販薬やサプリメントで様子を見たい」と考える方も多いでしょう。 確かに、ドラッグストアやインターネットで手軽に購入できる肝機能改善をうたった商品は数多く存在します。 しかし、処方薬と市販品には大きな違いがあることを理解しておく必要があります。 最も重要な違いは、医学的根拠(臨床試験データ)の量と質です。 処方薬は大規模試験を経て承認されることが多く、標準化された用量設定と品質管理が保証されています。 一方、市販のサプリメントは高品質な臨床試験による裏付けが限定的で、製品間の品質や体への吸収されやすさ等にばらつきがあります。 自己判断での使用には重大なリスクも伴います。 適切な診断なしでの自己治療は、以下の危険性があります。 本当の病気を見逃す(診断遅れ) 他の薬剤との相互作用 不適切な用量により効果がなかったり、副作用が出る これらの危険性があるため、まずは専門医の診断を受けることが大切です。 脂肪肝で薬を服用する際の注意点 脂肪肝の薬物治療を成功させるためには、いくつかの重要な注意点があります。 まず理解していただきたいのは、薬だけでは根本的な改善は難しいという点です。 脂肪肝治療の基本は生活習慣の改善であり、薬物療法はあくまでサポート役として位置づけられています。 薬を服用する際は、必ず医師の指示に従い、定期的な検査を受けながら治療を続けましょう。 脂肪肝は生活習慣の改善が治療の基本 以下の食事、運動、そして薬との相乗効果を確認し、脂肪肝の改善をしましょう。 食事 肝脂肪を有意に減らす選択肢として、日本肝臓学会ガイドラインでは、オリーブオイル・魚・ナッツ・全粒穀物を中心とした、地中海食パターンと適度なカロリー制限が挙げられています。 赤身肉や加工肉を控え、タンパク質は魚類や豆類から摂取しましょう。 運動 運動療法は複数の研究で脂肪肝への効果が認められています。 具体的には「中~高強度有酸素運動(30–60分×週3–4)」を推奨し、体重が減らなくても肝脂肪と炎症が改善すると報告されています。 そのため、体重も一つの大切な指標ではありますが、体重が減らないからと運動を辞めずに、継続することが大切です。 副作用に注意!症状が出たら必ず医師に相談 治療薬を継続して使用するためには、副作用への適切な対応が欠かせません。 どの薬にも副作用のリスクがあるため、症状が現れた場合は自己判断せず、必ず医師に相談しましょう。 薬剤 代表的副作用と頻度 早期対応のポイント ビタミンE 出血性脳卒中 高用量を避け、出血傾向のある人は使用しない GLP-1受容体作動薬 吐き気・下痢 初期は少量から開始し、症状が続けば用量調整 SGLT2阻害薬 尿路/性器感染症、脱水 水分摂取を促し、高齢者・腎機能低下例は慎重投与 スタチン 筋痛、クレアチンキナーゼ上昇、横紋筋融解症 筋肉痛+褐色尿が出たら直ちに受診 副作用が現れた場合の対応方法も覚えておきましょう。 軽微な症状であっても、まずは医師への報告が大切です。 症状の程度に応じて、用量調整、投与方法の変更、代替薬への切り替えなどの対応が検討されます。 定期的な検査も継続管理の重要な要素です。健康診断や病院で定期検査を受け、診断結果を元に医師に相談しましょう。 薬物相互作用にも注意が必要で、他の薬やサプリメントを併用する場合は必ず医師に伝えてください。 脂肪肝の薬と再生医療という治療選択肢 脂肪肝治療の柱はあくまで食事・運動と既存薬ですが、治療には再生医療という選択肢もあります。 再生医療には、幹細胞治療とPRP療法の二つがあります。 幹細胞治療では、患者様から採取した幹細胞を培養し、患部に投与します。 PRP療法は、血液に含まれる血小板を濃縮した液体を作製し、注射する治療法です。 肝臓疾患に対する再生医療について詳しくは、以下をご覧ください。 まとめ|脂肪肝治療は薬と生活習慣の改善で回復を目指そう 脂肪肝は、早期に気づいて適切な治療をすれば改善が期待できる病気です。 現在はビタミンE、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、ウルソデオキシコール酸、スタチン系薬など複数の薬が検討されており、炎症や脂肪蓄積を抑える報告結果もあります。 ただし、薬だけに依存せず、食事と運動を基盤に改善を目指すことが治療成功のカギです。 地中海食を参考にカロリーと糖質を抑え、中~高強度の有酸素運動を30から60分、週3〜4日のペースで行い、肝脂肪と炎症を改善していきましょう。 治療には、再生医療の選択肢もあります。 再生医療の詳細については、当院「リペアセルクリニック」へお問い合わせください。 脂肪肝の薬に関してよくある質問 薬の副作用が心配だけど大丈夫? 脂肪肝の治療のみを対象とした薬はまだないため、脂肪肝と関連する薬を使用した際の回答となりますが、副作用が起きることもあります。 薬ごとの副作用の重さの違いは、ビタミンEだと高用量を長期に服用した場合に全死亡率や出血性脳卒中のリスクがわずかに上昇するとの報告があります。 一方、GLP-1受容体作動薬の嘔気・下痢、SGLT2阻害薬の尿路/性器感染症は多くが軽度で、用量調整や水分補給で対処可能です。 また、副作用の重さは薬の違いだけでなく、体質によっても個人差がある点にも注意してください。 軽い症状でも自己判断は避け、すぐに医師へ報告し、検査値を定期的にチェックして副作用を早期発見・対応しましょう。 薬代はいくらぐらいかかる? 脂肪肝の治療だけを対象とした保険適用薬は現在ありません。そのため、薬が高額になる可能性がある点は注意が必要です。 ただし、本記事で紹介した薬で、糖尿病などの合併症が見られた場合は保険適用となる可能性もありますので、必ず確認しましょう。 費用は薬剤・投与量で変わるため、診断時に医師と具体的に相談してください。 どのタイミングで病院に行けばいい? 健診で脂肪肝を指摘されたら症状がなくても一度専門医を受診するのが重要です。 とくに40歳以上で体重増加が続く方や、家族歴に肝疾患がある方は早期受診が推奨されます。 脂肪肝は自覚症状が出にくく、放置すると肝硬変や肝がんへ進行するリスクがあります。 早期診断・治療で重篤化を防げる可能性が高まるため、不安を感じたら遠慮なく医療機関に相談してください。 参考文献 (文献1) 日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)」2020年 https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/nafld.html (最終アクセス:2025年6月24日) (文献2) Nagashimada, M., & Ota, T. (2019). Role of vitamin E in nonalcoholic fatty liver disease. IUBMB Life, 71(4), pp.516-522. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30592129/最終アクセス:2025年6月24日) (文献3) Miller, E. R., et al. (2016). Vitamin E and Non-alcoholic Fatty Liver Disease. PMC, 4984672. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4984672/ (最終アクセス:2025年6月24日) (文献4) Newsome, P. N., et al. (2021). A Placebo-Controlled Trial of Subcutaneous Semaglutide in Nonalcoholic Steatohepatitis. New England Journal of Medicine, 384(12), pp.1113-1124. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33185364/(最終アクセス:2025年6月24日) (文献5) Wei, Q., et al. (2024). Non-alcoholic fatty liver disease risk with GLP-1 receptor agonists and SGLT-2 inhibitors in type 2 diabetes: a nationwide nested case–control study. Cardiovascular Diabetology, 23(1), pp.1-12. https://cardiab.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12933-024-02461-2 (最終アクセス:2025年6月24日) (文献6) Zhang, J., Wang, X., Shen, Y., et al. (2020). Ursodeoxycholic Acid in Non-Alcoholic Fatty Liver Disease: A Systematic Review and Meta-analysis. Clinical and Experimental Gastroenterology, 13, 251-264. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32595039/(最終アクセス:2025年6月24日) (文献7) Boutari, C., et al. (2024). A Systematic Review of Statins for the Treatment of Nonalcoholic Steatohepatitis: Safety, Efficacy, and Mechanism of Action. Molecules, 29(8), pp.1859. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38675679/ (最終アクセス:2025年6月24日)
2025.06.30 -
- 肝疾患
- 内科疾患
「肝嚢胞は放置しても良いのかな」「自然に消えることはあるのかな」 このような悩みはありませんか。 肝嚢胞は、肝臓の組織に液体が溜まり袋状になったものです。40〜60代の女性に起こりやすく、健康診断の超音波検査で発見されるケースがよく見られます。 多くの場合経過観察で済みますが、重症化・悪性化するケースもあるため、適切な診断とフォローアップが必要です。 本記事では、肝嚢胞は自然に消えるのかや、治療法、注意すべき症状などを解説します。記事を最後まで読めば、指摘された肝嚢胞についての注意すべき点がわかり、適切な対応を取れるようになるでしょう。 【結論】肝嚢胞(のうほう)は自然に消えることは稀である 肝嚢胞は、感染や破裂、出血によってサイズが増大することはあるものの、自然に消えたり小さくなったりしたとされる報告は稀です。 大きくなると、腹部の右上部分に膨満感や痛みを感じるケースがあります。(文献1) 本章では、肝嚢胞に治療が必要なのか症状別に解説します。 良性で症状がなければ治療の必要はない 肝嚢胞の多くは良性で、健康に支障をきたすものではありません。 とくに症状もあらわれず、おなかが張る、苦しいなどの不快感がなければ治療しなくても問題ないケースが一般的です。(文献1)(文献2) 気になる症状があるなら早めに受診・治療が必要 「お腹が張って苦しい」「痛みがある」などの症状がある場合は、以下のような問題が生じている可能性があります。(文献1) 出血している 感染症が起きている 嚢胞が破裂している 大きくなった嚢胞がほかの臓器を圧迫している 基本的には医師と相談して経過を見ますが、肝嚢胞が大きくなると、嚢胞破裂につながるおそれも稀にあります。 少しでも異常を感じた場合は、早めに医師へ相談しましょう。 肝嚢胞の治療法 肝嚢胞の治療は、感染やほかの臓器の圧迫が起きている場合におこないます。 種別 治療法 具体的な治療法 内科的治療 ドレナージ 超音波で観察しながら嚢胞内にチューブを入れ、液体を抜く 場合によっては、嚢胞内に液体が溜まらないようにエタノールを注入する 外科的治療 手術 肝嚢胞を切開・切除し、取り除く 肝嚢胞の大きさや種類により、治療方法は異なります。気になる点は、医師へ確認しましょう。 肝嚢胞の治療については、以下の記事で詳しく解説しています。 肝嚢胞の診断後に注意すべき3つのポイント 肝嚢胞と診断されたら、以下の3つのポイントに注意しましょう。 肝機能が悪化していないか確認する 息苦しさや圧迫される感じなどの違和感がないか確認する 年に1回は超音波検査を受ける 順番に説明します。 肝機能が悪化していないか確認する 肝嚢胞に感染や破裂が起こると、稀に肝機能に影響を及ぼすことがあります。 医師に指示された間隔で受診し、肝機能の悪化がないかを定期的に確認しましょう。 息苦しさや圧迫される感じなどの違和感がないか確認する 肝嚢胞が大きくなると、ほかの臓器を圧迫して腹痛や息苦しさなどが出る可能性があります。 体調に違和感があれば、早めに受診しましょう。 年に1回は超音波検査を受ける 肝嚢胞は、サイズが増大しても自覚症状があらわれないケースもあります。 無症状の場合でも、年に1回は超音波検査を受け、肝嚢胞の状態に問題がないかを確認しましょう。 まとめ|肝嚢胞の消失は稀!診断後は適切な治療を受けよう 肝嚢胞は良性で無症状のケースが多いものの、自然に消えるのは非常に稀です。 気づかないうちにサイズが増大したり、感染を起こしたりするリスクもあります。 そのため、診断後は医師の指示に従い適切な治療・経過観察をおこないましょう。 当院「リペアセルクリニック」は、脂肪肝や肝炎、肝硬変などにより炎症や線維化が起きた肝臓に対して、組織の修復や再生が期待できる再生医療を提供しています。 気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。 また、女性に多い肝臓の病気については、以下の記事も参考にしてください。 肝嚢胞についてよくある質問 肝嚢胞は石灰化しますか? 肝嚢胞が石灰化したという報告はありますが、非常に稀です。