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- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
「歩くと足首が痛い」「原因不明の痛みがある」 こういった悩みの原因は、疲労骨折の可能性があります。 疲労骨折は自分では判断がつかないことも多く、放置して悪化してしまう例も少なくありません。 この記事では、足首の疲労骨折について詳しく紹介します。似た症状である捻挫との違いや、完治にかかる期間についても解説しています。 自分の症状が疲労骨折なのか判断に悩んでいる人はぜひ参考にしてみてください。 足首にも起こる疲労骨折とは 疲労骨折とは、一度では骨折には至らない小さな負荷が、継続的に加わることで発生する骨折です。 疲労骨折は体重を支える骨に多く見られ、足の骨だと「脛骨(すねの骨)」「腓骨(脛骨の外側にある骨)」「中足骨(足の甲~付け根にかけてある骨)」によく見られます。 足首の骨では「腓骨」「舟状骨(足の内側、土踏まずの頂点あたり)」に負荷が掛かりやすく、疲労骨折を起こしやすいです。 ジャンプすることが多いスポーツ、長い時間の立ち仕事や、ランニング、ウォーキングなどが疲労骨折の原因として挙げられます。 疲労骨折と捻挫のちがい 疲労骨折 捻挫 原因 繰り返しの負荷の蓄積 転倒、ジャンプした際の着地失敗によるひねり 損傷部位 骨のひび 靭帯や関節周囲の軟部組織 痛み 鈍い痛みが長く続く 瞬間的に強い痛み 腫れ 出ない、もしくは目立たない場合もある はっきりと出る 大きな違いは捻挫の場合は怪我をした明確な原因がある点です。 原因がわからないが気づいたら痛みが出ていた、という人は疲労骨折の可能性があります。 足首の疲労骨折を起こしやすい人の特徴 疲労骨折を起こしやすいのは以下の特徴がある人です。 スポーツをしている。 仕事や日常生活でずっと立っていること、歩くことが多い。 成長期や更年期などで骨がもろくなっている。 栄養バランスが乱れている。 靴底が薄い靴を履いている。 スポーツでは、特にジャンプをすることが多い種目(バスケットボールなど)をしている人は注意が必要です。ジャンプの着地時の負荷の蓄積によって疲労骨折のリスクが上がります。 足首の疲労骨折の症状・痛みの特徴 足首の疲労骨折の症状の特徴は以下の通りです。 立つ、歩くという動作をすると鈍い痛みが起こる 安静期間を設けても症状が良くならず、長い期間で痛みが続いている 押すと痛い、腫れがある 足首が動かしづらい、もしくはまったく動かない 上記の症状が見られる場合は疲労骨折の可能性が高いです。 疲労骨折は強い痛みが起こらないこともあるため、つい放置してしまう人もいます。 しかし、疲労骨折もほかの怪我同様、早期発見が完治の近道です。 当てはまる症状がある場合、まずは医師に相談しましょう。 足首の疲労骨折の検査・治療法 疲労骨折の場合も、事故や強打した際に起こる骨折同様に患部の検査が必要です。治療法は怪我の程度によって変わりますが、安静が必須になります。 疲労骨折の検査 疲労骨折は早期の検査だとX線では骨折線が見えないことが多いです。そのため、CT検査やMRI検査を用いて確認を行います。 MRI検査は骨の内部の変化や炎症を詳しく観察でき、疲労骨折の早期発見に最も有効です。CT検査は骨の構造をより詳しく確認できます。 初回検査で異常が見つからなくても、症状が続く場合は再検査を行うことが重要です。発症後2~3週間すると骨折線が見えてくることがあります。 足首の疲労骨折の治療 足首の疲労骨折の治療は、安静による自然治癒が基本です。 まずは患部を安静にしましょう。軽傷ならおよそ1か月~1か月半、重症なら2~3か月の安静期間を設け、重い荷物を持つことは控えてください。 症状に応じて松葉杖やテーピング、ギプス固定を用いることもあります。松葉杖は患部への荷重を避けるため、テーピングやギプスは患部の固定と保護のために使用されます。 治療中は定期的に通院し、都度治癒状況を確認してください。自己判断でのスポーツの再開は治りを遅らせる可能性があり危険です。 また、段階的なリハビリも早期完治に有効です。医師の指導のもと、痛みのない範囲で足首の可動域訓練や筋力強化を行います。完治後もリハビリを続け、再発防止に努めましょう。 いずれにせよ医師の判断が最優先となるため、些細なことでも相談しましょう。 足首の疲労骨折を防ぐためにすべきこと 疲労骨折は継続的に患部に負荷がかかることで起こるため、防ぐにはまず、負荷を軽減することが重要です。 スポーツが原因で足首の疲労骨折を起こしてしまった人は、まずしっかりした休息をとるよう心がけましょう。 アスリートの疲労骨折の原因は「練習のしすぎ」であることが多いです。 大事な試合の前や、つい熱中して休みを取ることを忘れてしまうこともありますが、長くスポーツを続けるために休息をとりましょう。 また、定期的なストレッチも効果的です。ストレッチは筋肉の柔軟性が高まるため、怪我のリスクを減らせます。 足に合っていない靴を履くのも疲労骨折の原因になる場合があるため、注意が必要です。サイズが合わない靴やクッション性の低い靴、かかとがすり減った靴は足に不自然な負荷をかけてしまいます。 仕事で立つことが多い人や歩く時間が長い人は定期的に靴を確認し、必要に応じて交換や修理を行いましょう。 また、骨の強度を保つための健康管理も重要です。骨を強くするカルシウム、ビタミンDなどの栄養を積極的に摂りましょう。 カルシウムは乳製品や大豆製品、煮干しなどの小魚、ビタミンDは魚介類やきのこ類に多く含まれています。 まとめ|足首の長引く痛みは疲労骨折の可能性がある!すぐに専門の医師へ相談しよう 足首の疲労骨折は、継続的な負荷のかかる運動、動作を繰り返すことで発生する骨折です。 外傷がないのに足首の痛みが長引いている、歩くときに違和感を感じているという人は疲労骨折の可能性があります。 疲労骨折の治療は安静が基本です。重い荷物を持たない、歩行時には体重をかけないなど、患部への負担をできる限り減らしましょう。 スポーツをしている人は、治療期間の練習は医師との相談のもと行ってください。自己判断で運動を再開すると、完治に時間がかかる可能性があります。 再発を防ぐためには、負荷がかかりすぎない運動量の見極めが重要です。適度な休息を設けて、靴の見直しや栄養管理、ストレッチを行って予防に努めましょう。 足首の痛みが長引いている場合、放置は危険です。明確な原因がない場合でも骨に負担がかかっていることはあります。 疲労骨折の可能性も考慮し、まずは専門の医師に相談してください。 足首の疲労骨折に関してよくある質問 足首の疲労骨折ではどんな痛みが起きる? 立つ、歩くなどの動作をすると鈍い痛みが起こります。また、長い期間痛みが続くのも特徴的です。 押すと痛みがある、足首が動かない、もしくは動かしづらいという症状も見られます。 疲労骨折の痛みは、捻挫のような突然の激痛とは異なり、じわじわとした持続的な痛みが特徴です。朝起きた時や運動開始時に痛みが強く、安静にしていると和らぐのが特徴です。 足首の疲労骨折の治療にはどれくらいの期間がかかる? 軽傷なら1か月〜1か月半、重症なら2〜3か月ほどで完治することがほとんどです。 治療の期間は絶対安静にし、スポーツや重い荷物の持ち運びは控えましょう。 治療期間は骨折の部位や程度、患者様の年齢、栄養状態によって個人差があります。適切な治療を行えば予後は良好ですが、無理をすると治療期間が延長する可能性があります。 足首が疲労骨折した状態でも歩ける? 疲労骨折をした状態でも歩くことはできますが、負荷がかからないよう気を付ける必要があります。 長距離の歩行は避け、症状が軽度な場合を除き、歩行時は松葉杖を使用することで足首への負担を軽減しましょう。 医師の指導に従い、段階的に歩行距離を延ばしていくことが重要です。
2025.06.30 -
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
「歩くとかかとが痛い」「原因はわからないがかかとが痛む」 その症状は、かかとの疲労骨折かもしれません。 疲労骨折は中足骨や足首などで起きやすいというイメージを持っている人もいるでしょう。 中足骨、足首周辺と比べると少ないケースではありますが、かかとも疲労骨折を起こすことはあるため注意が必要です。 この記事ではかかとの疲労骨折について解説します。 通常の骨折との違いや治療にかかる期間、予防対策についても紹介しています。原因不明のかかとの痛みに悩まされている人は、参考にしてください。 かかとの疲労骨折とは?通常の骨折との違い 疲労骨折とは、長時間の運動など負荷が継続的に骨に加わることで起こる骨折です。 ジャンプすることが多いスポーツや、長時間の立ち仕事など、足を酷使する状況が長時間ある人がなりやすいとされています。 通常の骨折との大きな違いは、痛みの原因が明確にあるかどうかです。 通常の骨折は、「着地に失敗してかかとを強打した」「事故などでかかとを強打した」など、強い衝撃が加わったことで起こる「外傷性骨折」の場合がほとんどです。 対して疲労骨折はダメージの蓄積によって発生します。 そのため、徐々に患部の痛みが強まっていく場合もあり、すぐに気付けなかったという例も少なくありません。 かかとの疲労骨折の特徴的な症状 かかとの疲労骨折の主な症状は以下の通りです。 かかとに圧をかけると強い痛みが起こる かかと付近の腫れや熱感、あざができることもある 歩行が困難になる また、かかとの骨折が原因で合併症や後遺症を引き起こす可能性もあります。 合併症では、骨折による強い腫れが周辺の血管を圧迫し、血流障害を起こすコンパートメント症候群が発生することがあります。ただし、かかとの疲労骨折でこの合併症が起こることは極めてまれです。 骨折による変形や可動域の低下といった後遺症が見られることも少なくありません。 合併症や後遺症を防ぐためには早期の治療が最善です。自己診断で決めつけず、まず医師に相談しましょう。 疲労骨折を起こしやすい人の特徴 疲労骨折を起こしやすい人の特徴は以下の通りです。 スポーツをしている。 仕事や日常生活でずっと立っていること、歩くことが多い。 成長期や更年期などで骨がもろくなっている。 栄養バランスが乱れている。 靴底が薄い靴を履いている。 特にかかとは固い床、地面への着地時に負荷がかかることが多いと言われています。 ジャンプすることが多いバスケットボールやバレーボールなどの種目は注意が必要です。 また、蹴り上げる動作の多い陸上競技やヒールを履いて行うダンス競技もかかとへの負担が大きいとされています。 かかとの疲労骨折の診断および治療 かかとの疲労骨折は適切な診断と治療が重要です。 疲労骨折は通常の骨折とは異なり、蓄積されたダメージによって起こるため、診断には専門的な検査が必要になることがあります。 治療では安静を基本として、症状に応じて松葉杖やテーピングなどを用いて患部への負担を軽減します。完治には医師の指導に従った段階的な治療とリハビリが欠かせません。 この項目ではかかとの疲労骨折の診断方法や完治するまでの治療法について解説します。 疲労骨折の検査・診断方法 疲労骨折の場合、早期の検査ではレントゲンで骨折線が見えないケースが多いです。 そのため、CT検査やMRI検査を行い患部の状況を確認します。MRI検査では、レントゲン上では見えなかった骨周辺の炎症などによって判断が可能です。 発症後2~3週間経つと、骨折線が見えてくることがあります。 かかとの疲労骨折の治療法 かかとの疲労骨折の治療は安静が基本です。軽傷なら1〜1.5か月、重症なら2〜3か月の安静期間が必要で、スポーツは原則禁止となります。 重い荷物を持つことは控え、ケガをしている足での歩行もなるべく避けてください。症状に応じて松葉杖やテーピングを用います。 テーピングは症状緩和と再発防止に効果的ですが、間違った方法では骨の癒合不良や症状悪化を招くため、必ず医師の指導のもとで行ってください。 定期的な通院で治癒状況を確認し、段階的なリハビリも早期完治に有効です。完治後もリハビリを続け、再発防止に努めましょう。 自己判断でのスポーツ再開は危険なため、医師の判断を最優先とし、些細なことでも相談してください。 かかとの疲労骨折を防ぐためにすべきこと 疲労骨折を防ぐためには、まず継続的な負荷を軽減するのが有効です。 休息をしっかりとる 普段使用する靴を見直す 栄養バランスを整える これらの予防法について詳しく見ていきましょう。 休息をしっかりとる 例えば、スポーツをしている人は練習量の調節からはじめてください。 アスリートは練習のしすぎによって疲労骨折を起こしてしまうことが多いです。 適度に休憩時間をとる、運動後のストレッチやマッサージを行うなど、運動以外のケアにも目を向けましょう。 普段使用する靴を見直す 運動時の靴を変えることで疲労骨折のリスクが軽減される可能性もあります。 靴底がすり減って薄くなっているとクッション性が失われ、踏み込んだ際のダメージが直接骨に届いてしまいます。 また、外側だけすり減っているなど、靴の形自体が変形してしまうと姿勢の崩れの原因にもなり余分な負荷がかかってしまうこともあります。靴の定期的なメンテナンスは非常に重要です。 栄養バランスを整える 骨の強度を保つために食事の栄養バランスを整えることも大切です。カルシウム、ビタミンDなどが骨を強くします。 カルシウムは以下の食品に多く含まれています。 乳製品や大豆製品 にぼしなどの小魚 ビタミンDが多く含まれている食品は以下の通りです。 魚介類 きのこ類 普段の食事に意識的に取り入れ、骨折しない体づくりを心がけましょう。 まとめ|かかとでも疲労骨折は発生する!長引く痛みはすぐに専門の医師へ相談を かかとの疲労骨折は継続的に負荷がかかることで発生します。 例えば、ジャンプをするスポーツや地面を踏み込むスポーツを長くやっている人や長時間歩く、立ったままの仕事をしている人は注意が必要です。 かかとの疲労骨折の完治には1か月〜3か月ほどかかります。治療期間は重い荷物を持たない、歩行時になるべく患部に負担をかけないことが必要です。 症状の度合いによってはテーピングなども行いましょう。テーピングは症状の緩和だけでなく再発の予防にも効果的です。 かかとの疲労骨折を予防するためには継続的な負荷を軽減することが重要です。 スポーツをしている人は練習量を調整し、十分な休息をとることを心がけて下さい。 また、休息以外にも骨を強くするための栄養管理や、靴のメンテナンスも疲労骨折の予防に効果があります。 疲労骨折は蓄積されたダメージによって起こるため、自分では気づきづらいケガのひとつです。 かかとの痛みが長引く場合は疲労骨折の可能性も踏まえ、まずは医療機関を受診しましょう。 かかとの疲労骨折に関してよくある質問 かかとの疲労骨折ではどんな痛みが起きる? かかとの疲労骨折の特徴的な痛みとして、 かかとに圧をかけると強い痛みが起こる。 足と足首が大きく腫れ上がり、あざができることもある。 歩行が困難。 などが挙げられます。 かかとの疲労骨折は全治何カ月? 症状の重さにもよりますが、おおよそ1か月~3か月ほどで完治します。 治療にかかる期間や治療期間の制限などは重症度で変わるため、医師に相談しましょう。 かかとの疲労骨折は、合併症や、変形、神経障害などの後遺症が残ることがあります。骨が完全に癒合するまで必ず通院を続けてください。 かかとが疲労骨折した状態でも歩ける? かかとが疲労骨折を起こした場合、歩くことはできますが健常時のように歩くことは非常に困難です。 歩いた際にかかとに負荷がかかり、強い痛みを感じる可能性があります。 重症の場合は松葉杖を使用し、患部への負担を軽減するようにしましょう。
2025.06.30 -
- 野球肘
- 上肢(腕の障害)
- 下肢(足の障害)
- 肘関節
- スポーツ外傷
「肩や肘が痛いけれど、まだ投げられるから大丈夫」「チームに迷惑をかけられないから、少しくらい我慢しよう」 このような想いを抱きながら、痛みと向き合っている選手や保護者の方は決して少なくありません。 しかし、驚くべきことに高校球児の20人に1人が肩関節もしくは肘関節の手術や引退を余儀なくされるような重篤な怪我を経験しているのが現実です。(文献1) さらに、1シーズンで100イニング以上投げた選手は、投球回数が少ない選手に比べて約3.5倍の確率で重篤な怪我のリスクが高まるという研究結果も報告されています。(文献1) 野球での怪我は運や偶然で起こるものではありません。そこには必ず原因があり、正しい知識と早期対応によって多くの怪我は予防できるのです。 本記事では、野球で発症しやすい代表的な怪我の種類と症状、そして最も大切な予防法について詳しく解説します。 怪我と正しく向き合うための知識を身につけることで、長く野球を続けられる体づくりを目指しましょう。 野球で多い怪我と症状をチェック 野球は全身を使ってプレーする複雑なスポーツです。投球、打撃、守備、走塁のすべての動作で、さまざまな部位に負担がかかります。(文献2) 以下で詳しく解説する野球で多い怪我の症状や特徴を理解し、自分の症状がどのタイプに当てはまるかを把握しましょう。 野球肩 原因 投球動作の繰り返し、肩甲骨周囲筋の筋力低下、不適切な投球フォーム、体幹・股関節の柔軟性低下 症状 投球時の肩の痛み、腕を上げる際の引っかかり感、夜間痛(炎症が強い場合)、肩の可動域制限 治療法 投球中止と安静(2〜4週間)、消炎鎮痛薬、ステロイド注射、リハビリテーション、重症例では手術 野球肩は投球動作で引き起こされる肩関節周辺の障害の総称で、発症のピークは15~16歳とされており、投手と捕手に多く見られます。(文献3) 投球動作は5つのフェーズに分けられ、各フェーズで異なる負荷がかかるため、痛みの出るタイミングによって損傷部位や重症度を推測できます。 ワインドアップ期:投球動作開始からステップ脚を最も高く上げるまで アーリーコッキング期:ステップ脚が地面に着くまで レイトコッキング期:肩関節が最大外旋位に達するまで アクセラレーション期:ボールリリースまでの加速期 フォロースルー期:ボールリリース後の減速期野球肩は段階的に進行する特徴があります。 初期段階では投球後の軽い違和感程度で、数日休むと症状が改善できるため、この段階での適切な対応が最も重要ですが、無理をしてしまうと日常生活に支障をきたすようになってしまいます。 初期段階で食い止められるように、違和感がある際は無理をせず休みましょう。 野球肘 原因 投球による肘への外反・回内ストレス、成長期の骨端線への負荷、オーバーユース、不良な投球フォーム 症状 投球時・投球後の肘痛、肘の伸展・屈曲制限、急に動かせなくなる(ロッキング)、握力低下(文献4) 治療法 投球禁止と安静、内側型は保存療法中心、外側型は長期投球禁止または手術、後方型は炎症抑制治療 野球肘は投球動作の繰り返しによって肘関節に生じる疼痛性障害の総称で、発症の時期により「発育型野球肘」と「成人型野球肘」に分けられます。 年代別の特徴として、11-12歳が発生のピーク年齢とされており、成長期では骨端(骨にある軟骨や成長線)への影響が大きく、成人期では靱帯や筋腱付着部の障害が中心となります。 野球肘の診断で重要なポイントとして、野球肘は前兆となる自覚症状が乏しく、痛みを訴える時には重症化していることが少なくない特徴があります。 