- 内科疾患、その他
- 内科疾患
貧血の点滴はどんな人が受けられる?薬剤の種類や治療の流れも解説

鉄剤を飲んでも胃がムカムカする、なかなか効いている実感がないと感じていませんか。そんな悩みを抱える貧血の方には、体への負担を抑えながら効率的に鉄分を補える「点滴治療」が選ばれるケースもあります。
本記事では、貧血に対する点滴治療の内容やメリット、受けられる条件、服薬との違いまでをわかりやすく解説します。
目次
貧血の点滴とは
貧血の点滴は、主に鉄欠乏性貧血に対して行われる治療法です。食事療法や内服薬だけでは思うように数値が上がらない時や、胃腸が弱くて鉄剤が飲みにくい時などに選択されます。
点滴治療の良いところは、何といっても効率の良さです。口から摂る鉄分は胃腸での吸収に時間がかかりますが、点滴なら血管に直接投与するので、短期間でしっかりと鉄分を体に届けられます。
内服薬で胃もたれや消化器症状を起こしやすい人にとっても、体への負担が少ない治療方法と言えるでしょう。
貧血の点滴の種類
鉄分が不足している場合、食事や飲み薬だけでは改善が難しい場合があります。
そのようなときに用いられるのが「鉄剤の点滴」です。胃腸障害がある方や、内服で効果が出にくい方に有効とされています。
ここでは、現在よく使われている2種類の鉄剤点滴「フェインジェクト」と「モノヴァー」について、それぞれの特徴やメリット・注意点をご紹介します。
フェインジェクト
フェインジェクトは、高濃度の鉄を含む比較的新しいタイプの静脈注射薬で、1回の点滴で500mg(週1回)、最大3回(3週間)で合計1,500mgまで鉄分を補給できるのが特長です。(文献1)従来の鉄剤に比べて副作用が少なく、鉄欠乏性貧血の改善を短期間で目指せます。
項目 | 詳細 |
---|---|
投与量・スケジュール | 1回500mg、週1回投与、最大3回(3週間)で合計1,500mgまで |
投与時間 | 希釈なし:5分以上で血管内注射 希釈あり:6分以上で点滴 |
通院回数 | 最大3回(週1回ペース) |
適応対象 | 経口鉄剤が困難または不適当な場合 |
主な特徴 | ・週1回の投与で効果が期待できる ・通院回数が少ない ・投与時間が短い |
(文献1)
内服薬による胃の不快感や吐き気などの副作用に悩まされていた方にも選ばれやすい治療法です。
ただし、まれに発疹や関節痛、重篤なアナフィラキシーなどの副作用が報告されているため、アレルギー歴のある方は必ず医師に伝えましょう。安全に治療を受けるためには、医師の指示に従う必要があります。
モノヴァー
モノヴァーは、長年にわたり多くの医療現場で使用されている実績ある鉄剤の点滴薬です。鉄欠乏性貧血の治療において信頼性が高く、比較的安定した効果が期待できます。
項目 | 詳細 |
---|---|
投与量・スケジュール | 週1回1000mg(体重50kg未満は20mg/kg)を上限 または週2回500mgを上限 |
投与時間 | 週1回(1000mg):15分以上で点滴 週2回(500mg):2分以上で血管内注射 |
総投与量上限 | 2000mg(体重50kg未満は1000mg) |
投与期間 | 最大2週間(週1回なら計2回、週2回なら計4回) |
主な特徴 | ・海外で長期使用実績あり(40ヵ国以上) ・慎重な経過観察が可能 ・投与方法の選択肢が多い |
(文献2)
鉄分の補給を内服薬ではまかないきれない場合や、経過を見ながら慎重に治療を進めたい方に向いています。
ただし、アレルギー反応(アナフィラキシー)のリスクがあるため、医師の管理のもとで慎重に使用されなければなりません。妊娠中の方には原則として使用を避ける場合もあるため、治療前に医師との十分な相談が必要です。
貧血の点滴治療が向いている人
貧血の治療ではまず鉄剤の内服が基本となりますが、体質や症状によっては点滴による治療がより適している場合もあります。
貧血の点滴治療が向いている人は以下のとおりです。
- 胃の不快感や吐き気、便秘などの副作用が強い人
- 鉄欠乏が進行していて、今すぐに鉄分を補う必要がある人
- 出血による急激な鉄不足がある人
- 胃切除や吸収不良症候群など鉄が上手く吸収できない人
医師の診断のもと、体調やライフスタイルに合わせて、最適な治療法を選びましょう。
貧血の点滴のメリット・デメリット
貧血治療において、鉄剤の点滴は内服薬に比べて早く効果を得られる方法として注目されています。
しかし、すべての人にとって最適な治療法とは限らず、メリットがある一方で注意すべきデメリットも存在します。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
