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尿毒症とは?症状・原因・治療法をわかりやすく解説

尿毒症は腎機能が著しく低下することで起こる深刻な病態です。
「症状に気づいたときには既に進行していた」というケースも多く、早期の発見と適切な対応が重要になります。
本記事では、尿毒症の基本知識から症状の見分け方、治療法、日常生活でできる予防策までわかりやすく解説します。
腎機能に不安をお持ちの方やご家族の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
尿毒症とは?腎機能低下で起こる危険な状態
尿毒症とは、腎機能が著しく低下した危険な状態です。通常であれば尿として排出されるはずの老廃物や毒素が体内に蓄積され、全身にさまざまな悪影響を及ぼします。
尿毒症の症状は多岐にわたり、意識障害や呼吸困難、心不全など重篤なものも含まれます。
腎機能の低下が進行する中で異常に気づかず放置した場合、命に関わるリスクも高まるため、早期に対応することが極めて重要です。
尿毒症の原因
尿毒症の主な原因には、以下のような疾患があります。
- 慢性腎臓病
- 糖尿病性腎症
- 高血圧性腎障害
- 急性腎障害
- 長期の薬剤使用
疾患が進行すると腎臓への血流が低下し、糸球体(腎臓で血液をろ過する小さな毛細血管の束)と呼ばれるろ過装置が損傷され、老廃物の排出能力が低下していきます。
腎臓の損傷は通常、時間をかけて徐々に進行しますが、気づいたときには重度の腎不全に至っているケースも少なくありません。
上記の疾患や状況によって腎機能が損なわれると、尿毒症の発症リスクが高まります。
日頃から生活習慣病を適切に管理し、尿毒症の予防につなげていきましょう。
尿毒症の症状
ここでは、尿毒症の症状と初期と末期にわけてそれぞれ解説します。
初期症状
尿毒症は症状が現れずに進行することが多いため、初期段階での体調の変化を見逃さないことが大切です。
とくに、以下のようなサインに注意しましょう。
- 全身の倦怠感
- 食欲の低下
- 吐き気や嘔吐
- 頭痛や集中力の低下
- 皮膚のかゆみ
これらの症状は、一般的な体調不良と区別がつきにくいのが難点です。
慢性的に続く場合や複数が重なる場合には、腎機能の検査を受けましょう。
末期症状
尿毒症が進行して末期になると、体内に蓄積した毒素が神経系へ影響を及ぼし、錯乱やけいれん、昏睡などの神経症状が現れやすくなります。
また、腎機能の低下により体内の水分バランスが崩れ、体液が過剰に貯留する恐れもあります。
結果として、肺に水がたまる「肺水腫」が発生して呼吸困難や重度のむくみを伴うと、緊急の治療が必要なケースもあるため注意が必要です。
尿毒症の診断基準
尿毒症の診断には、腎機能の指標となる血液検査の数値が重要です。とくに、以下の項目が基準として用いられます。
血清クレアチニン値 | 筋肉から出る老廃物の血液中の濃度 正常値:男性0.65~1.07mg/dL、女性0.46~0.79mg/dL |
血中尿素窒素 | タンパク質が分解された時に出る老廃物の血液中の濃度 正常値:8~20mg/dL |
eGFR | 腎臓のろ過能力を数値化したもの 60未満で慢性腎臓病、15未満で透析が必要な段階 |
上記の値が異常で、かつ自覚症状が認められる場合に尿毒症と診断されます。
血清クレアチニン値と血中尿素窒素の値が上昇し、eGFRが大きく低下しているときには、腎機能が著しく低下している状態です。
さらに、症状の評価には神経症状や消化器症状、呼吸器症状などの有無も考慮され、総合的な診断が行われます。
とくに、eGFR(推定糸球体ろ過量)は腎機能の評価において重要な指標の一つです。