腰椎分離症・腰痛(バッティング・投球の負担) 原因 打撃練習での体幹回旋動作、投球時の腰部負担、中腰姿勢の維持、不適切なランニングフォーム 症状 体幹後屈時の痛み、長時間立位困難、慢性的な腰痛、進行すると下肢のしびれ 治療法 早期発見時は保存療法(コルセット装着)、安静、完全分離時は手術を検討 腰椎分離症は、腰の背骨にある椎弓(ついきゅう)と呼ばれる腰椎が分離している状態のことを指します。疲労骨折が原因と言われており、発育期の代表的なスポーツ障害の一つです。 野球ではピッチングやバッティングで身体を反ったり、腰をひねる動作を繰り返し行うため、発症しやすい疾患として知られています。 日本の成人も約6%が腰椎分離症を患っていますが、未成年では小学校高学年~大学進学時の成長期のスポーツ部活生に起きることが多いとされています。 日本臨床スポーツ医学誌の研究では、大阪府で全国大会出場レベルの高校野球部に入学予定の中学3年生男子を258名研究した実験によれば、258名中55名(21.3%)が腰椎分離症を疑う初見を有しており、年齢に関係なく野球の練習に熱心な子どもは腰椎分離症を患いやすいことが判明しました。(文献5) 治療で重要なのは早期発見です。まだ骨折が早期の状態で発見できれば、手術をしない保存療法で治療を進められます。コルセットの着用など安静が正しく守れれば、骨は自然と癒合していきます。 足首捻挫・アキレス腱炎 原因 急激な方向転換、不整地でのプレー、ふくらはぎの筋肉の柔軟性低下、不適切なシューズ 症状 足首の痛み・腫れ、歩行困難、アキレス腱部の痛み・圧痛 治療法 RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)、テーピング、リハビリテーション 野球では走塁時の急激な方向転換や、硬いグラウンドでのプレーにより足首の捻挫が頻繁に発生します。また、ダッシュやジャンプ動作の繰り返しによりアキレス腱炎も起こりやすい怪我の一つです。 アキレス腱炎は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐアキレス腱に炎症が起こる状態です。野球では、ダッシュや方向転換の繰り返し、合わないシューズを着用することで発症しやすくなります。 野球で発症した怪我のリハビリについて 野球で発症した怪我のリハビリは、単に痛みを取り除くだけではなく、競技復帰に向けた段階的な機能回復と再発予防が重要な目的となります。 以下は野球肩と野球肘のリハビリにおいて、重要なポイントです。 野球肩のリハビリポイント 急性期:肩のアイシングと安静時のポジショニング 回復期:肩甲骨周囲筋の筋力強化、インナーマッスル強化 競技復帰期:投球動作の段階的練習、フォームチェック 野球肘のリハビリポイント 投球禁止と肘のアライメント改善 股関節・体幹の柔軟性向上 段階的な競技復帰プログラム リハビリの成功には、選手、指導者、医療スタッフの連携が不可欠です。焦らずに段階的なプログラムを遵守し、より強い状態での競技復帰を果たしましょう。 野球での怪我リスクを予防するためには 野球での怪我リスクを効果的に予防するためには、まず怪我につながる主要因への理解が重要です。 適切な投球数制限を守る まず、過度な投球数は怪我のリスクを引き上げてしまいます。 予防対策として、各年代の投球数制限のガイドラインに従って、以下の表を参考に球数制限をすると良いでしょう。 年代 投球数制限(1日) 投球数制限(1週間) 補足 小学生 4年生以下60球以内 5・6年生70球以内(文献6) - 2日間連続で投げる場合は合わせて100球以内 中学生 1日70球以内(文献7) 350球以内 週に1日全力投球しない日を設ける 連続する2日間で120球以内 高校生 - 500球以内(文献8) 投球フォームの改善 不適切な投球フォームは肩や肘に過度な負担をかける主要な原因です。 以下のようなフォームは、怪我のリスクを高め、選手生命を脅かしてしまうため改善を心がけましょう。 肘が下がったまま投げることで手投げになってしまい、肘に負担をかける 身体の開きが早く、肩関節に過度なストレスがかかってしまう 踏み出す足を投球方向に斜め、または横に踏み出すことで身体の回転を正しく使えずにフォームを崩す 癖になる前に指導者の指示に従い、修正しましょう。 股関節の柔軟性 また、股関節の柔軟性は野球での怪我予防の最重要ポイントです。股関節が固いと体を上手に使えず、その状態で野球特有のピッチングやバッティングを行うと怪我の危険性が高まります。 対策として、股関節の柔軟性向上のためのストレッチを日常的に行い、練習前には適切なウォーミングアップを実施することで、怪我のリスクを軽減しましょう。 そして、継続的な疲労の蓄積は怪我の大きな要因となるため、適切な休養により体の回復を図る必要があります。 十分な睡眠と栄養摂取により体調管理を徹底し、怪我をしにくい身体づくりを行ってください。 早期復帰が目指せる再生医療(PRP/幹細胞)について メジャーリーガーをはじめとする野球選手が取り入れている「再生医療」について紹介します。 再生医療の一つ「PRP療法」には、日帰り治療が可能で手術を回避できるというメリットがあります。 患者様自身の血液を活用する治療法のため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。 もう一つの再生医療「幹細胞治療」では、患者様から採取・培養した幹細胞を患部に投与いたします。幹細胞には、他の細胞に変化する能力があり、患部にアプローチします。 PRP療法だけでなく幹細胞治療も入院を必要としないため、短期間での治療を目指せるのが特徴です。 再生医療は、野球選手の怪我治療における新たな選択肢として確立されつつある治療法です。 ただし、予防が最も重要であることに変わりはありません。怪我をする前の予防策の実施と、万が一怪我をした場合の適切な治療選択が、長い競技人生を支える両輪となります。 まとめ||再発ゼロを目指すなら専門医の伴走が近道 野球での怪我は予防が最も重要です。正しい投球フォームの習得や年代に応じた投球数制限を守り、柔軟性を保つことで多くの怪我を防げます。 万が一怪我をした場合でも、メジャーリーガーも取り入れているPRP療法や幹細胞治療などの再生医療により、野球への早期復帰が目指せます。 1週間以上続く痛み、投球時の違和感、可動域の制限といった初期症状に気づいたら、すぐに専門医に相談してください。 あなたの野球人生をより良いものにするためにも、違和感があれば一人で悩まず、専門医へ相談しましょう。長く充実した野球人生を送るため、私たちが全力でサポートいたします。 参考文献 (文献1) 古島弘三ほか「少年野球での"投げ過ぎ"が及ぼす影響 肩や肘の重篤な故障リスクは3.5倍」Full-Count, 2022年10月14日 https://full-count.jp/2022/10/14/post1294608/(最終アクセス:2025年5月24日) (文献2) 公益財団法人スポーツ安全協会「障害予防のためのセルフチェック|スポーツ外傷・障害予防-野球編」 https://www.sportsanzen.org/syogai_yobo/baseball/page2.html (最終アクセス:2025年5月25日) (文献3) 日本整形外科学会認定スポーツ医「野球肩」 https://jcoa.gr.jp/%E6%8A%95%E7%90%83%E8%82%A9/ (最終アクセス:2025年5月25日) (文献4) 日本整形外科学会認定スポーツ医「野球肘」 https://jcoa.gr.jp/%E6%8A%95%E7%90%83%E8%82%A9/ (最終アクセス:2025年5月25日) (文献5) 栗田剛寧ほか「発育期野球選手におけるポジション別の腰椎分離症と身体特性の関連」日本臨床スポーツ医学会誌 32(3), 446-453, 2024年 https://www.rinspo.jp/journal/2020/files/32-3/446-453.pdf (最終アクセス:2025年5月25日) (文献6) 日本少年野球連盟「投球数制限ガイドライン」2021年12月 https://www.boys-fukuoka.com/download/tokyusuu_seigen/20211212_tokyuguideline.pdf (最終アクセス:2025年5月27日) (文献7) 日本中学野球協議会「中学生投手の投球制限に関する統一ガイドライン」 https://littlesenior.jp/news/48.html (最終アクセス:2025年5月27日) (文献8) 日本高等学校野球連盟「高校野球特別規則(2024年版)」2024年 https://www.jhbf.or.jp/summary/rule/specialrule/specialrule_2024_1.pdf (最終アクセス:2025年5月27日)
2025.05.30 -
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
「サッカーの練習中に足のつけ根が痛くなってきた...」「ランニングで股関節まわりに違和感があるけど、病院に行くほどなのかな?」 このようなお悩みを持たれている方もいらっしゃることでしょう。足のつけ根の痛みをそのうち治るだろうと我慢すると、半年以上プレーできなくなるケースもあります。 グロインペイン症候群は、適切な対処で早期回復が期待できる症状です。 この記事では、グロインペイン症候群の治し方について、自分でできるチェック方法から症状レベル別ケアまで説明します。 本記事を読むと今日から取れる行動がわかることと、病院に行くか迷わないようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。 グロインペイン症候群の治し方|セルフケアと治療法 グロインペイン症候群の治療は、症状の段階に応じて段階的にアプローチが重要です。 運動してもそこまで気にならない軽い痛みの場合は、1~2週間で症状が落ち着くことがあります。 中程度の痛みであれば、1〜2カ月ほど継続的な治療が必要です。この場合はまずは安静にして様子をみましょう。 そして、痛みが軽減されれば水中でのウォーキングや、軽いジョギングなど専門医と相談しながら段階的に運動を再開していく方法が効果的です。 一方で、症状が重く、慢性的に痛みが継続するような場合は、治療が数カ月以上続くことが考えられますので、病院での診察をおすすめします。 初期段階のセルフケア 痛みが軽いうちに始めたいのが、自宅でできるセルフケアです。 ストレッチがおすすめで、動きながら反動をつけてストレッチする動的ストレッチと、筋肉を伸ばした状態で反動をつけず一定時間保持する静的ストレッチがあります。 動的ストレッチは、動きながら反動をつけて行うストレッチで、運動前のウォーミングアップに適しています。股関節を大きく回したり、足を前後に振るような動きが代表的です。 静的ストレッチは、筋肉を伸ばした状態で反動をつけず、一定時間保持するストレッチです。運動後のクールダウンや就寝前に行うと効果的なストレッチです。 股関節まわりの筋力トレーニングも効果的です。お腹まわりの体幹筋を鍛えることで、股関節への負担を軽減できます。 プランクやサイドプランクなどの簡単な体幹トレーニングから始めて、徐々に負荷を上げていきましょう。 ただし、痛みが強いときは無理をせず、まずは安静にすることが大切です。 医療機関での治療法 グロインペイン症候群の治療法は主に保存療法です。 まず痛みのある部分を安静にして、湿布や飲み薬で炎症を抑えます。症状が落ち着いてきたら、股関節周りの筋肉を柔らかくするストレッチと、弱くなった筋肉を鍛える運動療法を行います。とくに太ももの内側やお腹の奥の筋肉を強化することが重要です。 理学療法士の指導のもと、正しいフォームでの運動や動作の改善も行います。 これらの保存療法で多くの場合改善しますが、効果が不十分な時は注射治療や手術を検討することもあります。完治には数ヶ月かかるため、焦らず継続することが大切です。 グロインペイン症候群の応急ケア 足のつけ根の強い痛みで練習を止めざるを得ないとき、まず頼りになるのがテーピングとサポーターです。 テープは内ももと股関節をやさしく固定して動きを制御し、痛みを一時的に減らします。 貼る位置は腸腰筋と内転筋に沿わせるのが基本で、テープを軽く引っぱりながら2本平行に貼ると動きやすさを保ちつつ負担を分散できます。 市販の腰・股関節サポーターでも痛みの緩和に効果的です。 しかし、どちらの方法も治療ではなく「あくまで痛みを抑える道具」である点を忘れずに。 2週間使っても痛みが引かない場合は、治療法を見直すサインです。 テーピングで痛みを和らげる手順 テーピングは、太ももの内側を走る筋肉に沿って貼るだけで効果が変わります。正しいテーピングの手順をみていきましょう。 正しいテーピングの手順 肌を清潔にして、毛があれば剃っておきます 鼠径部(足のつけ根)から3cm下の位置にテープの端を固定します テープを軽く伸ばしながら、太ももの内側に沿って貼ります 2枚目は1枚目に半分重なるように平行に重ねて貼ります 貼ったあとは手で軽くこすって密着させると剝がれにくくなります テーピングをするときは、強く引っ張りすぎないように注意しましょう。 皮膚が弱い方は、事前にアンダーラップ(肌を保護するテープ)を巻いてからテーピングを行うことをおすすめします。 サポーターの選び方と使い方 グロインペイン症候群は痛みの範囲が広いため、サポーターを選ぶときは、股関節をぐるりと覆う幅広タイプがおすすめです。 締め付けが強すぎると血行を妨げるので、立ったまま深呼吸して苦しくない程度のフィット感を基準にしましょう。 サポーター選びのチェックポイントとしては、以下の通りです。 素材:通気性の良いメッシュ素材 サイズ:腰まわりのサイズを正確に測定 固定力:適度な圧迫感があるもの 着脱:ベルクロタイプで調整しやすいもの 洗濯:家庭で洗えるタイプ 運動中はもちろん、通勤・通学時の長時間歩行にも有効で、痛みを感じた瞬間に着脱できるのがメリットです。 サポーターは股関節だけでなく、腰や骨盤も同時にサポートしてくれるため、体のバランスを整える効果も期待できますが、大切なのはサポーター自体が治療になるわけではなく、あくまで炎症が強い期間の補助である点です。 長期間の使用は筋力低下を招く可能性もあるため、症状が改善したら徐々に使用時間を減らしていきましょう。 痛みが続く場合は無理せず医療機関へ テーピングやサポーターだけで痛みが2週間以上続く場合、あるいは夜間にズキズキして眠れない場合は、保存療法だけでは追いつかない可能性があります。 整形外科や整骨院では電気治療や筋膜リリース、カテーテル治療などさまざまな治療法が行われていますが、必要に応じて再生医療を加えることで回復を早める方法も今後選択肢に入るでしょう。 治療期間は症状の程度で変わりますが、軽症なら1~2カ月、重症でも数カ月が目安とされています。 早期の専門的な治療により、慢性化を防げます。 グロインペイン症候群の再発予防策 グロインペイン症候群は一度治っても、根本的な原因を解決しなければ再発しやすい疾患です。 再発を防ぐためには、日常生活や運動習慣を見直すことが必要です。再発予防のポイントを以下の表にまとめました。 ポイント 説明 1.股関節の柔軟性を保つ 毎日のストレッチで股関節まわりの筋肉を柔らかく保ちます 2.体幹筋力の強化 お腹まわりの筋肉を鍛えることで、股関節への負担を軽減します 3.運動前後のウォーミングアップ・クールダウン 急激な負荷を避けるため、準備運動と整理運動を欠かさず行います 4.適切な運動量の調整 疲労が蓄積しないよう、練習量や強度を調整します 5.生活習慣の改善 十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事で、体の回復力を高めます とくに重要なのは、股関節まわりの筋肉バランスを整えることです。内ももの筋肉(内転筋群)とお尻の筋肉(臀筋群)の筋力バランスが悪いと、股関節に過度な負担がかかります。専門的な筋力測定を受けて、自分の弱い部分を把握しましょう。 また、運動フォームの見直しも大切です。サッカーのキックやランニングの着地動作など、競技特有の動作を正しく行うことで、股関節への負担を最小限に抑えられます。 コーチや指導者に動作チェックをしてもらい、適切なフォームを身につけましょう。 グロインペイン症候群の基礎知識|原因と症状 グロインペイン症候群とは、サッカーやランニングで起こりやすい、足のつけ根や恥骨まわりの痛みの総称です。 初めはダッシュやキックでズキッとする程度ですが、症状が進むと歩くだけでも痛むようになってしまいます。 病院ではX線検査やMRI検査で骨や筋肉のケガを除外し、簡単な触診などで原因を特定します。 早めに原因をはっきりさせることが、治療を長引かせないコツです。 グロインペイン症候群の原因 内ももとお尻の筋肉のアンバランス、骨盤が片側にねじれるクセなどが要因ですが、スポーツ特有の動作の使いすぎにより引き起こされます。 たとえば、サッカー選手はキックの繰り返し、ランナーは片脚着地の負荷が痛みを招きます。以下の表を確認し、原因を把握しましょう。 原因となる要素 説明 1.筋力のアンバランス 内転筋群(内もも)と外転筋群(お尻)の筋力差が大きい 2.柔軟性の低下 股関節まわりの筋肉が硬くなり、可動域が制限される 3.体幹筋力の不足 腹筋や背筋が弱く、骨盤が不安定になる 4.オーバーユース 過度な練習により、筋肉や腱に疲労が蓄積する 5.フォームの問題 間違った動作により、特定の部位に負荷が集中する とくにサッカーでは、利き足の多用やキック時の股関節の動きによって、鼠径部に圧力がかかってしまうため、罹患者が多いことで知られています。 また、人工芝や硬いグラウンドでのプレーは、足への衝撃が強く、股関節への負担も増大するため、注意が必要です。 年齢的には、10代後半から30代前半で多く見られます。 グロインペイン症候群の症状 グロインペイン症候群の症状は、段階的に進行する特徴があります。 初期段階では運動時のみに痛みを感じますが、症状が進行すると日常生活にも支障をきたすようになります。 以下のようなイメージでご自身の症状を把握し、治療に役立てましょう。 段階 程度 症状 第1段階 軽度 ・激しい運動時のみ痛みを感じる ・運動後は痛みが治まる ・歩行や階段昇降は問題なし 第2段階 中等度 ・軽い運動でも痛みを感じる ・運動後も痛みが残る ・朝起きたときに違和感がある 第3段階 重度 ・安静時にも痛みがある ・歩行時に痛みを感じる ・夜間痛で眠れないことがある 痛みの場所は、鼠径部(足のつけ根)から始まり、内もも、恥骨部へと広がることがあります。(文献1) また、片側だけでなく、両側に症状が現れることもあるため、どこで、どのような症状になるかは範囲が広いのがグロインペイン症候群の特徴でもあります。 グロインペイン症候群でやってはいけないNG習慣 早く良くなりたい気持ちから、かえって悪化させてしまう行動も少なくありません。 たとえば、痛みを我慢して練習を続けたり、強すぎるストレッチを無理やり行ったりするのは逆効果です。 避けるべきNG行動の例 事例 理由 1.痛みを我慢して運動を続ける 炎症が悪化し、治療期間が長引く原因となります 2.強すぎるストレッチ 筋肉や腱を傷つけ、症状を悪化させる可能性があります 3.自己判断での湿布の長期使用 皮膚トラブルを起こしたり、根本的な治療を遅らせたりします 4.マッサージの強すぎる刺激 炎症部位を刺激し、痛みが増強します 5.完全な安静 症状にあわせた適度な動きは必要です。まったく動かないと筋力低下を招きます とくに危険なのは、痛み止めを飲んで練習を続けることです。 痛みは体からの警告信号であり、それを薬でごまかして運動を続けると、より深刻な損傷を引き起こす可能性があるため、避けてください。 ただし、軽度の症状では完全安静も逆効果です。痛みを悪化させない範囲での軽い活動は、血流促進や筋力維持に有効です。 症状に合わせた判断が必要なため、医療機関を受診して医師の指示に従いましょう。 まとめ|グロインペイン症候群は適切なケア・治療で回復を目指そう グロインペイン症候群の改善には、原因を知って、まずは安静にした上で段階的に運動を再開する流れが欠かせません。 とくに、2週間以上休んでも痛みが残る、または夜寝ているときも痛むといった場合は、専門の病院を受診すべきタイミングです。 早期の適切な治療により、慢性化を防ぐことで競技へ早期復帰できます。治し方を把握した上で、ご自身の症状の段階に応じた適切な治療を選択をしましょう。 当院では、再生医療を活用した治療で競技への本格復帰をサポートしています。 一人ひとりの症状や競技レベルに合わせた治療計画を立て、PRP療法や幹細胞治療などの再生医療により、競技への早期復帰が目指せます。まずはお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 日本スポーツ整形外科学会(JSOA)「スポーツ損傷シリーズ 11.鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)」2023年 https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s11.pdf (最終アクセス:2025年5月25日)
