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骨壊死の分類について|股関節・肩の骨頭壊死と膝の骨壊死症 骨壊死とは骨を栄養している血管が障害されて血液が供給されなくなってしまった結果、骨の一部分が壊死してしまう病気です。怪我などの外傷による血管の障害や、アルコール、ステロイド使用者などに原因不明で生じることがあります。 この記事ではそれぞれの骨頭壊死と骨壊死の種類について解説し、重症度を決める分類方法やステージの内容について詳しく解説していきます。 骨壊死と骨頭壊死症 骨壊死は全身のあらゆる骨に起こり得ますが、代表的な部位として、股関節の大腿骨頭に起きる大腿骨頭壊死、肩関節の上腕骨に起こる上腕骨頭壊死、膝関節骨壊死などがあります。 股関節、肩関節についてはそれぞれ、大腿骨頭、上腕骨頭という部位があるので骨頭壊死という病名がつきますが、膝関節は骨頭という部位がないので骨壊死という病名となります。 大腿骨頭壊死について 大腿骨頭壊死の原因 股関節を構成している大腿骨頭を栄養している血管が障害されることによって生じます。 原因不明の特発性と股関節の骨折や脱臼などの外傷、放射線治療、潜函病などによって発症する場合があります。 大腿骨頭壊死の分類 原因不明である特発性骨頭壊死では壊死の範囲によって重症度分類がありType A~Cに分けられます。 重症になるほど、壊死範囲が大きく、大腿骨頭が潰れてしまうリスクが高くなりType Aが軽症でCになるとより重症となります。Type CはさらにC-1とより重症なC-2に分けられます。 それぞれの内容について解説します。 Type A:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3未満 Type B:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3〜2/3 Type C:壊死範囲が体重がかかる領域の2/3以上 Type C-1:壊死の範囲が骨盤の縁の内側にあるもの Type C-2:壊死の範囲が骨盤の縁の外側にあるもの 大腿骨頭壊死のステージ分類 大腿骨頭壊死の進行度についての分類です。初期には壊死部分が潰れていき、進行すると軟骨がすり減ることによって変形性関節症になってします。ステージは1〜4に分けられるので、それぞれについて簡単に解説します。 ステージ1:レントゲンで異常がなく、MRI検査などで壊死がわかる場合 ステージ2:レントゲンで異常があるものの、骨頭が潰れていない時期 ステージ3:骨頭が潰れているものの、関節軟骨があり関節の隙間が残っている時期 ステージ4:軟骨がすり減り、変形性関節症となっている時期 これらの重症度、ステージ分類とご本人の年齢や社会生活の状況、希望などを考慮して治療方針が決定されます。軽症なタイプであれば保存治療で治る方もいますが、重症なタイプや末期のステージでは手術を要する場合もあります。 上腕骨頭壊死について 上腕骨頭壊死の原因 肩関節を構成している上腕骨頭という部分を栄養している血管が障害されることによって骨が壊死してしまう病気です。 原因は、外傷性と非外傷性に分けられます。外傷性には上腕骨の骨折、脱臼などがあり、非外傷性にはステロイドの使用やアルコール、鎌状赤血球症、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの全身性疾患などがあります。 上腕骨頭壊死のステージ分類 病型の分類にはCruess分類が最も使われています。 ステージ1:レントゲンで異常がなく、CTやMRI検査で壊死がわかる場合 ステージ2:骨透亮像や骨硬化像、限局性の骨溶解像 ステージ3:軟骨下骨に骨折線を認める段階 ステージ4:上腕骨頭に加えて、肩甲骨の関節窩にも骨の変化を生じている場合 上腕骨頭壊死に対する治療法は、このステージ分類、壊死の範囲、患者の年齢、症状、全身の健康状態などの要因によって決まります。保存治療で治る方もいますが、進行してステージ末期になると人工関節が必要となる場合もあります。 膝関節骨壊死について 膝関節骨壊死の原因 膝関節の骨壊死も同じように、何らかの原因で骨が壊死してしまう病気で、膝関節では大腿骨側によく起こります。 高齢の方によく起こりますが、変形性膝関節症などの膝の痛みと比べて安静にしていても痛みが強いことが特徴です。 原因はまだはっきりとわかっていませんが、肥満やステロイド薬の使用の他、軽微な骨折が原因となる場合もあります。 