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「手の指が腫れていて、こわばる感じがする。」「血縁者にリウマチ患者がいるので、遺伝したのでは?」などと、関節リウマチの症状や遺伝について不安を抱える方もいるのではないでしょうか。 関節リウマチ発症には遺伝的要素もありますが、環境要因も発症に関係するため、確実に遺伝するわけではありません。 本記事では、関節リウマチと遺伝の関係性やその他の要因、予防法などについて解説します。 関節リウマチと遺伝に関する疑問を解消したい方は、参考にしてみてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、関節リウマチの治療にも用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。 気になる症状があれば、ぜひご活用ください。 関節リウマチは遺伝要因と生活習慣が関係する 関節リウマチは、自分の免疫細胞が関節の滑膜を攻撃することで関節炎を引き起こす疾患です。 関節リウマチを発症する原因は、現在も完全には解明されていませんが、遺伝的な要因に加えて生活習慣が背景にあるとされています。 たとえば、家族内では食習慣や喫煙習慣などが受け継がれるケースがあるため、関節リウマチの発症リスクと間接的に関係する場合があるのです。 遺伝要因としては、「HLA-DR4」や「HLA-DR1」など、ヒト白血球抗原(HLA)に分類される特定の遺伝子の存在が関与しているとされています。 ただし、関節リウマチの遺伝は、いわゆる単一遺伝子疾患とは異なり、発症に関与する複数の遺伝子が複雑に関係しています。 つまり、特定の遺伝子を持っているからといって、必ずしも関節リウマチを発症するわけではありません。 関節リウマチと遺伝の関係については、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 関節リウマチが遺伝する確率 家族歴がある場合、関節リウマチの発症リスクは高くなることが知られています。複数の研究により、親や兄弟姉妹が関節リウマチである場合、発症リスクは一般人口の約3〜12倍になると報告されています。(文献1)(文献2) 一卵性双生児での発症一致率は12~15%程度、二卵性双生児や兄弟姉妹間の発症一致率は2~4%程度とされています。(文献3) しかし、関節リウマチは遺伝的背景に加えて環境要因も関係するため、確実に遺伝する疾患ではありません。 血縁者に関節リウマチ患者がいても発症しない場合がありますし、血縁者に関節リウマチ患者がいない方でも発症するケースがある点に留意しておきましょう。 男性より女性のほうが遺伝しやすい 関節リウマチは女性に多く見られる疾患であり、発症には男女差が大きく影響していることが知られています。 日本リウマチ学会によると、男女比はおよそ1:3.21で女性に多いとされ、女性ホルモンや免疫機能の違いが関与している可能性があると考えられています。(文献4) また、関節リウマチの発症年齢は一般的に40~60代に多く見られますが、最近では高齢になってから症状が現れるケースが増加傾向にある点も見逃せません。 高齢の発症例では、男女比は1:2~3程度と報告されており、全体と比較して性別による差がやや小さくなる傾向があります。(文献4) したがって、高齢者の場合は、男女の区別なく関節リウマチに注意すべきであるといえるでしょう。 関節リウマチの遺伝と発症メカニズム 関節リウマチの発症には、遺伝的な要因と環境的な要因が複雑に関与しています。 ここでは、関節リウマチに関連する遺伝子や発症メカニズムについて詳しく見ていきましょう。 関節リウマチの発症に関わる遺伝子 関節リウマチの発症には、複数の遺伝子が関与しています。 なかでも「HLA遺伝子(ヒト白血球抗原遺伝子)」は、発症リスクにもっとも大きな影響を与える遺伝的要因とされています。 HLA遺伝子は、免疫機能を調整する働きを持ち、体内の異物を識別して排除するための重要な役割を果たしているのが特徴です。 HLA遺伝子は「クラスI」「クラスII」「クラスIII」の3つの領域に分類されます。(文献5) とくに、クラスII領域のひとつである「HLA-DRB1遺伝子」が関節リウマチと強く関連していることが、近年の研究で明らかになっています。(文献6) 関節リウマチとの関連が判明している代表的な遺伝子は、以下のとおりです。 HLA PTPN22(免疫の働きを調整する遺伝子) PADI4(炎症反応に関与) CCR6(免疫細胞の移動に関与) IL2RA(免疫応答を調節) TNFAIP3(炎症抑制因子の調整) TYK2(免疫関連シグナル伝達に関与) IRF5(免疫応答の転写因子) IRAK1(炎症応答の活性化に関与) CD40(免疫細胞の活性化に関与) 関節リウマチの原因は完全に解明されていない 関節リウマチの明確な原因は、完全に解明されていません。本来自身を守るはずの免疫が誤って自分自身の関節の組織を攻撃する「自己免疫疾患」であり、誤作動によって関節の滑膜と呼ばれる組織に炎症が起き、腫れや痛み、関節の変形が進行していきます。 なぜ免疫が誤って反応してしまうのかについては、遺伝的素因と環境的要因(感染、喫煙、ストレスなど)が複雑に関係していると考えられています。つまり、特定の遺伝子を持つ人が外的な刺激を受けたことをきっかけに、免疫の異常を引き起こす可能性があるわけです。 このように、関節リウマチはひとつの原因で発症するわけではなく、複数の要因が重なり合って発症に至る「多因子性疾患」である点を理解しておきましょう。 炎症性サイトカインが骨を壊す破骨細胞を活性化させる 関節リウマチの発症や進行には、「炎症性サイトカイン」と呼ばれる物質が深く関係しています。サイトカインとは免疫細胞が出すタンパク質の一種で、体内で炎症や感染をコントロールする働きを担っているのが特徴です。 代表的な炎症性サイトカインには、TNF-α(腫瘍壊死因子アルファ)やIL-6(インターロイキン6)などがあります。本来、病原体と戦うために必要な物質ですが、関節リウマチではこれらのサイトカインが必要以上に作られ、関節内に慢性的な炎症を引き起こすのです。 さらに、炎症性サイトカインは「破骨細胞」という骨を壊す細胞を活性化させます。破骨細胞が過剰に働くと関節の骨が次第に溶かされ、骨そのものが破壊されていきます。 その結果、関節の変形が進んで動かしづらくなるなど、日常生活に大きな支障をきたすようになるわけです。 関節リウマチにおける主な検査 関節リウマチにおける主な検査は、血液検査と画像診断です。 血液検査では免疫反応や炎症反応を調べ、画像診断では関節の炎症や破壊の状況を確認します。 なお、一部の民間遺伝子解析サービスで関節リウマチの遺伝子検査が実施されていますが、医療機関で診断に用いられているケースはまれです。 また、一部の自己炎症性疾患に対して遺伝子検査を実施している医療機関もありますが、確定診断ではなく、発症リスクの評価や治療方針の決定に用いられています。 関節リウマチの検査については、下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 関節リウマチを予防する生活習慣改善のポイント 関節リウマチは、遺伝的な素因を持つ人が、さまざまな環境因子の影響を受けて発症する疾患とされています。 完全に予防することは困難ですが、発症リスクを低下させるために取り組める生活習慣の改善ポイントがいくつか明らかになっているのでチェックしておきましょう。 禁煙する 喫煙は、関節リウマチの発症リスクを高める要因のひとつです。 タバコに含まれる有害物質が免疫機能に影響を与え、自己免疫反応を誘導する可能性があると考えられています。 関節リウマチの予防と治療において、禁煙は極めて重要です。 喫煙は、一度関節リウマチを発症したあとの病状悪化にも関与するとされ、薬が効きにくくなるなど治療効果の低下にもつながる恐れがあります。 とくに、遺伝的素因がある人は、速やかに禁煙しましょう。 適切な体重を管理する 肥満も、関節リウマチの発症と進行に関わるリスク要因です。 体脂肪が増加すると、炎症性サイトカインの産生が活性化され、免疫のバランスが崩れることで関節リウマチのリスクが高まると考えられています。 さらに、肥満は関節に過剰な負担をかけるだけでなく、発症後の症状悪化や治療効果の低下にも影響を及ぼしかねません。 バランスの取れた食事や適度な運動を通じて適正な体重を維持し、予防につなげていきましょう。 歯周病を予防する 歯周病と関節リウマチには、強い関連があるとされています。 歯周病を引き起こす細菌が免疫系に異常な反応を誘発する可能性があり、自己免疫疾患の発症に関与するとされているのです。 歯周病を予防するためには、日常的な歯磨きに加えて定期的に歯科検診を受けましょう。 とくに、家族に関節リウマチの患者がいる場合や、すでに歯周病の兆候が見られる人は、早めに対処してください。 早期に医療機関を受診する 関節リウマチは、早期発見・早期治療が重要な疾患です。 初期には、以下のような症状が現れます。 朝の手のこわばり 指や手首の関節の違和感 左右対称に出る腫れや痛み これらの症状を放置すると関節の破壊が進み、元の機能を取り戻せなくなる恐れがあるため注意が必要です。 発症の兆候に早く気づき、医療機関で適切な検査と診断を受ければ、関節の機能を保ちつつ進行を抑えることが可能になります。 関節リウマチで注意すべき食生活と運動については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。 関節リウマチの痛みに対する「再生医療」の選択肢 近年、関節リウマチによる痛みや炎症に対して「再生医療」が新たな選択肢になっています。 再生医療とは、本来の機能を失った組織や細胞に対して、自分自身の幹細胞や血液を用いる治療法です。 再生医療には、主に2つの方法があります。 他の細胞に変化する能力を持つ幹細胞を患部に投与する「幹細胞治療」 血液中の血小板に含まれる成長因子の働きを活用する「PRP療法」 いずれの治療法も入院や手術は不要で、日帰りでの対応が可能です。 体への負担を抑えた治療を検討している方にとって、手術を伴わない選択肢のひとつとなっています。 当院で行っている関節リウマチに対する再生医療については、以下の症例記事をご覧ください。 まとめ|関節リウマチは遺伝の有無にかかわらず早めに医療機関を受診しよう 関節リウマチは遺伝的な素因が関与しているものの、必ずしも遺伝性疾患とは言い切れません。 関節リウマチが疑われる症状がある場合、家族に患者がいるかどうかにかかわらず、早期の受診が極めて重要です。 初期段階で適切な治療を開始することで、関節の破壊や日常生活への支障を最小限に抑えられます。 また、喫煙や感染、歯周病などの環境要因も発症に関係があるため、生活習慣も改善していきましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、関節リウマチの治療にも用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。ぜひご登録いただき、ご利用ください。 関節リウマチと遺伝に関するよくある質問 関節リウマチになりやすいのはどのような人ですか? 日本での関節リウマチ患者数は60万人~100万人程度といわれており、人口の約0.5%から1%が関節リウマチ患者とされています。(文献7) 関節リウマチは女性に多い疾患であり、男女比は1:3.21です。 年齢で見ると、最も多いのは40代から60代とされてきましたが、近年では65歳以上で発症する「高齢発症関節リウマチ」も増えています。 関節リウマチは父母、もしくは祖母から孫へ隔世遺伝する? 関節リウマチは、親や祖父母が患者であっても、必ず子や孫に遺伝するわけではありません。 確かに遺伝的な素因が発症リスクに関与することは知られていますが、発症しやすい体質が受け継がれる可能性を示すものであり、直接的な遺伝性疾患とは異なります。 生活習慣や環境要因の影響も大きいため、過度に不安になる必要はありません。 関節リウマチ発症における遺伝以外の要因とは何ですか? 関節リウマチの発症は、遺伝的な要因だけではなく、以下のような環境要因も関与します。 細菌やウイルスへの感染 過労・精神的ストレス 喫煙 外傷 出産 上記のような要因が重なって自己免疫反応が活性化し、関節の炎症を引き起こすと考えられています。 参考文献 (文献1) Familial aggregation of rheumatoid arthritis and co-aggregation of autoimmune diseases in affected families: a nationwide population-based study|Rheumatology (Oxford) (文献2) Familial risks and heritability of rheumatoid arthritis: role of rheumatoid factor/anti-citrullinated protein antibody status, number and type of affected relatives, sex, and age|Arthritis Rheum (文献3) 関節リウマチ(RA):トピックス診断と治療の進歩|日本内科学会雑誌 (文献4) 関節リウマチの基礎知識|一般社団法人 日本リウマチ学会 (文献5) 関節リウマチのゲノム医療の入り口としてのHLA遺伝子|臨床リウマチ (文献6) Imputing Variants in HLA-DR Beta Genes Reveals That HLA-DRB1 Is Solely Associated with Rheumatoid Arthritis and Systemic Lupus Erythematosus.|PLOS ONE (文献7) リウマチ等対策委員会報告書」について|厚生労働省
2025.05.30 -
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「健康診断の血液検査でリウマチの数値が高いと指摘された」 「リウマチの数値が高い上に、関節が痛んだり腫れたりしている」 「関節リウマチの血液検査の内容を知りたい」 このような疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。 結論から申し上げますと、関節リウマチの血液検査にはさまざまな種類があります。血液検査で異常がなくても関節リウマチと診断される場合も少なくありません。 本記事では関節リウマチの血液検査について詳しく紹介します。 お悩みの症状が関節リウマチに関係しているかの目安がわかりますので、ぜひ最後までご覧ください。 関節リウマチにおける血液検査の種類 関節リウマチにおける血液検査の種類は、主に以下の3つです。 免疫に関する検査 炎症に関する検査 その他の血液検査 免疫に関する検査 ここでは免疫に関する検査として、リウマトイド因子と抗CCP抗体、MMP-3について説明します。 リウマトイド因子 リウマトイド因子とは、リウマチの診断および治療に有効な検査値で、一般的な基準値は15IU/ml以下です。(文献1) リウマトイド因子が50や100といった高値を示し、関節症状がある場合、リウマチである可能性が高いとされています。 ただし、関節リウマチ以外でも高値を示すこともあるため、この検査だけでリウマチと確定させることは難しいでしょう。 抗CCP抗体 抗CCP抗体とは、関節リウマチの診断や予後の予測に関する検査値で、一般的な基準値は4.5U/ml未満です。(文献2)、(文献3) 検査値が高く、関節症状がある場合、関節リウマチの可能性がきわめて高いといえるでしょう。他のリウマチ因子とは異なり、リウマチ以外の疾患で高値を示すことはまれであるため、関節リウマチの診断に有効な検査です。 抗CCP抗体の数値が高い場合は、関節リウマチの中でも関節や骨の破壊が進みやすいタイプであることを意味します。 MMP-3 MMP-3は、関節リウマチにより炎症を起こしている滑膜で多く分泌される酵素であり、リウマチによる軟骨破壊の程度をあらわします。 MMP-3 の基準値は、以下のとおりです。 男性:36.9~121.0 ng/ml 女性:17.3~59.7 ng/ml (文献3) 関節リウマチの初期段階から上昇するといわれていますが、関節リウマチ以外の疾患やステロイド内服時でも高値を示す場合もあります。 関節リウマチ以外でMMP-3 が高値を示す疾患として挙げられるのは、全身性エリテマトーデスやリウマチ性多発筋痛症などです。 炎症に関する検査 ここでは炎症に関する検査として、CRPと赤血球沈降速度について説明します。 CRP CRPは、全身の急性炎症を示す指標です。 正常値は0.3mg/dl未満であり、炎症が強いときには10mg/dlを超える場合もあります。(文献3)、(文献4) 炎症や組織の破壊が起きたときに、白血球の仲間であるリンパ球や単球、マクロファージが炎症性サイトカインを分泌します。炎症性サイトカインにより肝臓の細胞が刺激された結果分泌されるタンパク質が、CRPです。 CRP値が高値を示す疾患は、関節リウマチ以外に複数存在します。主な疾患としては、以下のようなものが挙げられます。 肺炎 ウイルス性肝炎 腎盂腎炎 そのため、CRP値のみでの関節リウマチ診断は難しいといえるでしょう。 赤血球沈降速度 赤血球沈降速度は慢性炎症の指標です。 細長いガラス管の中に抗凝固剤(クエン酸)を加えた血液を入れて、1~2時間立てておきます。この間に、赤血球が沈んだ深さを検査値とします。 正常値は以下のとおりです。(文献3) 男性:1時間に10㎜未満 女性:1時間に20㎜未満 炎症が起こっているときは赤血球の沈む速度が速くなり、関節リウマチ患者では50㎜前後といわれています。(文献4) その他の血液検査 その他の血液検査として挙げられるのは、主に以下の4項目です。 貧血検査 肝機能検査 腎機能検査 肺機能検査 貧血検査 関節リウマチ患者は慢性的な炎症が原因で、貧血傾向にあります。これは炎症性サイトカインが原因で鉄分の吸収が抑制されるためです。 抗リウマチ薬(メトトレキサート)の副作用で貧血が出現する場合もあります。 貧血の程度を測るための検査値が、赤血球数やヘモグロビン値、血色素量などです。WHO(世界保健機構)の定義によると、成人男性ではヘモグロビン値13.0g/dl以下、成人女性ではヘモグロビン値12.0g/dl以下が貧血とされます。 貧血に関しては、以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。 肝機能検査 関節リウマチ患者は、メトトレキサートをはじめとした薬の副作用により肝機能が低下する場合があるため、定期的に検査を実施します。 主な肝機能検査は、AST(別名GOT)やALT(別名GPT)です。医療機関ごとに異なりますが、どちらかの検査値が100U/Lを超えた場合は、内服薬を調整するケースが一般的です。(文献5) B型肝炎およびC型肝炎ウイルス検査を実施するケースもあります。肝炎ウイルスは感染しても無症状のことが多いのですが、リウマチの薬により免疫力が低下して、ウイルスが活性化する場合もあるためです。 関節リウマチと薬の関係については以下の記事でも解説しますので、あわせてご覧ください。 