-
- 股関節、その他疾患
- 股関節
大転子滑液包炎(だいてんしかつえきほうえん)は、特にランニングやスポーツなどをおこなう方に多く、1,000人中の5〜6人が発症します。また、男性よりも女性、40~60歳の方が発症しやすいと言われてます。 大転子滑液包炎について以下のようなお悩みがありませんか? ・痛みの改善方法が分からない ・症状を悪化させる原因を知りたい ・ストレッチや運動などの予防策を知りたい この記事では大転子滑液包炎を改善・予防するための正しい知識を身につけ、原因や生活習慣、予防策について解説しています。 将来、自分の足が大転子滑液包炎になるのを防ぐためにも、適切な対策を行えるようになりましょう。 大転子滑液包炎とは? 大転子滑液包炎とは、股関節の外側に存在する大転子という骨の周囲の滑液包が炎症を起こす症状です。滑液包とは、関節や筋肉がスムーズに動くために存在する滑液という潤滑液を含む袋のことで、滑液包が炎症を起こすと関節や筋肉の動きが制限され、多くの場合、痛みを伴います。 ここでは、以下の2点について解説します。 ・症状と診断プロセス ・発症の原因とリスク要因 まずは基本的な概要から理解していきましょう。 症状と診断プロセス 発症初期のころの痛みは股関節の外側と局所的ですが、症状が悪化すると大腿の外側まで痛みの範囲が拡大します。また、大転子を圧迫すると痛みが出現するため、横を向いて寝ることが大変になります。 また、痛みの程度により、日常生活やランニングなどの趣味活動に制限される場合もあるのです。 また、大転子滑液包炎の診断は以下を用いて総合的に行われます。 ・問診 ・身体所見の確認 ・MRI 問診では、これまでの病歴や痛みが出現する前に行っていたこと、どのような時に痛いのかを確認します。身体所見の確認では、大転子を圧迫し痛みが出現するのかを確かめます。関節包に水が溜まっているかどうかや関節包の炎症の有無の判断は、MRIを使用しなければ分かりません。 発症の原因とリスク要因 大転子滑液包炎の原因には「大腿筋膜張筋」と「腸脛靭帯」の2つが関係しています。この2つの組織は大転子の上部を通過しているため、ランニングやサイクリングなどの同じ動作が行われ大転子滑液包と摩擦が起きることで炎症すると言われています。 また、大転子滑液包炎のリスクとなる要因は以下の4つです。 ・転倒やスポーツなどによる外傷 ・大転子に付着する組織(中殿筋・小殿筋など)の損傷に伴う二次的な滑液包炎 ・滑液包自体の摩擦・微細損傷による炎症 ・関節リウマチや痛風などの疾患 大転子滑液包炎の原因とは? 大転子滑液包炎の原因は大きく分けて以下の2つがあります。 ・活動レベルと生活習慣の影響 ・姿勢の問題と身体的負荷 それぞれ以下で詳しく解説します。 活動レベルと生活習慣の影響 ランニングやサイクリングなどを頻繁に行う方は、大転子滑液包に対する摩擦が増え、炎症を引き起こす可能性があります。 また、生活習慣では肥満も大転子滑液包炎の発症に影響を与えます。なぜなら、体重が増えると大転子滑液包にかかる負担も増加するためです。 このため、同じ動作を繰り返すスポーツや不摂生な食事をしている方は、大転子滑液包炎になる可能性が高いため注意が必要です。 姿勢の問題と身体的負荷 一般的に長い時間立っている方は、大転子滑液包にストレスがかかりやすいため、大転子滑液包炎を発症しやすくなります。 また、散歩やランニングの際に体が左右どちらかに傾いていたり猫背などの不良姿勢であることも、大転子滑液包にストレスがかかる原因となります。 このため、立ち仕事が増えたことや、ランニングを始めてから大転子周囲に痛みが出現した方は、大転子滑液包にストレスがかかっているかもしれません。 大転子滑液包炎の効果的な治療方法 大転子滑液包炎の治療方法は大きく分けて以下の2つです。 ・保存的治療:アイシングと抗炎症薬 ・手術療法:運動器カテーテル治療 それぞれ以下で詳しく解説します。 保存的治療:アイシングと抗炎症薬 大転子滑液包炎の保存的治療の重要な目標は、痛みの軽減を図ることです。大転子滑液包炎に限らず、炎症があり痛みが強い場合にはアイシングが有効です。アイシングをすることで炎症を抑え痛みを抑制できます。 また、大転子滑液包の炎症を抑えるためには、ステロイドの注射や消炎鎮痛剤の内服も有効です。しかし、30%の方は痛みが改善しないと言われているため、保存的治療で痛みを改善できない場合には以下の方法の検討も必要となります。 手術療法:運動器カテーテル治療 大転子滑液包炎が長期化し慢性化すると、大転子滑液包内に異常な血管が生じてしまいます。この場合、ステロイドや消炎鎮痛剤の使用により一時的に痛みは軽減しますが、再度痛みが出現します。 そのため、大転子滑液包炎が長期化している場合は、運動器カテーテル治療を行い、異常な微小血管を減らす治療が有効です。施術時間は20〜30分ほどで終了します。 運動器カテーテル治療後は、大転子滑液包炎による痛みが改善します。しかし、他にも原因がある場合は、痛みが残存する可能性があるため、医師への相談が必要です。 大転子滑液包炎を改善・予防するためのストレッチと運動療法 大転子滑液包炎の治療には保存的治療や手術療法で炎症や痛みの改善を図りますが、その後に痛みの再発を予防するためにもストレッチや運動療法が必要です。大転子滑液包炎は、同じ動作の繰り返しや長期間の不適切な動きや姿勢によるストレスが原因となるため、適切な予防を講じることが大切です。 痛みを和らげるストレッチ 大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋肉、特に「大腿筋膜張筋」の柔軟性を高めることが重要です。大腿筋膜張筋のストレッチは座った状態と寝た状態どちらでも行えます。 まずは座った状態でのストレッチから解説します。椅子に浅く腰掛け、片方の足を反対側の太ももの上に乗せます。上体をゆっくりと前に倒し、太ももの外側に軽い張りを感じるところで20~30秒ほど保持します。反対側も同様に行います。 次に、寝た状態でのストレッチを説明します。両膝を立てて膝を左右どちらかに倒し、20~30秒ほど保持します。膝を右側に倒した時は左足の大腿筋膜張筋、左側に倒した時は右足の大腿筋膜張筋が伸ばされます。 どちらのストレッチも、1日に数回行うことで筋肉の柔軟性を維持できます。ストレッチを行う際は、痛みを感じない範囲で行い、呼吸を止めないように注意しましょう。膝を倒した時に痛みが強い場合は、痛みが出る直前まで倒すことで痛みなくストレッチできます。 無理なストレッチは症状を悪化させる可能性があるため、痛みのない範囲で行うことが大切です。 再発予防のための運動療法 大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋力アップが必要です。 ここでは、自宅で簡単に行える以下2つの運動をお伝えします。 ・スクワット ・足を横に開く運動 スクワットの方法は以下のとおりです。 足を肩幅にひらく 膝がつま先より前に出ないように膝を90度ほど曲げる 膝を伸ばし1の状態に戻る 上記を10回繰り返す この時に1つ注意点があり、膝を曲げている時は膝が内側に寄らないようにしましょう。スクワットを行うことで「大腿四頭筋」や「大臀筋」などの筋肉を強化できます。 また、足を横に開く運動は以下のとおりです。 立った状態で椅子や手すりなどに軽くつかまる 体が横に傾かない範囲で片方の足を横に開いて戻す 上記を10回繰り返す この時に1つ注意点があり、足を横に開く時はつま先が外側へ向かないように注意しましょう。足を横に開く運動では「中臀筋」や「小臀筋」の筋肉を強化できます。 大転子滑液包炎の日常生活での予防策 大転子滑液包炎は一度発症すると再発しやすい疾患ですが、日常生活での予防策を実践することでリスクを大幅に減らすことが可能です。 ここでは以下の2点について解説します。 ・正しい運動技術とトレーニングの調整 ・再発防止のための生活習慣の改善 これらの予防策は大転子滑液包炎だけでなく、他の関節疾患や筋肉疲労の予防にも役立ちます。正しい予防策を身につけることで大転子滑液包炎を未然に防ぎ、これからもランニングを楽しんでいきましょう。 正しい運動技術とトレーニングの調整 ランニングやウォーキングに限らず、運動技術が不適切な場合、大転子周辺の筋肉に過度な負荷がかかり、大転子滑液包炎を引き起こす可能性があります。このため、大転子滑液包炎を予防するためには、適切なフォームで運動を行うことが求められます。 また、トレーニングの量の調整も必要です。過度なトレーニングは筋肉が疲労してしまい炎症につながる可能性があります。このため、適度に休息をとり、適切なトレーニング量に設定することが大切です。 再発防止のための生活習慣の改善 大転子滑液包炎を生活習慣から予防するためには以下の2つが大切です。 ・定期的な運動習慣 ・バランスの良い食事 定期的な運動習慣がなければ足腰の筋力が低下してしまい、大腿筋膜張筋にストレスがかかりやすくなります。また乱れた食生活では肥満につながり、体重が増えることでも大腿筋膜張筋へのストレスが増加します。 これらの日常生活での予防策は、大転子滑液包炎の予防だけでなく、他の整形外科疾患の予防にもつながります。 大転子滑液包炎の原因を理解して予防していきましょう この記事を通じて、大転子滑液包炎の基本的な知識から原因、治療方法、ストレッチと運動療法、さらには日常生活での予防策について学びました。 これからランニングやウォーキングを楽しく継続するためにも、正しい運動姿勢やトレーニングの量を把握し、体重の増加には気をつけましょう。 ただし、予防策を講じても大転子周囲の痛みが強い場合は、整形外科の受診を検討する必要があります。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 ・Effect of corticosteroid injection for trochanter pain syndrome: design of a randomised clinical trial in general practice. Brinks A, van Rijn RM, Bohnen AM, Slee GL, Verhaar JA, Koes BW, Bierma-Zeinstra SM BMC Musculoskelet Disord. 2007 Sep 19; 8():95. ・Lustenberger DP, Ng VY, Best TM, Ellis TJ: Efficacy of treatment of trochanteric bursitis: A systematic review. Clin J Sport Med 2011;21(5):447-453. ・Fox JL: The role of arthroscopic bursectomy in the treatment of trochanteric bursitis. Arthroscopy 2002;18(7):E34. ・渡邉 博史.静的ストレッチングの効果的な持続時間について.第47回日本理学療法学術大会.
