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寝違えで背中が痛くなる?ぎっくり背中との違いや治し方・予防法も解説!

寝違えといえば、朝起きたときに首や肩が痛むイメージがあるものの、背中が痛むケースもあります。寝違えによる背中の痛みを感じると、首や肩の寝違えと同様に生活にも支障をきたすため、原因や対処法を知っていると便利です。
一方でやってはいけない対処法や予防法も理解しておくと、今後寝違えによる背中の痛みに備える意味でも役に立ちます。
本記事では、寝違えによる背中の痛みについて、ぎっくり背中との違いや治し方・予防法とともに解説します。
目次
寝違えらしき背中の痛みは「ぎっくり背中」?
日常生活の中で、急に背中が寝違えのように痛むことがあります。この突然背中を襲う寝違えのような痛みは、「ぎっくり背中」の可能性があるため、注意が必要です。
ぎっくり背中は、ぎっくり腰と同様に急性の筋肉や筋膜の損傷で、正式には「筋・筋膜性疼痛症候群」と呼ばれます。
背中を巻き込む急な動きや姿勢の悪さ、ストレスの蓄積などが原因で背中の筋肉や筋膜に損傷や炎症をもたらすのが特徴です。睡眠不足が原因で生じることもあるため、背中の寝違えと混同される場合もあります。
「寝違え」と「ぎっくり背中」の違い
寝違えとぎっくり背中はよく似ているため、正確な違いの理解が大切です。両者には以下のような違いがあります。
寝違え | ぎっくり背中 | |
---|---|---|
発生部位 | 首や肩が中心 | 背中 |
原因 | 睡眠中の不自然な姿勢 | 背中に強い負荷をかける急な動きや自律神経の乱れ(ストレス)、姿勢の悪さ |
症状 | 目覚めたときの首や肩の痛み | 背中の筋肉の緊張や炎症による痛み |
発症する部位は首や肩であるか、背中であるかで明確に異なります。加えて、原因も寝違えが睡眠中の不自然な姿勢である一方、ぎっくり背中は急な動きや自律神経の乱れなどが主なものです。
寝違えで背中が痛む原因
寝違えによる背中の痛みの主な原因とされているものは、以下のとおりです。
急な動作による筋肉への過度な負担
寝違えによる背中の痛みは、いきなり重い物を持つなどの急な動作をきっかけに生じることがあります。急な動作で背中の筋肉や筋膜に負担がかかり、それが解消されない状態で睡眠環境の悪さをきっかけに寝違えで背中が痛む流れです。
前日などに慣れない肉体労働やスポーツで急に体を動かすなどして、筋肉の緊張や微細な損傷、関節周辺の炎症が生じることが原因と考えられます。急な動作で違和感を感じたら、なるべく早めに医療機関で適切な処置を受けることが大切です。
不適切な姿勢による筋肉の緊張
長時間に及ぶ不適切な姿勢による筋肉の緊張も、寝違えによる背中の痛みを引き起こすことがあります。猫背のような不適切な姿勢が長時間続くと、重い頭を支える首や背中の筋肉に負担がかかるためです。とくに、パソコンでの作業やスマホでのコミュニケーション・ゲームが日常的な方は要注意です。
首や背中の筋肉に負担がかかると筋肉は常に緊張し、血流の悪化や筋肉の柔軟性の低下を招きます。柔軟性の低下によって筋肉の緊張が続く分、寝違えが起こるリスクが高まり、背中まで痛むケースも増えます。
水分不足や睡眠不足
水分や睡眠が足りていない場合も、寝違えで背中が痛む原因です。水分を十分にとっていないと、血管中の血液の粘度が上がり、血流が悪くなります。血流の悪化で首や背中の筋肉に十分な血液がいきわたらないと、筋肉が硬くなって緊張し、不自然な寝方を機に寝違えを引き起こす流れです。
睡眠不足も自律神経が乱れて、交感神経が活発に動いている状態であるため、神経や筋肉にも緊張を強います。緊張が続いた結果、首や背中の筋肉が硬くなり、寝違えを起こしやすくなる仕組みです。