効果・即効性 | ・血管内に直接投与 ・短期間で効果実感・消化管吸収を待たない |
・即効性とリスクは表裏一体 ・効果が出すぎる場合あり |
副作用・安全性 | ・胃腸への刺激なし ・消化器症状の心配なし |
・発疹、関節痛などの軽度反応 ・まれに重篤なアレルギー反応 ・医療機関での管理必須 |
利便性・負担 | ・通院回数が少ない ・時間的負担軽減 |
・投与中の観察が必要 ・医療機関への通院必須 |
適用範囲 | ・胃腸が弱い方も使用可能 ・重度貧血に有効 |
・妊婦や基礎疾患者は要注意 ・費用負担が高い |
ここでは、貧血点滴の主な利点とリスクについて詳しくご紹介します。
貧血の点滴のメリット
鉄剤の点滴治療には、内服薬では得られにくい即効性といった大きなメリットがあります。経口摂取では消化管での吸収が必要ですが、点滴は鉄を直接血管内に投与するため、速やかに全身に行き渡ります。
胃腸への刺激が少ないため、鉄剤内服による胃痛・吐き気・便秘などの副作用に悩んでいる方にも使用可能です。
フェインジェクトのような高濃度鉄剤では、1回の投与で必要量をまかなえることもあり、通院回数を抑えられる点も利便性が高いポイントです。時間的な負担が少なく、短期間で効果を実感したい方にとって、点滴治療は有効な治療方法といえるでしょう。
貧血の点滴のデメリット
一方で、鉄剤の点滴には副作用のリスクが伴います。
代表的なものとしては、発疹、関節痛、吐き気などの軽度な反応から、まれにアナフィラキシーのような重篤なアレルギー反応が生じるケースも報告されています。そのため、点滴治療は医療機関での適切な管理のもとで行わなければなりません。
点滴中や直後に体調の変化がないか観察する必要があり、一定の時間が必要です。
妊婦や基礎疾患のある方など、使用に慎重を要する場合もあるため、事前に医師と十分な相談をしましょう。
即効性と引き換えにリスクも伴うため、メリットとデメリットを理解した上で治療方針を選ぶ必要があります。
貧血の点滴を受けるまでの流れ
貧血の点滴は、即効性のある治療法ですが、誰でもすぐに受けられるわけではありません。
まずは医師の診察と血液検査を受け、必要性をしっかり判断した上で、以下の流れで治療が行われます。
- 医療機関で血液検査をする
- 医師が点滴が必要か判断する
- 点滴をする
- 効果の観察
ここでは、点滴治療を希望する場合にどのようなステップを踏むのか、順を追ってわかりやすくご説明します。
1.医療機関で血液検査をする
点滴治療の前には、まず血液検査で貧血の有無とその重症度、種類を確認します。
主に調べるのはヘモグロビン(Hb)、フェリチン(体内に蓄えられた鉄の量)、血清鉄、TIBC(総鉄結合能)、MCV(赤血球の平均容積)などの項目です。
ヘモグロビンが正常値でも、フェリチンが低い「隠れ貧血」の場合もあり、健康診断では見落とされやすいため、詳しい血液検査が重要です。
検査データをもとに、鉄分が不足しているかどうか、点滴が必要かを判断します。自覚症状があまりなくても、疲れやすさや立ちくらみが続く場合は、早めの検査がおすすめです。
6月執筆予定「貧血 数値」
2.医師が点滴が必要か判断する
血液検査の結果が出たら、医師が数値と患者様の症状、体質、既往歴などをふまえて治療方針を決定します。
点滴が選ばれるのは、内服薬によって強い吐き気や胃痛などの副作用が出た場合や、重度の鉄欠乏で迅速な補正が必要な場合です。胃の切除や吸収障害などで経口鉄剤が効きにくい人も対象になります。
点滴治療には「フェインジェクト」と「モノヴァー」の2種類がありますが、どちらが適しているかは、患者様の体質や症状、治療の緊急度などを総合的に判断して医師が選びます。希望がある場合は、診察時に遠慮なく相談してみましょう。
3.点滴をする
点滴は、処置室または点滴室で医療スタッフが行います。使用する薬剤により所要時間は異なり、フェインジェクトであれば約6分、モノヴァーは15分以上かけてゆっくりと投与します。(文献3)(文献4)
点滴中はリクライニングチェアやベッドでリラックスして過ごすことが多く、初回や体調に不安がある場合は、医師がそばで様子を観察する場合もあります。副作用の予防のため、点滴後も数分〜数十分安静にして経過観察するケースが一般的です。
まれにアレルギー反応が出ることもあるため、初回はとくに注意深く見守られます。点滴当日は、できるだけ時間に余裕をもって受診すると安心です。
4.効果の観察
点滴後は、治療の効果を確認するため、一定期間ごとに再度血液検査をします。