最終更新日:2024.07.24 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
適切なリハビリテーションと痛みのコントロールで快適な生活を 「人工関節置換術を受けたのに痛みが続いてしんどい」 「痛みの原因がわからずただ不安」 このように、人工関節置換術を受けた方で、痛みが続いて本当に回復するのか不安に感じている方も多いでしょう。痛みが続くと日常生活に支障をきたしたり、回復しない焦りで不安になったりしますよね。 そうした術後の痛みに対しては、適切なリハビリテーションと痛みのコントロールが重要です。 そこで今回は、人工関節置換術後の痛みの原因から自宅でできるリハビリテーションの方法、人工関節を長期的に保つためのケア方法まで紹介していきます。 人工関節置換術後の痛みの原因と一般的な症状 人工関節置換術後は、ほとんどの方が手術にともなう痛みを感じ、以下の症状が生じる場合があります。 手術による傷口の痛み 筋肉や関節の痛み 神経障害性の痛み それぞれについて、詳しく解説していきます。 なぜ痛みが生じるのか? 人工関節置換術後に生じる痛みの原因は、大きく分けて3つあります。 痛みの原因は症状や部位によって異なり、程度や期間にも個人差があります。 痛み 原因 手術による傷口の痛み 手術により組織が損傷を受けると、炎症反応が起こり、痛みや腫れが生じる 筋肉や関節の痛み 手術のために筋肉を切開するため、術後は筋力が低下する。また、関節を動かす機会が減るため、関節が硬くなる。これらによって、動作時の痛みが生じる 神経障害性の痛み 手術の際に神経を損傷したことにより、関節周囲の神経が敏感になり痛みを感じる 一般的には手術後、数週間から3ヶ月の間で徐々に症状が改善していく方がほとんどです。 痛みが示す可能性のある合併症(感染) 人工関節置換術後の痛みは、合併症を引き起こした場合でも現れる可能性があります。痛みを感じる合併症の代表的なものとして感染があり、痛みが長期的に続く、強くなる場合には注意が必要です。 感染が起こると、痛みのほかに関節の腫れ、発赤、熱感などの症状が現れます。また、全身状態として発熱や倦怠感をともなう場合もあります。そのため、人工関節置換術後に痛みが増強する場合や、感染を疑わせる症状をともなう場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 術後の痛みを管理する方法 人工関節置換術後の痛みは、適切な管理によってコントロールが可能です。医療機関のサポートを受けながら、セルフケアとして痛みの管理に取り組むことで、術後の痛みをコントロールし、スムーズな回復につながるでしょう。 医師による痛み管理プラン 手術した直後は、安静と炎症のコントロールが治療の中心です。医師の指示のもと、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどの痛み止めを使用します。手術の翌日には、痛みをコントロールしながら適度な歩行や運動を開始し、徐々に活動量を増やしていきます。術後早期のリハビリテーションは、筋肉の強化や関節の動きを回復させ、早く日常生活へ復帰することが可能です。 自宅でできる痛みの軽減方法 入院中のリハビリテーションでは、自宅でもできるリハビリテーションの説明があるでしょう。退院後にも、引き続き可動域訓練やストレッチ、筋力トレーニングなどを行いましょう。運動療法は、関節の動きを維持するための運動やストレッチ、筋力の回復を助ける運動などを行います。 また、リハビリテーション以外にも関節痛や筋肉痛のある場合には、ホットタオルで温めるのも痛みを和らげる効果が期待できます。しかし、炎症がある場合には氷枕なので冷やす場合もあります。 日常生活への復帰を支援するリハビリテーション技術 人工関節置換術後の回復には、リハビリテーションが欠かせません。 入院中には理学療法士や作業療法士が、患者さま一人ひとりの状態や生活環境に合わせて医師の指示のもとリハビリテーションプログラムを作成します。セルフエクササイズとして自宅で行える方法もあるため、理学療法士や作業療法士の指導のもと、積極的に取り組んでいきましょう。 効果的なリハビリテーション方法 効果的なリハビリテーション方法には、関節の動きを改善する運動や筋力をつける運動、日常動作の練習など複数あります。痛みの状態や活動状況に応じて、段階的にリハビリテーションを行いましょう。 種類 内容例 関節可動域訓練 足首の曲げ伸ばし 膝の曲げ伸ばし ストレッチポールなどを使った下肢のストレッチ 筋力増強運動 踏み台昇降運動 椅子からの立ち上がり運動 歩行練習 平行棒内歩行 杖歩行 ひとり歩き バランス運動 足踏み運動 日常生活動作の訓練 階段の昇り降り 着替え 入浴 トイレ動作 複数の運動を組み合わせ、患者さまの状態に合わせて難易度を上げていくと、関節の機能回復と日常生活への復帰がしやすいでしょう。 家庭で行える簡単なエクササイズ 人工関節置換術後は、自宅でのエクササイズも回復の効果が期待されます。 自宅で簡単に行えるエクササイズの例をご紹介します。 エクササイズ 内容 目的 足関節ポンプ運動 仰向けに寝て足を台の上に乗せ、足首を上下に動かし、血流を促進する 浮腫の軽減 ストレートレッグレイズ 手術した脚を真っすぐに保ったまま持ち上げ、保持する 太もも前面の筋力強化 膝の屈曲・伸展運動 椅子に座り、手術した膝を曲げたり伸ばしたりする 関節可動域の維持 上記のエクササイズを毎日行うことで、筋力と関節の動きが改善され、日常の動作がスムーズに行える場合もあります。 しかし、人工関節の種類によっては関節の動きに制限があるため、必ず医師や理学療法士の指示に従い、痛みに注意しながら行ってください。 人工関節の寿命と長期的なケア 現在の人工関節は、15年〜20年以上の長期にわたり機能の維持が可能です。 しかし、人工関節の寿命を最大限に引き出すためには、適切な使用と日常の注意点が不可欠です。 具体的なメンテナンス方法や生活習慣について解説していきます。 人工関節の耐久性と日常の注意点 人工関節をできるだけ長持ちさせるには、定期的な診察が重要です。術後3ヶ月、6ヶ月、1年後、その後は年1回のペースでレントゲン検査や医師の診察を受けましょう。また、日常生活においても、人工関節に過度な負担をかけないよう注意が必要です。 人工関節への負担を抑えるために、杖などの生活支援用具を使用して生活もできます。さらに、運動をする場合には、ウォーキングや水中エクササイズ、ルームバイクなどがおすすめです。 一方で、ジョギングや器械体操、シングルテニスなどの走ったりジャンプしたりと急な動きは避けましょう。また、体重過多は人工関節に負担をかけるため、バランスの取れた食事と運動で適正体重を保つのも重要です。 万が一、違和感や痛みを感じた場合は、我慢せずに医師にご相談ください。早期発見や対処が、人工関節の長期的な機能維持につながるでしょう。 長期的な健康のための生活習慣 健康を維持するためには、バランスの取れた食事や適度な運動、禁煙など、健康的な生活習慣を送りましょう。 一般的には、手術後3~6ヶ月で手術の痛みが和らぎ、6ヶ月~1年で仕事や旅行、スポーツなどに参加できる場合がほとんどです。とはいえ、無理をすると痛みが生じる恐れがあるため、できる範囲から徐々に活動を広げていきましょう。また、人工関節を長く維持するためには、日常生活の中で関節への負担を減らす工夫が大切です。 例えば、以下のようなポイントに注意しましょう。 ・就寝時は布団などの床の上でなくベッドを使用する ・脱臼のリスクを減らすために、膝よりも座面の高い椅子を選び、立ち座りの際は手すりや机を使って体重を支える ・トイレは和式ではなく洋式を使用する ・軽めの運動を継続的に行う これらの工夫を日々の生活に取り入れることで、人工関節を長く保ち、快適で活動的な毎日を送ることができるでしょう。 よくある質問と答え(再生医療の選択肢もあるということを言及) 人工関節置換術に関するよくある質問をご紹介します。 Q1:人工関節手術後、雨の日や寒い日に痛みを感じることがあります。これは正常なことでしょうか? A1:気圧の変化や寒さにより、手術部位に痛みを感じることがあります。これは正常な反応で、多くの患者さまが経験されています。痛みが強い場合は、医師に相談し、適切な対処法を確認しましょう。 Q2:人工関節手術後の感染を予防するために、自分でできることはありますか? A2:手術部位を清潔に保つことが重要です。また、定期的な検診を受け、医師の指示に従って抗菌薬を服用することも感染予防に役立ちます。発熱、手術部位の腫れや痛みなどの症状が現れた場合は、速やかに医師へご相談ください。 Q3:再生医療は人工関節置換術の代替になりますか? A3:再生医療は、患者さま自身の幹細胞を用いて関節の修復を促す新しい治療法として注目されています。軟骨の修復により、痛みの軽減と関節機能の改善が期待できます。将来的には人工関節置換術の代替となる可能性があります。 人工関節置換術後の痛み管理と回復促進のポイント 円滑な手術と回復のためのポイントをご紹介します。 ・術後は理学療法士の指導に従い、早期にリハビリを進める ・適度な運動と筋力トレーニングに取り組む ・関節の負担が少ない動作を心がける ・定期的な診察と経過観察を欠かさない 適度な運動習慣や定期的な診察が、痛みのコントロールに効果を発揮するでしょう。 追加のリソースとサポート情報 活動的な生活を取り戻すためには、適切な痛みの管理とリハビリが欠かせません。今後の人生を思う存分楽しむためにも、手術の不便を最小限に抑える工夫が大切です。人工関節置換術後に受けられるサポートには以下のようなものがあります。 【痛み管理】 ・病院の整形外科や痛み外来での相談 ・かかりつけ医や薬剤師との処方薬の相談 【自宅でのリハビリ】 ・病院や診療所の理学療法士によるリハビリ指導 ・主治医や理学療法士が推奨するリハビリ動画の活用 【生活支援用具】 ・病院や診療所での福祉用具の相談 ・福祉用具専門店での試用や購入 【地域サポート】 ・病院や診療所が主催する患者教室への参加 ・地域の自治体が提供するリハビリ教室の活用 手術後は、医療機関と連携しながら、適切なサポートを受けることが大切です。 痛みや違和感がある場合は、まずは主治医に相談し、適切な対処方法を確認しましょう。 監修:医師 坂本 貞範 参考文献一覧 人工関節置換術後の痛み|慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A 人工関節とは|人工関節ドットコム 人工関節とは|日本人工関節学会 人工関節の寿命はどのくらい?|医療法人社団康心会 康心会汐見台病院 人工関節とスポーツ|人工関節ドットコム よろず相談箱|関節ライフ 再生医療は、人工関節置換手術の代替えになるか?|お茶の水セルクリニック