(文献3) ただし、がんを始めとするほかの病気の合併や炎症、出血などがあると、石灰化しやすいという報告もあります。必要に応じて医師の指示に従い、経過を観察しましょう。 肝嚢胞は食生活と関連がありますか? 肝嚢胞の発生には、女性ホルモンの一種「エストロゲン」が関連しているという説はありますが、現時点で明確な原因は特定されていません。(文献4) ただし、明確な関連は証明されていないものの、肝臓の健康を維持するためにはバランスの取れた食生活を心がけることが大切です。 肝嚢胞はストレスと関係がありますか? 肝嚢胞の原因は明らかになっていない部分が多く、ストレスとの関係も明らかではありません。(文献4) しかし、過剰なストレスは身体面・精神面のどちらにも悪影響を与えます。健康を保つために、ストレスを溜めすぎない生活を送るよう心がけてみてください。 参考文献 (文献1) 笹岡悠一ほか.「腹部超音波検査で観察された肝嚢胞縮小化の1例と10例の文献的考察」『医学検査』 Vol.70,No.1 (2021),pp. 155–159 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/70/1/70_20-50/_pdf/-char/en(最終アクセス:2025年3月18日) (文献2) 難病情報センター「肝臓疾患分野|多発肝のう胞症(平成22年度)」 https://www.nanbyou.or.jp/entry/781(最終アクセス:2025年5月16日) (文献3) 三宅周ほか.「多発性肝のう胞とその石灰化について-石灰化を伴なった非包虫性の1例を含む自験例14例を中心に-」『肝臓』23巻2号(1982),pp.198-205https://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo1960/23/2/23_2_198/_pdf(最終アクセス:2025年3月18日) (文献4) 難病情報センター「肝臓疾患分野|多発肝のう胞症(平成22年度)」https://www.nanbyou.or.jp/entry/781(最終アクセス:2025年3月18日)
2025.03.31 -
- 肝疾患
- 内科疾患
突然「肝嚢胞ですね」と医師から告げられ、不安になっていませんか? なかには経過観察で特別な治療は不要と言われる方もいるでしょう。しかし、本当に大丈夫なのか不安になりますよね。 また「食事や普段の日常生活が悪かったかも」と悩み、見直す方もいるかもしれません。 肝嚢胞と食事は直接的な影響は少ないといわれていますが、不摂生な食事は肝臓に負担を与えます。食生活が原因となり肝嚢胞に悪影響を及ぼすことも考えられるため、注意が必要です。 本記事では、肝嚢胞と食事の関係性や、肝臓病のときの食事について詳しく解説します。本記事を参考に、肝臓をいたわる食事を心がけてください。 【結論】肝嚢胞(のうほう)に食事は直接影響しないが注意が必要 軽症の場合、肝嚢胞は経過観察で済むケースが多く見られます。肝嚢胞の原因は明確にはなっていませんが、日常の食事が肝嚢胞に直接影響を与えることは少ないと考えられています。 しかし、食生活の乱れは肝臓に負担を与えるため、肝嚢胞にも悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。 たとえば肥満症や糖尿病にかかっている場合は、不規則な食生活により肝臓までダメージを与えることもあります。(文献1)(文献2) 肝嚢胞自体は食事によって大きく変動するものではありませんが、肝臓の健康を維持するためには、適切な食生活の改善が欠かせません。日頃から肝臓に負担をかけない食事を意識しましょう。 肝嚢胞の原因や症状、治療法については以下の記事で詳しく解説しています。気になる方は合わせてご覧ください。 肝嚢胞で注意が必要な食事 肝嚢胞を悪化させるリスクを減らすためには、食生活に気を配ることが大切です。とくに以下の食事は肝臓に負担を与える可能性があります。 アルコール 単品の外食・コンビニ食 脂肪分の多い肉 肝臓に負担をかける食品はできるだけ控え、バランスの取れた食事を心がけましょう。 アルコール アルコールは肝臓で代謝されるため、過剰な飲酒は肝機能を低下させます。(文献3) 肝嚢胞がある場合は禁酒が理想的ですが、難しい場合は頻度や量を調整しましょう。 飲酒を抑えるための方法として、以下のような工夫がおすすめです。 休肝日を設ける 摂取量を1日あたり純アルコールで約20g程度に抑える(ビールなら中瓶1本500mlまで、ワインなら1杯半程度)(文献4) アルコール度数の低い飲料を選ぶ 普段から飲酒習慣のある方は、量や頻度の調整でアルコール摂取量を抑える工夫をしましょう。 単品の外食・コンビニ食 外食やコンビニ食は手軽ですが、単品で済ませると栄養バランスが偏りがちです。 とくに脂質や塩分が多い食品を摂りすぎると、肝臓に負担がかかる可能性があるため注意が必要です。 普段から外食やコンビニ食が多い方は、以下のような工夫を取り入れて栄養バランスを整えましょう。 定食メニューを選び、主食・主菜・副菜をそろえる カット野菜やスープをプラスする 揚げ物や高カロリーなメニューは控えめにする 生活するうえで外食やコンビニ食を避けられない場合は、上記を参考に工夫してみてください。 脂肪分の多い肉 脂肪分の多い肉の部位を過剰に摂取すると、肝臓に負担をかける可能性があります。 肝臓への負担を減らすために牛ヒレ肉や豚足など、脂身の少ない部位を選ぶようにしましょう。 また、低脂肪の肉類でも揚げ物や高脂肪食は脂肪肝を引き起こすリスクがあるため、注意が必要です。 これらのポイントを意識しながら、脂肪分の控えたお肉を普段の食事に取り入れましょう。 肝嚢胞とは別に、肝臓の代表的な疾患として「肝硬変」が知られています。肝硬変の食事のポイントについて詳しく知りたい方は、以下のコラムも参考にしてください。 肝嚢胞の人におすすめの食事 肝機能が低下している際におすすめの食事は、以下の3つです。 穀物 良質なたんぱく質 野菜やキノコ 肝嚢胞の人は、これらの栄養分や食品を普段の食事に取り入れて、バランス食を心がけてください。 穀物 肝臓病になると、肝機能低下により血糖値を下げる力が鈍ります。(文献5) 雑穀米や全粒粉のパンを取り入れると、血糖値の急激な上昇を防ぎ、肝臓への負担を軽減できるためおすすめです。 一方、白米のような精製穀物は血糖コントロールを悪化させる可能性があります。そのため、未精製の穀物を選ぶのがより望ましいでしょう。(文献6) 良質なたんぱく質 アミノ酸がバランスよく含まれているたんぱく質が、良質なたんぱく質に該当します。 体に吸収されやすいため、効率よく利用されるのが特徴です。(文献7)(文献8) 代表的な良質なタンパク質として以下のような食材があげられます。 豆類、大豆製品(豆腐、納豆、味噌など) 卵 魚や脂肪の少ない肉(鶏むね肉、豚ヒレ肉など) ただし、過剰に摂取すると肝臓に負担をかけて肝性脳症のリスクをあげる原因になります。良質だからといってむやみに多く摂り過ぎず、適量を意識しましょう。 野菜やキノコ 野菜やキノコには、ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。 とくに、肝機能が低下するとビタミンやミネラルを蓄える能力が低下するため、日常の食事で積極的に摂取することが重要です。 以下のような野菜やキノコを普段の食事に取り入れるようにしましょう。 緑黄色野菜 ほうれん草 にんじん ピーマン など キノコ類 しいたけ えのき しめじ など これらの食材を日々の食事に取り入れることで、肝機能の維持に役立つでしょう。 肝嚢胞の人が食事で意識すべきポイント 肝臓の健康を守るためには、食品や栄養素の他、日々の食事メニューの工夫が大切です。とくに、以下のポイントを意識すると良いでしょう。 栄養バランスの整ったメニューを考える カロリーオーバーに注意する 主食・主菜・副菜をそろえたメニューにする 食事のバランスを意識し、主食・主菜・副菜をそろえた食事を心がけることが大切です。これにより、必要な栄養素を効率よく摂取でき、肝臓への負担を軽減できるでしょう。 バランスの良い食事の例として、以下のようなメニューがおすすめです。 主食:玄米や雑穀米 主菜:魚や大豆製品(豆腐、納豆) 副菜:野菜や海藻類の和え物 このような組み合わせを意識しながら、栄養バランスの良い食事を続けましょう。 カロリーオーバーに注意する 肝臓の負担を減らすためには、適正なカロリー摂取が重要です。カロリーを抑えるためには、以下のポイントを意識しましょう。 低カロリーで高たんぱくな食材(鶏むね肉、白身魚、大豆製品)を選ぶ 調理法を工夫し、油を控えめにする(蒸す、茹でる、焼く) 食事量を適量に調整し、過剰摂取を避ける これらの工夫を取り入れることで、肝機能の悪化を防ぐことにつながります。ただし、良質なたんぱく質を多く含む食品は高カロリーになりがちなので注意が必要です。 まとめ|肝嚢胞と診断されたら食事内容を見直してみよう 今回は、肝嚢胞の方へ向けて、おすすめの食事のポイントを詳しく解説しました。 肝嚢胞自体は食事が原因で発症するとは言えないものの、不規則な食生活により肝機能が低下し、肝嚢胞の状態に影響を及ぼす可能性があります。 肝嚢胞が無症状でも食生活を見直して肝臓の健康に努めましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、肝障害の悪化を防ぐ「再生医療」を行っております。 メール相談またはオンラインカウンセリングにてお悩みを伺うことも可能です。気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 肝嚢胞についてよくある質問 嚢胞ができる原因は何ですか? 嚢胞の特定の原因は明らかになっていませんが、以下のような原因が報告されています。 寄生虫感染(エキノコックス) 女性ホルモンの影響 先天性の要因 これらの原因が疑われる場合は、専門医による適切な診断と治療が必要です。異変を感じたら自己判断せず医療機関を受診しましょう。 肝嚢胞になったらどうすれば良いですか? 肝嚢胞が見つかった場合、特別な治療を必要とせず、経過観察を行うことが多いです。医師の判断によっては、半年〜年に1回くらいエコー検査するケースもあるでしょう。 しかし、嚢胞が大きくなり、腹痛や圧迫感などの症状が現れた場合は、手術が検討されることもあります。その際、嚢胞内の液体を抜き取る穿刺治療や、切開による手術が行われることがあります。 いずれにしても、肝嚢胞と診断された場合は、医師の指示に従って適切な検査や治療を受けましょう。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「脂肪肝(しぼうかん)」e-ヘルスネット, 2024年5月27日https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-033.html(最終アクセス:2025年3月16日) (文献2) 奥田昌恵、横田友紀ほか.「2 型糖尿病における脂肪肝 ―その頻度および臨床的特徴―」『糖尿病』 50 巻 8 号 , p631-p634.(2007) https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/50/8/50_8_631/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年3月16日) (文献3) 厚生労働省「アルコールの吸収と分解」e-ヘルスネット, 2022年01月20日 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-002.html(最終アクセス:2025年3月16日) (文献4) 厚生労働省「アルコール」https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html(最終アクセス:2025年3月16日) (文献5) 種市 春仁 藤原 史門ほか.「3. 肝硬変に伴う糖尿病(肝性糖尿病)」『糖尿病』 51巻 3号 , p203-p205.(2008〕) https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/51/3/51_3_203/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年3月16日) (文献6) 鎌田智英実.「6.栄養摂取状況と改善策」『日本老年医学会雑誌』50巻 1 号 , p68-p71.( 2013〕) https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/50/1/50_68/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年3月16日) (文献7) 厚生労働省「たんぱく質(たんぱくしつ)」e-ヘルスネット, 2024年5月27日 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-044.htm(最終アクセス:2025年3月16日) (文献8) 国立長寿医療研究センター「良質なたんぱく質とは? 【低栄養予防】」https://www.ncgg.go.jp/ri/advice/09.html(最終アクセス:2025年3月16日)
2025.03.31 -
