-
- ひざ関節
- 膝の慢性障害
急に膝の皿が痛むのはなぜ? 膝の皿が痛いとき、自宅でできる対処法はある? この記事を読んでいるあなたは、心当たりがないのに膝の皿が痛み、原因を調べているのではないでしょうか。 結論、膝の皿が痛むときは、変形性膝関節症などの疾患の可能性も考えられます。 ストレッチやトレーニング、テーピングをしても痛みが引かない場合は、整形外科での受診がおすすめです。 本記事では膝の皿が痛いときの原因や今すぐできる対処法を解説します。 記事を最後まで読めば、膝の皿の痛みの原因を正しく理解し、病院に行くべきか適切な判断ができるでしょう。 膝の皿が痛い3つの原因 膝の皿が痛いときは、主に以下3つの原因が考えられます。 膝蓋大腿関節症 変形性膝関節症 膝蓋腱炎(ジャンパー膝) 膝の皿の痛みに悩んでいる方は、本章で紹介する病気に当てはまるかどうかチェックしてみてください。 原因1. 膝蓋大腿関節症(しつがいだいたいかんせつしょう) 加齢などによって膝蓋大腿関節にズレや炎症が起きると、軟骨がすり減って痛みが生じやすくなります。この状態を「膝蓋大腿関節症」と呼びます。 膝の皿の骨である膝蓋骨と大腿骨との間で障害が起こる病気で、膝を伸ばすときに痛みを感じやすいのが特徴です。膝の皿だけでなく、膝の皿の横や皿の周りが痛むケースもあります。 整形外科での診察・検査後、「保存療法」もしくは「手術療法」による治療をおこなうのが一般的です。 膝蓋大腿関節症は、とくに中高年の女性に多く見られます。女性で膝の皿の痛みに悩んでいる方は、一度整形外科を受診してみましょう。 原因2. 変形性膝関節症 変形性膝関節症とは、関節の軟骨が老化し、変形してしまう病気です。 主な原因は以下が挙げられます。 加齢 肥満 遺伝 骨折などの外傷 など 変形性膝関節症では、膝の皿に痛みを感じる、水が溜まるなどの症状がみられます。 発症初期は動作の開始時に痛むことが多く、治療せず放置すると安静時にも痛むようになったり、膝を伸ばせなくなったりすることもあります。 変形性膝関節症の治療は、以下のような方法が一般的です。 湿布や痛み止めの処方 ヒアルロン酸注射 リハビリテーション 装具の装着 人工関節術 など また、変形性膝関節症の治療には再生医療(幹細胞治療・PRP療法)も効果的であることがわかっています。 詳しくは以下の記事をご覧ください。 原因3. 膝蓋腱炎(ジャンパー膝) 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)とは、膝の皿の下部にある「膝蓋腱」に繰り返し負担がかかることで損傷し、痛みを起こす病気です。 発症時は動作の始めや運動時に膝の皿の違和感を感じることが多く、症状が悪化すると日常生活でも痛むようになります。 膝蓋腱は、ジャンプ・着地などの跳躍動作やランニング時など、膝関節を屈伸したときに引っ張られる部位です。そのため、膝蓋腱に負担のかかる動作が多いスポーツ(サッカーやバレーボールなど)をしている人が発症しやすい病気です。 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)の治療では、痛み止めの内服やヒアルロン酸、PRPなどの注射、ストレッチを行います。 重症の場合は「難治性膝蓋腱炎」の可能性があり、手術を検討するケースもあります。 日常的に跳躍動作の多いスポーツをしていて、膝の皿の痛みに悩んでいる方は、整形外科などの受診がおすすめです。 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)については、以下の記事も参考にしていただけますと幸いです。 【今すぐできる】膝の皿が痛いときの2つの対処法 膝の皿が痛いとき、病院に行く前に自分でできる対処法は以下の2つです。 ストレッチ・トレーニング テーピング ただし、むやみに自分で対処をすると悪化してしまうケースもあるため、あくまで応急処置に留め、早めに整形外科を受診しましょう。 ストレッチ・トレーニング 膝の皿が痛むときは、膝の上の筋肉である「大腿四頭筋」や、太もも裏の筋肉である「ハムストリングス」のストレッチがおすすめです。また「殿筋」と呼ばれるお尻の筋肉をほぐすのも効果的です。 また膝の皿の痛みは、大腿四頭筋の筋力低下によって起こっているケースもあります。そのため、ストレッチだけでなく適度なトレーニングをおこなうのも良いでしょう。 それぞれの部位ごとのストレッチ・トレーニング方法は以下のとおりです。 ストレッチ(トレーニング)する部位 やり方 大腿四頭筋 <ストレッチ> 壁やイスを使ってバランスを保ちながら立ち、片足ずつ膝を曲げ、前ももを伸ばす <トレーニング> 仰向けに寝て、両膝を立てた状態から片方の膝を伸ばす。 床から10センチほど離したままキープし、ゆっくりおろす動作を両足10回ずつおこなう ハムストリング <ストレッチ> 膝を伸ばして座り、上半身を前に倒して太もも裏を伸ばす 殿筋 <ストレッチ> 床に座り、片方の脚の膝を曲げた状態で外側に開く。 もう一方の脚は後ろに伸ばし、上半身を前に倒して殿筋を伸ばす ストレッチは、反動をつけず痛気持ちいい程度で、無理なくおこないましょう。 膝の皿が痛む場合のストレッチやトレーニングについては、以下の記事も参考にしてください。 テーピング 膝の皿の痛みを和らげるには、テーピングも効果的です。膝関節や周辺の筋肉の動きを制限し、運動時の膝の痛みをを緩和しやすくなります。 テーピングをおこなうときは、腱や筋肉を過度に圧迫しないよう注意しながら、シワのないように巻きましょう。 膝をサポートするテーピング方法は以下の記事で紹介しています。気になる方はチェックしてみてください。 膝の皿が痛い!病院を受診する目安 膝の皿の痛みで病院に行くべきか迷った場合は、以下の項目を参考にセルフチェックしてみましょう。 動作の始まり(歩き始めや立ち上がり)に膝の皿が痛む 起床時に膝の皿がこわばる感じがする 階段の上り下りをすると膝の皿が痛む 膝蓋腱を指で押すと痛む うつ伏せの状態で膝を曲げると床から股関節まわりが浮く 上記の項目に1つでも当てはまる場合、変形性膝関節症などの初期症状である可能性があります。 膝の皿の痛みが続くときは放置せず、早めに整形外科で専門医による診察・検査を受けましょう。 まとめ|膝の皿が痛い原因を知り病院への受診を検討しよう 本記事では、膝の皿が痛いときの原因や今すぐできる対処法を解説しました。 膝の皿が痛む場合、膝蓋大腿関節症などの疾患の可能性も考えられます。ストレッチ・トレーニングやテーピングなどで一時的に対処し、痛みが続くなら早めに整形外科を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、自己の幹細胞を用いた再生医療による治療をおこなっています。 関節部分に幹細胞を投与し、すり減った軟骨を再生させることで、手術なしで症状を改善できる可能性が高くなります。 従来の保存療法や人工関節術を受けることに抵抗がある方は、ぜひ当院の再生医療もご検討ください。 この記事が膝の皿の痛みの原因や自分でできる対処法を知るのに役立ち、最適な治療を受けるきっかけになれば嬉しく思います。 >>膝の痛みについてメール相談してみる 膝の皿が痛いときによくある質問 急に膝の皿が痛くなるのはなぜですか。 急に膝の皿が急に痛む場合、筋力の低下や姿勢の悪さが原因の可能性があります。 大腿四頭筋腱炎など膝の疾患も考えられるため、痛みが続くなら早めに整形外科で診察・検査を受けましょう。 膝の皿が痛む原因については、以下の記事も参考にしていただければ嬉しく思います。 膝の皿が痛い!?考えられる病名とその原因、治療について徹底解説 曲げると膝の皿が痛いときはどうすれば良いですか。 膝を曲げると痛む場合は、できる限り安静にすることが第一です。膝が熱を持っていたり腫れていたりする場合は、炎症が引くまで冷やすのも良いでしょう。 40歳以上の中高年の方の場合は「変形性膝関節症」の可能性もあるため、不安な方は整形外科での受診がおすすめです。
最終更新日:2024.10.23 -
- ひざ関節
- 膝の慢性障害
- スポーツ外傷