最終更新日:2024.07.17 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
シンスプリントは、主にランナーやアスリートの間でみられる症状で、すねに痛みを引き起こす状態です。オーバートレーニングや不適切な運動が原因となり、すねの骨に過度のストレスがかかる結果、炎症や筋肉の微細な損傷を引き起こします。初期症状の場合は運動中に痛みが出現しますが、重症化すると立っている時や安静時にも痛みを感じることもあります。 では、シンスプリントの治療法について以下のようなお悩みはありませんか? ・正しい治療方法を知りたい ・どのようにリハビリを行うと良いか分からない ・日常で気をつけることやスポーツ復帰の目処を知りたい この記事ではシンスプリントの治療法、具体的なリハビリテーション方法、そしてスポーツへの復帰について詳しく解説します。健康的な身体を維持し、最高のパフォーマンスを発揮するために、これらの知識を身につけることは非常に重要です。 シンスプリントの治療法 シンスプリントの原因はオーバートレーニングやランニングフォーム、足の形状や筋力低下などであるため、適切に治療することが重要です。 また、シンスプリントの痛みの程度に応じて以下3つの治療を行います。 ・安静とアイシング ・薬物療法による疼痛緩和 ・リハビリテーション それぞれ詳しく解説します。 安静とアイシング シンスプリントにより痛みや腫れが出現している場合は、安静にする必要があり、疲労した筋肉や骨を休めましょう。痛みを我慢して運動を続けていると、症状が悪化したり、最悪の場合は疲労骨折する可能性があるので注意が必要です。安静期間やスポーツへの復帰については下記の項目で詳しく解説します。 また、安静に併せてアイシング、要するに痛い部分を氷などで冷やすことも重要です。アイシングを行うと、腫れを抑えられ、痛みの増悪も軽減できます。 ただし、アイシングを行う際は以下に注意しましょう。 ・袋に入れた氷をあてる際はタオルを挟める ・1回に冷やす時間は15~20分程度 アイシングの際、短時間で急激に冷やそうとタオルを挟めず長時間あて続けると、凍傷になる可能性があるため上記の項目を守りましょう。1度アイシングを行い、その後1時間ほど間を空けてから再度冷やすことで、アイシングの効果をさらに高められます。 薬物療法による疼痛緩和 シンスプリントの治療法の1つとして薬物療法があり、主に疼痛緩和を目的に行われます。痛みが強く日常生活に支障をきたす場合には、整形外科を受診し、医師に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの使用を相談してみましょう。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に限らず、薬物療法には副作用のリスクもあるため、医師の指導のもと用法用量を守って使用することが重要です。 しかし、薬物療法は痛みを一時的に和らげるためのもので、根本的な腫れや炎症などの問題が解決するわけではありません。 なぜなら、シンスプリントの原因には、過度なトレーニングやランニングフォーム、足の形状や筋力低下などが関与しているからです。このため、薬物療法に併せて原因に対しての治療も重要です。 リハビリテーション 薬物療法と並行して、痛みの予防や再発防止に向けたリハビリテーションを行うことも大切です。 リハビリテーションの目的は以下の3つです。 ・筋肉や関節の柔軟性の向上 ・筋力強化 ・シンスプリントの痛みを軽減・再発 リハビリテーションは自宅で行えるメニューから、歩行姿勢やランニングフォームの改善で行います。歩行姿勢やランニングフォームの改善の際、専門家(理学療法士)の指導のもと、正しい運動方法を習得することが必要になる場合があります。 以下では、自宅で行える具体的なリハビリテーション方法について解説しているので、詳しく見ていきましょう。 ただし、正しい方法で行わなければ痛みが増悪する可能性があるので、注意しながら行いましょう。 シンスプリントの具体的なリハビリテーション シンスプリントに対しては以下3つのリハビリテーションが有効です。 ・ストレッチと筋肉強化 ・テーピングやサポーターの活用 ・日常生活での注意点とスポーツ活動再開のタイミング それぞれ詳しく解説します。 ストレッチと筋肉強化 シンスプリントに有効なストレッチと筋力強化について以下の3つを紹介します。 ・ふくらはぎ(ヒラメ筋や後脛骨筋など)のストレッチ ・ゴムチューブを用いた「ふくらはぎ」の低負荷の筋トレ ・足指でタオルを引き寄せる運動 ふくらはぎ(ヒラメ筋や後脛骨筋など)のストレッチはシンスプリントの痛みを和らげるのに効果的です。ヒラメ筋のストレッチ方法はアキレス腱のストレッチに似ていて、足を前後に開いて後ろ足のヒラメ筋を伸ばしますが、この時後ろ足の膝は曲げて行うことが大切です。後ろ足の膝を伸ばして行うと、ヒラメ筋のストレッチにならなくなってしまいます。また、反動をつけると筋肉を痛めてしまう可能性があるため、ゆっくり30秒ほどかけてストレッチを行うと効果的です。 ゴムチューブを用いた「ふくらはぎ」の低負荷の筋トレでは、足指の付け根にゴムチューブを巻き、手前に引きます。かかとは床につけた状態で、ゴムチューブを伸ばすようにつま先を下に伸ばします。負荷の設定方法は、低負荷から始め、徐々に負荷量を上げていくのが一般的です。いきなり高負荷でトレーニングすると筋肉が再び炎症する可能性があるので注意しましょう。 『足指でタオルを引き寄せる運動』は、床に敷いたタオルの上に足を置き、足指でタオルをつまんで離してを繰り返し、タオルを手前に引き寄せる運動です。この運動では「長母趾屈筋」と「長趾屈筋」が強化され、筋肉の滑走性が滑らかになります。 テーピングやインソールの活用 上記のリハビリテーションの他に、テーピングやインソールを使用することでも痛みを軽減できます。 テーピングは、筋肉や靭帯に適度な圧力を加えて安定化させ、痛みの軽減や再発防止に効果があります。特に、ランニングや他のスポーツをする際の足への負担を軽減するのに役立つため、スポーツ選手には欠かせない存在です。 シンスプリントに対するテーピング(伸縮性)の巻き方は以下の通りです。 ・1本目:外くるぶしから足裏を通って引っ張り上げながら膝下まで張る ・2本目:1本目同様に、数cmずらして貼る ・3本目:痛い部分の上をテーピングで1周巻く(大体すね下1/3付近) ・4本目:数cmずらして1同様に1周巻く また、自分の足に合ったインソール(中敷)に変更することでも、シンスプリントの痛みの予防につながります。なぜなら、足のアーチが崩れると、バランスをとる際に筋肉に負担がかかってしまうからです。足のアーチを支えるインソールは数千円と高額ですが、痛みの予防につながり、一生使う自分の足を守れると考えると決して高い買い物ではありません。 ただし、テーピングやインソールの活用だけでシンスプリントが完治するわけではないので注意しましょう。 日常生活での注意点とスポーツ活動再開のタイミング シンスプリントにおける日常生活での注意点とスポーツ活動再開のタイミングは、以下のWalshによる疼痛stage分類を参考に行います。 分類 内容 Stage 1 運動後にのみ疼痛あり Stage 2 運動中に疼痛あるが,スポーツ活動に支障なし Stage 3 運動中に疼痛あり,スポーツ活動支障あり Stage 4 安静時にも慢性的な持続する疼痛あり Stage1〜3の場合、痛みによる日常生活への影響は少ないことが多いです。しかし、Stage4の場合は痛みの増悪を防ぐためにも、安静にしなければいけません。 また、スポーツ活動のタイミングは以下の通りです。 ・症状が軽度の場合:約2週間 ・症状が重度の場合:2〜3ヵ月 ただし、いきなり激しい運動を行うと、再度シンスプリントを発症する可能性もあるため、初めはウォーキングなどから低負荷な運動から始めましょう。 シンスプリントをしっかり治療してスポーツに復帰しよう シンスプリントは適切に治療することで、再びスポーツに復帰できます。 治療の選択は、シンスプリントによる腫れや痛みが強い場合は、アイシングと安静が必要です。併せて薬物療法を行うことで痛みがさらに軽減できます。リハビリテーションは腫れや痛みが治ってきてから徐々に始めましょう。 シンスプリントは一度治っても、再発する症状であるため、日頃からシンスプリントにならないようにストレッチや筋トレを行い予防していきましょう。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献 三笠製薬株式会社.15.シンスプリント. jason E. Bennet.Running and Osteoarthritis: Does Recreational or Competitive Running Increase the Risk?. 持田尚.床反力からみた中学陸上競技者のシンスプリント発症に関する前方視的研究.