自律神経の乱れ|息苦しい症状も
ストレスなどによる自律神経の乱れも、寝違えで背中が痛む要因になります。仕事や人間関係などで継続的にストレスにさらされると、自律神経が乱れて緊張状態になるためです。しかも自律神経が大きく乱れると、呼吸が浅くなって息苦しさまで感じます。
この緊張状態は筋肉の柔軟性が低下する原因でもあり、朝起きたときに寝違えによって背中まで痛むような症状を引き起こすことがあります。
背中右側の寝違えによる痛みは内臓疾患の可能性も
背中の右側の寝違えによる痛みは、単なる背中の筋肉の痛みだけではなく、内臓疾患の可能性もあります。
背中の右側に生じる痛みは、寝違えなどによる筋肉の炎症や緊張が原因であることが多い一方で、胆のうや腎臓などの内臓疾患による関連痛の可能性もあります。
これは内臓体性反射と呼ばれるメカニズムにより、内臓の異常が神経を介して背中の筋肉や皮膚に痛みとして現れる現象です。
背中右側の筋肉に違和感を覚えるときは、整形外科だけでなく消化器科の受診をおすすめします。
寝違えによる背中の痛みの治し方
寝違えで背中が痛む場合、以下の治し方があります。
症状の時期に応じて適切な対処法が異なるため、以下で見ていきましょう。
急性期は湿布や保冷材で冷やす
寝違えの症状が強く出ている急性期であれば、患部をなるべく動かさず安静にします。その際になるべく楽な姿勢で過ごすのがおすすめです。
加えて、湿布や保冷剤を使って患部を冷やします。寝違えの急性期は筋肉で炎症が出ている時期であるため、一度につき15分から20分程度を目安に冷やしましょう。
ただし湿布などで患部を冷やしすぎると、さらに血流が悪くなって筋肉が硬まるケースがあります。冷やす時間には十分な注意が必要です。
慢性期は温湿布や入浴などの温熱療法
寝違えの症状が落ち着く慢性期に入ったら、温湿布や入浴などによる温熱療法で対応します。慢性期になって炎症が落ち着くと、患部付近を温めることで血行を改善し、筋肉の柔軟性を回復させられることが期待されるためです。
なお、温湿布がない場合は温めたタオルなどを代用する方法もあります。また入浴は、シャワーではなく湯船に浸かるとより効果的です。
痛みを和らげるストレッチ
寝違えによる背中の痛みは、ストレッチでも緩和が期待できます。ただしストレッチのタイミングは、ある程度痛みが和らいできた時期が適切です。
症状が落ち着いてきたころのストレッチは、首から背中にかけての筋肉をほぐし、血行を改善して柔軟性を高める効果があるとされます。具体的なストレッチ法は以下のとおりです。
【胸を開くストレッチ】
- 背中側で両手の指を組み、頭が後ろ側に倒す
- 口からゆっくりと息を吐きながら、両腕を後ろに引いていく
- 元に戻して1と2の動きを繰り返す
【僧帽筋のストレッチ】
- 両手を身体の前で組んだ状態で、肘はまっすぐ前に伸ばす
- 1の状態から背中を少しずつ曲げ、背中の筋肉を伸ばす(伸びきるところまで)
- 体を元に戻した後、1と2の動きを繰り返す
痛みが長期化する時は医療機関を受診
上記で紹介した対処法を試しても痛みが持続する場合は、無理せずに医療機関を受診してください。寝違えによる背中の痛みは、通常であれば2〜3日程度で落ち着き、1週間経つころまでには症状が改善されるケースが多く見られます。
しかし、3日以上過ぎて強い痛みが続くときや、頭痛などの別の症状まであるときは、専門医の診察が欠かせません。他の疾患の可能性も考えられるため、早いうちに病院に行きましょう。
寝違えで背中が痛いときにやってはいけないこと
寝違えで背中が痛いときの対処法には、やってはいけないこともいくつかあります。以下の対処法はNGとされているため、寝違えで痛むときは避けましょう。