2025.05.30 -
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
「最近、鼠径部の痛みが強くなってきているけれど、どんな動きが良くないのだろう?」 「このまま練習を続けても大丈夫なのかな?」 「YouTubeで見たストレッチをやってみたけれど、本当に効果があるのか不安だ...」 このような悩みを抱えている学生さんは多いのではないでしょうか。 グロインペイン症候群は、一度発症すると長期化しやすく、間違った対処をしてしまうと症状が悪化して競技復帰が遅れてしまう可能性があります。 しかし、適切な知識を持って正しく対処すれば、症状の悪化を防ぎながら段階的に競技復帰を目指すことも十分可能です。 本記事では、グロインペイン症候群でやってはいけない具体的な動作、症状の見極め方、そして本格復帰するためのステップについて、医師の視点から詳しく解説いたします。 ぜひ最後までご覧いただき、あなたの症状改善と競技復帰にお役立てください。 グロインペイン症候群でやってはいけないこと グロインペイン症候群を悪化させる行為は、痛みを我慢しながら無理に競技を続けることです。 とくに急性期と回復期では避けるべき動作が異なりますので、それぞれの段階に応じた注意点をしっかりと理解しておきましょう。 急性期(痛みが強いとき)にやってはいけないこと 急性期は炎症が強く出ている時期であり、この段階で無理をすると症状が慢性化しやすくなります。 以下の5つの動作は避けてください。 1. 痛みを無視して練習や試合を続行 痛みは体からの重要なサインです。無視して活動を続けると、炎症が悪化し、組織の修復が遅れてしまいます。 急性期はとくに、痛みを悪化させる動作を避け、適切な休息を取ることが大切です。 2. ランニングやダッシュなどの反復走行 鼠径部に繰り返し負荷がかかる走行動作は、炎症を増強させる危険な動作です。 全力ダッシュや方向転換を伴う走行は、股関節への負担が非常に大きくなりますので、避けてください。 3. キック動作 サッカーの基本動作であるキックは、鼠径部の筋肉や股関節に強いストレスをかける動作です。 軽いキックでも炎症部位を刺激してしまうため、急性期にボールを蹴る動作は避けましょう。 4. 急激な方向転換や体をひねる動き 切り返し動作やターン動作は、炎症を悪化させます。日常生活でも、急に振り返ったり、身体をひねったりする動作は慎重に行ってください。 5. 痛むカ所に負担をかける姿勢やストレッチ 痛くても伸ばした方が良いという考えは間違いです。急性期で正しい知識がないまま行うストレッチは炎症を悪化させ、回復を遅らせる原因となります。 これらの動作がなぜ禁止なのかというと、グロインペイン症候群の痛みの根本原因である恥骨結合や内転筋への過度なストレスを増強し、炎症の悪化と慢性化を招くためです。 回復期(痛みが軽い時)の注意点 痛みが軽減してきた回復期は、実は注意が必要な時期です。多くの選手がこの段階で誤った判断をして再発してしまいます。 痛みがなくなっても身体の内部では、回復途中の状態が続いてますので、段階的に負荷をあげていきましょう。 とくに、股関節周りの痛みや柔軟性だけでなく、体幹の安定度や可動域のチェックを入念に行なってください。 「試合が近いから」「レギュラーを取られたくないから」といった理由で、いきなり全力の練習に戻ってしまうケースも見られますが、段階的な復帰プログラムを無視すると、高い確率で再発してしまいます。 再発してしまうと痛みが慢性化し、2〜3カ月さらに復帰に時間がかかってしまうため、注意が必要です。 症状をチェック|グロインペイン症候群の見分け方 鼠径部の痛みがそのままグロインペイン症候群になるとは限りません。 適切な治療を受けるためには、まず自分の症状が本当にグロインペイン症候群に該当するかどうかを見極めることが大切です。 グロインペイン症候群は、鼠径部周辺にさまざまな原因で発生する痛みの総称であり、恥骨結合炎、大腿内転筋付着部炎、股関節炎、鼠径ヘルニアなど、複数の病態が含まれます。 そのため、正確な診断には専門医による詳しい検査が必要ですが、以下のセルフチェック方法で、グロインペイン症候群の可能性を確認できます。 アダクタースクイーズ(両脚を閉じるテスト) このテストは、内転筋の機能と痛みの有無を確認する最も基本的なチェック方法です。 テスト方法 仰向けに寝て、両膝を軽く曲げた状態で股関節をやや開きます。 膝の間にタオルやクッションを挟み、両脚で力を入れて挟みます。 この動作で鼠径部に痛みが生じたり、力が抜けてしまったりする場合は、グロインペイン症候群の可能性が高いです。 確認ポイント 痛みの場所(鼠径部の内側、恥骨周辺、内転筋など)を確認してください。 また、左右差がある場合も注意が必要です。 健康な状態であれば、この動作で痛みが生じることはありません。 両脚開脚テスト 股関節の可動域と内転筋の柔軟性をチェックするテストです。 テスト方法 仰向けに寝て、両膝を軽く曲げ、足裏を床につけます。 そのまま両膝を外側に開いていきます。 正常であれば、膝が床に近づくまで開脚できますが、グロインペイン症候群のがある場合は途中で痛みが生じたり、十分に開脚できなかったりします。 注意点 無理に開脚しようとすると症状が悪化する可能性があるため、痛みを感じたらすぐに中止してください。 このテストは股関節の可動域制限も同時にチェックできる有用な方法です。 股関節抱え込みテスト 腸腰筋の機能と股関節前方の痛みをチェックするテストです。 テスト方法 仰向けに寝て、片方の膝を胸に向かって抱え込みます。 この動作で鼠径部前方や股関節前面に痛みが生じる場合は、グロインペイン症候群の可能性があります。 とくに腸腰筋や股関節の問題が原因となっている場合に、この動作で痛みが誘発されやすくなります。 確認ポイント 必ず左右両方で行い、痛みの程度や場所を比較してください。 健康な状態であれば、膝を胸に近づけても痛みは生じません。 重要な注意点 これらのセルフチェックで痛みや異常を感じた場合は、グロインペイン症候群の可能性が高いと考えられます。 しかし、鼠径部の痛みには鼠径ヘルニア、股関節炎、恥骨の疲労骨折、さらには内臓疾患など、さまざまな原因が考えられます。 そのため、セルフチェックで異常を感じた場合は、必ず専門の医療機関を受診して正確な診断を受けることが重要です。 グロインペイン症候群でも競技を続けたい方へ 「休むとポジションを失ってしまうかもしれない」「大事な試合が近いから練習を休めない」 このような思いを抱えている選手の気持ちは、よく理解できます。しかし、グロインペイン症候群に対する適切な理解があれば、必ずしもすべての活動を止める必要はありません。 重要なのは「完全に休む」か「今まで通り続ける」の二択ではなく、症状に応じた調整を行うことです。 痛みが強い急性期は安静が必要ですが、痛みが軽減している時期であれば、痛みが出ない範囲での代替トレーニングで体力を維持しながら治療を並行も可能です。 練習を止めないとダメ?それとも工夫次第? この判断は症状の程度によって大きく異なります。 完全休止が必要なケース 日常生活でも痛みがある 軽い歩行でも痛みが増す 炎症症状(熱感、腫れ)が強い 発症から間もない急性期 これらの場合は、無理に活動を続けると慢性化のリスクが高まるため、安静にする必要があります。 工夫次第で継続可能なケース 安静時に痛みがない 特定の動作でのみ痛みが生じる 炎症症状が落ち着いている 適切な治療を並行して受けている このような場合は、以下のような代替トレーニングで体力を維持できます。 代替トレーニングの例 有酸素運動の代替 ランニング → エアロバイク(座位) ダッシュ → プール歩行(浮力を利用) 技術練習の代替 キック練習 → 戦術理解・映像分析 激しい動き → 基本技術の反復練習 筋力トレーニングの調整 痛みが出る動作を避けた部位別トレーニング 体幹強化(痛みが出ない範囲で) 最も重要なのは痛みが悪化しない範囲内で活動することです。 活動後に痛みが増したり、翌日に痛みが残ったりする場合は、その活動は現段階では適切ではありません。 このような判断は個人では難しいため、必ず医師に相談して適切な活動レベルを決めてもらいましょう。 診察を受けて身体の状態を確認し、医師の指導のもとで段階的に負荷を上げていくことが大切です。 また、必ずチームの指導者や医療スタッフとの相談も重要です。短期的な休養によるパフォーマンスの低下を恐れるより、長期的な視点で競技人生を考える必要があります。 適切な対応によって、症状を悪化させることなく可能な限り競技を続けながら回復を目指せるでしょう。 本格復帰するまでの段階別リハビリ グロインペイン症候群から競技に本格復帰するには、症状の程度に応じて段階的にリハビリを進めることが不可欠です。 本記事では、2つのステージに区切って説明していきます。 ステージ1|痛みを抑えながら筋肉を目覚めさせる このステージの目的は、炎症を悪化させずに筋肉の機能を回復させることです。 痛みがある状態でも低負荷のトレーニングから開始しましょう。 主なトレーニング内容 基本的な体幹安定化エクササイズ プランク(20-30秒から開始) サイドプランク(痛みが出ない範囲で) ブリッジ(お尻を上げる運動) 腹横筋の活性化 仰向けで膝を立て、へそを背中に近づけるように軽く力を入れる 呼吸と連動させて10回×3セット 内転筋のストレッチ 股割り 伸脚 ペアを組んで内転筋のストレッチ このステージでの注意点としては、痛くない範囲で必ず行うことです。運動後に痛みが増すようであれば、強度を下げるか一時中止しましょう。 継続性を重視し、毎日少しずつでも症状に応じて2週間〜4週間続けます。 痛みの改善とともに、これらの運動が楽に行えるようになったら次のステージに進んでください。 ステージ2|負荷を上げて競技動作に近づける ステージ1で基本的な筋機能が回復したら、より競技に近い動作への適応を図ります。(文献1) 主なトレーニング内容 内転筋の段階的強化 チューブを使った内転筋トレーニング 横向きでの脚上げ運動 動的な体幹安定化 プランクからの手脚上げ キック動作を確認する スポーツ動作の導入 軽いジョギングから徐々にダッシュへ ボールを使ってパスを短い距離から徐々に長くする 負荷は段階的に上げるのがポイントですが、どのように上げていけば良いのかなどわからないことがある場合は専門医に相談しましょう。 このステージは個人差が大きいため、症状の変化を注意深く観察しながら進めましょう。 グロインペイン症候群の治療選択肢「再生医療」について 再生医療は、スポーツ選手の腱や筋肉の損傷に対して適用されており、競技復帰を目指すアスリートにとっても選択肢となる治療法です。 ただし、再生医療を検討する場合でも、基本的なリハビリは継続する必要があります。 再生医療と並行してリハビリを実施して、スポーツへの早期復帰を目指しましょう。 再生医療について詳細は、以下をご覧ください。 まとめ|痛みを繰り返さないために出来る最後のひと押し グロインペイン症候群は決して治らない病気ではありません。適切な知識と対処法があれば、症状の悪化を防ぎ、競技復帰が可能です。 グロインペイン症候群かな?と思ったら、セルフチェックで現在の痛みの場所や程度を正確に把握しましょう。 そして、重要なのはやってはいけない動作を徹底的に避けることです。急性期の無理な運動継続、回復期の急激な競技復帰は、症状の慢性化と再発の要因になってしまいます。 痛みがなくなりリハビリのフェーズに入ったら、医師に相談の上で症状が悪化しない範囲内で改善を目指します。 自己判断で症状を悪化させる前に、スポーツ整形外科や再生医療に詳しい医療機関を受診し、あなたの競技人生を守るために、今できることから始めましょう。 リペアセルクリニックでは、グロインペイン症候群などのスポーツ外傷に対して再生医療を提供しております。症状でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 グロインペイン症候群に関するよくある質問 グロインペイン症候群はどのくらいで治りますか? 症状の程度と治療開始時期によって大きく異なります。 軽症の場合は適切な安静と保存療法で1-2カ月で改善することが多いですが、重症の場合や慢性化している場合は数カ月かかることもあります。 早期発見・早期治療が回復期間を大きく左右するため、症状を感じたら早めに専門医を受診しましょう。 また、単に痛みが取れるだけでなく、根本的な原因(筋力バランス、柔軟性、動作パターン)を改善することで、再発を防げます。 効果的なストレッチはありますか? 急性期に痛みが出るようなストレッチは症状を悪化させる可能性があるため避けてください。 回復期以降は、内転筋のストレッチが効果的とされていますが、痛みが出ない範囲で行うことが重要です。 具体的には、座位での股割りストレッチや、仰向けでの内転筋ストレッチなどがありますが、必ず専門家の指導のもとで正しいフォームで行ってください。 間違ったストレッチは症状を悪化させるリスクがあるため、自己流ではなく専門医やトレーナーに相談をおすすめします。 自転車でのトレーニングは続けても良いですか? 自転車トレーニングは、一般的にグロインペイン症候群に対して比較的負担の少ない運動とされています。 ただし、症状の程度と自転車の乗り方によって判断が変わります。痛みが出ない回復期であれば、エアロバイクでの軽度な有酸素運動は体力維持に有効です。 しかし、ペダルを強く踏み込む動作や、前傾姿勢での長時間のサイクリングは鼠径部に負担をかける可能性がありますので、まずは短時間・低強度から始めて、症状の変化を注意深く観察してください。 運動後に痛みが増すようであれば一時中止し、専門医に相談をおすすめします。 参考文献 (文献1)日本スポーツ整形外科学会(JSOA)「スポーツ損傷シリーズ 11.鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)」2023年 https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s11.pdf (最終アクセス:2025年5月25日)
2025.05.30 -
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「肉離れにはどんな後遺症がある?」 「適切に治療しないで放置するとどんなリスクがある?」 初めて肉離れを経験した方は、このような不安を感じてしまうのではないでしょうか。 肉離れは適切な応急処置を行わずに放置すると、血腫(けっしゅ:体内の一部に血が溜まること)が形成されて後遺症の発生リスクが高まります。 後遺症を防ぐには、受傷直後の応急処置や重症度別の治療の実施が大切です。 本記事では、肉離れの後遺症をはじめとして以下を解説します。 放置してはならない理由 後遺症につながる2つの合併症 受傷直後の処置が大切な理由 重症度別の治療方法 予防のための3つのポイント 後遺症を発生させず速やかに元の活動レベルに戻すためにも、本記事で肉離れの後遺症について理解を深めてください。 肉離れの後遺症はつっぱり感や可動域の制限 肉離れの後遺症には、以下のようなものがあります。 つっぱり感 可動域の制限 筋力低下 筋力のアンバランス 筋肉の柔軟性の低下 痛み これらの後遺症があると、運動に制限がかかり再受傷してしまうリスクがあります。後遺症を発生させないためには、受傷直後の応急処置と重症度別の治療が大切です。 (文献1) 肉離れを放置してはならない理由 肉離れが起きた際は、たとえ軽い痛みであったとしても放置してはいけません。肉離れは、受傷直後の症状だけでは重症度を判断できないためです。(文献2)受傷直後の痛みが軽度であっても、時間とともに血腫が形成されていくことがあります。 血腫が形成されると、痛みや腫れが悪化して関節の可動域が制限される恐れがあります。肉離れによる痛みや腫れを悪化させないためには、後述する応急処置であるRICE(ライス)や適切な治療が大切です。 後遺症につながる肉離れによる2つの合併症 肉離れを適切に治療しなければ、以下のような合併症につながるリスクがあります。 合併症 詳細 コンパートメント症候群 筋肉の壊死(えし:組織が壊れてしまうこと)や神経障害による後遺症が発生する。 骨化性筋炎 骨性の組織が形成されて可動域が制限される。 それぞれの詳細を解説します。 1.コンパートメント症候群|筋肉の壊死や神経障害による後遺症が発生する コンパートメント症候群とは、筋肉の壊死や神経障害が起こることです。肉離れが原因の場合は以下のような流れで起きます。 筋肉内の出血や腫れが重度になる 出血や腫れにより筋肉内の圧力が高まる 圧力により血流が悪くなる コンパートメント症候群は、重大な後遺症が発生する恐れがあります。主な症状は以下の通りです。 耐え難い痛み 水ぶくれを伴う重度の腫れ 知覚障害 運動麻痺 これらの症状が現れた場合は、コンパートメント症候群を疑い速やかに外科手術を受ける必要があります。(文献3) 2.骨化性筋炎|骨性の組織が形成されて可動域が制限される 骨化性筋炎(こつかせいきんえん)とは、骨と筋肉のすき間や筋肉内に骨性の組織が形成されることです。筋肉内の血腫や骨膜の損傷が起きた際に、数週間をかけて形成されることがあります。(文献3) 骨化性筋炎が起きると、骨関節の可動域が制限される後遺症が発生する恐れがあります。この後遺症は治りにくいのが特徴です。骨化性筋炎を起こさない方法は、肉離れ後に適切な治療を受けることです。 