恥骨結合炎でもランニングはできる?ストレッチやトレーニング・注意点まとめ【ランナー必見】
ランニングの最中やランニングのあと、恥骨のあたりに痛みがでませんか?
違和感や痛みがあり、うまく力を入れられず歩きにくい・走りにくい方は恥骨結合炎かもしれません。
ランニングやサッカーをする方に多い恥骨結合炎(恥骨炎)ですが、治るまでに時間がかかったり、やっと治っても再発しやすく、スポーツの習慣や日常生活にも影響がでやすいです。
この記事では、なぜ恥骨結合炎になるのか・症状や治し方・病気との付き合い方を徹底解説します。
恥骨結合炎でもランニングしたい場合や、どのような症状が出たら病院に行くべきかもあわせて解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
恥骨結合炎とは?
恥骨はちょうど下着で隠れるところにあり、陰毛の生え際あたりに触れる骨です。左右に1つずつある恥骨は、真ん中で軟骨をはさむように結合しており、これを恥骨結合といいます。
恥骨結合に負荷がかかると炎症を起こし痛みがでますが、どういったときに恥骨結合に負荷がかかり、どんな症状がでるのか、わかりやすく解説します。
恥骨結合炎の原因
走る・ボールを蹴るなど恥骨周囲に力がはいったり、恥骨結合とつながる筋肉に負荷がかかることで恥骨結合に炎症を起こします。
とくにサッカーやランニングは恥骨や股関節にくりかえし負荷がかかり、恥骨結合炎になりやすいため、運動後に痛みがでる場合は注意してください。
スポーツ以外の原因としては、出産前後で恥骨を痛める場合や、手術後の感染症で骨盤のなかで炎症が起きた場合などがあげられます。
恥骨結合炎の症状
恥骨結合炎の症状は痛みですが、痛みの場所はさまざまです。
- 鼠径部(足のつけ根)の痛み
- 恥骨の痛み
- 太ももの内側の痛み
- 下腹部の痛み
炎症を起こしている恥骨結合部のほか周囲の筋肉に痛みを感じ、運動中や左右どちらかに体重をあずけたとき、足をあげたとき、足を外側へ広げるときなどに痛みます。
悪化すると、安静にしても痛みが消えず、走れないばかりか歩行障害がでたり股関節をいつもどおりに動かせなくなります。
日常生活に影響がでるため、痛みがあったら無理せずに安静にしましょう。
恥骨結合炎の検査と診断
恥骨結合炎が疑われる場合の、病院で受ける検査や診断方法をご紹介します。
- どういった検査をするのか
- 診断までの流れ
が分かるので、受診を迷っている方はぜひ参考にしてください。
恥骨結合疑いの検査:①X線検査(レントゲン、CT)
レントゲンとCTはどちらもX線をつかう検査で、レントゲンが1方向からの撮影に対しCTは360°撮影する3次元的な検査です。
X線は体を通り抜けますが、たとえば骨など密度の高い部分と、空気が多い肺などでは通り抜けるX線の量に差があります。この差がX線検査で写しだされます。
レントゲンは異常がすべて写るわけではありません。恥骨結合炎はレントゲンのみで診断できる場合もありますが、重症例やなかなか治らないなど、もう少し詳しい検査が必要なときはCTやMRIの検査をおこなうことを頭にいれておきましょう。
恥骨結合炎疑いの検査:②MRI
MRI検査では軟部組織がうつりやすく、恥骨結合部の軟骨や筋肉・炎症部分がはっきりわかるため、恥骨結合炎の診断によくつかわれる検査です。
腰のMRI検査は20~30分ほどかかり、大きな筒のかたちの機械に入るため閉所恐怖症の方は医師にご相談ください。また、強い磁力をつかう検査のため、撮影する部位にかぎらず体内に金属があると検査ができないことがあります。
からだのなかに留置することが前提の医療器具は非磁性で大丈夫なことが多いですが、絶対ではないためかならず医師に申告しましょう。
診断されるまでの流れ
恥骨結合炎と診断される流れは以下のとおりです。
- 整形外科を受診する
- 診察を受ける
- レントゲンやMRIなどの検査を受ける
- 診察で結果を聞く(診断される)
どこが痛むか・いつごろから痛むか・どんなときに痛むか・運動の習慣など、事前に情報を整理して受診しましょう。