無理に背中を動かすこと
寝違えで背中が痛む時期には、無理に背中を動かさないようにします。寝違えの急性期は、患部の安静に努めることが推奨されるためです。
強く痛むにもかかわらず、仕事やスポーツで無理に背中を動かすと、炎症が発生している部分が拡大し、さらに症状を悪化させます。このため、症状が落ち着くまでは極力背中を動かさずに安静に過ごすことが大切です。
なお、症状を少しでも何とかするための背中のもみほぐしや伸ばしもおすすめできません。もみほぐしや伸ばしも無理に動かす場合と同じく、炎症の部位を広げる恐れがあります。
急性期に体を温める
急性期の場合、体を温める行為もNGです。急性期は炎症が起きている状態であるため、この時期に患部を温めると血行が良くなる分、炎症の部位がさらに広がり、痛みもより増幅されます。
強く痛む状態が続いている間は、温めるのではなく湿布などで冷やすのが適切とされる方法です。入浴も湯船につかるのではなく、シャワーで軽く済ませる程度に留めましょう。
背中の寝違えを予防する方法
背中の寝違えの予防のために、日常生活でできることはいろいろとあります。代表的な予防法は次のとおりです。
日頃からこれらの予防法を心掛けて、背中の寝違えが起きないようにしましょう。
適切な姿勢を心掛ける
日常生活や仕事のなかで適切な姿勢を心掛けることは、背中の寝違えを防ぐ大切な一歩です。顎を引いて背中をしっかり伸ばす姿勢を意識すると、猫背のような首から背中の筋肉に緊張を強いる状態を緩和できます。
日常生活で適切な姿勢を維持するには、パソコンやスマホの使い方を工夫するのもおすすめです。パソコンを使ったデスクワークの際に机や椅子の高さを調節したり、スマホの操作中に休憩を取り入れたりするなどの方法があります。
適切な姿勢を意識すれば、首や背中の筋肉への負担を減らせるため、寝違えのリスクも下げられます。
運動やストレッチの習慣を取り入れる
背中の寝違えを防ぐには、運動やストレッチの習慣も有効な手段です。運動やストレッチで背中を動かすクセを付けておくと、背中付近の血行を維持し筋肉の柔軟性を高められる効果が期待できます。
とくに運動の習慣がない方や仕事がデスクワークの方は、同じ姿勢で固定されるケースが多いため、なおさらストレッチなどを心掛けることが大切です。こまめに休憩を挟んだ上で、休憩時間中に背中を伸ばしたり腕を回したりするだけでも、筋肉の柔軟性を高められます。
寝具の見直しなど睡眠環境の改善
寝違えは寝る姿勢や睡眠環境の悪さがきっかけで発生するため、睡眠環境の改善は寝違えの予防に欠かせません。
睡眠環境の改善には、寝具や寝る姿勢の見直しがおすすめです。寝具の場合、とくに適切な枕を選ぶ必要があります。枕の高さや硬さが体に合っていないと、寝違えを繰り返し発症する可能性があるためです。
頭が沈みすぎず寝返りが楽に打てる適度な硬さで背骨が緩やかなS字カーブになるくらいの高さの枕が理想とされています。加えてマットレスも、自分の体が沈み込むことなく、しっかり支えられる程度の硬さが選ぶポイントです。
寝具のほか、寝る姿勢も重要な要素です。寝る際には、必ず布団に入って仰向けの姿勢で寝ます。ソファなど布団以外の場所で寝ると、首や背中の筋肉に負担がかかるため、避けるべきです。
十分な水分補給
水分を十分にとることも寝違えの予防に役立ちます。水分が不足すると、ドロドロした血液が流れる分、血流が悪化するためです。血流の悪化は筋肉の柔軟性の低下をもたらす分、寝違えの原因になります。
このため、十分な水分補給は、筋肉の柔軟性や血流の維持に欠かせません。就寝の1時間から30分前にはコップ1~2杯程度の水を飲む習慣をつけると良いでしょう。
背中の痛みは脊髄梗塞の可能性も!注意したい症状