肉離れの後遺症を防ぐには受傷直後の処置が大切 肉離れの後遺症を防ぐには、受傷直後にRICEという応急処置の実施が大切です。RICEの処置内容は以下の通りです。 RICE 処置目的 処置内容 Rest(安静) 安静により血管・神経の損傷や腫れを防ぐ。 受傷部位を動かしたり体重をかけたりしないで安静にする。テーピングや固定具で動かないように支える。 Icing(冷却) 壊死や腫れを抑える。 氷のうやアイスパックで15~20分冷やし、感覚がなくなったら外す。痛みがあれば繰り返す。 Compression(圧迫) 内出血や腫れを防ぐ。 腫れが予想される部位にテーピングパッドやスポンジを当てて、弾性包帯やテーピングで軽く圧迫しながら固定する。 Elevation(高挙) 腫れを予防する、または軽減する。 台などを使い受傷部位を心臓よりも高く挙げる。 (文献4) この4つの頭文字をとってRICEと呼びます。肉離れが起きた直後にRICEの応急処置を実施すれば、血腫や腫れを軽減でき後遺症のリスクを下げられます。 受傷直後は、損傷や炎症を悪化させる恐れがあるため揉んだり温めたりしてはいけません。RICEの応急処置を行ったあとは、整形外科を受診して医師の指示に従ってください。 肉離れの後遺症を防ぐ重症度別の治療方法 肉離れの後遺症を防ぐには、重症度別の適切な治療とリハビリを行う必要があります。肉離れの重症度は以下のように分けられます。 重症度 損傷部位の状態 I型 筋繊維がわずかに損傷した状態 II型 筋繊維の一部が断裂した状態 III型 筋繊維が完全に断裂した状態 ここからは重症度別の治療方法を解説します。 1.I型|筋繊維がわずかに損傷した状態 I型は、筋繊維がわずかに損傷した状態で軽度の肉離れです。画像所見では、筋肉と腱の接続部分の周囲や筋肉に出血が見られます。(文献5) ストレッチ痛を伴わないのが特徴です。症状の有無と画像検査によりI型であるかどうかを診断します。I型の治療方法は安静を主体とする保存的治療です。 数日から1週間の間、受傷部位を安静にしたのちリハビリを始めます。基本的な動きやスポーツ動作を確認しながら、スポーツに復帰できるかを判断します。 2.II型|筋繊維の一部が断裂した状態 II型は、筋繊維の一部が断裂した状態で中等症の肉離れです。画像所見では、筋肉と腱の接続部分に損傷が見られます。(文献5) 明らかなストレッチ痛があるのが特徴です。II型は2週間を基本に保存的治療を行い、リハビリも含めると回復まで平均6週間ほどかかります。保存的治療の後、以下の確認後にリハビリを開始します。 熱感 腫れ 圧痛 しこりの有無 運動動作 画像所見 筋肉量が少ない筋肉と腱の接続部分に損傷が起きた場合は、十分に回復できない恐れがあります。このような場合は手術の検討が必要です。また、運動時の痛みが長引く場合も手術を検討しなければなりません。 3.III型|筋繊維が完全に断裂した状態 III型は、筋繊維が完全に断裂した状態で重傷の肉離れです。画像所見では、筋肉をつなぐ腱の断裂、または腱の接続部分の引き抜けが見られます。(文献5) III型は自然治癒が見られたとしても、筋肉の収縮力が損失する恐れがあるため手術が必要です。手術後は、2〜3週間の安静後、3〜6週間かけて正常な関節可動域を目指します。 主な手術の適応部位は以下の通りです。 アキレス腱断裂 ハムストリングス近位付着部損傷 大腿四頭筋遠位付着部損傷 大胸筋遠位付着部損傷 上腕二頭筋長頭腱損傷 いずれの部位も手術後は良好に筋力が回復し、近年では過去に受傷した肉離れであっても手術により十分な筋力回復が見込めるケースが示されています。(文献5)とはいえ、肉離れは放置しないで受傷直後から適切な診断と治療を受けることが望ましいです。 なお、肉離れなどのスポーツ外傷に対する治療としては、再生医療という選択肢もあります。再生医療に関して、詳しくは以下をご覧ください。 肉離れ予防のため3つのポイント 肉離れは「受傷した部分に疲労がたまっていた」「筋肉がほぐれていなかった」などが原因で起きます。そのため、以下のようなポイントを抑えることで肉離れのリスクを軽減できます。 運動動作に適した筋力を鍛える 運動前はウォーミングアップを行う 疲労回復や運動後のケアを心がける それぞれの詳細を解説します。なお、今回はハムストリングを例にして解説しています。 1.運動動作に適した筋力を鍛える 肉離れを起こさないためには、運動動作に適した筋力を鍛える必要があります。 ハムストリングにおける肉離れ予防のトレーニングを紹介すると以下の通りです。 ヒップリフト 1.膝を曲げた状態で仰向けになる 2.仰向けのままお尻を上げる 3.肩から膝まで一直線になった状態で30秒キープ (文献6) お尻と太もも裏が効いていることを感じられれば正しくできています。片足を挙げた状態をキープすれば負荷を高められます。 2.運動前はウォーミングアップを行う 運動前のウォーミングアップやストレッチは、肉離れ予防につながります。ウォーミングアップは筋肉が温められ、筋肉の収縮や協調性が十分に発揮される状態になるためです。 ストレッチも十分に行い筋肉の柔軟性が保たれていれば、さらに肉離れの予防につながるでしょう。 3.疲労回復や運動後のケアを心がける 疲労は筋肉のパフォーマンスを低下させ、受傷リスクが高まります。 身体的疲労だけでなく、精神的な疲労が溜まっている場合も十分な休息が大切です。運動後のマッサージ等のケアは、疲労回復を期待でき肉離れ予防につながります。 まとめ|肉離れの後遺症を防ぐため受傷後すぐに治療をしよう 肉離れによる後遺症を防ぐためには、まず受傷直後にRICEの応急処置を行うことが大切です。その後、医療機関を受診して重症度に応じた適切な治療を受けてください。 「軽い痛みだから」と放置してしまうと血腫が大きくなり、後遺症が発生するリスクが高まることがあります。治療後は、運動動作に応じたリハビリや運動前後のケアを怠らず、再受傷の予防に努めることも大切です。 肉離れの手術や長期的なリハビリに不安や抵抗がある方は、再生医療の一種であるPRP(多血小板血漿)療法という選択肢もあります。 PRP療法は当院「リペアセルクリニック」でも行っています。肉離れの後遺症にお悩みの方はお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 奥脇 透.「1.肉離れの診断と治療」『日本臨床スポーツ医学会誌』24(3), pp.331-333, 2016年 https://www.rinspo.jp/journal/2010/files/24-3/331-333.pdf(最終アクセス:2025年5月19日) (文献2) 日本臨床整形外科学会「【誤った知識】肉ばなれは放っておけば治る」日本臨床整形外科学会ホームページ https://jcoa.gr.jp/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E7%9B%B8%E8%AB%87/%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%81%8F%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%92%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB/%E3%82%88%E3%81%8F%E8%A6%8B%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%8C%E8%AA%A4%E3%81%A3%E3%81%9F%E7%9F%A5%E8%AD%98%E3%80%8D/%E3%80%90%E8%AA%A4%E3%81%A3%E3%81%9F%E7%9F%A5%E8%AD%98%E3%80%91%E8%82%89%E3%81%B0%E3%81%AA%E3%82%8C%E3%81%AF%E6%94%BE%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8A%E3%81%91%E3%81%B0%E6%B2%BB%E3%82%8B/(最終アクセス:2025年5月19日) (文献3) 恩賜財団済生会「筋挫傷(きんざしょう)」恩賜財団済生会ホームページ https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/muscle_strain/(最終アクセス:2025年5月19日) (文献4) 日本スポーツ整形外科学会「3.スポーツ外傷の応急処置(RICE処置の実際)」日本スポーツ整形外科学会ホームページ https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s03.pdf(最終アクセス:2025年5月19日) (文献5) 奥脇 透.「肉離れに関する最新の指針」『日本体育協会スポーツ医・科学研究報告』5, pp.1-29, 2008年 https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/studiesreports/2001_2020/H2005.pdf(最終アクセス:2025年5月19日) (文献6) 日本大学「体感トレーニング~応用編~」日本大学ホームページ https://hp.brs.nihon-u.ac.jp/~NUBScommon/gakuseika/sportZERO/2024_04month.pdf(最終アクセス:2025年5月19日)
2025.05.27 -
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ジャンパー膝の正しい湿布の貼り方がわからない ジャンパー膝は冷やすべきか温めるべきかわからない ジャンパー膝の湿布の貼り方に悩んでいませんか? 湿布は、ジャンパー膝の症状を改善させるのに効果的なものです。しかし湿布の貼り方や、温める方法を間違えると、適切な効果を得られません。 ジャンパー膝の湿布の貼り方 ジャンパー膝の温めるべきケース・冷やすべきケース ジャンパー膝に対する「冷湿布」の効果 ジャンパー膝に対する「温湿布」の効果 ジャンパー膝における湿布以外のセルフケア ジャンパー膝と湿布の貼り方に関するよくある質問 本記事では、症状を悪化させない適切な貼り方や、冷やす・温めるべきケースをわかりやすく解説します。 最後には、ジャンパー膝と湿布の貼り方に関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ最後まで読み進めていただければと思います。 ジャンパー膝の湿布の貼り方 ステップ 内容 目的 1.患部の洗浄と乾燥 膝周囲の皮膚を洗浄し、乾燥させる 汗や汚れを取り除き、湿布の密着を高める 2.湿布に切れ目を入れる 湿布の中央に縦の切れ目を入れる 膝の動きにフィットさせ、剥がれにくくする 3.湿布の貼り付け 違和感のある箇所(膝蓋骨の下部など)に貼る 患部に薬剤を浸透させる 4.固定 テーピングやサポーターで固定する 湿布の剥がれを防ぎ、効果を持続させる ジャンパー膝の湿布は、膝蓋腱の炎症を抑える目的で使用します。貼り方の手順は、患部の洗浄と乾燥→湿布の切れ目入れる→湿布の貼り付け→固定の流れで行います。 湿布を貼る前に、皮膚の汗を拭き取り、清潔にしておきましょう。また、膝は動きが多い部分なので、湿布が剥がれないように工夫する必要があります。 湿布で症状の改善がみられない場合は、医療機関の受診が必要です。 ジャンパー膝は冷やすべき?温めるべき? ジャンパー膝の症状に対して冷やすべきか、症状の種類とその時点での膝の状態によって異なります。 冷やす・温めるタイミングを間違えると、症状が悪化する可能性があるため注意しましょう。 冷湿布などで冷やすべきケース 温湿布などで温めるべきケース 症状や状況別で、解説します。 冷湿布などで冷やすべきケース ケース 理由 使用方法 急性期(発症0~6週) 炎症が進行しやすいため、冷却し、症状の悪化を防ぐ 20分間冷却し、30-40分間休憩を挟みながら繰り返す 運動直後 運動による筋肉の微細損傷を抑え、炎症を最小限に抑える 運動後すぐに冷湿布を適用し、腫れを予防する 腫れや炎症がある場合 血管を収縮させることで、腫れや違和感を抑える 腫れが引くまで定期的に冷やし、違和感が治まるか様子を見る 急激な違和感がある場合 神経の感受性を低下させ、膝への違和感の伝達を遅らせ、症状を和らげる 氷や冷湿布を布で包み、直接皮膚に触れないよう注意する (文献1) 冷湿布で冷やすべきケースは、違和感が顕著に現れて、炎症を起こした段階です。ジャンパー膝の直後は、冷湿布を使用し血管が収縮させることで、炎症の拡大を抑えます。 冷湿布の効果に関する研究では、急性期の違和感に対して冷却療法が推奨されています。(文献1) 違和感が現れた初期の段階では、冷湿布で冷やすようにしましょう。 温湿布などで温めるべきケース ケース 理由 使用方法 慢性期(発症から12週間以上) 血流を促進し、組織の回復を助けるため、慢性的なこわばりや不調に適している 15~20分程度、温湿布や温めたタオルを使用し、血流を促す 運動前のウォームアップ 筋肉の柔軟性を高め、ケガの予防や動きのスムーズさを向上させる 運動開始前に10~15分ほど温めて、筋肉の柔軟性を向上させる 筋肉のこわばりや違和感がある場合 筋肉が硬くなり、動きが制限されるとパフォーマンスが低下するため、温めることで緊張を緩和する 温めながら軽いストレッチを行い、筋肉をほぐすと効果的 冷やしても症状が改善しない場合 冷却しても症状が改善しない場合、血行を促進し、組織の修復を助ける 冷湿布で改善が見られない場合、温湿布を試して様子を見る 慢性期(発症から12週間)の場合は、血流を促進し、組織の回復力を助けるために、温湿布を使用します。 炎症が落ち着き、膝周囲の筋肉が硬くなっている段階では、冷やすよりも温めることで血流が促進され、柔軟性が向上し膝への負荷が軽減されます。 冷やしても症状が改善しない段階で、温湿布の使用を検討しましょう。 ジャンパー膝に対する「冷湿布」の効果 効果 解説 炎症による腫れや熱感を抑える 冷却効果により、血管が収縮し、炎症物質の放出を抑制 違和感を和らげる 冷たさにより神経の伝達速度が遅くなり、違和感を鈍らせる 炎症の拡大を防ぐ 血管収縮により、炎症が周囲に広がるのを防ぐ 筋肉のこわばりを緩める 冷却により筋肉の緊張が緩和され、柔軟性が向上する 冷湿布は、主に急性期の炎症症状に対して有効です。冷湿布の効果について解説します。 炎症による腫れや熱感を抑える 作用 メカニズム 効果 冷却作用 水分蒸発による患部の冷却、血管収縮、血流抑制 腫れ、熱感の軽減 鎮痛作用 メントールなどの成分による感覚神経刺激 違和感の緩和 冷湿布の冷却効果により、血管を収縮させることで、炎症を抑制させます。 冷湿布に含まれるメントールなどの成分は、皮膚の感覚神経を刺激し、鎮痛効果をもたらします。 違和感を和らげる 作用 メカニズム 効果 冷却作用による感覚麻痺 メントールなどが皮膚の温度感覚を鈍らせる 腫れなどの違和感を一時的に軽減 血管収縮による炎症抑制 患部の血管を収縮させ、炎症物質の放出を抑える 炎症が鎮まり、腫れなどの違和感を軽減 冷湿布は、ジャンパー膝で起こる膝への違和感に対して有効です。 とくに冷湿布に含まれるメントールが皮膚の温度感覚を一時的に鈍らせることで、腫れや違和感を軽減します。 炎症の拡大を防ぐ 炎症が起こると、患部の血管が拡張し、血液中の炎症物質が組織内に漏れ出します。冷湿布は炎症物質の拡大を防ぐための手段として有効です。 ただし、冷湿布は初期段階での炎症を防ぐために使われるため、炎症が落ち着いた慢性期には、冷湿布よりも温湿布が適しています。 筋肉のこわばりを緩める ジャンパー膝で起きた筋肉の強張りに対して、冷湿布の冷却は効果的です。患部を冷却すると、血管が収縮し、患部への血流が抑制されます。 また、冷却は神経の伝達速度を遅らせ、膝にかかる違和感を一時的に鈍らせるため、初期段階の対応として有効です。 冷却で筋肉の過剰な収縮を抑制できるものの、冷やしすぎると筋肉が逆にこわばる可能性があります。 冷湿布は、症状の変化を見ながら使用しましょう。 ジャンパー膝に対する「温湿布」の効果 効果 解説 血行を促進させる 温熱効果により血管を拡張させ、血流を促進させる 慢性的な違和感や筋肉のコリを和らげる 温熱効果に柔軟性の向上、筋肉の緊張緩和を促す リラックス効果 違和感の軽減や悪循環を抑える 温湿布は主に慢性期の違和感や筋肉のこわばりを和らげるために使用されます。 ジャンパー膝に対して、温湿布が有効である理由を解説します。 血行を促進させる メカニズム 効果 血管拡張 血流増加、酸素・栄養素の供給促進 血流速度増加 代謝活性化、疲労物質・発痛物質の排出促進 代謝活性化 違和感の軽減、筋肉の緊張緩和 温湿布を使用し、温まった部位が血管を広げ、血流が改善されます。 血流が改善されると、患部に栄養素や酸素が供給されやすくなり、症状の回復を促します。 ジャンパー膝の初期段階での血行促進は、炎症や違和感を悪化させる可能性があるため、温湿布は落ち着いた慢性期に使用しましょう。 慢性的な違和感や筋肉のコリを和らげる メカニズム 効果 血行促進 筋肉の柔軟性向上、疲労物質の排出促進 神経の鎮静化 違和感の緩和 心理的リラックス 筋肉の緊張緩和、違和感の軽減 温湿布は、慢性的な違和感や筋肉のコリを軽減します。注意点としては、低温やけどに注意し、長時間同じ場所に貼り付けないようにしましょう。特に寝る前に貼る場合は注意が必要です。 また、炎症がひどい状態では、症状を悪化させる可能性があるため、温湿布ではなく、冷湿布を使用しましょう。 リラックス効果 メカニズム 効果 筋肉の緊張緩和 違和感や悪循環を抑える ストレス軽減 違和感を和らげる 睡眠の質の向上 疲労回復を促進する (文献2) 温湿布には、ジャンパー膝に有効なリラックス効果があります。 温熱刺激は副交感神経に対してリラックス効果を与え、交感神経の活動を抑制します。 また、リラックス効果によるストレス軽減は、違和感に対してだけでなく、生活や睡眠の質を上げるためにも有効です。 ジャンパー膝における湿布を貼る際の注意点 項目 注意点 貼る前の準備 湿布を貼る前に、肌を清潔に、関節には目を切れさせて密着させる 貼り方 湿布はフィルムを剥がした後、軽く伸ばし、必要に応じてテープやネット包帯で固定する 剥がし方 湿布は体毛の流れに沿ってゆっくり剥がし、剥がした後は、肌を休めるために時間を空ける 使用上の注意 お風呂上りや汗で濡れている場合や、湿疹や発疹がある部位には使用しない その他 膝への違和感が続く場合は、医療機関を受診する 湿布を貼る際は、正しい使い方や、注意点を守ることが大切です。まず、炎症の状態に応じた湿布を選びます。 急性期には炎症を抑える冷湿布、慢性期には血行を促進する温湿布を選びましょう。 湿布を貼る際は、水や汗で皮膚が濡れていないことを確認し、必要に応じてテープやネットを使用します。湿布は、8~12時間を目安に交換しましょう。 湿布を貼り付けた場所にかゆみや発疹が出た際は、すぐに使用を中止します。かゆみや赤み、ジャンパー膝が続く場合は、医療機関を受診しましょう。 