膝関節骨壊死のステージ分類 いくつかのステージ分類が提唱されていますが、代表的なものを1つ紹介します。 ステージ1:レントゲンで異常がみられない時期 ステージ2:レントゲンで骨内に壊死領域がみられるもの ステージ3:レントゲンで軟骨の下に骨折線があり、関節面が凹んでいるもの ステージ4:関節の隙間が狭くなってしまっている時期 骨の壊死に対する最新の治療法 いずれの骨壊死でも、初期の段階では異常が見つからない場合もあります。しかし、症状が進行すると壊死した部分が潰れてしまい、結果として変形性関節症を起こしてしまいます。 関節が変形してしまうと、保存治療の効果は限られているので、基本的には人工関節置換術が選択されます。 しかし、最近では手術に至らないようにする治療として「再生医療」があります。再生医療は導入されたばかりの最新の治療法であり、ご自身の細胞から培養した幹細胞などを直接関節内に投与することで組織の修復を促します。それによって骨や軟骨の再生が起こり、症状がよくなる可能性があります。 治療について詳しく知りたい方はいつでもお気軽にご相談ください。 骨の壊死についてよくあるQ&A Q . 骨壊死にならないか心配ですが、気を付けることはありますか。 A . 現代医学でも骨壊死の正確な原因はわかっていません。危険因子としてわかっているのは外傷、ステロイドの使用、アルコール多飲です。 ステロイドは、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど全身性疾患の治療に必要なので、飲まないことはおすすしませんが、外傷やアルコールはご自分で気を付けることができます。無理な運動は行わず、規則正しい生活習慣を送ることが予防に必要と言えるでしょう。 Q . レントゲンで問題ないと言われましたが、大丈夫でしょうか。 A . 骨壊死は初期の段階ではレントゲンで異常がわからないことがほとんどです。壊死した領域がレントゲンでわかるまでは時間がかかりますが、MRIでは早期に病気を見つけることができます。 痛みが強く心配な場合はMRIなどの精密検査について担当の医師と相談することをおすすめします。 まとめ・骨頭壊死の分類について|股関節・肩の骨頭壊死と膝の骨壊死症 骨壊死は骨を栄養している血流が途絶えることによって発症する、現時点でも原因が不明の難病です。 大腿骨頭や上腕骨頭、膝関節によく起こり、初期のレントゲンでは異常がみつからない場合がほとんどです。放置して症状が進行すると骨切り術や、人工関節などの手術が必要になりますが、最近では骨や軟骨の再生を促す再生治療も行われ始めています。 手術に至らないようにするためにも早期に病院で診断してもらい、治療について医師と相談していくことが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S147 監修:医師 加藤 秀一 参考文献 https://www.cancertherapyadvisor.com/home/decision-support-in-medicine/shoulder-and-elbow/osteonecrosis-of-the-humeral-head/ https://radiopaedia.org/articles/cruess-classification-of-humeral-head-osteonecrosis https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK562286/
2023.10.02 -
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大腿骨頭壊死における禁忌とは?やってはいけないこと はじめに 大腿骨頭壊死は、股関節の一部である大腿骨頭が血流障害によって、壊死してしまう病気です。外傷やアルコール、ステロイドの使用など様々な原因があります。なかには特に原因のない特発性もあり、指定難病にもなっています。 今回は、大腿骨頭壊死と診断されたら、どのようなことに気を付ければよいのか、またどのような生活を送るべきなのかについて詳しく解説します。症状の進行を防ぐために、是非参考にしてください。 大腿骨頭壊死になってしまったら 大腿骨頭壊死は、年間2000~3000人が発症する病気です。「壊死」という病名は、なんだか恐ろしく、将来歩けなくなってしまうかも?