- 内科疾患、その他
- 内科疾患
腎臓癌の進行スピードはどのくらい?治る確率や再発率を医師が解説

腎臓癌と診断され「これからどうなるのか」と不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。
腎臓癌にはさまざまなタイプがあり、進行スピードや症状のあらわれ方には個人差があります。
ただし、治る確率は、どのくらい進行しているのか判断する「ステージ」によって異なるのです。
本記事では、腎臓癌の進行スピードやステージごとの治る確率、進行度による症状の変化を解説します。
今後をしっかり見据えて治療に臨みたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
腎臓癌の進行スピードには個人差がある【早いとは限らない】
腎臓癌と聞いて「すぐに悪化してしまうのでは?」と不安になる方もいるかもしれませんが、腎臓癌の多くを占める腎細胞癌(じんさいぼうがん)は、進行スピードが必ずしも早いとは限りません。
腎臓癌はどこの細胞が癌化したかによって、「腎細胞癌」と「腎盂癌(じんうがん)」の2種類に分けられます。(文献1)
癌化した細胞 |
特徴 |
|
---|---|---|
腎細胞癌 |
腎実質の細胞 |
一般的に「腎臓癌」と呼ばれるのはこのタイプ 腎臓癌の多くを占める |
腎盂癌(じんうがん) |
尿管につながる「腎盂」にある細胞 |
尿管癌とまとめて治療されるケースが多い |
腎細胞癌は、さらに14タイプに分かれ、なかでも「淡明細胞癌(たんめいさいぼうがん)」が約70%~85%を占めるとされています。
タイプによって進行スピードに差があるという報告もありますが、実際の進行スピードは癌のステージや本人の体調によってさまざまです。
一方、腎盂癌を含む尿路上皮にできる癌は、尿路全体にできたり再発をくり返したりしやすく、腎細胞癌とは治療方針も異なります。
自分の癌のタイプがわからない方は、今後の治療の見通しを正しく理解するためにも、次回の診察時に医師へ確認してみましょう。
なお、本記事では腎臓癌の多くを占める「腎細胞癌」を中心に解説します。
\無料オンライン診断実施中!/
【進行度別】腎臓癌の症状
腎臓癌は、進行の度合いによって症状のあらわれ方が変わります。
進行度合い |
あらわれやすい症状 |
---|---|
初期 |
・多くが無症状 |
進行時 |
・血尿 ・食欲不振 ・おなかのしこり |
転移時・末期 |
・痛み ・呼吸困難 |
詳しく解説します。
初期症状|多くが無症状
腎臓癌の初期段階では、ほとんどの場合で自覚症状がありません。(文献1)
そのため、健康診断での画像検査や、ほかの病気の検査中に偶然発見されることが多い傾向です。
進行時の症状|血尿・食欲不振・おなかのしこり
腎臓癌が進行すると、腎臓や周りの組織が癌で圧迫されたり、癌が周囲の組織に侵入すること(浸潤:しんじゅん)で、さまざまな症状があらわれます。
代表的な症状は以下のとおりです。(文献1)
- 食欲不振
- 吐き気や便秘
- おなかの痛み・しこり
- 背中や腰の痛み
- 血尿
- 足のむくみ
症状の出方には個人差があり「なんとなく体調が悪い」程度の変化しか感じない方もいます。
転移したとき・末期の症状|痛み・呼吸困難
腎臓癌がさらに進行してほかの臓器に転移すると、その転移先に応じた症状があらわれます。
腎臓癌はとくに「肺」への転移が多く、ほかにも骨、肝臓、副腎、脳などにも広がる恐れがあります。(文献1)
転移部位ごとの症状は、以下のとおりです。(文献2)
転移部位 |
あらわれやすい症状 |
---|---|
肺 |
・咳 ・血痰 ・呼吸困難 |
骨 |
・骨の痛み ・骨折しやすさ |
肝臓 |
・おなかの張り ・だるさ ・黄疸 |
副腎 |
・腹痛 ・血圧・血糖値の上昇 ・筋力低下 |
脳 |
・頭痛 ・めまい ・けいれん |
このように、末期になると痛みや息苦しさ、だるさなど、自覚する症状が強くなる傾向です。
腎臓癌の治る確率を左右する「ステージ分類」と「5年生存率」
腎臓癌は進行の段階(ステージ)が1〜4に分類され、ステージが進むほど、治る確率(生存率)は低くなる傾向にあります。
よく使われるのが「5年生存率」という指標で、これは「癌と診断されてから5年後に生きている人の割合」のことです。
本記事では「ネット・サバイバル」と呼ばれる、純粋に癌そのものが原因で亡くなったかどうかに焦点をあてたデータをもとにしています。(文献3)
以下に、2014年〜2015年におけるステージごとの特徴と、5年生存率をまとめました。(文献3)(文献4)(文献5)
腎癌のステージ |
特徴 |
5年生存率(ネット・サバイバル) |
---|---|---|
ステージ1 |