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肝嚢胞は肝臓に形成された袋の中に水が溜まった状態です。自覚症状がないことも多いですが、大きくなると上腹部の痛みや背中の痛みをもたらす場合があります。 肝嚢胞で背中が痛むということは、肥大化がかなり進んでいると考えられます。 本記事では背中の痛みの原因になる肝嚢胞やその症状、治療方法を解説します。 肝嚢胞が背中の痛み(背部痛)を引き起こすことがある 肝嚢胞(かんのうほう)の診断を受けた後、背中に痛みを感じることがある方もいらっしゃるでしょう。 肝嚢胞は多くの場合、症状がなく偶然の検査で見つかることが一般的ですが、大きくなると徐々に不快感や痛みを引き起こすことがあります。 とくに肝嚢胞が大きく成長すると、肝臓の被膜を伸ばしたり、周囲の組織を圧迫したりすることで、右上腹部だけでなく背中や肩甲骨の下部にまで痛みが広がる場合があります。 このような背中の痛みは、肝嚢胞のサイズや位置によって現れることがあるため、医師による適切な診断と評価が重要です。ここでは、肝嚢胞がもたらす背中の痛みについて詳しく見ていきましょう。 肝嚢胞(かんのうほう)は多くの場合、症状がなく偶然の検査で見つかることが一般的ですが、大きくなると徐々に不快感や痛みを引き起こすことがあります。 実は肝嚢胞は発達の仕方によって、右上腹部だけでなく背中まで痛みが広がる場合があります。 肝臓にできた肝嚢胞の肥大が背中の痛みになる 肝嚢胞とは、肝臓にできた嚢胞(水ぶくれ)です。 袋の内部に水分などの液体が溜まっている状態で、基本的には害はありません。 ただ、肝嚢胞は肥大化するケースがあり、肥大化の仕方によっては周辺の臓器を圧迫します。 肥大化によって周辺の臓器が圧迫されると、お腹や腰、ひいては背中の痛みの一因になることもあります。 基本的に症状や害のない水ぶくれとはいえ、肥大化すると痛みを感じるケースがある点に注意が必要です。 肝嚢胞自体の原因は完全に解明されていない 肝嚢胞が発生する原因は、実は今でも完全に解明されていません。 ただ、肝嚢胞は生まれついた時点ですでにある先天的なものと、成長に伴ってできてくる後天的なものがあります。 なお、先天的なものと後天的なものとでは、先天的なものの症例が多い傾向です。 肝嚢胞は40代から60代の女性の患者が多いため、女性ホルモンの一種であるエストロゲンとの関連性を指摘する学説があります。 一方、後天的な肝嚢胞は切り傷のような外傷や、キタキツネやイヌの便に生息する寄生虫エキノコックスの感染が原因と考えられています。エキノコックスは国内では北海道で主に発生が確認されており、野生動物の糞便を介して人間に感染します。 エキノコックスの感染で発生したものは、肥大化した際には肝臓でさまざまな異常を引き起こし、死に至らせる事例がある点に注意が必要です。 ただ、エキノコックスなどの感染など後天的な原因によるものは、発生確率が極めて低いため、過度の心配は必要ありません。 肝嚢胞が引き起こす症状を解説 肝嚢胞はほとんどが良性です。 基本的にサイズが大きいケースほど、症状がもたらすリスクが大きくなります。 肝嚢胞によってもたらされる症状を、サイズ別にひとつずつ解説していきましょう。 小さい肝嚢胞は基本的に症状はない まず、サイズの小さな肝嚢胞は基本的に症状はありません。 自覚症状さえ見られないため、小さいものができていても、とくに支障なく日常生活を送れます。 以上のように、サイズが小さめの肝嚢胞は人体にさほど影響を及ぼしません。 超音波検査や血液検査などで発見されることはあるものの、無症状であれば医師からも当面様子を見る診断が下る可能性があります。 肥大化した肝嚢胞が引き起こす腰痛と消化器症状 肝嚢胞が肥大化すると、お腹の痛みや張りなどの悪影響が出てくる点に注意が必要です。 お腹の痛みをはじめとする症状は、肝嚢胞の肥大化で周りの臓器が圧迫されることによって起こります。 とくによく見られる症状が、右側のお腹の上側からみぞおちにかけての痛みです。 この症状は、肝嚢胞が大きくなるにつれて、肝臓の表面を引っ張るのが原因と考えられています。 さらに肝嚢胞の肥大化が進行すると、痛みを感じる部位も胃などの消化器だけでなく、腰や背中に広がることもあります。 腰や背中にまで痛みを感じるようになると、かなり肥大化していることが考えられるため、医療機関での精密検査が必要です。 また、肝嚢胞が肥大化した場合、食生活にも悪影響が及ぶケースがあります。 肝嚢胞が大きくなると胃が圧迫されることがあり、食欲がわかなかったり吐き気を催したりすることもあります。 吐き気については、実際に食べたものを戻してしまうことがある点も、注意が必要なポイントです。 ほかにも、肝嚢胞に細菌が入り込んでいる場合は発熱などの症状が引き起こされることがあります。 多発性肝嚢胞による重篤な合併症リスク 肝嚢胞でより注意しなければならない症状が、多発性肝嚢胞(たはつせいかんのうほう)と呼ばれる複数の肝嚢胞が発生する症状です。 多発性肝嚢胞になると、状況によって呼吸困難やヘルニアを引き起こす可能性があります。 加えて、腎臓に嚢胞ができる多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)を併発するケースがあるのも特徴です。 多発性嚢胞腎は高血圧や腎不全の原因になるリスクを持った病気です。 もし、多発性肝嚢胞と多発性嚢胞腎を併発しているのであれば、基本的に治療が必要になります。 肝嚢胞の診断方法 健康診断などで肝嚢胞らしきものが見つかった場合、より詳しい検査を受けるように指示されるのが一般的です。 具体的にどのような検査が行われるのか、肝嚢胞の診断方法について解説します。 一般的に腹部エコー検査がよく用いられる 肝嚢胞を詳しく診断する際は、腹部エコー検査(超音波検査)を活用するのが基本です。 腹部エコー検査とは、お腹の部分に超音波を送受信する器械を当て、跳ね返ってきた超音波をもとに画像診断します。 簡単に臓器の状態を確認できる上に、体にも大きな負担はかかりません。また、肝臓に溜まっている液体の有無のほか、肝嚢胞の個数・サイズや成長具合を判断できます。 CT検査やMRI検査による精密検査も行われる 腹部エコー検査で肝嚢胞による臓器の圧迫などの影響が出ていることが明らかな場合は、CT検査やMRI検査を使ってより精密な検査も行います。 CT検査はコンピュータを使いながら体内を断層撮影する方法です。X線をさまざまな方向から照射して、水分や脂肪、骨などの体内の成分に対する吸収の度合いで画像を作ります。 とくに見つかった肝嚢胞が腫瘍を疑われるときは、バリウムなどの造影剤も活用して検査を行う流れです。 一方MRI検査では、人体に多くの水素原子が含まれている特徴を活かして検査します。水素原子に磁力と電波を照射し、それに対する水素原子の反応に応じて画像を作る仕組みです。 補助的に血液検査も使われる 腹部エコー検査やCT検査・MRI検査以外にも、血液検査が使われることがあります。 血液検査はあくまでも補助的な手段であるため、他の手法と組み合わせての活用が欠かせません。 ただ、血液検査での検査項目のうち、アミノ酸の生成機能があるASTとALTは肝機能の状態を示す指標です。 血液検査でASTとALTになんらかの異常が見られる場合、他の検査の結果と併せて肝嚢胞による問題がないかで総合的な判断が下されます。 肝嚢胞の治療方法 もし、検査によって肝嚢胞が見つかったとき、手術のような方法で治療するのではないかと心配になるのではないでしょうか。 実は肝嚢胞の状態やサイズ、患者の健康状態などによっては、治療が不要なケースもあります。 肝嚢胞の状態などに応じた治療方法について、ひとつずつ見ていきましょう。 無症状の場合は経過を観察する まず、発見された肝嚢胞が無症状であれば、ひとまず経過を観察しつつ、半年から1年おきに腹部エコー検査を行います。 肝嚢胞は数が1個だけで症状が見られないものであれば、肥大化するケースは多くありません。 もし長期的に様子を見て、何の変化もなければ、治療は行われずに終わります。 ただし、肝嚢胞の中には年月とともに徐々に肥大化するケースもあるため、油断はできません。 肥大していれば嚢胞液の排出治療を行う 肝嚢胞が肥大し、痛みまで生じていたら、治療が必要です。 肝嚢胞の治療では、薬物療法や嚢胞液の排出を行います。 嚢胞液の排出は、まず嚢胞自体に針を刺して、内部の液体を抜きます。 続いて、再度嚢胞液が溜まるのを防ぐために、嚢胞の中にエタノールやミノサイクリン塩酸塩の薬液を注入する流れです。 根本的な解決手段として外科手術も用いられる 肝嚢胞の治療法には、根本的に解決するための手段として外科手術が行われることがあります。 外科手術が必要になるのは、肝嚢胞の肥大化で激しい痛みや胆汁の流れの妨げが見られるときなどです。 外科手術では主に以下の2つが行われます。 肝切除術:嚢胞を含む肝臓の一部を外科的に切除する手術 嚢胞壁切除術:嚢胞の壁の一部のみを切除して内容液を排出させる 肝切除術の場合は、嚢胞液を排出する方法と異なり、体への負担は大きいものの、嚢胞の除去が可能です。 なお、外科手術の際に寄生虫も見つかったときは、抗生物質も投与します。 肝臓の疾患に対する治療法「再生医療」について 肝嚢胞は肝臓疾患の一つですが、肝臓には様々な種類の疾患が存在します。 そんな肝嚢胞以外の肝臓の疾患に対しては、再生医療という治療の選択肢があります。 再生医療では、患者様自身の幹細胞や血液を用いて治療を行うため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。 手術や入院を必要としたくないという方は、再生医療をご検討ください。 まとめ|肝嚢胞の背中の痛みは手術や薬物療法で治療できる 肝嚢胞は肥大化すると、胃などの消化器だけでなく腰や背中の痛みをも引き起こす場合があります。 しかし、肝嚢胞は多くの場合で症状が見られません。そのため、健康診断などで検査をした際に見つかることがあるために注意が必要です。 無症状の場合は経過観察することもありますが、肥大化して痛みがある場合は手術によって肝嚢胞の切除や液体の排出なども行います。 もし肝嚢胞によって上腹部や背中などに痛みを感じるときは、我慢せず医療機関を受診することが大切です。 肝嚢胞 背中の痛みに関してよくある質問 肝嚢胞はストレスやアルコールが原因ですか? 肝嚢胞の原因は現在も解明されていません。 後天的に発症する原因としては、寄生虫エキノコックスや、女性ホルモンのエストロゲンとの関連性からも研究されている段階です。 なお、ストレスやアルコールとの関連性については明らかにされていません。 ただし、過度のストレスやアルコールは、肝機能の低下や肝障害の原因になるため注意が必要です。 肝嚢胞が小さくなることや消えることはありますか? 肝嚢胞が小さくなることや消えることはたまにあるものの、事例はあまり多くはありません。(文献1) 大きさを維持するか、肥大化するケースが多く見られます。 肝嚢胞を発症すると寿命に関わるのですか? 肝嚢胞は発症しても、寿命に関わるケースはほとんどありません。 ただし、肥大化によって呼吸困難が引き起こされたり、肝がんの原因になったりするなど大きなリスクを引き起こすこともある点に注意が必要です。 肝嚢胞の手術費用はいくらくらいですか? 肝嚢胞の手術費用は、手術を受ける医療機関によって異なります。 ただ、手術でよく用いられる腹腔鏡手術自体は50〜65万円程度が相場です。 しかも、肝嚢胞の治療は保険が適用されるため、3割負担であれば15万円から20万円程度となります。 参考文献 (文献1) 笹岡 悠一ほか. 「腹部超音波検査で観察された肝嚢胞縮小化の1例と10例の文献的考察」 『医学検査』 70(1), pp.155-159, 2021年. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/70/1/70_20-50/_html/-char/ja (最終アクセス:2025年3月25日)
2025.03.31 -
- 肝疾患
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「アルコール性肝炎になったら、もう肝臓は元に戻らないの?」 「アルコール性肝炎は治る病気?」 そんな疑問や不安を抱える方は少なくありません。 長年の飲酒習慣で傷ついた肝臓ですが、完全に回復不可能なわけではないのです。 本記事では、アルコール性肝炎からの回復可能性や有効な治療法、肝臓が健康を取り戻すまでの期間について詳しく解説します。 肝臓の健康を取り戻すための知識を身につけ、今からできる対策を始めましょう。 【結論】アルコール性肝炎は治る病気 アルコール性肝炎は、適切な治療と生活習慣の見直しにより回復が期待できる病気です。 とくに早期発見と適切な対策により、肝臓へのダメージを最小限に抑えられます。 しかし、進行すると回復が難しくなるため、早めの対応が重要です。 早期発見と適切な治療で回復は見込める 重症度によっては回復が難しい場合も 本章では、アルコール性肝炎の回復の可能性や治療法について詳しく解説します。 早期発見と適切な治療で回復は見込める アルコール性肝炎は、早期発見と適切な治療により回復が期待できる病気です。 肝臓には再生能力があり、飲酒を避けて健康的な生活を続けることで改善が見込めます。(文献1) まず禁酒が最優先です。アルコールを摂取し続けると炎症が進み、回復が遅れるだけでなく、肝硬変へ進行するリスクが高まります。 さらに、栄養療法や薬物療法により、肝機能の回復を促します。 早期発見のためには、定期的な健康診断で肝臓の数値をチェックしておくのもポイントです。 今まで自覚症状がなくても異変を感じたら、すぐに医療機関を受診し適切な対応をとりましょう。 アルコール性肝炎の初期症状については、以下の記事でも詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。 重症度によっては回復が難しい場合も アルコール性肝炎は早期発見と適切な治療により回復が期待できますが、重症度によっては改善が難しい場合もあります。 とくに長年の飲酒で肝臓に深刻なダメージが蓄積すると、完全な回復は困難です。(文献2) たとえば、アルコール性肝硬変に進行すると、肝臓の線維化が進み、元の健康な状態への回復はほぼ不可能になります。 そのため、症状が軽いうちに適切な治療を受けるのが重要です。 「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、ダメージを受けても自覚症状が出にくいため、日頃から健康管理を意識しましょう。 アルコール性肝炎における4つの治療法 アルコール性肝炎の治療には、主に以下の4つの方法があります。 断酒する 栄養療法で肝臓の回復を促す 薬物療法で症状を緩和する 再生医療を受ける それぞれの方法を組み合わせることで、より高い回復効果が期待できます。 