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【医師監修】ギランバレー症候群の原因となる食べ物を紹介|予防法や治療法もあわせて解説

「食べ物が原因でギランバレー症候群になるって本当?」
「どの食べ物がギランバレー症候群の原因になるのか知りたい」
身近な食べ物がギランバレー症候群の原因になっているかもと不安に感じる方もいるでしょう。
ギランバレー症候群は感染症をきっかけに発症する場合が多く、特定の食品に含まれる細菌が引き金となるケースもあります。なかでも、カンピロバクター感染症を引き起こす生の鶏肉やレバーなどには注意が必要です。
本記事では、医師の視点から原因となりうる食べ物について解説します。また、予防方法や治療法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
【前提知識】ギランバレー症候群とは
ギランバレー症候群とは、主に感染症をきっかけに自身の免疫システムが誤って自分の末梢神経を攻撃してしまう、自己免疫疾患の1つです。本来、体を守るはずの免疫が風邪のウイルスや食中毒の細菌などを攻撃したあと、病原体とよく似た構造を持つ自分の神経細胞まで「敵」と誤認してしまいます。
免疫が神経細胞を勘違いすると神経の働きが障害され、以下のような症状が現れます。
重症度 |
主な症状 |
---|---|
軽度 |
・両手足の指先のしびれ |
中等度 |
・歩行困難 |
重度 |
・全身の筋力低下 |
主な症状はしびれや筋力低下で、数日〜数週間のうちに手足の指先から体の中心部へと急速に進行するのが特徴です。しびれや筋力低下は整形外科で扱う多くの疾患と似ていますが、症状の進行速度がギランバレー症候群を疑うポイントになります。
重症化すると、日常生活に支障をきたすだけでなく、呼吸困難や嚥下障害を引き起こすケースも珍しくありません。
ギランバレー症候群は、早期の診断と治療がその後の回復を左右するため、軽度の症状から急速に悪化する場合は早めに医療機関を受診しましょう。
ギランバレー症候群に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
ギランバレー症候群の原因となる食べ物
ギランバレー症候群の原因として多くみられるのが、カンピロバクターという細菌に汚染された食品の摂取です。
なかでも、生の鶏肉料理や加熱不十分な鶏肉料理などが感染源になる場合が多く、感染症を引き起こしたあとに、ギランバレー症候群を発症するケースが報告されています。ここでは、感染リスクの高い代表的な食品を3つ紹介します。
生鶏肉料理
生の鶏肉を使った料理は、カンピロバクター菌が潜んでいる可能性が非常に高いといわれており、代表的な料理は以下のとおりです。
- 鶏刺し
- 鶏たたき
- 鶏肉ユッケ
日本には鶏刺しやたたきといった生食文化が根付いていますが、生鶏肉にはカンピロバクター菌が潜んでいる場合があります。カンピロバクター菌は少量でも食中毒を引き起こす力をもっており、感染後に人体の免疫が神経に障害を加えると、ギランバレー症候群へ発展する可能性が指摘されています。
細菌に汚染された食品は味やにおいで見分けるのは難しく、新鮮に見える食材でも、十分加熱されていなければ細菌は死滅しません。
生の鶏肉を使った料理は、カンピロバクター感染症を起こすリスクがあるため、口にしないように注意しましょう。
鶏レバー・牛レバー
鶏レバーや牛レバーは、鉄分や栄養素を豊富に含み健康食材としても人気ですが、生や加熱不足での摂取にはリスクが潜みます。レバー類は中心部まで加熱が難しい部位でありながら、表面だけをあぶって提供されるケースが多く、衛生面での注意が必要です。
とくに、鶏レバーにはカンピロバクターが高頻度で検出されるといわれており、火が通っていない状態での摂取は感染リスクを高めます。また、牛レバーはカンピロバクター菌や腸管出血性大腸菌(O157)などによる食中毒の観点から、平成24年7月より生食は法律で禁止されています。
食事を通じて感染するリスクを避けるには、内部までしっかり加熱する調理が欠かせません。
参照:厚生労働省「牛レバーを生食するのは、やめましょう(「レバ刺し」等)」
加熱不足の鶏肉料理
加熱が不十分な鶏肉料理でも、ギランバレー症候群の発症リスクは高まります。以下の状態では、加熱が不十分であるため、注意してください。
- 鶏肉の中心部がまだ赤みを帯びている
- 鶏肉からピンク色の肉汁が出る
また、調理中の「2次汚染」にも細心の注意が必要です。生肉を扱ったまな板や包丁・菜箸で、加熱後の料理やサラダなどに触れてしまうと、菌が移り感染の原因となります。
「大体火が通っているだろう」と安易に判断すると、深刻な結果を招く場合があります。鶏肉を調理する際は、十分に加熱できているか目と温度で確認し、調理器具の衛生管理を徹底する習慣をつけましょう。
ギランバレー症候群の食事に関する予防方法
ギランバレー症候群は、食事を通じた細菌感染が発症の引き金となるケースが多いため、以下の食習慣を見直すのが予防には重要です。
- 生鶏肉料理は控える
- 食材は十分に加熱する
- 生肉を扱った調理器具や食器はすぐに洗浄・消毒する
ギランバレー症候群の予防で大切なのは、生鶏肉料理を控えることです。また、自分で調理する際は、食材を十分に加熱しましょう。
とくに、鶏肉は中心部の温度が75℃に達してから1分間以上加熱するよう心がけ、見た目の赤みが完全に消えるまでしっかりと火を通してください。
また「2次汚染を起こさない」意識も欠かせません。生肉を扱ったまな板や包丁などの調理器具は、使用後すぐに洗浄し熱湯をかけるか、野菜など他の食材を切るものと完全に区別しましょう。