と思われる方もいるでしょう。ですが、適切な治療やリハビリを行うことで、進行を遅らせたり、日常生活に支障なく戻れたりする可能性が非常に高い病気です。正しい知識を持って行動することが大切です。 1 . 原因を知る まずは、大腿骨頭壊死の原因がなんであるかを知ることが大切です。前述の通り、全く原因がない場合もありますが、アルコールやステロイドなど原因と疑われるものがある場合は、減らしたりやめたりすることができないか、検討してみましょう。ただし、ステロイドはもともとの病気のコントロールに必要不可欠な場合が多いので、処方している主治医ともよく相談してから判断してください。 2 . 進行度を知る また、大腿骨頭壊死がどのくらい進行していて、壊死がどんな場所にあるかも重要なポイントです。壊死が発症初期であれば、体重をかけずに経過を見ることで壊死部が修復する可能性もあります。こちらも主治医とよく話し合い、治療の方針をしっかりと理解することが大切です。 3 . 治療を検討する どうしても痛みが強い場合や、壊死が進行してしまった場合は人工関節に変える手術を行うことが多いです。ただし、若年で人工関節を入れると、人工関節の耐用年数の問題も出てくるため、可能であれば進行させない生活をすることが望ましいといえます。 また近年では、骨や軟骨の再生を促す「再生医療」という選択肢もあります。手術を行う前に検討してみるのもひとつです。 大腿骨頭壊死でやってはいけないこと 大腿骨頭壊死を進行させる一番のリスクは、大腿骨頭にかかる負荷が増大することです。 大腿骨頭は股関節を形成している部分であるため、立ったり歩いたりすると直接体重を受けてしまいます。そのため、1本杖や松葉杖を使用して、過度な負担がかからないようにすることが必要です。 禁忌!これをやったら壊死が進行してしまう?危険な行動とは 大腿骨頭壊死を発症した場合、激しい運動や階段昇降、重量物の運搬、長時間の立ち仕事など、股関節に持続的に強い負荷がかかることは避けるべきでしょう。また、体重が増えてしまうことにも注意です。体重が増えると、増えた体重分、股関節にかかる負担が大きくなります。 また、壊死は股関節の前方に発生することが多いため、しゃがみこむ動作や、前屈動作など股関節を曲げる姿勢をとると、壊死部に負担がかかりやすいです。そのような姿勢もなるべく避けましょう。 そして、アルコールとタバコは絶対にやめましょう。 アルコールはそれ自体が、大腿骨頭壊死の原因となることがわかっています。また、骨密度を低下させる可能性もあるため、壊死で弱った骨をさらに弱くしてしまいます。 タバコも大腿骨頭壊死のリスクといわれています。さらにタバコは血行を悪化させ、骨壊死を加速させるリスクも指摘されており、絶対にやめましょう。 大腿骨頭壊死の禁忌事項 ・激しい運動や階段昇降 ・重量物の運搬 ・長時間の立ち仕事 ・股関節に持続的に強い負荷がかかること ・体重増加 ・しゃがみこむ動作 ・前屈動作など股関節を曲げる姿勢 ・飲酒 ・喫煙 一番は、全く股関節に体重をかけないことですが、そのように生活するのはなかなか難しいものです。少なくとも、股関節に持続的に強い負荷がかかること、飲酒や喫煙は避けましょう。 どんな生活をしたらいいの? では具体的にはどのような生活がいいのでしょうか。以下の3点に気をつけて生活しましょう。 1 . ベッドや椅子を使用し、洋式の生活を心がける まず、股関節を深く曲げこむ動作が多い、こたつや布団、和式トイレなどの日本式の生活は、股関節に非常に負担がかかります。なるべくベッドや椅子を使用し洋式の生活にすることを心がけましょう。 2 . お風呂に浸かるなどし身体を温めて血行を良くする 大腿骨頭壊死は血流障害によって起こります。体を温めることは血行を良くすることにつながるため、お風呂に入るなど体を冷やさないように心がけることも大切です。 3 . 鎮痛剤の使用しながら安静期間を設ける 痛みが生じている場合は、無理をせず、鎮痛薬を適宜使用しながら安静の期間を設けることも必要です。 ただし、我慢しすぎて手術の時期を逃してはいけません。整形外科医の定期的な診察を受けつつ、これらの生活スタイルを工夫していきましょう。 大腿骨頭壊死についてよくあるQ&A Q:遺伝的に大腿骨頭壊死になりやすい人はいますか? 現在の研究では、大腿骨頭壊死が遺伝的に引き起こされることは確認されていません。ただし、ステロイド性の骨頭壊死に関しては、骨頭壊死を引き起こす遺伝子がある可能性までは研究でわかっており、今後さらなる研究が望まれます。 