腸脛靭帯炎(ランナー膝)治療のストレッチ、テーピングと靴選びについて 腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)って聞きなれない言葉ですよね。そもそも読み方が分からない人もいるのではないでしょうか。 しかし、意外と腸脛靭帯炎で悩んでいる方が多いのが実情です。特に有酸素運動の代表格であるランニングや、ジョギングなどをやり始めた人に多くみられます。 動けないほど酷くはないけど…なってしまうと悩まされる…そんな腸脛靭帯炎についてお話します。 「腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)」とは? この病気がどのようなものか説明するには腸脛靭帯について知る必要があり、簡単にお伝えします。 腸脛靭帯とは、骨盤の外側に出っ張っている腸骨(ちょうこつ)から、膝下にある脛骨(けいこつ)に繋がっていて太ももの外側部分に長く伸びるように位置しています。。 また、腸脛靭帯は大臀筋と大腿筋膜腸筋(だいたいきんまくちょうきん)という、これまた長くて難しい名前の筋肉とつながることで身体をぐらつかせることなく、更に身体を安定して保つという大切な役目を担っています。 膝上の太もも部分の外側を押すと、硬いスジ状のものに触れることができますが、これが腸脛靭帯になります。 特に大きな動きに対して大臀筋と呼ばれる大きな筋肉と大腿筋膜張筋とにつながることで、それらの力を脚に伝える役割があります。 腸脛靭帯の働きのおかげで骨盤や膝が安定し、歩くことは勿論、スムーズなランニングを助けてくれるという訳です。 そんな腸脛靭帯が炎症を起こした状態が『腸脛靭帯炎』というものになります。 「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん:ランナー膝)」とは 腸脛靭帯炎は、別名「ランナー膝」と呼ばれるくらい、「ランニングの愛好家にとって多いケガ」の一つです。ここでは腸脛靭帯炎の症状、原因、診断について簡単に説明します。 ご自身に当てはまる点はないか、チェックしてみましょう。 腸脛靭帯炎の症状 腸脛靭帯炎の初期症状は、運動後に膝の外側に痛みが出ることです。痛みが出る場所は、外側上顆(がいそくじょうか)と言われる膝外側の出っ張り部分です。痛みは安静にすることで治まってまいります。 しかし、炎症がひどい場合や、痛みを我慢して無理を続けた場合、歩いたり、膝を曲げ伸ばしをしただけでも痛みが出ることがあります。久しぶりにランニングやジョギング、ウォーキングを頑張った人によくみられる症状です。 「さぁ、健康のために頑張って走ろう!!」という矢先につまずいてしまうと、やる気も削がれかねません。 腸脛靭帯炎の原因 なぜ腸脛靭帯炎は、ランナーに多いのでしょうか?それは、腸脛靭帯炎になってしまうメカニズムでご説明いたします。 腸脛靭帯炎の発生メカニズム 腸脛靭帯炎は、繰り返される『摩擦』によって生じます。摩擦が起こる場所は、大腿骨の外側上顆という場所です。そこは骨が隆起しており、膝を曲げ伸ばしすることで腸脛靭帯が外側上顆を乗り越えてしまいます。 特に膝を軽く曲げた状態(屈曲30°くらい)でちょうど乗り越えるため、ランニングのように、0〜30°くらいの曲げ伸ばしを繰り返すことで摩擦がかかりやすくなってしまうのです。 骨盤や下肢のアライメント(骨の位置関係)によってより負荷がかかる ただ、もちろんですがランナー全員が腸脛靭帯炎になるわけではありません。なってしまう理由は他にもあります。下記のような股関節の機能や骨の位置関係を乱すアライメント異常が腸脛靭帯炎を誘発してしまうとも言われています。 腸脛靭帯炎のランニング以外の要因 ・股関節の筋力低下 ・膝のO脚 ・足の扁平足 腸脛靭帯炎の診断 腸脛靭帯炎は、問診や触診である程度は鑑別することができます。ただ、炎症の状態や他の疾患と見分けるためにレントゲンやMRI、エコー検査が必要なことがあります。 また、腸脛靭帯炎には、特有のテストがあります。それが「Grasping Test(グラスピングテスト)」というものです。やり方は、難しくありませんので、もしかしたら腸脛靭帯炎かもしれない、と思われた方は、お試してださい。 【Grasping Testの方法】 ①患者さんの膝を90°ほど曲げる。 ②痛みが出ている場所の少し上を親指で強く押さえる。 ③その状態で膝をゆっくり伸ばしていく。 ④その時に痛みが出るのであれば、腸脛靭帯炎が疑われる。 腸脛靭帯炎(ランナー膝)の治療3つのポイント 腸脛靭帯は、足首や他の膝の靭帯と違い、断裂など重症化するケースはほとんどありません。そのため、基本的には普段と同じような生活を送っていただいて結構です。 ①腸脛靭帯炎の初期対応 原因がランニングなどスポーツによるものであれば、その症状が落ち着くまでお休みされるようオススメします。 腸脛靭帯そのものや、その周囲の滑液包(摩擦を減らす袋のようなもの)に炎症が起こるため、炎症をおさえるお薬や、局所に注射をする場合もあります。 場合によっては、患部にアイシングや湿布を貼付することで症状の緩和が得られます。特に急性期では患部の安静と炎症を抑えることを最優先させましょう。 ②腸脛靭帯炎に有効なストレッチ 腸脛靭帯炎による痛みが落ち着いたら、徐々にストレッチを開始します。 腸脛靭帯炎を発症する人の特徴として、身体のケア不足により筋肉の伸び縮みの動きが悪くなっていることがあります。ここでは、腸脛靭帯と連結している大腿筋膜張筋と股関節および大腿部前面の筋肉の3つのストレッチ方法をお伝えします。 1.大腿筋膜張筋のストレッチ 各ストレッチは、無理をせず、痛くなりすぎない範囲で行いましょう。 2.股関節前面の筋肉のストレッチ 3.大腿部前面の筋肉のストレッチ ③腸脛靭帯炎にならないためのトレーニング 前に下肢のアライメント(ゆがみ)の異常により腸脛靭帯炎になりやすいことは前述しました。 股関節の筋力の低下や足元のぐらつきにより、ランニング時に膝が内外にぐらつくと腸脛靭帯への摩擦が増加してしまいます。安静期間により症状が落ち着いても、同じような状態だとまた腸脛靭帯炎を繰り返してしまうでしょう。 そのため、ランニングなどのスポーツに復帰するにあたり、腸脛靭帯への負荷を減らすためのトレーニングを推奨しています。ここでは以下の3つの方法を紹介します。 各トレーニングは、やみくもに動かすのではなく、いずれも体を安定させ、姿勢を意識して行うことがポイントです。 1,股関節の外側の筋肉:大臀筋、中臀筋 上になっているほうの足を持ち上げる→下ろす を繰り返す 2,股関節の内側の筋肉:内転筋 下になっている方の足を持ち上げる→下ろす を繰り返す 3,ふくらはぎの筋肉:下腿三頭筋(ヒラメ筋、腓腹筋) つま先立ち→かかとを降ろす を繰り返す 腸脛靭帯炎(ランナー膝)とスポーツとの関係 腸脛靭帯炎のテーピングで大事なことは、腸脛靭帯の負担を減らしてあげることです。そのため、腸脛靭帯自体をサポートするテーピングと、膝の動きをサポートするテーピングの2種類を用いて行います。 腸脛靭帯炎のテーピング あくまでテーピングは補助的な役割にしか過ぎません。また、その人によってテーピングの効果が十分に発揮できない場合もあります。 可能な限り、専門の医療機関にご相談のうえ、「テーピング」を施行するようにしましょう。このようなテーピング以外も「サポーター等の装具」を用いて腸脛靭帯を支え、安定を図る方法もあります。 腸脛靭帯炎と靴(シューズ)選び 腸脛靱帯炎の対策の中では靴選びも大切です。 足が左右にぐらつくと腸脛靱帯につながる大腿筋膜張筋が頑張ってぐらつきを止めようとします。 そうすると、筋肉が過剰に働き、ピンと張った状態になります。その状態で走り続けると、腸脛靭帯への摩擦が助長されて腸脛靭帯炎を引き起こしかねません。 シューズ選びの際は以下の3つのポイントを意識してみましょう。 靴は使用に伴い消耗します。定期的、或いは、いま一度ご自身の靴をチェックして自分に合った最適な靴を選びましょう。 1.シューズの後ろ、カップの部分がしっかりしているか 2.指の付け根で曲がるのか 3.シューズが過度に捻じれやすくなっていないか まとめ・腸脛靭帯炎(ランナー膝)治療のストレッチ、テーピングと靴選びについて 今回は、腸脛靭帯炎について、病態や、ストレッチ、テーピング、靴選びという角度から、その対策をお話しました。 腸脛靭帯炎(ランナー膝)は、ランニングやスポーツをする人に多い症状ですが、正しい対処法を知っていれば予防や治療が可能です。まずは症状や原因を理解し、痛みが出た場合には早めの対処が重要です。 初期の対応としては、炎症を抑えるための安静やストレッチ、適切なテーピングが有効です。また、腸脛靭帯炎を予防するためには、股関節やふくらはぎの筋力を鍛えるトレーニングや、適切な靴選びも重要になります。 日常生活での意識や対策を行い、ランニングやスポーツを安全に楽しむために、ストレッチをはじめ、適切なケアを心がけましょう。 腸脛靭帯炎は誰にでも起こりうるケガです。これから運動を始める人も、ランニング愛好家の皆さんも運動前の準備運動、そして運動後のカラダのケアをしっかり行いながら、自分に合ったペースで頑張りましょう。 ▼ 腸脛靭帯炎はじめ、スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています ▼以下も参考にしていただけます 腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)を早く治すポイント