断酒する アルコール性肝炎の最も効果的な治療法は、断酒です。(文献1) アルコールを摂取し続けると肝臓の炎症が進行し、回復が難しくなります。 そのため、完全に飲酒をやめることが肝臓を守る第一歩となります。 断酒による精神的ストレスや誘惑を乗り越えるためには、家族や友人の理解とサポートが重要です。 また、アルコール依存により断酒が難しい場合は、精神科や心療内科の専門医による治療も有効な選択肢となります。 適切なサポートを活用しながら、無理のない範囲で断酒を継続しましょう。 肝臓の数値に異常がある場合の原因や対策については、こちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。 栄養療法で肝臓の回復を促す 肝臓の回復を助けるには、適切な栄養摂取が不可欠です。(文献1) とくにタンパク質やビタミンを十分に摂取すると、肝細胞の再生が促進されます。 具体的には、高タンパク質の食品(肉、魚、大豆製品など)や、ビタミン類を多く含む食材を積極的に取り入れると良いでしょう。 一方で、脂肪分の多い食事や糖分の過剰摂取は肝臓に負担をかけるため、なるべく控えることをおすすめします。 薬物療法で症状を緩和する アルコール性肝炎の症状が進行している場合、アルコール依存症と同様に薬物療法を行う場合があります。(文献3) アルコール依存症は、本人の意思ではどうすることもできないため、抗酒薬や抗不安薬などの薬物療法が用いられますが、同様に断酒を目的として治療が挙げられます。 ただし、薬物療法はあくまで精神的な症状の緩和や断酒を補助するためのものであり、根本的な治療にはなりません。 そのため、断酒を継続しつつ生活習慣の改善と並行して行っていくのが重要です。 再生医療を受ける 肝臓疾患に対する治療法には再生医療という選択肢もあります。 再生医療は、患者様自身から採取・培養した幹細胞を用いて治療を行う、副作用のリスクが少ない治療法です。 当院「リペアセルクリニック」では肝臓疾患に対して、再生医療による治療を行っています。再生医療について詳しくは、以下のページをご覧ください。 アルコール性肝障害の分類における位置付け アルコール性肝障害は以下の五つに分類され、そのうちの一つがアルコール性肝炎です。 アルコール性脂肪肝 アルコール性肝線維症 アルコール性肝硬変 アルコール性肝炎 アルコール性肝がん 慢性的に過剰飲酒を続けると、脂肪肝→肝線維症→肝硬変と順番に進行していく可能性があるため、注意が必要です。 なお、アルコール性肝炎ではこの慢性経過とは別に、酒量の増加などをきっかけにして肝臓に強い炎症が起こります。 背景の肝臓の組織が軽度の脂肪肝であっても進行した肝硬変であっても、肝細胞が変性や壊死を起こしていればアルコール性肝炎と考えられます。 つまり、もともとアルコールによる肝臓の障害がある方が、さらに過剰飲酒することで肝臓に強い炎症とダメージが起こってしまっているのがアルコール性肝炎なのです。 本章では、アルコール性肝障害の五つの分類についてそれぞれ解説します。 アルコール性脂肪肝 アルコールの摂取により、肝臓に脂肪が蓄積する初期段階の状態です。 この段階で飲酒をやめれば、比較的早い回復が見込めます。 アルコール性肝線維症 アルコール性脂肪肝が進行すると、肝細胞がダメージを受け、線維化が始まります。 この段階ではまだ回復の可能性がありますが、飲酒を続けると悪化する恐れがあります。 アルコール性肝硬変 長期間の飲酒により、肝臓が硬化し、機能が低下します。 この段階になると回復は困難で、合併症のリスクも高まります。 アルコール性肝炎 アルコールの影響で肝臓に炎症が生じる状態です。 重症になると命に関わる場合もあり、早急な治療が必要です。 アルコール性肝がん アルコールによるダメージを肝臓が受けている状況下に肝がんができており、他の原因が除外できている状態です。 肝臓の重要な働きと注意すべき病気については以下の記事でも解説しています。 気になる症状がある方は、ぜひご覧ください。 アルコール性肝炎の検査と診断 アルコール性肝炎を診断するには、複数の検査が行われます。 正確な診断を受けることで、適切な治療を選択し、回復へつながる可能性も高まります。 肝生検 肝生検は、肝臓の一部を採取し、組織を詳しく調べる検査です。 この方法により、炎症の進行度や線維化の程度を把握できます。 検査は局所麻酔を行い、細い針を肝臓に刺して組織を採取します。 検査後は数時間(検査自体は数分~20分程度、安静時間も含めて約4~6時間)の安静が必要ですが、肝臓の状態を詳しく知るために有効な方法です。 肝硬変などの進行具合を診断する際にも用いられます。 血液検査・画像検査 血液検査は、肝臓の状態を把握する基本的な検査です。 とくにAST(GOT)やALT(GPT)などの肝酵素の数値を調べることで、炎症の有無を確認できます。 また、超音波検査やCTスキャン、MRIなどの画像検査も活用されます。 これらの検査では、肝臓の形状や脂肪の蓄積、線維化の進行具合を視覚的に確認できます。 血液検査との組み合わせによって、より正確な診断が可能になります。 まとめ|アルコール性肝炎は節酒や断酒で回復を目指そう 本記事では、アルコール性肝炎の回復の可能性や治療法について解説しました。 アルコール性肝炎になっても、断酒や栄養管理、薬物療法によって、肝臓の機能は改善し、健康を取り戻せる可能性があります。 ただし、早期発見と対策が重要なため、生活習慣を見直し、必要に応じて医師の診察を受けましょう。 適切な対応を続けることで、肝臓への負担を軽減し、病状の悪化を防げます。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝臓(脂肪肝・肝硬変・肝炎)の再生医療・幹細胞治療を提供しています。 肝機能の治療に不安がある方は、まずはお気軽にご相談ください。 アルコール性肝炎の治療についてよくある質問 アルコール性肝炎の治療についてよくある質問肝臓は禁酒すると回復しますか? 肝臓は回復力の高い臓器であり、禁酒することでダメージが改善する可能性があります。 とくに初期段階であれば、断酒によって肝細胞が再生し、健康な状態に戻ることが期待できます。 しかし、肝硬変など病状が進行すると、完全な回復は難しくなります。 そのため、肝臓のダメージが深刻化する前に、禁酒を徹底する意識が大切です。 アルコール性肝炎が回復するまでの期間は? 回復期間には個人差がありますが、軽度のアルコール性肝炎であれば、数週間から数カ月で改善が期待できます。 一方、重度の肝障害がある場合は、回復に数年かかるケースもあります。 断酒を継続し、適切な治療を受けることが回復の鍵となるため、医師と相談しながら自分に合った治療計画を立てましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝硬変・肝炎に対し手術を伴わない「再生医療」を提案しています。 治療に不安がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 竹井謙之,アルコール健康医学協会「アルコール性肝障害の最新トピックス」 https://www.arukenkyo.or.jp/information/pdf/kirokusyu/09/04.pdf(最終アクセス:2025年3月26日) (文献2) 全国健康保険協会「アルコール性肝障害 (Alcoholic Liver Disease:ALD)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/2016120600012kannshougai.pdf(最終アクセス:2025年3月26日) (文献3) 山田隆子,秋元典子.「アルコール性肝障害入院患者が断酒を決意し断酒を継続するプロセス」『日本看護研究学会雑誌』 Vol. 35 No. 5.pp.25-34,2012https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/35/5/35_20121030003/_pdf(最終アクセス:2025年3月26日)
2024.07.09 -
- 幹細胞治療
- 再生治療
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- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
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最近ニュースでも大きく取り上げられている“脊髄梗塞”ですが、稀な疾患で原因が不明なものも多く、現状では明確な治療方針が定められていません。 後遺症に対してはリハビリテーションを行いますが、最近では再生医療が新たな治療法として注目されています。 脊髄梗塞の症状や原因については以下の記事で詳しく解説しています。 【予備知識】脊髄梗塞の発生率・好発年齢・性差情報 ある研究においては、年齢や性差を調整した脊髄梗塞の発生率は年間10万人中3.1人と報告されています。 脳卒中などの脳血管疾患と比較し、脊髄梗塞の患者数はとても少ないです。 また、脊髄梗塞の患者さんのデータを集めた研究では、平均年齢は64歳で6割以上は男性だったと報告されています。 参考:A case of spinal cord infarction which was difficult to diagnose しかし、若年者の発症例もあり、若年者の非外傷性脊髄梗塞の発生には遺伝子変異が関係していると示唆されています。 脊髄梗塞は治るのか? 結論から言うと、脊髄梗塞を完全に治すことは困難です。現在のガイドラインでは、完治までの治療方法は確立されていません。 したがって、脊髄梗塞の後遺症に対するリハビリテーションを正しくおこなうことが症状改善に有効とされています。 脊髄梗塞の後遺症について 脊髄梗塞の発症直後には急激な背部痛を生じることが多く、その後の後遺症として四肢の運動障害(麻痺や筋力低下など)や感覚障害(主に温痛覚低下)、膀胱直腸障害(尿失禁・残尿・便秘・便失禁など)がみられます。 四肢の運動障害(麻痺や筋力低下など) 感覚障害(主に温痛覚低下) 膀胱直腸障害(尿失禁や残尿、便秘、便失禁など) これらの症状に関しては入院治療やリハビリテーションの施行で改善することもありますが、麻痺などは後遺症として残ることもあります。 歩行障害の予後に関して、115人の脊髄梗塞患者の長期予後を調査した研究報告では、全患者のうち80.9%は退院時に車椅子を必要としていましたが、半年以内の中間調査で51%、半年以降の長期調査では35.2%と車椅子利用者の減少がみられました。 出典:Recovery after spinal cord infarcts Long-term outcome in 115 patients|PubMed 同じ研究における排尿カテーテル留置(膀胱にチューブを挿入して排尿をさせる方法)の予後報告ですが、退院時には79.8%だったのが中間調査では58.6%、長期調査では45.1%へと減少がみられました。 症状が重度である場合の予後はあまり良くありません。 しかし、発症してから早い時期(1〜2日以内)に関しては症状が改善する傾向にあり、予後が比較的良好とされています。 【原因別】脊髄梗塞の治療方法 原因 治療方法 大動脈解離 手術 / 脳脊髄液ドレナージ(1) / ステロイド投与 / ナロキソン投与(2) 結節性多発大動脈炎 ステロイド投与 外傷 手術 動脈硬化・血栓 抗凝固薬 / 抗血小板薬(3) 医原性(手術の合併症) 脳脊髄液ドレナージ / ステロイド投与 / ナロキソン投与 (1)背中から脊髄腔へチューブを挿入し脊髄液を排出する方法 (2)脊髄の血流改善を認める麻酔拮抗薬 (3)血を固まりにくくする薬剤 比較的稀な病気である脊髄梗塞は、いまだに明確な治療法は確立されていません。 脊髄梗塞の発生した原因が明らかな場合にはその治療を行うことから始めます。 たとえ例えば、大動脈解離や結節性多発動脈炎など、脊髄へと血液を運ぶ大血管から中血管の病態に起因して脊髄の梗塞が生じた場合にはその、原因に対する治療がメインとなります。 一方で、原因となる病態がない場合には、リハビリテーションで症状の改善を目指します。 脊髄梗塞に対するリハビリテーション 脊髄梗塞で神経が大きなダメージを受けてしまうと、その神経を完全に元に戻す根本的治療を行うのは難しいため一般的には支持療法が中心となります。 支持療法は根本的な治療ではなく、症状や病状の緩和と日常生活の改善を目的としたものでリハビリテーションも含まれます。 リハビリテーションとは、一人ひとりの状態に合わせて運動療法や物理療法、補助装具などを用いながら身体機能を回復させ、日常生活における自立や介助の軽減、さらには自分らしい生活を目指すことです。 リハビリテーションは病院やリハビリテーション専門の施設で行うほか、専門家に訪問してもらい自宅で行えるものもあります。 リハビリテーションの流れ ①何ができて何ができないのかを評価 ②作業療法士による日常生活動作練習や、理学療法士による筋力トレーニング・歩行練習などを状態に合わせて行う 日常生活において必要な動作が行えるよう訓練メニューを考案・提供します。 脊髄梗塞発症後にベッド上あるいは車椅子移動だった患者さん7人に対して検討を行った結果、5人がリハビリテーションで自立歩行が可能(歩行器や杖使用も含まれます)となった報告もあります。 時間はかかりますし、病気以前の状態まで完全に戻すのは難しいかもしれません。しかし、リハビリテーションは機能改善に有効であり、脊髄梗塞の予後を決定する因子としても重要です。 再生医療が脊髄梗塞に有用! https://www.youtube.com/watch?v=D-THAJzcRPE このように、脊髄梗塞では確立された治療法がなく、場合によっては対症療法を中心に治療法自体を模索することも少なくありません。そのような中、近年では再生医療が脊髄梗塞を含めた神経障害に対して特異的な効果を発揮しています。 