癌が腎臓のなかにとどまり、大きさは7cm以下 |
94.9% |
ステージ2 |
癌はまだ腎臓のなかだが、7cmより大きい |
87.9% |
ステージ3 |
癌が腎臓の外に広がっている(ただし腎臓を包む脂肪の膜は超えていない) 血管のなかに入り込んでいる |
76.5% |
ステージ4 |
癌がほかの臓器に転移しているか、周りの臓器に直接広がっている |
18.7% |
このように、早期に見つかれば見つかるほど、治療によって長く生きられる可能性が高くなります。
【進行ステージ別】腎臓癌の治療法
腎臓癌の治療法は、以下のように癌のステージによって異なります。
- ステージ1・2|手術が基本
- ステージ3|手術+リンパ節郭清/凍結療法
- ステージ4|分子標的薬治療+手術+薬物療法、放射線治療
迷いや不安があるときは、医師としっかり話し合いながら納得のいく方針を立てて、治療を受けましょう。
ステージ1・2|手術が基本
進行が浅いステージ1・2では、手術による癌の切除が基本的な治療法です。
標準的には、腎臓をまるごと取り除く「腎摘出術」がおこなわれます。
癌が小さい場合や、腎機能を温存したい場合には、癌の影響が及んでいる部分だけ切除する「腎部分切除術」が適応される傾向です。
なお、癌の状態が落ち着いていて、積極的な治療が今すぐは必要ないと判断された場合、定期的な画像検査(CT・MRI・超音波など)で癌の変化を慎重に観察していく「監視療法」が選択されるケースもあります。(文献1)
ステージ3|手術+リンパ節郭清/凍結療法
腎臓周囲の組織や血管に広がっているステージ3では、腎臓の摘出に加えてリンパ節郭清(りんぱせつかくせい)をおこないます。
リンパ節郭清とは、癌が広がる可能性のあるリンパ節を切除する治療です。
また、手術が難しい高齢者や持病のある方向けの選択肢として「凍結療法(がん組織を凍らせて壊す治療)」がおこなわれるケースもあります。(文献1)
細い針を癌に刺して冷却し、癌細胞を凍らせて壊す治療法で、身体への負担が比較的少ないのが特徴です。
ステージ4|分子標的薬治療+手術+薬物療法、放射線治療
腎臓以外への転移があるステージ4では、薬による治療(薬物療法)が中心です。
代表的な薬として「分子標的薬」や「免疫チェックポイント阻害薬」などがあり、癌の増殖を抑えたり、身体の免疫力を高めて癌と闘いやすくしたりする効果が期待されます。
- 分子標的薬:癌細胞の成長や血管をつくる仕組みなどをピンポイントで狙って抑える
- 免疫チェックポイント阻害薬:免疫の働きを邪魔しているブレーキを外して、本来の力で癌細胞を攻撃しやすくする
また、腫瘍の大きさや出血・痛みなどの症状によって、病状の進行を遅らせる目的で手術や放射線治療、免疫療法が選択されることもあります。(文献5)
当院リペアセルクリニックでは「第4の癌治療」として注目される免疫療法を提供しています。
手術や薬物療法などの標準的な治療だけでは不安、自分に免疫療法が合うのか知っておきたいなどの方は、お気軽にオンラインカウンセリングやメール相談をご利用ください。

再⽣医療で免疫⼒を⾼めることができる時代です。
\無料相談受付中/
全ステージ|緩和ケア
「緩和ケア」と聞くと最期のときを過ごすためのケアだと思われがちですが、実際には癌と診断された段階から利用できる医療サポートです。(文献1)
身体的な痛みを和らげるのはもちろん、治療への不安、仕事やご家族のこと、将来への悩みなど、こころの面でも寄り添ってくれます。
医療チームや専門のスタッフと連携しながら、できる限り不安の少ない治療を続けるために重要なケアといえます。
腎臓癌の悪化・再発を防ぐ対策3選
腎臓癌は、治療後に再発する可能性がゼロではなく、治療中にも病状が進行してしまう場合もあります。
だからこそ、日々の生活習慣や身体の変化に注意を向け、再発や悪化の予防につなげていきましょう。
定期的に通院し検査を受ける
腎臓癌は、再発しても初期には自覚症状が出にくいことが多く、症状が出たときには進行しているケースも珍しくありません。
そのため、定期的なCT検査や超音波(エコー)検査、血液検査などでの早期発見が重要です。
国立がんセンターによると、腎臓癌は、治療後10年以上経過してからも再発を起こす可能性があるとされています。(文献1)
医師の指示にしたがって、決められたスケジュールで通院し、再発や転移を早い段階で見つけられる体制を整えておきましょう。
免疫力を高める生活を送る
癌の再発予防には、免疫力の維持・向上が重要と考えられています。
癌細胞は、私たちの身体のなかで日々発生していると考えられ、通常は免疫の働きによって癌細胞のような異常な細胞が排除されます。
しかし、免疫力が低下するとこの仕組みがうまくいかず、癌を発症するリスクが高まるとした意見があります。