まずは医師の診察を受け症状を話すと、検査を指示されます。
最初は腰のレントゲンを撮ることが多いですが、レントゲンには金属がうつってしまうため、ボタンやファスナー・ホックなど金属のついたズボンは脱がなくてはいけません。ジャージやスウェットなど金属のない洋服の着用がおすすめです。
レントゲンではっきり分からない場合や医師が必要だと認めた場合はMRIやCT検査をおこないます。
小さなクリニックでMRIやCTの設備がない場合、提携している検査センターを案内されたり、予約で後日の検査になることも。歩くのもやっとというほど痛む場合や、重症と感じている場合は、あらかじめMRIやCTの設備がある整形外科クリニックを受診するのがおすすめ致します。
検査が終わると診察室で医師から画像検査の結果を聞き、薬の処方や対処法について説明されます。安静にする期間や運動の制限などもし質問があれば、このときに聞くといいでしょう。
恥骨結合炎の治療方法
恥骨結合炎の治療では、手術をしない保存的な治療が第一選択です。保存的な治療の一部はおうちでもできるため、参考にしてください。
保存的な治療法
痛みが強い急性期は以下の4つで対応します。
- 痛み止めを飲む
- 冷やす
- 安静にする
- 副腎皮質ホルモンの局所注射
痛みが強い場合はストレッチなどはやめ、寝て安静にしましょう。痛み止めを飲んだり、冷やして安静にすることで炎症が落ち着きます。
急性期で炎症が強いときは、市販の痛み止めを飲んでも痛みがひかない可能性があります。安静にしたり冷やしても**痛みがひかないときは病院を受診しましょう。**病院では痛みのある部分に注射等の治療がおこなえます。
痛みが軽かったり、違和感程度の場合や慢性化している場合は以下の対処法があるので参考にしてください。
- ストレッチをする
- 電気治療や鍼治療をうける
- 適度な運動をする
適度なストレッチは血行がよくなり回復がはやまるため、無理のない範囲でストレッチをしましょう。鍼灸を試すのもおすすめですが、痛みが強い場合はまず整形外科を受診して検査をうけてくださいね。
運動はプールでの水中ウォーキングがからだに負担が少なくておすすめです。
安静にする期間の目安参考
痛みが強い場合、2週間は安静にします。そのあとは痛みの様子をみながらストレッチを開始し、体重のかかりにくい水中ウォーキングなどで全身の筋肉を強化しましょう。
痛みがないか確認しながら、少しずつウォーキングやジョギングに移行しますが、痛みがなくなったからとすぐスポーツをはじめると再発しやすいため注意してください。
完治まで2か月ほどが目安ですが、痛みを繰り返すことがあり3か月~半年以上かかるケースもあります。
恥骨結合炎のストレッチとトレーニング
恥骨結合炎の予防ができるストレッチを紹介します。
恥骨結合には太ももやお腹につながる大きな筋肉がついています。炎症が起きた筋肉や恥骨結合部周辺はこわばっているので、ストレッチでほぐして再発を予防しましょう。
ストレッチは反動をつけず、ゆったりとした動作でおこない、息を止めないよう注意してくださいね。
内転筋のストレッチ
内転筋は恥骨と太ももをつなぐ筋肉で、股関節の内側にあります。ここをほどよくストレッチすることで、恥骨周囲の緊張がほぐれますよ。
- あぐらの姿勢から両方の足裏をぴったりとあわせて座ります
- おへそをぐっと引き上げるようにして骨盤をたてます
- 背筋をのばし、ゆっくり前へたおれます
- 3回呼吸しながら伸びを感じます
手は自然と床につくか、つま先にそえてください。
足の裏どうしをくっつけたまま手前に引いたり奥にずらしておこなうと、内転筋の伸びる位置が少し変わり、すみずみまでストレッチできるので試してみてくださいね。
腹直筋のストレッチ
腹直筋は、胸の下から恥骨部までまっすぐのびている筋肉です。腹直筋は大きな筋肉なのでしっかりほぐしましょう。
- よつんばいの姿勢になりましょう
- 両手を肩のまっすぐ下につき、膝を腰幅にひらきます
- 息を吸いながら背中をまるめ、お腹をみます
