CM関節症とは?症状とそのステージ、原因と治療法について
CM関節症とは?症状とそのステージ、原因と治療法について解説します
CM関節症は一般的に50歳以上に発症しやすい疾患です。しかし、なぜCM関節症になるのか、またCM関節症になったらどのような治療が実施されるかを理解している人は多くいません。
そのため今回はCM関節症の原因と治療方法を理解するために詳しく解説します。
CM関節とは
聞きなれない名称ですが「CM関節」と呼ばれる関節があります。
それは、母指(親指)の根本の骨である第1中手骨と、手首の小さい骨である大菱形骨の間に存在している関節をいいます。
母指が他の指と対立運動(つまみ動作)ができるのは、このCM関節の役割が大きくかかわっています。
CM関節は、「握る」「つまむ」などの動作を行う際に負担がかかる部位です。
ただ、「握る」「つまむ」などの動作は、けして特別なものではなく、日常生活においても比較的多く行われる動作です。そのため、CM関節には常に負担が掛かり続けていると言えるのです。
基本的に関節は、使い過ぎたり、加齢などによって変性する場合があります。それは、関節をスムーズに動かしたり、衝撃を和らげるクッションの役割を果たす軟骨がすり減ることで起こります。これが進行すると関節が腫れたり、亜脱臼などが生じることとなり、これが「CM関節症」といわれるものです。
CM関節症の症状
CM関節症の場合、母指(親指)に力を入れた動作をした際、手首の母指の付け根付近に痛みが生じます。主に痛みが生じる場面は下記の場合です。
また、症状が進行すると、手首の母指の付け根付近が腫れて膨らんできて母指を開くことが難しくなります。
場合によっては、関節が変形して親指の指先の関節が曲がり、付け根の関節が反る「白鳥の首変形(スワンネック変形)」になる可能性もあります。
CM関節症の症状
・瓶やペットボトルのふたを開ける
・ホッチキス・ハサミ使用時
・タオルを絞る
・ドアのノブを回す
・字を書く
・草むしり
・布団を挙げる
・ボタンをかける
CM関節症のステージ(症状)
CM関節症の症状は、ステージごとに区分され以下のように細かく分類されています
一般的にstage1、2は保存療法、stage3、4は重症になり手術の検討が必要となります。
ただ、必ずしもレントゲン上の結果と一致しないため、最初はサポーターなどの装具、テーピング、リハビリなどの手術以外の選択肢で治療を行うこともあります。
ステージごとの症状
・stage1:レントゲン上での問題はみられない
・stage2:関節の隙間が少し狭くなり、骨硬化が少しみられる
・stage3:関節に隙間がほとんどなくなり、骨硬化や骨棘がみられる
・stage4:完全に関節の隙間がなくなり、骨棘の形成もみられる。
CM関節症の原因
CM関節症を生じる主な原因は、加齢・ホルモンバランスの変化・関節の変形です。それ以外にも、過去に母指に受けた外傷・怪我も原因になりえます。
CM関節が正常の場合は、軟骨がしっかり骨を覆っており、スムーズな曲げ伸ばしや、クッション性も豊なのですがCM関節症の場合、この軟骨がすり減ってしまった結果、骨と骨同士がぶつかり合い、関節への負担が生じることとなります。
一般的には下記の因子(原因)が当てはまる人はCM関節症になりやすいと推測されます。
原因(なりやすい)
・女性
・肥満
・40歳以上
・靭帯のゆるみなどの遺伝
・親指周囲の骨折など過去の外傷や怪我
・スポーツや労働で親指に強い負担が、かかっている状況
CM関節症の治療方法
CM関節症は、まず保存的治療を実施します。
テーピング・サポーターなどの装具治療、リハビリをしっかり行うだけで多くの場合は症状の改善を期待できます。
装具治療の場合は、手の状態に合わせて取り外し可能な装具を作成します。症状が軽い場合は、寝るときに装具を付けて過ごすだけで数週間後には痛みが軽減する場合もあります。