病期の診断と食事・運動療法の決定に用いられており、eGFRが30mL/分/1.73m²未満(正常値の約30%未満)の場合は活動制限が厳しくなります。(文献1)
尿毒症の治療方法
尿毒症の治療は、腎機能のさらなる悪化を防ぎつつ、体内に蓄積した毒素を除去するのが目的です。
では、詳しく見ていきましょう。
生活習慣の改善
尿毒症の進行を抑えるには、日常生活の中で腎臓にかかる負担を減らす工夫が欠かせません。
具体的には、以下のような生活習慣の見直しが推奨されます。
適切な水分摂取 | 脱水を防ぎ、腎臓のろ過機能を維持するために重要です。ただし、心不全やむくみがある場合は医師の指示に従いましょう。 |
有酸素運動の継続 | 軽度の運動は血圧と血糖のコントロールに寄与し、腎機能の維持を促進します。 |
禁煙・節酒 | 腎血流への悪影響を避けるため、喫煙と過度な飲酒は避けるべきです。 |
体重管理 | 肥満は腎臓に余分な負担をかけるため、適正体重の維持が求められます。 |
これらの生活習慣は、腎機能の維持や尿毒症の進行予防に大きな関連性があります。
継続的に実践し、長期的な健康維持につなげていきましょう。
食事療法
尿毒症の進行を抑えるうえで、食事療法は極めて重要な役割を果たします。
腎臓の負担を軽減するため、以下のような食事管理が基本です。
たんぱく質の制限 | 過剰なたんぱく質摂取は老廃物を増やすため、適量を守る必要があります。 |
塩分の制限 | 高血圧を悪化させると腎機能を低下させる要因となるため、1日6g未満が推奨されます。(文献2) |
カリウムとリンの管理 | 血中濃度のバランスが崩れると不整脈や骨疾患を引き起こすため、野菜や乳製品などの摂取量に注意が必要です。 |
たとえば、納豆はカリウムやリンを多く含むため、腎機能が低下している方は医師の指導に従って摂取量を調整する必要があります。
薬物療法
尿毒症の治療において、薬物療法は症状の緩和や合併症の予防に役立ちます。
腎機能の低下にともって多様な身体機能に障害が現れるため、それぞれの症状に対応した薬剤の使用が必要です。主に、以下のような薬が用いられます。
高カリウム血症に対する薬 | ポリスチレンスルホン酸カルシウムなどのカリウム排泄促進剤 |
高リン血症対策 | リン吸着薬(セベラマーなど)により血中リン濃度を調整 |
貧血治療 | エリスロポエチン製剤や鉄剤 |
代謝性アシドーシス補正 | 炭酸水素ナトリウムの投与で血液のpHを正常化 |
浮腫や高血圧への対応 | 利尿薬や降圧薬の併用 |
薬剤は症状の進行を抑えるほか、透析導入までの期間を延ばす目的でも使用されます。
ただし、腎機能に応じた適正な用量調整が必要であり、医師の管理のもとでの投与が不可欠です。
透析
腎機能が著しく低下し、日常生活に支障をきたす状態になると、透析療法の導入が検討されます。
透析には主に以下2つの方法があります。(文献3)
血液透析(HD) | 週2~3回、1回4時間程度の頻度。血液を体外に取り出し、人工膜を使って老廃物や余分な水分を除去 |
腹膜透析(PD) | 自宅で行える方法。腹腔内に透析液を注入し、腹膜を介して老廃物を交換 |
なお、透析の導入時期はeGFRが10未満、もしくは以下のような症状が見られたときが目安となります。
- 食欲不振や体重減少
- 高度なむくみや息切れ
- 神経症状(混乱、けいれんなど)
透析は腎臓の代替手段であり、尿毒症の進行による命に関わる症状を回避するために不可欠な治療法です。
患者の生活スタイルや身体状態に応じて、医師と相談しながら選択しましょう。
尿毒症を予防するための早期発見ポイント
尿毒症は腎機能が著しく低下して顕在化する病態ですが、実際には初期段階で体のさまざまな部位に兆候が現れるケースがあります。