Q:どのくらいのステロイドを使うと大腿骨頭壊死になりやすいですか? 明確な危険量は分かっていませんが、内服開始から骨壊死が発生するまでの期間で、一日平均約15㎎を超える場合は、骨頭壊死のリスクが高まるといわれています。これはプレドニゾロンというステロイドに換算した値ですので、実際に自分がどのような薬をどのくらい使用しているか気になる方は、主治医に確認してみてください。 まとめ・大腿骨頭壊死における禁忌とは│やってはいけないこと 今回は大腿骨頭壊死になってしまったら、どのようなことに注意をすべきかに焦点を当てて解説しました。大腿骨頭壊死は、患者さんの生活習慣や行動が、その後の進行や症状を大きく左右する病気のひとつです。病気に対する理解と自己管理が、大腿骨頭壊死とうまく向き合うポイントとなります。ご自身の病状をしっかりと把握し、進行予防に努めましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.146 監修:医師 坂本貞範
2023.09.21 -
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大腿骨頭壊死(難病)とはどんな病気? 大腿骨頭壊死という病名を聞いたことがあるでしょうか。「だいたいこっとうえし」と読み、股関節に起こる血流の障害が原因となる病気です。その中でも特発性と呼ばれるものは、難病に指定されています。 今回は、大腿骨頭壊死について原因や経過、そして治療についても詳しく解説します。 特発性大腿骨頭壊死(ION)とは 特発性大腿骨頭壊死は英語でIdiopathic femoral head necrosisといい、IONと略されることが多いです。 大腿骨頭とは、大腿骨の一番頭側にある股関節を形成する大腿骨の一部分です。この一部の血流が低下して大腿骨頭に血が通わなくなり、骨組織が死んでしまったものを大腿骨頭壊死といいます。外傷や放射線照射など、明らかな壊死の原因があるものを症候性大腿骨頭壊死といい、明らかな原因のないものを特発性大腿骨頭壊死といいます。 明らかな原因がある、症候性の大腿骨頭壊死は、大腿骨頸部骨折後に起こるものが最も多いです。骨折により血管が損傷され、大腿骨頭に血が通わなくなることが原因と考えられています。そのほかは、股関節周囲に放射線照射した後や潜水夫などにおこる減圧症候群のひとつとして見られます。 症候性も特発性も、大腿骨頭に血流がなくなったことによって、骨が壊死します。その結果、体重を受ける骨である大腿骨頭が、徐々につぶれて変形することによって痛みを生じます。 特発性大腿骨頭壊死の3つの原因 特発性大腿骨頭壊死は、さらに3つに分類され、ステロイド治療歴があるものをステロイド性、アルコール多飲歴があるものをアルコール性、まったく原因のないものを狭義の特発性と呼びます。 ・ステロイド性 ・アルコール性 ・特発性 ステロイド投与歴やアルコール多飲歴が壊死発生に深く関与していることは間違いないですが、その機序は現在でも判明していません。 青年・壮年期に発症し、男性では40歳代、女性では30歳代にピークがあります。男性にやや多いと言われています。我が国では、年間2000人から3000人発症していると言われています。 大腿骨頭壊死の症状 では大腿骨頭壊死になると、どのような症状が起こるのでしょうか。 股関節の痛みには注意! 実は、壊死が起こっていても必ずしも症状が起こるわけではありません。発症当初は、自覚症状がないことが多いです。その後、体重がかかることによって壊死に至った部分がつぶれ、痛みをきたします。 発症する際は、股関節痛を自覚することが多く、階段を踏み外した時やバスのステップを下りた際など小さなストレスが股関節にかかった時に、突然痛みが生じる場合が多くみられます。このような痛みは、数週間で軽快し、いったんは痛みが落ち着くことが多いです。 ただし、痛みがなくなったからといって壊死が改善したわけではないため、再び股関節にストレスがかかった場合に疼痛が再燃する可能性があります。 大腿骨頭壊死の治療と予後 大腿骨頭壊死を発症してしまったら、気になるのは治療と予後についてです。 発症してしまったら 壊死部は荷重がかからなければ、数年で修復します。ただし、日常生活で股関節に体重をかけない生活をするのは難しく、徐々に壊死した部分が圧壊してしまいます。 壊死範囲が狭い場合や、体重がかからない部分の壊死ではすぐに手術はせず、日常生活での活動を制限しながら、経過観察を行います。