腎機能検査 関節リウマチ患者は薬の副作用により腎機能が低下する場合があるため、血液検査で経過を観察します。 主な腎機能検査は、クレアチニンやeGFRです。基準値は医療機関によって異なりますが、クレアチニン値が高い、もしくはeGFR値が低いと腎機能低下の疑いがあります。 リウマチのコントロールが不良の場合、「アミロイドーシス」と呼ばれる合併症を引き起こす可能性があります。アミロイドーシスとは、アミロイドと呼ばれるタンパク質が過剰に作られて、さまざまな臓器に付着した結果起こる疾患の総称です。 腎臓でアミロイドーシスが起きると、ネフローゼ症候群や腎不全を発症する場合があります。 肺機能検査 関節リウマチの合併症および副作用の1つとして、呼吸器疾患があります。重要な呼吸器疾患の1つが間質性肺炎(肺線維症)です。 一般的な肺炎は細菌やウイルス感染により肺に炎症が起こりますが、間質性肺炎は、肺胞の壁に当たる部分(肺胞壁)や肺胞を支える組織に炎症が起きます。その結果、肺全体が固くなります。 間質性肺炎の度合いを表す血液検査の1つが、KL-6です。医療機関ごとに異なりますが、一般的な基準値は500U/ml未満です。KL-6が高い場合は、間質性肺炎の発症もしくは悪化が考えられます。 関節リウマチにおける血液以外の検査 関節リウマチにおける血液検査以外の検査としては、画像検査があります。具体的には、レントゲン検査や超音波検査、MRI検査などです。 レントゲン検査では関節周囲の骨が薄くなる骨粗しょう症や、骨が削られたように欠ける骨びらんなどの状況がわかります。 超音波検査では炎症の状態がリアルタイムに把握できるほか、骨の状況も高感度で確認可能です。 MRI検査では、関節周囲の筋肉や軟骨などの炎症や腫れを確認できます。 血液検査で異常なしでも関節リウマチを発症している場合がある リウマトイド因子や抗CCP抗体などの血液検査が陰性であっても、関節リウマチと診断されるケースがあります。主に挙げられるのが、血清反応陰性関節リウマチとリウマチ性多発筋痛症です。 血清反応陰性関節リウマチの症状や治療法は、一般的な関節リウマチと同様です。血液検査が陰性であるため、超音波検査で関節の腫れや炎症を確認します。 60歳以上で発症する関節リウマチの場合、血清反応陰性例が多いとされています。(文献6) リウマチ性多発筋痛症は、両肩周囲のこわばりや痛みで発症し、手指や足指の腫れや関節痛が少ないのが特徴的です。(文献6) リウマチ性多発筋痛症は関節リウマチと異なり、少量のステロイド剤が治療に使われます。ステロイド剤の量は患者の状況によって調整します。リウマチ性多発筋痛症も高齢での発症が多い疾患です。 関節リウマチの治療については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 血液検査の理解を深めて関節リウマチの改善に努めよう 関節リウマチにおける血液検査は、免疫や炎症に関する項目に加えて、貧血や肝機能、腎機能、肺機能などに関する項目があります。貧血や肝機能などの検査は、薬の副作用や合併症に関連したものです。 関節リウマチの場合、血液検査だけではなく画像診断も大事な指標です。 また、血液検査で異常なしであってもリウマチを発症しているケースもあります。関節痛や腫れ、変形など、リウマチと思われる症状でお悩みの方は、早めに医療機関を受診しましょう。 関節リウマチの方が日常で避けるべき行動について、下記の記事で紹介しています。あわせてご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」では、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。血液検査の結果に疑問や不安をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。 関節リウマチと血液検査に関するよくある質問 関節リウマチの有無は検査後にすぐわかるものですか? 関節リウマチの有無は、検査後すぐにわからないことが多いとされています。 血液検査、とくにリウマトイド因子や抗CCP抗体などは検査結果が判明するまでに数日から1週間程度かかるためです。 画像検査においても、レントゲン検査や超音波検査はすぐに結果がわかりますが、MRI検査の場合は結果がわかるまで数日かかることがあります。 これらの状況から見ても、関節リウマチの有無は検査後すぐにはわからないと考えた方が良いでしょう。 関節リウマチの検査は何科を受診すれば良いですか? リウマチ科や膠原病内科、整形外科などのリウマチ専門医がいる科の受診が望ましいでしょう。 近くの医療機関にこれらの診療科がない場合は、かかりつけの内科を受診して、専門医への紹介状を書いてもらうことをおすすめします。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による関節リウマチの治療を実施しております。お気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 一般社団法人日本リウマチ学会「リウマトイド因子標準化のガイドライン」一般社団法人日本リウマチ学会ホームページ https://www.ryumachi-jp.com/publish/guide/news110817/(最終アクセス:2025年5月19日) (文献2) 京都大学医学部附属病院リウマチセンター「関節リウマチに関わる血液の検査結果の見方」2013年 https://www.racenter.kuhp.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2013/01/ra2013011702.pdf(最終アクセス:2025年5月19日) (文献3) 順天堂越谷病院「膠原病・リウマチの検査」2020年 https://hosp-koshigaya.juntendo.ac.jp/wp-content/uploads/2020/05/49a86a7ddc1e3f5f01e26b8a369af6e8.pdf(最終アクセス:2025年5月19日) (文献4) Doctors Me 「健康診断の血液検査項目「CRP」 知っておきたい数値の意味」 https://doctors-me.com/column/detail/4886(最終アクセス:2025年5月19日) (文献5) 京都大学医学部附属病院 リウマチセンター「京大リウマチ通信 リウマチで注意する血液データ」2013年 https://www.racenter.kuhp.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2011/05/ra201303.pdf(最終アクセス:2025年5月19日) (文献6) 桑名正隆.「高齢者における診断・治療の進歩:関節リウマチ」『日本内科学会雑誌』111(3), pp.454-460, 2022 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/111/3/111_454/_pdf(最終アクセス:2025年5月19日)
2025.05.30 -
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「関節リウマチと診断されて薬を飲み始めた」 「自分が今飲んでいる薬は、どのような効果があるのだろう」 「リウマチの薬は一生飲み続けるものだろうか」 このような疑問や不安を抱えている方も多く、とくに、関節リウマチと診断されて間もない方にとっては切実な問題です。 本記事では、関節リウマチの薬に関して詳しく解説します。 病気の進行が落ち着く「寛解状態」を目指すためにも、ぜひ最後までご覧ください。 関節リウマチの薬は主に5種類 関節リウマチの治療で用いられる薬は、主に以下の5種類です。 抗リウマチ薬 生物学的製剤 JAK阻害剤 非ステロイド性消炎鎮痛剤 副腎皮質ステロイド剤 抗リウマチ薬 抗リウマチ薬には、免疫異常や、関節の炎症およびリウマチの活動性を抑制するはたらきがあります。 メトトレキサート 抗リウマチ薬の第一選択肢がメトトレキサートです。一般的に抗リウマチ薬は、効果が出るまで1~2か月程度かかりますが、メトトレキサートは2~3週間程度で効果が出るといわれています。(文献1) メトトレキサートは、1週間に1日もしくは2日だけ内服する薬です。副作用軽減のために、内服日の2日後に葉酸を内服します。 メトトレキサートの副作用として挙げられるのは、口内炎や貧血、肝機能異常、間質性肺炎などです。 メトトレキサート以外の抗リウマチ薬 メトトレキサート以外の主な抗リウマチ薬を以下に示します。 薬剤名 特徴 内服方法 副作用 サラゾスルファピリジン 軽症から中等症の患者に有用 メトトレキサート内服不可の患者に用いられる 内服開始後1~2か月程度で効果が出る 朝食後と夕食後に1錠内服 1錠は250mgもしくは500㎎ 皮疹 かゆみ 発熱 肝機能障害 ブシラミン 日本で開発された抗リウマチ薬 軽症から中等症の患者に有用 内服開始後1~3か月程度で効果が出る 1日50㎎もしくは100㎎から開始 通常は1日100~200mg 消化器症状 皮疹 肝機能障害 腎機能障害 タンパク尿が出た場合は内服中止 タクロリムス 日本で開発された免疫抑制剤の一種 2005年に関節リウマチへの適応が認められた 血中濃度測定が保険適応になっている 夕食後に内服 成人は1回2錠(3㎎) 高齢者は1回1錠(1.5㎎) 腎機能障害 耐糖能異常 下痢 腹痛 (文献1) タクロリムス内服時にグレープフルーツを食べたり、他の薬剤を内服したりすると、血中濃度が必要以上に上昇する場合があります。 生物学的製剤 生物学的製剤とは、生物から産生されるタンパク質を応用して作られた薬の総称です。 関節リウマチは、免疫に関わる物質であるサイトカインが通常より増えて、関節の炎症や破壊が生じる疾患です。 生物学的製剤は、点滴や皮下注射によって、サイトカインおよびサイトカインを産み出す細胞の働きを抑えます。これにより炎症を和らげ、関節痛や腫れなどの症状を軽減させる仕組みです。 サイトカイン産生細胞には、炎症を引き起こすTNF-αや炎症に関与するIL-6などがあります。 主な生物学的製剤を以下に示します。 薬剤名 特徴 投与方法 投与間隔 インフリキシマブ TNF-αに作用する 点滴 4~8週間に1回 エタネルセプト TNF-αに作用する 皮下注射 1週間に2回 アダリムマブ TNF-αに作用する 皮下注射 2週間に1回 ゴリムマブ TNF-αに作用する 皮下注射 4週間に1回 セルトリズマブ TNF-αに作用する 皮下注射 2週間に1回 トシリズマブ IL-6に作用する 点滴 4週間に1回 サリルマブ IL-6に作用する 皮下注射 2週間に1回 アバタセプト T細胞に作用する 点滴 4週間に1回 T細胞とは、白血球の仲間であるリンパ球の1つであり、免疫機能をつかさどる細胞です。 生物学的製剤については以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 JAK阻害薬 JAK阻害薬は、分子標的型のリウマチ治療薬であり、関節に炎症を起こす分子「JAK」の働きを抑える効果があります。2013年3月にトファシチニブが日本で承認され、同年7月に発売されました。(文献2) 生物学的製剤は注射もしくは点滴での投与ですが、JAK阻害薬は内服可能な薬です。 トファシチニブ以外の主なJAK阻害剤としては、以下のようなものが挙げられます。(文献2) バリシチニブ ベフィシチニブ ウパダシチニブ フィルゴチニブ JAK阻害薬の副作用では、帯状疱疹の発症リスクが高いとされています。加えて、悪性腫瘍や狭心症、心筋梗塞などにも注意が必要です。 JAK阻害薬は費用が高額であるため、医療保険で自己負担3割の方の場合、毎月5万円程度の医療費が発生します。 非ステロイド性消炎鎮痛剤 主な非ステロイド性消炎鎮痛剤は、アスピリンやロキソニン、インドメタシンなどです。プロスタグランジンと呼ばれる、炎症を引き起こす物質の産生を抑えて、関節痛や腫れを軽減させる役割があります。 効き目が速い点が特徴ですが、関節変形を抑える効果は期待できないとされています。 主な副作用は胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍や、腎機能低下などです。 最近では、COX-2阻害薬と呼ばれる新しいタイプの薬剤が使用可能になりました。(文献3) 副腎皮質ステロイド剤 関節リウマチでは、症例により少量のステロイド剤を用いるケースがあります。主なステロイド剤は、プレドニンやリンデロン、デカドロンなどです。 炎症を抑える作用や免疫抑制作用が強く、はやく効果が出ます。しかし、骨粗しょう症や消化性潰瘍など、副作用も多いこともあり、リウマチ治療においては補助的な役割です。 抗リウマチ薬や生物学的製剤の使用により、ステロイドを減量もしくは中止する例も増えています。 関節リウマチにおける薬物療法の目的 関節リウマチにおける薬物療法の目的は、「症状を抑えること」から「寛解導入」に移行しています。寛解とは、病気の進行が落ち着いている状態です。 現在、関節リウマチ治療の最終ゴールは、以下3点の達成・維持とされています。 臨床的寛解(炎症がほぼ消えた状態) 構造的寛解(関節破壊の進行が抑えられている状態) 機能的寛解(身体機能の低下がみられない状態) 関節リウマチは進行性の疾患であり、進行を止めることは難しいと考えられていました。その考えに変化が生じたのは、2000年前後です。 1999年に抗リウマチ薬の1つであるメトトレキサートが保険適用され、2003年には生物学的製剤が国内で発売開始されました。これらの変化により、関節リウマチの進行を抑えられるようになったのです。 リウマチの薬を飲まないとどうなるのか 副作用が怖い、症状が改善されたなどの理由により、自己判断でリウマチの薬を飲まなくなる方も少なくありません。しかし、自己判断で薬を中止すると、症状が悪化する可能性が高まります。 とくに、メトトレキサートを中心とする抗リウマチ薬のみの治療を受けている場合は、自己判断で中止すべきではありません。内服をやめた場合、症状の悪化率が倍になったという研究データもあります。 日本リウマチ学会による「関節リウマチ治療ガイドライン2014」を要約すると、減薬の優先度は以下のとおりです。 ステロイド 生物学的製剤 抗リウマチ薬 薬を飲むことに不安や疑問がある方は、自己判断で中止せず、必ず主治医に相談しましょう。 関節リウマチの薬について理解した上で治療を受けよう 節リウマチの薬は、免疫に関係して関節の炎症を抑えたり、関節痛や腫れ、変形を軽減したりする効果があります。 関節リウマチは進行性の疾患ですが、新たな薬の開発が進んでいることもあり、寛解を目標にできるようになりました。しかし、寛解を目標にできるのは、指示どおりに薬を内服している場合です。 自己判断で薬を減らしたり止めたりすると、病気に良くない影響を与えます。副作用が不安である、症状が軽減されたなどの理由で、薬の減量や中止を考えている方は必ず主治医に相談しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。関節リウマチの薬や治療について疑問や不安のある方は、お気軽にお問い合わせください。 関節リウマチの薬に関するよくある質問 関節リウマチの薬が効かず症状が改善されない場合もありますか? 薬物治療の効果が得られないケースもあり、その場合は薬を見直します。 抗リウマチ薬の内服を始めて3か月経過しても効果が不十分であれば、量を増やすか、生物学的製剤に切り替えます。 生物学的製剤を投与する場合も、3~6か月程度の経過観察が必要です。経過観察の結果、効果が不十分と判明したときは、他の生物学的製剤やJAK阻害剤に変更します。 内服・投与治療による効果が見られない場合は、手術療法も選択肢に入ります。 リウマチの治療費が高すぎると感じます。医療費の補助はありますか? 生物学的製剤やJAK阻害剤などは薬代が高いため、医療保険で自己負担3割の方の場合、1か月の医療費が3万円以上になることも少なくありません。(文献4) 医療費を軽減する主な制度が、高額療養費制度です。1か月の医療費が所定の自己負担上限額を超えたときに、加入している医療保険から上限を超えた分が支給されます。 高額療養費制度について詳しく知りたい方は、加入している健康保険組合やお住まいの市区町村役場などにお問い合わせください。通院先の医療機関で確認できる場合もあります。 参考文献 (文献1) 順天堂大学医学部附属順天堂医院 膠原病・リウマチ内科「関節リウマチ」 https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/department/collagen/disease/disease01.html(最終アクセス:2025年5月16日) (文献2) 東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター「JAK阻害薬(ジャックそがいやく)」 https://twmu-rheum-ior.jp/diagnosis/ra/medication/biologics/jak.html(最終アクセス:2025年5月16日) (文献4) 公益財団法人日本リウマチ財団 リウマチ情報センター「非ステロイド抗炎症薬(消炎鎮痛薬)」 https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rheuma/dtherapy/nsaids/(最終アクセス:2025年5月16日) (文献4) 松野博明.「医療費を考慮した関節リウマチの治療」『臨床リウマチ』34(4), pp.268-274, 2022年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cra/34/4/34_268/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年5月16日)
2025.05.30 -
- 関節リウマチ
- 内科疾患