最終更新日:2024.07.02 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
〜自宅でもケアして回復をサポートしましょう〜 「股関節唇損傷ってなに?」 「サッカーをしているときに股関節を痛めたけどどうすればいいの?」 このように悩でいる方も多いのではないでしょうか。 股関節を痛めるとスポーツができなくなるだけではなく、歩いたり走ったりできなくなります。さらには、股関節唇損傷により大腿骨頭が安定しないため、腰や膝を痛めやすくなり日常生活に支障をきたす恐れがあります。 今回は股関節唇損傷の診断や治療、自宅でできるケアなどを詳しく紹介します。この記事が、股関節唇損傷と診断され症状に悩んだり、早く回復できないかと感じたりするあなたの悩みを解決できると幸いです。 股関節唇損傷って何? 股関節唇損傷は 「股関節を構成する寛骨臼(股関節のくぼみの部位)の軟骨の一部が剥がれたり傷ついたりすることで起こる病気のこと」です。 スポーツで脚を広げ過ぎたり、繰り返し関節を曲げたりすることがきっかけで発症します。ほかにも、もともと股関節が傷つきやすい形であることが原因で起こります。 股関節唇損傷になった始めの頃は、歩くときに違和感を覚えるくらいの症状です。ただし、病気が進むと階段を登るときや椅子に座るとき、しゃがむときなどの衝撃に痛みを生じることもあるでしょう。そのため、股関節唇損傷による症状が悪くなる前に対処することが大切です。 股関節唇損傷の診断と治療 ここでは、股関節唇損傷と診断される基準や治療方法、治療後のリハビリテーションについて詳しく解説します。それぞれをみていきましょう。 専門家による診断プロセス 股関節唇損傷と診断されるまでには以下4つの流れがあります。以下の表を参考にしてください。 診断の流れ 特徴や注意点 1.問診 ・医師が以下のポイントで患者さんに詳しく確認 痛みの部位(股関節前/後ろ/内側/外側のどのあたりか) 痛みの程度(鈍痛/刺痛/ずきずき痛むか) 痛みの発症時期(いつ頃から痛み始めたか) 安静にしているときと動いたときで違いがあるか 日常生活で困っていることはないか スポーツ外傷のときは受傷したときの状況を詳しく確認 視診:腫れ、変形、歩行の異常がないか観察 2.身体診察 ・視診:腫れ、変形、歩行の異常がないか観察 ・股関節の屈曲、伸展、内転、外転を確認 ・内旋外旋運動をして可動域と痛みの有無を確認 ・徒手筋力検査で股関節周囲の筋力を確認 ・なかには理学療法の検査を実施する場合もある 3.画像検査 ・X線検査(レントゲン):骨折や関節症に変化がないか確認 ・MRI検査: 関節軟骨の状態(損傷の有無)、靱帯断裂の有無、関節唇の損傷(部位、程度)を詳細に評価 4.診断 1~3を実施して、最終的に医師が診断 問診や身体診察のみで股関節唇損傷と診断する場合もあります。 ただし、ほかの病気や外傷がないかを確認するためにX線検査やMRI検査が行なわれるのが一般的です。 医師の指示によっては、追加の検査が行なわれることもあります。 治療オプション 股関節唇損傷の治療は主に以下の4つです。 ・物理療法 ・薬物療法 ・手術 ・リハビリテーション 股関節唇損傷は、自然と治癒することはほとんどありません。そのため、適切な治療を受けることが重要です。ここでは、それぞれの治療方法を詳しく解説します。 股関節唇損傷と診断されると、手術する前に保存療法(手術以外の方法)を行います。具体的には、電気や光線、超音波などのエネルギーを利用した治療です。整形外科や整骨院で行われている電気マッサージをイメージするとわかりやすいでしょう。 これらの治療は、痛みを減らす効果が期待できます。ほかにも、日常生活のなかで困っていることに対して動き方や関節の使い方などを指導して、可能な限り自力で行えるように支援します。 また、痛みが強いときには痛み止めの薬を飲んだり、ヒアルロン酸注射やステロイド注射などの薬物療法を実施する場合があります。痛みが軽くなると、リハビリテーションを進めやすく日常生活も送りやすくなるでしょう。 ただし、物理療法と薬物療法、いずれの治療法も股関節唇損傷を治すものではありません。あくまでも股関節唇損傷によってあらわれる症状に対して治療を行うものであり、根本的な治療ではないことを知っておいてください。 物理療法や薬物療法を行っても痛みが続いたり、日常生活を送るのが難しくなったりするときは手術になる恐れがあります。股関節唇損傷の手術には、股関節鏡視下術で股関節の裂けた部分を修復したり除去したりします。ほかにも、再建術があります。かかりつけ医と相談のうえで、納得できる治療方法を選びましょう。 治療後のリハビリテーション 股関節唇損傷の治療を行った後のリハビリテーションは主に次の2つです。 ・筋力トレーニング ・股関節の可動域のトレーニング 治療後は痛みが生じる恐れがあるため、主治医の指示のもとで痛みが出ない範囲でリハビリテーションに取り組みます。治療したばかりの頃は、回復を図りながら負担がかからないように股関節を動かしてください。身体の状態が安定してくると、少しずつ負荷をかけて歩行の距離を伸ばします。治療後の段階や痛みの程度など患者さんそれぞれによってリハビリテーションの内容は異なるため、主治医やリハビリのスタッフと相談しながら進めましょう。 自宅でのケアと回復サポート 股関節唇損傷は、自宅でもケアすることが大切です。自宅での適切なケアが回復を進めるといえるでしょう。 日常生活での注意点 日常生活では、次のポイントに注意することが重要です。 ・激しい動作や無理な体勢は避ける ・長時間の座位や立位は避ける ・適度な休息を取り、過度の負荷は避ける ・つま先立ちや深い屈曲は避ける 上記のような行動を避けることで、股関節への負担を軽減できます。痛みの程度や治療後の主治医からの指示によっては、移動する際に補助器具を使用したり、手すりを使ったりなどの工夫が必要です。 自宅で行うことができるストレッチと運動 ここでは、自宅で行うストレッチや運動を紹介します。 ストレッチ 運動 ・腸腰筋ストレッチ ・膝立て運動 床に仰向けになり、片膝を立てて太ももを引き寄せる。反対側の足裏をベッドにつけたままゆっくり膝を伸ばす 仰向けになり片足を床につけ、もう片方の膝を立てる ・大腿四頭筋ストレッチ ・伏せ運動 壁に立ち足を後ろに引いて膝裏をストレッチ うつ伏せになり、片足ずつ後方に引き上げる ・内転筋ストレッチ - 片足を閉じて、もう片足を広げるイメージでストレッチ - 回復をサポートする栄養と生活習慣 股関節唇損傷の回復をサポートする栄養には、次のものがあげられます。 栄養素 目的 食品 タンパク質 筋肉や靭帯の修復 ・赤身肉 ・卵 ・大豆食品など オメガ3脂肪酸 炎症を抑える ・大豆 ・青魚や青魚から取れる魚油 ・くるみなど ビタミンC 組織の修復を助ける ・オレンジ ・いちご ・ブロッコリーなど 上記の食品を摂取できると、股関節唇損傷の回復に役立つ可能性があります。 一方で、喫煙すると血液の流れが悪くなるため禁煙してください。ほかにも、ストレスがかかると身体が回復しにくくなったりするため、リラックスして身体を休めましょう。 予防と長期的な管理方法 股関節唇損傷を発症すると、自然に治ることはほとんどないといわれています。そのため、股関節唇損傷の予防と長期的な管理が大切であり、時間がかかります。それぞれについて詳しくみていきましょう。 股関節唇損傷の予防方法 先述したように、股関節唇損傷の予防方法はできるだけ股関節に負担がかからないように身体の動かす方法を実践することです。股関節が深く曲がったり、股関節が開いたりする動作はしないでください。 例えば、以下の動作は避けましょう。 ・深いソファや床に座る ・しゃがみ込む ・椅子から立つときは積極的に手すりを使う また、体重が重すぎると股関節への負担となるため、適正な体重の維持が大切です。 適正な体重はBMI(体重kg÷身長mの2乗)で18.5〜25未満とされているため、このBMIを目安としましょう。 長期的な健康維持のための運動療法 股関節唇損傷は、股関節に負担がかかることで発症する病気です。そのため、体幹の機能訓練や骨盤の可動域を改善する訓練、臀部の筋力強化などを行わなければなりません。とはいえ、運動療法を行うことにより、かえって股関節に負担がかかる恐れがあります。そのため、理学療法士やトレーナーに相談したうえで実施してみてください。 おわりに 股関節唇損傷は、股関節に負担がかかることで軟骨の一部が剥がれたり傷ついたりすることで起こります。一般的には、まずは物理療法や薬物療法などの保存療法を行い、効果がなければ手術を検討します。 ただし、治療だけではなく自宅でできるストレッチや軽い運動をすることで、回復をサポートできる可能性があります。整形外科医や理学療法士などに相談しながら、社会生活への早期復帰を目指しましょう。 監修:医師 加藤 秀一 参考文献 股関節唇損傷とは|北長会記念病院 股関節唇損傷の手術後のリハビリテーション|AR-Ex尾山台整形外科 東京整形外科クリニック|股関節唇損傷 股関節内病変の診断と治療 e-ヘルスケアネット|厚生労働省 オメガ3脂肪酸について知っておくべき7つのこと|厚生労働省 e-ヘルスケアネット|厚生労働省
最終更新日:2024.07.09 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