再生医療では、これまで回復が困難と言われてきた神経の障害に対しても常識を覆す効果を発揮し、これまでも脊髄梗塞におけるリハビリテーションの効果を向上させるとの報告や、脊髄損傷の重症度を改善したと報告がされており、これからの医療にとって新しい希望の光となっています。 再生医療とは、失われた身体の組織を修復する能力、つまり自然治癒力を利用した医療です。 当院で行なっている再生医療は“自己脂肪由来幹細胞治療”です。患者様から採取した幹細胞を培養して増殖し、その後身体に戻す治療法となっています。 幹細胞とは、いろいろな姿に変化できる細胞で、失われた細胞を再生・修復する機能をもちます。自分自身の細胞から作り出すので、アレルギーや免疫拒絶反応がなく、安全な治療法といえます。 日本における幹細胞治療では、一般的に点滴による幹細胞注入を行なっておりますが、それでは目的の神経に辿り着く幹細胞数が減ってしまうことが懸念されます。 そこで、当院では損傷した神経部位に直接幹細胞を注入する“脊髄腔内ダイレクト注入療法”と呼ばれる方法を採用しています。注射によって脊髄のすぐ外側にある脊髄くも膜下腔に幹細胞を投与する方法で点滴治療と組み合わせることにより、より大きな効果を期待できます。この治療は数分のみの簡単な処置で済み、入院も不要です。 実際に当院では術後や外傷、脊髄梗塞、頚椎症などの神経損傷に由来する麻痺や痺れ、疼痛などの後遺症に対して再生療法を施し、症状が大きく改善した例を経験しています。 脊髄梗塞に関するQ &A この項目では、脊髄梗塞に関するQ &Aを紹介します。 多くの方が抱えているお悩み(質問)に対して、医者の目線から簡潔に回答しているのでご確認ください。 脊髄梗塞の主な原因は? 脊髄梗塞の主な原因は以下のとおりです。 脊髄動脈の疾患 栄養を送る血管の損傷 詳細な原因については以下の関連記事で紹介しているのでぜひご確認いただき、症状改善の一助として活用ください。 脊髄梗塞の診断は時間を要する? そもそも脊髄梗塞は明確な診断基準がありません。 発症率が低い脊髄梗塞は最初から強く疑われず、急速な神経脱落症状(四肢のしびれや運動障害、感覚障害など)に加えてMRIでの病巣確認、さらに他の疾患を除外してからの診断が多いです。 また、MRIを施行しても初回の検査ではまだ変化がみられず、複数回の検査でようやく診断に至った症例が少なくありません。 ある病院の報告では、発症から診断に要した日数の中央値は10日となっており、最短で1日、最長で85日となっていました。 まとめ・脊髄梗塞は治るのか?治療法や後遺症のリハビリについて解説 脊髄梗塞は稀な疾患ゆえ、治療ガイドラインが確立されていません。 原因が明らかな場合にはその治療を行ない、原因が不明な場合には脱水予防の補液のみです。その後以降は後遺症を改善するべくリハビリテーションに努めるのがこれまでの一般的な治療でした。 しかし、2024年現在は再生医療に手が届く時代となり、今まで回復に難渋していた脊髄損傷も改善が見込めるようになりました。 脊髄損傷による後遺症に再生医療が適応となる可能性があります。気になる方はぜひ当院に一度ご相談ください。 ▼こちらも併せてお読みください。
2024.07.02 -
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アルコール性肝炎は初期症状が軽いため、気づかずに放置してしまう人が多い病気です。 しかし、進行すると肝硬変や肝がんに移行し、命に関わる場合もあります。 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、症状が現れたときにはすでに手遅れの可能性もあるため注意が必要です。 本記事では、初期症状や検査方法、重症化を防ぐためのポイントを解説します。 自分の体の異変にいち早く気づき、適切な対応を取りましょう。 アルコール性肝炎の初期症状 アルコール性肝炎は、初期段階では症状が出にくく、気づいたときには進行しているケースも少なくありません。 早期発見には、どのような兆候があるのかを知ることが大切です。 アルコール性肝炎でみられる初期症状と原因は以下のとおりです。(文献1) 症状 主な原因 倦怠感 肝臓の機能低下によるエネルギー不足 食欲不振 肝臓の炎症による消化機能の低下 腹痛 肝臓の腫れや炎症による右上腹部の痛み 発熱(微熱) 炎症反応による体温上昇 尿が濃い ビリルビン排出異常により尿の色が濃くなる 肝臓は、体内の解毒や栄養の代謝を行う重要な臓器です。 アルコールを大量に摂取すると、肝臓の細胞がダメージを受け、正常に働かなくなります。 その結果、エネルギー不足から倦怠感が生じ、消化機能の低下で食欲不振が起こります。 さらに、炎症が進行すると微熱が出たり、肝臓が腫れて腹痛がしたりするのも初期症状の特徴です。 アルコール性肝炎の初期症状は、風邪や疲労と勘違いしやすいため、長引く場合は注意が必要です。 【血液検査】アルコール性肝炎が疑われる検査値 アルコール性肝炎の診断は、黄疸の有無や血液検査における肝機能を示す酵素の異常値がポイントとなります。 ただし、これらの数値は他の肝疾患でも上昇するため、飲酒歴や追加の検査と併せて判断する必要があります。 血液検査で確認する主要な数値は次のとおりです。(文献2)(文献3) 検査項目 異常値の特徴 意味 γ-GTP 上昇(男性70IU/L超・女性40IU/L超) 肝臓がダメージを受けている AST(GOT)/ALT(GPT)比 AST>ALTが特徴的 アルコール性肝炎や脂肪肝で見られる傾向 白血球数 増加 肝臓の炎症による免疫反応 ビリルビン 上昇 黄疸が出る可能性が高い アルブミン 低下 肝臓の合成機能が低下している アルコール性肝炎では、γ-GTP、AST(GOT)、ALT(GPT)が上昇しやすく、とくにASTがALTより高くなる(AST>ALT)のが特徴です。 白血球数の増加が見られる場合は、炎症が進行している可能性が考えられます。 また、ビリルビン値の上昇によって皮膚や白目が黄色くなる黄疸が現れるケースもあります。 ただし、これらの数値は他の肝疾患でも異常を示す可能性があるため、医師の総合的な判断が必要です。 肝臓の数値に異常がある場合の原因や対策については、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にご覧ください。 アルコール性肝炎の進行サイン・症状 アルコール性肝炎が進行すると、黄疸や消化器症状が現れる場合があります。 黄疸は血液中のビリルビンが過剰に増え、皮膚や白目が黄色くなる症状で、肝機能の深刻な低下を示します。 この状態になった場合は、早急に受診しましょう。 また、嘔吐や下痢が続く場合も注意が必要です。 肝臓の働きが低下すると消化機能が乱れ、食べ物の消化や吸収がスムーズに行われなくなります。 とくに、アルコール摂取後に強い気持ち悪さや腹痛が続く場合は、肝炎が進行している可能性があります。 アルコール性肝炎が進行すると栄養吸収が悪化して体力の低下につながるため、早めの検査と適切な対応が重要と言えるでしょう。 アルコール性肝炎を放置するリスク アルコール性肝炎を放置すると、症状が進行し、命に関わる合併症を引き起こす可能性があります。 とくに以下のリスクが高まるため注意が必要です。 肺炎・腎不全・消化管出血のリスク 肝硬変や肝がんのリスク 初期症状が軽くても軽視せず、早めに医療機関を受診しましょう。 肺炎・腎不全・消化管出血のリスク アルコール性肝炎が進行すると、免疫低下や血流異常によって以下のような症状が発生するケースがあります。(文献3) 起こりうるリスク 症状 肺炎 細菌感染を起こし、高熱や呼吸困難をともなう 腎不全 老廃物が排出されにくくなる 尿量の減少やむくみが起こる 重症化すると意識障害が起こる可能性がある 消化管出血 血流が滞り食道や胃の血管が破裂すると、吐血・黒色便などがあらわれる可能性がある いずれも進行すると命に関わるため、早急な治療が必要です。 肝硬変や肝がんの発症リスク アルコール性肝炎を放置すると、肝硬変や肝がんへ進行する可能性が高まるため注意が必要です。(文献4) 肝硬変は肝臓の細胞が線維化し、腹水や黄疸、手のひらの赤み(手掌紅斑)などの症状が現れ、最終的には肝不全につながります。 さらに、肝硬変が続くと肝細胞ががん化しやすくなり、肝がんを発症するリスクが高まります。 初期の肝がんは症状が乏しく、発見が遅れることが多いため、定期的な検査が欠かせません。 そのため、普段から酒量が多いと感じている方は、少しでも異常を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。 こちらの記事では、アルコール性肝炎の治療法について詳しく解説しています。 アルコール性肝炎の検査方法 アルコール性肝炎の診断には、血液検査や画像検査、肝生検、飲酒習慣のチェックが用いられます。 検査方法 検査内容 特徴 血液検査 肝機能の数値を測定 AST・ALT・γ-GTPの上昇、ビリルビン値の確認 画像検査(エコー・CT・MRI) 肝臓の状態を確認 肝臓の腫れ・脂肪の蓄積・血流異常の検出 肝生検 肝臓の組織を採取 病変の進行度を詳細に分析 飲酒習慣のスクリーニング 飲酒量や依存度を評価 AUDITなどのテストを活用 自覚症状が乏しい場合も多いため、これらの検査を組み合わせることで病状を正確に把握できます。 本章では、それぞれの検査方法について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。 血液検査で肝機能の異常を確認 血液検査では、肝臓の炎症や機能低下を示す数値の異常が確認できます。 主にγ-GTP、AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇が見られ、ASTがALTより高くなるのが特徴です。 また、ビリルビン値が上昇すると黄疸の可能性が高まります。 ただし、これらの異常値は他の肝疾患でも見られるため、血液検査だけで確定診断はできません。 画像検査(エコー・CT)で肝臓の状態をチェック 肝臓の状態を詳しく調べるために、腹部エコー(超音波検査)やCT検査が行われます。 エコーは、肝臓の腫れや脂肪の蓄積、血流の異常などの確認に有効です。 また、CT検査では、より詳細な画像が得られ、肝硬変や肝がんの有無も判断しやすくなります。 血液検査と組み合わせることで、肝臓のダメージを総合的に評価できます。 肝生検で病変の進行度を詳しく調べる 肝生検は、肝臓の組織を直接採取して病状を詳しく分析する検査です。 肝炎の進行度や肝細胞の損傷の程度を確認するために実施されます。 とくに、肝硬変や肝がんの疑いがある場合に有効です。 ただし、ほかの検査より体に負担がかかりやすいため、他の検査で診断が難しい場合に行われるのが一般的です。 飲酒習慣のスクリーニングテストでリスクを見極める アルコール性肝炎は、長期間の過剰な飲酒が主な原因です。 一度肝炎が回復しても、飲酒による再発・悪化の可能性があるため、飲酒習慣を把握するスクリーニングテストを行うケースがあります。 具体的には、飲酒量や依存度を評価する「AUDIT(アルコール使用障害スクリーニング)」と呼ばれる質問形式のテストを活用します。 また、スクリーニングテストのほかに、血液・画像・生検・飲酒歴の確認を組み合わせると、より正確な診断が可能です。 そのため、飲酒量が多い人は、肝機能が大きく低下する前に治療を開始することが大切です。定期的な検査をうけるようにしましょう。 まとめ|アルコール性肝炎の初期症状を見逃さず早めに受診しよう この記事では、アルコール性肝炎の初期症状や進行リスク、検査方法について解説しました。 アルコール性肝炎は自覚症状が乏しく、気づかないうちに進行する病気です。 倦怠感・黄疸・食欲不振・尿の色の変化がある場合は、早めの受診が必要です。 また、血液検査や画像検査を活用すれば、肝機能の低下を早期に発見できる可能性があります。 とくに、長期間の飲酒習慣がある場合は、定期検査を受けるのがおすすめです。 放置すれば肝硬変や肝がんのリスクが高まるため、異変を感じたら早めに医療機関で検査を受けましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝硬変・肝炎に対し手術を伴わない「再生医療」を提案しています。 再生医療について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。 アルコール性肝炎の初期症状に関するよくある質問 アルコール性肝炎の自覚症状はありますか? 初期のアルコール性肝炎は自覚症状がほとんどありません。 しかし、倦怠感・食欲不振・黄疸・腹痛・微熱などが見られるケースがあります。 また、尿の色の変化や黄疸が出た場合は、肝機能の低下が進んでいる可能性があるため要注意です。 アルコール性肝炎は初期症状の段階で禁酒すれば治りますか? 初期の段階で禁酒すれば、肝機能が回復する可能性はあります。 肝臓は再生能力が高いため、飲酒をやめることで炎症が落ち着き、回復するケースも多いです。 ただし、肝硬変まで進行すると回復は難しくなります。 一度回復しても、飲酒を再開すると再発するリスクがあります。医師の指導のもと、禁酒と生活習慣の改善を継続し、異変を感じたら早めに受診しましょう。 参考文献 (文献1) 土島睦,金沢医科大学「お酒と肝臓」 https://www.kanazawa-med.ac.jp/~hospital/docs/%2854-2%29%E3%81%8A%E9%85%92%E3%81%A8%E8%82%9D%E8%87%93%EF%BC%88%E5%9C%9F%E5%B3%B6%E6%95%99%E6%8E%88%29.pdf (最終アクセス:2025年3月16日) (文献2) 福岡労働衛生研究所「肝臓病」 https://www.rek.or.jp/js/kcfinder/upload/files/%E2%91%A4%E8%82%9D%E8%87%93%E7%97%85%E3%80%902020.6.10%E6%94%B9%E8%A8%82%E3%80%91%281%29.pdf (最終アクセス:2025年3月16日) (文献3) 全国健康保険協会「アルコール性肝障害 (Alcoholic Liver Disease:ALD)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/2016120600012kannshougai.pdf (最終アクセス:2025年3月16日) (文献4) 岡山県肝炎相談センター「肝臓のおはなし」2016年 http://kanen.ccsv.okayama-u.ac.jp/upload/topics/58/file.pdf (最終アクセス:2025年3月16日)