「手の関節痛やこわばりのために病院を受診したら、関節リウマチと診断された」 「関節リウマチの原因は何だろう」 「なぜ自分が発症したのか知りたい」 このようにお考えの方も多いことでしょう。 関節リウマチは自己免疫疾患の1つですが、原因ははっきりと解明されていません。 本記事では、関節リウマチの原因と考えられる三要素や治療法などについて解説します。関節リウマチの概要がわかりますので、ぜひ最後までご覧ください。 関節リウマチの原因 関節リウマチとは、自己免疫疾患や膠原病の1つであり、好発年齢は30代から50代とされています。女性に多く、患者数は男性の約4倍といわれています。 関節リウマチ発症の仕組みは現在もはっきりと解明されておらず、原因不明です。(文献1) その中でも原因として考えられるものは、主に以下の三要素です。 免疫システム 環境要因 遺伝的要因 免疫システム 関節リウマチは自己免疫疾患の1つに含まれます。 体内の免疫システムに異常が起こり、関節中の組織である「滑膜」が免疫細胞によって攻撃され、炎症を起こすことが知られています。(文献2) 関節の炎症を引き起こす物質は、「サイトカイン」と呼ばれる免疫細胞から作られるタンパク質です。サイトカインの中でも、IL-6(インターロイキン6)やTNF-α(腫瘍壊死因子α)の影響が大きく、これらが過剰に生み出されると炎症が悪化します。 炎症の結果起こる症状として挙げられるのが、関節痛や腫れ、朝のこわばりなどです。関節以外の症状としては、微熱や倦怠感などが見られます。 関節リウマチの概要や症状については、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 関連記事 関節リウマチの全貌!症状、治療、診断基準まで徹底解説 関節リウマチの初期症状は?チェックリスト付きで現役医師が解説 環境要因 関節リウマチと関連する環境要因は、主に以下のとおりです。 喫煙 ウイルス感染 細菌感染 歯周病 腸内細菌叢 喫煙は多くの研究において、関節リウマチの発症リスクを高め、治療効果を弱める因子であると示されています。(文献3) 遺伝的要因 ヒトの遺伝子の中でも、HLAと呼ばれる「ヒト白血球型抗原」が、関節リウマチの発症に関する代表的なものとされています。 それ以外にも、免疫に関わる遺伝子がリウマチ発症に関係しているとされています。リウマチ発症に関係するといわれる遺伝子は、主に以下のとおりです。 PADI4 CCR6 TNFAIP3 家系調査では、三親等以内に関節リウマチ患者がいる方は、発症率が33.9%との結果が示されました。(文献4)三親等以内とは、自分から見て以下の間柄に該当する方です。 親 祖父母 曾祖父母 おじ・おば 兄弟姉妹 子ども 孫 ひ孫 甥・姪 関節リウマチと遺伝の関係は下記の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 発症の原因?関節リウマチと各要因の関係性 この章では、関節リウマチと関係があると考えられるストレス、飲酒、性格の3つの要因について解説します。 関節リウマチとストレスの関係性 現時点では、ストレスが関節リウマチ発症の原因である明確なデータは示されていません。 しかし、ストレスは免疫機能の低下を引き起こすため、リウマチ発症に間接的な影響を及ぼすとも考えられます。規則正しい生活を心がけ、十分な休養をとり、身体的ストレスの軽減が大切です。 精神的ストレス軽減のためには、好きなことをする時間をとる、気の許せる友人と話すなど、自分なりのストレス解消法を持つことが大切です。関節リウマチの患者会に参加して、同じ病気を持つ方と気持ちをわかち合うのも1つの方法でしょう。 関節リウマチと飲酒の関係性 現時点では、飲酒が関節リウマチ発症を引き起こす明確なデータは示されていません。 米国の研究結果では、1日のアルコール含有量換算10g未満の飲酒は、関節リウマチの発症リスクを軽減する効果が期待できると示されています。アルコール含有量10g未満とは、少なめのグラスワイン1杯(約120ml)や日本酒0.5合程度です。 ただし、抗リウマチ薬であるメトトレキサートの副作用には、肝機能障害が含まれます。メトトレキサートは通常、1週間に1・2回服用するものですが、内服日は禁酒が望ましいでしょう。 主治医から飲酒を禁止されている方は、その指示を守りましょう。 関節リウマチと性格の関係性 関節リウマチの原因の中に、個人の性格は含まれません。しかし、ストレス耐性が低い方は、小さなことでもストレスをためやすいため、免疫力の低下を招きやすいといわれます。 神経症的傾向がある方は、関節リウマチ発症後、患部の様子を気にして何度も触れることが多く、病状を悪化させやすいといわれています。神経症的傾向とは、ストレスを感じやすく感情の浮き沈みが激しい性格傾向のことです。 我慢強い性格の方は、関節リウマチの症状が出現しても治療を受けずに我慢してしまい、重症化しやすい可能性があります。 関節リウマチの治療方法 関節リウマチの主な治療方法としては、薬物療法と手術療法が挙げられます。 薬物療法 関節リウマチの治療で使われる主な薬は、免疫異常に働きかける抗リウマチ薬と、関節痛を和らげる薬です。抗リウマチ薬の代表が、メトトレキサートです。メトトレキサートを最大限使っても効果が出ない場合は、生物学的抗リウマチ剤を注射します。(文献5) また、炎症性サイトカインの産生を阻害する効果を持つ、JAK阻害剤を内服するケースもあります。くわえて、炎症緩和のため少量のステロイド剤を併用する場合も少なくありません。 関節リウマチの薬に関しては下記の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 手術療法 関節リウマチで変形した関節を使いすぎると、変形がますます強まり、関節破壊も進みます。関節リウマチで手術対象となるのは、関節破壊が進み、変形や可動域制限が著しくなった場合です。 関節リウマチ患者に対して行われる手術は、主に以下のとおりです。(文献6) 人工関節置換術 頚椎および腰椎の手術 手指の腱断裂再建手術 外反母趾矯正手術 足関節固定術 人工関節置換手術を実施する部位としては、膝や股関節、足、肘、指などが挙げられます。 関節リウマチの悪化を防ぐ5つの生活習慣 関節リウマチの悪化を防ぐために大切な5つの生活習慣を以下に示します。 生活習慣 詳細 禁煙 喫煙は関節リウマチを悪化させる大きな要因であるため、禁煙が望ましい。 バランスの良い食事 関節リウマチの方は貧血や骨粗しょう症になりやすい。鉄分・カルシウム・ビタミンDを中心にバランスの良い食事を心がけよう。 適度な運動 ウォーキングやリウマチ体操などが望ましい。関節可動域の維持もしくは改善、痛みの軽減、筋力維持が期待できる。 適度な休息 関節リウマチは関節だけではなく全身が慢性的に消耗しやすい。疲れたときには、休憩や昼寝などで適度な休息を取ろう。 内服管理 自己判断で薬を減らしたり中止したりすると、症状の悪化につながる。指示通りに内服し、減量や中止を希望するときは、主治医に必ず相談しよう。 バランスの良い食事については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 原因や治療法を知り関節リウマチの悪化を防ごう 関節リウマチの原因は、免疫システムの異常、環境要因、遺伝的要因の複合的な相互作用によると考えられますが、現時点では完全に解明されていません。 とくに、30代から50代の女性で、関節の腫れや痛み、原因不明の微熱や倦怠感などがある方は、早めに医療機関を受診しましょう。 関節リウマチと診断された場合は、薬物療法を続けつつ、悪化防止の行動につとめることが大切です。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による関節リウマチの治療を実施しております。 以下の記事は、実際の関節リウマチ治療事例です。 関連記事:症例紹介 関節リウマチの症例 メール相談やオンラインカウンセリングも行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター「関節リウマチとは」東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターホームページ, 2023年10月13日 https://twmu-rheum-ior.jp/diagnosis/ra/about-rheumatism.html(最終アクセス:2025年5月14日) (文献2) 兵庫医科大学病院「関節リウマチ」兵庫医科大学PRESENTSもっとよく知る!病気ガイド https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/8(最終アクセス:2025年5月14日) (文献3) 川人豊「関節リウマチ(RA):トピックス診断と治療の進歩Ⅰ.病因 2.環境的要因」『日本内科学会雑誌』101(10), pp.2824-2829, 2012 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/10/101_2824/_pdf(最終アクセス:2025年5月14日) (文献4) 湯川リウマチ内科クリニック「関節リウマチと遺伝」 https://yukawa-clinic.jp/knowledge/basicknowledge/genetic.html(最終アクセス:2025年6月5日) (文献5) 富山大学附属病院「最新の関節リウマチ治療―関節リウマチ」富山大学附属病院ホームページ https://www.hosp.u-toyama.ac.jp/amc/topic13/(最終アクセス:2025年5月14日) (文献6) 京都大学医学部附属病院リウマチセンター「関節リウマチの手術について」京都大学医学部附属病院リウマチセンター https://www.racenter.kuhp.kyoto-u.ac.jp/surgery(最終アクセス:2025年5月14日)
2025.05.30 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
2024年に東京iCDCリスクコミュニケーションチームが実施した都民1万人アンケート調査によれば、2か月以上コロナ後遺症に苦しんだ成人は23.4%にものぼっていました。(文献1) 新型コロナ感染症罹患後の後遺症については、かかった人の年齢、性別問わず多くの報告が寄せられています。 多くの症状が確認されており、いまだ解明されていないことも少なくありません。 意識が朦朧とする「ブレインフォグ」が一時期話題となりましたが、実は「筋肉痛」も後遺症として現れることをご存知でしょうか。 この記事では、コロナ後遺症として報告されている筋肉痛について、原因や治療法を解説します。 コロナにかかってから筋肉痛が治らない、運動していないのに筋肉痛がするという人はぜひ参考にしてみてください。 \コロナ後遺症に再生医療という新しい選択肢/ 従来の治療では改善が見られなかった方に対して、幹細胞を用いた再生医療が注目されています。 患者様ご自身の細胞を活用し、ダメージを受けた神経や組織の修復・免疫機能の正常化をサポートすることで、倦怠感や筋肉痛などの後遺症改善が期待できます。 【こんな方は再生医療をご検討ください】 これまでの治療を受けても症状が改善しない方 筋肉痛や倦怠感で日常生活に支障を感じている方 後遺症が3か月以上続いている方 今、コロナ後遺症の筋肉痛で苦しんでいる場合、1人で悩まずに、ぜひ当院(リペアセルクリニック)にご相談ください。 コロナ後遺症の筋肉痛・関節痛は気のせいではない コロナ後遺症について、WHOは以下のように定義しています。 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に罹患した人にみられ、少なくとも2ヵ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないものである。 通常はCOVID-19の発症から3ヵ月経った時点にもみられる(文献7) 厚生労働省が北海道札幌市と大阪府八尾市を対象に行った調査では、新型コロナウイルス感染3か月後も何らかの症状が続いていると答えた人が八尾市で「14.3%」、札幌市では「20.9%」にものぼりました。(文献2) コロナ後、原因不明の体調不良に悩まされている人が15%前後いたのです。 コロナ後遺症に悩まされる人の多くが「倦怠感」「集中力の低下」「身体の痛み」を訴えています。 新型コロナウイルスが流行した当初は研究が進んでおらずコロナとの関連性が明確ではありませんでしたが、現在ではコロナ後遺症はひとつの病状として世界が認めているのです。 コロナ後遺症による筋肉痛の症状・特徴 実際にコロナ後遺症でどのような症状が起こるのかを以下で紹介します。 コロナ後遺症の筋肉痛の症状・特徴 筋肉痛以外の後遺症 通常の筋肉痛との違いや、筋肉痛以外のコロナ後遺症の症状についても項目ごとに解説します。 コロナ後遺症の筋肉痛の症状・特徴 コロナ後遺症による筋肉痛の症状の特徴として、身体全体に痛みが見られるという点が挙げられます。 通常起こる筋肉痛は、運動などによって筋肉組織が損傷を起こし、その修復過程で炎症が起こることで痛みが発生します。 そのため、通常の筋肉痛では運動でよく使った一部の筋肉が痛みます。 しかし、コロナ後遺症の筋肉痛の場合はウイルスが原因で起こっているため、全身が痛むのです。 また、通常の筋肉痛は、運動の負荷にもよりますがおよそ2~4日ほどで治ることがほとんどです。 一方コロナ後遺症の筋肉痛は長期化することも多く、長ければ数か月痛みが続くこともあります。 そのほかにも通常の筋肉痛とコロナ後遺症による筋肉痛には違いがあります。表で比較してみましょう。 特徴 コロナ後遺症の筋肉痛 通常の筋肉痛 原因 免疫異常・炎症反応・神経障害(自己免疫など) 運動などによる筋繊維の損傷 発症のきっかけ 運動していないのに痛くなる 激しい運動や普段しない運動をした後 痛みの性質 持続的、身体が重い 鋭い痛みや張り感 場所 広範囲(肩・背中・太ももなど) 痛む場所が移動することもある 使った部位に限定される 持続時間 数週間〜数か月続くことも 通常は2〜3日で軽快 他の症状 倦怠感・ブレインフォグ・息苦しさなどを伴う 通常は痛み以外の症状はない 検査で異常 炎症マーカー上昇や自己抗体が見つかる場合あり 基本的に異常なし 通常の筋肉痛と違う点を感じたら、まずは医師に相談してみましょう。 筋肉痛以外の後遺症 筋肉痛以外のコロナ後遺症については、以下の症状が報告されています。 ブレインフォグ 疲労感・倦怠感 関節痛 咳、喀痰、息切れ 胸痛 脱毛 記憶障害 集中力低下 頭痛 抑うつ 嗅覚・味覚障害 動悸 下痢、腹痛 睡眠障害 一見すると風邪症状に見えるものも多く、コロナ後遺症と結びついていなかったという人もいるかもしれません。 また、複数の症状が併発することが多い点もコロナ後遺症の特徴です。 なぜコロナ後遺症で筋肉痛が起きるのか コロナ後遺症で筋肉痛が発生するメカニズムについては研究が進んでいます。 通常の筋肉痛は運動を行うことにより筋繊維が破壊されることで発生しますが、コロナ後遺症による筋肉痛はその限りではありません。 近年の研究をもとに、コロナ後遺症で筋肉痛が起こる原因を以下で紹介します。 コロナ罹患により体内のエネルギーをつくる力が低下する コロナウイルスと自己免疫の関係 コロナ罹患後の運動が逆効果になることも コロナ罹患により体内のエネルギーをつくる力が低下する 2024年に海外で、コロナ後遺症の患者25名と新型コロナ感染症に罹患したものの後遺症の症状のない患者21名を集め、エアロバイクを10分~15分間こぐサイクリングテストが実施されました。(文献3) この実験の結果、コロナ後遺症の患者は健康な被験者と同量の運動でも、運動後筋力が低く酸素摂取量も少なかったことがわかりました。 また、コロナ後遺症患者の筋繊維中にあるミトコンドリアについて調べたところ、ミトコンドリアの機能が低下していることがわかりました。(文献5) ミトコンドリアの主な機能は細胞のエネルギーを生成することです。この機能が弱まっているため、筋肉痛が長引いているのではないかと考えられています。 コロナウイルスと自己免疫の関係 近年の研究では、コロナ罹患後に自己免疫疾患、炎症疾患のリスクが高まることが報告されています。(文献4) この研究では観察期間180日を超える新型コロナウイルス患者約314万例、そうではない人約376万例の計約690万例を検証しました。 その結果、新型コロナウイルスに罹患した人は関節リウマチや脱毛症といった自己炎症性疾患を患うリスクが高いことがわかりました。 自己炎症性疾患には筋肉痛を伴う病気もあります。長期化している場合は炎症疾患の可能性も考慮し、医師への相談も検討したほうがよいでしょう。 コロナ罹患後の運動が逆効果になることも 体力を回復しようと運動を行うと、さらに後遺症がひどくなってしまう可能性があるため注意が必要です。 コロナウイルスによって免疫機能が低下している場合、運動によって損傷を受けた筋肉繊維の回復に時間がかかってしまいます。 ダメージを受けたことによって、炎症を起こすリスクもあり、結果として筋肉痛の回復が遅れてしまう可能性もあります。まずは、かかりつけの医師に相談し、過度な運動は控えるようにしましょう。 コロナ後遺症による筋肉痛の治療法 コロナ後遺症による筋肉痛は時間経過によって治ることが多いとされています。厚生労働省の調査では、罹患18か月後に後遺症を訴える人は成人ではおよそ5%、小児では1%ほどでした。(文献2) 治療の基本としては痛みを抑える薬物療法が推奨されています。 しかし、コロナ後遺症の筋肉痛は様々な要因が絡んでいる可能性が高いといわれています。長期化している場合はリハビリテーションの実施も検討すべきでしょう。 また、精神的な要因が潜んでいる場合もあります。心理面でのケアも含め、多方面でのアプローチが必要になります。 コロナ後遺症の治療としての選択肢「再生医療」とは https://youtu.be/aTnT8dbLjSs コロナ後遺症には、再生医療という治療の選択肢もあります。 再生医療とは患者様自身から幹細胞を採取・培養し、患部に投与する治療法です。 幹細胞は「分化能」という、さまざまな組織の細胞に変化する能力があります。 \コロナ後遺症に再生医療という新しい選択肢/ 【こんな方は再生医療をご検討ください】 これまでの治療を受けても症状が改善しない方 筋肉痛や倦怠感で日常生活に支障を感じている方 後遺症が3か月以上続いている方 今、コロナ後遺症の筋肉痛で苦しんでいて少しでも改善の可能性を探したいという方は、ぜひ当院(リペアセルクリニック)にご相談ください。 まとめ|コロナ後遺症の筋肉痛は時間経過で治ることが多い!不安な場合はすぐかかりつけ医師に相談を コロナ後遺症のひとつとして、筋肉痛はよく見られる症状のひとつです。 近年の研究では免疫や細胞の再生力の低下により、炎症を引き起こし筋肉痛を伴っている可能性が高いとされています。 コロナ後遺症による筋肉痛は時間経過によって治ることが多いため、継続的な薬物療法やリハビリテーションが効果的です。 また、コロナ後遺症の治療としては、再生医療という選択肢もあります。 長期的なコロナ後遺症に悩まされている人は、まずは当院(リペアセルクリニック)にご相談ください。 参考文献 (文献1) 東京iCDCリスクコミュニケーションチームによる都民1万人アンケート調査結果(2024年2月実施)|東京都 (文献2) 新型コロナウイルス感染症(COV ID-1 9)の罹患後症状について(研究報告、今後の厚生労働省の対応)|厚生労働省 (文献3) Muscle abnormalities worsen after post-exertional malaise in long COVID|Nature Communications (文献4) Yeon-Woo Heo,et al.(2024)JAMA dermatology|JAMA dermatology (文献5) Muscle abnormalities worsen after post-exertional malaise in long COVID| Nature Communications (文献6) 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A|厚生労働省
2025.05.27 -
- 糖尿病
- 内科疾患