最終更新日:2024.10.07 -
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- ひざ関節
- 膝の慢性障害
- 靭帯損傷
膝へのヒアルロン酸注射が効かない!?効果がないと感じた場合をご説明します 膝のご病気、痛みをかかえている方で、定期的に膝にヒアルロン酸の注射を受けている方は非常に多くおられます。その中で、『最初の頃、注射をすれば膝の痛みがひいたのに、最近は効かなくなってきた』『注射しても効かないどころか、余計にひどくなった気がする』という経験をされている方も少なくないのではないでしょうか? 膝のヒアルロン酸注射が効かなくなる原因と、効果が乏しいときの対処法について紹介していきます。 膝の痛みにヒアルロン酸注射で痛みが軽減する 『ヒアルロン酸』とは、水分をたくさん含む物質で、我々の身体の色々な場所で様々は役割を担当している物質です。目や皮膚に対しては潤いを保つように働きかけています。関節の中では動きをよくする潤滑油のような役割を担っています。 ヒアルロン酸を治療のために使用する場面はたくさんあります。眼の乾燥にもヒアルロン酸の目薬を行いますし、最近では美容目的に皮膚にヒアルロン酸の注射を行うこともあります。 色々な用途に用いられるヒアルロン酸ですが、膝にヒアルロン酸の注射を行う必要がある病気も多くあります。その中で、代表的なのが「変形性膝関節症」です。膝にヒアルロン酸注射を行うことの一番の目的は、膝関節の動きを滑らかにするためです。 もともと、膝の関節の中はヒアルロン酸をたくさん含んでいる滑液という物質で満たされています。この滑液という液体が膝の滑らかな動きを保つのに重要な役割を担っています。 しかし、年齢を重ねることや、外傷や他の疾患などの影響で、滑液の中のヒアルロン酸の量が減ることがあります。ヒアルロン酸の量が減ってくると、膝を滑らかに動かすことが難しくなってしまいます。すると、膝にある骨や軟骨がこすれて、次第に膝に痛みが出現するようになります。 このような場合にヒアルロン酸注射を膝に行うことで、膝の動きが滑らかになり、その結果、痛みを軽減させることが可能になります。 https://youtu.be/c76WELu1YHE?si=jOZaGw_k92o_cYPF ヒアルロン酸注射が効かない|病気が進行している可能性 変形性関節症も初期の頃にヒアルロン酸注射を行うと動きも滑らかになり、痛みも速やかに軽減したり、改善することが多くあります。しかし、病気が進行し、膝の変形が重度になってくると、ヒアルロン酸注射をしても効果が得られ難くなってきます。 これは、ヒアルロン酸注射自体の問題や治療の失敗などではなく、例えば膝自体に炎症がある場合、ヒアルロン酸注射は、効かないことが多くあります。さらに膝に感染があるときは、ヒアルロン酸注射をすること自体が余計に症状を悪化させてしまうこともあります。 変形性膝関節症は、年齢を重ねると進行する病気なので、誰でも変形が強くなっていく可能性はあるのですが、体重が重かったり、もともと運動習慣がなかったりすることも、変形が進行する原因になるとも言われています。 膝の変形性関節症の重症度や膝の組織を評価するために、病院では、レントゲン検査やM R I検査などの画像検査が行われます。M R I検査では、膝の軟骨や靭帯、半月板という組織が傷ついていないかも診ることもできるため治療方法の選択をするためにも非常に重要な検査です。 膝へのヒアルロン酸注射が効かなくなったら ヒアルロン酸注射は、はじめは効いても徐々に効かなくなるときがあります。そのためには、ヒアルロン酸注射以外の治療法を併用していくことも大事です。膝変形性関節症には、病院に受診しなくても自分自身で行える治療があります。体重が重い方については、体重を減量することも治療のために非常に重要です。 その他には運動療法を実施することも非常に大事であると言われており、規則正しい有酸素運動や筋力トレーニング、関節可動域運動を実施して継続していくことが大事です。膝をサポーターで保護することや、テーピングを実施することも推奨されていますので実施していくのがよいでしょう。 また、超音波を用いて行う超音波療法や、温める温泉療法なども推奨されています。 膝に炎症があるときは、ヒアルロン酸の注射ではなく、ステロイドという薬を膝に注射する必要があることもあります。また炎症を抑える薬を飲む必要があることもあります。その中でリハビリなど保存療法を進めていくことになります。 重症になってしまい、注射が効かない状態になると手術が必要になります。 ヒアルロン酸が効かなくなった ▼ ステロイド薬の投与 ▼ 炎症を抑える薬 ▼ リハビリの継続 症状が進行すると手術(人工関節)が必要になる ▼ リハビリ(数か月) 手術では人工関節と言い関節の代用となる部品を、実際の関節の変わりに埋め込むという治療が行われます。そのため、皮膚を切って開く必要があるため、全身麻酔で手術が行われます。 全身麻酔とは寝た状態で手術を行う麻酔の方法なので、患者さんの目が覚めた時には手術は終わっています。手術は、傷口が感染しないか、麻酔によるアレルギーなどがないかを診るためにも入院で行われます。 入院自体は数日〜数週間の期間のことが多いですが、もともとの歩行状態に戻るためには膝のリハビリが必要で、数ヶ月程度のリハビリが必要になります。 手術(人工関節)を避ける再生医療という選択肢 また、最近では手術の代わりに「PRP療法」や、「幹細胞治療」という新しい先端治療を選択するできるようになってきました。PRP療法は、患者さんの血液から抽出した「血小板血漿(P R P)」を傷んでいるところに注射し、「幹細胞治療」は、ほんの少しの脂肪を採取し、その中から幹細胞を抽出、数千から億の単位まで培養し、増やした細胞を患部に注射で投与します。 再生医療 ・幹細胞治療 ・PRP療法 https://youtu.be/W2JZQekWJ8w?si=ftQZD5z4fREGLlAt どちらも患者さんの自然治癒力を高めて治療するもので手術や入院の必要はありません。弱った部分、痛んだ部分を修復くする「再生医療」です。 PRP療法、幹細胞療法、共に副作用はほとんどなく、患者さんのお身体の負担が非常に少ない治療法です。 詳しくは、お問い合わせください。 まとめ・膝へのヒアルロン酸注射が効かない!?効果ないと感じたら読んで欲しいこと 膝へのヒアルロン酸注射は膝の動きを滑らかにするために非常に有用な治療法です。 最初、効果があっても、治療の過程で効果が乏しくなる可能性があります。それは治療の失敗やヒアルロン酸注射自体の問題ではなく、膝の状態が良くないということも考えられます。 そのため、効果が乏しいのにも関わらず、漫然と注射を重ねるのは良くないと思われます。その場合は、ヒアルロン酸の注射以外の治療を考えるべきかもしれません。 現在では再生医療(幹細胞治療、PRP療法)といった先端医療も考慮できます。 いずれにしましてもヒアルロン酸の注射の効果が以前に比して減ったように感じているなら、漫然と治療を継続するのではなく、医療機関をはじめ、かかりつけ医など、専門家に相談し、評価を受けて、適切な治療に切り替えを検討してはいかがでしょうか。 ただ再生医療は、先端医療であるため厚生労働省から認められている限られたクリニックでしか受けることができない治療方法です。手術も入院も避けることができる身体にやさしい治療方法です。興味があればお問い合わせください。 以上、膝へのヒアルロン酸注射が効かない!その原因と対策について記させて頂きました。参考になれば幸いです。 ▼ 再生医療が膝の治療を変える!ヒアルロン酸が効かなくなったらお問い合わせください! 変形性膝関節症や半月板損傷、その他膝の不具合や痛みに新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療 ▼以下もご参照ください 膝の痛みに最新の治療法!再生医療(幹細胞治療とPRP療法)について