痛みが強い場合や変形が進行している方では、壊死部に体重がかからないようにするための骨切り術や人工股関節置換術を行います。 放置するとどうなる? 痛みを我慢していると、どんどん股関節の変形が生じ、ひどい時には、下肢の長さの左右差がでてくる場合もあります。そうなっても人工関節の手術は可能ですが、手術の難易度が高くなったり、術後のリハビリが大変になったりと、放置してもいいことはありません。できるだけ早期に医師の診察を受け、治療介入を行いましょう。 大腿骨頭壊死についてよくあるQ&A Q:大腿骨頭壊死の診断には、どのような検査が必要ですか? すでに症状が出現している場合は、単純レントゲンでも、骨頭壊死の診断は可能ですが、壊死発症の超早期の場合は、変化がないこともあります。その際はMRIや骨シンチグラムなど詳しい検査を行うことで、特異的な所見を認めることがあります。 Q:難病申請と障害年金の申請は可能ですか? 特発性大腿骨頭壊死は、指定難病になっており、難病申請行うことができます。特発性大腿骨頭壊死と診断され、症状が一定の基準を満たす場合は、医療費の助成を受けることができます。患者様が、各都道府県や指定都市に申請します。 また、症状の程度や治療内容によっては、障害年金を受け取ることができます。どのくらい歩行などの日常生活に支障があるかによって、障害等級がきまります。障害等級は1~3級があり、そのいずれかに当てはまる場合は障害年金の支給適応になります。人工関節などの手術を行った場合は、日常生活に戻れたとしても3級に認定される場合がありますので、特発性大腿骨頭壊死と診断された方は、申請を検討するのがよいでしょう。ただし、厚生年金保険料を納めていない場合は、3級相当の障害年金は支給されませんので、ご注意ください。 まとめ・大腿骨頭壊死(難病)とはどんな病気? 今回は大腿骨頭壊死について解説しました。一度発症してしまうと、治癒まで非常に時間がかかり、手術も必要となる可能性が高い疾患です。ほかの病気でステロイドを使っている場合や、アルコールの多飲歴がある場合は、リスクが高くなりますので、少しでも気になる症状がある場合は、早めに整形外科を受診するようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S145 監修:医師 加藤 秀一
2023.08.17 -
- 大腿骨骨頭壊死
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骨頭壊死、どんな痛み?症状や予防法とは 骨頭壊死は、大腿骨などの太い骨の先端である骨頭が何らかの原因で壊死してしまう疾患です。 骨頭が壊死しただけでは症状は出ませんが、骨が潰れ、変形が進むと突然の股関節痛などの症状が現れます。 今回の記事では、骨頭壊死の症状や予防法について解説していきます。また、治療法として、再生医療の可能性についても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。 骨頭壊死とは? 骨頭壊死(こっとうえし)とは、関節を構成する骨の先端である骨頭に、病気や怪我などが原因となり血液が十分に流れなくなった結果、骨の一部が死んでしまう、つまり壊死してしまうことです。 多くは、太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)の上端部、つまり股関節で多くみられるとされています また、大腿骨の下端部の膝関節でも骨頭壊死が起こることがあります。 股関節の大腿骨頭壊死の中でも、脱臼や骨折など、血液の供給が不足するような原因が明らかでない場合に起こるものを、特発性(とくはつせい)大腿骨頭壊死症といいます。 特発性大腿骨頭壊死については、以下のような病期分類があり、骨頭の圧壊(あっかい)、つまり、骨の潰れや変形によって進行度合いが区分されています。 引用) 071 特発性大腿骨頭壊死症 大腿骨頭壊死の原因 大腿骨の骨頭は、股関節内に深くおさまって血管が少ないという特徴があります。そのため、何らかの原因で血流障害が起こると、骨に栄養や酸素などが運ばれなくなり、壊死が起こってしまうのです。 大腿骨頭壊死は、股関節の骨折や股関節の脱臼に引き続いて起こることがあります。 特発性大腿骨頭壊死の場合は、危険因子として、免疫異常の疾患(膠原病)や臓器移植などによるステロイド投与による副作用、アルコール、喫煙が関連していることがわかってきています。 