恥骨結合炎を徹底解剖!原因から治療法まで 「健康のためにランニングをはじめたら恥骨のあたりが痛い」「走ったあとや、ずっと座っていると痛みが増す」と困っていませんか? 恥骨とは、おへそから下に向かって手を滑らせていくと陰毛のあたりで触れる骨で、このまわりで炎症が起こることを恥骨結合炎(恥骨炎)といいます。 今の痛みが恥骨結合炎なのか、運動はやめたほうがいいのか、対処法はないのか気になりますよね。この記事では以下について解説します。 ・恥骨結合炎の原因・症状・診断方法・治療法 ・自宅でできるストレッチ ・日常生活で気をつけたい注意点 ・恥骨結合炎と間違えやすい病気 正しい知識を身につけ、はやめに対処したり医師に相談して悪化をふせぎましょう! 恥骨結合炎(恥骨炎)の3つの原因 恥骨結合炎の原因は大きくわけて以下の3つです。 ・スポーツ ・妊娠・出産 ・感染症 恥骨は陰毛のあたりで左右から向かい合い、中央で軟骨をはさんで合流しています。この合流した部分を恥骨結合といい、スポーツや妊娠出産・感染症で炎症をおこすと恥骨結合炎になります。 原因を1つずつみていきましょう。 原因1:サッカーやランニングなどのスポーツ 恥骨結合炎を起こしやすいスポーツは以下のとおりです。 ・ランニング ・サッカー(ボールを蹴る動作) ・ジャンプ ランニングやサッカー、ジャンプは恥骨のあたりに体重がかかりやすく、反復する運動なので恥骨結合に負荷がかかります。 例えば、1回や2回同じ場所を軽くぶつけても平気ですが、一定のリズムで何度もぶつけたら赤くなりますし痛みを感じます。この状態が恥骨のあたりで起こり続けると、恥骨結合や恥骨結合にくっついている周りの筋肉に炎症を起こします。 原因2:妊娠・出産 女性は妊娠・出産時に恥骨結合炎を起こしやすいです。 ・骨盤がゆるむ妊娠後期 ・骨盤を赤ちゃんの頭が通る出産時 ・骨盤が不安定な出産後 妊娠後期では、産む準備のために出るホルモンで骨盤がゆるみ、赤ちゃんの頭が骨盤内におさまるため恥骨が圧迫されます。 赤ちゃんの頭が産道を通る出産時も、恥骨が強く圧迫されるので痛みがでやすいでしょう。 出産後、ゆるんだ骨盤は自然にもどりますが、すでに妊娠や出産で疲労がたまっている恥骨部は、赤ちゃんの抱っこなどの育児で炎症が起きやすい状態です。 妊娠後期から出産後まで恥骨のあたりが痛む場合は、はやめに助産師や医師に相談してください。 原因3:感染症 まれですが、感染症により化膿性の恥骨結合炎を起こします。 ・術後に感染する(術後感染) ・尿道カテーテルを通して感染する(尿路感染) ・日常生活での感染 泌尿器科や婦人科(帝王切開など)の術後感染や、尿道カテーテルなどで尿路感染を起こすと、骨盤内で炎症が起き恥骨結合炎になるケースがあります。 また、手術をしていなくても、健康な人が保菌している黄色ブドウ球菌や水まわりに常在する緑膿菌に感染することで化膿性恥骨結合炎を起こすため、まれではありますが頭に入れておきましょう。 恥骨結合炎の3つの症状 恥骨結合炎には以下の症状があります。 ・恥骨部・鼠径部・下腹部の痛みや違和感 ・いつものように歩けない・走れない ・発熱(感染性の場合) ひとつずつ見ていきましょう。 恥骨部・鼠径部(そけいぶ)・下腹部の痛みや違和感がある 代表的な症状は恥骨部や鼠径部(足の付け根)・下腹部の痛みです。 ランニングなどの**運動後や股関節周りの筋肉が強く働いたあとに痛みます。**最初は違和感や鈍い痛みですが、悪化していくと刺すような鋭い痛みで激痛となることも珍しくありません。 症状が重くなると、かがんだり立ち上がるといった日常的な動作でも痛むようになり、安静にしていても痛みが続きます。 いつものように歩けない・走れない うまく力が入らずいつものように歩けなかったり走れないといった症状があります。恥骨結合からお腹や内ももと繋がる筋肉もいっしょに炎症を起こすため、いつもと違った歩き方になったり、うまく走れません。 発熱がある 感染も起こしている場合は、からだが病原菌と戦うため発熱します。感染を起こしていない場合は発熱はありませんが、恥骨部が痛くて熱も出てきた場合はかならず病院を受診しましょう。 恥骨結合炎の診断方法 恥骨結合炎の診断は以下の3つでおこないます。 ・触診 ・MRI検査 ・レントゲン検査・CT検査 それぞれ解説します。 診断方法①:触診 医師が実際に痛いところとその周辺を触り、痛みの正確な位置や痛みの程度を確認します。 痛いところを触られるのはつらいと思いますが、正しい診察のために触診は必要な検査なので、少しの間がんばりましょう。 診断方法②:MRI検査 MRI検査は、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging)のことで、磁石と電磁波をつかって体内の組織を画像化します。 健康な組織と炎症(病変化)している部分とではコントラストが大きく違って写されるので、痛みの原因や場所をつきとめるために必要な検査です。 大きな筒状の機械に20分~1時間ほど入るため、閉所恐怖症の方は医師につたえましょう。また、MRIは強い磁力があり、体内に金属が入っている場合は検査ができないため、事前に医師に相談してください。 診断方法③:レントゲンやCT検査 MRIは時間のかかる検査のため、素早く撮影できるレントゲンやCT検査をおこないます。レントゲンやCTはX線をつかった検査で、骨の異常や炎症している部分をうつします。金属が入っていても検査が可能です。 恥骨結合炎は何科で診断してもらう? 恥骨結合炎は、骨や筋肉の異常のため整形外科で診断・治療します。 運動後だったり恥骨の痛みや場所がはっきりしている場合は整形外科を受診しますが、妊娠出産前後の恥骨結合炎は助産師や産婦人科にまずは相談しましょう。 恥骨結合炎の治療法 恥骨結合炎の治療法をまとめました。 ・保存的加療(手術をしない治療) ・最新の治療 それぞれ解説します。 保存的加療 恥骨結合炎の治療では、手術をしない保存的な治療がメインです。 ・安静にする ・痛み止めや炎症止めの薬を飲む ・マッサージやストレッチをする ・リハビリをする 恥骨結合の炎症がおさまるまでは薬を飲んだり、冷やして安静にしましょう。 傷ついた筋肉や痛みをかばうためにほかの筋肉も疲労しているので、痛みがひいてきたら医師の指示のもとマッサージやストレッチをおこないます。3週間ほどは運動を制限しながらのリハビリで筋肉を強化し、すこしずつ運動量を増やして数か月でスポーツができるまでに回復します。 ただし、恥骨結合炎は再発しやすい病気なので絶対に無理しないようにし、医師の判断のもと治療しましょう。 最新の治療法 恥骨結合炎の最新の治療法はこちらです。 ・内視鏡的恥骨結合掻把(ないしきょうてきちこくけつごうそうは) ・運動器カテーテル治療 恥骨結合炎の重症例ではお腹をひらく開腹手術が一般的ですが、最近では内視鏡をつかってお腹をきらずに手術をおこなう内視鏡的恥骨結合掻爬がおこなわれます。 そのほか、手術適応ではないけれど再発を繰り返す場合に、運動器カテーテル治療が注目されています。 運動器カテーテル治療とは、足の付け根や手首などの結果から0.6mmほどのカテーテルを入れ、病変部位の細かい血管を減らす治療のこと。炎症が起こると、その周囲に細かい異常な血管がたくさんできますが、カテーテルで異常な血管をなくすことで痛みや炎症をおさえます。 まだ新しい治療方法のため保険適用ではありませんが、いま注目されている治療法です。 自宅で予防できるストレッチ5選 恥骨結合炎は再発しやすく、一度症状が出ると治るのに時間がかかるため、日頃から予防したいですよね。 恥骨にくっついている筋肉は、大内転筋・小内転筋・長内転筋・薄筋・恥骨筋・腹直筋などで、内ももや股関節まわり・下腹部にあります。これらの筋肉をほぐすストレッチで予防しましょう! (注)炎症が強い場合や痛みがあるときは自己判断でやらず、かならず医師の診察をうけてください。 内もも・股関節のストレッチ① 床にすわり、足の裏どうしを合わせて股関節をひろげます。 手は両足のつま先をそっとつつみ、上半身を前へたおします。 ゆっくり3回ほど呼吸します。(約20~30秒) 背中が曲がらないように気をつけましょう。 内もも・股関節のストレッチ② 大内転筋ストレッチの姿勢から、両足をすこし前に出します。(ダイヤの形) 手は両足のつま先をつつみ、上半身を前へたおします。 ゆっくり3回ほど呼吸します。(約20~30秒) 両足の位置は少し調整し、気持ちのいいところでおこなってくださいね。 内もも・股関節のストレッチ③ 長内転筋ストレッチの姿勢から両足を伸ばしひらきます。(開脚している状態) 手は前につきゆっくり上半身を前にたおします。 ゆっくり3回ほど呼吸します。(約20~30秒) 上半身を前にたおすときに、つま先が上になるように気をつけましょう。 お腹のストレッチ① うつ伏せになり、足を肩幅ほどにひらきます。 両手を肩の横につき、気持ちのよいところまで肘を伸ばします。 ゆっくり5回ほど呼吸します。(60秒前後) 目線はななめ上または正面に向け、無理せずおこないましょう。 お腹のストレッチ② 手のひらと両膝を肩幅程度にひらき床につけ、よつんばいの姿勢になります。 息を吐きながら背中を丸めおへそを見ます。 息を吸いながら背中を反らし天井を見ます。 ゆっくり5回ほど呼吸しながら繰り返します。(60秒前後) 天井を見るときに顎が上がると首を痛めやすいので顎をひいておこないましょう。 日常生活での注意点 恥骨結合炎は数週間~数か月と完治まで時間がかかり、再発もしやすい病気のため、日常生活に気をつけなくてはいけません。 ・姿勢や動作 ・体重のコントロール 恥骨結合炎の治療・予防に重要な2つの注意点をまとめました。 日常生活の注意①:姿勢や動作 恥骨に負担がかかりやすいのは、体重が前にかかる・体重が左右にかたよるときです。 前傾姿勢にならないように注意するのと、片方の足に体重をかけて立たないようにしましょう。落ちたものを拾いたいときなどは、なるべく膝を曲げ体重が前にかからないようにします。 ベッドから起き上がる動作は下腹部・恥骨に力がかかるので、**まず横向きになり手で床を押しながら起き上がりましょう。**床に敷く布団だと、起き上がりはベッドと同様にできても立ち上がる動作がどうしても負担になります。可能であればベッドを使用するといいです。 ビーズクッションなどのやわらかいソファは立ち上がる動作が負担になるので使用はひかえましょう。 日常生活の注意②:体重のコントロール 恥骨に負担がかかるのは体重がかかるときなので、肥満の場合は体重を落とすことも考えます。とはいっても、治療中だと運動は制限されるので、食事内容や量を見直しましょう。 肥満ではなくてもスポーツをしていて恥骨結合炎になった方は、運動を制限する治療期間中の消費カロリーが大幅に減ります。 同じように食べていると体重が増えてしまうため、注意しましょう。 恥骨結合炎と似ている病気 恥骨結合炎に似ている病気もあるため、症状や痛みの具合から「恥骨結合炎かも?」と思っても、自己判断しないようにしましょう。自分でそうだと思い込み対応するとかえって悪化することがあります。 