2024.06.25 -
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肝硬変と診断を受けてから、どのような食事をとったら良いのかお悩みではないでしょうか。 医師から食事指導を受けたものの、具体的にどの食品をどの程度制限すれば良いのか、また、美味しい食事を楽しめるのか不安に感じている方もいるでしょう。 肝硬変の方は、健康な人に比べて食事の制限が多くなります。しかし、栄養バランスを意識してメニューを工夫すると、治療中でも美味しく食事を楽しみながら、必要な栄養を摂取できるでしょう。 本記事では、肝硬変の食事で気をつけるべきポイントとおすすめの献立を紹介します。 ぜひこの記事を参考に、無理なく続けられる食事の工夫を行い、健康を守るための食生活を取り入れていきましょう。 肝硬変の人が気をつけるべき食事|食べてはいけないもの3選 肝硬変の人が控えるべき食品は以下の3つです。 塩分が多い食事 刺激物や硬い食品 高タンパクな食事 これらの摂取を控えて、日々の食生活に気を配りましょう。肝硬変の方は、普段から肝臓への負担を減らす意識を持つことが大切です。 塩分が多い食事 腹水やむくみがある肝硬変の人は塩分摂取量の目安として、1日5〜7gに抑えることが推奨されます。(文献1) 腹水とは、お腹の中にタンパク質を含んだ液が大量に貯留した状態です。(文献2) 肝臓の機能が低下すると、血液中のアルブミンが減少し、水分が血管外へ漏れ出して腹水やむくみが生じます。塩分を摂りすぎると体内の水分がさらに増え、症状を悪化させる要因となります。そのため、肝硬変の人は塩分を控えることが重要です。 とくに以下のような食品は塩分が多いため、注意が必要です。(文献3) インスタント食品(カップめんやインスタントラーメンなど) 梅干し 漬物 塩分を適切にコントロールし、腹水やむくみの悪化予防に努めましょう。 肝硬変の腹水の予後や治療方法を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。 刺激物・硬い食品 肝硬変の患者は、食道静脈瘤のリスクがあるため、刺激物や硬い食品の摂取を控えることが重要です。(文献4) 食道静脈瘤とは、門脈圧亢進症(肝臓に流れ込む門脈の血圧が高くなる状態)によって生じる食道の血管のこぶであり、破裂すると大量出血を引き起こす可能性があります。(文献5) 食道は食べ物の通り道になっているため、その表面上にある膨らんだ血管に尖ったものや硬いものが当たると、破裂する可能性があるため注意が必要です。 たとえば、せんべいや小魚のおやつ、ナッツ、骨のある魚、フランスパンなどは硬いので適しません。また、香辛料の多いカレーやコーヒーも刺激が強いため控えた方が良いでしょう。 逆に好ましい食品は、茶碗蒸しや麺類(うどんやそうめんなど)、お米、プリン、ヨーグルトなどの消化しやすい柔らかい食べ物です。調理する際には柔らかく仕上げるように工夫してみてください。 高タンパクな食事 肝硬変の方は、タンパク質の過剰摂取に注意が必要です。 基本的に、肝硬変の方は健康な方よりもタンパク質を多めに摂取することが推奨されています。推奨されるタンパク質の1日摂取量は以下のとおりです。(文献8)(文献9) 対象 推奨されるタンパク質の1日摂取量目安 健康な方 男性:約0.95~1.0g/kg 女性:約0.93~0.99g/kg 肝硬変の方(蛋白不耐症がない場合) 1.0〜1.5g/kg タンパク質が不足すると栄養状態の悪化につながるため、過不足がない摂取量を心がける必要があります。 ただし、肝硬変の方は摂取のしすぎにも注意が必要です。 タンパク質は体に必要な栄養素ですが、消化・分解される過程で毒素のひとつ「アンモニア」を発生させます。健康な肝臓であれば無毒化されますが、肝機能が低下すると処理が追いつかず、体内にアンモニアが蓄積してしまいます。 血液中のアンモニア濃度が上昇し、脳にまで達すると神経症状を引き起こす「肝性脳症」の原因になります。 そのため、タンパク質の過剰摂取には注意が必要です。(文献6)とくに動物性タンパク質の摂りすぎには注意しましょう。 以下のような食品はタンパク質を多く含むため、摂取量を調整することをおすすめします。(文献7) 卵類 豚肉類 乳製品 肝硬変と同様、肝臓に中性脂肪が溜まる「脂肪肝」も食事の見直しが大切です。脂肪肝の食事の注意点を知りたい方は、以下のコラムも参考にしてください。 肝硬変の食事でおすすめの献立例 肝硬変では栄養バランスを整えつつ、肝臓に負担をかけない食事を摂ることが重要です。塩分やタンパク質を控えながらも、必要な栄養素を効率よく摂取できる献立を紹介します。 【朝食】 パン 野菜スープ 果物・サラダ カフェオレ 野菜や果物を取り入れることでビタミンや食物繊維が摂取でき、腸内環境を整えられます。腸内環境を整えるとアンモニアの産生を抑制できるため肝硬変の方におすすめです。肝性脳症を合併している方は、カフェオレに入れる牛乳の量を少なめにしましょう。 【昼食】 うどん 果物 ヨーグルト 消化が良いうどんを主食にすることで消化管への刺激を抑え、食道静脈瘤のリスクを低減できます。そのため、うどんのような柔らかい食材がおすすめです。塩分を控えるため、うどんのつゆは薄味にして出汁を活用すると良いでしょう。 【夕食】 ごはん 豆腐ハンバーグ 根菜汁 生野菜 主菜に植物性タンパク質を含む豆腐ハンバーグを取り入れると、食物繊維を多く摂取でき、アンモニアの蓄積を抑えられます。(文献10)主菜はなるべく、動物性タンパク質の代わりに植物性タンパク質を用いると良いでしょう。 合併症がある場合は、医師と相談しながら食事内容を調整しましょう。 肝硬変の食事療法の注意点 肝硬変の患者は、食事の摂り方にも注意が必要です。栄養素や食品に加え、以下の食事の取り方をするよう意識しましょう。 1日3回規則正しく食べる 高タンパク食や高カロリー食は避ける 満腹まで食べない(腹八分目を意識する) よく噛んで食べる 食べてからすぐにお風呂に入らない 深夜には高脂肪食品の摂取を避ける これらの食事のポイントも意識すると、肝硬変の悪化防止につながります。今まで注意していなかった方は、今日から気をつけましょう。 肝硬変では食事の見直しに合わせて、専門医の治療をしっかり受けることが大切です。肝硬変の治療について詳しく知りたい方は、以下のコラムも参考にしてください。 まとめ|肝硬変は食事を工夫して悪化を防ごう 肝硬変では肝機能が低下している分、食事内容や摂取方法に注意しなければなりません。普段の食事内容の工夫が合併症を予防することにつながります。 合併症を改善・予防する上で食事療法は非常に重要です。医師や栄養士とも相談しながら、ご自身のライフスタイルに合った食事の工夫を行ってみてください。この記事がご参考になれば幸いです。 当院「リペアセルクリニック」では、肝臓疾患に対する治療として再生医療を行っております。再生医療について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。 肝硬変の食事についてよくある質問 肝硬変の食事で生ものは食べられますか? 肝硬変の方は、生ものの摂取は控えましょう。 肝硬変は肝機能が低下している状態です。そのため、解毒能力が弱まり、食中毒のリスクが高まります。健康な人なら食品に含まれる細菌やウイルスは肝臓で解毒されますが、肝硬変の方はこの機能が低下し、感染症にかかりやすくなるのです。 とくに、生の魚介類には「ビブリオ・バルニフィカス」と呼ばれる細菌が含まれることがあり、重篤な感染症を引き起こす可能性があります。(文献11) お寿司や刺身などの生魚は避けて、加熱調理した食品を摂取するようにしましょう。 肝硬変で食事がとれないときの対処法はありますか? 肝硬変の患者が食事をとれない場合は、栄養不足を防ぐために以下のような対策を取りましょう。 消化の良い食品を摂取する(お粥、スープ、豆腐、ヨーグルトなど) 少量ずつ複数回に分けて食べる(1日5~6回程度に分ける) 食欲が低下した場合は栄養補助食品を活用する 医師の処方に基づきBCAA(分岐鎖アミノ酸)製剤を取り入れる 食事から十分な栄養を摂れない場合、医師の指導のもとで栄養補助食品を活用するのもひとつの手です。エネルギーが補給できるドリンクタイプの栄養補助食品を取り入れると、食欲がなくても無理なく栄養を摂取できるでしょう。 参考文献 (文献1) 日本消化器病学会・日本肝臓学会「肝硬変診療ガイドライン 2020(改訂第 3 版)」2020年発行 https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/kankouhen2020_re.pdf (最終アクセス:2025年3月26日) (文献2) MSDマニュアル「腹水」, MSDマニュアル家庭版,2023年1月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/04-%E8%82%9D%E8%87%93%E3%81%A8%E8%83%86%E5%9A%A2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%82%9D%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6%E3%81%A8%E5%BE%B4%E5%80%99/%E8%85%B9%E6%B0%B4 (最終アクセス:2025年3月26日) (文献3) 消費者庁「栄養成分表示を使って、あなたも食塩摂取量を減らせる」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/food_labeling_cms206_20191126_09.pdf (最終アクセス:2025年3月26日) (文献4) MSDマニュアル「肝硬変」, MSDマニュアルプロフェッショナル版,2022年1月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/02-%E8%82%9D%E8%83%86%E9%81%93%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B7%9A%E7%B6%AD%E5%8C%96%E3%81%A8%E8%82%9D%E7%A1%AC%E5%A4%89/%E8%82%9D%E7%A1%AC%E5%A4%89L (最終アクセス:2025年3月26日) (文献5) MSDマニュアル「静脈瘤」, MSDマニュアルプロフェッショナル版,2023年5月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/01-%E6%B6%88%E5%8C%96%E7%AE%A1%E7%96%BE%E6%82%A3/%E6%B6%88%E5%8C%96%E7%AE%A1%E5%87%BA%E8%A1%80/%E9%9D%99%E8%84%88%E7%98%A4 (最終アクセス:2025年3月26日) (文献6) MSDマニュアル「肝性脳症」, MSDマニュアル家庭版,2023年1月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/04-%E8%82%9D%E8%87%93%E3%81%A8%E8%83%86%E5%9A%A2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%82%9D%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6%E3%81%A8%E5%BE%B4%E5%80%99/%E8%82%9D%E6%80%A7%E8%84%B3%E7%97%87 (最終アクセス:2025年3月26日) (文献7) 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」から出典,2023年発行 https://fooddb.mext.go.jp/index.pl (最終アクセス:2025年3月26日) (文献8) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」2019年12月発行, https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf (最終アクセス:2025年3月26日) (文献9) 日本消化器病学会・日本肝臓学会「追補内容のお知らせ 『肝硬変診療ガイドライン』(2020 年 11 月)」2022 年 3 月 18 日更新,https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/kankouhen2020_AR_v2.pdf?utm_source=chatgpt.com (最終アクセス:2025年3月26日) (文献10) 渡辺 明治.「9.肝硬変合併症とその対策3)肝性脳症」『日本内科学会雑誌』80巻(10号), p1625-p1630 1991年発行 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/80/10/80_10_1625/_pdf (最終アクセス:2025年3月26日) (文献11) 厚生労働省「ビブリオ・バルニフィカスに関するQ&A」食品の安全に関するQ&A, 2016年11月9日 https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/qa/060531-1.html#top (最終アクセス:2025年3月26日)