生肉を触ったあとの丁寧な手洗いや、焼肉の際に生肉用トングと食べるための箸を分ける習慣も、感染防止に効果的です。基本的な対策を心がけることが、ご自身とご家族を深刻な病気から守る確実な1歩になります。
参照:農林水産省「鶏料理を楽しむために〜カンピロバクターによる食中毒にご注意を!!~」
食べ物とあわせて確認|ギランバレー症候群の治療法
ギランバレー症候群は発症後、迅速な診断と適切な治療を行えると、多くの場合は回復します。感染がきっかけで発症するため、普段の食事管理や感染予防も大切ですが、万が一発症した場合は速やかな受診が必要です。
ここでは、医療機関で行われる代表的な治療法3つについて解説します。
ギランバレー症候群は、発症すると急速に進行するケースもあるため、気になる症状がある方は当院へお気軽にご相談ください。
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免疫グロブリン療法
免疫グロブリン療法は、健康な人の血液から精製された「免疫グロブリン製剤」という薬を、点滴で投与する治療法です。数日間の点滴投与が必要となるため、入院が必要になるケースが多くみられます。
免疫グロブリン製剤に含まれる正常な抗体が、自身の末梢神経を誤って攻撃している異常な抗体の働きを抑制し、無力化させます。たとえば、体内の免疫バランスを正常な状態へ強制的にリセットするようなイメージです。
とくに、発症初期に実施すると効果が高く、重症化するリスクを下げる可能性が期待されます。
血漿交換
血漿交換は、血液中の有害な抗体や免疫物質を除去する治療法で、免疫グロブリン療法と並んで有効性が確立されている治療法です。
具体的な治療内容は、以下のとおりです。
- 体内の血液を一時的に専用の機械へ通す
- フィルターを使って血液成分を分離させる
- 異常な抗体が含まれる血漿だけを、健康な血漿製剤やアルブミン製剤と入れ替える
- 浄化した血液を体内に戻す
血漿交換は、原因物質を物理的に除去するため、直接的な効果が期待できます。免疫グロブリン療法と同様に、専用の機械が必要なため、血漿交換も入院が必要です。
とくに、重症例や免疫グロブリン療法で効果が見られないケースで有効とされています。ただし、実施には設備や専門的な管理が必要であり、体力的負担も考慮しながら選択されます。
リハビリテーション
筋力低下や麻痺を伴うギランバレー症候群では、後遺症の最小化と日常生活復帰を目指すリハビリテーションがかかせません。
リハビリテーションの内容は、患者さまの症状や体調に応じて個別に設定されており、具体例は以下のとおりです。
リハビリテーションの段階 |
リハビリテーションの内容 |
---|---|
初期 |
・関節可動域訓練 ・体位交換 |
回復期 |
・筋力トレーニング ・歩行訓練 ・日常生活動作訓練 |
症状が重い時期には、初期段階として関節の拘縮を防ぐ関節可動域訓練や、寝たきり状態を防ぐための体位交換が中心に行われます。症状が回復してくると、筋力トレーニングや歩行訓練など、日常生活をおくる上で必要なリハビリテーションに取り組みます。
ギランバレー症候群では筋力低下や運動機能の回復に時間を要する場合が多く、理学療法や作業療法を継続的に行うと、日常生活への早期復帰に効果的です。個々の回復状況に合わせたプログラムを組み、段階的な運動と心のケアの両面からアプローチできると、より良い回復が見込めるでしょう。
ギランバレー症候群の原因となる食べ物を理解し健全な食生活を送ろう
ギランバレー症候群は、鶏肉やレバーなどに付着するカンピロバクター菌による食中毒をきっかけに、免疫の誤作動により発症します。予防するには、鶏肉の生食を避け、中心部まで十分に加熱するなどの食中毒対策が重要です。
ギランバレー症候群は早期治療が重要で、進行が早く重症化する恐れもあります。
筋力低下やしびれなどが続くようでしたら、当院へご相談ください。
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ギランバレー症候群の食べ物と原因に関するよくある質問
ギランバレー症候群は卵が原因になることはありますか
卵がギランバレー症候群の原因となる可能性は極めて低いと考えられています。卵の殻に菌が付着していたとしても、殻の表面は乾燥しており、乾燥に弱いカンピロバクター菌は死滅しているからです。
ただし、卵で問題となりやすい食中毒菌に「サルモネラ菌」があり、食中毒を引き起こす可能性があります。サルモネラ食中毒を防ぐ観点からは、ひび割れた卵の使用を避け、生で食べる際は賞味期限内の新鮮な卵を選び、調理後は早めに食べるといった基本的な注意は引き続き重要です。
ギランバレー症候群の原因となる食べ物にパンは該当しますか
パン自体は、ギランバレー症候群の原因になりません。パンの原料である小麦粉や酵母に原因菌が潜んでいる症例はなく、万が一細菌が付着しても高温で焼き上げる製造過程で死滅するため、パン自体は非常に安全な食べ物といえます。
ただし、パンを使った料理のなかでも、サンドイッチや惣菜パンなどの「具材」には注意してください。パンがギランバレー症候群を引き起こす具体例は以下のとおりです。
- 具材として使用されたチキンが加熱不十分だった
- 生肉を扱った手や調理器具でパンに触れてしまった
実際、加熱不足の鶏肉や、調理中の2次汚染によりカンピロバクターに感染するリスクはあります。問題の本質はパンではなく、あくまで原因菌に汚染された食材との接触です。パンは安全ですが、何を挟むか、どのように調理するかが重要だと理解しましょう。