ジャンパー膝における湿布以外のセルフケア セルフケア 重要な理由 アイシング 炎症を抑制し、違和感を軽減する ストレッチ 筋肉の柔軟性を高め、膝への負担を軽減する サポーターの活用 膝を安定させ、負担を軽減する 安静にする 炎症の悪化を防ぎ、組織の修復を促す 湿布はジャンパー膝の症状を一時的に緩和するのに役立ちますが、根本的な改善には、ストレッチや安静などのセルフケアが必要です。 ジャンパー膝におけるセルフケアについて解説します。 アイシング 手順 内容 準備 氷や保冷剤を薄いタオルで包む 実施時間 患部に15 ~20分間程度(凍傷にならないよう注意する) 調整 当てる時間を短くする、タオルの厚さを調整する 冷やす頻度 1日に数回、とくに運動後や違和感がある時 (文献3) ジャンパー膝は、膝蓋腱の炎症によって違和感が生じる疾患です。そのため、発症時は、炎症を拡大させないためにアイシングを行います。 アイシングを行う場合の注意点としては、凍傷を防止するために氷や保冷剤を薄いタオルで包み、患部に15〜20分程度冷やします。 冷やす時間はあくまで目安なので、冷たいと感じた場合は、無理をせずに調節しましょう。 ストレッチ ストレッチ 方法 大腿四頭筋(前もも) 立った状態や横向きに寝た状態で、かかとをお尻に近づけるように膝を曲げ、太もも前側を伸ばす ハムストリングス(肉裏) 立った状態や座った状態で、足を伸ばしてつま先を上げ、太ももの裏側を伸ばす 腸腰筋(股関節付け根) 足を前後に開いて立ち、後ろ足の付け根を伸ばす ストレッチは筋肉の柔軟性向上と負担軽減する手段として有効です。ストレッチは、無理のない範囲で行うことが重要です。 運動前後のウォームアップやクールダウンに取り入れることで、筋肉の緊張をほぐし、ジャンパー膝の防止にできます。 ストレッチは自己判断ではなく、医師の指導のもと行いましょう。 以下の記事では、ジャンパー膝に有効な効果的なストレッチ方法を解説しております。 サポーターの活用 効果 詳細 膝蓋腱の負担軽減 サポーターが膝蓋腱周囲を圧迫し、負担を分散 膝の安定性向上 膝のぐらつきを抑え、関節の安定性を高める。衝撃を和らげ、悪化を防ぐ 動きやすさのサポート 膝のサポートにより、正しい動作を維持しやすくなる サポーターを活用し、膝蓋腱の周囲を適度に圧迫します。 また、サポーターには、関節の安定性を高める効果があり、膝への負担を軽減するために役立ちます。 サポーターを選ぶ際は、サイズ・種類・圧迫の強さを考慮し、自身の症状に合ったものを選ぶことが大切です。 サイズが合わない、圧迫が強すぎるまたは弱すぎるなど、自分に合わないサポーターを選んでしまうと、症状が悪化するリスクがあります。 違和感や不快感がある場合は、無理に使用せずに調整や交換を検討しましょう。 以下の記事では、サポーターの注意点を詳しく解説しております。 安静にする ジャンパー膝は、膝蓋腱に何度も負荷がかかることで炎症や腫れを起こします。そのため、発症初期の段階では、安静が大切です。 しかし、一定期間が経過し、安静にしすぎると、筋力低下を引き起こします。その結果、膝蓋腱への負担が再び増加し、再発する可能性があります。 再発しないためにも、安静だけでなく、適度なリハビリやトレーニングで徐々に膝を慣らしていきましょう。 湿布で改善しないジャンパー膝は早めの受診を ジャンパー膝に対する湿布は、膝にかかる違和感や炎症を一時的に抑える応急処置として有効ですが、根本を解決するものではありません。 ジャンパー膝の症状が湿布で改善しない場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 ジャンパー膝の改善が湿布で見込めないと感じた方は当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 再生医療を活用し、膝の違和感や炎症に対して、回復を促します。 湿布で改善しないジャンパー膝でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 ジャンパー膝と湿布の貼り方に関するよくある質問 湿布は1日に何回張り替えれば良いですか? 湿布の貼り替え回数は、湿布の種類によって異なります。1日1回タイプであれば、8〜10時間程度効果が持続します。 1日2回タイプの湿布の場合の効果持続は、4〜6時間程度です。(文献3) 湿布を貼ったまま運動しても大丈夫ですか? 運動によって湿布がずれたり汚れたりする場合があるため、運動後は患部を確認して新しい湿布に貼り替えるようにしましょう。 湿布とサポーターは併用できますか? 湿布とサポーターは併用できます。併用する際は、皮膚に炎症や圧迫に気をつけ、違和感を感じたら使用を中止しましょう。 湿布は寝るときに貼っても良いですか? 注意するべき点はありますが、基本的に問題ありません。湿布を使用する前に、製品の取扱説明書をよく読み、皮膚のかぶれや湿疹に注意しましょう。 皮膚に異常が現れるようであれば、就寝時は湿布を剥がすなど、工夫する必要があります。 湿布を貼るのと飲み薬(鎮痛剤)ではどちらが効果的ですか? どちらが効果的かは症状や状況によって異なります。症状が軽度であれば、湿布で十分な効果が得られる場合があります。 湿布で症状の改善が見込めない場合は、飲み薬(鎮痛剤)の服用を検討しましょう。 湿布や飲み薬を使用する際は、説明書をよく読み、用法・用量を守り、自己判断はせず、医師や薬剤師の指示に従いましょう。 参考文献 (文献1) 綾田 練ほか,「ジャンパー膝に対する運動後のアイシングの効果」『体力科学(2007)』pp.1-6, (2007) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/56/1/56_1_125/_pdf(最終アクセス:2025年3月15日) (文献2) 2008年から2019年に発表された温罨法に関する国内文献の検討 武田七海ほか,「〈総説〉2008年から2019年に発表された温罨法に関する国内文献の検討」pp.1-9, 2008年 https://www.thcu.ac.jp/research/pdf/bulletin/bulletin17_09.pdf(最終アクセス:2025年3月15日) (文献3) 宮川,羽毛田「薬の伝言版 湿布薬の使い方」, pp.1-2, 2024年 (最終アクセス:2025年3月15日)
2025.03.31 -
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ふくらはぎに違和感を感じる ふくらはぎが赤く腫れ上がっている 運動中に突然、肉離れを起こしたかもと不安に感じているかもしれません。 ふくらはぎの違和感や、腫れ上がりを放置すると重症化する恐れがあります。 突然の肉離れにどうすれば良いのか焦りを感じている方もいれば、違和感はあるものの、歩けるから問題ないと思っている方もいることでしょう。 この記事では、ふくらはぎの肉離れについて解説します。 肉離れ(ふくらはぎ)の症状 ふくらはぎの肉離れの原因 肉離れ(ふくらはぎ)の前兆 ふくらはぎの肉離れは歩ける場合でも油断してはいけない理由 ふくらはぎの肉離れを起こしたときの対策 歩けるからといって油断は禁物です。正しい知識を身につけることで、ふくらはぎの肉離れに対し、適切な対応ができるようになります。 肉離れ(ふくらはぎ)の症状 分類 症状 Ⅰ度(軽度) アキレス腱ストレッチで若干の違和感がある Ⅱ度(中度) アキレス腱ストレッチで強い違和感があるものの、膝を曲げた状態で行うと違和感は弱まり、つま先立ちができる Ⅲ度(重度) アキレス腱ストレッチで、膝を曲げた状態でも軽く伸ばしただけで強い違和感があり、つま先立ちが困難 肉離れは筋肉が急激に引き伸ばされることで、筋繊維が切れて起こる症状です。症状としては熱感、炎症性の違和感、腫脹、皮下出血が起こります。 また、肉離れ(ふくらはぎ)を引き起こした瞬間に「プチッ」といった音が聞こえるのも特徴です。 肉離れ(ふくらはぎ)の症状は表のⅠ度(軽度)〜Ⅲ度(重度)で分類されます。 症状がもっとも軽いⅠ度(軽度)であれば、自力で歩行でき、若干の違和感がありつつもアキレス腱ストレッチも行えます。 しかし、Ⅲ度(重度)になると、アキレス腱ストレッチが難しい状態になり、自力での歩行が難しい状態です。 以下の記事では、肉離れについて現役医師が詳しく解説しています。 ふくらはぎの肉離れの原因 ふくらはぎの肉離れの原因としては、急激な筋肉の収縮や準備運動不足など、運動中に引き起こされることが多いです。 運動以外では、加齢や筋肉疲労などで引き起こされるケースも存在します。 ふくらはぎの肉離れの原因を詳しく解説します。 急激な筋肉の収縮と伸張 急激な筋肉の収縮と伸張でふくらはぎに負担がかかることで、肉離れが起こります。 原因としては、運動中に急なダッシュやジャンプ、方向転換など脚の筋肉に急激な負荷がかかるためです。 とくに運動前に十分なウォーミングアップを怠ると、筋肉が柔軟になっていない状態で筋肉の収縮と伸張が起こるため、肉離れを引き起こしやすくなります。 筋肉の疲労 筋肉疲労による影響 肉離れのリスク 筋肉の柔軟性低下 筋肉が硬くなり、急な動きに耐えられず損傷しやすい 筋力低下 筋肉が正常な動作を維持できず、損傷しやすい 運動制御の乱れ 筋肉の協調性低下、不自然な動作やバランスの乱れで損傷しやすい 筋肉疲労はさまざまな要因で引き起こされます。疲労を抱えたまま、筋肉に負担を与え続けるのは危険です。 ふくらはぎの筋肉に対して、オーバーユース(使いすぎ)や十分な休息を与えていないことが重なることで筋繊維が切れ、肉離れが起こります。 筋肉疲労を引き起こさないためには、運動後に軽いストレッチや、クールダウンを習慣化するのが大切です。 また、脚に少しでも違和感を感じた場合は運動を中断し、アイシングなどで対策しましょう。 準備運動不足 準備運動の役割 効果 筋肉の温度上昇 筋肉の柔軟性が高まり、収縮と伸張がスムーズになり、急激な動作への耐性が向上し、肉離れのリスクが低下 関節の可動域拡大 関節の可動域が広がり、動作範囲が広がることで筋肉への負担が分散され、肉離れのリスクを軽減 神経の活性化 神経系が活性化し、筋肉の協調性が高まることで動作がスムーズになり、筋肉への負担が軽減 準備運動を十分に行わず、急な走り込みや脚の使い込みも肉離れを引き起こす原因になります。 準備運動は筋肉や関節を温め、柔軟性を向上させてくれますが、準備運動が十分に行われていない場合、筋肉に過度な負担がかかりやすくなり、肉離れを起こすリスクが高くなります。 普段運動が習慣化されていない人は、筋肉が硬直しやすいので、入念な準備運動を心がけることが大切です。 加齢 加齢によって筋肉の力が弱まり、柔軟性が失われることで、肉離れ(ふくらはぎ)を引き起こす原因になります。 また、加齢によって血管が硬くなり、筋肉への血液を流す力も減少し、筋肉への酸素や栄養の供給が滞り、修復機能が低下します。 加齢による筋肉量の減少を予防するには、無理のないトレーニングや軽い運動の習慣化が大切です。 症状の再発 肉離れ(ふくらはぎ)は過去に経験歴があると、再発しやすい症状です。 再発の理由としては、損傷した筋繊維は瘢痕組織(はんこんそしき)と呼ばれる硬い組織に置き変わります。 硬い組織に置き換えることで、柔軟性や伸縮性が低くなり、再発しやすくなります。 再発を防ぐために正しいフォームなどを意識し、負担が偏らないようにしましょう。 肉離れ(ふくらはぎ)の前兆 肉離れ(ふくらはぎ)には前兆があります。 筋肉の違和感や張り感 筋肉の疲労感 筋肉の痙攣 肉離れの前兆を解説します。 筋肉の違和感や張り感 ふくらはぎの肉離れは運動中に負荷がかかり、発症するケースが多いです。しかし、前兆として普段とは違うふくらはぎに違和感や張りを感じることがあります。 筋肉に普段感じない違和感や張り感が現れた場合は運動を中止し、安静やアイシングを行います。 また、症状が改善せずに悪化するようであれば、医療機関を受診しましょう。 筋肉の疲労感 ふくらはぎの肉離れの前兆として、筋肉の疲労感が挙げられます。筋肉疲労は筋肉が悲鳴を挙げており、柔軟性や強度が低下してる状態です。 筋肉の疲労感を無視して運動を行うと、肉離れを起こすリスクがあります。 いつもより筋肉にだるさを感じる場合は、無理な運動はせずに安静や軽いストレッチを行いましょう。 また、筋肉を温められる入浴なども有効です。筋肉の疲労感が数日続くようであれば、医療機関の受診をおすすめします。 筋肉の痙攣 痙攣は筋肉が異常な収縮を起こしている状態です。筋肉の痙攣が起きている状態は、ミネラルバランスの乱れや筋肉疲労を起こしているサインです。 筋肉の痙攣が起きた場合は、すぐに運動を中止し、適切な休息や水分補給などを行い、筋肉の状態を正常に戻すことが最優先です。 痙攣の症状が頻繁に起こる場合は、医療機関を受診しましょう。 ふくらはぎの肉離れは歩ける場合でも油断は禁物です! ふくらはぎの肉離れの症状が軽度であれば、歩ける場合があります。しかし歩けるからといって油断は禁物です。 ふくらはぎの肉離れは、適切な治療を怠ると以下のリスクがあります。 放置すると重症化するリスク 症状が良くなるまでに時間がかかる 内出血や腫れが遅れて現れることがある 起こりうるリスクについて解説します。 放置すると重症化するリスク ふくらはぎの肉離れは、歩行可能な状態でも放置すると重症化するリスクがあります。 適切な処置や治療が遅れると後遺症として、筋肉の修復が不完全になり、慢性的な違和感や機能障害が残る可能性が高いです。 また不完全な修復は、筋肉の微弱性を高めるため、再発のリスクがあります。 軽度でも自己判断はせず、応急処置を行い、医療機関を受診しましょう。 症状が良くなるまでに時間がかかる ふくらはぎの肉離れは、軽度の症状でも初期段階で適切な対応を怠れば、症状がよくなるまでに時間がかかります。 損傷した筋繊維は、瘢痕組織(はんこんそしき)と呼ばれる硬い組織に置き変わるため、伸展性や収縮性が低下します。 そのため、負荷のかかる動きには耐えにくい組織に切り替わるので、再発しないよう注意が必要です。 自己判断はせず、医師の指示に従い適切な治療を受けることで、早期回復につながります。 内出血や腫れが遅れて現れることがある 肉離れの症状は個人差も大きく、内出血や腫れが出るタイミングも人それぞれであり、遅れて症状が現れた場合でも、自己判断は禁物です。 内出血や腫れが遅れて出る理由は、組織損傷後の炎症反応が時間をかけて進行するためです。 進行のスピードは人それぞれであり、肉離れを起こした時点で内出血や腫れが現れる人もいれば、遅れて症状が出る人もいます。 歩けるからといって無理すると、後から内出血や腫れの症状がでる可能性があるため、早い段階での適切な対応が大切です。 ふくらはぎの肉離れを起こしたときの対策 ふくらはぎの肉離れを起こしたときは、焦らずに対策しましょう。 安静にする 応急処置を行う 適切なリハビリを行う 症状の再発を防止する 再生医療(PRP療法) ふくらはぎの肉離れを起こしたときの対策を解説します。 安静にする ふくらはぎの肉離れを起こした場合は、安静にしましょう。肉離れを起こしたときはすぐに運動を中止し、必要に応じて冷却などを行います。 RICE処置(安静(Rest)・冷却(Ice)・圧迫(Compression)・患部を心臓より上に上げる(Elevation))の流れの1つであり、一時的な処置として効果的な手法です。 発症してから数日間は受傷部を保護する必要があるので、おおよそ3〜5日は安静にする必要があります。 安静期間は症状の程度によって異なるため、自己判断はせず医師の指示に従いましょう。 応急処置を行う 処置 詳細 目的 安静 (Rest) 患部を動かさない 症状の悪化を防ぐ 冷却 (Ice) 保冷剤をタオルで包み15~20分冷やす(1日数回) 腫れと炎症を抑える 圧迫(Compression) 包帯などで患部を圧迫 内出血と腫れを抑える 挙上(Elevation) 患部を心臓より高い位置に 腫れを軽減する ふくらはぎの肉離れが起きたときに有効なのが、RICE処置:安静(Rest)・冷却(Ice)・圧迫(Compression)・挙上(Elevation)です。 肉離れを起こした初期の段階ではRICE処置が有効であり、とくに安静(Rest)と冷却 (Ice)が大切です。 冷却 (Ice)を行う際は、冷やしすぎると凍傷になる可能性があります。保冷剤をタオルなどで包み、数秒に一回は肌から離すなど工夫しましょう。 また、圧迫 (Compression)も力任せではなく、加減を調整しながら行います。圧迫時にしびれや変色を起こした際はすぐに緩めることが大切です。 あくまでも応急処置のため、症状が改善しない場合は医療機関への受診が必要です。 適切なリハビリを行う 内容 目的 効果 瘢痕組織の改善 柔軟性向上 正常な筋肉に近づける 筋力と柔軟性の回復 機能回復 日常生活・運動への復帰 筋力バランスの調整 バランス改善 再発リスク軽減 再発防止 筋肉の状態回復 運動再開を目指す 安静にすると同時に適切なリハビリが大切です。リハビリでは、瘢痕組織の改善や筋力バランスの調整を行い、症状の改善を目指していきます。 リハビリは自己判断ではなく医師指導のもと、無理のない範囲で行うのが大切です。 症状の再発を防止する ふくらはぎの肉離れは再発の可能性が高いので、再発を防止する必要があります。 再発を防ぐには適切なリハビリや休息、食生活のバランスが大切です。 筋肉の修復を考え、無理な運動は控え、食事はタンパク質(鶏肉・魚・卵・豆類・ナッツ・乳製品など)や、ビタミンC、ビタミンE、オメガ3脂肪酸などを含む食事を中心に行いましょう。 肉離れはクセになりやすい症状なので、油断は禁物です。 再生医療(PRP療法) ふくらはぎの肉離れに対して、PRP療法(多血小板血漿療法)は有効な手段です。 PRP療法(多血小板血漿療法)は、患者様自身から採取した血液から、多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma:PRP)を抽出します。 抽出した多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma:PRP)を肉離れで起きた損傷部位に注射し、症状改善を目指します。 手術を必要としない上に副作用のリスクもほとんどありません。最短30分で施術が完了します。 短い時間で対応かつ通院だけで行えるため、スポーツ選手にも効果的な療法です。 以下の記事では再生医療(PRP療法)について、詳しく解説しています。 ふくらはぎに肉離れの疑いを感じたら医療機関を受診しよう ふくらはぎに肉離れの疑いを感じたら、自己判断はせず医療機関を受診しましょう。 症状が軽いと歩ける場合もありますが、放置してしまうと症状が悪化し、後遺症が出る可能性があります。 ふくらはぎの肉離れを重症化させないためにも応急処置は適切に行い、軽度だったとしても、医療機関で診察を受けることが大切です。 肉離れの症状が辛い方は当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。再生医療で組織の修復をサポートします。 ふくらはぎの肉離れでお悩みの方は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。
2025.03.31 -