2024.06.18 -
- 肝疾患
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「肝硬変の疑いがあって、今後の治療が気になる」 「改善させるには肝移植しかないの?」などと、悩んでいませんか。 肝臓の慢性的な炎症により、肝臓が線維化して硬くなる疾患である肝硬変は、代謝や血液の循環動態に大きな影響を及ぼします。 症状の進行だけでなく、合併症のリスクも見逃せないポイントです。そこで肝移植を検討している方もいるのではないでしょうか。しかし、肝硬変の方で移植が受けられるのはごく一部です。 本記事では、肝硬変と診断されたときに知っておきたい治療法や合併症について解説します。 「肝硬変が治る可能性がある」とも言われている再生医療についても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。 【基礎知識】肝硬変の概要 肝硬変とは肝臓の慢性的な疾患であり、肝細胞が破壊され、線維組織が増えた結果、肝臓が硬くなった状態です。 肝硬変は、肝臓の組織が徐々に硬化するため、肝臓の機能を果たすのが難しくなるだけでなく、生命に重大な影響を及ぼす可能性があります。 ここからは肝硬変の症状と発症の原因について詳しく解説していきます。 肝硬変の症状 肝硬変の症状は、主に黄疸、腹水、倦怠感、むくみ、さらには精神的な混乱などの症状があります。 ただし肝硬変は、初期段階では無症状であるケースが多く、セルフチェックで異変に気付ける方は少ないのが実情です。 患者様によっては食欲不振や疲労感などがあらわれますが、多くの場合で症状を感じる中期・末期まで進行してからの発見になってしまいます。 そもそも肝硬変の症状は、肝臓の機能低下に伴う体内の代謝異常や血流の変化によって引き起こされます。 肝硬変が進行して肝性脳症を発症した場合、命に危険を及ぼす可能性があります。腹部の張りや頻尿など、少しでも違和感があれば早めに医師に相談しましょう。 肝硬変が発症する原因 肝硬変が発症する原因は、慢性肝炎ウイルス感染(とくにB型およびC型肝炎)、アルコールの過剰摂取、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、および自己免疫性肝疾患などです。 これらの要因が長期間にわたり肝臓に負担をかけた結果、肝臓の構造が変化し、肝硬変へと進行するのです。 肝硬変が発症するリスクは、上記の要因が組み合わさると、さらに発症する可能性を高めてしまいます。 たとえば、アルコールの摂取量が多い方が慢性肝炎ウイルス感染に発症した場合、肝硬変発症のリスクを高める結果になります。 免疫力も関係するため、50代以降の方は定期的な受診をしておくのがおすすめです。 なお、以下の記事でも肝硬変について触れております。 肝硬変の症状や原因を、より詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。 肝硬変の治療法 肝硬変の治療法は主に、薬物療法や食事療法、肝移植があげられます。 ここからはそれぞれの治療法と肝移植の種類、リスクについて解説していきます。 薬物療法 肝硬変の薬物療法は肝硬変の症状や合併症を管理するために用いられます。 主に以下の症状に対して治療をおこないます。 症状 治療法(使用する薬の種類) 皮膚のかゆみ ナルフラフィン塩酸塩 こむら返り 芍薬甘草湯、カルニチン 血小板減少 ルストロンボパグ ただし薬物療法は、肝硬変の進行を遅らせて症状を緩和させるのが主な治療の目的です。 肝硬変で腹水が溜まっている方は、以下の記事も参考にしてください。 食事療法を含めた生活習慣の改善 肝硬変の方は、日頃の食事や生活習慣を改善するのも、おすすめの治療法です。 たとえば、以下のような食生活を心がけてみてください。 症状 食生活の改善ポイント 腹水・むくみ 塩分を控え、適度な水分制限が必要。水分不足や脱水に注意。 食道静脈瘤 刺激物、硬い食物を避け、よく咀嚼する。 糖尿病 一度に大量に食べない。砂糖や果物を控える。炭水化物の多い食事に注意。 肝性脳症 たんぱく質を控え、食物繊維を摂る。 上記の食生活へと改善しつつ、適度な運動習慣を取り入れて改善していきましょう。 肝硬変の食事療法については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。 肝移植 肝硬変が進行し、多くの合併症が起こり他の治療法が効果を示さない場合、肝移植を検討し始めます。 ダメージを受けた肝臓を取り除き、健康な肝臓に置き換え、機能を回復させるための治療法です。ただし、肝移植を受けられるかどうかは、患者様の健康状態や肝硬変の原因などの要因に依存します。 ここからは肝移植の種類やリスクについて深掘りしていきます。 移植の種類 肝硬変の治療で肝移植には「生体肝移植」と「脳死肝移植」の2種類あります。 それぞれ移植の特徴や注意点などは以下の通りです。 移植の種類 概要 メリット デメリット 生体肝移植 健康なドナー(主に配偶者や家族など)の肝臓の一部を患者様に移植する方法 移植までの待機時間が少ない ドナーの体にもメスをいれる必要がある 脳死肝移植 脳死状態となり臓器提供の意思を示した方から肝臓を提供してもらう方法 肝臓全体を移植できる 待機時間が長くなる可能性があり、病状が進行するリスクがある いずれの肝移植にも手術が必要であり、危険性が伴うのは忘れないようにしましょう。 肝移植のリスク 肝移植では、全身麻酔による合併症の可能性や肝臓を取り除く際に周囲の臓器を損傷するリスクがあります。 また、移植後は拒絶反応を防ぐために、免疫抑制剤を服用し続ける必要があります。 さらに肝移植は、すべての肝硬変の患者様が受けられるわけではありません。肝硬変の原因や患者様の全体的な健康状態などに基づいて、適応が判断されます。適応基準を満たさない場合は、症状を緩和する治療を続けます。 肝移植は最終的な治療手段として、肝硬変の患者様の命を救う可能性があるため、適応の有無は慎重な判断が必要です。 合併症別に見る肝硬変の治療法 肝臓は解毒・代謝など体にとって重要な役割を果たしていますが、肝硬変になるとその働きが落ちます。 肝硬変が進行すると肝臓に流れ込む「門脈」と呼ばれる血管の圧が上がるため、血流に大きな変化を及ぼします。 ここからは肝硬変に起こりやすい合併症とその治療法について、それぞれ解説していきます。 肝性脳症 肝性脳症とは、肝硬変により代謝できなくなったアンモニアなどの毒素による脳の機能障害です。 肝性脳症による症状は異常行動や意識障害などがあります。なかでも特徴的な症状のひとつに「羽ばたき振戦」があります。その検査方法は以下の通りです。 羽ばたき振戦の検査方法 ①手のひらを下にしたまま腕を前に伸ばす ②そこから手首を90度立てて手のひらを正面に見せる様にする 羽ばたき振戦があると、手のひらを正面にしたままキープできず、羽ばたいているように手が細かく震えるのです。 肝性脳症には便秘・脱水・体内のアミノ酸バランスの異常・栄養素の不足などが影響していると考えられます。これらの誘因を除去し、不足している栄養素を補うのが治療で重要なポイントです。 患者様の栄養状態を把握し、適切な栄養管理をしつつ、以下の薬物療法をおこないます。 種類 概要 非吸収性合成二糖類 便秘を改善したり、腸内のpHを調整したりする効果がある。 分子鎖アミノ酸製剤(BCAA) アミノ酸バランスを整え、肝性脳症を改善させる。 腸管非吸収性抗菌薬 腸内でアンモニアを産生する菌の増殖を抑制する。 亜鉛製剤 不足している亜鉛を補うことで症状を改善させる。 カルニチン製剤 肝硬変の方が不足しがちなカルニチンを補充して効果を発揮させる。 食道胃静脈瘤 食道胃静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)は血液を肝臓に流す「門脈」の血圧が肝硬変により、上昇し、発生する合併症です。 門脈圧亢進(もんみゃくあつこうしんしょう)により門脈を介した血流が滞ると、相対的に他への血流を増やさなければなりません。 その結果、食道や胃などの静脈に血流が増えて血管は拡張し、瘤(こぶ)のようになります。 基本的には無症状でも胃カメラをしなければ発見できません。しかし、とても破れやすく、消化管出血をきたします。 以下で治療の種類と具体的な内容を解説するので、参考にしてください。 治療の種類 治療内容 EIS(内視鏡的硬化療法) 内視鏡下に静脈瘤に硬化剤を注入する。 EVL(内視鏡的食道静脈瘤結紮術) 内視鏡に専用の輪ゴムを装着して静脈瘤を結紮(血管をしばって血行をとめる方法)。 CA法(内視鏡的シアノアクリレート系組織接着剤注入法) X線透視装置と内視鏡を用いて、造影剤と組織接着剤を混ぜ、静脈瘤に注入し硬化させる。 SB-tube 鼻からチューブを挿入し、2つのバルーンを膨らませ、圧迫止血をおこなう。 BRTO(バルーン下逆行性経静脈的塞栓術) 足の付け根の静脈からカテーテルを進め、硬化剤とバルーンで静脈瘤の血流を遮断して硬化させる。 静脈瘤の形や場所・患者様の状態・肝機能の程度・医療機関の状況などにより選択されます。 肝腎症候群 肝硬変により体をめぐる血液のボリュームが低下し、腎臓への血流が悪くなり腎機能障害が起こった状態が「肝腎症候群」です。 腹水を伴う、進行した肝硬変に起こります。腎機能は血液検査の「クレアチニン」と呼ばれる項目で判断します。 クレアチニンが1.5mg/dL以上を超えるのが診断条件の1つです。 脱水やショック、薬剤による腎障害や腎臓そのものの異常がないなど、いくつかの項目をみたすと診断が確定します。 急速に進む1型と緩徐に進行する2型に分類され、1型はとくに病気のその後の状態が悪くなることが多いです。 治療では、血液内に水分を引き寄せるアルブミンと呼ばれる血液製剤を投与したり、血圧を上げる薬を一時的に使用したりします。 肝肺症候群 肝肺症候群とは、肝硬変が原因で肺のガス交換に異常をきたし、血中の酸素濃度が低くなった状態です。 肝硬変により血管拡張物質が代謝されなくなった結果、肺の血管が拡張します。 肺の血液量が増え、酸素の供給が間に合わなくなるだけでなく、動脈と静脈にシャントと呼ばれる異常な交通ができます。 シャントでは動脈血と静脈血が混じり合い、血中の酸素濃度が低くなるので注意が必要です。 肝肺症候群の特徴的な症状は、座ったり立ったりしたとき、息苦しさを感じる症状が出ます。診断は特殊な心エコーなどの画像検査で肺のシャントを証明します。 肺高血圧症 肝硬変による門脈圧亢進症に伴う血流の変化は肺の動脈にも影響を及ぼします。心臓から肺へ伸びる肺動脈圧が上昇した状態が「肺高血圧」です。 肺へ血液を送る心臓の右側の部屋(右心系)に負担がかかり、やがて心不全へと至ります。息苦しさ、足のむくみ、動悸、失神などが主な症状です。 レントゲンや心電図、心エコーなどで右心系の負荷がかかっていないかを確認します。治療は肺動脈を拡張させる薬剤を使用します。 肝硬変が進行し、肝臓の機能が保てなくなる「肝不全」では、これらの合併症により他の臓器にも影響を及ぼすだけではありません。 連鎖的に他の臓器への機能不全が起こると、命への影響もあるため注意が必要です。 肝がん 肝硬変と診断された方は、定期的な腹部エコーなどの画像検査をおこない、がんではないか、経過観察をおこなうのが重要です。 がんがあるときに高値になりやすい血液検査の「腫瘍マーカー」も参考になります。最終的な診断は生検と呼ばれる組織を針などで取り、顕微鏡で観察する必要があります。 肝がんの主な治療法は、以下の通りです。 手術や一般的な抗がん剤を使用する 体表から特殊な針をがんに刺して焼く がんの近くまで直接的に抗がん剤を注入する がんの栄養血管を詰める がんの治療は、その大きさ・数・肝硬変の程度や患者様の状態によりさまざまです。 肝硬変は治る時代!?再生医療の可能性について 肝硬変になると、従来の治療法では線維化した肝臓が元に戻ることは難しいとされてきました。しかし、再生医療の進展により、この常識が変わりつつあります。 肝硬変に対する再生医療では「幹細胞」を活用する方法が注目されています。幹細胞は、多様な細胞に分化する能力を持つ細胞であり、これを培養して点滴で投与することにより、肝細胞の修復および再生を促進することができます。 幹細胞は、損傷した肝組織に作用し、肝細胞の再生と修復をサポートします。肝硬変に対する再生医療により、従来は肝移植しか選択肢がなかった肝臓の線維化が改善する可能性が期待されています。 なお、現時点では肝臓に対する再生医療は医療保険の適用外ですが、その治療法は新しい選択肢として注目されています。 当院「リペアセルクリニック」では、患者様の脂肪細胞から幹細胞を採取し、培養後に点滴による治療を行っています。 また、当院独自の細胞培養技術により、冷凍保存を経ずに幹細胞の輸送・保存が可能であり、フレッシュな幹細胞を使用した治療を実現しています。 ▼こちらの動画で当院の幹細胞治療について詳しく解説しています。ぜひご参考にしてください。 肝硬変の治療でお悩みの方は当院へ気軽にご相談ください 本記事では、肝硬変の治療法について解説しました。 全身に起こる多様な合併症や肝がんは、命にかかわる合併症です。肝硬変そのものの治療としては薬物療法や食事治療に加え、症状の緩和が必要になります。 しかし、薬物療法では線維化の進行を止められません。 肝移植も検討されますが、可能な方は限られます。肝硬変に対する再生医療では線維化が進んでしまった肝臓を回復させる可能性のある治療です。 当院「リペアセルクリニック」では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。 再生医療を含め、肝硬変の治療法が気になる方は気軽にご連絡ください。
2024.06.11 -
- 肝疾患
- 内科疾患