数日から数週間後にヘモグロビン値やフェリチン値がどのように変化したかを確認し、改善が見られれば治療の効果があったと判断されます。疲労感、立ちくらみ、動悸など自覚症状の変化も大切な評価ポイントです。
必要に応じて追加の点滴をする場合や、他の治療法への切り替えを検討する場合もあります。鉄の貯蔵量が回復していない場合は、定期的な点滴が必要になるケースもあるでしょう。
無理なく通える頻度での治療の継続が、根本的な改善につながります。
貧血の点滴は医師と相談をしよう
貧血の点滴治療は、鉄分を効率よく補給できる即効性の高い方法ですが、すべての方に必要なわけではありません。内服薬が合わない方や、重度の貧血で早く改善したい方にとっては、有効な治療法となります。
ただし、点滴には副作用のリスクや費用負担も伴うため、安易に自己判断せず、必ず医師と相談した上で治療方針を決めましょう。
「疲れが取れない」「立ちくらみが続く」「動悸がする」などの症状がある場合、貧血が原因の可能性もあります。また、健康診断で異常がないと言われた場合でも、詳しい血液検査を受けると「隠れ貧血」が見つかるケースもあります。
症状の原因を明らかにするためにも、早めに医療機関を受診しましょう。貧血でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にお問い合わせください。
\無料相談受付中/
貧血の点滴に関するよくある質問
フェインジェクトとモノヴァーはどちらが安全?
副作用のリスクがより少ないとされているのは、比較的新しい薬剤であるフェインジェクトです。
従来のモノヴァーと比べてアレルギー反応の頻度が低いといった報告もあり、体への負担が軽減されている点が評価されています。
ただし、どちらもまれにアナフィラキシーなどの重篤な副作用を起こす可能性があるため、安全性は医師の判断と適切な管理のもとで点滴します。
どの点滴を使用するかは自分で選べますか?
基本的には、血液検査の結果や体調、アレルギー歴、既往症などをもとに、医師が患者様に適した薬剤を判断します。希望があれば診察時に伝えることは可能ですが、安全性や効果の面から、自己判断ではなく医師のアドバイスに従うことが大切です。
ご不安な点は、遠慮せずご当院「リペアセルクリニック」へお気軽にお問い合わせください。
\無料相談受付中/
貧血の点滴にかかる時間は?日帰りできる?
基本的に貧血の点滴は日帰りで受けられます。
フェインジェクトであれば6分〜、モノヴァーは15分以上かけた投与が一般的です。(文献3)(文献4)初回は副作用の確認のため、少し長めに時間を確保しておくと安心です。
貧血の点滴は保険適用ですか?料金の目安を知りたい
鉄剤の点滴は、医師が治療の必要性を認めた場合、健康保険が適用されます。
自己負担割合が3割の方であれば、血液検査も含めて点滴1回あたりの自己負担額はおおよそ3,000円〜5,000円程度になることが多いです。(文献5)
ただし、使用する薬剤や医療機関によっても差があるため、事前に受付や医師へ確認するのがおすすめです。自由診療で受ける場合は全額自己負担となり、費用は大きく異なります。
参考文献
(文献1)
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「フェインジェクト静注500㎎」2023年8月
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3222404A1021_1_04/(最終アクセス:2025年6月24日)
(文献2)
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「モノヴァー静注500mg/モノヴァー静注1000mg」2022年3月
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3222404A1021_1_04/(最終アクセス:2025年6月24日)
(文献3)
ふくろう訪問クリニック「貧血を1回の点滴で治療できます。」2023年5月31日
https://fukurou.fukuoka.jp/column/790/(最終アクセス:2025年6月13日)
(文献4)
ELSEVIER「フェインジェクト静注500mg」
https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=68048(最終アクセス:2025年6月13日)
(文献5)
新宿駅前クリニック「貧血」
https://www.shinjuku-cli.com/naika/service_13.html(最終アクセス:2025年6月13日)