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「すねが痛くシンスプリントかもしれない」「シンスプリントの代表的な症状を知りたい」 上記のように、すねに痛みを抱えており、シンスプリントを疑っている方もいるでしょう。 シンスプリントとは、すねの内側に痛みが生じるスポーツ障害の一種です。ジャンプをしたり、走ったりなど脚に負荷がかかるスポーツをしている方に多く見られます。 本記事では、シンスプリントの症状チェックリストを紹介します。シンスプリントの原因や、診断方法も解説しているので、すねの痛みに悩んでいる方は、ぜひご覧ください。 シンスプリントの症状チェックリスト シンスプリントは、すねの内側で主に下部1/3くらいに痛みが生じます。シンスプリントの主な症状は、以下の通りです。 ジャンプやダッシュする際に痛みが生じる 運動後、安静にしていても痛い すねの下の方の内側を押すと痛い シンスプリントの初期段階では、痛みだけでなく不快感が生じるケースもあります。痛みや不快感は持続せず、運動中は気にならないのが特徴です。 次第に運動中や安静時も痛みが生じ、最終的には、歩行困難になるケースもあります。 上記で紹介したチェックリストに当てはまる方は、一過性の痛みだと判断せず、速やかに医療機関を受診するのがおすすめです。 シンスプリントの症状による4つの分類 シンスプリントは、以下を参考に自身の進行状態をチェックしましょう。ただし、個人差があるため医療機関での正確な診断が重要です。 ステージ1 シンスプリントのステージ1は、運動後のみ痛みが生じる初期段階です。 運動中や安静時に痛みはないため、日常生活への問題はありません。たとえ痛みが生じたとしても軽度であり、軽い運動によって治まります。 ステージ2 ステージ2は、運動前後に痛みが生じ始めます。 ウォーミングアップ時に痛みが生じたとしても、体が温まってくれば痛みは治まるのが特徴です。運動後も痛みが生じますが、運動中は問題ありません。 ステージ3 運動前後だけでなく、運動中に痛みが生じ始めるのがステージ3です。 運動中も痛みが生じるため、競技によってはプレーに支障を与える可能性もあります。 ステージ3になると、痛みが顕著になり悪化するため、早い段階で医療機関を受診しなくてはなりません。 ステージ4 ステージ4は、シンスプリントによる痛みが常に生じる状態です。 運動中だけでなく日常生活でも痛みが続くため、日常生活にも支障が出ます。ステージ4になると、疲労骨折の疑いも考えられます。 症状から間違えやすい|シンスプリントと疲労骨折の見分け方 シンスプリントと疲労骨折の症状は似ており、間違えてしまいがちな疾患です。 シンスプリントが悪化していると考えていたら、疲労骨折で長期間スポーツができなくなるケースもあるため、注意が必要です。 シンスプリントと疲労骨折の見分け方を以下にまとめました。 シンスプリント 疲労骨折 痛みが生じる部位 ・10cm程度で広い ・5cm以下で狭い 痛みの特徴 ・鈍痛 ・鋭い痛み 痛みが生じるタイミング ・初期段階で安静時に生じるケースは少ない ・安静時にも痛みが生じる 腫れ ・広範囲に軽微な腫れや熱感が生じる ・局所的に腫れる シンスプリントは、痛みが生じる部位が10cm程度と広いのが特徴です。 疲労骨折は、5cm以下とピンポイントで鋭い痛みが生じます。腫れが見られたり、安静時にも痛みが生じたりする場合は、疲労骨折の可能性も考えられます。 ただし、症状に当てはまるからといって、必ずしも疲労骨折だとは言い切れません。 シンスプリントや疲労骨折は、人によって症状が異なるためです。症状に当てはまる方は、一度医療機関を受診して診断してもらいましょう。 シンスプリントの原因 シンスプリントの原因は、脚の筋肉に過度な負荷がかかっていたり、シューズや練習環境に問題があったりなどさまざまです。 シンスプリントを改善・再発防止するには、原因を取り除かなくてはなりません。 ここからは、シンスプリントの原因を3つ紹介します。 筋肉に過度な負荷がかかっている ジャンプやランニングで脚の筋肉に過度な負荷がかかっていたり、無理なトレーニングを続けていたりすると、シンスプリントを起こしやすくなります。 すねに付着している「ヒラメ筋」や「後脛骨筋」などに過度な負荷がかかると、筋肉が炎症を起こすためです。筋肉疲労による炎症を防ぐには、過度な負荷がかからないよう、トレーニング量を調整しましょう。 トレーニングをしていない時期があったり、怪我から復帰したりする際は、過度な負荷を与えると筋肉が炎症を起こしやすい傾向にあります。 休息期間があった際は、低負荷からはじめ、徐々に通常トレーニングに戻すよう意識しましょう。 扁平足やO脚など脚の形に問題がある 扁平足やO脚など脚の形に問題があるケースも、シンスプリントの原因になります。 扁平足とは、足の裏のアーチ(土踏まず)がない足の形を指します。 土踏まずは、着地による衝撃を和らげるのが主な役割です。土踏まずがないと、地面からの衝撃がダイレクトに伝わり、シンスプリントになりやすくなります。 さらに、O脚やX脚など脚の形に問題がある方も注意が必要です。膝が内側や外側に湾曲していると、歩いたり走ったりする際に、すねの負担が大きくなるためです。 扁平足やO脚など脚の形に問題がある方は、医療機関や整骨院などで脚の形を矯正して、シンスプリントを予防しましょう。 シューズや練習環境が悪い シンスプリントの原因は、シューズや練習環境が悪いケースもあります。 靴底が薄かったり、かかとが削れていたりするシューズでスポーツをすると、脚に負担がかかりやすくなります。 靴底が薄いと、踏み込んだ際の体重によって、足裏のアーチが崩れやすくなるため、注意しましょう。足裏のアーチが崩れると、シンスプリントの原因になりやすい扁平足を引き起こしやすくなります。 また、シューズのかかとが削れていると、削れている方向にすねが倒れやすくなります。片方のすねが倒れると、筋肉が異常に緊張してしまい、シンスプリントを引き起こす原因になりかねません。 シンスプリントを防ぐためにも、シューズや練習環境も意識しましょう。 シンスプリントの症状を悪化させないための方法 シンスプリントの症状を悪化させないためには、安静に過ごすことが大切です。 「すぐに治るだろう」と考え、トレーニングを続けると「オーバーユース(使いすぎ)」につながり、悪化させる恐れがあります。 ここからは、シンスプリントの症状を悪化させないための方法を2つ紹介します。 安静にする シンスプリントによる痛みがある場合は、練習は控え安静に過ごしましょう。 痛みを我慢してトレーニングを続けていると、悪化するリスクがあります。安静期間は個人差があるものの、3〜5週間が目安です。 安静時にも痛みが生じる場合は、湿布や鎮痛消炎剤などを使うのもおすすめです。 ただし、湿布や鎮痛消炎剤は、一時的に痛みが治まるものの、根本的な改善にはつながらない可能性があります。「治った」と自己判断せず、一度医療機関を受診しましょう。 アイシングをする 運動後にシンスプリントの痛みが生じている場合は、アイシングが効果的です。 すね周辺の炎症を起こしている部位を冷やすと、痛みが緩和されます。一時的な効果ですが、練習後に痛みが治まらない場合はコールドスプレーや保冷剤を用いて、痛みがある部分を冷やしましょう。 シンスプリントの診断方法 シンスプリントの診断方法は、レントゲン検査や疼痛誘発検査などいくつかの方法があげられます。 場合によっては、複数の検査を組み合わせてシンスプリントを診断するケースもあります。 ここからは、シンスプリントの代表的な診断方法を4つ見ていきましょう。 レントゲン検査 シンスプリントの診断方法に、レントゲン検査があげられます。シンスプリントは、骨膜に炎症を起こす障害のため、レントゲンには写りません。 レントゲン検査をする場合は、シンスプリントが悪化し、骨に支障をきたしているケースに行われます。骨に影響をきたしていると、該当部分が白くレントゲン写真に写ります。 ただし、疲労骨折の初期段階ではレントゲン写真に写らないため、MRI検査が行われる可能性がある点に留意しておきましょう。 疼痛誘発検査 疼痛誘発検査とは、シンスプリントによる炎症が起きている部分を押して症状を確認する検査方法です。 シンスプリントの痛みは「脛骨(けいこつ)」と呼ばれるすねの骨の内側、特に下部1/3付近に生じるのが特徴です。 疲労骨折は、痛みの生じる部位が局所的なため、疼痛誘発検査で判断しやすい傾向にあります。 痛みが局所的な場合は、MRI検査やレントゲンを用いて、疲労骨折の可能性をチェックするのが一般的です。 超音波検査 超音波検査とは、痛みが生じる部分に超音波をあて、脛骨周囲の骨膜が腫れているかを確認する検査方法です。骨膜の腫れ具合や症状を確認し、シンスプリントかを判断します。 超音波検査は、動的な症状の確認が可能なため、検査時の組織状態や、治療後の変化を観察するのに有効です。 MRI検査 シンスプリントの診断では、MRI検査を用いるケースもあります。 MRI検査とは、強い磁石と電磁波を使って体の断面図を写し出す検査方法です。とくにシンスプリントでは、疲労骨折と見分ける際にMRI検査が行われます。 疲労骨折と区別する際には「T2脂肪抑制」と呼ばれる特殊な撮影方法が採用されます。 シンスプリントの治療法 シンスプリントを改善するには、適切な治療を受ける必要があります。 リハビリテーションや薬物療法による治療が一般的です。よほど慢性化していない限り、手術療法が選択されるケースは少ない傾向にあります。 ここからは、シンスプリントの治療法を4つ紹介します。 リハビリテーション シンスプリントの代表的な治療法が、リハビリテーションです。 シンスプリントの原因となるふくらはぎの硬さや筋力不足などを探り、筋力トレーニングやストレッチなど1人ひとりに合った方法でアプローチします。下腿(かたい)の後脛骨筋、長趾屈筋、ヒラメ筋などの筋肉のストレッチや、足関節の可動域訓練が行われることが多いです。 脚の形や筋力不足だけでなく、全身の筋力バランスや機能の偏りがシンスプリントの原因となるケースもあるため、リハビリテーションで全身のコンディションをチェックします。 必要に応じて、テーピングで患部の負担を軽減したり、電気療法や超音波治療などの物理療法を取り入れたりするケースも少なくありません。 薬物治療 シンスプリントの炎症によって、痛みが生じている場合は、薬物療法が行われます。 医療機関では、痛み緩和を期待できる「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」が処方されるケースが多い傾向にあります。 ただし、非ステロイド性抗炎症薬は、副作用が生じるリスクもあるため、医師指導のもと用法用量を守って使用するのが大切です。 痛み止めは、症状を一時的に緩和する効果は期待できますが、根本的な改善にはつながりません。 薬物療法によって治ったと勘違いし、激しい運動をしてしまうと、シンスプリントが悪化したり再発したりするリスクもあるため、注意が必要です。 装具療法 装具療法は、1人ひとりの足に合ったインソールを作成し、運動時の衝撃や痛みを軽減させる治療法です。足の形に合ったインソールをシューズに入れると、土踏まずの機能を補正できます。 痛みが強い場合は、足裏に加わる衝撃を軽減するため、クッション性の高いインソールを入れて衝撃を吸収します。 またシンスプリント専用のサポーターはありませんが、必要に応じて足関節にサポーターを巻いてサポートするケースもあり、装具療法もさまざまです。 再生医療 シンスプリントは、再生医療で痛みの改善を期待できる可能性もあります。再生医療は、幹細胞治療やPRP治療などが代表的です。 従来の薬物療法や装具療法で効果を期待できなかった方は、再生医療で改善を目指せるケースもあります。 リペアセルクリニックでは、再生医療を提供しています。従来の治療法で改善が見られなかった方は、再生医療を検討するのもおすすめです。 またリペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。 シンスプリントの治療後スポーツ復帰にはどのくらい時間がかかる? シンスプリントの治療後、スポーツ復帰は、初期であれば2週間程度休んでから復帰しましょう。重症だと2〜3カ月程度休んでから復帰するのがおすすめです。 ただし、一定期間安静にしたからといって、すぐに激しい運動をするのは控えましょう。運動していない状態から負荷がかかると、シンスプリントが再発するリスクが高まるためです。 スポーツ復帰後は、ウォーキングやジョギングなど軽い運動からはじめ、徐々にジャンプやランニングをはじめましょう。段階的に負荷をあげてから復帰すると、再発リスクを軽減できます。 また状態によっては目安の期間よりも復帰時期が、早くなったり遅くなったりする可能性があります。 医師指導のもと、復帰時期や運動量を調整しましょう。 まとめ|シンスプリントの症状に当てはまる方は医療機関を受診しよう シンスプリントの初期段階では、運動後に痛みや違和感が生じます。 悪化すると、運動中や日常生活でも痛みが生じるため、シンスプリントの症状に当てはまる方は、速やかに医療機関を受診しましょう。 また、シンスプリントの診断方法は、レントゲン検査や疼痛誘発検査などがあげられます。シンスプリントと間違えやすい疲労骨折の可能性を判断するため、MRI検査が用いられるケースもあります。 シンスプリントの悪化を防ぐためにも、早い段階で医療機関を受診し、治療を開始しましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。お気軽にお問い合わせください。
2025.03.01 -
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「シンスプリントが治らない」「シンスプリントが治らない原因が知りたい」 上記のように、シンスプリントが治らないと悩んでいる方もいるでしょう。 シンスプリントは、ふくらはぎの筋力が弱かったり、脚に負荷がかかりすぎていたりすると思うように治らない可能性があります。 治らないまま放置していると、症状が慢性化するケースもあるため、治らない原因を突き止めて改善するのが大切です。 本記事では、シンスプリントが治らない原因を紹介します。治らない場合の対処法や治療法も解説しているので「シンスプリントが治らない」と悩んでいる方は、ぜひご覧ください。 シンスプリントが治らない原因とは? シンスプリントが治らない原因は、脚に負荷がかかりすぎていたり、脚の筋肉が弱かったりする点があげられます。十分な休息を取れていないと、症状が治らないケースも少なくありません。 ここからは、シンスプリントが治らない原因を5つ紹介します。 脚に負荷がかかりすぎている シンスプリントが治らない原因として、脚に負荷がかかりすぎている点があげられます。 シンスプリントは、すねにある脛骨(けいこつ)と呼ばれる骨膜(こつまく)が炎症を起こし、発症する障害です。 そのため、脚に過度な負荷がかかる動作を続けていると、骨膜の炎症が治りづらくなります。 とくに、ランニングやマラソンなど走る動作の多いスポーツをする方は、脚に大きな負担がかかるため、注意が必要です。 休息を取っていたり、運動しない時期が続いていたりすると、低負荷でも脚にとっては大きな負荷となる可能性もあります。運動していない時期が続いていた場合は、徐々に運動量を増やすよう意識しましょう。 ふくらはぎの筋肉が硬くなっている ふくらはぎの筋肉が硬くなっている方も、シンスプリントが治らない可能性があります。ふくらはぎが硬いと、骨に付着している骨膜が引っ張られやすく、炎症を起こしやすくなります。 さらに、ふくらはぎの筋肉が硬いと、足首関節の柔軟性が失われやすい点も治らない原因です。 足首の関節が硬いと、体の重心を前方に上手く移動できず、着地のときにしゃがむ動作がしにくくなります。その結果、脛骨や筋肉に大きな負荷がかかり、シンスプリントが治りにくくなります。 脚の筋肉が弱い 脚の筋肉不足もシンスプリントが治らない原因の1つです。脚の筋肉が弱いと、運動動作による衝撃によって、すねに負担がかかりやすくなります。 怪我によって筋力が落ちている状態から負荷の強い動作をすると、シンスプリントが治らない・再発しやすいため注意しましょう。 十分な休息を取れていない シンスプリントが治らない原因は、十分な休息を取れていない点もあげられます。 スポーツ後に、ストレッチやマッサージで筋肉を休めていないと、筋肉が硬くなりやすくなります。 ジャンプをしたり、ランニングをしたりなど脚に過度な負荷がかかった後は、ストレッチやマッサージで疲労を軽減させましょう。ストレッチやマッサージは、ふくらはぎの柔軟性を高める効果も期待できます。 治療方法が間違っている シンスプリントの治療を受けても治らない場合は、治療方法が間違っている可能性もあります。 シンスプリントの治療方法は、リハビリテーションや薬物療法などいくつかの方法があります。 症状や体質によって合った治療方法は異なるため、他の治療を試すと症状が改善するケースも少なくありません。 治らないままシンスプリントを放置しているとどうなる? シンスプリントが治らないまま放置していると、慢性化したり、骨折につながったりするリスクがあります。「痛みはあるけれど運動はできる」「時間が経てば治るのでは」と考えている方は、注意が必要です。 シンスプリントが治らないまま放置するリスクを2つ紹介します。 症状が慢性化してしまう シンスプリントが治らないまま放置していると、症状が慢性化する可能性があります。 シンスプリントが慢性化すると、すね周辺に普段は見られない血管が作られます。新たな血管と神経が一緒になると、シンスプリントによる痛みは治りにくくなるため、注意が必要です。 慢性化したシンスプリントは、痛みの原因となっている血管と神経にアプローチしないと、根本的な改善は期待できません。 骨折につながる シンスプリントを放置していると、疲労骨折につながる恐れもあります。 疲労骨折とは、骨に小さな負荷が加わり続ける影響で発生する骨折です。慢性的なスポーツ障害であり、ランニングやジャンプをするスポーツ選手に多く見られます。 疲労骨折は、痛みがあっても運動を続けられるケースが多い傾向にあります。その結果、気付いたらシンスプリントが疲労骨折になっている可能性もあるため、注意が必要です。 治らないシンスプリントは疲労骨折かもしれません! 「なかなかシンスプリントが治らない」と悩んでいる方は、疲労骨折の可能性も考えられます。疲労骨折は、痛みがあっても運動を続けられるケースが多いため、自分自身で判断するのは難しいのが特徴です。 ここからは、治らないシンスプリントと疲労骨折の違いを紹介します。 ダメージを受ける部位 シンスプリントは、すねの内側にある筋肉や骨膜がダメージを受け、炎症を起こす障害です。筋肉や骨膜がダメージを受けるものの、骨にダメージは加わりません。 一方で疲労骨折は、骨に小さなダメージが加わり続ける影響で、徐々にヒビが入る骨折です。名前の通り、骨にヒビが入る点がシンスプリントとの大きな違いです。 シンスプリントと疲労骨折は、すね周辺に痛みが生じる点は共通していますが、ダメージを受ける部分が異なる点を理解しておきましょう。 痛みや腫れ シンスプリントと疲労骨折は、痛みや腫れの度合い、生じる範囲などが異なります。それぞれの違いを見てみましょう。 痛み 腫れ 症状が出る範囲 シンスプリント ・鈍痛 ・徐々に痛みが強くなる ・腫れは軽度で広範囲に出ることがある ・10cmと範囲が広い 疲労骨折 ・鋭い痛み ・急に痛みが現れる ・骨折部位に腫れが出る ・5cm以下と範囲が狭い シンスプリントと疲労骨折を比較すると、症状は疲労骨折の方が強く出る傾向にあります。