恥骨結合炎とよく間違えられる病気をご紹介するので、参考にしてください。 グロインペイン症候群 グロインペイン症候群は鼠径部痛症候群ともいわれ、恥骨結合炎と症状が似ており間違えられやすい病気です。鼠径部は「そけいぶ」と読み、足の付け根あたりを指しますが、グロインペイン症候群では足の付け根、下腹部、睾丸のうしろ、内ももが痛みます。 痛みの場所もですが、サッカー選手に多く見られることも恥骨結合炎と似ています。 恥骨結合炎と違うのは恥骨部分の炎症がないことで、グロインペイン症候群の治療では股関節だけを動かさないような運動の仕方や筋力強化のためのリハビリが主です。 炎症が起きている場合は運動制限が必要なので、似た症状でも治療内容が異なることを頭にいれておきましょう。 恥骨結合離開(ちこつけつごうりかい) 恥骨結合炎と間違えられやすい病気に恥骨結合離開があります。 事故などの外圧や出産などで左右からのびた恥骨を結合させている軟骨が離れています。離れてしまう状態のことで、症状は恥骨結合炎と同じく恥骨部の痛みですが、時折、痛みが非常に強くなるために、正常に歩行することが困難になる状況も存在します。 通常は運動しただけで離開することはありませんが、腰を強く強打したあとに痛み出した・出産後に強い痛みがある場合は医師に相談しましょう。 恥骨結合炎(恥骨炎)の治療法・予防法まとめ いかがでしたか? ・恥骨結合炎の症状や治療 ・自宅でできるストレッチ ・日常生活の注意点 ・恥骨結合炎と似ている病気 ここまで4つのポイントを解説してきました。 恥骨結合炎は、完治まで長い時間がかかり再発しやすい病気のため、日頃からストレッチをしたり、恥骨に負担をかけないよう動作に気をつけて過ごしましょう。 また、恥骨の痛みがなかなか治らない場合は似ているほかの病気も考えられるため、自己判断せず受診してくださいね。 監修:医師 加藤 秀一 参考文献一覧 日臨外会誌 79( 1 ),164―168,2018 Osteitis Pubis in Athletes: A Literature Review of Current Surgical Treatment 医学書院 医療情報サービス 日本整形外科学会
最終更新日:2024.07.09 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
ランニングの最中やランニングのあと、恥骨のあたりに痛みがでませんか? 違和感や痛みがあり、うまく力を入れられず歩きにくい・走りにくい方は恥骨結合炎かもしれません。 ランニングやサッカーをする方に多い恥骨結合炎(恥骨炎)ですが、治るまでに時間がかかったり、やっと治っても再発しやすく、スポーツの習慣や日常生活にも影響がでやすいです。 この記事では、なぜ恥骨結合炎になるのか・症状や治し方・病気との付き合い方を徹底解説します。 恥骨結合炎でもランニングしたい場合や、どのような症状が出たら病院に行くべきかもあわせて解説しますので、ぜひ最後までお読みください。 恥骨結合炎とは? 恥骨はちょうど下着で隠れるところにあり、陰毛の生え際あたりに触れる骨です。左右に1つずつある恥骨は、真ん中で軟骨をはさむように結合しており、これを恥骨結合といいます。 恥骨結合に負荷がかかると炎症を起こし痛みがでますが、どういったときに恥骨結合に負荷がかかり、どんな症状がでるのか、わかりやすく解説します。 恥骨結合炎の原因 走る・ボールを蹴るなど恥骨周囲に力がはいったり、恥骨結合とつながる筋肉に負荷がかかることで恥骨結合に炎症を起こします。 とくにサッカーやランニングは恥骨や股関節にくりかえし負荷がかかり、恥骨結合炎になりやすいため、運動後に痛みがでる場合は注意してください。 スポーツ以外の原因としては、出産前後で恥骨を痛める場合や、手術後の感染症で骨盤のなかで炎症が起きた場合などがあげられます。 恥骨結合炎の症状 恥骨結合炎の症状は痛みですが、痛みの場所はさまざまです。 鼠径部(足のつけ根)の痛み 恥骨の痛み 太ももの内側の痛み 下腹部の痛み 炎症を起こしている恥骨結合部のほか周囲の筋肉に痛みを感じ、運動中や左右どちらかに体重をあずけたとき、足をあげたとき、足を外側へ広げるときなどに痛みます。 悪化すると、安静にしても痛みが消えず、走れないばかりか歩行障害がでたり股関節をいつもどおりに動かせなくなります。 日常生活に影響がでるため、痛みがあったら無理せずに安静にしましょう。 恥骨結合炎の検査と診断 恥骨結合炎が疑われる場合の、病院で受ける検査や診断方法をご紹介します。 どういった検査をするのか 診断までの流れ が分かるので、受診を迷っている方はぜひ参考にしてください。 恥骨結合疑いの検査:①X線検査(レントゲン、CT) レントゲンとCTはどちらもX線をつかう検査で、レントゲンが1方向からの撮影に対しCTは360°撮影する3次元的な検査です。 X線は体を通り抜けますが、たとえば骨など密度の高い部分と、空気が多い肺などでは通り抜けるX線の量に差があります。この差がX線検査で写しだされます。 レントゲンは異常がすべて写るわけではありません。恥骨結合炎はレントゲンのみで診断できる場合もありますが、重症例やなかなか治らないなど、もう少し詳しい検査が必要なときはCTやMRIの検査をおこなうことを頭にいれておきましょう。 恥骨結合炎疑いの検査:②MRI MRI検査では軟部組織がうつりやすく、恥骨結合部の軟骨や筋肉・炎症部分がはっきりわかるため、恥骨結合炎の診断によくつかわれる検査です。 腰のMRI検査は20~30分ほどかかり、大きな筒のかたちの機械に入るため閉所恐怖症の方は医師にご相談ください。また、強い磁力をつかう検査のため、撮影する部位にかぎらず体内に金属があると検査ができないことがあります。 からだのなかに留置することが前提の医療器具は非磁性で大丈夫なことが多いですが、絶対ではないためかならず医師に申告しましょう。 診断されるまでの流れ 恥骨結合炎と診断される流れは以下のとおりです。 整形外科を受診する 診察を受ける レントゲンやMRIなどの検査を受ける 診察で結果を聞く(診断される) どこが痛むか・いつごろから痛むか・どんなときに痛むか・運動の習慣など、事前に情報を整理して受診しましょう。 まずは医師の診察を受け症状を話すと、検査を指示されます。 最初は腰のレントゲンを撮ることが多いですが、レントゲンには金属がうつってしまうため、ボタンやファスナー・ホックなど金属のついたズボンは脱がなくてはいけません。ジャージやスウェットなど金属のない洋服の着用がおすすめです。 レントゲンではっきり分からない場合や医師が必要だと認めた場合はMRIやCT検査をおこないます。 小さなクリニックでMRIやCTの設備がない場合、提携している検査センターを案内されたり、予約で後日の検査になることも。歩くのもやっとというほど痛む場合や、重症と感じている場合は、あらかじめMRIやCTの設備がある整形外科クリニックを受診するのがおすすめ致します。 検査が終わると診察室で医師から画像検査の結果を聞き、薬の処方や対処法について説明されます。安静にする期間や運動の制限などもし質問があれば、このときに聞くといいでしょう。 恥骨結合炎の治療方法 恥骨結合炎の治療では、手術をしない保存的な治療が第一選択です。保存的な治療の一部はおうちでもできるため、参考にしてください。 保存的な治療法 痛みが強い急性期は以下の4つで対応します。 痛み止めを飲む 冷やす 安静にする 副腎皮質ホルモンの局所注射 痛みが強い場合はストレッチなどはやめ、寝て安静にしましょう。痛み止めを飲んだり、冷やして安静にすることで炎症が落ち着きます。 急性期で炎症が強いときは、市販の痛み止めを飲んでも痛みがひかない可能性があります。安静にしたり冷やしても**痛みがひかないときは病院を受診しましょう。**病院では痛みのある部分に注射等の治療がおこなえます。 痛みが軽かったり、違和感程度の場合や慢性化している場合は以下の対処法があるので参考にしてください。 ストレッチをする 電気治療や鍼治療をうける 適度な運動をする 適度なストレッチは血行がよくなり回復がはやまるため、無理のない範囲でストレッチをしましょう。鍼灸を試すのもおすすめですが、痛みが強い場合はまず整形外科を受診して検査をうけてくださいね。 運動はプールでの水中ウォーキングがからだに負担が少なくておすすめです。 安静にする期間の目安参考 痛みが強い場合、2週間は安静にします。そのあとは痛みの様子をみながらストレッチを開始し、体重のかかりにくい水中ウォーキングなどで全身の筋肉を強化しましょう。 痛みがないか確認しながら、少しずつウォーキングやジョギングに移行しますが、痛みがなくなったからとすぐスポーツをはじめると再発しやすいため注意してください。 完治まで2か月ほどが目安ですが、痛みを繰り返すことがあり3か月~半年以上かかるケースもあります。 恥骨結合炎のストレッチとトレーニング 恥骨結合炎の予防ができるストレッチを紹介します。 恥骨結合には太ももやお腹につながる大きな筋肉がついています。炎症が起きた筋肉や恥骨結合部周辺はこわばっているので、ストレッチでほぐして再発を予防しましょう。 ストレッチは反動をつけず、ゆったりとした動作でおこない、息を止めないよう注意してくださいね。 内転筋のストレッチ 内転筋は恥骨と太ももをつなぐ筋肉で、股関節の内側にあります。ここをほどよくストレッチすることで、恥骨周囲の緊張がほぐれますよ。 あぐらの姿勢から両方の足裏をぴったりとあわせて座ります おへそをぐっと引き上げるようにして骨盤をたてます 背筋をのばし、ゆっくり前へたおれます 3回呼吸しながら伸びを感じます 手は自然と床につくか、つま先にそえてください。 足の裏どうしをくっつけたまま手前に引いたり奥にずらしておこなうと、内転筋の伸びる位置が少し変わり、すみずみまでストレッチできるので試してみてくださいね。 腹直筋のストレッチ 腹直筋は、胸の下から恥骨部までまっすぐのびている筋肉です。腹直筋は大きな筋肉なのでしっかりほぐしましょう。 よつんばいの姿勢になりましょう 両手を肩のまっすぐ下につき、膝を腰幅にひらきます 息を吸いながら背中をまるめ、お腹をみます 息を吐きながら背中を反らしななめ上を見ます 呼吸しながら5回ほど繰り返しましょう お腹の筋肉をゆるめたり緊張させることでしっかりほぐれますよ。 