以下のような日常生活の中で感じるわずかな変化にも注意を払い、腎機能の健康を保つための第一歩としましょう。
むくみ(浮腫)が起こっていないか
腎機能が低下すると、体内の余分な水分を十分に排出できなくなり、手足や顔、足首まわりにむくみが現れる場合があります。
靴下の跡がいつまでも残る、指で押すとへこみが戻りにくいなどの症状は、浮腫の典型的なサインです。
むくみが日常的に見られるなら、腎機能の検査を受けましょう。
尿量が低下していないか
腎臓の機能が低下すると尿を十分に作れなくなり、1日の尿量が減少する場合があります。
排尿の回数が減る、トイレに行っても少量しか出ないといった変化は、体内に老廃物や水分が蓄積されている状態かもしれません。
そのまま放置すると尿毒素の濃度が上昇して尿毒症のリスクが高まるため、日常的に排尿量を意識することが大切です。
夜間尿が頻繁になっていないか
夜間に何度も目が覚めてトイレに行くようになった場合、腎機能の低下による尿濃縮能力の低下が考えられます。
通常、夜間は尿量が少なくなりますが、腎臓の働きが悪くなるとこの調節ができず、頻繁に排尿したくなるのです。
高齢者に見られやすい症状ではありますが、腎疾患の初期症状としても重要であり、回数が増えていると感じたら検査を受けましょう。
頻尿が増えていないか
日中にトイレに行く回数が明らかに増えたなら、腎機能の異常が疑われます。
腎臓が適切に尿を濃縮・調整できなくなると尿量が増えたり、排尿の感覚が不安定になったりするので注視しましょう。
一般的に、日中8回以上を頻尿とすることが多いですが(文献4)、個人差があるため一概に1日に何回以上の排尿回数が異常とはいえません。(文献5)
急な尿意が増加している場合は、腎機能検査を受けるきっかけとして捉えるべきです。
体にだるさがないか
倦怠感や体の重さは、尿毒症の初期段階で現れる代表的な全身症状です。
腎機能が低下すると老廃物の排出が不十分となり、血液中に毒素が蓄積されて体の代謝が乱れ、疲労感が強くなります。
十分に休息をとっても改善しないだるさが続くなら、単なる疲労ではなく腎機能低下のサインかもしれません。
貧血になっていないか
腎臓は赤血球をつくるホルモンを分泌する役割を持っています。
腎機能が低下するとホルモンが不足し、腎性貧血(腎臓から分泌されるホルモン不足による貧血)を引き起こすことがあるのです。
息切れや動悸、顔色の悪さ、疲れやすさといった症状が見られる場合は、貧血の有無を確認するためにも受診しましょう。
体がかゆくないか
腎機能の低下によって体内に尿毒素が蓄積すると、皮膚に刺激を与えて原因不明のかゆみを引き起こすケースがあります。
とくに背中や腕、下肢にかゆみを感じる場合、乾燥とは異なる内部要因が関与しているかもしれません。
皮膚の症状は見落とされがちですが、腎機能の異常を示すシグナルになるため、持続的なかゆみには注意が必要です。
まとめ|腎機能の保護を意識した生活を心がけましょう
尿毒症は、腎機能が著しく低下して全身に深刻な影響を及ぼす疾患です。
原因となる慢性腎臓病や糖尿病、高血圧の適切な管理、そして日常生活における食事や運動、水分摂取の見直しが尿毒症の予防に役立つ可能性があります。
倦怠感・むくみ・排尿の変化など、初期のサインを見逃さず、早期に医療機関を受診することが重要です。
腎臓を守る意識を持ち、日々の生活を丁寧に過ごしていきましょう。
当院「リペアセルクリニック」では、PRP療法や幹細胞治療などの再生医療による治療を行っています。
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尿毒症に関するよくある質問
ここでは、尿毒症に関して多くの方が抱く疑問に対して回答しています。
正しい知識を得て、早期対応や適切な治療選択に役立ててください。
尿毒症は余命に関わりますか?