とくに、運動時にピンポイントで痛みが生じる場合は、疲労骨折が疑われます。 ただし、自分自身で症状を判断するのは難しく、症状に当てはまるからといって必ずしも疲労骨折だとは言い切れません。痛みや腫れなどの症状に当てはまる方は、悪化する前に医療機関を受診しましょう。 シンスプリントが治らない場合の対処法 シンスプリントが治らない場合は、シューズやインソールを変えたり、トレーニング計画を見直したりするのがおすすめです。 長引く症状を放置すると、疲労骨折のリスクもあるため、自分に合った対処法を見つけましょう。 ここからは、シンスプリントが治らない場合の対処法を4つ紹介します。 シューズやインソールを変える シンスプリントが治らない場合は、運動時に使用しているシューズやインソールを変えてみましょう。 靴底がすり減ったシューズや、クッション性の低いインソールを使用していると、足に衝撃が加わりやすくなります。 歪みや痛みの原因にもなるため、以下のようなシューズやインソールで脚への負担を軽減しましょう。 靴底が厚いシューズ 横幅が広いシューズ 靴底がカーブしているシューズ 土踏まずをサポートしてくれるインソール クッション性が高いシューズは、足の土踏まずにかかる負担を軽減してくれます。すねが内側に倒れるリスクも低減できるため、運動時の安定性が向上します。 メーカーによってサイズや履き心地の良さは異なるため、店舗で試し履きをして自分の足にあっているかを確認しましょう。 運動時のフォームを改善する 運動時のフォームを改善するのも、シンスプリントが治らない際の対処法としておすすめです。 不適切な運動フォームは、ふくらはぎをはじめ、体に負荷がかかりやすくなります。スポーツによって正しいフォームは異なるため、一度見直してみましょう。 多くのスポーツで共通する動作として、ランニングがあげられます。正しいランニングフォームのポイントは以下の通りです。 頭を真っ直ぐに保つ 体幹を意識して背筋を伸ばす 肩の力を抜く 腕は体の横で曲げて前後に振る 一度にすべてを完璧に行うのは難しいため、少しずつ正しいフォームを身に着けましょう。 適切な筋力トレーニングやストレッチを行う 適切な筋力トレーニングやストレッチを行うことも大切です。シンスプリントは、ふくらはぎの筋肉や足首関節が硬いと治りにくくなります。 とくに、ヒラメ筋や後脛骨筋などのふくらはぎのストレッチは、シンスプリントの痛みを軽減する効果が期待できます。 アキレス腱ストレッチのように、足を前後に開き、ふくらはぎの筋肉を伸ばしましょう。ゆっくりと30秒程度かけて伸ばすのがポイントです。 後ろに伸ばした脚の膝を伸ばしてしまうと、ストレッチ効果を期待できないため、必ず曲げた状態で行いましょう。 また反動をつけてストレッチすると、筋肉を痛める恐れがあるため、ゆっくりと行うのが大切です。 トレーニングの計画を見直す シンスプリントが治らない方は、トレーニングの計画も見直しましょう。急激に運動量を増やしたり、負荷の強いトレーニングを続けて行ったりすると、シンスプリントを悪化させる原因になります。 現在行っているスポーツに加え、スイミングやサイクリングなどのクロストレーニングを取り入れると、シンスプリントの原因となる筋肉への負荷を軽減できます。 クロストレーニングは普段使わない筋肉を刺激し、左右の筋力バランスを整える効果があります。 またトレーニングをしない休息日を設けることも大切です。筋肉や骨を休められるよう、トレーニング計画を見直しましょう。 治らないシンスプリントの治療方法 シンスプリントが治らない場合は、自己対処だけでなく専門的な治療を受けることが重要です。放置すると症状が慢性化や疲労骨折につながる恐れがあるため、医療機関を受診しましょう。 ここからは、治らないシンスプリントの治療法を4つ紹介します。 リハビリテーション シンスプリントの代表的な治療に、リハビリテーションがあげられます。脚全体の機能を高め、シンスプリントの痛み軽減や、再発防止するのが主な目的です。 単に痛みを改善するだけでなく、スポーツ復帰を目指せるよう、リハビリテーションを行います。 具体的には、足裏のアーチ構造や柔軟性、足指の機能不全などをチェックし、1人ひとりに合ったアプローチを行います。 脚だけでなく全身の筋肉バランスを確認しながらリハビリテーションを行うのが一般的です。 薬物療法 シンスプリントの炎症によって痛みが生じている場合は「非ステロイド性消炎鎮痛剤」と呼ばれるロキソニンなどの湿布を貼り、炎症を抑えます。症状によっては、飲み薬が処方されるケースもあります。 ただし、痛み止めや湿布などの薬物療法は、一時的に痛みが軽減されても、根本的な改善にはつながりません。 根本的な原因が改善されていないにもかかわらず「痛みが改善され治った」と考えていると、再発するリスクもあるため注意が必要です。 手術療法 慢性化している場合は、手術療法が必要になる可能性があります。炎症を起こしている骨や筋肉や、骨の異常な成長を取り除く手術が代表的です。 ただし、基本的にシンスプリントは、リハビリテーションや薬物療法で改善を期待できます。 シンスプリントが慢性化しないよう、治らないと放置せず、早い段階で医療機関を受診することが大切です。 再生医療 シンスプリントは再生医療で改善を期待できます。再生医療は、幹細胞治療やPRP療法などが代表的です。 従来の治療法でシンスプリントが治らない場合は、幹細胞治療やPRP治療などの再生医療も選択肢の一つです。リペアセルクリニックでは、これらの再生医療を提供していますので、お悩みの方はぜひご相談ください。 メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。 まとめ|シンスプリントが治らない場合はトレーニングや治療方法を見直そう シンスプリントが治らない原因は、脚に負荷がかかりすぎていたり、ふくらはぎの筋肉が硬かったりする可能性があげられます。 治らないシンスプリントを放置していると、疲労骨折を起こすリスクもあるため、放置するのは控えましょう。 シンスプリントが治らない場合は、シューズやインソールを変えたり、トレーニング計画を見直したりすることが大切です。 さらに、シンスプリントの根本的な原因を改善するためにも、症状に合った治療を受けましょう。 リペアセルクリニックでは、再生医療を提供しています。メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けていますのでお気軽にお問い合わせください。
2025.03.01 -
- 足部、その他疾患
- 下肢(足の障害)
- 足部
- スポーツ外傷
シンスプリントと診断されたが、練習を休みたくない 大事な試合が近いから走りながらでも、なんとかしたい シンスプリントを抱えながらも、練習は継続したいと悩む方は多いです。練習をできる限り続けたい気持ち、よくわかります。 ですが、シンスプリントは走りながら治せるほど単純な症状ではありません。 無理して練習を続けると、症状の悪化を招く可能性があります。しかし、無理のないメニューや環境をしっかり整えば、練習を継続できます。 そこで本記事では、以下について解説します。 休息と対策方法 負担を軽減するマッサージ方法 負担を軽減するストレッチ方法 予防する足裏やふくらはぎのトレーニング方法 最後に、シンスプリントについてのよくある質問にお答えします。気になる疑問を解決できますので、ぜひ最後までご覧ください。 【結論】シンスプリントは走りながら治せない|休息と対策が必要 シンスプリントは走りながら治すことはできません。また、シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)は医師や専門機関により、走りながらの治療は推奨されていません。(文献1) 脚に違和感を抱えたまま走ることで、症状が悪化する可能性があります。また無理をすると、症状の回復が遅れる原因にもなります。 そのため、シンスプリントと診断された際は、走りながら治そうとしてはいけません。シンスプリントを治すには休息と対策が必要です。 テーピングを貼る 手順 内容 1.準備 足をタオルや水で洗い、乾燥させる 2.テープを適切な長さにカットする 5cm幅のキネシオロジーテープを適切な長さにカット 3.貼り始め 足の外側からスネの内側に向かって貼る 4.引っ張りながら貼る 土踏まずを持ち上げるように、膝下まで伸ばす 5.重ね貼り 1本目のテープに1/2~2/3重ねて2本目を貼る 6.クロス貼り 外くるぶしの上からスネの内側へ斜め上に貼る 7.固定 足首を1周するようにテープを巻き、しっかり固定する シンスプリントの改善にはテーピングがおすすめです。テーピングを適切に貼ることで、症状の緩和や再発防止につながります。 テーピングには5cm幅のキネシオテープと7.5cm幅のバンテージを使用します。自分で貼るのは難しいため、表を参考に周りの人や、詳しい人に貼ってもらうと良いでしょう。 以下の記事では、シンスプリントのテーピングの方法を詳しく解説しています。 運動後にアイシング 手順 内容 1.準備 ビニール袋に氷を入れ、空気を抜いて患部にフィットさせる 2.冷却時間 1回のアイシングは15~20分を目安にする 3.頻度 1時間ごとに間隔を空けて繰り返す 4.注意点 凍傷防止のためタオルを挟む、長時間のアイシングは避ける シンスプリントの緩和にはアイシングが有効です。(文献2)アイシングを行うことで炎症を抑え、症状を和らげるのに役立ちます。 1回のアイシングは15~20分を目安に行い、1時間ごとに間隔を空けてを繰り返します。アイシングを行う際は凍傷を防ぐために、長時間の冷却は避け、適度な時間で行うのが大切です。 アイシングは、運動後や違和感を感じたときに効果的な手法ですが、症状が改善しない場合は医師に相談するようにしましょう。 負荷のかからない練習量と環境にする シンスプリントの症状を悪化させないためには、練習量と環境を改善する必要があります。シンスプリントが悪化する要因としては以下が挙げられます。 不整地や硬い地面での運動・練習 足の疲労によって衝撃吸収が弱まった状態での練習 過度な走り込み 負担を減らすには、無理な運動や硬い地面での練習は避け、クッション性のある場所を選ぶことが大切です。またシンスプリントの症状が出た場合は、練習量を減らすなどし、負担軽減を優先しましょう。 シューズを変える ポイント 解説 クッション性だけに頼らない クッションは分厚ければ良いものではない。シューズの形状や高さが衝撃吸収能力に影響を与えることがある。 走り方に合わせたシューズを選ぶ 走り方に応じて、つま先と踵の高さが異なるシューズを選ぶと衝撃吸収能力が向上する。 足部の安定性を保つ 分厚いクッションが足部の不安定さを引き起こす可能性がある。安定性を保てるシューズを選ぶこと。 普段のトレーニングに合わせる 分厚いクッションは不要。普段のトレーニングに合わせて、クッション性や形状を選ぶこと。 自分に合ったシューズの選び方 足のアーチや走り方に合わせたシューズを選び、フィッティングを受けることが大切。 クッション性の低い靴の使用や、かかとのすり減った靴での練習は脛骨に負荷をかけます。しかし、クッション性と怪我の予防に関する明確なエビデンスはありません。そのため、クッション性だけに重点を置かないことが大切です。(文献3)(文献4) シューズを選ぶ際は、足のアーチや走り方、負担のかかりやすい部分を考慮し、選択するようにしましょう。 自分だけで選ぶのが難しい場合は、専門店でシューズフィッティング(足に合った靴の選定、履き心地の確認)を受けることで、自分に合うシューズを見つけやすくなります。 マッサージ・ストレッチ マッサージ・ストレッチは筋肉や筋膜の柔軟性を高めます。とくに入浴後は血行が良くなり、筋肉が柔らかくなるため、このタイミングで行うと効果的です。(文献5)(文献6) マッサージ・ストレッチは筋肉の柔軟性強化だけでなく、血行の改善や負荷のかかる部分(とくに下肢の筋肉)の緊張をほぐせます。 無理のない範囲で行う必要はあるものの、適度な運動は怪我の予防や回復の促進が研究でも明らかになっています。(文献5)(文献6) シンスプリントの負担を軽減するマッサージの仕方 シンスプリントの負担を軽減するために、マッサージが効果的です。筋肉をリラックスさせ、血流を促進し、症状を和らげます。ただし、無理なく優しく行うことが大切です。 以下でポイントを詳しく解説します。アイスマッサージ ステップ 詳細 注意点 準備するもの 小さな袋に氷を入れる、またはアイスパックを使用する。 直接氷を肌に当てないようにする。氷が肌に直接触れると凍傷の原因になります。 アイシング部位 スネの内側や足首周りを対象にアイスを当てる。 アイシングを行う部位を清潔に保つこと。傷や炎症がひどい場合は無理に行わないようにしましょう。 アイスを当てる方法 5〜10分間、円を描くようにアイスを当てながらマッサージする。 長時間行いすぎないように注意する。冷却しすぎると血行が逆に悪くなり、症状が悪化につながります。 休憩後の再実施 冷却後、少し休憩してから再度実施するとより効果的。 休憩時間を設けることで、肌や筋肉に過度な負担をかけずに効果的にアイスマッサージを行えます。 主な効果 炎症や腫れを軽減し、血流の促進に繋がります。 冷却後に違和感があれば、すぐに中止する。必要に応じて医師に相談しましょう。 氷を入れた小さな袋を患部に直接当てて、マッサージします。円を描くように10分〜15分程度行いましょう。アイスマッサージには炎症や腫れを軽減し、血流を促進する効果があります。 氷はスネの内側や足首周りに当てますが、直接肌に触れたり、同じ場所を長時間冷やしたりしないよう注意しましょう。冷却後に違和感があれば、中止して医師に相談しましょう。 足裏のマッサージ ステップ 詳細 注意点 準備するもの とくに準備は必要なく、手やマッサージオイルなどの使用もできます。 マッサージを行う際には爪を切り、硬い部分で引っかからないようにしましょう。 マッサージ部位 足の前部からかかとに向かって、親指や指の腹でマッサージする。 強すぎない圧力でマッサージを行いましょう。過度な圧力を加えるとマッサージを行なった箇所に負担がかかります。 マッサージの方法 円を描くように優しく押しながらマッサージし、30秒〜1分間行う。 アーチ部分をとくに重点的にマッサージしますが、無理に押さないようにする。少しでも違和感を感じた場合は中止します。 両足をマッサージ 反対側も同様にマッサージする。 両足を同じ方法でマッサージするのが大切です。片方だけを行うことは偏った負担をかける原因になります。 主な効果 足裏の筋肉をほぐし、アーチ部分の負担を軽減、シンスプリントの症状を改善します。 マッサージ後は無理のない範囲で、足を軽くストレッチすると、筋肉がさらにリラックスしやすくなります。 足裏を親指や指の腹で優しく押し、足の前部からかかとに向かって円を描く形でマッサージします。マッサージを行う際は、無理のない範囲で行い、強く押しすぎないことが大切です。 足裏をマッサージを行うことで、筋肉をほぐれ、アーチ部分の負担を軽減できます。 スネの内側のマッサージ ステップ 詳細 注意点 準備するもの 手だけで行えますが、マッサージオイルなどを使用しても良いです。 圧力を加える前に手やオイルでスネ部分を軽く温めておくと、よりリラックスできます。 マッサージ部位 スネの内側、脛骨の周辺を指の腹でマッサージします。 強い力を加えすぎないように注意する。違和感を感じたら、すぐに中止しましょう。 マッサージの方法 上から下に向けて円を描くように軽く押しながら、マッサージします。 1~2分間マッサージする。スネの筋肉がリラックスした感覚を覚えましょう。 反対側のマッサージ 反対側のスネも同様にマッサージします。 両側をバランスよくマッサージする。片方だけに偏らないようにしましょう。 主な効果 スネの内側の筋肉をほぐし、筋肉の緊張を和らげ、症状を軽減します。 強く押しすぎないように、リラックスした状態で行うと効果的です。 スネの内側のマッサージを反対側と合わせ、1〜2分間マッサージし、筋肉の緊張を和らげ、症状を軽減できます。(文献6) シンスプリントの負担を軽減するストレッチの仕方 シンスプリントの負担を軽減するには、ストレッチが有効です。ストレッチを行うことで、マッサージ同様、筋肉の緊張を和らげ、症状の改善につながります。 以下ではシンスプリントの負担を軽減するストレッチの方法を解説します。 後脛骨筋(こうけいこつきん)ストレッチ ステップ 手順 ポイント 1.準備 座った状態で、片足をもう一方の太ももに乗せる。 リラックスして姿勢を安定させる。 2.足首を曲げる 乗せた足のつま先を手で持ち、足首を内側にゆっくりと曲げる。 無理に力を入れず、心地良い伸びを感じる程度に調整する。 3.キープ 足首の内側を曲げた状態を15~30秒間保持する。 深呼吸しながら、筋肉の伸びを意識する。 4.反対側も実施 ゆっくり元の位置に戻し、反対側の足も同様に行う。 左右交互に2~3回繰り返す。 脛骨の内側から足首にかけて付着する後脛骨筋のストレッチを行い、柔らかくします。コツは反動をつけずにゆっくりと伸ばすことを意識します。 無理な力は後脛骨筋に負担をかけ、シンスプリントを悪化させる恐れがあるため注意しましょう。無理がない範囲で行うことが大切です。 腓腹筋(ひふくきん)ストレッチ ステップ 方法 ポイント 1. 姿勢をとる 壁の前に立ち、片足を一歩後ろに引く。 後ろ足のかかとを床につけたままにする。 2. 体を前に倒す 壁に手をつき、前足の膝を軽く曲げながら体を前方に倒す。 背筋を伸ばし、無理に体を曲げすぎないようにする。 3. ストレッチを保持 ふくらはぎが伸びるのを感じながら15~30秒キープ。 反動をつけず、ゆっくりと伸ばす。 4. 反対側も行う 片側が終わったら反対の足も同様にストレッチする。 毎日継続して行うことで効果が期待できる。 腓腹筋を伸ばし、ふくらはぎの柔軟性を高めることで、シンスプリントの改善に役立ちます。反動をつけず、かかとを床につけたまま無理のない範囲で行いましょう。 ヒラメ筋ストレッチ ステップ 方法 ポイント 1.姿勢をとる 壁の前に立ち、片足を一歩後ろに引く。 後ろ足のかかとを床につけたままにする。 2.ひざを曲げる 後ろ足のひざを軽く曲げ、ふくらはぎの下部(ヒラメ筋)を伸ばす。 背筋を伸ばし、ゆっくりと動作を行う。 3.ストレッチを保持 ふくらはぎの下部に伸びを感じながら15~30秒キープ。 反動をつけず、無理のない範囲で行う。 4.反対側も行う 片側が終わったら反対の足も同様にストレッチする。 呼吸を意識して、リラックスしながら行う。 ヒラメ筋ストレッチはシンスプリントの症状緩和に効果的です。ふくらはぎの柔軟性を高めることで、脛骨への負担が軽減されます。 無理はせず、ゆっくりとした動作でヒラメ筋ストレッチを行うことが大切です。適切に行うことで、症状の悪化を防ぎ、パフォーマンス向上に繋がります。 シンスプリントを予防|足裏やふくらはぎのトレーニング方法 シンスプリントの予防には、足裏やふくらはぎのトレーニングも大切です。正しいトレーニングを行い、筋力を鍛えることで、足部の衝撃吸収能力や安定性が向上し、発症を防止できます。 以下では、足裏やふくらはぎのトレーニング方法について解説します。 