「尿酸値を下げるためには何を食べたり飲んだりすれば良いの?」 「摂取を控えたいプリン体の多い食品は?」 尿酸値が高いと指摘された方は、このようなことを知りたいのではないでしょうか。尿酸値のコントロールにおいて食事内容は重要です。 プリン体が多い食品を避けるのはもちろん大切ですが、尿酸値を下げる食べ物・飲み物を意識的に摂れば、高尿酸血症の改善に役立つでしょう。 本記事では、尿酸値が高めと指摘された方に対して以下を解説します。 尿酸値を下げる食べ物・飲み物 摂取を控えたいプリン体の多い食品 尿酸値を下げる3つのポイント コーヒーと尿酸値の関係について 尿酸値を下げる食べ物・飲み物の主な効果を一覧表で紹介するので、ぜひ参考にしてください。 尿酸値を下げる食べ物・飲み物【一覧表】 尿酸値を下げる食べ物・飲み物は以下の通りです。 食品名 主な効果 バナナ カリウムにより尿酸が尿に溶けやすくなる 低脂肪ヨーグルト 乳酸菌により腸管からのプリン体の吸収を抑える チェリー ポリフェノールにより尿酸の生成を抑える マグロ・カツオ アンセリンにより尿酸の生成を抑える レモン ビタミンCにより腎臓での尿酸の吸収を抑える 低脂肪牛乳 腎臓からの尿酸の排出を促す(アミノ酸が関係すると考えられている) 豆乳 フィチン酸により腸管からのプリン体の吸収を抑える ワイン ポリフェノールにより尿酸の生成を抑える 緑茶 ポリフェノールにより尿酸の生成を抑える (文献1)(文献5) 食生活の改善は尿酸値のコントロールにおいて重要です。ただし、関節の痛みや腫れなどの症状が出ている人は、食事内容を意識するだけではなく薬物療法を検討しなければなりません。とくに尿酸値が8.0mg/dL以上の方は、症状が出ていなくても医師に相談してください。(文献2) 【関連記事】 痛風の初期症状は?早期発見につなげて重症化を防ごう【医師監修】 高い尿酸値がもたらすリスクとは?原因や合併症の予防法も解説 バナナ バナナなどに豊富に含まれているカリウムは、尿酸値を下げる効果を期待できます。これはカリウムにより尿がアルカリ性に傾き、尿酸が尿に溶けやすくなるためです。(文献5)とはいえ、バナナには尿酸値を高める果糖も含まれているため、食べ過ぎには注意してください。 尿酸値が高い方は尿が酸性に傾きやすい傾向です。尿が酸性に傾いていると、尿酸が結晶化して痛風を引き起こしやすくなります。尿をアルカリ性に傾けるには、以下のような食品をバランス良く食べると良いでしょう。 尿をアルカリ性に傾ける働きがある食品 ヒジキ、ワカメ、こんぶ、干し椎茸、大豆、ほうれん草、ごぼう、にんじん、さつまいも、里芋 以上の食品を意識的に摂取して、尿から尿酸を排出しやすくすることが大切です。 低脂肪ヨーグルト ヨーグルト(低脂肪)は、腸管からのプリン体の吸収を抑える効果を期待できます。これはヨーグルトに含まれている乳酸菌に、以下のような働きがあるためです。 プリン体を体に吸収されにくいプリン塩基といった物質に分解してくれる 乳酸菌がプリン体を取り込んでくれることで体に吸収されるプリン体の量が減る 実際に男性約47,000人を対象にした12年間の観察研究で、ヨーグルトを1週間に2カップ以上摂取しているグループと、摂取量が最も少ないグループを比較すると、0.76倍痛風の発症が少ないと報告があります。(文献1) チェリー チェリーは、尿酸の生成を抑えて尿酸値を下げる効果が期待できます。この効果は、チェリーに含まれているポリフェノールによるものです。 実際に女性10例を対象にした研究では、280gのチェリーの摂取により尿酸値が低下したと報告があります。(文献1)チェリーの他にポリフェノールが多い食品は、以下のようなものがあります。 ブルーベリー スモモ ブドウ イチゴ チョコレート ココア ワイン コーヒー とはいえ、果糖や砂糖は摂り過ぎると尿酸値を高めてしまいます。摂取は適量にしてください。 マグロ・カツオ マグロ・カツオなどに豊富に含まれているアンセリンは、尿酸の生成を抑える働きがあるため、尿酸値を下げる効果を期待できます。 実際に健康な方および尿酸値の高い方48名を対象に、アンセリンを含む食品(アンセリン25mg/日または50mg/日)とプラセボ食品(有効成分を含まない食品)のどちらかを4週間摂取してもらったところ、アンセリンを摂取したグループの尿酸値が低下しました。(文献1) とくに50mgを摂取したグループにおいては、明らかな低下が見られています。アンセリンが豊富な食材は、マグロやカツオの他に鶏のささみなどがあります。 レモン レモンなどに豊富に含まれているビタミンCは、摂取量が多いほど尿酸値が低下したと報告があります。(文献1)ビタミンCが尿酸値を下げられるのは、以下のような働きがあるためです。 腎臓での尿酸の吸収を抑える 尿へ排出できる尿酸の量が増える これらのメカニズムは詳細に解明できていません。レモンの他にビタミンCが豊富に含まれている果物や野菜は、オレンジやカキ、ブロッコリー、黄色パプリカなどがあります。 低脂肪牛乳 牛乳(低脂肪)には、腎臓からの尿酸の排出を促す効果があると考えられています。詳細なメカニズムは解明されていませんが、アミノ酸が関係すると考えられています。 実際に男性約47,000人を対象にした12年間の研究では、牛乳の摂取が多いグループと少ないグループを比較したところ、痛風の発症率が0.54倍になったと報告がありました。(文献1) 豆乳 豆乳に含まれているフィチン酸は、尿酸値の上昇を抑える効果が期待できます。フィチン酸には、腸管からのプリン体の吸収を抑える働きがあるためです。 実際に尿酸値が高い31名を対象に、フィチン酸が含まれる飲料とプラセボ飲料を昼食と夕食に1本ずつ付けて14日間摂取したところ、フィチン酸を摂取したグループの尿酸値が低下したと報告があります。(文献1) ワイン アルコール飲料は、一般的に尿酸値を上昇させて痛風リスクを高めます。ただし、ワインは他のアルコール飲料と異なり、尿酸値を高める影響が低いと考えられています。実際に米国の調査では、ワイン約150mlまでの摂取はむしろ尿酸値を低下させると報告がありました。(文献1) また、約50,000人の男性が飲用しているアルコール飲料を12年間追跡した調査では、ワインを1日2杯まで飲む人は痛風のリスクが抑えられると報告があります。(文献1)尿酸値が低下した理由は、ワインに多く含まれているポリフェノールによるものと考えられます。 緑茶 30名の健康な方を対象に、緑茶の抽出物を2週間摂取したところ尿酸値が低下の傾向を示したと報告があります。(文献1)これは、ポリフェノールによる尿酸の生成を抑える働きによるものと考えられます。 小規模な研究のため、尿酸値低下効果の確実性はまだ限定的です。しかし、緑茶には抗酸化作用など他の健康効果も期待できるので、日常的に適量を楽しむことをおすすめします。 なお、1日に5〜6杯以上の過剰摂取はカフェインの影響で不眠や動悸を引き起こす可能性があります。飲みすぎには注意しましょう。 摂取を控えたいプリン体の多い食品【 一覧表】 尿酸値を下げるには、プリン体の多い食品の摂取を控えることが大切です。ここからは、プリン体が多い食べ物とアルコール飲料を解説します。 プリン体が多い食べ物 プリン体が多い食品の一例は以下の通りです。 プリン体含有量(100gあたり) 食品名 非常に多い(300mg〜) 干物(マイワシ)、白子(フグ、タラ)、鶏レバー、あんこう、太刀魚など 多い(200〜300mg) 干物(サンマ、マアジ)、豚レバー、牛レバー、マイワシ、カツオ、大正エビなど 中等量(100〜200mg) 鶏ささみ、砂肝、鶏の手羽先、鶏もも(皮付き)、鶏皮、豚ヒレ、牛ヒレ、アジ、マグロ、サワラ、サバ、ほうれん草の芽、ブロッコリースプラウトなど (文献2)(文献3) 飲食店やコンビニで食事を済ませる際は、上記の表を参考にしてプリン体が多い食品を避けてください。ほとんどの肉類や魚類には中等量以上のプリン体が含まれていると捉えましょう。 プリン体が多いアルコール飲料 プリン体が多く含まれているアルコール飲料の一例は以下の通りです。 プリン体含有量(100mlあたり) アルコール飲料名 約5〜7mg ビール 約3〜4mg 発泡酒 約7〜17mg 地ビール 約1mg 日本酒 (文献3) ワインや焼酎、ブランデー、ウィスキーなどに含まれているプリン体含有量は0.5mg以下(100mlあたり)と少ないです。しかし、アルコール自体に尿酸の排出を抑える働きがあるため、飲み過ぎてはいけません。(文献3)(文献5) また、同じアルコール飲料でも、メーカーによってプリン体が含まれる量は異なるため参考程度にとどめてください。 日常生活における尿酸値を下げる3つのポイント 日常生活における尿酸値を下げるポイントは、以下の3つです。 プリン体が少ない食べ物・飲み物を選ぶ 水分を十分に摂取する 有酸素運動の習慣を身につける それぞれの詳細を解説します。 1.プリン体が少ない食べ物・飲み物を選ぶ 尿酸値を下げるには、日頃からプリン体が少ない食べ物・飲み物を選ぶことが重要です。プリン体が非常に少ない食品の種類は以下の通りです。 プリン体含有量(100mgあたり) 食品の種類 非常に少ない(〜50mg) 野菜類、穀類、豆類、キノコ類、鶏卵、乳製品など (文献2) 果糖や砂糖が含まれている飲み物は、尿酸値を高めるため水やお茶にしましょう。 2.水分を十分に摂取する 十分に水分を摂取すると尿からの尿酸排出が増えます。十分な尿量を確保するために必要な一日の水分摂取量は2〜2.5Lです。(文献2) 水分は入浴中や就寝中に失われます。入浴前後や就寝前、起床後に水分を取ることも大切です。水分の種類は前述した通り水やお茶にしてください。アルコール飲料は水分に含まれません。 3.有酸素運動の習慣を身につける 有酸素運動は肥満を改善して、尿酸値の低下も期待できます。推奨されているのは以下のような有酸素運動です。 ウォーキング ジョギング サイクリング 有酸素運動は、脈が少し速くなる程度の強度で1日合計30〜60分ほど行うことが効果的です。(文献2)短時間の激しい無酸素運動は、尿酸値を高める恐れがあるため控えてください。 コーヒーと尿酸値の関係について コーヒーが尿酸値に影響を及ぼすかどうかは明確な根拠がありません。しかし、大規模な研究においては、1日4杯以上コーヒーを飲む人は、まったく飲まない人と比較して、痛風リスクが40%低いと報告があります。(文献4) とはいえ、この研究は因果関係を証明したわけではありません。コーヒーは「適度に楽しむことで痛風予防に役立つかもしれない」と捉えましょう。 まとめ|尿酸値を下げる食べ物・飲み物を意識的に摂取しよう 尿酸値を下げる食べ物・飲み物を意識的に摂取すれば、尿酸値の改善を期待できます。本記事で紹介した食品は効果が期待できますが、いずれも摂り過ぎには注意が必要です。バランス良く取り入れつつ、プリン体の多い食品は控えめにしましょう。 また、1日2~2.5Lの十分な水分摂取と30分以上の有酸素運動を習慣化することで、尿酸値のコントロールをサポートできます。これらの生活習慣の改善は、痛風予防にもつながります。 ただし、尿酸値が8.0mg/dL以上の方は、症状が出ていなくても薬物療法が必要となる場合があります。食事改善に取り組みながらも、主治医と相談して適切な治療方針を決めましょう。 参考文献 (文献1) 藏城 雅文,山本 徹也.「血清尿酸値の低下作用が示唆される食材および食材に含まれる物質の作用機序」『痛風と尿酸・核酸』45(1), pp.13-21, 2021年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/gnamtsunyo/45/1/45_13/_pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献2) 日本痛風・尿酸核酸学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」 https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00476_supplementary.pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献3) 厚生労働省「魚介類50gあたりの脂質とプリン体の関係」 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/06/dl/s0619-5d03-05.pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献4) 藤森 新.「痛風・高尿酸血症の病態と治療」『日本内科学会雑誌』107(3), pp.458-463, 2017年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/3/107_458/_pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献5) 日本痛風・核酸代謝学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン ダイジェスト版」 https://www.tufu.or.jp/pdf/guideline_digest.pdf(最終アクセス:2025年5月17日)
2025.05.25 -
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健康診断で尿酸値が高めと書かれていてドキッとした経験はありませんか?そんなときに真っ先にイメージされる痛風ですが、実はその痛みの原因は腎臓にも関係しています。 尿酸は体内の老廃物の一種で、痛風の原因としてよく知られていますが、尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続くと、実は腎臓にも大きな負担がかかり、放置すると腎臓の機能低下を招いて将来的に透析が必要になることもあります。 尿酸値の高い状態が続くと痛風発作を起こすだけでなく、腎臓病や高血圧、心臓病、尿路結石などさまざまな病気を発症しやすくなることがわかっています。 本記事では、尿酸と腎臓の関係や腎臓に影響をあたえるメカニズムについて解説します。尿酸と腎臓のトラブルを予防・改善するポイントを一緒に見ていきましょう。 尿酸値と腎臓との関係|さまざまな疾患への影響 尿酸値が高くなると、体内の尿酸は結晶化してさまざまな場所にたまりやすくなります。足の親指の関節に結晶がたまれば激痛を伴う痛風発作を起こし、尿路にたまると尿路結石、腎臓にたまると腎結石(じんけっせき)になります。 腎臓に尿酸の結晶が沈着すると腎臓の組織に炎症を引き起こし、腎臓の働きが低下してしまいます。尿酸によるこうした腎臓障害を痛風腎(つうふうじん)と呼びます。 さらに尿酸値が高い方は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満といった生活習慣病を合併しやすいことも知られており、動脈硬化が進んで心筋梗塞や脳卒中など心血管疾患のリスクも上昇する傾向があります。 このように尿酸値は痛風だけでなく全身の健康、腎臓の健康と深く関わっています。 尿酸と腎臓が連動する仕組み 尿酸とはプリン体という物質が分解されてできる老廃物です。プリン体は食品や体内の細胞に含まれており、それらが分解されると尿酸が産生されます。 通常、この尿酸は血液を通して腎臓に運ばれ、腎臓でろ過されて尿中に排泄されます。健康な腎臓であれば体内の尿酸バランスは保たれますが、腎臓の働きが悪くなると尿酸を十分に排泄できずに血液中に溜まり、尿酸値が高くなってしまいます。 尿酸値が高い人ほど腎機能が低下している傾向は研究でも判明してますが、尿酸値が高いこと自体が腎臓を悪くする原因なのか、腎機能が低下した結果として尿酸が高くなっているのかは明確にはわかっておらず、両者が悪循環を起こす可能性も指摘されています。このように、尿酸と腎臓は密接な関係があるといえます。 検査値の見方を押さえて、尿酸値とクレアチニンの関係を知ろう 高尿酸血症と腎臓の関係を理解するには、血液検査の「尿酸値」と「クレアチニン値」に注目しましょう。 尿酸値が高すぎると痛風や腎障害につながります。一方、クレアチニン値は腎臓のろ過機能を示す重要な指標です。 ここでは尿酸値が高くなる原因と、クレアチニン値からわかる腎機能の状態について具体的に解説します。 尿酸値が高くなる原因 尿酸値が上がる要因は生活習慣と体質(遺伝)です。まず生活面では過食・飲酒・運動不足が代表格です。ビールや内臓類・干物など高プリン体食品の多量摂取、肥満、さらには高血圧・糖尿病・脂質異常症などの併発が尿酸産生増と排泄低下を招きます。 一方、遺伝的素因も大きく、痛風患者の一親等内に家族歴があると高尿酸血症リスクは約2倍に跳ね上がると報告されています。 加えて、腎機能障害や白血病など細胞代謝が過剰に活発になる病態でも尿酸が蓄積するケースがあり、まずは食事・運動など日常習慣を整えた上で、異常が続く場合は医師の検査を受けることが大切です。 \まずは当院にお問い合わせください/ クレアチニン値が示す腎臓機能の指標 腎機能を知るカギは血液中のクレアチニン(Cre)です。クレアチニンは筋肉が動く際に生じる老廃物で、腎臓が正常なら尿へ排泄され血中濃度は低く保たれます。 男性0.6~1.0mg/dL、女性0.5~0.8mg/dL前後が目安ですが、筋肉量や年齢により変動するため数値だけで一喜一憂せず体格を加味した評価が必須です(文献1)。 Cre値と年齢・性別を組み合わせて算出するeGFR(推定糸球体ろ過量)は腎臓が老廃物をどれだけ濾過できるかを%換算した指標で、60mL/分/1.73㎡未満が3か月以上続くと慢性腎臓病(CKD)とみなされます(文献1)。 尿酸値が高い人はCre値も上がりやすいため、両指標をセットでチェックし早期に腎機能低下を掴むことが、痛風腎やCKDの進行を防ぐ第一歩になります。 痛風が腎臓に影響をあたえるメカニズム 痛風は関節だけの病気ではありません。合併症である高尿酸血症は腎臓にも深刻な打撃を与えます。血中で余った尿酸が針のように結晶化し、腎臓の細い管に詰まると、目詰まりを起こして炎症になります。 すると腎臓のろ過フィルター役割をする糸球体が痛み、老廃物を捨てにくくなるため腎機能が低下します。 さらに腎機能が低下することで痛風患者に多い肥満・高血圧・糖尿病が加わると悪循環になってしまいます。 長年放置すれば慢性腎臓病(CKD)や透析に至る恐れもありますので、尿酸値管理と生活習慣改善を早期に徹底しましょう。 痛風腎とは?放置する危険性 痛風腎(つうふうじん)とは、その名のとおり痛風(高尿酸血症)が原因で起こる腎臓障害のことです。痛風や高尿酸血症がしっかり治療・コントロールされずに長期間経過すると、尿酸塩の結晶が腎臓の深部(髄質)に析出して沈着し、腎臓の組織に慢性的な炎症を引き起こします。(文献2) 簡単に言えば、尿酸の結晶が腎臓に石のようにたまって腎臓を傷つけてしまった状態ですが、その結果腎臓の濾過機能が低下し、放置すると慢性腎不全へ進行して透析療法が必要になる可能性もあります。 痛風腎の怖いところは、これといった特有の自覚症状がない点です。尿が泡立つ(蛋白尿)・むくみが出る・血圧が上がるなど、症状が出るとすれば他の腎臓病と共通するサインばかりで、痛風腎に特有な症状はありません。 