最終更新日:2024.10.07 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 膝の慢性障害
- 関節リウマチ
- 靭帯損傷
膝の水を抜く理由と注意すべき合併症について解説します 多くの方を悩ませる「膝の痛み」。膝痛の症状が長期にわたると日常生活に支障をきたすようにもなってきます。このような膝の痛みを抱える方によくある症状のひとつに「膝に水が溜まる」というものがあります。 この症状のある方は医療機関を受診した際に膝に溜った水を抜く処置を受ける場合が往々にしてあります。この記事では、主に膝に溜った水を抜いたあとの注意点について医師が解説したいと思います。 なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 膝の水はなぜ溜まるのか? 膝の関節は、関節包というもので覆われ、更にその中には、滑膜と言われる膜があり、関節がスムーズに動くための潤滑油のような役割を果たす「関節液」が存在します。この関節液は、健常者においても常に作られながら吸収され、一定の量になるように調整されています。 これが半月板損傷や、変形性関節症など関節の炎症をはじめとして、骨折や何らかの感染や外傷、靭帯損傷、痛風、偽痛風、関節リウマチなどといった原因により関節液が作られるスピードが吸収されるスピードを超えてしまうことがあります。 これにより「膝に水が溜まる」という症状が起こります。 膝に水が溜る原因(病気) ・半月板損傷 ・変形性関節症 ・靭帯損傷 ・痛風、偽痛風 ・関節リウマチ 何らかの関節の炎症 ・骨折 ・何らかの感染や外傷 なぜ膝に溜った水を抜くのか?その理由 膝の痛みで医療機関を受診した際に膝の水を抜くことがありますが、医療用語でこの診療行為を「関節穿刺」といいます。 この関節穿刺には主に診断と治療の2つの目的があります。 ①膝に水(関節液)が溜まる原因を調べるとき(診断) ・膝に水が溜まる原因はさまざま ・原因によって適切な治療が変わる可能性がある。 ・膝の水(関節液)を検査して水が溜まる原因を知る(関節穿刺) ②関節の痛みを和らげるとき(治療) ・膝に水がたまると、たまった水が膝の痛みをより悪くする可能性がある。 ・膝の水を抜いて、状況に応じて関節内注射を行い症状を和らげることがある。 ・治療目的に関節穿刺(膝の水を抜く)を行う場合があります。 膝の水を抜いた後の注意|合併症 膝の水を抜いた(関節穿刺)後に注意することは、関節穿刺によって起きる別の症状や病気、つまり合併症です。そこで、以下に一般的な合併症について解説します。 ①感染 ・通常、関節内は無菌状態です。 ・関節穿刺を行うことで細菌が関節内に入ってしまうことがあります。 ・細菌が関節内に入り感染を起こす可能性があります。 ・症状は、膝が赤く腫れたり、熱持ったり、痛みを伴うことがあります。 通常、関節穿刺を行った後数時間は穿刺を行ったことによる痛みが生じることがありますが、これが長引く場合はこの感染の可能性があります。 一般的な目安としては48時間以上持続する症状、48時間以内でも悪化を伴う症状を認めた場合には感染などの可能性を考慮し、可能な限り処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ②出血 ・関節穿刺で関節周囲の血管を傷つけることがあります。 ・血管が傷つくと出血を起こすことがあります。 ・多くの場合は細い血管の損傷にとどまり、自然に止まることがほとんどです。 ・穿刺後に貼付していたテープなどを剥がした際に出血が起きても、しばらく圧迫すれば止血が可能です。 他の持病などで血液をサラサラにする薬を飲まれている方や、もともと血が固まりにくい病気の方、またより大きな血管を損傷してしまった場合などは自然に止血できないことがあります。 ※圧迫しても止まらない出血は、速やかに処置を行った医療機関にご相談ください。 ③その他 ・アレルギー反応は、関節内に薬剤を注射した場合に起こりやすい合併症。 ・数時間以内に、発疹・呼吸困難感・腹痛などの多彩な症状を生じます。 ・多くの場合は投与後すぐに発症し、医療機関で発見される場合がほとんどです ・まれに帰宅後に発症することもあるため注意してください。 血管以外の神経、靭帯、腱などの損傷も稀な合併症の例です。穿刺のみでこれらの組織に重大な損傷をきたすことは稀ですが、薬剤注入などを伴うと症状をきたす可能性があります。 膝の水を抜いた後に注意したいこと 膝の水を抜いたあと、気になる症状が出現した場合、どこまで様子を見て良いのか判断に迷うことがあると思います。悩んだ場合はまず処置を行った医療機関に相談することをお勧めしますが、一般的な観察項目について解説します。 ・症状が長く続いている 通常、痛みなどの症状は処置をしたことにより生じたものであれば数時間から1日程度で消失します。しかし、なかなか症状が消失せず持続期間が長い場合は合併症を疑うサインとなります。 ・症状がどんどん悪くなっている 処置からあまり時間が立っていなくても、どんどん悪化する症状は合併症を疑うサインになります。通常徐々に改善する痛みが、ぶつけたなどのきっかけもなく悪くなる場合は速やかに相談しましょう。 まとめ・膝の水を抜く理由と注意すべき合併症について 今回の記事では膝に水がたまる病気と、水を抜いたあと注意すべきことについて解説しました。 症状が出現した際に自己判断で放置せず気になる場合は速やかに処置を行った医療機関に相談しましょう。処置を行った医療機関が時間外などで対応できない場合は夜間救急などの受診を検討しましょう。 https://youtu.be/IyBCkOjTPi8?si=NqgIWpsWtI96eVEh ▼ 再生医療が膝の治療を変える! 変形性膝関節症をはじめ膝の障害に対する新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療 ▼以下もご参考にしてください 膝の上の筋肉、ふとももが痛む場合の対策と考えられる病気
最終更新日:2024.10.07 -
- ひざ関節
- 膝の慢性障害
ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎の原因と治療 スポーツ選手は日常的に、身体を動かし、気がついたら慢性的に身体にダメージを与えていることも少なくありません。スポーツ外傷と呼ばれるものです。 走ったり、ジャンプしたりなど多くのスポーツで行う動作を慢性的に繰り返すことで起こる病気の中で、『ジャンパー膝』と呼ばれる、「大腿四頭筋腱付着部炎」と呼ばれる病気があります。 この記事では、通称『ジャンパー膝(大腿四頭筋腱付着部炎)』について、その症状および治療法について医師が監修し解説します。なお、本記事では一般的な注意点などについて解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 ジャンパー膝の原因 ジャンパー膝とは、スポーツを日常的に行い膝に負担がかかる人が起こりうる病気で、いろいろなスポーツが原因で起こります。 ジャンプしたり着地したりの動きを多く繰り返すスポーツ(バレーボールやバスケットボール、走り高飛びなどの陸上競技など)で多く起こります。また、突然走ったり止まったりを繰り返すスポーツ(サッカー、ラグビー、アメフトなど)でも起こりやすいです。 野球やソフトボール、テニス、バトミントンなどのスポーツでも生じることが多いと言われており、走ったり、ジャンプしたりをたくさんするスポーツならどのようなスポーツでも発症する可能性はあります。 競技のレベルや強度が上がってくる中学校以降の学生だけでなく、日常的にスポーツを行なっているプロスポーツ選手でも見られ、サッカー元日本代表の内田篤人選手もこの疾患に苦しんだと言われています。 膝蓋骨に付着する腱のオーバーユース(使いすぎ)による炎症であるジャンパー膝は、その炎症部位により以下の2つに分類されます。 ・大腿四頭筋腱の膝蓋骨付着部=膝蓋骨の上に付着する腱の炎症 ・膝蓋腱の膝蓋骨付着部または脛骨粗面付着部=膝蓋骨の下に付着する腱の炎症 いずれの場合も、腱のオーバーユースによる炎症という原因は変わりませんが、障害部位によって原因となる動作や症状、治療法は異なると言われています。日常的な腱のオーバーユースによる障害のため、通常は徐々に症状が進行していくためほとんどの患者は症状が出現してから数ヶ月後に受診するのが現状です。 ジャンプや走るなどの動作で慢性的に膝に力が加わると、膝の靭帯に負担がかかります。この膝への靭帯の慢性的な負担によって、靭帯や腱に炎症を起こしたり、筋繊維などを傷つけてしまうことが原因でジャンパー膝が起きると言われています。 ジャンパー膝の症状 症状は、最初は軽症のことが多いですが、徐々に悪化してきます。 最初の症状としては、世間で、『膝のお皿』と呼ばれている部位である『膝蓋骨』の下側を押すと痛みを感じたり、膝を動かした後に痛くなったりする程度のことが多いです。多くの場合では、スポーツの後に痛みが悪化することが多いです。 注意すべきは、痛みが強くても、走ったりジャンプしたりはできることが多いため、スポーツ選手は痛みを我慢して、運動を続け、どんどん症状が悪化してしまうということが非常に多いということにあります。 最初のうちは、スポーツは普通に行うことができ、スポーツの後に膝に違和感や、痛みを感じる程度のことから始まります。しかし、その痛みを我慢し、膝を使い続けて、徐々に悪化してしまうと、スポーツ中にも痛みを感じるようになります。そのような段階になると、膝蓋骨の下側を押すと、顔をしかめてしまうほどの激痛で、しばらくその場から動けなくなるようなことも多いようです。 それでも痛みを我慢して、スポーツを続けると、スポーツなど運動中だけに関わらず、日常の歩行をはじめ、常に痛みを感じるようになります。さらに悪化すると、痛みでスポーツを継続することが困難になります。さらにスポーツを続けると腱や靭帯が千切れてしまうこともあります。 ジャンパー膝の検査 ジャンパー膝は、症状が出るに至った動作・経緯である病歴とその症状から診断されることが多く、診断自体には画像検査などの特殊な検査を要しないことがほとんどです。膝関節の屈曲や伸展によって誘発される、膝蓋骨の直上または直下の違和感や痛み・熱感が一般的な症状です。 しかし、膝をぶつけたなど明らかな外傷がある場合や病歴、症状が典型的でない場合は膝関節の超音波検査やMRIといった特殊な検査を要する場合もあります。 あくまでこの診断は専門家による評価を前提としているため、安易に自分や非専門家による判断を下さず、整形外科などの医療機関での評価を推奨します。 ジャンパー膝の治療 治療は重症度によって大きく変わってきます。 保存療法 症状が比較的軽症の人は、膝を休めて、安静・休養をとることだけで治ります。しかし、実際には軽症のときは、スポーツ後のみの痛みで、スポーツのプレー自体に影響がないので、そのままスポーツを続けて悪化させてしまうことが多いのが現状です。 スポーツを続ける場合でも、スポーツでの膝への負担を減らし、スポーツを行う前にストレッチを行うことや、アイシングなどで冷やし炎症を抑えることも治療の一つであると言われています。 また、状況に応じては、ステロイドという薬を傷んでいる場所に注射して炎症を抑えることもありますが、腱自体を弱くしてしまい、腱を千切れさせてしまうこともあると言われています。またヒアルロン酸を注射するという治療方法もあります。 ジャンパー膝の治療はリハビリテーションが中心となります。前に述べた通り、ジャンパー膝を含むオーバーユースによる腱の炎症の治療は一般的には以下のような過程があります。 1)原因となる動作の制限:膝関節の屈曲・伸展を中心とした炎症となる原因の動作を、理想的にはやめることが推奨されますが、やめることが困難な場合には頻度や負荷を減らすことで炎症の鎮静化を図ります。 この原因動作の制限は治療の基本となり、症状が出た後にも原因動作を続けることはしばしば症状の悪化や長期化を引き起こします。疑わしい症状が出た場合は速やかに原因動作を中止し安静を保ちながら専門家に相談しましょう。 2)鎮痛:痛みが強い場合にはそのほかの動作に支障をきたすこともあるため、症状に応じて鎮痛薬を内服したり、場合によっては膝関節周囲に注射したりすることもあります。しかし、多くの場合は原因となる動作の制限が鎮痛の効果も果たすため、原因動作の制限でも症状が改善しない場合や痛みが強い場合に鎮痛薬の使用を考慮することになります。 3)原因となる動作への復帰:炎症の改善の経過を見ながら、徐々に膝関節の使用を再開します。ジャンパー膝の治療を行う医療機関では、症状に応じたリハビリテーションプログラムを使用することが多く、早期に競技へ復帰するためにこのリハビリテーションは必要不可欠となります。多くの場合は、軽い負荷から徐々に通常または重い負荷をかけて膝関節の運動を行っていきます。負荷の制御は専門のリハビリテーションプログラムに基づくステップアップを要するため、受診している医療機関での継続的な評価を受けるようにしましょう。 手術療法 それでも重症になってしまい、膝の靭帯や腱が千切れてしまうと、膝を伸ばすことができなくなります。このような段階になってしまうと、手術を行わなくてはなりません。 手術では膝を切り開いて行う必要があります。そのため、全身麻酔という、寝た状態で行う手術が行われることが多いです。手術した傷が感染してしまう可能性もありますし、全身麻酔でのアレルギーなどの副作用が生じる可能性もあり、1−2週間入院をする必要があります。 ただし、手術を行い退院したからといって、すぐにスポーツに復帰できるわけではありません。手術直後は歩行するのにも練習が必要な状態です。歩けるようになった後も、リハビリを行う必要があり、スポーツへの復帰までに3−6ヶ月以上は覚悟せねばなりません。 まとめ・ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎の原因と治療 ジャンパー膝はスポーツを行う人にとって誰でも起こりうる病気です。 ジャンパー膝は、「大腿四頭筋腱」または、「膝蓋腱」のオーバーユース(使いすぎ)による炎症で、ジャンプ・着地、走る・止まるなどの急激な動作を繰り返すスポーツ外傷では比較的よく知られた疾患です。 重症度によって治療の方法は異なり、早く治療を開始することで重症化を防ぐことができる病気です。『症状が軽いから大丈夫』『スポーツが継続してできるから大丈夫だ』と考えて、無理してスポーツを継続すると、重症化してしまい、スポーツへの復帰がかえって長引いてしまいます。 個々の事例によって状況が大きく異なるため、膝に違和感を感じたら早めに医療機関等、病院を受診して医師の診察を受けることを推奨します。 以上、今回の記事ではジャンパー膝(大腿四頭筋腱付着部炎)とその症状および治療法について解説しました。参考にしていただければ幸いです。 ▼ ジャンパー膝をはじめとしたスポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
最終更新日:2024.10.10 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 膝の慢性障害