タオルギャザー 足裏の筋力を鍛えるトレーニングで、床にタオルを広げ、足でタオルを引き寄せる動作を繰り返します。このとき、かかとの位置は変えずに行うようにしましょう。 足底のアーチを意識しながら、タオルを引き寄せることで、足裏の筋力を強化できます。 両脚ヒールレイズ ふくらはぎの後面に位置する、ヒラメ筋と腓腹筋を鍛えるトレーニングです。直立した状態で、両足を使ってかかとを上げ下げします。 このとき、できるだけかかとを高く上げ、膝をしっかり伸ばした状態で行います。また身体がふらつかないように注意しましょう。 チューブを使った筋力トレーニング トレーニングチューブを使って、足やふくらはぎの筋肉を鍛えるトレーニングです。コツは低負荷から始め、徐々に負荷を上げていくようにします。 いきなり負荷をかけると筋肉が炎症を起こし、症状が悪化する恐れがあります。ゆっくりと無理のない範囲で行いましょう。 チューブを使った筋力トレーニングについては、以下の記事で詳しく解説しております。 走ると辛いシンスプリントは当院にご相談ください シンスプリントは走りながら治すのは難しいですが、適切な対策とトレーニングで改善できます。 改善が進まない場合は、当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。再生医療で組織の修復をサポートします。 走ると辛いシンスプリントでお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 走りながらシンスプリントを治したい方からよくあるQ &A シンスプリントの主な原因は シンスプリントの原因は、筋肉や被膜の異常によって引き起こされます。筋肉に負荷がかかると硬くなり、柔軟性が低下します。その結果、筋肉が脛骨を引っ張り、負荷が増加して炎症が起き、違和感が生じるのです。 以下の記事では、シンスプリントの原因と予防策を詳しく解説しています。 シンスプリントは走りながら治すのではなく病院行くべきですか? シンスプリントは走りながら治すのではなく、病院に行くべきです。シンスプリントは筋肉や神経が炎症を起こしている状態であり、負荷をかけると症状が悪化する可能性があります。 症状を悪化させないためにも、病院で診察を受けることをおすすめします。 シンスプリントに湿布は効果的ですか? シンスプリントに湿布は一時的な痛みを和らげる効果がありますが、根本的な治療にはならないことが多いです。湿布は主に炎症を抑え、血流を改善するために使用されます。 冷湿布は炎症や腫れを抑える効果があり、急性の炎症があるときに適しています。一方、温湿布は、患部を温めて血行を促進し、筋肉の緊張を和らげます。 慢性的な痛みに効果的ですが、炎症がひどい場合には逆効果になることもあるので、注意が必要です。 参考文献 (文献1) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「シンスプリント」MSDマニュアル プロフェッショナル版,2021年10月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/22-%E5%A4%96%E5%82%B7%E3%81%A8%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E6%90%8D%E5%82%B7/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%88?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年2月24日) (文献2) 一般臨床整形外科学会日本臨床整形外科学会「アイシング」一般臨床整形外科学会日本臨床整形外科学会ホームページ https://jcoa.gr.jp/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E7%9B%B8%E8%AB%87/%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%81%8F%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%92%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB/%E5%BD%B9%E7%AB%8B%E3%81%A4%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E3%81%AE%E7%9F%A5%E8%AD%98/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0/?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年2月24日) (文献3) Laurent Malisoux, et al. (2020)Shoe Cushioning Influences the Running Injury Risk According to Body Mass: A Randomized Controlled Trial Involving 848 Recreational Runners - PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31877062/(Accessed: 2025-02-24) (文献4) Naoko Aminaka,et al.(2018),NO IMMEDIATE EFFECTS OF HIGHLY CUSHIONED SHOES ON BASIC RUNNING BIOMECHANICS,1-10 https://hrcak.srce.hr/file/283953(Accessed:2025-02-24) (文献5) Miloš Dakić, et al.(2023),The Effects of Massage Therapy on Sport and Exercise Performance: A Systematic Review - PMC https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10302181/(Accessed:2025-02-24) (文献6) Robert D Herbert, et al.(2011),Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise - PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21735398/(Accessed:2025-02-24)
2025.02.28 -
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- スポーツ外傷
シンスプリント(すねの内側に走る痛み)に悩まされている方は多いのではないでしょうか。 とくにランナーやジャンプ動作の多いスポーツ選手は、この痛みで思うように練習ができず、「いつになったら治るのか」と不安を抱えてしまいます。 シンスプリントは放置すると慢性化し、練習や試合への影響も長引く恐れがあるため、早期のケアと原因の把握が重要です。 本記事では、シンスプリントの原因やメカニズムを丁寧に解説しつつ、よく混同される疲労骨折との違いにも触れます。 痛みの出方や回復のスピードは人それぞれですが、症状と向き合い適切に休養を取ることで、回復を早めることが期待できます。 「どのくらい休む必要があるのか」「休んでいる間にできることは?」といった不安を解消し、スポーツに早く復帰するためのヒントを見つけていただければ幸いです。 シンスプリントの原因・メカニズム シンスプリントとは、別名で脛骨過労性骨膜炎とも呼ばれ、すねの内側(脛骨内側)に慢性的な痛みや違和感が生じる障害の総称です。 使いすぎ症候群(オーバーユース)のひとつで、走ったり飛んだりする激しい運動のスポーツに多く見られます。 バスケットボールやサッカー、ランニングを伴うスポーツを頻繁にしている選手に多く、日本では春先にクラブ活動が活発になる新学期の4月ごろから発症が増加します。 発生要因はさまざまですが、過剰なトレーニングや足に負担のかかるランニングフォームのような内的要因から、硬いグラウンドや路面でのトレーニング、クッションが薄いシューズの使用で足に負担がかかることで起きる外的要因などが考えられます。 すねには前脛骨筋や後脛骨筋をはじめとする複数の筋肉が付着しており、これらが強い衝撃や過度な運動量にさらされることで、脛骨(けいこつ)の周りにある骨膜が炎症を起こし、痛みが発生します。 とくに練習量を急激に増やしたり、柔軟不足のままハードなトレーニングを続けたりすると、負荷が一気にかかりシンスプリントが起こりやすくなります。 症状としては、初期段階では走り始めやジャンプ前後に鈍い痛みを感じ、休めばある程度治まります。 しかし、進行すると何もしていないときでも痛むようになり、さらに放置すると慢性化して長期離脱を余儀なくされるケースも珍しくありません。 早い段階で休養に入り、運動量の調整が大切です。 疲労骨折との違い シンスプリントと同じように「すねの痛み」を伴う症状として、疲労骨折がよく挙げられます。 どちらもランナーやスポーツ選手に多い障害ですが、症状は根本的には大きく異なる状態です。 シンスプリント:すねの骨膜が炎症を起こしている 疲労骨折:骨自体にひび(亀裂)が入った状態 シンスプリントはあくまで炎症や微細な負荷が蓄積した結果であり、骨折とは段階が違います。 痛みの出方や治り方も異なるため、痛みが強く「骨がじんじんする」「力をかけるとさらに痛い」と感じた場合は、単なるシンスプリントではなく疲労骨折を疑う必要があります。 ただ、混合して認識されてしまう点としては、痛みの発生カ所が似ている点です。 疲労骨折もシンスプリントもふくらはぎの内側に痛みを感じるため、区別が難しいとされています。 いずれにせよ、疲労骨折が進行してしまった場合、医療機関でレントゲンやMRIで骨折かどうか判断してもらえるので、自己判断で放置せず専門家に相談が重要です。 シンスプリントと疲労骨折を混同したまま練習を続けると、回復までに長期間かかるリスクが一気に高まりますので、早めの対処を心がけましょう。 シンスプリント完治まで休む期間 シンスプリントは症状の度合いによって休む期間や復帰に向けたアクションも変わります。 身体と相談しながら休む期間を設定しましょう。 軽症~中度の目安 シンスプリントが比較的軽度の段階であれば、目安として2週間程度の安静を保つことで痛みがかなり和らぐケースが多いとされています。 ただし、痛みが引いたからといってすぐに元の運動量に戻してしまうと、再び負荷がかかって再発するリスクが高まります。 軽度から中度の場合でも、無理をせず段階的に運動を再開しましょう。 運動を完全に休む期間は、人によっては「1週間程度で痛みがおさまる」こともありますが、痛みがなくなった直後が最も危険ともいえます。 焦って運動強度を以前の水準まで一気に戻すと、痛みがぶり返して長引く原因になるからです。 そのため、「痛みが消えたあともしばらくは負荷を抑え、様子をみながら徐々に復帰する」ことが大切になります。 重症例や慢性化したときの休む期間 痛みが強い場合や、何度も繰り返して慢性化してしまったケースでは、完治までに2〜3カ月以上の休養が必要になることがあります。 さらに、痛みがずっと続く難治性のシンスプリントでは、半年以上にわたって治療とリハビリを続ける必要が生じることも珍しくありません。 とくに慢性化すると炎症が長期間にわたって続き、骨膜や周囲組織へのダメージが深刻になりがちです。 こうした場合は、痛みの度合いや経過を慎重に観察しながら、医療機関での検査やリハビリ指導を受ける必要があります。 短期間で無理に運動を再開すると、さらに症状が悪化し復帰までの期間が長期化してしまう可能性があるため注意しましょう。 シンスプリントで休んでいる期間にするべきこと シンスプリントによる痛みが強いときは、患部への負荷への負担を減らし、炎症を抑えましょう。(文献1) 痛みがあるまま運動を続けると症状が悪化し、結果的に長期離脱につながるリスクがあります。以下のポイントを意識して早期復帰を目指しましょう。 発症直後の治療法 シンスプリントを発症して痛みが強い急性期には、まず患部の安静が欠かせません。 以下のような保存療法を組み合わせると、痛みの軽減と回復を早めることが期待できます。 安静 痛みが出る運動を控え、患部への負担を極力減らす アイシング 炎症や痛みが強いときは、1回15〜20分程度を目安に1日数回冷やす 痛み止めの内服・外用 必要に応じて使用し、炎症や痛みを抑える 物理療法 病院やクリニックで電気療法・超音波治療によって、血流促進や組織の回復を助ける 装具療法(インソール) その方の足に合ったオリジナルのインソールを作成します。足底のアーチを足の形と合わせて作成し、痛みを軽減する 急性期の炎症が落ち着くと痛みも和らぎますが、ここで安易に「もう大丈夫だろう」と判断すると再発リスクが高まります。 痛みがある程度引いた状態でも、医師やトレーナーの指導を受けながら慎重に運動量を調整しましょう。 シンスプリントの一般的な治療法 痛みが落ち着いた後や、慢性期においては、以下のようなアプローチで症状の改善や再発防止を目指します。 ストレッチ・マッサージ ふくらはぎや足首まわりの筋肉が硬くなると、すねへの負荷が増しやすくなります。適切なストレッチやマッサージで、筋肉を柔軟に保つことが大切です。 テーピングやサポーター 足首やすねの筋肉をサポートし、骨膜への負担を軽減できます。正しい貼り方や装着方法を学び、運動時に活用すると効果的です。 湿布の活用 痛みが強い場合や炎症を抑えたいときには、鎮痛成分や消炎成分を含む湿布を活用する方法もあります。運動後に患部へ貼ることで、熱感や腫れをある程度コントロールし、回復を促進するサポートになる可能性があります。ただし、肌がかぶれやすい方は注意が必要なため、医師や薬剤師に相談しながら使用しましょう。 シンスプリントにおける再生医療の効果 近年では、自己の細胞や血液成分を活用した再生医療も注目を集めています。 なかでも「PRP療法(多血小板血漿療法)」は、損傷組織の修復や炎症の緩和を促進するとされ、シンスプリントの改善にも一定の可能性が期待されています。 PRP療法では、自分の血液を採取し、血小板を濃縮して患部に注入し、回復をサポートする成長因子を集中して届けます。 通常の保存療法と併用すると、より早期の回復や慢性化の予防につなげられる可能性があり、当クリニックでは、再生医療のプロフェッショナルとして、数多くの患者さまのお悩みを解決して参りました。 PRP療法にご興味がある方は是非以下のリンクにPRP療法についての詳細を記載しておりますので、気になる方は是非ご覧ください。 また、当クリニックでは無料相談も行なっておりますので、不明点などございましたらお気軽にご連絡ください。 シンスプリント完治後の再発予防ポイント シンスプリントが完治した後は、再発を防ぐ工夫が必要になります。 痛みが完全に消えても以前と同じトレーニングをいきなり再開すると再発リスクが高まるため、以下の点を意識しましょう。 運動再開のタイミング シンスプリントの痛みが落ち着いたあと、いつ・どの程度から運動を再開すべきかは悩みどころです。 治ったからといって、いきなり元の練習量に戻してしまうと、再発するリスクが高くなります。 以下のポイントを意識しながら少しずつ負荷を上げていくことが望ましいでしょう。 トレーニング計画の見直し 急に過度な練習量や負荷をかけないようにします。シーズン初めや運動開始直後の時期には、走行距離やジャンプの回数を徐々に増やし、身体が慣れる時間を設けます 痛みが出始めたら早めに休養を取り、悪化する前の対処が重要です。 シューズと練習環境の改善 クッション性の高いシューズを使用し、靴底がすり減ってきたら早めに買い替えます。できるだけ柔らかい地面を選んで練習し、アスファルトなど硬い路面での長距離走は避けるようにしましょう。 柔軟性の向上 日頃から下腿のストレッチを習慣づけ、ヒラメ筋や後脛骨筋などふくらはぎ周囲の筋肉の柔軟性を高めておきます。運動前のウォーミングアップも入念に行い、筋肉や腱・骨膜への血流を良くしてからスポーツに臨みましょう。 筋力強化とフォーム改善 下肢の筋力、とくに着地の衝撃を支える太ももやふくらはぎの筋力を強化すると、ランニングやジャンプ時の負担を軽減できます。加えてランニングフォームを見直し、着地の際は膝とつま先の方向を揃える、ドスンドスンと音を立てずソフトに着地するといった動作を心がけます。必要に応じて専門家からフォーム指導を受けるのも良いでしょう。 足のアーチサポート 偏平足で土踏まずのクッション機能が低下している人は、衝撃がダイレクトに脛骨へ伝わりやすいため注意が必要です。アーチを支えるインソールを用いることでアーチを強化し、衝撃を和らげましょう。 体重管理 急激な体重増加は下肢への負担を増やします。筋力が追いつかない状態で体重だけ増えるとシンスプリントが再発しやすくなるため、増えた体重を支えられるよう下半身の筋力トレーニングも並行して行ってください また、再発防止のためにはポイントだけでなく以下のステップを意識しましょう。焦らず徐々に身体を慣らしていくことが一番近道です。 歩くことから始める 痛みや違和感がないか確認しながらウォーキングを取り入れてください。 軽いジョギング 短い距離や時間であれば問題ないかをチェックしましょう。 インターバルを十分に取りつつ運動量を増加する 痛みが再発しない範囲で徐々に負荷を高めていき、本格的に復帰を果たしましょう。 もしウォーキング段階で痛みがぶり返すようであれば、再度休養や治療を挟む必要があります。焦らずに段階を踏み、身体の声を聞きながら復帰の速度をコントロールしましょう。 以上の対策を講じ、症状に注意しながら段階的に運動を再開できると、シンスプリントの再発リスクを下げ、スポーツを続けられます。 無理のない計画的なトレーニングとコンディション管理が再発予防の鍵となります。 シンスプリントは十分な休息期間を設けて改善に努めよう シンスプリントは、無理してトレーニングを続ければ続けるほど、症状が長引きやすい障害です。 痛みが出始めた段階で対策を講じ、運動量を調整して、回復期間の短縮が期待できます。 休む期間をつくりたくない気持ちはアスリートであれば誰もが抱えるものですが、やむを得ず長期離脱するよりも、短期の休養や適切なケアを優先したほうが結果的にスポーツへの復帰が早まるケースも少なくありません。 自分だけでは回復の見通しが立たない場合や、慢性的な痛みで悩んでいる方は、医療機関の受診を検討してみてください。 痛みの原因を特定し、あなたの状態に合わせた治療プランを立ててもらうことで、再発リスクを抑えながら早期回復を目指せます。 休息をしっかりと取りつつ、シンスプリントの根本的な改善に取り組みましょう。 参考文献 (文献1) 日本スポーツ整形外科学会,「スポーツ損傷シリーズ 15.シンスプリント」 https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s15.pdf (最終アクセス:2025年02月24日)
2025.02.28