検査所見でも、尿検査でタンパク尿や尿潜血反応が出る、血清クレアチニン値が上がる等、一般的な慢性腎臓病(CKD)と同様の所見を示します(文献2)。 また、痛風のある方は前述のように高血圧、脂質異常症、耐糖能異常(糖尿病予備軍)など複数の生活習慣病を併せ持つことが非常に多いです。 そのため、痛風そのものによる腎障害(尿酸結晶による腎炎)に加えて、そうした生活習慣病が原因となる腎障害(たとえば高血圧性腎硬化症や糖尿病性腎症)が合わさり、より腎機能を悪化させているケースもしばしばあります。 痛風腎を予防・進行抑制するためには高尿酸血症を適切な治療をすると同時に、合併している生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)の管理に努めることが重要です。 \まずは当院にお問い合わせください/ CKD(慢性腎臓病)とは CKD(慢性腎臓病)は腎機能の低下や腎障害が3か月以上続く状態で、日本では成人の7~8人に1人が該当するとされています(文献3)(文献4)。 代表的な原因は糖尿病や高血圧などで、自覚症状が乏しいため定期的な検査が重要です。CKD患者では腎機能低下により尿酸の排泄がうまくいかず、尿酸値が上昇する傾向があります。 一方で、高尿酸血症の人はCKDを合併しやすいこともわかっており、尿酸値を適正にコントロールすることが腎機能を守る上で重要です。 日本腎臓学会のガイドラインでは、高尿酸血症を伴うCKD患者に対して、血液中の尿酸値を下げるために行う尿酸降下療法の施術を考慮しても良いとされてます。尿酸と腎臓は密接に関係しているため、双方を総合的に管理することが求められます。(文献5) \まずは当院にお問い合わせください/ 痛風・腎臓病を予防する生活習慣の改善 高尿酸血症や腎臓病を予防・改善するためには、日常生活での取り組みが非常に大切です。 ここでは、尿酸値と腎臓の健康を守るために有効な生活改善のポイントをまとめます。どれも今日から実践できる内容ですので、無理のない範囲で取り入れてみましょう。 食事・水分摂取で予防する プリン体の摂取量を減らし、尿酸の産生を抑えることが基本です。 ビールなどのアルコール類やレバー・干物・魚卵といった高プリン体食品は頻度と量を控えめにし、主菜は鶏むね肉や白身魚を少量、野菜・海藻・大豆製品をたっぷり組み合わせ、タンパク質と食物繊維が豊富な食事を意識しましょう。 また、尿酸を体外へ流すには尿量の確保が不可欠です。水やお茶を1日1.5〜2リットルを目安にこまめに補給し、朝起きた直後・入浴前後・就寝前は必ずコップ1杯の水を飲むなど、ルールを決めてやってみましょう。 適度な運動・体重管理で予防する ウォーキングや早歩き、軽いジョギング、水泳などの有酸素運動を週3〜5回・1回30分程度続けると、エネルギー代謝が上がり肥満を防げる上、血糖値・血圧も整い尿酸値のコントロールに直結します。 筋トレはスクワットや腹筋など自重中心に無理なく行い筋肉量を維持しましょう。ただし、息を止めるような激しい無酸素運動は一時的に尿酸値を跳ね上げるため控えめに。 肥満は尿酸の産生過多と排泄低下の両方を招くので、BMI25以上の人は食事改善と運動を組み合わせ月1kgペースで減量を目標にします。 加えて高血圧・糖尿病・脂質異常症を放置すると腎臓への負担が倍増し痛風腎やCKD進行を招く恐れがあるため(文献2)、塩分を控えた食事・適正カロリー・血糖コントロールを徹底し、必要なら医師の治療を受けることが重要です。 ストレスの軽減・睡眠で予防する ストレスが強いと交感神経が優位になり、コルチゾール分泌が増えてプリン体代謝が活発化し尿酸値が上昇しやすくなります。 さらに睡眠不足が続くとホルモンバランスが乱れ、血圧上昇や食欲増進による体重増加が重なって腎臓への負担も増加します。 毎日30分の軽いストレッチや深呼吸、ぬるめの入浴でリラックスし、趣味や散歩など「自分が楽しい」と感じる時間を意識的に確保しましょう。就寝1時間前にはスマホを手放し、室内を暗めにしてメラトニン分泌を促進すると自然に眠りにつけます。 以上のポイントを実践することで、尿酸値のコントロールと腎臓の保護につながります。最初は難しく感じるかもしれませんが、できることから少しずつ取り組んでいきましょう。 まとめ|尿酸値を下げて腎臓を守るために生活習慣を改善しよう 尿酸は高すぎると痛風になるだけでなく、腎臓にも悪影響を及ぼす可能性があります。 腎臓は尿酸を排泄する臓器であり、腎機能が低下すると尿酸が溜まってしまうため、お互いに影響し合う「持ちつ持たれつ」の関係にあります。尿酸値が高めと言われた方は、ぜひ一度腎臓の検査も受けてみてください。 逆に腎臓が悪いと言われた方も尿酸値の管理に注意が必要です。幸い、高尿酸血症や慢性腎臓病は生活習慣の改善や適切な治療によって予防・進行抑制が可能ですので、食事の工夫や運動習慣、定期検査など、できることから始めてみましょう。 日々の積み重ねが将来の健康につながります。もし不安なことやわからないことがあれば、遠慮せず主治医に相談してください。あなたの大切な腎臓を守り、痛風や腎不全にならないよう、今日からぜひ予防に取り組んでいきましょう。 参考文献 (文献1)腎援隊「クレアチニンやeGFRとは、どのような検査値ですか?」家族と考える慢性腎臓病サイト 腎援隊.https://jinentai.com/doctor_qas/post_14.html(最終アクセス:2025年04月22日) (文献2)日本腎臓学会「痛風腎とは?」日本腎臓学会 ホームページ.https://jsn.or.jp/global/general/_3204.php.(最終アクセス:2025年04月22日) (文献3)阿部雅紀ほか.「CKD診療ガイドライン2023」『日大医誌』82(6), pp.319‑324, 2023年.https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/82/6/82_319/_pdf.(最終アクセス:2025年04月22日) (文献4)東京都保健医療局「CKDってどんな病気?」東京都保健医療局.https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shippei/ckd/p2.html.(最終アクセス:2025年04月22日) (文献5)日本腎臓学会「CKD診療ガイドライン2024」日本腎臓学会 ホームページ.https://jsn.or.jp/data/gl2024_ckd_ch05.pdf.(最終アクセス:2025年04月29日)
2025.04.30 -
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大腸がんは、部位別のがん発生率で男女どちらも上位に位置しており、女性ではがんによる死亡数が最も多い病気です。(文献1) とくに、初期には自覚症状がほとんどないため発見が遅れやすく、進行すると治療の選択肢が限られてしまいます。 自分や家族の健康を守るためにも、大腸がんのリスクを正しく知り、早期発見・予防につなげていきましょう。 本記事では、大腸がんの主な原因や発症リスクの高い人の特徴、見逃しやすい症状、検査方法などを詳しく解説しますので、参考にしてみてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、さまざまな病気の治療に応用されている再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 気になる症状がある方は、ぜひ一度ご利用ください。 大腸がんの原因は何?なりやすい人の特徴 大腸がんになる可能性を高める要因には、ストレス・食生活・年齢など複数の特徴的な背景があります。さまざまな要因が重なる人ほどリスクが高まるため、早めに把握して改善していくことが大切です。 ここでは、大腸がんの原因をひとつずつ掘り下げて解説します。 ストレス|直腸がんの発症率に影響 強い心理的ストレスは、直腸がんの発症リスクを高める可能性があります。ストレスは免疫機能を低下させ、喫煙・飲酒・暴飲暴食といった生活習慣の悪化を招く場合があるのです。 日本人約6万人を対象にした追跡調査では、「心理的ストレスが高い人ほど直腸がんの発症率に影響があった」と報告されています。(文献2) また、女性に限定した別の研究では、ストレスを自覚している人の大腸がんによる死亡リスクが、ストレスを感じていない人に比べて 1.64倍に上昇したと報告されています。(文献3) ストレスだけで大腸がんになるわけではありませんが、発症リスクを間接的に押し上げる一因です。趣味に没頭する時間を設けるなど、自身に合ったストレス管理を心がけると良いでしょう。 食生活|野菜や食物繊維が不足しがちな食事 近年、日本を含む先進国では大腸がんの発症率が上昇傾向にあり、50歳未満の比較的若い世代での大腸がん増加が世界的に報告されています。 食生活の欧米化が背景にあると考えられており、肉類(とくに赤身肉や加工肉)中心で野菜や食物繊維が不足しがちな食事は、大腸がんのリスクを高める可能性があるわけです。 若年層での発症が増えている傾向を食い止めるためにも、日頃の食習慣を見直し、バランスの良い食事を心がけることが大切です。 発症年齢|高齢になるほど高い罹患率 国立がん研究センターの統計では、大腸がんの罹患率は40代から徐々に増加し、年齢を重ねるごとに罹患率は高くなる傾向を示しています。(文献5) 自治体などの検診が40歳から始まることも、40代以降に発見される一因と考えられます。 しかし、数は多くないものの、20代や30代で発症するケースもあるため、若いから無関係とはいえません。腹部の不調が続くなど、気になる症状があれば、30代から検査を受けておきましょう。 なお、大腸がんは年齢によって進行速度に違いがあるといわれます。詳しくは、以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。 運動不足|肥満による影響 運動の少なさや肥満傾向も、大腸がんのリスクを高めます。身体をあまり動かさない生活が続くと腸の働きが鈍くなり、腸内に有害物質が停滞しやすくなるのです。 肥満そのものもホルモンバランスの乱れや慢性炎症を通じて、がん発生の要因になると考えられており、大腸がんの発生率が高いことが報告されています。(文献6) 喫煙と飲酒|さまざまなガンのリスク 喫煙習慣や過度の飲酒も、大腸がんのリスクを上げると明らかになっています。 喫煙といえば肺がんの原因として知られていますが、たばこに含まれる有害物質が血流を通じて全身に巡るため、大腸の細胞にも悪影響を及ぼすわけです。 国立がん研究センターの研究によると、喫煙者は非喫煙者に比べ大腸がんの発生率が高い傾向が認められています。(文献7) また、アルコールと体内で代謝されてできるアセトアルデヒドには発がん性があり、大量の飲酒習慣は大腸がんの危険性を高めるため注意が必要です。日常的にタバコやお酒を嗜む方は、大腸がんを含むさまざまながん予防のためにも、禁煙・節酒を意識しましょう。 遺伝的要因|家族の発症歴との関連 大腸がんには、遺伝的な要因も一部存在します。家族性大腸腺腫症やリンチ症候群といった遺伝性疾患のある家系では、若いうちから大腸がんを発症する率が高いとされています。 また、遺伝的要因とは別に、炎症性腸疾患と総称される難治性の腸の病気(潰瘍性大腸炎やクローン病など)を患っている人も要注意です。大腸に慢性的な炎症がある状態が続くため、大腸がんの発生率が上がることがわかっています。(文献8) とくに、家族歴がある方や腸の持病がある方は、定期検診を欠かさず早期発見に努めましょう。 高身長|大腸がん・結腸がんのリスクが高い 高身長の人は、大腸がんや結腸がんのリスクが高くなることが明らかになっています。成長に関与するホルモンや体内の細胞分裂の頻度などが関連していると考えられています。 国立がん研究センターの疫学研究によると、最も身長が高い群(男性170cm以上、女性157cm以上)は、最も低い群(男性160cm未満、女性148cm未満)と比較して、大腸がん全体のリスクが男性で1.23倍、女性で1.21倍と報告しています。(文献13) また、遠位結腸がんでは、女性で1.35倍と高い傾向が示されました。身長は変えられませんが、定期的に検診を受けるなど、予防的行動を取ることが重要です。 炎症性腸疾患|長期間炎症が続くと大腸がんを合併する 炎症性腸疾患(IBD)を長期間患っている人は、大腸がんを合併するリスクが高まります。 潰瘍性大腸炎やクローン病など、慢性的に腸管に炎症が生じる病気では、腸粘膜の細胞が繰り返し傷つけられ、遺伝子変異が蓄積してがん化の可能性が高まるのです。 症状が安定していても、自己判断で治療を中断せず、医師の管理のもと継続的に炎症を抑えていきましょう。 コリバクチン毒素|若い人の大腸がん発症要因の可能性 近年の研究で、大腸内の一部の腸内細菌が産生する「コリバクチン」という毒素が、若年層の大腸がん発症と関係している可能性が示されました。 コリバクチンはDNAを損傷する性質があり、大腸がん初期段階で見られる遺伝子変異「APC変異」の一部が、コリバクチンに由来することが明らかになっているのです。 国際共同研究では、50歳未満の若年性大腸がん患者に、コリバクチン毒素による特徴的な変異パターンがあると報告されました。(文献14) 若年層のがん発症は生活習慣だけでなく、腸内環境や微生物との関連も強く示唆されており、今後の予防や治療法開発に大きな影響を与えるとされています。(文献14) 大腸がんを早期発見するための2つのポイント 大腸がんは、早期のうちに発見できれば高い確率で治癒が望めます。ただし、初期段階では症状がほとんど出ないため、発見が遅れるケースも少なくありません。 ここでは、大腸がんを早期発見するための2つのポイントを解説します。 初期症状に該当するかチェックする 大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどなく、少し進行してからようやく異変に気づくケースがあります。(文献9)。 以下に、大腸がんの代表的な症状をまとめたので、思い当たるものがないかチェックしてみましょう。 初期症状 チェックポイント 便に血が混じる、または便の表面に血が付着する 血便・下血と呼ばれる症状です。大腸がんが進行すると腸管内で出血が起こり、排泄物に鮮紅色もしくは暗赤色の血液が混ざることがあります。 痔など良性疾患でも起こる症状ですが注意が必要です。 貧血の症状が出る 大腸がんからの出血が断続的に続くと慢性的な貧血状態になります。 立ちくらみやめまい、動悸・息切れ、顔色の悪さなど貧血のサインが現れることがあります。 便通の変化(下痢や便秘を繰り返す)や便の形状変化 腸管が狭くなるために便秘と下痢を交互に繰り返したり、便が細くなったりする場合があります。 また常に残便感(出し切れていない感じ)があるのも特徴です。 お腹の張りや痛み 腸にガスや便が溜まりやすくなることで腹部膨満感を感じたり、腫瘍が大きくなるとお腹が痛くなることもあります。 進行した場合、腸閉塞(腸詰まり)を起こして激しい腹痛や嘔吐を引き起こすこともあります。 頻度が高いのは血便や下血ですが、痔など良性の病気でも起こり得るため、自己判断して放置してしまう例も少なくありません。 上記のような症状に心当たりがある場合は、お早めに消化器科・胃腸科・肛門科など専門医を受診しましょう。 大腸がんの初期症状については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。 定期的に健康診断を受ける 大腸がんを早期発見するには、自覚症状だけに頼らず、定期的に大腸がん検診を受けることが重要です。 日本では、40歳以上の男女に対し、年に1回の大腸がん検診受診が推奨されています。(文献9) 市区町村によっては、集団検診や職場健診で便潜血検査を実施しており、多くの場合費用の一部または全額が公費負担です。 大腸がん検診は主に問診と便潜血検査で、痛みもなく短時間で終わります。 手軽に受けられる検査なので、忙しくて時間がない方も年に一度はスケジュールを確保して受診しましょう。 大腸がんの原因になりやすい食べ物|男性・女性 特定の食べ物の摂取は大腸がん、とくに結腸がんの発症リスクに影響を及ぼすことが報告されています。 なかでも、赤肉(牛肉や豚肉)や肉類全体の摂取量が多いと、性別によって異なる影響をもたらす可能性があるため注意が必要です。 国立がん研究センターによると、女性で赤肉を1日あたり約80g以上食べているグループでは、結腸がんのリスクが高まる傾向が認められました。 一方、男性では、肉類全体の摂取量が1日約100g以上のグループにおいて、結腸がんのリスク上昇が確認されています。 なお、ハムやソーセージなどの加工肉については、日本人の一般的な摂取量の範囲内では男女ともに、統計的に有意な大腸がんリスクの上昇は見られなかったという結果も報告されています。(文献15) 大腸がんのリスクを下げる5つの予防方法 生活習慣の影響が大きい大腸がんは、日々の習慣を改善すると予防効果が期待できます。 日常生活で取り組める大腸がん予防策を解説するので、できることから取り組んでみましょう。 ストレスを適切にコントロールする ストレスは、大腸がんの間接的なリスクとなりうるため、上手に付き合っていかなければなりません。 心身の健康を保つには、まず十分な睡眠時間を確保し、生活リズムを整えるのが基本です。 また、自身に合ったストレス解消法を日常生活に取り入れるのも一つの方法です。 たとえば、以下のようなものが挙げられます。 ウォーキングやストレッチなどの軽い運動 読書や音楽鑑賞といった趣味の時間 親しい友人や家族との会話 すべてを完璧におこなう必要はないので、無理のない範囲で自分が心地よいと感じる方法を見つけてみましょう。 食物繊維を十分に摂る 食習慣の見直しは、大腸がん予防の柱となります。 まず、食物繊維を十分に摂取するよう心がけましょう。 野菜や果物、海藻、豆類、全粒穀物(玄米や全粒パンなど)には食物繊維が豊富に含まれており、食物繊維の摂取量が多い人ほど大腸がんの発症リスクが16〜24%低いとの研究結果も報告されています。(文献4) 日々の食事を見直し、大腸がんになりにくい食生活を意識しましょう。 運動習慣を身につける 定期的な運動習慣は、大腸がんのリスクを低減させる上で役立つと考えられています。 運動によって腸の動きが活発化し、便に含まれる有害物質が腸の粘膜に接触する時間を短くできるのが理由です。 実際に運動習慣がある人では、大腸がんの発症リスクが低下するとの報告もあります。(文献6) また、運動は肥満の解消や適正体重の維持にもつながります。 肥満はリスク要因のひとつであり、とくに糖尿病の人は大腸がんのリスクが1.4倍高まるとのデータも示されています。(文献4) まずは、毎日30分程度のウォーキングなど、継続しやすいものから始めてみましょう。 禁煙する タバコを吸う人は、禁煙しましょう。 喫煙は、大腸がんを含むすべてのがんのリスクを高める最大要因のひとつです。(文献7) タールやニコチンなどタバコに含まれる有害物質は、吸い込んだ肺だけでなく、血液を介して大腸の粘膜にも届き、細胞を傷つけDNAにダメージを与えます。 禁煙によって肺がんはもちろん、大腸がんやその他のがんになる確率も時間とともに減少していくことがわかっています。(文献10) 禁煙開始直後はストレスを感じるかもしれませんが、禁煙外来の活用やニコチンパッチ・ガムなど補助剤の利用も有効です。 