鵞足炎と変形性膝関節症の違い、症状とその原因を解説 日常生活において、膝に痛みろいった症状が出現したことはありませんか。 ひざが痛む原因となるのは膝に慢性的な炎症を引き起こす病気があるためで、その代表例として「鵞足炎」や、「変形性膝関節症」がありますが、この名前をご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。 今回は、この鵞足炎や変形性膝関節症が一体どのような病気なのか、また両者の相違点について詳しく解説してまいりましょう。 鵞足炎とは ・過度のスポ―ツ活動や運動などによって引き起こされる ・膝の鵞足部における「滑液包炎」であると考えられてる 変形性膝関節症とは ・肥満や加齢などで膝の軟骨部分がすり減ることで発症 ・膝に強い痛みを引き起こす進行性の病気 鵞足炎(がそくえん)とは、どういった病気なのか そもそも鵞足(がそく)という言葉は、普段聞き慣れない方も多いかと思います。膝関節の下に存在している脛骨に連続している三個の腱組織の形状がまるでガチョウの足のように見える事から「鵞足」と名付けられた経緯があります。 人体の膝関節は日常生活において頻繁に曲げ伸ばしといった運動が行われている部位です。何らかの原因で靱帯や腱が、膝を屈曲伸展させる際に骨と摩擦することによって時に炎症といた所見を引き起こすことがあります。その結果として、膝の内側の下方周辺に痛みといった症状が現れた場合は、鵞足炎(あるいは鵞足滑液包炎)を発症して痛みを自覚している可能性があります。 この疾患は、普段の生活の中で過度のランニングなどのスポーツ活動によってひざ関節を使いすぎ(オーバーユース)、酷使する事が発症原因であると言われています。 それ以外にも、自分の足に合っていない靴で運動する、あるいは膝部分の怪我などの、外傷によっても引き起こされる可能性があります。 変形性膝関節症とは、どういった病気なのか 変形性膝関節症という病気は、加齢に伴って慢性的、機械的な刺激が膝部分に加わることで骨が変形して発症すると考えられています。特に40代を過ぎた女性に発生することが多く、加齢、肥満、外傷などの要素が変形性膝関節症の発症に関与していると言われています。 変形性膝関節症では、膝の関節内でクッションの役割をしている関節軟骨がすり減って、骨と骨が摩擦を起こして膝関節が変形すると捉えられています。 元来より日本人は一般的にO脚の人が多いとされており、膝が外へずれるために、その内側に負担がかかりやすくなります。こうしてO脚では、外側部分の筋肉と内側の筋肉のバランスが崩れることになります。 悪化すると軟骨がすり減り、痛みが生じるようになります。このように膝関節を支えている半月板も徐々に質が変化して、少しのストレスで容易に切れてしまうことが指摘されています。 膝関節を支持する重要な役割を担っている半月板が切れてしまうとその位置がずれて膝のクッションの役目を果たさなくなり、膝関節の変形につながり変形性膝関節症を罹患することになります。 ▼変形性膝関節症についてはこちらもご覧ください 膝の痛み/変形性膝関節症のおススメの最新治療法 鵞足炎と変形性膝関節症の違い ここまで簡単に「鵞足炎」や、「変形性膝関節症」に関する病気の特徴を紹介してきました。 鵞足炎は、変形性膝関節症と似たような膝の部位に痛みを起こすことから両者は非常に混同されやすい「似て非なる疾患」と言えますが、お分かりのように膝部の痛みを引き起こす原因がそれぞれ違っています。 鵞足炎の特性としては、膝関節の少し下に圧痛があり、関節部分の腫れを伴うこともあるものの、骨の変形は基本的には認められない、そして変形性膝関節症と比較して半月板組織のすり減りが原因で起こるのではなく筋肉の炎症によって症状がもたらされるという点があります。 したがって、膝関節における半月板の場所と鵞足部の筋肉部位が違うことと同様に、痛みや炎症を起こしている圧痛点がそれぞれ異なる点で両者を鑑別できると言えるでしょう。 鵞足炎の場合には、根本的に症状を改善していくためには、過剰な膝関節部のオーバーユースを回避して足のねじれを取る工夫をすることが必要となります。 変形性膝関節症においては、大腿骨と、その下の骨である脛骨の間で発症します。典型的な症状として最初は膝関節が強ばるなどの違和感から始まって、徐々に階段を上り降りする際や立ち上がったときに膝が痛むという具合に次第に症状が強くなって悪化していきます。 変形性膝関節症の原因は、関節部の軟骨が加齢で弾力性が低下したり、使いすぎ、肥満などが原因と言われています。 その他にも靭帯損傷や、半月板損傷、骨折などの外的要因によるもの、一部には化膿性関節炎の後遺症としても発症すると言われます。 御存知の通り、膝という部位は体重から受ける負担が大きくかかる場所であり、変形性膝関節症の発症を防ぐためには体重を増やしすぎないようにコントロールすることが重要であり、さらに膝周囲の筋力をしっかりと保持することが膝の負担を減らすために有効です。 また、病院などで変形性膝関節症と診断された方は鎮痛剤などの投薬、湿布貼付が選択肢になることがありますし、関節部に比較的多く水が貯留しているケースでは患部を注射して水成分を抜く処置が必要となることもあります。 鵞足炎の症状 ・膝関節の少し下に圧痛 ・関節部分の腫れを伴うことがある ・骨の変形は基本的には認められない 原因 ・筋肉の炎症によって発症する 変形性膝関節症の症状 ・階段の昇り降りで膝に痛み ・進行すると平地での歩行にも痛み ・膝関節が強ばる等、違和感から、徐々に悪化、進行進行する ・関節は、変形し、硬くなり、曲げ伸ばしに支障 原因 ・加齢や肥満、靱帯損傷、半月板損傷、骨折等の外傷、化膿性関節炎等の後遺症 まとめ・鵞足炎と変形性膝関節症の違い、その症状と原因を解説 膝関節部の痛みを呈する病気として代表的なものに変形性膝関節症や鵞足炎が挙げられます。 両者は類似的に膝の痛みを引き起こす原疾患として知られているがゆえに、これまでひざ痛の原因が変形性膝関節症だと思っていた場合でもよくよく調べてみると実は鵞足炎だったという場合も考えられます。 レントゲン検査だけで両者を鑑別することは難しく、正しい診断に繋がらないこともあろうかと思いますので、膝が痛い時には詳細に検査をして確実に原因を精査して的確な治療を実践できれば長期的に悩んでいたひざ痛が改善できる可能性があります。 心配であれば、最寄りの整形外科クリニックや専門病院などの医療機関を受診して相談してみることも考慮してみましょう。今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼ 再生医療が変形性膝関節症等膝の治療を根本から変える! 変形性膝関節症は、再生医療の幹細胞治療で手術せず、入院不要で改善できます ▼鵞足えんについてはこちら参考にしていただけます 鵞足炎は、膝の酷使が原因に!その痛みと治療法とは
最終更新日:2024.10.07 -
- ひざ関節
- 膝の慢性障害
鵞足炎は膝の酷使が原因!その症状と治療法について解説します 皆様の中で日常的に立ち上がる瞬間や、階段を昇り降りする際などに「膝が痛い、痛む」と自覚している人はおられませんか。 普段生活している中で「膝が痛む症状」で悩んでおり、その対策や改善方法を探索している方も少なからずいらっしゃることでしょう。仮にひざを酷使して膝痛を自覚している場合には「鵞足炎(がそくえん)」という病気を見逃してはいけません。 普段聞きなれない、この病気は「鵞足(がそく)」と呼ばれる場所、膝関節の内側より下方に位置する脛骨付近に炎症が引き起こり、膝に痛みが出現することで知られています。 今回は、膝を酷使すると起こりやすい鵞足炎という病気の特徴や症状、その疾患に対する対策や治療法について詳しく解説してまいります。 鵞足炎の症状(膝の内側の痛み) そもそも「鵞足」と呼ばれる部位は、膝から5㎝程度足側に存在している脛骨という骨の内側部分に位置しており、一般的には縫工筋、半腱様筋、薄筋という三種類の筋肉に付着している腱がその脛骨にくっついている場所を指しています。 この鵞足部位にある「滑液包の内部に強い炎症が起こっている状態が鵞足炎」であると考えられており、鵞足炎を発症していると膝を屈曲するときや股関節を内転する動きにより慢性的に膝に痛みを覚えます。 本疾患は、膝を酷使するマラソンなどの走る系の一般アスリートや、それ以外でもトップアスリートなどプロスポーツ選手に生じやすいと言われており、打撲などの外傷を契機に発症する可能性も指摘されています。 鵞足炎の原因は、自分に見合っていない不適切なトレーニングをする、運動前にストレッチを怠る、急な坂道を急激に長時間走る、肥満体形で膝に負担が掛かりやすいなどが発症に関与していると考えられています。 このように鵞足炎という病気は、スポーツにかかわる障害として代表的な疾患のひとつであり、その臨床的な特徴所見としては鵞足部への圧痛や、同部の動作時における疼痛症状が現れることであります。 この疾患に罹患すると、初期では膝関節の内側部より5㎝ほど下方の部位に痛みを覚えて、その部位を押すと強い痛みを自覚します。また、運動時や階段昇降時に疼痛症状が悪化しやすく、更に病状が進行すると安静時にも同部位が疼くように痛みを感じることがあります。 