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水泳肩とは|症状や痛みの原因・治療法を現役医師がわかりやすく解説

「水泳のあとに肩が痛む……これって水泳肩?」
「水泳肩ってリハビリやストレッチで治るの?」
このような不安を抱えている方は多いでしょう。
水泳肩は、水泳による肩の使いすぎやフォームの崩れなどが原因で起こります。放置すれば痛みが慢性化し、日常生活や競技に支障をきたすこともあります。
しかし、正しく対処すれば症状の改善は可能です。
本記事では、水泳肩の特徴的な症状や原因、治療法を詳しく解説しています。自宅でできる対処法や再発防止も紹介しているので参考にしてみてください。
目次
水泳肩とは
水泳肩は、泳いでいる時や泳いだ後に肩が痛む症状を指します。
1978年に医学界で初めて命名された用語で、当初は水泳による肩の痛みだけを表していました。(文献1)
しかし、現在は水泳以外でも肩に違和感や痛みを感じる症状全般を含む呼び方に変化しています。
以下の記事では、肩の痛みが関係する病気について解説しています。視野を広げて肩の痛みの原因を探したい方は参考にしてみてください。
水泳肩の主な症状
水泳肩で現れる代表的な症状は以下の表のとおりです。
症状の種類 |
特徴 |
違和感・引っかかり感 |
肩を回すとゴリゴリといった不快な感覚や引っかかりがある |
肩の痛み |
水泳中や安静時にもズキズキした痛みが現れ、程度は軽い違和感から激痛まで幅がある |
動かしにくさ |
腕を上げたり、後ろに回す動作が難しくなり、日常生活にも支障をきたすことがある |
腫れ・熱感 |
強い炎症により肩が腫れ、熱を持ち、赤くなるなどの症状を伴う |
これらの症状に心当たりがある方は水泳肩の可能性が高いです。
無理にトレーニングを続けず、症状が現れたら医療機関を受診しましょう。
症状が悪化すると、インピンジメント(衝突症候群)で骨や筋肉が肩の中でぶつかって痛む状態や、関節唇損傷で肩の軟骨が傷ついた状態になるなど、重篤な疾患に発展する恐れがあります。
水泳肩になる主な原因
水泳肩を引き起こす主な原因には以下の2つがあります。
- 肩の使いすぎ
- フォームが悪い
それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
肩の使いすぎ
肩の使いすぎは水泳肩を引き起こす代表的な原因です。(文献1)
水泳動作により肩関節が反復して使われることで、筋や腱に過剰なストレスがかかり、炎症反応を引き起こすためです。
とくに、長時間の練習や高強度のトレーニングを続けると、肩周辺の組織が十分に回復する時間がとれなくなります。
また、急激に練習量を増やした場合も、肩への負担が急激に高まり障害のリスクが上昇します。
適切なタイミングで休息をとり、練習量は段階的に増やしていきましょう。
フォームが悪い
泳ぎのフォームが悪いと肩関節に異常な負担をかけ、水泳肩の発症リスクを高めます。
肩の動きが不自然になると、特定の筋肉や腱に過度な負荷が集中し、炎症や損傷を引き起こします。
たとえば、以下の要因です。
- 腕の入水角度が悪い
- 肩の回転が不十分
- 体幹が不安定
肩だけで推進力を生み出そうとすると過度な負担がかかります。
正しいフォームを習得し、肩にかかる負担をおさえましょう。
水泳肩の痛みに効果的なストレッチ
水泳肩の痛みを軽減するためには、適切なストレッチが効果的です。
ストレッチを行うことで肩周辺の筋肉の柔軟性が向上し、血流が改善されて痛みの軽減につながります。
水泳肩の痛みに効果的なストレッチは以下のとおりです。
- 小胸筋(胸の上の方で肩の前にある筋肉)のストレッチ
- 肩の内旋(内側にねじる)ストレッチ
- 肩甲骨まわりのストレッチ
日常的にストレッチを行うことで、水泳肩の予防効果も期待できます。
ただし、強い痛みがある場合は無理をせず、医師や理学療法士の指導を受けながらストレッチを行いましょう。
水泳肩の代表的な治し方と治療期間
水泳肩の治療法と治療期間を理解できれば、症状に応じた選択が可能になります。
水泳肩の主な治療法には以下の4つの方法があります。
- 保存療法
- リハビリ
- 手術
- 再生医療
各治療法の特徴と適応について詳しく解説します。
保存療法
保存療法は水泳肩の症状が軽度〜中程度期の治療として選択される方法です。