がんにならない健康な体づくりの一環として、ぜひ禁煙にチャレンジしてみてください。 飲酒は適量を心がける お酒を嗜む方は、飲みすぎに注意しましょう。 過度の飲酒習慣は、大腸がんのリスクを高めます。(文献7) 一般的に節度ある適量の目安は、ビール中瓶1本または日本酒1合程度です。 適量を超える連日の飲酒は控え、飲む頻度も週に2日は休肝日を設けることが推奨されています。 また、お酒以外のリラックス法を見つけ、飲酒量を徐々に減らす努力が大切です。 適切な飲酒量の管理は大腸がんのみならず、肝臓や膵臓など他の臓器のがんにも関係していきます。 健康を維持するためにも、飲酒量には十分に注意しましょう。 大腸がんの主な症状 大腸がんは初期段階では目立った自覚症状がなく、進行するにつれてさまざまな症状が現れます。 ここでは、大腸がんの主な症状を見ていきましょう。 血便 大腸がんが進行すると、腫瘍部からの出血により便に血が混じる「血便」が起こる場合があります。 肛門に近い直腸がんは、鮮やかな赤色の血が便に見えることが多いほか、結腸のがんでは便と混ざって肉眼では気付きにくい場合があります。 出血が続くと慢性的な貧血につながるため、痔と判断せず早めに検査を受けましょう。 出血だけでがんと確定できるわけではないですが、便に血が付着する・色が変わるなどの異変があるなら要注意です。 便秘・下痢 大腸がんの腫瘍が大腸の内腔(中の空間)を狭めると、排便のリズムが乱れ、便秘と下痢を繰り返す可能性があります。 また、便が細くなったり、コロコロした便、残便感(排便後もまだ便が残っているような感じ)も併発します。 便通の異常は、消化器の他の疾患やホルモン異常でも起こり得るため、専門医に評価してもらうことが重要です。 大腸がんと便の関係については、以下の記事でも詳しく解説しています。 体重減少 大腸がんが進行すると、腸を通過する便の流れが妨げられ、食事量が減少したり、がん細胞から分泌される物質により代謝が変化したりして、体重が減少する場合があります。 食事や運動量に大きな変化がないにもかかわらず、痩せてきた場合は、早めに検査を受けましょう。 貧血 大腸がんによって持続的に出血したり、食欲不振・栄養不良が続いたりすると、鉄欠乏性貧血を伴うケースがあります。 とくに、血便と併発してめまい・動悸・息切れなどの症状が出た場合には、がんの可能性を含めた精査が必要です。 貧血とひと口にいっても、原因は多岐にわたるため、自分で判断せず医師に相談しましょう。 お腹のはり・しこり 腫瘍が大きくなって腸内で便やガスの通過が悪くなると、お腹の張り(腹部膨満感)や違和感が現れるのが特徴です。比較的進行した段階では、腹部を触った際にしこりを感じる場合もあります。 なかでも、右側大腸(盲腸・上行結腸)にがんが出来ると自覚症状が出にくく、腹部の張りや貧血をきっかけに発見されるケースも少なくありません。 お腹が張る・しこりがあるという違和感があれば、早めに受診しましょう。 大腸がんの症状については、以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。 大腸がんの検査方法 大腸がんの早期発見には、定期的な検査が不可欠です。 ここでは、大腸がんで多くの医療機関が採用している代表的な検査方法を見ていきましょう。 便潜血検査 便潜血検査は、便の中に肉眼では見えない微量の血液が含まれていないかを調べる検査です。 大腸がんやポリープなどの病変があると、腸内でわずかな出血を起こし、便に混ざる場合があります。便潜血検査では、専用の試薬を使って血液の痕跡を化学的に検出可能です。 検査方法は、自宅で便を少量採取し、検査キットに塗布して提出します。 検査の結果、「陽性(血液反応あり)」であっても、必ずしも大腸がんとは限りません。痔や月経血の混入などによる「偽陽性」の可能性もあるため、陽性となった場合でも落ち着いて精密検査(大腸内視鏡など)を受けましょう。(文献9) また、「陰性」だからといっても完全に安心とは限らず、ごく初期のがんが見逃されているケースがあります。年1回は定期的に便潜血検査を受け、早期発見に努めていきましょう。 大腸内視鏡検査 大腸内視鏡検査では、肛門から細長い内視鏡(先端にカメラの付いた管)を挿入し、大腸内の粘膜を直接観察します。 便潜血検査よりも精度が高く、大腸がんの確定診断や早期の病変発見に有効です。 検査前日から専用の下剤を服用して腸内を洗浄し、当日は腸に空気や水を入れてふくらませながら、腸壁のすみずみまで確認します。 がんが疑われる場合や便潜血検査が陽性だった場合に実施されることが多く、医師が検査中にポリープを発見すれば、その場で切除することも可能です。(文献9) 採取した組織は、病理検査で詳しく分析され、良性か悪性かを診断します。 最近では鎮静剤を使用し、眠った状態で検査を受けられる医療機関も多く、苦痛を感じにくい工夫が進んでいます。 大腸内視鏡検査は半日から1日かかる場合もありますが、がんの早期発見と同時に治療もできる点で有用です。 なお、症状が強い場合は、便潜血を待たずに直接内視鏡検査を行うケースもあります。 大腸がんと大腸ポリープの違いについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。 大腸がんの治療方法 大腸がんの治療は、がんの進行度や体の状態に応じて、以下の4つの方法があります。 内視鏡治療 薬物療法(化学療法) 放射線治療 手術療法 免疫療法 再生医療 では、それぞれの治療法について詳しく見ていきましょう。 内視鏡治療 内視鏡治療は、がんが腸の粘膜内にとどまっているような早い段階(ステージ0〜I期)で発見された場合に選択される治療法です。 お腹を切る必要がなく、肛門から内視鏡(カメラ)を挿入し、モニターで確認しながらがんやポリープを切除します。 体への負担が少ないため、入院期間も2〜3日程度で済むケースがほとんどです。また、お腹に傷が残らず、回復が早いといった利点もあります。 ただし、がんの大きさや深さによっては、手術療法が必要と判断されるケースがあります。 薬物療法(化学療法) 薬物療法は、抗がん剤や分子標的薬を使ってがん細胞の増殖を抑える治療法です。 以下のような場合に用いられます。 手術後の再発予防(術後補助化学療法) 手術前にがんを小さくする目的(術前化学療法) 切除できない進行がんや再発がんの治療 他の臓器に転移がある場合 主に以下の薬剤が使用されます。 抗がん剤:5FU系薬剤、オキサリプラチン、イリノテカンなど 分子標的薬:ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブなど 治療は点滴や内服で行われ、複数の薬剤を組み合わせることが一般的です。副作用には吐き気、下痢、手足のしびれ、皮膚症状などがありますが、吐き気止めなどの薬を使うことで軽減できる場合が多くあります。 放射線治療 放射線治療は、高エネルギーの放射線をがん細胞に照射して死滅させる治療法です。 大腸がんでは主に以下の場合に用いられます。 直腸がんの手術前治療(がんを小さくして切除しやすくする) 直腸がんの術後再発予防 骨やリンパ節への転移による痛みの緩和 手術が困難な局所進行がんの制御 直腸がんでは、化学療法と併用する「化学放射線療法」が標準治療として行われることがあります。 治療は通常、平日に毎日少しずつ照射し、数週間かけて行います。副作用には、照射部位の皮膚炎、下痢、頻尿、疲労感などがありますが、多くは治療終了後に改善します。 手術療法 手術療法は、がんが腸の壁の深くまで達していたり、リンパ節に転移したりしている可能性があるステージI〜IIIで行われる治療法です。 がん細胞が含まれる腸管と、その周囲のリンパ節を一緒に切除します。 手術の方法は、以下の2つの術式があります。 術式 概要 腹腔鏡手術 お腹に小さな穴を開けておこなう 開腹手術 お腹を切り開いておこなう 進行状況によっては、一時的に人工肛門(ストーマ)を造設する場合もあり、手術後に再びつなぎ合わせるケースも少なくありません。 また、手術後には再発を防ぐ目的で、半年ほど抗がん剤などを用いた補助化学療法を行う場合があります。 免疫療法 免疫療法は、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。 現在、大腸がんの治療に効果があると証明されている免疫療法は、「免疫チェックポイント阻害薬」です。 ただし、すべての大腸がんに有効ではなく、以下のケースに該当する場合にのみ効果があるとされています。 遺伝子に入った傷を修復する機能が働きにくい状態 がん細胞中の遺伝子変異の量が多い状態 なお現段階で、免疫チェックポイント阻害薬以外の免疫療法は、大腸がんに対して効果が証明されていません。(文献11) 再生医療 近年、さまざまな病気の治療で「再生医療」が用いられています。 再生医療とは、自身の細胞を用いて身体の機能を整える治療法です。大腸がんにおいても、発症や再発のリスクを抑える目的で再生医療が選択肢になるケースがあります。 患者様ご自身の免疫細胞の働きを高める「免疫細胞療法」もその1つです。 血液から免疫細胞を採取し、体外でその数を増やし活性化させてから再び体内に戻す治療法で、体への負担を抑えられるのが特徴です。 免疫細胞療法について、詳しくは下記のページをご覧ください。 まとめ|大腸がんの原因を理解して生活習慣を見直そう 大腸がんは怖い病気ですが、原因となるストレスや食生活などの生活習慣を見直せば、予防が可能です。 日々のストレスを減らし、バランスの良い食事と適度な運動を心がけることは、大腸がんのみならず他の病気の予防にもつながります。 忙しいからと後回しにせず、できる範囲で生活習慣を改善していくことが大切です。 また、40歳を過ぎたら定期検診を受け、早期発見に努めていきましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、さまざまな治療に利用されている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。ぜひご登録いただき、ご活用ください。 大腸がんの原因に関するよくある質問 大腸がんに気づいたきっかけは何が多いですか? 大腸がんは初期症状がほとんど出ないため、自身の判断で気づくのは難しいといわれています。発見に至るきっかけで多く挙げられるのは、会社の健康診断や自治体の検診で行う「便潜血検査」です。 検査で陽性反応が出た場合は大腸内視鏡検査を行い、大腸がんと診断されるケースがあります。 日本においては、40歳になると大腸がん検診の対象となるため、検診をきっかけに発見される方も少なくありません。ただし、30代でも発症する可能性はあるため、血便や長引く便秘・下痢、腹痛といった症状が続く場合は、専門機関の受診を検討しましょう。 50代で大腸がんになる確率はどれぐらいですか? 国立がん研究センターの報告によると、50代で1年間に大腸がんと診断される人数は、10万人あたり男性がおよそ120人、女性がおよそ75人です。(文献12) 確率に換算すると、男性は約0.12%、女性は約0.075%となります。男性であれば約833人に1人、女性では約1,333人に1人が50代のうちに罹患する計算になります。 参考文献 (文献1) 最新がん統計|国立がん研究センター (文献2) Perceived Stress and Colorectal Cancer Incidence: The Japan Collaborative Cohort Study|Scientific Reports (文献3) Perceived Psychologic Stress and Colorectal Cancer Mortality: Findings From the Japan Collaborative Cohort Study|Psychosomatic Medicine (文献4) 糖尿病の人は大腸がんリスクが高い 大腸がんは50歳未満の若い人でも増加 予防に役立つ3つの食品とは?|糖尿病ネットワーク (文献5) がん種別統計情報 大腸|国立がん研究センター (文献6) 身体活動量と大腸がん罹患との関連について|国立がん研究センター (文献7) お酒・たばこと大腸がんの関連について|国立がん研究センター (文献8) 大腸がん(結腸がん・直腸がん)について|国立がん研究センター (文献9) 大腸がん(結腸がん・直腸がん)予防・検診|国立がん研究センター (文献10) がんゲノムビッグデータから喫煙による遺伝子異常を同定|国立がん研究センター (文献11) 大腸がん(結腸がん・直腸がん)治療|国立がん研究センター (文献12) 大腸がんファクトシート2024|国立がん研究センター がん対策研究所 (文献13) 科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究|国立がん研究センター (文献14) 日本人大腸がん患者さんの5割に特徴的な腸内細菌による発がん要因を発見|国立がん研究センター (文献15) 赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて|国立がん研究センター
2025.04.30 -
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- 内科疾患、その他
「寝ても寝ても眠い状態が続く」 「眠いのは貧血も関係していると聞いた」 「貧血の検査を受けた方が良いのだろうか」 このように悩まれている方は多いでしょう。女性の場合、月経前後や月経中に眠気が強くなる方も少なくありません。 本記事では、貧血で眠くなる理由や対処法を解説します。セルフケアを続けても眠気が続く場合や、眠気が強くなる場合は、専門医に相談してみましょう。 いつも眠い理由は貧血のせいかもしれません! 眠気が続く原因として、貧血が考えられます。 貧血が眠気を引き起こす理由は、主に以下の3つです。 血液中の酸素不足 睡眠の質の低下 月経の影響 血液中の酸素不足 貧血とは、赤血球の中にあるヘモグロビンの量が不足した状態です。ヘモグロビンは、血液に酸素を行きわたらせる働きがあります。 貧血によりヘモグロビンが不足すると、血液中の酸素が不足し、その影響で脳の活動も低下します。眠気は、脳の活動低下によるものです。そのほかにも判断力の低下や頭がぼんやりするなどの症状があらわれます。 貧血の方は、体内への酸素運搬能力が低下しているため、筋肉や他の組織もエネルギー不足の状態です。そのため、通常の日常生活でも疲れやすくなっています。 貧血の症状については、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 睡眠の質の低下 貧血が原因で、睡眠の質が低下するケースもあります。代表的なものが、むずむず脚症候群です。 むずむず脚症候群とは、脚の奥に不快な感覚が生じるものです。不快な感覚としては、主に以下のようなものがあげられます。 むずむずする ピリピリする 虫が這っているような感じがする かゆみがある むずむず脚症候群の特徴は、安静にしていると症状が出現もしくは増強し、足を動かすと症状が軽減される点です。 夜に症状が出現しやすいため、寝付けなかったり、何度も目が覚めたりします。そのため睡眠の質が低下して、眠い状況が続くのです。 月経の影響 女性の場合は、月経も眠気に関連しています。 女性は月経による出血が毎月あるため体内から鉄分が失われることが多く、鉄欠乏性貧血を引き起こしやすいです。そのため、体内で酸素不足が起きやすく、眠気を生じやすいといえます。 1回の月経による出血量は、20〜140mlが正常範囲であり、140ml以上の出血があると月経過多状態とされます。(文献1) また、月経前の2週間はとくに眠気を生じやすい時期です。ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れ、体温変動の少なさなどが、理由としてあげられます。 貧血が原因で眠いときの対処法 貧血が原因で眠いときの対処法としてあげられるのは、主に以下の2つです。 生活リズムの見直し 食生活の見直し 生活リズムの見直し 眠いときの対処法の1つが、生活リズム、とくに睡眠リズムの見直しです。 起床後すぐに日光を浴びると体内時計がリセットされ、睡眠と覚醒のリズムが整います。 日中、光を多く浴びることにより入眠前に「メラトニン」が適切に分泌されます。メラトニンは、就寝の1~2時間前に眠気をもよおすホルモンです。(文献2) 眠気が出てきたタイミングで寝室に入り、静かな環境で就寝すると、質の良い睡眠が得られます。睡眠の質が高まると、眠気の改善に繋がります。 就寝前にスマートフォンやタブレット、パソコンなどの強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制されて、睡眠が妨げられます。スマートフォンやタブレットを寝室に持ち込むことは、睡眠の質低下につながるため、おすすめできません。 食生活の見直し 貧血の多くは、体内の鉄分不足による鉄欠乏性貧血です。毎日の食事を通じて、鉄分やビタミンB12、ビタミンC、葉酸、タンパク質など赤血球やヘモグロビンの材料になるものを摂り続けましょう。 貧血が改善されると、眠気が軽減する可能性も高まります。 食生活の見直しについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。 医師に相談すべき眠気の症状 前章で紹介した対処法を試してもなお眠気が続く場合や、この章で紹介する症状がある場合は、放置せずに医療機関を受診し、医師に相談しましょう。 眠気のため気絶してしまう 貧血が重度の場合、強い眠気や疲労感が生じます。血液中の酸素不足により、脳の血流量が低下し、結果として脳が正常に機能するためのエネルギーが失われるためです。 脳の血流量が減少すると、一時的に意識を失ってしまうこともあります。いわゆる「気絶」「失神」と呼ばれる症状です。 眠気以外に動悸や息切れといった症状がある 平担な道を歩いているだけで動悸や息切れがする場合は、貧血が重症化している可能性があります。 貧血が進行すると、体内への酸素供給量も低下し、平地を歩くといった軽い動作でも体に負担がかかります。酸素供給量を増やすため、平常時よりも心臓の動きが速くなったために生じるのが動悸です。 酸素供給量低下によるもう1つの症状が、息切れ(呼吸困難)です。貧血の方は、血液中の酸素量を増やすため、速く深い呼吸になっています。 貧血で強い眠気を感じる場合は専門医に相談しよう 貧血は血液中のヘモグロビン値が低下して、身体が酸素不足になっている状態です。身体が酸素不足であるために、結果として脳の活動も低下して、眠気につながります。 貧血によりむずむず脚症候群が引き起こされると、睡眠の質が低下します。これも眠気につながる原因の1つです。 女性の場合、月経のために鉄欠乏性貧血を起こしやすく、月経周期の関係で眠くなることもあります。 本記事で紹介した対処法を実践しても眠気が続く場合や、気絶する、動悸・息切れが強いときなどは、貧血が重症化していることが考えられるため、医療機関を受診しましょう。 リペアセルクリニックでは、貧血治療に関するご相談にも対応いたします。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。 貧血と眠気に関するよくある質問 貧血のため眠いと感じるときは何科を受診すると良いでしょうか 最初は内科を受診すると良いでしょう。血液検査で、ヘモグロビンや赤血球数といった貧血関連の数値を調べて、必要であれば総合病院や大学病院などの血液内科を受診する流れです。この場合、内科医師が紹介状を書くことが一般的です。 女性の方で、「生理中に貧血のような症状がある」「生理中に眠気が強くなる」などの状況であれば、婦人科受診も選択肢として考えられます。 貧血で眠いのは鉄剤の副作用でしょうか? 鉄剤の主な副作用は、吐き気や胸やけ、腹痛といった消化器症状です。他にも湿疹や皮膚のかゆみなどの副作用があります。 眠いのは、貧血による影響が強いと考えられます。 薬について不安や心配ごとがある場合は、主治医もしくは薬剤師に相談しましょう。 参考文献 (文献1) 札幌大谷大学・札幌大谷大学短期大学部 保健室「月経時、出血量が多く悩んでいませんか?」2024年 https://www.sapporo-otani.ac.jp/wp/wp-content/themes/sapporo-otani/images/campuslife/support/hokehshitu_letter_2411.pdf(最終アクセス:2025年4月18日) (文献2) 厚生労働省「眠りのメカニズム」健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~, 2023年01月23日 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-002.html(最終アクセス:2025年6月5日)