- 息を吐きながら背中を反らしななめ上を見ます
- 呼吸しながら5回ほど繰り返しましょう
お腹の筋肉をゆるめたり緊張させることでしっかりほぐれますよ。
恥骨結合炎におすすめのトレーニング:水中歩行
水の中は浮力があり、自分の重さが軽減されるため負荷をかけずに運動できます。
ただし、バタ足は細かいキックを繰り返し恥骨に負担がかかるため、泳ぐのではなく水中歩行をしましょう。
歩くと水圧で全身にほどよく負荷がかかり、さまざまな筋肉をバランスよく鍛えられますし、10分ほどの運動で効果が得られます。慣れたら20分を週2回ほどおこないましょう。距離は10分あたり300m~500mほどが目安ですが、身長や水深によって負荷が変わるため、距離よりも時間を重視して歩いてください。
前歩きや横歩き、後ろ歩きなどさまざまな歩き方ができますが、特に横歩きは内ももにある内転筋など股関節まわりの筋肉を鍛えられます。
3つの歩き方を組み合わせて、無理なく実践してください。
恥骨結合炎におすすめのトレーニング:ジョギング
恥骨結合炎になったけれど、またランニングがしたい方におすすめなのがジョギングです。
ジョギングは運動強度が競歩と同レベルで、歩行よりも負荷のある運動かつ、ランニングほどの負担がなく運動療法として最適です。
ランニングよりも小幅で、息切れせず隣の人と話せるくらいのスピードで走ります。はじめは歩行とジョギングをくみあわせて10分程度から、すこしずつ歩行を減らしジョギングのみにしていき、時間も増やしていきましょう。
よくある質問
恥骨結合炎のよくある質問をまとめました。
|
順番にお答えします。
恥骨結合炎でもランニングは可能ですか?
炎症が強かったり、痛みがある場合はランニングはできません。
再発しやすい病気のため、治ったと思っても息が弾むようなランニングをすぐはじめるのはやめましょう。ただし、隣にいる人と会話できる程度のジョギングは、リハビリとしても推奨されており、痛みのない範囲で可能です。
しばらくはジョギングを続け、すこしずつペースをあげていくとランニングができるまでに回復します。
痛みが強かったり、大会など控えている場合はスポーツ専門医に相談しながらリハビリ計画を立てましょう。
恥骨結合炎は何科を受診しますか?
恥骨結合炎かなと思ったら、整形外科を受診しましょう。
整形外科は骨や軟骨・靭帯・神経など、からだを動かすのに必要な器官を専門としています。診察の結果、恥骨結合炎と診断されるとはかぎりませんが、運動器官のスペシャリストなので痛みの原因をしっかり調べてくれます。
妊娠中や出産後の恥骨痛はまず産婦人科や助産師に相談しましょう。
どのくらい安静にしていたらいいですか?
痛みが強い場合は2週間の安静が必要です。
安静中はスポーツや、走ったり重いものを持つといった負担のかかる日常生活の動作もやめ、患部を冷やしてください。そのあとは痛みの具合をみながらストレッチを開始しましょう。
恥骨結合炎はどのくらいで完治しますか?
2か月前後が目安ですが、再発を繰り返す場合はもっとかかる場合があります。恥骨結合炎は再発しやすいため、はやく完治させるには再発予防がカギです。
痛みがひいても安静期間は十分にとってください。また、すぐにスポーツを開始せずストレッチをしながら少しずつ負荷をかけていきましょう。
まとめ:再発を予防してランニングを楽しもう
ここまで、恥骨結合炎の原因、検査や治療、トレーニングやよくある質問を解説しました。
恥骨結合炎になっても、再発に気をつけたり十分な治療期間をとることでまたランニングができるようになります。安静期間やストレッチが順調でしたら、歩行をまぜながらゆっくりジョギングしてみてください。
少しずつ、いつもどおり走れるようになるはずです。
すでに再発を繰り返していたり、自分で対処しているけど思ったように治らない場合や、大会などをひかえていて完治したい時期が決まっている場合などは医師の診察を受けてください。
恥骨結合炎をしっかり治し、再発予防しながらランニング生活を楽しみましょう。
参考文献一覧 |