恥骨結合炎におすすめのトレーニング:水中歩行 水の中は浮力があり、自分の重さが軽減されるため負荷をかけずに運動できます。 ただし、バタ足は細かいキックを繰り返し恥骨に負担がかかるため、泳ぐのではなく水中歩行をしましょう。 歩くと水圧で全身にほどよく負荷がかかり、さまざまな筋肉をバランスよく鍛えられますし、10分ほどの運動で効果が得られます。慣れたら20分を週2回ほどおこないましょう。距離は10分あたり300m~500mほどが目安ですが、身長や水深によって負荷が変わるため、距離よりも時間を重視して歩いてください。 前歩きや横歩き、後ろ歩きなどさまざまな歩き方ができますが、特に横歩きは内ももにある内転筋など股関節まわりの筋肉を鍛えられます。 3つの歩き方を組み合わせて、無理なく実践してください。 恥骨結合炎におすすめのトレーニング:ジョギング 恥骨結合炎になったけれど、またランニングがしたい方におすすめなのがジョギングです。 ジョギングは運動強度が競歩と同レベルで、歩行よりも負荷のある運動かつ、ランニングほどの負担がなく運動療法として最適です。 ランニングよりも小幅で、息切れせず隣の人と話せるくらいのスピードで走ります。はじめは歩行とジョギングをくみあわせて10分程度から、すこしずつ歩行を減らしジョギングのみにしていき、時間も増やしていきましょう。 よくある質問 恥骨結合炎のよくある質問をまとめました。 恥骨結合炎でもランニングは可能ですか? 恥骨結合炎は何科を受診すればいいですか? どのくらい安静にしていたらいいですか? 完治するまでの期間はどのくらいですか? 順番にお答えします。 恥骨結合炎でもランニングは可能ですか? 炎症が強かったり、痛みがある場合はランニングはできません。 再発しやすい病気のため、治ったと思っても息が弾むようなランニングをすぐはじめるのはやめましょう。ただし、隣にいる人と会話できる程度のジョギングは、リハビリとしても推奨されており、痛みのない範囲で可能です。 しばらくはジョギングを続け、すこしずつペースをあげていくとランニングができるまでに回復します。 痛みが強かったり、大会など控えている場合はスポーツ専門医に相談しながらリハビリ計画を立てましょう。 恥骨結合炎は何科を受診しますか? 恥骨結合炎かなと思ったら、整形外科を受診しましょう。 整形外科は骨や軟骨・靭帯・神経など、からだを動かすのに必要な器官を専門としています。診察の結果、恥骨結合炎と診断されるとはかぎりませんが、運動器官のスペシャリストなので痛みの原因をしっかり調べてくれます。 妊娠中や出産後の恥骨痛はまず産婦人科や助産師に相談しましょう。 どのくらい安静にしていたらいいですか? 痛みが強い場合は2週間の安静が必要です。 安静中はスポーツや、走ったり重いものを持つといった負担のかかる日常生活の動作もやめ、患部を冷やしてください。そのあとは痛みの具合をみながらストレッチを開始しましょう。 恥骨結合炎はどのくらいで完治しますか? 2か月前後が目安ですが、再発を繰り返す場合はもっとかかる場合があります。恥骨結合炎は再発しやすいため、はやく完治させるには再発予防がカギです。 痛みがひいても安静期間は十分にとってください。また、すぐにスポーツを開始せずストレッチをしながら少しずつ負荷をかけていきましょう。 まとめ:再発を予防してランニングを楽しもう ここまで、恥骨結合炎の原因、検査や治療、トレーニングやよくある質問を解説しました。 恥骨結合炎になっても、再発に気をつけたり十分な治療期間をとることでまたランニングができるようになります。安静期間やストレッチが順調でしたら、歩行をまぜながらゆっくりジョギングしてみてください。 少しずつ、いつもどおり走れるようになるはずです。 すでに再発を繰り返していたり、自分で対処しているけど思ったように治らない場合や、大会などをひかえていて完治したい時期が決まっている場合などは医師の診察を受けてください。 恥骨結合炎をしっかり治し、再発予防しながらランニング生活を楽しみましょう。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 今日の整形外科治療指針 第8版 発行:2021年10月 理学療法化学25巻6号p861-865成長期サッカー選手に対するストレッチング指導の効果 国立健康・栄養研究所「身体活動のMETs表」 きょうの健康NHK
最終更新日:2024.06.26 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
膝関節血腫を正しく理解し、効果的に治療する方法とは 「骨折して膝関節に血がたまった」「膝関節血腫を多く繰り返して困っている」 膝関節血腫はさまざまな原因によって関節内に血がたまる症状です。なかには出血を繰り返すケースもあり、それによって関節の破壊につながる可能性もあります。どの年代にも生じる可能性がある症状ですが、適切な治療法や対策を行うことで改善や予防が可能です。 この記事では膝関節血腫の知識や治療法、自宅でできる対策についてお話しします。ぜひこの記事を読んで、膝関節血腫の症状に悩まされない日々を送ってみてください。 膝関節血腫とは何か 膝関節血腫の定義や原因、症状について詳しく解説していきます。 定義と発生原因 膝関節血腫は膝関節まわりの組織が出血し、関節内に血がたまることです。主にスポーツによるけがで起こる外傷性のものと、特定の要因で繰り返し起こる反復性のものにわかれます。 外傷性膝関節血腫は、靭帯や半月板、滑膜の損傷や、骨折によって組織が出血することにより発症します。前十字靭帯損傷や半月板損傷、内側側副靱帯損傷などで起こることが多いです。 反復性膝関節血腫は、変形性膝関節症(※)による人工関節の手術や血友病(※)、血液凝固薬(血液をサラサラにする薬)の使用などにより関節内が出血しやすい状態となって再発を繰り返す症状です。原因は人工関節の手術が一番多く、手術の0.17〜1.6% の確率で起こることがわかっています。 外傷性の症状はけがの回復とともに改善していきます。しかし反復性の症状は放置すると炎症により関節内の滑膜(※)がダメージを受け、関節の機能を破壊させるおそれがあるため、場合によっては手術の適応になります。 ※変形性膝関節症…膝関節内にある軟骨が加齢によってすり減り、膝関節が変形する病気。膝に痛みがみられるため、膝を動かしたり、歩いたりすることが困難になる ※血友病…血を止めるしくみが生まれつき上手くはたらかず、出血しやすくなる病気 ※滑膜…関節包をおおう膜状の組織。滑膜から分泌される関節液が、関節の動きをなめらかにする油のような役割をもつ 症状の特徴と診断方法 膝関節血腫の症状は膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などです。診断は整形外科でMRIや超音波検査を行い、画像によって血腫の存在を確認します。 外傷性の症状は受傷後すぐにでることがほとんどですが、人工関節の手術による症状は術後数ヶ月〜数年後にはじめてでることが多いです。 膝関節血腫の治療方法 膝関節血腫は自宅でのケアや、医療機関の適切な治療法を行うことで改善が図れる症状です。以下に方法を詳しくお話ししていきます。 自宅でできる初期対応 症状が出現した直後に自宅でできる対応は、患部の安静や冷却、圧迫などです。これらは膝関節まわりで起きている炎症を抑え、症状の回復をはやめる効果があります。 しかし安静の時間が続くと患部の筋力低下が進んでしまうため、足首や足の指を積極的に動かして予防に努めることも大切です。 医療機関での治療オプション 医療機関では関節内に注射針を刺して血を吸引したり、血液凝固薬の内服を中止させたりします。しかし、これらの治療を行っても大きな改善がなく出血を繰り返す場合は、炎症が起きている滑膜を切除する手術や、選択的動脈塞栓術を選択するケースがあります。 選択的動脈塞栓術は、血管を塞いで膝関節内の出血を抑える手術です。足に局所麻酔を行った後、血管内にカテーテルを挿入して出血している血管をみつけ、血を止める物質を挿入します。選択的動脈塞栓術は出血の原因となっている血管だけを塞ぐため、再発を繰り返していた血腫の改善も期待できます。 膝関節血腫の予防と日常生活での注意点 日常生活での予防策や膝を守る運動を行って、日頃から膝関節血腫にならないための対策をしましょう。それぞれ紹介していきます。 日常生活での予防策 膝関節血腫を予防するためには、膝蓋骨の動きや膝まわりの筋肉を柔らかく保つことが大切です。膝蓋骨のモビライゼーションやハムストリングス(太ももの後面についている筋肉)、大腿四頭筋(太ももの前面についている筋肉)のストレッチを行いましょう。 膝蓋骨のモビライゼーション ①膝を伸ばしながら座り、両手の親指とひとさし指で膝蓋骨をつかむ ②膝蓋骨を上下や左右に動かす ※動かし方によっては痛みが生じる場合がありますので、専門家の指示のもと行いましょう ハムストリングスのストレッチ ①両膝を伸ばしながら床に座り、ストレッチする側の足の裏にタオルをかける ②両手でタオルをひっぱりながら足首をお腹側にそらし、太もも後面の筋肉を伸ばす ③太もも後面の筋肉が伸び、痛みのない状態でで20秒キープする。繰り返しながら3セット行う ※目的とする筋肉以外の部分に痛みがでる場合は控えましょう 大腿四頭筋のストレッチ ①うつ伏せの状態になり、ストレッチする側の膝をお尻側に曲げる ②太もも前面の筋肉が伸びた位置で20秒キープする。繰り返しながら3セット行う ※目的とする筋肉以外の部分に痛みがでる場合は控えましょう また、日常生活では以下の点に注意しましょう。 立ち姿勢やジャンプの着地で膝を内側に向けることを避ける 膝まわりが熱くなったり痛みがでたりしている時は、激しい動きを避けて冷却をする これらは生活上で膝への負担を減らすため、けがや再発の予防につながります。 膝を守るための運動方法 膝を守るために膝を支えている筋肉のトレーニングを行いましょう。太もも前後面やお尻の筋肉をきたえるハーフスクワットや、膝を伸ばしたり曲げたりする筋肉のトレーニングが効果的です。以下にご紹介しますが、実施の可否、回数については専門家と相談してみてください。 