背中の痛みだけではなく、しびれまで感じる場合は脊髄梗塞の可能性もあります。
脊髄梗塞は脊髄に達する血管がなんらかの理由で詰まることで発症する疾患です。突然の背中の痛み・しびれや両手足に力が入らなくなる状況、排便障害が主な症状で、重篤な場合は歩行が困難になることもあります。
脊髄梗塞の主な原因は、脊髄動脈の疾患や血管の損傷です。しかし、長時間同じ姿勢でいる生活習慣や水分不足によって血栓ができ、脊髄動脈を塞いで発症するケースもあります。とくに長時間のデスクワークに携わる方は、注意が必要です。
脊髄梗塞の治療法の選択肢として、リハビリや手術、再生医療などが挙げられます。再生医療には、患者様ご自身の幹細胞を採取・培養した細胞を脊髄に直接投与する「幹細胞治療」があります。
当院「リペアセルクリニック」では、脊髄梗塞に対する再生医療を行っています。脊髄梗塞でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。

脊椎損傷のお悩みに対する新しい治療法があります。
まとめ|寝違えで背中が痛いときは無理に動かさずに適切な対処をしよう!
首や肩で症状が見られるイメージの強い寝違えは、背中の痛みまで発症するケースもあります。日頃の不適切な姿勢や自律神経の乱れなどが原因で睡眠中に寝違えることもあるため、注意が必要です。
寝違えで背中を痛めたときは、安静にしながらで対応しましょう。そして、症状が落ち着いたところでストレッチや入浴などで体を温めるのがポイントです。ただし、背中が強く痛む状態が長く続くときは、医療機関の受診をおすすめします。
なお、突然の背中の痛みやしびれの場合、脊髄梗塞が疑われます。脊髄梗塞では再生医療による治療の選択肢もあるため、詳しく知りたい方は当院「リペアセルクリニック」の公式LINEにご登録ください。再生医療に関する情報発信や簡易オンライン診断を実施しています。
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寝違えによる背中の痛みに関してよくある質問
通常の背中の寝違えの治し方は?何日で治る?
通常の背中の寝違えは、数日から1週間程度で治るのが一般的とされます。寝違えを治すには、症状が強く出ている間は安静に過ごしつつ、冷たい湿布やアイスパックなどで患部を冷やすことが大切です。
症状が落ち着いたら、今度は温湿布の活用や入浴、軽めのストレッチなどで患部を温めます。患部を温めれば、血行が促進されて筋肉も柔軟性を取り戻し、症状も消えていきます。
背中の寝違えが治らない原因は?
背中の寝違えが治らない原因は、主に以下のものです。
- 背中付近の関節が固まっている
- 元から背中にこりがある
- 寝違えがあるにもかかわらず放置している
- 頚椎椎間板ヘルニアなど別の病気の疑いがある
寝違えは適切に対処すれば、長くても1週間程度で治るケースが多く見られます。症状が改善されない場合は、整形外科で専門医の診察を受けることが大切です。
背中の寝違えで激痛は来ますか?
背中の寝違えで激痛に見舞われた場合、「ぎっくり背中」の疑いがあります。ぎっくり背中は仕事やスポーツなどでの急な動きで背中の筋肉や筋膜が損傷し、強い痛みに襲われます。
ぎっくり背中になったときの対処法は、基本的に背中の寝違えと同じです。強く痛む間は安静にしながら患部を冷やし、痛みが和らいだら患部を温めて回復を図ります。もし、痛みが持続する場合は医療機関を受診しましょう。
ぎっくり背中は何日で治る?
ぎっくり背中は通常5日から2週間程度で治るケースが多く見られます。症状の強い炎症期は、寝違えと同じく3日程度です。
ただ、辛い症状が長引く場合は、無理せず医療機関を受診しましょう。