2025.04.30 -
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「立ちくらみやめまいが続く」 「病院で貧血と診断された」 「食べ物に注意するように言われたけれど、何が良いのだろう?」 このようにお悩みの方も多いことでしょう。 貧血に良い食べ物の代表は、鉄分を多く含む食材です。ビタミンCや良質なタンパク質は、鉄分の吸収を助けます。 本記事では、貧血に良い食べ物を摂取する理由や、鉄分の種類などを中心に解説します。 外食時やコンビニ利用時における、貧血に良い食べ物の選び方も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 貧血について気になる症状がある方は、公式LINEにご登録ください。 貧血に良い食べ物を摂取すべき理由 貧血に良い食べ物を摂取すべき理由は、身体機能を維持するためです。 貧血とは、血液中のヘモグロビン値の低下により、全身が酸素不足になる状態を指します。貧血の中で最も多いものが、体内での鉄分不足による鉄欠乏性貧血です。(文献1) 体内での鉄分量は3〜4gであり、約70%は赤血球内のヘモグロビンの材料として使われています。(文献2) 鉄分は毎日微量ながらも、細胞の新陳代謝により失われます。とくに女性は、月経や妊娠・出産によって鉄分を失いやすい状態です。失われた鉄分をなんらかの形で補わないと、鉄欠乏性貧血のリスクが高まります。 鉄欠乏性貧血により体内が酸素不足になると、息切れや動悸、めまいといった症状が生じるほか、心臓や脳にも負担がかかります。 心臓や脳などに大きな負担をかけないためにも、貧血に良い食べ物を摂取するように心がけましょう。 貧血の症状や鉄欠乏性以外の貧血については、以下の記事で詳しく書かれています。あわせてご覧ください。 【関連記事】 貧血の症状一覧|原因や治療法についても医師が詳しく解説 貧血の数値はどこから危険?血液検査における基準値と体のサインを医師が解説 貧血に良い食べ物一覧 一般的に貧血に良い食べ物としてあげられるのは、鉄分を多く含む食材です。ここでは、鉄分の多い食材を動物性食品と植物性食品に分けて紹介します。 以下の記事でも、鉄分に関して詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 動物性食品 肉や魚介類などの動物性食品には、吸収率の高い「ヘム鉄」が多く含まれています。日常的に取り入れやすい動物性食品の一例を、表に示しました。 貧血に良い食べ物 理由 豚レバー(生) ヘム鉄が豊富 ビタミンB群も含まれる あさり(水煮缶) ヘム鉄が豊富 少量でも鉄分補給が可能 牛もも肉(赤身) ヘム鉄が豊富 良質なタンパク質も含まれる カツオ ヘム鉄が豊富 DHA・EPAなどの栄養も摂れる 植物性食品 野菜や大豆製品などの植物性食品にも鉄分が含まれています。おもに「非ヘム鉄」と呼ばれるものです。 食卓に出る機会が多い植物性食品の一例を、表に示しました。 貧血に良い食べ物 理由 小松菜 非ヘム鉄が豊富 鉄の吸収を助けるビタミンCも多い ほうれん草 非ヘム鉄の代表的な食材 ビタミンやミネラルも豊富 木綿豆腐 非ヘム鉄に加えてタンパク質も豊富 納豆 非ヘム鉄とタンパク質が豊富 発酵食品であるため腸内環境が整う 貧血に良い鉄分の種類と吸収率アップのポイント 鉄分にはヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。この章では、両者の違いと食事における鉄分吸収アップのポイントを中心に解説します。 ヘム鉄と非ヘム鉄の違い ヘム鉄と非ヘム鉄の違いは、体内への吸収率です。 ヘム鉄は、吸収率が15~20%程度のもので、肉類や魚介類などの動物性食品に多く含まれます。非ヘム鉄は、吸収率が2~5%程度のもので、野菜や海藻類、大豆製品などの植物性食品に多く含まれます。(文献3) 吸収を高める食べ合わせ 鉄分は、ビタミンCやタンパク質などと一緒に摂ると吸収が高まります。 ビタミンCを含む食材としてあげられるのは、オレンジやグレープフルーツなどの柑橘類、パプリカ、ブロッコリーなどです。良質なタンパク質を含む食材としては、肉や魚、卵などがあげられます。 調理器具の工夫も、鉄分の吸収を高める方法の1つです。鉄鍋や鉄フライパンで調理すると、微量の鉄が食材に溶け出すこともあります。(文献4) 吸収を妨げる要因 鉄分の吸収を妨げる要因は、主に以下のとおりです。 タンニンを含む飲み物の摂取 不溶性食物性繊維の摂取 カルシウムの多量摂取 緑茶やコーヒー、紅茶に含まれる成分であるタンニンは、鉄分の吸収を妨げます。食事中や食後に飲むのは控えましょう。食事中や食後の飲み物は、水や麦茶など、タンニンが含まれていないものがおすすめです。 玄米やごぼうなどに含まれている不溶性食物繊維は、鉄分を吸着して便として排泄させる働きがあります。食べ過ぎは貧血に逆効果と覚えておきましょう。 乳製品やサプリメントによるカルシウムの多量摂取は、鉄吸収を阻害する可能性があります。(文献5) 鉄分摂取の推奨量と注意点 1日に必要な鉄分摂取推奨量を以下に示しました。(文献6) 18~74歳の女性:5.5mg 18~29歳の男性:7.0mg 30~49歳の男性:7.5mg 50~74歳の男性:7.0mg 鉄分で注意すべき点は、過剰摂取です。サプリメントなどによる鉄分過剰摂取を長期間続けると、鉄沈着症(体内に鉄が過剰に蓄積される病気)を発症する恐れがあります。 また、非ヘム鉄のサプリメント摂取により、便秘や胃部不快感といった消化器症状を訴える方がいたとの報告例もあります。 症状が続く場合や妊娠中・持病がある場合は、自己判断せず医師に相談しましょう。ここでいう症状とは、鉄分摂取を続けても改善しない貧血症状や、サプリメントによる消化器症状などです。 貧血に良い食べ物を使ったメニュー例 この章では、鉄分を多く含む食材と吸収を高める食べ合わせを意識した簡単メニューを、主食・主菜・副菜・間食に分けて紹介します。 主食 献立名 作り方 詳細 あさりと水菜のパスタ ゆでたパスタとあさりの水煮、水菜を炒め、しょうゆで味付けする 水菜に含まれるビタミンCにより、あさりに含まれるヘム鉄の吸収率が高まる 雑穀入りご飯 白米に雑穀を加えて炊く 雑穀に含まれる鉄分やミネラルを白米にプラスする 主菜 献立名 作り方 詳細 レバーのカレー粉炒め 下処理したレバーと小松菜を炒め、カレー粉で味付けする 小松菜と炒めることで、レバーに含まれる豊富な鉄分が吸収されやすくなる 鮭とパプリカのホイル焼き 鮭とパプリカ、玉ねぎをホイルで包み、蒸し焼きにする 鮭のタンパク質とパプリカのビタミンCで鉄吸収率アップが期待できる 副菜 献立名 作り方 詳細 厚揚げと小松菜の炒め物 厚揚げと小松菜を炒め、しょうゆで味付けする 小松菜のビタミンCが、大豆に含まれる鉄分の吸収を助ける ほうれん草のおひたし サッとゆでたほうれん草を、だし醤油に漬ける ほうれん草で非ヘム鉄と葉酸(※)を同時に補給する (※葉酸:ビタミンB群に属するビタミン。ビタミンB12とともに赤血球を作るはたらきがある) 間食 間食でも鉄分を補える食品を選ぶと、1日の摂取量を増やせます。鉄分を補える間食の一例を表に示しました。(文献7) 食品名 鉄分含有量 プルーン(乾) 25gあたり約0.25mg 干しぶどう(レーズン) 5gあたり約0.58mg アーモンド 20gあたり約0.72mg カシューナッツ 20gあたり約1.0mg ピスタチオ 20gあたり約0.6mg ドライフルーツやナッツなどは持ち運びやすく手軽に摂れるため間食におすすめです。また、ナッツ類は無塩のものを選ぶと良いでしょう。 食べ過ぎるとオーバーカロリーになるため、1回で1袋を食べないようにしましょう。 コンビニ食や外食で鉄分を摂るポイント 料理を作る時間がない場合は、外食やコンビニのものを食べるときもあるでしょう。その際も、鉄分やタンパク質、ビタミンCが多いものを選びましょう。 具体例は以下のとおりです。 献立 メニュー 栄養素 主食 雑穀ごはん 鮭や昆布のおにぎり 非ヘム鉄 ヘム鉄 ビタミンB群 主菜 サバ缶 サラダチキン 焼き魚定食 ヘム鉄 たんぱく質 副菜 小松菜やほうれん草の和え物 海藻サラダ 非ヘム鉄 ビタミンC 食物繊維 飲み物 豆乳 野菜ジュース 非ヘム鉄 植物性たんぱく質 ビタミンC 揚げ物中心のメニューはカロリーオーバーにつながります。主菜を焼き物や蒸し物にすると良いでしょう。 食生活を改善しても貧血が続く場合は当院にご相談ください 鉄欠乏性貧血の対策として大切なポイントは、鉄分を効率よく摂ることです。動物性食品に多いヘム鉄と、植物性食品に含まれる非ヘム鉄を、バランス良く取り入れましょう。 ビタミンCやタンパク質を一緒に摂ることで、鉄分が体内に吸収されやすくなります。 外食やコンビニ食の場合でも、鉄分の多いメニューを意識すると日常的な貧血予防が可能です。 食生活を改善しても貧血が続くときは放置せず、当院にご相談ください。 メール相談やオンラインカウンセリングも実施しております。 貧血と食べ物に関するよくある質問 チョコレートは貧血に良い食べ物ですか? チョコレートの中でも、ダークチョコレートと呼ばれるカカオの含有率が高いものは、鉄分が多く含まれているため、貧血に良い食べ物とされます。 しかし、チョコレートは糖質や脂質も多いため、食べ過ぎは禁物です。1日量の目安は5~10g程度とされています。 貧血に良い食べ物に即効性はありますか? 貧血に良い食べ物は数多くありますが、あくまでも食品であり医薬品ではないので、即効性は期待できません。毎日の食事で適量を食べ続けましょう。食べ続けても貧血の症状が続く場合は、医療機関を受診して、必要な治療を受けてください。 貧血に悪い食べ物や飲み物はありますか? 貧血に悪いとされる主な食べ物や飲み物およびその理由を、表に示しました。 主な食べ物や飲み物 理由 緑茶 緑茶やコーヒー、紅茶に含まれるタンニンは、鉄分の吸収を妨げる 玄米 玄米やごぼう、おからなどに含まれている不溶性食物繊維は、鉄分を吸着して便として排泄させる 加工食品 ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工食品、インスタント食品、スナック菓子などに含まれるリン酸塩は鉄分の吸収を阻害する リン酸塩を多く含む食品については、以下の記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。 参考文献 (文献1) 貧血の原因は?|国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター (文献2) 鉄代謝と貧血|日本内科学会雑誌 (文献3) 貧血がある方のお食事|国立がん研究センター東病院 栄養管理室 (文献4) 調理中に鉄鍋から溶出する鉄量の変化|日本調理科学会誌 (文献5) カルシウムの働きと1日の摂取量|公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット (文献6) ミネラル成分の鉄分の働きと1日の摂取量|公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット (文献7) 日本食品標準成分表2020年版(八訂)|文部科学省
2025.04.30 -
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「最近なんだか疲れやすい」「立ちくらみが増えた」といった不調を感じているなら、それは貧血のサインかもしれません。 貧血は女性や子どもに多いとされますが、年代や性別を問わず、誰にでも起こり得る身近な症状です。 放置すると、心不全や感染症など深刻な病気につながる場合もあります。 本記事では、貧血の症状や原因、対策などについてわかりやすく解説します。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEで情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。 再生医療について興味がある方は、ぜひご利用ください。 貧血の症状チェックリスト もしかして貧血かも?と感じたときに役立つ、セルフチェックリストを用意しました。 貧血の症状は「なんとなく体調が悪い」「いつもより疲れやすい」程度に感じることも多く、見過ごされがちです。 以下の項目をチェックして、ご自身の体調と照らし合わせてみてください。 少し動いただけで疲れやすく、だるさが続いている 階段を上ると息切れする・朝起きるのがつらい 動悸や脈の速さを感じる 胸が苦しくなる・深呼吸したくなることが増えた めまいや立ちくらみを感じる 集中力が続かず、ぼーっとすることが多い 頭痛が増えたように感じる 顔色や唇の色が薄く、顔色が悪いと言われた 爪が白っぽい・割れやすくなった・薄くなった まぶたの裏が白っぽく見える 肌がくすんで見える・髪が抜けやすくなった 手足が冷えやすく、食欲がない日が多い イライラしやすくなった・情緒が不安定になりがち 氷を無性に食べたくなることがある 月経過多・偏食・胃腸の不調・薬の服用などの生活習慣に心当たりがある 上記のチェックリストの症状に複数該当する場合は、貧血の可能性が考えられます。 ただし、このチェックリストはあくまで目安であり、医学的な診断に代わるものではありません。 症状が気になる場合や、該当する項目が少なくても体調に不安を感じる場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。 貧血の症状【重症度別】 貧血の症状は、重症度によってさまざまです。 ここでは、初期・中程度・重度に分けて主な症状を解説します。 初期の貧血症状 症状 説明 疲れやすい 酸素を運ぶヘモグロビンが不足し、筋肉や臓器に十分な酸素が届かないため、少しの動作でも疲労を感じるようになる。 集中力の低下 脳への酸素供給が不足することで、注意力や思考力が鈍りやすくなる。 顔色が悪くなる(青白くなる) 血液の赤みが減るため、肌の色が青白く見えるようになる。 まぶたの裏が白くなっている 血液中の赤血球の減少により、通常は赤いはずの結膜が白っぽくなる。 初期の貧血では、体が酸素不足に適応しようとするため、症状は比較的軽微です。 しかし、この段階で適切な対処を行うことで、症状の悪化を防ぐことができます。十分な休息を取り、栄養バランスの改善を試みましょう。 症状が改善しない、悪化する場合は疾患の可能性があるため、軽視せずに医療機関を受診してください。 中程度の貧血症状 症状 説明 動悸や息切れ 酸素不足を補うために心臓が過剰に働き、心拍数が増加。軽い動作でも息切れしやすくなる。 めまい、立ちくらみ 脳への酸素供給が不足するため、姿勢を変えると一時的に脳が酸欠状態になり、ふらつきが起きる。 頭痛 酸素不足が脳の血管を刺激することで、締めつけられるような頭痛が起きることがある。 爪の変化 鉄不足により、爪が反り返る(スプーン状爪)・割れやすくなる・白くなるなどの変化が起こる。 吐き気 胃腸の働きが低下し、消化不良や胃もたれ、軽い吐き気を感じるようになることがある。 中程度の貧血になると、体の代償機能では酸素不足を完全に補えなくなり、より明確な症状が現れます。 階段の上り下りや少し早歩きしただけで息切れを感じるようになったら要注意です。 医療機関の受診を検討しましょう。 重度の貧血症状 症状 説明 失神 重度の酸素不足により、脳への血流が一時的に途絶え、意識を失うことがある。 胸の痛み 酸素不足で心筋への負担が増し、狭心症のような症状を引き起こすことがある。 異常な食欲(氷が食べたくなる、など) 鉄欠乏性貧血に特有の「異食症(ピカ症)」の一種。氷や土、紙など栄養にならないものを無性に食べたくなる。 赤色平滑舌(ハンター舌炎) 鉄分不足によって舌乳頭が萎縮し、舌の表面が平らでツルツルになる。味覚障害などを伴うこともある。 重度の貧血では、生命維持に必要な臓器への酸素供給が著しく不足し、緊急性の高い症状が現れます。 この段階では入院治療が必要になる場合も多く、放置すると生命に関わる危険があります。 上記の症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。 貧血を放置するとどうなる? 貧血は「ただの疲れ」や「体調不良」として見過ごされがちですが、放置すると深刻な健康リスクにつながるため要注意です。 貧血は血液中の赤血球やヘモグロビンが減り、体内に十分な酸素が行き渡らない状態であり、酸素不足を補おうと体は無理に働き続けます。 たとえば、心臓は酸素を全身に送ろうと拍動を早め、心臓に大きな負担がかかりますが、その状態が続くと心不全などの重大な疾患を引き起こす恐れもあるのです。 また、酸素や栄養が十分に届かないと体の回復力や抵抗力も低下し、風邪をひきやすくなったり、感染症にかかりやすくなったりもします。 さらに、頭痛・めまい・息切れ・集中力の低下といった症状が慢性化し、日常生活に支障が出るようになる点も見逃せません。 このように、貧血は放置すると症状の悪化や生活の質の低下にくわえ、命に関わる合併症につながる危険があります。 貧血の症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。 貧血の原因 貧血は、単に鉄分が足りないだけではなく、さまざまな要因によって起こる症状です。 以下の表に、主な原因とそれぞれの概要をまとめました。 原因 概要 鉄分不足 食事の偏りや吸収障害により、赤血球をつくる材料である鉄分が不足して起こる。最も多い原因。 体内での出血 月経過多、消化管出血、けがなどによる持続的な出血により、血液が失われて貧血になる。 慢性疾患 がん、腎臓病、炎症性疾患などの慢性疾患があると、赤血球の産生が抑制されて貧血が起こりやすくなる。 