「最近夜中によく足がつって目が覚める。何かの病気なのだろうか」 「こむら返りは肝臓が悪いサインって本当?」 この記事を読んでいる方は、こむら返りの原因が肝臓にあるという噂を耳にして不安になっているのではないでしょうか。 こむら返りは、肝臓の健康状態と深く関係している可能性があります。 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ肝硬変などの疾患でも初期段階では自覚症状が出にくいのが特徴です。ただし、こむら返りは肝臓の疾患のサインかもしれません。 この記事では、こむら返りと肝臓の関係性について詳しく解説するとともに、肝硬変の初期サインや予防法についても医師監修のもとご紹介します。 こむら返りに対する理解が深まり健康管理にも役立つはずですので、ぜひ最後までご覧ください。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝臓治療の再生医療が受けられる数少ない医療機関の1つです。 気になる症状がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 こむら返りの原因が肝臓にある3つの理由 夜間に突然襲う「こむら返り」ですが、肝臓の不調が関与している可能性があります。 肝臓が筋肉の働きや栄養バランスに与える影響は大きく、無視できません。 本章では肝臓がこむら返りの原因となる3つの理由について詳しく解説します。 肝臓の機能低下が筋肉に影響する 肝硬変の進行によって筋肉のけいれんや痛みを引き起こす 肝臓の病気で電解質バランスが崩れる それぞれ詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 肝臓の機能低下が筋肉に影響する 肝硬変などで肝臓の機能が低下すると、エネルギーを蓄える力が弱まります。 不足したエネルギーを補おうと、体は筋肉を分解し、分岐鎖アミノ酸(BCAA)などのタンパク質を消費するのです。 この影響で、加齢に伴い筋力が低下する疾患「サルコペニア」が起こる可能性もあります。 さらに、筋肉量が減ると筋肉の働きが低下し、こむら返りのリスクが高まります。 肝硬変の進行によって筋肉のけいれんや痛みを引き起こす 肝硬変が進行すると、こむら返りのような痛みを伴う筋肉のけいれんが生じる場合があります。 これは、肝臓の機能低下によって代謝が乱れることが原因の一つとされています。 肝臓が正常に働かなくなると、筋肉内の代謝バランスが崩れ、けいれんや痛みを引き起こす恐れがあるのです。(文献1) 肝臓の病気で電解質バランスが崩れる 肝硬変患者では、脱水や電解質異常がこむら返りを引き起こす要因と考えられています。 肝臓の機能が低下すると、体内の水分バランスや電解質の調整が難しくなるためです。 この影響で筋肉の正常な働きが妨げられ、こむら返りが起こりやすくなる可能性があります。 また、これらの要因が複雑に絡み合い、肝臓の不調がこむら返りの原因となるケースもあります。 こむら返りの主な原因とは? こむら返りは、さまざまな原因で引き起こされます。 ここでは、こむら返りの主な原因として以下の3つのポイントに分けて解説します。 脱水症状 ミネラル不足 過剰な運動や筋疲労 原因を理解し、こむら返りの予防や改善に役立ててください。 脱水症状 脱水症状は、こむら返りの大きな原因の一つです。 体内の水分が不足すると、筋肉の正常な収縮が妨げられ「けいれん」が起こりやすくなります。 また、汗を多くかく夏場や運動中はとくに注意が必要です。 水分だけでなく、電解質を含む飲み物を摂ることで予防が期待できるため、適切な水分補給を心がけて、こむら返りのリスクを減らしましょう。(文献2) ミネラル不足 ミネラルの不足も、こむら返りを引き起こす要因の1つです。 とくにカルシウム、マグネシウム、カリウムといったミネラルは、筋肉の弛緩や収縮を調整する役割を持っています。 そのため、これらが不足すると筋肉が過剰に収縮しやすくなります。 ミネラルは、バランスの取れた食事から摂取可能です。 たとえば、カルシウムは牛乳や乳製品、小魚などに多く含まれており、マグネシウムは、海藻類やナッツ類、豆類などに多く含まれています。 過剰な運動や筋疲労 運動のしすぎや筋肉の過度な疲労も、こむら返りの原因になります。 筋肉が疲れると、収縮と弛緩のバランスが崩れて「けいれん」が起きやすくなるためです。 また、運動後にストレッチをしないと、筋肉が硬直し「こむら返り」を招くケースもあります。 運動前後の準備運動やストレッチによって筋肉の負担を軽減できるため、意識して取り入れてみましょう。 肝硬変の主な原因とは? 肝硬変はさまざまな原因で引き起こされる病気です。 ウイルス性肝炎 脂肪性肝炎 自己免疫疾患 ここでは上記3つの要因について詳しく解説いたします。 肝臓の健康を守るための知識として参考にしてください。 ウイルス性肝炎 ウイルス性肝炎は、肝炎ウイルスへの感染が原因で引き起こされる肝臓の炎症です。 日本ではB型とC型肝炎ウイルスが主な原因で、血液や体液を介して感染します。 以前は輸血や医療器具の使い回しが多かったですが、現在は性交渉や母子感染が主な感染経路です。 また、ウイルス性肝炎は急性肝炎と慢性肝炎に分けられます。 急性肝炎は症状が軽く自然に治るケースもありますが、慢性化すると肝臓の炎症が続き、肝硬変へ進行するリスクが高まります。(文献3) 脂肪性肝炎 脂肪性肝炎は、肝臓に脂肪が溜まり炎症を引き起こす状態を指します。 原因にはアルコール性と非アルコール性の2種類があります。 アルコール性脂肪性肝炎は、長期間の過剰な飲酒が原因で発症します。 純アルコール量で1日60g以上の摂取がリスクとなりますが、体質や性別によっては少ない量でも肝障害を引き起こす可能性があります。とくに女性やアルコールに弱い人は注意が必要です。 たとえば、日本酒1合(180mL、アルコール度数15%)の純アルコール量は21.6gで、2〜3合を毎日飲むと肝障害のリスクが高まります。 一方、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は飲酒以外が原因で発症する脂肪性肝炎です。 肥満やメタボリックシンドロームが主な要因で、近年増加傾向にあります。 アルコールに関係なく脂肪が肝臓に蓄積し、さらに炎症を伴うと「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」と分類されます。 NASHは放置すると肝硬変や肝がんに進行する可能性もあるため注意が必要です。 自己免疫疾患 自己免疫疾患も肝硬変の原因として知られている要因の1つです。 自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、免疫が誤って自分の肝臓を攻撃することで発症します。 これらの病気は進行がゆっくりで初期症状がわかりにくいですが、治療を怠ると肝硬変に進行する可能性があります。 肝硬変の治療法や合併症については以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。 肝硬変の初期サインは「血液検査による肝障害の指摘」 肝臓は、肝硬変が始まる段階や初期の頃にはほとんど症状が現れないため「沈黙の臓器」と呼ばれています。 したがって、肝臓の病気に関して自分で初期症状を感じ取るのは難しいと言えるでしょう。 しかし、ASTやALTなど肝臓の異常を示す数値が上昇している場合、肝硬変の初期サインとして血液検査で肝障害が指摘される場合があります。 よって、症状がなくても血液検査で肝臓に関する数値が高い場合は、肝硬変の原因を調べるために肝臓内科の受診をおすすめします。 肝硬変とこむら返りの予防対策3選 こむら返りや肝硬変は、日々の生活習慣と大きく関わっています。 本章では、肝硬変とこむら返りの予防に効果的な対策を3つご紹介します。 肝臓に優しい食事と生活習慣の改善 こむら返りを和らげるストレッチ方法 水分補給と電解質バランスを整える 本章を参考に、健康的な毎日を送るための知識としてに役立てていきましょう。 肝臓に優しい食事と生活習慣の改善 肝臓は、食事や生活習慣の影響を受けやすい臓器です。 肝臓の健康を維持するためには、バランスの取れた食事を心がけて暴飲暴食を避けましょう。 とくに、脂肪分の多い食事や過度な飲酒は、肝臓に負担をかけるため控えめにするのがおすすめです。 また、睡眠不足や運動不足は、肝臓の機能低下を招く可能性があるため十分な睡眠と適度な運動も大切です。 規則正しい生活を心がけ、肝臓の健康を守りましょう。 肝硬変の食事療法についてはこちらの記事も参考にご覧ください。 こむら返りを和らげるストレッチ方法 こむら返りを予防するためには、日頃からふくらはぎのストレッチを行うのが効果的です。 ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進する効果があります。 たとえば、壁に手をついてアキレス腱を伸ばすストレッチや、床に座ってつま先を身体の方に引き寄せるストレッチなどがあります。 これらのストレッチを、毎日数回行うことで、こむら返りを予防できるでしょう。 水分補給と電解質バランスを整える こむら返りの原因の一つに、脱水症状や電解質バランスの乱れがあります。 汗をかいた際や運動後などは、とくに水分補給を心がけましょう。 また、水分補給には、水やお茶だけでなく、スポーツドリンクなども有効です。 スポーツドリンクには、電解質が含まれているため、体内の電解質バランスを整えるのに役立ちます。 肝硬変の診断に必要な3つの検査 肝硬変を正確に診断するためには、以下の3つの検査が重要です。 それぞれの特徴を表にまとめました。 検査名 検査の目的 特徴 肝生検 肝臓組織を採取し、炎症や線維化の進行を確認 正確な診断が可能だが、身体への負担がある 血液検査 肝酵素値やアルブミン値などで肝機能を評価 初期診断に適し、定期的に実施しやすい 画像検査 超音波やCTで肝臓の形状や異常を視覚的に確認 腫瘍や進行度の把握に有効 それぞれの特徴と役割を理解し、必要に応じて専門医の相談を検討しましょう。 1.肝生検 肝生検は、肝臓の状態を直接確認できる検査です。 細い針を肝臓に刺して組織を採取し、顕微鏡で観察して肝硬変の確定診断を行います。 検査自体は短時間で終わりますが、入院が必要となる場合もあります。 また、まれに出血や合併症が起こる可能性もあるため、医師とよく相談してから検査を受けるようにしましょう。 2.血液検査 血液検査では、肝臓の炎症や機能の状態を調べられます。 肝機能検査では、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値を測定し、数値が高い場合は、肝臓に炎症が起こっている可能性があります。 また、アルブミンやビリルビンなどの数値も、肝臓の機能を評価する上で重要な指標です。 血液検査は、肝硬変の疑いがある場合に行われる一般的な検査です。 採血だけで済むため、身体への負担も少なく受けられます。 3.画像検査 画像検査とは、肝臓の大きさや形、腫瘍の有無などの確認ができる検査です。 超音波検査、CT検査、MRI検査など、さまざまな画像検査があります。 それぞれの検査方法によって、得られる情報が異なるため、医師が症状や状態に合わせて適切な検査を選択します。 また、肝臓がんの早期発見にもつながるため、心配な方は定期的に検査を受けるようにしましょう。 肝臓治療の再生医療については、以下からご確認いただけます。 新しい肝臓の治療法に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。 まとめ|こむら返りが頻繁に起きたら肝硬変の初期サインを疑ってみよう こむら返りが頻発して発生するのは、単なる筋肉の問題ではないかもしれません。 肝臓の機能低下や肝硬変が隠れている可能性があります。 そのため、症状が続く場合は早めに医療機関で検査を受けましょう。 生活習慣の見直しや定期的な健康チェックが、肝臓の健康を守る重要なポイントとなります。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝臓(脂肪肝・肝硬変・肝炎)の再生医療・幹細胞治療を提供しています。 肝機能の治療に不安がある方は、まずはお気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 こむら返りと肝臓に関するよくある質問 こむら返りはアルコールが原因の可能性もありますか? 過剰なアルコール摂取は、肝臓に大きな負担をかけます。 肝臓が正常に働かなくなると、筋肉の代謝バランスが崩れ、こむら返りが起こりやすくなる可能性があります。 そのため、毎日の飲酒量を見直し、肝臓の負担を軽減することが大切です。 肝臓が悪いと手や爪にどんな症状が出ますか? 肝臓の不調は、手や爪にも現れる場合があります。 手のひらが赤くなる「手掌紅斑」や、爪の色が白っぽくなる「白色爪」は、肝臓の病気で見られる典型的な症状です。 こうしたサインを見逃さず、早めに医師に相談しましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝硬変・肝炎に対し手術を伴わない「再生医療」を提案しています。 治療に不安がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 日本消化器病学会,日本肝臓学会.「肝硬変診療ガイドライン2020|日本消化器病学会ガイドライン」 https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/kankouhen2020_re.pdf (文献2) 下呂市「脱水とこむら返り」 https://www.city.gero.lg.jp/uploaded/attachment/7541.pdf (文献3) MSDマニュアル家庭版「肝硬変」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/04-%E8%82%9D%E8%87%93%E3%81%A8%E8%83%86%E5%9A%A2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%82%9D%E8%87%93%E3%81%AE%E7%B7%9A%E7%B6%AD%E5%8C%96%E3%81%A8%E8%82%9D%E7%A1%AC%E5%A4%89/%E8%82%9D%E7%A1%AC%E5%A4%89
2024.06.04