痛みの段階に応じて以下の治療を行います。
- 安静にする
- 湿布などで冷却する
- 消炎鎮痛剤を内服する
- ステロイド注射をする
保存療法の治療期間は、症状や治療内容によって個人差があります。
リハビリ
リハビリテーションは水泳肩の機能回復と再発予防が期待できます。
理学療法士による専門的な指導のもと、主に肩関節の可動域改善や筋力強化などの運動療法を行います。
初期段階では痛みの軽減と炎症の抑制をして、徐々に筋力トレーニングや動作練習を加えていくのが一般的です。
また、正しい泳ぎのフォームの習得や、水泳復帰のための段階的なトレーニングも含まれます。
リハビリ期間は個人差があるため、競技復帰までの期間も個々に異なります。
手術
水泳肩が重症化すると、肩の腱板が切れてしまう腱板断裂に至り、手術を検討する必要があります。
腱板が断裂すると、肩を動かすたびに強い痛みが出るだけでなく、筋力が入らず腕が思うように上がらなくなるケースも見られます。
こうした状態では、切れた腱板をつなぎ直す関節鏡視下手術と呼ばれる内視鏡手術が一般的です。
手術の入院期間は2日から5日程度で、手術後は数カ月間リハビリを通じて機能の回復を目指します。
再生医療
再生医療は人間の組織を活用した治療法です。
再生医療には、「幹細胞治療」と「PRP(多血小板血漿)療法」があります。
「幹細胞治療」はご自身の脂肪などから幹細胞を採取・培養し体内へ注射する治療です。
「PRP(多血小板血漿)療法」では、ご自身の血液から血小板を多く含む成分を抽出し体内へ注射します。
当院では両方の治療法を提供していますので、具体的な治療内容を知りたい方は当院までお気軽にお問い合わせください。

スポーツ外傷は⼿術しなくても治療できる時代です。
水泳肩の原因と治し方を知って適切に対処しよう
水泳肩は適切な知識と対処法を理解できれば、効果的に治療をはじめられます。
しかし、痛みがある状態で無理に水泳を続けてしまうと、将来的に手術が必要となる場合があります。
水泳肩の主な治療法は以下の4つです。
- 保存療法
- リハビリ
- 手術
- 再生医療
痛みを感じたら無理をせず、医療機関で適切な診断と治療を受けましょう。
症状が改善しない水泳肩の損傷に対しては手術や再生医療の選択肢もあります。
再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。
水泳肩に関するよくある質問
水泳肩は肩のどこの部分が痛い?
水泳選手に多い肩の痛みは、主に棘上筋と呼ばれる筋肉の腱に炎症が起こることが原因とされています。(文献1)
棘上筋の場所は、肩甲骨上部から上腕骨の上端にかけて付着する筋肉です。
棘上筋周辺の筋肉や腱に炎症が生じると、腕を上げる動作や回旋動作で痛みが増強します。
また、重症化すると肩甲骨周辺や首筋にまで痛みが広がる場合があります。
関連記事:肩が痛い!医師が詳しく解説 | 大阪 リペアセルクリニック
水泳肩は治らない怪我ですか?
水泳肩は適切な治療により改善できるスポーツ障害です。
早期発見と正しい治療により回復が期待できます。
関連記事:水泳肩が治らない?気付かずに悪化する理由や治療法について解説 | 大阪 リペアセルクリニック
水泳肩に効くトレーニングはありますか?
水泳肩の改善には肩甲骨周辺の筋力強化とバランス調整が効果的です。
とくに、ローテーターカフと呼ばれる深層筋群の肩甲骨まわりのトレーニングに取り組むことが水泳肩に効くと報告されています。(文献2)
具体的には、軽い負荷でのチューブトレーニングやダンベルなどを使用し、体幹の安定性を高めるエクササイズなどがあります。
ただし、痛みがあるときは無理をせず、医療機関を受診し適切な指導のもとでトレーニングを段階的に進めることが大切です。
参考文献
(文献1)
Biomechanical Considerations in the Competitive Swimmer’s Shoulder|Sports Health
(文献2)
Effectiveness of Therapeutic Exercise in Musculoskeletal Risk Factors Related to Swimmer’s Shoulder|Eur J Investig Health Psychol Educ