そのため、以下のような免疫力を高める行動が、癌の再発予防につながると期待されているのです。
- 栄養バランスを意識した食事
- 1日7〜8時間程度の質の良い睡眠
- ウォーキングやヨガなどの継続しやすい軽い運動
- 趣味の時間をもつ、ストレスをためない工夫
無理のない範囲で、医師と相談しながら取り組むのがポイントです。
なお、当院リペアセルクリニックでは、第4の治療法として注目されている免疫療法をおこなっています。
以下のページで詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

再⽣医療で免疫⼒を⾼めることができる時代です。
「自分の状態で受けられるのかな」「まずは話を聞いてみたい」と感じた方は、メール相談またはオンラインカウンセリングのご利用をおすすめします。
\無料オンライン診断実施中!/
高血圧や糖尿病などの生活習慣病を防ぐ
高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、腎臓に負担をかけたり、癌の再発や予後に影響を及ぼしたりする可能性が指摘されています。(文献6)(文献7)
再治療が必要になった場合に、手術や薬物療法の選択肢に制限がでる可能性もあるため、以下のような日頃からの予防と管理が大切です。
- 塩分・脂肪を控えめにした食生活
- よく噛む、食べる順番を意識するなど血糖値が急上昇しにくい食べ方
- 適度な運動で体重をコントロール
- 定期的な健康診断と血圧・血糖のチェック
無理のない範囲で、できることからで構いません。
体調や気分に合わせて、少しずつ生活習慣を見直しましょう。
腎臓癌の進行スピードは早いとは限らない!正しい知識をもって治療に臨もう
腎臓癌の進行スピードは個人差があり、一概に「早い」とは言い切れません。
ステージや身体の状態に合わせて適切な治療を受けることで、再発や悪化のリスクを抑えられます。
だからこそ大切なのは、正しい知識を持ち、信頼できる医療機関で自分に合った治療を選ぶことです。
リペアセルクリニックでは、癌治療に関するご相談や、免疫療法を含めた治療のご提案もおこなっています。
「まずは話を聞いてみたい」「今の治療に不安がある」などの方は、メール相談やオンラインカウンセリングでお気軽にご相談ください。
不安な気持ちを一人で抱え込まず、一緒に向き合っていきましょう。
\無料相談受付中/
腎臓癌の進行スピードにまつわるよくある質問
腎臓癌を女性が発症した場合、原因はストレスが多いですか?
ストレスが腎臓癌の直接の原因とした科学的な根拠はありません。
ただし、ストレスが長く続くと生活習慣の乱れや免疫力の低下を引き起こし、肥満や高血圧などの腎臓癌のリスク因子を高める要因になる恐れがあります。
腎臓癌のリスクを高める主な要因は、以下のとおりです。(文献6)(文献8)
- 喫煙
- 肥満
- 慢性的な腎疾患
- 高血圧
そのため、ストレスケアや生活習慣の見直しは、腎臓癌の予防・再発リスクの軽減にもつながる大切なポイントといえるでしょう。
腎臓癌ステージ1の治療中です。再発率はどのくらいですか?
ステージ1の腎臓癌のうち腫瘍の大きさが5〜6cmの場合、再発のリスクは約20〜30%とする報告があります。(文献9)
なお、以下の要因は再発リスクに影響する可能性があるとされています。(文献10)
- 腫瘍の大きさ
- 症状の種類や程度
- 生活習慣病(とくに糖尿病)
治療が終わっても再発の可能性はあるため、定期的な検査が必要です。
CTやエコーなどの画像検査をとおして、すぐに対処できるような体制を整えておきましょう。
腎臓癌ステージ4で手術ができないと言われてしまいました。余命はどのくらいですか?
手術できない場合の余命は数カ月〜数年と個人差があるため、どのくらいとは断言できません。
ただし、最近は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、効果のある治療薬が増えており、進行していても長期的に病状をコントロールできるケースもあります。
医師と相談しながら、体力や生活の質を保ちつつ、納得のいく治療を続けることが大切です。
参考文献
腎臓がん(腎細胞がん)|国立がん研究センターがん情報サービス
院内がん登録生存率集計結果閲覧システム|国立がん研究センターがん対策研究所がん登録センター
腎臓がん(腎細胞がん)治療|国立がん研究センターがん情報サービス
Geographic variation of mutagenic exposures in kidney cancer genomes | Nature
Association of Dyslipidemia with Renal Cell Carcinoma:A1∶2Matched Case-Control Study|PMC