ハーフスクワット ①足を肩幅に広げて立つ(※この時の膝関節はつま先と同じ方向に向ける) ②股関節と膝関節を曲げながら、お尻を膝より少し上の高さまで下ろす。お尻を下ろした時に膝の位置がつま先より前方に出ないように注意する ③太もも前後面やお尻の筋肉のはたらきを感じながら10回、1日2セット行う 膝関節伸筋の筋力トレーニング ①椅子に座り、膝を伸ばした時に抵抗がかかるように足首と椅子の足をゴムバンドでつなぐ ②ゴムバンドによる抵抗を太もも前面で感じながらゆっくり膝を伸ばす ③10回を1セットとし、1日2セット行う 膝関節屈筋の筋力トレーニング ①うつ伏せの状態になり、トレーニングする側の足首におもりを巻きつける ②おもりによる抵抗を太もも後面で感じながらゆっくり膝を曲げる ③10回を1セットとし、1日2セット行う しかし、これらの運動は膝に痛みや熱感がある時に行うと炎症を悪化させる可能性があります。症状が落ち着いている時期に無理のない範囲で行いましょう。 参考:堀部秀二.明解 スポーツ理学療法.1版.三輪書店.2021.248p.P122−125,152 よくある質問とその回答 Q.膝関節血腫はいつ治りますか? A.外傷性の症状は、けがの発症から2〜3週間程度です。反復性の症状は再発を繰り返すことから長期にわたりやすく、数ヶ月〜数年かかる可能性もあります。症状が長引くほど関節の破壊につながりやすいため、専門外来を受診していただくのをおすすめしています。 Q.膝に血がたまったら歩くのは避けたほうが良いですか? A.外傷性の場合は、けがの経過をみながら歩行を再開する必要があるため、医師の指示にしたがいましょう。けがをした直後は、松葉杖で歩いていただくこともあります。反復性の場合は症状がある時はできるだけ安静に過ごし、歩くのは日常生活で必要な移動程度にとどめましょう。 膝関節血腫のまとめ この記事では膝関節血腫の概要や治療法、日頃から行える予防策と運動方法についてお話ししました。 膝関節血腫は外傷性のものと反復性のものにわかれ、どちらも症状は膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などがある 症状がでたら関節から血腫を吸引する治療を行う。再発を繰り返す場合は、選択的動脈塞栓術を行う可能性がある 膝関節血腫を予防するために、膝関節を支える筋肉のストレッチやトレーニングを日頃から行うと良い ぜひこの記事を参考にして、膝関節血腫に悩まされない日常生活や趣味活動を送ってみてください。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 整形外科シリーズ14 膝靭帯損傷 人工膝関節全置換術後の反復性関節内血腫に対して経カテーテル的動脈塞栓術を行った3例 ヘモフィリア・ヴィレッジ 血友病についてのQ&A 日本整形外科学会 膝関節捻挫 スポーツ損傷シリーズ 6.膝前十字靭帯損傷 人工膝関節置換術後に反復する関節内血腫に対し,関節切開下滑膜切除を行った一例 Selective arterial embolization with gelatin particles for refractory knee hemarthrosis 明解 スポーツ理学療法 Takuji Yamagami, Rika Yoshimatsu, Hiroshi Miura, et al.Selective arterial embolization with gelatin particles for refractory knee hemarthrosis.Diagn Interv Radiol. 2013. 9(5). p423-426
最終更新日:2024.06.26 -
- 幹細胞治療
- 頭部、その他疾患
- 股関節、その他疾患
- 脊椎、その他疾患
減圧症の原因と6つの予防ポイント!わかりやすく解説 減圧症は、急激な高気圧から低気圧への移動時に生じる症状の総称です。減圧症は、潜水や高地登山など、急激な気圧の変化が起こる状況で発症することがあります。 この記事では、減圧症対策として、その原因や予防するためのポイントを6つに分け、わかりやすく解説します。 減圧症の原因 減圧症のメカニズムとしては、身体の周囲の気圧が急激に低下することで、体内の血液や組織に溶け込んでいる窒素ガスが血液や皮膚・筋肉・臓器などの組織の中で気泡を作り、血流障害や組織の破壊を引き起こすというものになります。 潜水における減圧症 潜水中に吸い込んだ空気中の窒素は血液や組織に取り込まれますが、水圧が高いところではその量が増えていきます。すると、窒素は急速にそして過剰に血液や組織に溶け込みます。その状態で急速に水面に浮上すると、周囲の水圧が低下するために血管内や組織内で窒素の気泡が形成されます。 この気泡が、血管を詰まらせて血流を阻害したり、組織を破壊したり、炎症反応を引き起こすことで、さまざまな障害や症状を引き起こすのです。 減圧症は潜水後に起こることが多いので、潜水病とも呼ばれます。 減圧症の影響 減圧症では、水面に浮上した後に倦怠感や疲労感、食欲不振、頭痛などの初期症状が現れることがあります。そして、徐々に他のさまざまな症状も現れてきます。 減圧症には、以下の2つのタイプがあります。 症状(Ⅱ型は、Ⅰ 型よりも重症です) ・ Ⅰ型:皮膚や筋肉の症状(ベンズ)のみ ・Ⅱ型:呼吸・循環器症状(チョークス)や中枢神経症状を伴うもの 減圧症では、脊髄損傷も起こりやすいとされています。 その他には、脳障害、呼吸器系の障害(肺塞栓など)、循環器系(心不全や心原性ショックなど)もあります。 また、減圧症の長期的な影響として、減圧性骨壊死という骨の障害もあります。この骨障害は、肩関節や股関節によく起こります。特に、大腿骨頭壊死が起こると、歩行障害などの影響がでたり、重症な場合には手術が必要となることもあります。 減圧症の治療の応急処置としては、100%酸素吸入を行っていきます。そして、専門医療機関では、高気圧酸素療法が行われます。 減圧症の予防ポイント6つ! ダイビング時だけでなく、登山時にも引き起こされることがあります。減圧症を予防するためのポイントを6つに分けて解説します。 ①潜水前の注意 減圧症は、以下に述べるような要因があるとそのリスクが増大します。 以下のようなリスクがないかどうか、潜水前にチェックしておくことが大切です。 ここにあげたようなリスクがある方については、医師に事前に潜水をしてよいか、確認をしておく方がよいでしょう。また、潜水前には、適切な訓練と手順を確実にチェックし、それを守ることが必要です。 リスクを避けるためのチェック項目 ・卵円孔開存(らんえんこうかいぞん)や心房中隔欠損などの心臓の病気 ・疲労 ・肥満 ・高齢 ②潜水時の注意 急激な深さへの潜水や長時間の潜水は避け、適切な休憩を取りましょう。 また、浮上の速度は15〜30cm/秒を超えないようにします。さらに、水深3~4mの地点で3~5分間の安全停止をすることも、圧力の平衡を保つために推奨されています これに関しては、米国海軍潜水マニュアル(United States Navy Diving Manual)といった正式なガイドラインなどを参考にして、浮上したりすることで減圧症の予防につとめましょう。 ③潜水後の注意 ダイビング後12〜24時間以内は飛行機に乗らないようにしましょう。 潜水活動を行った後に飛行機に乗るような場合には、12〜24時間は海抜0の場所にとどまり、一定期間の休息後が望ましいとされています。 ダイビング後12〜24時間以内に飛行機に乗ると、減圧症のリスクが高まることが知られているのです。 ④高地登山の適切な計画 登山中に急激な標高の変化があると、大気中の酸素濃度が減少し、それによって減圧症が引き起こされることがあります。 登山前には、適切な標高への適応期間を確保し、急激な標高の変化を避けるよう計画しましょう。適切な装備の使用や体調管理も欠かせません。 ⑤十分な水分摂取 どの状況においても、十分な水分摂取が重要です。 水分不足は体調不良を引き起こしやすくなりますので、こまめな水分補給を心掛けましょう。 ⑥専門家のアドバイスを仰ぐ 潜水や高地登山など、特定の状況における活動前には、専門の医師や指導者に相談し、適切なアドバイスを得ることが賢明です。 以上のポイントを守ることで、減圧症のリスクを最小限に抑え、安全にダイビングをしたり登山をしたりすることが可能となるでしょう。 まとめ・減圧症の原因と6つの予防ポイント!わかりやすく解説 今回の記事では、減圧症の原因やメカニズム、予防法について詳細に解説しました。 しかしながら、適切な予防法をとっていても、減圧症による脊髄障害や脳障害によって麻痺などの症状が残ってしまう場合もあります。 こうした減圧症による脊髄損傷に対しては、リハビリテーションを行ったり、場合によってはステロイドなどの薬物治療が行われることが一般的です。しかしながら、こうした方法は根本的な治療法ではありませんでした。 そこで当院では、幹細胞治療として、自分の脂肪から培養した脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。この治療は、幹細胞を脊髄腔内に直接注入するというものです。 今までに、脊髄損傷の症状が改善されたという報告も寄せられており、今後に期待が持てる治療の一つと言えます。 ▼減圧症などで脊髄損傷を起こしてしまった方で、再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE No.166 監修:医師 坂本貞範 ▼減圧症のセルフチェックは以下です 減圧症(潜水病)は軽度なら自然治癒も!症状のセルフチェックリストをご紹介 参考文献 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDプロフェッショナル版 素潜り漁中に発症した脳型減圧症の1例.臨床神経学. 2012;1052(10):757-761 潜水時の予防措置および潜水障害の予防 - 22. 外傷と中毒 - MSDマニュアル プロフェッショナル版 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDマニュアル家庭版
最終更新日:2024.05.16