特に、ステロイドやアルコールについては国際的に基準が設けられており、ステロイドやアルコールをある程度の量を摂取した方に起こった大腿骨頭壊死では、ステロイドやアルコールとの関連が考えられます。 大腿骨頭壊死の症状 大腿骨頭壊死になるとどうなるのでしょうか。 実は、壊死があるだけでは痛みなどの症状は出ません。大腿骨頭の壊死が進み、骨が潰れてしまうと、症状が出現します。 自覚症状としては、急に起こる股関節痛や、腰痛、お尻の痛みなどがあります。また、初めの痛みは安静によって数週間で自然治癒することもあるのですが、再び痛みが強くなった場合には、骨の潰れの程度が悪化してしまっていることがあります。 大腿骨頭壊死が起こっていても、初期の段階ではレントゲンでは異常が発見できないため、ステロイド使用歴やアルコールを大量に飲む人に、股関節の痛みがある場合には、MRI検査が望ましいとされています。 骨頭壊死の予防方法と治療法 では、大腿骨頭壊死の予防方法や治療法についてご説明します。 予防方法 上述のように、股関節の大腿骨の骨折や、股関節脱臼などの怪我が骨頭壊死の原因となることがあります。 そのため、スポーツなどの際には、歩きやすい靴を履いたり、適切な防御具などを身につけたりなどして、転倒を防ぐように注意すると良いでしょう。 特発性大腿骨頭壊死の予防としては、お酒の飲みすぎやステロイド剤の使用に注意するということが考えられます。ステロイドによる大腿骨頭壊死の予防法は、現時点では確立されたものはありませんが、今後の研究に期待が持たれるところです。 MRIなどで、骨頭壊死を早期発見し、早期治療を行うことも大切とされています。 アルコールについては、適量を飲むようにすることが重要です。 治療方法 大腿骨頭壊死の治療法は、大腿骨頭壊死の病期や、患者の年齢や活動の活発さ、また片側か両側かによって決まります。 壊死がごく小範囲であれば、自然治癒することも報告されているようです。 また、壊死の範囲が小さく、まだ症状が出ていない場合には、保存療法の適応となります。 つまり、杖などで股関節に負荷がかかるのを防ぎます。 一方、自覚症状があり、大腿骨頭の変形の進行が予想されるときは速やかに手術適応となります。 若い人には自分の関節を残す骨切り術が第一選択となりますが、壊死範囲が大きい場合や骨頭の変形が進んでいる場合には、人工関節置換術などが必要となることもあります。 最近では壊死部の骨再生を促す再生医療の臨床研究もおこなわれています。 骨頭壊死についてよくある質問 Q1. 大腿骨頭壊死では必ず股関節が痛くなるの? A1. 骨壊死が発生した時点では自覚症状はありません。 症状は骨壊死に陥った部分が潰れて大腿骨頭に圧壊が生じたときに出現します。 大腿骨頭壊死症の発生から症状が出現するまでの間には数ヵ月から数年の時間差があります。 必ずしも、股関節が痛くなることばかりではないため注意が必要です。自覚症状としては、比較的急に生じる股関節部痛が特徴的ですが、腰痛、膝痛、殿部痛などで初発する場合もあります。 Q2.大腿骨頭壊死では、必ず手術が必要なの? A2.骨頭壊死の病期によっては、手術が必要となる場合もあります。 一方、再生医療で骨頭壊死を治療するという試みも始まっています。 当院では、エコーや特殊なレントゲン装置、そして特殊な注射針を使用して股関節内の軟骨損傷している部位を精査して、ダイレクトに幹細胞を注入する再生医療を用いた治療を行っています。 また、PRP(多血小板血漿)の併用で、さらなる効果の増強を目指しています。 まとめ・骨頭壊死、どんな痛み?症状や予防法とは 今回は、骨頭壊死の痛みや予防法について述べました。 大腿骨頭壊死が進行し、変形が進むと、人工股関節置換術を選択することが多いとされていますが、再生医療の発達により、治療法の選択肢が広がったとも言えます。 大腿骨頭壊死に対しての再生医療にご興味がある方は、ぜひ一度当院へご相談してみてください。 No.S144 監修:医師 加藤 秀一 参考文献 MSDマニュアル家庭版_骨壊死 (阻血性骨壊死、無菌性壊死、虚血性骨壊死) 特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71) 071 特発性大腿骨頭壊死症 「特発性大腿骨頭壊死症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 重篤副作用疾患別マニュアル|厚生労働省
2023.08.01