装具治療でも痛みが軽減しない場合は、消炎鎮痛剤の内服・注射治療を実施します。
内服はNSAIDsと呼ばれるロキソニンなどの消炎鎮痛剤、トラマールというような痛み止めを使用します。また、注射治療は、比較的長時間効果のあるステロイド製剤が使われる場合があります。
上記の治療を実施しても症状が改善しない場合は、手術による治療法も選択の1つとしなければなりません。
手術の内容は「関節形成術」「骨切り術」「靭帯再建術」の3つ方法が主要となり、どの手術後も一定期間の固定が必要なため、母指を正常に使えるようになるまでに長い期間を要することがデメリットとなります。
CM関節症の治療法
・保存療法:テーピング・サポーターなどの装具治療、リハビリ
・薬物療法:消炎鎮痛剤、痛み止め、注射によるステロイド製剤
・手術療法:関節形成術、骨切り術、靭帯再建術
CM関節症の筋肉への影響
手には多くの筋肉が存在するため、CM関節症になると、さまざまのな筋肉に影響が出ます。今回はその中でも主要な筋肉のほぐし方について解説します。
第一背側骨間筋
背側骨間筋は、第1中手骨(親指)と第2中手骨(人差し指)の間にある筋で、親指を内側(手のひら側)に曲げたときに背側へ盛り上がってくる筋です。
この筋肉が緊張すると、痛みが出る・指がこわばる・力が入りにくくなります。また、中手骨の間にも走行するため、場合によって、神経が圧迫されて、しびれの原因にもなります。
<背側骨間筋のほぐし方>
・ほぐす側の手の平を台に置いて安定させる
・手の甲を上に向ける
・逆側の手で第1中手骨と第2中手骨の間に指を入れる
・親指と中指の間の筋をつかむ
・押さえるように、ほぐしましょう。
母指対立筋
母指(親指)を動かす筋は全部で4つあり、そのうち、短母指屈筋・短母指外転筋・母子対立筋の3つの筋で親指の付け根の膨らみである母指球を形成しています。
母指対立筋は短母指屈筋と短母指外転筋に覆われており、親指を手の平に近づける作用である対立運動に関与します。
<母指対立筋のほぐし方>
・ほぐす側の手の平を上に向けて指を広げる
・反対側の手で母指を握る
・母指CM(親指の根本)を手のひらとは反対側、伸展方向へ伸ばす
まとめ・CM関節症とは?症状とそのステージ、原因と治療法について
CM関節症は、50歳以上の人々に多く見られる疾患で、親指の根元に位置するCM関節の軟骨がすり減ることにより発症します。
主な原因は加齢・ホルモンバランスの変化・関節の変形・過去、親指に受けた外傷や怪我の影響です。
日常的な動作である「握る」「つまむ」などの負担が積み重なり、痛みや腫れを引き起こします。この疾患は、ステージ1から4に分類され、症状の進行具合により保存療法から手術療法といあった治療法が選ばれます。
初期の段階では、保存療法としてサポーターや、テーピング、リハビリを行い、痛みの軽減を目指しますが効果が示されない場合は、消炎鎮痛剤の内服や注射が使用され、最終的に手術療法を検討することになります。ただ、手術になる割合は高くなく、ほとんどの場合は保存療法で治療が可能です。
手術後は一定期間の固定が必要で、その後、リハビリを通じて回復を目指しますが、完治には時間がかかることもあります。
また、CM関節症は手の筋肉にも影響を及ぼし、第一背側骨間筋や母指対立筋などの筋肉が緊張するため、痛みやしびれ、指のこわばりなどが生じることがあります。これらの筋肉は、ほぐすことで、症状の緩和を期待することができます。
CM関節症は、日常生活の質を大きく左右する疾患です。早期発見と適切な治療により、症状の悪化を防ぎ、日常生活を快適に過ごすことが可能となります。
痛みなどが気になれば、我慢せず、自己判断を避け、専門医の診断とアドバイスを受けることが重要です。
以上、CM関節症とはと題して、その原因と症状、治療法について記しました。
No.S031
監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2024.05.16