鵞足炎の特徴 ・スポーツ障害として代表的な疾患 ・膝の酷使 ・マラソン ・トップアスリート、プロスポーツ選手に生じやすい ・打撲などの外傷を契機に発症 鵞足炎の原因 ・不適切なトレーニング ・運動前のストレッチを怠る ・急な坂道を急激に長時間走る ・肥満体形で膝に負担が掛かかる 鵞足炎の治療法について 鵞足炎に対する治療策は、一般的には理学療法、あるいは投薬や注射などの保存的な療法が通常の流れになっています。 理学療法の一環として、本疾患においては大腿部の筋肉が硬くなると膝の症状が悪化すると考えられていますので、効果的なストレッチで筋肉部の緊張を和らげることが重要な視点となります。 注意点としては、炎症が強くて痛み症状が顕著な時期にストレッチ運動を過剰に実践してしまうと、逆に膝の痛みが悪化する原因になりかねないとの指摘もあります。 したがって、症状がひどい際には軽めのストレッチに留めておき、十分な安静を保持して、患部のアイシングや、湿布をはったり、外用消炎剤を塗布する、あるいは消炎鎮痛剤を服薬するなどの対処策を検討することになります。 また、鵞足炎に対する理学療法の一つとしてテーピングや、サポーターが挙げられます。 具体的には、膝関節を少し曲げながら股関節をやや内側に保持した状態で伸縮性のあるテーピングを貼付したり、サポーターを用いることで膝関節部における内側方向の動作を物理的に制限することができ鵞足部への負担を減らすことが出来ます。 もし鵞足炎に対して患部安静、局所的アイシング、抗炎症薬の使用、理学療法を実践するなどの治療方法を施行しても症状が改善しないケースでは、滑液包の内部に少量ステロイド薬を直接的に注射する療法も考慮されます。 このステロイドによる注射治療は施行後すぐに症状が軽快することが多く認められますが、数か月経過すると再度膝の痛みが再燃する可能性がありますので十分に注意を払っておくべきです。 また、痛みを覚えると身体を動かさなくなり、運動量が減ると体重が増加する恐れがあります。膝には体重の数倍の付加が、かかるとされ、体重の増加はそのまま症状の悪化につながりかねません。予防も含めて体重管理には注意したいものです。 まとめ・鵞足炎は膝の酷使が原因!その症状と治療法 鵞足炎という病気は鵞足部に存在している滑液包における炎症が主な病態であり、通常の場合には過度の運動などによって同部において繰り返して引き起こされる摩擦と物理的なストレスが原因で発症するものです。 特に、マラソンランナーや陸上選手などを始めとして膝を屈曲あるいは内旋する動作そのものが膝の内側、鵞足部への過剰な負担となりますし、縫工筋や半腱様筋、薄筋などの筋肉の緊張度が高い状況下に鵞足炎は頻繁に発症することが知られています。 鵞足炎の治療法 ・薬物療法、湿布などのアイシング ・ストレッチ ・鎮痛剤の内服 ・消炎鎮痛剤の塗布、炎症部位をアイシングし、熱感を除去する 鵞足炎は再発しやすいとも指摘されているため、焦らずにきちんと治すことを意識しながら、担当の医師や理学療法士などの医療従事者や専属トレーナーと一緒に使用するシューズを見直すなど症状が再発しないように出来る工夫策を共有することが重要な観点です。 心配であれば、最寄りの整形外科クリニックや専門病院などの医療機関を受診して相談してみることも考慮してみましょう。以上、鵞足炎は膝の酷使で起こる、その痛みと治療法と題して記させて頂きました。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼ 再生医療の幹細胞治療が膝の治療を変える! 膝の痛みに新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善できます ▼以下も参考にされませんか ご注意!スノーボード、スキーなど冬のスポーツで起こしやすい膝の怪我とは?
最終更新日:2024.10.07 -
- ひざ関節
- 膝の慢性障害
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
膝の痛みを起こすスポーツで起こるの慢性障害3つの要因と4つの症状について 走ったり、ジャンプをするなどのスポーツ、運動をすると、膝に力が加わり続け、靭帯や腱の組織が損傷したり炎症を起こして、膝に痛みなどの障害を引き起こす場合があります。 これは、いわゆるスポーツ障害の一種で「膝の慢性障害」です。これは、運動による膝の使い過ぎが原因であり、スポーツによる「使い過ぎ症候群」とも言われています。そこで今回は、膝の使い過ぎにより発症するスポーツ障害のうち「膝の慢性障害」とその症状について、詳しく解説します。 膝の使いすぎによるスポーツ障害「膝の慢性障害を起こす3大要因」とは ① 身体要因 1つ目は、筋力不足や筋肉のアンバランス、体の柔軟性の不足など、体自体の発達具合に起因する身体要因です。 ② 環境要因 2つ目は、合わない靴を履いている、地面が固すぎたり柔らかすぎたりして膝に負担がかかるなどの環境要因です。 ③ トレーニング要因 3つ目は、過度な運動量、技量や体力に合わない運動をするなど、自分に合わないトレーニングやスポーツを行うことに起因するトレーニング要因です。 これらの要因が発生している状況で、膝の靭帯や腱に骨が付着する部分や、靭帯が骨の上を通る部分に繰り返し負荷がかかり続けると、付着部分や重なっている部分に摩擦が起き、損傷や炎症が生じて痛みを感じるようになります。 軽度な症状であれば、運動中や運動後に痛みを感じることもありますが、トレーニングやプレーは通常通りできるため、大きな影響はありません。しかし、進行すると運動中に常に痛むようになり、支障をきたすようになります。 さらに重症化してくると、運動が出来なくなったり、靭帯や腱の断裂を引き起こし、日常生活に支障が出るなど、スポーツによる膝の慢性障害を発症してしまいます。 スポーツ障害|膝への代表的な症状で4つの慢性障害とは 前述した要因により引き起こされる、スポーツによる膝の慢性障害の代表的な症状としては、以下の4つが挙げられます。 スポーツで起こる膝の慢性障害 ①鵞足炎 ②大腿四頭筋腱付着部炎 ③膝蓋腱炎 ④腸脛靭帯炎 これら4つの症状は、ひざ関節の外側や内部で生じるものですが、特定の動きにより発症しやすくなります。 ①鵞足炎の症状と原因 「鵞足」とは、ひざを曲げる筋肉や腱が付着する骨の部位をさしますが、ランニング動作などの、足を後ろに蹴り出す動作を繰り返したり、急に方向転換をする動きを繰り返すことで、鵞足がすれて炎症し痛みが出るようになります。 ②大腿四頭筋腱付着部炎の症状と原因 膝の関節の外側が炎症することで症状が出ますが、バレーボールやバスケットボールなどのジャンプ動作やサッカーボールを蹴る動作、ジョギングなどの走る動作を繰り返したことにより発症します。 ③膝蓋腱炎の症状と原因 膝蓋骨という通称「膝の皿」と言われる部分の下部からすぐ下の靭帯にかけて痛みが出るもので、バレーボールやバスケットボールなどのジャンプ動作を繰り返すと発症しやすくなります。 ④腸脛靭帯炎の症状と原因 膝の外側を通る腸脛靭帯が、長距離ランニングなど、長時間の膝の屈伸運動により、炎症を起こして発症します。 以上のように、ジャンプをしたり、足を蹴り出したり、長時間動かし続けることで、各動作で使われる膝の周りの靭帯や腱と骨の付着部分に摩擦が生じて炎症を起こし、痛みが生じるようになります。 スポーツによる膝の慢性障害への対処法 スポーツによる膝の痛みなどの慢性障害の対処法としては、まず症状が出るのを予防すること、そして、発症してしまった症状を改善することが重要となってきます。そして、予防をするためには自己対処がとても大切です。 痛みに対して鎮痛剤を投与したり、装具療法や、時に手術が必要になるなど、各個人で症状や対処法は異なりますので、お近くの整形外科での診察を受け、個々の症状に応じた診断と適切な治療やアドバイスを受けるようにしてください。 ストレッチを行う 体の柔軟性を高めるために、運動開始前に十分にストレッチを行ってください。ストレッチを行うことにより、運動前に体の筋を十分伸縮させ筋肉の緊張をほぐすことで、運動による膝への衝撃を和らげることができます。 アイシングを行う 運動後に、急性炎症を抑えるために、氷や水などで膝を局所的に冷やすアイシングを15分程度行うのも効果的です。 その他 もしスポーツによる膝の慢性障害を発症してしまったら、無理をしないように休憩を適度にとったり、トレーニングメニューを強度の低いものに変更するなど、まずはご自身で調整しましょう。 症状が重い場合は、リハビリテーションを含む専門知識や技術が必要となる場合があります。 まとめ・膝の痛みを起こすスポーツで起こる慢性障害3つの要因と4つの症状 健康を意識する方が増え、運動を継続的に行ったり、趣味で競技スポーツを行う方が年々増加傾向にあります。 適度な運動を体に無理がかからない範囲で行うのは良いですが、過度な運動をしたり、合わない靴を履いての運動などをすることで、気づかないうちに膝に負担をかけ続けていると、スポーツによる膝の慢性障害を発症する確率が高くなります。 また、我慢できる程度の痛みだからと、準備運動のためのストレッチや運動後のケアを怠ったり、トレーニングメニューの調整をしないと、症状が悪化し日常生活に支障が出る場合があります。 スポーツによる膝の慢性障害は症状が進行すると、自然治癒することが難しく手術が必要になることもありますので、無理な運動をせず、日頃のコンディショニングをしっかりと行いつつ、トレーニングをするようにしてください。 以上、膝の痛みを引き起こすスポーツ上の慢性障害について解説させていただきました。参考になれば幸いです。 ▼以下も参考にしてください 膝の病気|膝から下が痛い、重い、だるい!症状から考えられる病気と治療法