尿毒症は、進行すると生命に関わる重大な状態に陥る可能性があります。
腎臓が老廃物を排出できなくなると体内に毒素が蓄積し、脳や心臓を含む重要な臓器に影響を及ぼすのです。
そのまま放置すれば、命に直結する危険性がある点に留意しておきましょう。
高齢者が尿毒症になった場合の注意点は?
高齢者が尿毒症を発症するケースでは、脱水や感染症に対する抵抗力の低下、認知機能の変化など特有のリスクが存在します。
体の水分量や電解質バランスの調整が難しくなりやすいため、透析治療や薬物療法の管理に注意が必要です。
また、高齢者は自覚症状が出にくく、発見が遅れることも少なくありません。
定期的な血液検査と家族の観察が重要であり、医療スタッフと密に連携しながらきめ細やかな対応が求められます。
尿毒症は治りますか?
尿毒症自体は進行性の腎不全の結果として生じるため、完治が難しい面があります。
ただし、早期の治療開始により、症状の進行を抑える効果は期待できます。
とくに、糖尿病や高血圧などの原因となる疾患の適切な管理が重要です。
また、透析や薬物療法で体内の毒素を除去すれば、日常生活への影響を軽減できる場合があります
尿毒症は苦しさを感じますか?
尿毒症の症状には、頭痛・吐き気・倦怠感・呼吸困難・意識障害などがありますが、苦しさの感じ方は患者によって異なるため一概にはいえません。
一般的に、進行するにつれて体調の悪化を強く感じるようになります。
とくに末期になると、神経症状や肺水腫による呼吸困難などが出現し、生活の質が著しく低下します。
尿毒症は苦しさを伴う疾患と認識したうえで、早期に対応していきましょう。
尿毒症と糖尿病に関連性はありますか?
糖尿病は、尿毒症を引き起こす一般的な原因の一つです。
長期間にわたって血糖コントロールが不十分な状態が続くと、腎臓の血管が損傷を受けて「糖尿病性腎症」を発症します。
疾患が進行すると腎機能が著しく低下し、最終的に尿毒症に至るケースがあるため注意が必要です。
犬や猫が尿毒症になる原因・症状は?
一般的な獣医学的知見に基づくと、犬や猫も人間と同様に腎機能が低下すると尿毒症を発症する場合があります。(文献6)
犬は慢性腎不全や中毒性物質の摂取が原因となるケースがあり、症状としては食欲不振、元気消失、嘔吐、口臭などが見られます。
猫の場合は慢性腎臓病が主な原因で、進行すると脱水、体重減少、貧血、痙攣などが現れます。
治療には食事療法や輸液、投薬などが行われますが、やはり早期発見が重篤化を防ぐ鍵です。
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参考文献
(文献1)
日本腎臓学会「腎疾患患者の生活指導・食事療法に関するガイドライン」
https://jsn.or.jp/jsn_new/iryou/free/kousei/pdf/39_1.pdf (最終アクセス:2025年6月13日)
(文献2)
日本高血圧学会「減塩・栄養委員会」
https://www.jpnsh.jp/com_salt.html(最終アクセス:2025年6月13日)
(文献3)
国立循環器病研究センター「腎不全」
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/renal-failure/(最終アクセス:2025年6月13日)
(文献4)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「頻尿の原因は?」
https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/23.html(最終アクセス:2025年6月13日)
(文献5)
日本排尿機能学会「尿が近い、尿の回数が多い ~頻尿~」
https://www.urol.or.jp/public/symptom/02.html?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年6月13日)
(文献6)
動物医療センター赤坂「犬と猫の慢性腎臓病」
https://amc-akasaka.com/clinicalcases.php?eid=00007(最終アクセス:2025年6月13日)