最終更新日:2024.10.07 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 膝の慢性障害
高位脛骨骨切り手術のメリットとデメリットを医師が解説します 変形性膝関節症の治療方法には、大きく分けて「保存療法」と、「手術療法」の2つがあります。 保存療法にはリハビリテーション、装具療法、薬物療法などがあり、これらを色々と組み合わせることで行われます。そして、手術という選択肢は保存療法で効果が得られない場合に検討することになります。 手術療法の中でも、特に「高位脛骨骨切り術」と呼ばれる手術は、O脚変形のために内側部(内側大腿から脛骨関節)に偏った過重なストレスを、自分の骨を切って少し角度を変える処置が施されるものです。 この手技によって、膝の内側部に過度の負担となっていた外力のベクトルを比較的きれいな軟骨の存在する外側部(外側大腿から脛骨関節)に移動させることが出来ます。 一般的には、手術を受けた結果として通常では脚の形はO脚からX脚に変化します。 この手術治療では、患者さんの膝関節が温存できますので、正座が引き続き可能であり、普段の生活はもとより、スポーツや、農業などの仕事へ復帰出来る方々も多くいらっしゃいます。 一方で、ある程度の入院期間が必要で術後に骨が癒合するまでの間、痛みが多少なりとも続くことや、膝関節部周囲の機能的な回復には、リハビリをしっかりと行うことが必要となってきます。 そこで今回は、高位脛骨骨切り術が適応となる症例や高位脛骨骨切り術について予後に後悔のないように、その利点、メリットとデメリットについて説明していきましょう。 高位脛骨骨切り術が適応となる症例とは? まず過度なスポーツ活動による関節に対して負担の大きな動き、専門的に言うと膝内反モーメント(ひねり)の増大により内側骨端線が早期閉鎖して脛骨内反(O脚)が起こりやすく、普段の生理的なレベルを逸脱した脛骨内反そのものが将来の「変形性膝関節症」の発症リスクとなります。 要は、通常とは違う動き、激しい動き、加重、ひねり、衝撃などが繰り返されることで関節の負担が増えると、同時に関節症のリスクも増えるということです。 後悔先に立たず!激しい運動の前には、ストレッチや準備体操をしっかり行い、終わりには整備体操やストレッチなどを入念に行うなど体に対する十分なケアを忘れず実施しましょう。 加えて申し上げるなら、これら体操やストレッチも自己流ではなく、適切な方法をトレーナーなどから指導を受けて行うべきです。通常では、股関節から足の甲までを一直線に結ぶ線を「荷重線」といいます。 一般的に変形性膝関節症を罹患している方の多くは、この荷重線が膝の内側を通っているので、膝の内側に荷重がかかり過ぎて膝に障害が起こります。高位脛骨骨切り術では、この「荷重線」を膝の中心に近づける手術を行います。 この手術を受ける対象者とは 一般的には、高位脛骨骨切り術の適用年齢は、概ね50歳〜75歳までで、変形性膝関節症を認める症例の中でも中程度の変形を呈する方に薦められることが多いです。 若年者でも症状が強いケースであるならば高位脛骨骨切り術を行って、下肢機能軸や脛骨近位の内反角を正常化すべきであるという意見もあります。 また、人工膝関節置換術は、骨と人工の異物を接合する都合上、ゆるみなど再手術が必要になることがあり、そうなれば初回の手術よりも再手術は、手技的に難しくなることがあります。 そのため、再手術のリスクを避けるために65歳よりも若い方にはこの高位脛骨骨切り術が勧められています。 また、変形性膝関節症の症状が中程度までで、まだまだ運動や肉体を使う仕事を続けたいなどの場合を含めて年齢を問わず活動性が高い患者さんには本手術治療を受けることをお勧めします。 高位脛骨骨切り術の適用 ・適用年齢:概ね50歳〜75歳 ・変形性膝関節症の症状:中程度まで 高位脛骨骨切り術のメリットとデメリット さてここからは、「高位脛骨骨切り手術」自体の利点と欠点について紹介していきます。 メリットについて 高位脛骨骨切り術では、O脚に変形した脚を、X脚ぎみに矯正して変形性膝関節症の進行を遅らせることが出来る唯一の術式と考えられています。この手術の最大のメリットは、最終手段の人工関節を使わずに「自分の関節を残したまま」で症状を改善することが期待できる点です。 また、比較的侵襲(体への負担)が少ない手術であり、手術後の日常生活に対する制限も少なく、スポーツさえ継続できて、要否はともかく正座が可能になる症例も多く見受けられるため、変形性膝関節症において現在最も推奨される治療法であると言えるでしょう。 しかも、最近の高位脛骨骨切り術は、新しい手術方法が開発された結果、術後早期からの歩行も可能になっています。 入院期間も従来の人工膝関節置換術とほとんど変わらず、およそ4週間~6週間が平均的です。 高位脛骨骨切り術を受けた場合のリハビリは、術後1週間位から徐々に膝に体重をかけ始めて、3週間以内には全体重をかけて歩行訓練を施行します。そして、4週間~5週間程度で安定した歩行、階段の昇降、日常生活動作などをクリアすることで軽快退院の運びとなります。 デメリットについて 従来の高位脛骨骨切り術は、骨癒合までの数ヶ月間、手術した足に十分な体重をかけることが出来ず、入院が長期にわたるのが欠点でした。そのため、仕事をお持ちの方にとって復帰に時間が必要なことは大きな欠点でした。 そして、これまでにも高位脛骨骨切り術の処置に伴って腓骨短縮などの合併症や有痛性偽関節(骨がくっつかず、痛みも出る)が引き起こされることが問題としてあります。 また、高位脛骨骨切り術を受けたのちに、骨が癒合するまで多少なりとも膝部の痛みが続くと言われており、実際に術後の痛みが軽快して骨癒合が完了するまでに個人差はあるものの、およそ半年以上は時間がかかるとも伝えられています。 つまり、膝機能がある程度満足が得られるレベルまで回復するためには、気苦労の多いリハビリをコツコツ、しっかり行う必要があると言えるでしょう。 まとめ・高位脛骨骨切り術のメリットとデメリット 変形性膝関節症は慢性疾患であり、骨肉腫などのように、命に関わるといった疾患ではありません。従って、どのような治療法を選択するかは、患者さん一人ひとりが望むゴールによって変わってきます。 例えば、変形性膝関節症を抱える80代の高齢者であっても、「登山や舞踊が長年の生き甲斐なので今後もあきらめずに続けたい」などの目標がある場合には、高位脛骨骨切り術で自分の関節を温存できるようにチャレンジするケースもあります。 高位脛骨骨切り術とは、脚の形をO脚からX脚に変える手術であり、変形性膝関節症によって内側に偏っている過重ストレスを自分の骨を切って角度を変えることによって反対の外側に移動させる治療方法です。 この手術では、術後に多少疼痛は伴うデメリットが挙げられる一方で、自分の関節を温存して機能を維持することができるために術後の日常生活にほとんど制限がない所が大きなメリットと言えます。 いずれにしましても病院等の医療機関を受診され、しっかりご相談されることをおススメします。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。
最終更新日:2024.10.07