造血機能の低下 骨髄の病気やビタミンB12不足などにより、赤血球をつくる働きそのものが弱まり、貧血を引き起こす。 原因は単独で起こる場合もあれば、複数が重なっているケースもあります。 症状が続く場合は原因を特定し、適切な治療や生活改善を行うことが重要です。 貧血の原因や対処法については、以下の記事でも詳しく解説しているのでご覧ください。 貧血症状をすぐに治す方法 まず大切なのは、無理に動かず安静にすることです。 立っている状態では血液が下半身にたまりやすく、脳への酸素供給が不足して、めまいやふらつきが悪化する恐れがあります。 症状を感じたらすぐにしゃがむか座り、できるだけ動かないようにしましょう。 服装にも注意が必要です。ベルトや襟元、締めつけのある衣服は、血流や呼吸を妨げる可能性があります。 できるだけゆるめて、呼吸しやすい状態を保ちましょう。 また、横になれる場所があれば、仰向けに寝て足を心臓よりも高く、15〜30cmほど上げる体勢をとるのが理想です。 下半身にたまった血液が心臓や脳に戻りやすくなり、酸素の循環が促されて、症状が落ち着く場合があります。 ただし、上記の方法はいずれも一時的な対処であり、貧血そのものを治すものではありません。 同じような症状を繰り返している場合や改善が見られない場合は、早めに医療機関を受診し、血液検査を受けることが大切です。 年代・性別で異なる貧血の特徴 貧血の症状は、年代や性別でも異なります。 ここでは、男女や子ども、高齢者に分けて貧血の特徴を見ていきましょう。 女性の貧血 女性は月経や妊娠など特有の体の変化により、貧血リスクが高いのが特徴です。 一般財団法人 女性労働協会によると日本人女性の約40%、とくに月経のある20〜40代では65%が「鉄欠乏性貧血」または「かくれ貧血」としています。(文献1) 自覚がなくても進行している場合があるため、以下の注意点を意識しておきましょう。 月経 毎月の月経による出血で鉄分が失われると、慢性的な鉄欠乏につながります。出血の量が多い人ほど注意が必要です。 妊娠 妊娠中は血液量が増える一方で、胎児の成長に多くの鉄を使うため貧血になりやすい時期です。 放置すると、低体重児や死産のリスクが高まると報告されています。 婦人科系疾患 子宮筋腫や子宮内膜症などによる過多月経が、慢性的な出血を引き起こし貧血の原因となる場合があります。 成長期の子どもの貧血 成長期の子どもは、骨や筋肉が急速に発達するため血液量が増えるのにあわせて、多くの鉄分が必要となります。 食事から十分な鉄分を摂取できないと、赤血球がうまく作れず貧血を起こすケースがあるため注意が必要です。 さらに、部活動やスポーツで大量の汗をかくと鉄分が失われ、尿からも排出されやすくなります。 加えて、激しい運動により足裏に繰り返し強い衝撃が加わると、赤血球が壊れる「運動性溶血」が起こるケースにも要注意です。 高齢者の貧血 高齢者の貧血は、栄養不足だけでなく慢性疾患や薬の副作用など多様な要因が関わってきます。 鉄やビタミン不足に加え、腎臓病や炎症性疾患などの持病があると、造血機能が低下しやすくなるため注意しなければなりません。 さらに、高齢者の典型的な「顔色の悪さ」や「めまい」ではなく、基礎疾患の悪化として症状が現れるケースもあります。 また、意識障害や呼吸困難、歩行障害、食欲不振などが見られる場合もあり、加齢のせいと自己判断して放置するのは大変危険です。 男性の貧血 男性は女性に比べると貧血の発症率は低いとされていますが、発症した際には注意が必要です。 男性の貧血の背景には、胃や十二指腸潰瘍、胃がん、大腸ポリープ、大腸がんなど、消化管からの出血が隠れているケースがあります。 とくに、便の色が黒っぽい、赤褐色が混じるといった変化がある場合は、消化管出血の可能性を疑うべきです。 放置すると深刻な疾患に進展する恐れがあるため、貧血の症状があれば医療機関で原因を特定しましょう。 病院を受診するべき貧血の症状・タイミング 貧血は軽く見られがちですが、症状が続いたり健診で指摘されたりした場合は、病院で血液検査を受けることが重要です。 放置すると生活の質を下げるほか、別の病気が隠れている可能性もあります。 とくに、次のような症状が出ている場合は、貧血だけでなく重い疾患のサインかもしれないため、早急に医療機関を受診してください。 意識が朦朧とする 白目が黄色くなる「黄疸」がある 便の色が黒っぽい 月経がいつもより長い、または出血量が多い 鼻血が30分以上止まらない、歯磨きで頻繁に出血する 診断には、血液検査で測るヘモグロビン濃度(血色素量)が用いられます。 「日本臨床検査医学会」によると、成人男性13.0g/dl未満、成人女性と小児は12.0g/dl未満、高齢者は11.0g/dl未満が貧血とされています。(文献2) 貧血の治し方 貧血の治療法は、主に以下の3つです。 食事療法 薬物療法 原因疾患の治療 食事療法 食事療法で大切な点は、効率よく鉄分を摂ることです。 鉄分の多い食材に加えて、鉄の吸収を助けるビタミンCや、造血作用があるビタミンB12も摂取しましょう。 鉄分やビタミンC、ビタミンB12を豊富に含む食品は、以下のとおりです。 鉄分:レバーや魚介類、大豆製品、野菜・海藻類など ビタミンC:果物や野菜・海藻類など ビタミンB12:肉や卵など 良質なたんぱく質もあわせて摂りましょう。 たんぱく質は、赤血球やヘモグロビンの材料として大切な栄養素です。 肉や魚介類、大豆製品、卵などに多く含まれています。 貧血に良い食べ物をもっと知りたい方は、以下の記事もご覧ください。 薬物療法(内服・注射・点滴) 鉄欠乏性貧血の治療には、主に以下の3つがあります。 鉄剤の内服 静脈注射 点滴 内服薬には、フェロミア錠、リオナ錠、インクレミンシロップなどがあります。 吐き気や食欲不振といった消化器症状の副作用が出た場合には内服を中止し、注射や点滴に切り替えることもあります。 静脈注射ではフェジン、モノヴァーといった製剤が用いられ、必要に応じて鉄分を直接体内に補充するのが特徴です。 点滴治療は一定時間をかけて薬剤を体内に入れるため、血中濃度を安定させながら吸収を促すことができ、重度の鉄欠乏や内服が困難な場合に選択されます。 また、腎機能の低下による腎性貧血では、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)を用いた治療が行われるケースもあります。 貧血の点滴については、以下の記事も参考にしてください。 原因疾患の治療 貧血は単独で起きているように見えても、背後には消化器系や婦人科系の病気による出血が隠れている恐れがあります。 胃潰瘍や大腸ポリープ、子宮筋腫、子宮内膜症などが代表的な疾患で、いずれも早期の治療が欠かせません。 また、リウマチや慢性腎臓病などの慢性疾患が関与するケースも多く見られ、鉄分の補充だけでなく基礎疾患そのものの治療が必要です。 貧血を繰り返す背景には他の病気が潜んでいる可能性もあると考え、自己判断せず医療機関で原因を特定しましょう。 貧血の原因疾患については、以下の記事でも詳しく解説しています。 まとめ|貧血の症状がある場合は放置せずに医療機関を受診しよう 貧血は「疲れやすい」「めまいがする」といった身近な症状から始まりますが、放置すると心不全や感染症を引き起こすほか、重い病気が隠れている可能性も否定できません。 応急的な対処で一時的に症状を和らげることはできても、根本的な改善には原因の特定と適切な治療が不可欠です。 症状が気になる場合や健康診断で指摘を受けた際には、早めに医療機関で検査を受けましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEにて再生医療に関する情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 登録してぜひお気軽にご利用ください。 貧血の症状に関するよくある質問 貧血が続くとどうなるのでしょうか 貧血が続くと、心筋梗塞や記憶力の低下を引き起こす可能性があります。 また、病気が原因の場合は、その病気自体が進行している危険性もあります。 これは貧血によって全身の酸素が不足し、体が少ない酸素量で身体機能を維持しようとするためです。 心臓は酸素不足を補うために通常よりも激しく働き、全身に血液を送る負担が大幅に増加します。 同時に脳に運ばれる酸素量も減少するため、記憶力や集中力の低下といった認知機能への悪影響も現れます。 病気が原因の貧血では「貧血が続く=病気が進行している」可能性があるため、速やかに医療機関を受診しましょう。 貧血になりやすい人の特徴は何ですか 貧血になりやすい人の特徴としては、女性・過度なダイエットをしている方・偏食の方が挙げられます。 女性は月経や妊娠・出産、授乳など、鉄分を失う機会が多いため、鉄欠乏性貧血になりやすいといえます。 また、過度なダイエットをしている方や偏食の方も、栄養バランスが乱れると必要な栄養素が不足し、結果として貧血を起こす可能性が高くなります。 一方、慢性疾患や造血機能低下が原因の貧血の場合は、年齢や性別に関係なく発症するため、目立った特徴は見られません。 参考文献 (文献1) 働く女性の心とからだの応援サイト|一般財団法人女性労働協会 (文献2) 貧血(診療群別臨床検査のガイドライン 2003)|日本臨床検査医学会
2025.04.30 -
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「最近、お腹のハリや便通の変化が気になるけど、忙しいし、年齢的にもまだ大丈夫だろう」。そう思ってスルーしていませんか? 大腸がんは現在、日本人の罹患率・死亡率ともに高い主要ながんの一つです。若い世代での発症も増加傾向にあり、2018年時点で男性の死亡原因第3位、女性では第1位となっています。(文献1) ただし、がんの進行速度は一律ではなく、年齢、がんのタイプ、生活習慣、遺伝的背景などによって進み方は人それぞれです。 本記事では、年代別にみた大腸がんの進行速度の特徴、速度を左右する主な要因、そして早期発見・治療のポイントを解説します。 不安を感じている方も、知れば怖くなくなるように大腸がん対策の第一歩として、ぜひ最後までお読みください。 年代別に見る大腸がんの進行速度や特徴について 大腸がんは全年代で発生し得ますが、年代によって発症しやすさや進行の速さに特徴的な傾向があります。基本的には年齢そのものよりもどんなタイプのがんか(悪性度)が進行速度を左右します。 しかし結果的に年代ごとに進行パターンに違いがみられるケースもあります。ここでは若年層・中年層・高齢者それぞれの年代について、大腸がんの進行速度や特徴を見ていきましょう。 若年層(30代)の進行速度と特徴 若い世代での大腸がん発症は多くはありませんが、近年増加傾向にあります。実際、数十年前と比べると若年者(50歳未満)の大腸がんリスクは約3倍に上昇し、現在の30代のリスクは数十年前の50代と同程度とも言われています。(文献2) この背景には食生活の欧米化や運動不足など生活習慣の変化が影響していると考えられます。若年層の大腸がんでは、進行が速く転移しやすいタイプの大腸がんが発生しやすい傾向があります。 たとえば他のがん種の例ですが、胃がんなら分化度の低いタイプが30代など若い人にできやすいことが知られており、大腸がんでも若年発症例では進行の早いものが見られることがあります。 また、日本では大腸がん検診は通常40歳以上を対象としており、30代以下では定期検診の機会が少なくなりがちです。その結果、自覚症状が出にくい早期の段階では発見されず、症状が出てから受診した時には進行がんに至っているケースもあります。 実際に30代の大腸がんは初期症状が乏しく、腹痛や便通異常、血便などの明らかな症状は進行してから現れることが多いです。 まだ若いから大丈夫と思わず、家族に大腸がんの人がいる場合などリスクが高い方は、30代でも違和感を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。 中年層(40~60代)の進行速度と特徴 40~60代は大腸がんの罹患が増えてくる年代です。とくに50代以降になると発症リスクが高まり、生活習慣病の蓄積や体の老化も相まって大腸がんが増えてきます。大腸がんの多くはポリープ(大腸粘膜のできもの)が徐々に大きくなってがん化するため、一般的には数年から十数年かけて進行するとされています。 したがって、この年代では早期発見・早期治療を行えば十分にがんの進行を抑え込めます。40代以上を対象とした定期的な大腸がん検診により早期の段階で発見できれば、内視鏡によるポリープ切除や外科手術で根治が期待できます。 働き盛りの世代でも決して悲観せず適切な治療を受けましょう。一方で、60代になると次第に免疫力が低下し細胞の修復力も落ちてくるため、同じタイプの大腸がんでも若い頃より進行が早まる可能性が指摘されています。 なぜなら、免疫の監視機能が弱まることでがん細胞の増殖を許しやすくなるためです。幸いこの年代は健康診断や人間ドックを受ける方も多く、検査で早期に指摘されれば治療開始も早くできます。 まとめると、40~60代は発症しやすくなる年代である分、検診などを活用して早期に発見しやすい年代と言えるでしょう。定期検診を怠らず、指摘を受けたら速やかに精密検査・治療につなげることで、大腸がんの進行を食い止められる可能性が高まります。 高齢者(70代~90代)の進行速度と特徴 高齢になるほど大腸がんの発症率は高まり、70代以降での診断例が突出します。背景には長年の細胞老化によるDNA損傷の蓄積、加齢や生活習慣病による免疫力低下があり、がん細胞を排除しにくくなる点が大きいと考えられます。 ただし高齢者の大腸がんが必ずしも急激に悪化するわけではなく、比較的おとなしい高分化型が出やすいとの報告もあります(文献6)。 一方、発生部位は右側の上行結腸に偏りやすく、血便など自覚症状が乏しいため気付いたときには進行期になっているケースが目立ちます。加えて高血圧・心疾患・糖尿病などの併存症が多く、手術や抗がん剤の適応に制限が生じやすいことも進行を許す要因となっています。 したがって70代以降でも便潜血検査を年1回行い、陽性なら必ず内視鏡で精査が欠かせません。体調に違和感があれば年のせいと済ませず受診し、治療方針は体力に合わせて腹腔鏡手術や低用量抗がん剤、免疫療法など負担の少ない選択肢を医師と検討しましょう。 大腸がんの進行速度が変わる理由 大腸がんの進行速度には個人差があり、いくつもの要因が絡み合っています。では具体的にどのような理由で進行の速さに差が出るのでしょうか。 主な理由として、生活習慣(食事内容や運動習慣)の違い、遺伝的素因や免疫力、基礎疾患(合併症)の有無が挙げられます。ここではこれらのポイントについてもう少し詳しく見てみましょう。 生活習慣・食事・運動不足の影響 脂肪や赤身肉中心の“欧米型”食は大腸がんリスクを押し上げます。若年発症例の増加要因として飲酒・喫煙や加工肉の過剰摂取、運動不足と肥満。抗生物質乱用による腸内細菌バランスの崩れが報告されています。逆に定期的な運動、野菜・果物の食物繊維やカルシウムの十分な摂取は発症リスク低減に有効です。 つまり高脂肪食と過度の飲酒・喫煙を控え、野菜を増やし、毎日よく動くことが予防策です。とくに若年層は生活習慣の影響が大きいため、将来の進行がんを防ぐ第一歩として早めの改善が重要です。 遺伝・免疫力・合併症リスク 大腸がんは家族歴があると発症リスクが上昇します。代表例がリンチ症候群で、若年発症かつ生涯で約80%が大腸がんになると報告されています。多発・多臓器発がん、進行の速さが特徴で、半年ごとの内視鏡検査が推奨されます。 もう一つの遺伝性疾患家族性大腸腺腫症(FAP)では10代から多数のポリープが出現し、60歳までに90%ががん化するため予防的手術も選択肢となります。このように遺伝性大腸がんは発症年齢が若く進行も早いため、家族歴が多い場合は遺伝子検査や専門医に相談しましょう。 また、免疫機能も進行速度に影響します。体にはがん細胞を排除する免疫監視機構がありますが、加齢やストレス、糖尿病・ステロイド使用などで機能が低下するとがんの増殖を許しやすくなります。十分な睡眠と運動、バランスの良い食事は免疫維持に有効です。 さらに炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)は長期炎症が粘膜に傷を作り発がんリスクを高めます。 肝硬変やコントロール不良の糖尿病など基礎疾患がある場合も全身の状態が悪化することによって、治療効果が下がり進行を許してしまいます。 合併症が多いと手術や抗がん剤が制限される点も見逃せません。このように遺伝と免疫力と基礎疾患が掛け合わさると、進行の速さを左右します。家族歴や持病がある方は定期検診を怠らず、違和感があれば早期に専門医へ相談しましょう。 早期発見とさまざまな治療法 大腸がんは早期に発見さえできれば、適切な治療で根治(完治)も十分に期待できる病気です。進行した大腸がんであっても、治療によって進行を遅らせたり症状を和らげられます。 ここでは主な検査方法と早期発見のメリット、そして大腸がん治療のアプローチについて解説します。とくに近年注目されている免疫細胞療法(体の免疫の力を利用した治療)や再生医療(幹細胞を利用した新しい医療)も含めた治療法について説明します。 主な検査方法と早期発見のメリット 大腸がん早期発見の入口は便潜血検査です。便中の微量出血を調べるだけで痛みがなく低コスト、40歳以上は年1回実施が推奨されています。陽性時は大腸内視鏡検査へ進み、粘膜を直接観察しつつポリープや早期がんをその場で切除できます。 便潜血検査と内視鏡の組み合わせは死亡率を有意に下げることが複数の研究で確認され、日本老年医学会の大腸がん予防ガイドラインでも年1〜2回の受検が強く勧められています。(文献4) 大腸がんは早期発見、早期治療が現状一番の解決策です。 がんが粘膜内にとどまる早期がんなら、内視鏡切除や局所手術で5年生存率は約90%。一方、遠隔転移を伴うステージⅣでは約20%まで低下し、早期か進行期かで明暗がわかれます。(文献5) 小さな腫瘍なら開腹せずに治療でき、切除範囲も狭く体への負担が軽いのも利点です。さらに大腸がんの約8割は良性ポリープが出発点とされ、ポリープ段階で取り除けばがんそのものを起こさせない究極の予防になります。 ポリープががん化するまでには数年〜10年程度余裕があるため、定期的に内視鏡を受けて発見して切除できれば、大腸がんで命を落とす確率は大幅に減らせます。 大腸がんの治療アプローチ(免疫療法など) 大腸がん治療の柱は手術・抗がん剤・放射線の三大療法で、早期なら手術のみ、進行例では手術と抗がん剤、直腸がんでは放射線も加える組み合わせが標準です。腹腔鏡手術や副作用対策の進歩で、高齢者や通院治療の負担も軽減されています。(文献4) 免疫療法では、がん細胞のブレーキ信号を外して免疫を活性化させる免疫チェックポイント阻害薬が遺伝子変異の多いタイプの大腸がんで保険適用となり、進行・再発例でも長期生存例が報告されています。 さらに光免疫療法は薬剤投与後に特定の光を当て、がん細胞だけを選択的に破壊する日本発の新技術として開発されており、今後の発展に期待が持てます。 また、患者自身のリンパ球を培養して戻す免疫細胞療法も一部で行われ、新しい治療法として注目を集めています。 当院「リペアセルクリニック」ではがん予防を目的とした免疫細胞療法を提供しております。 免疫細胞療法に関する詳細は、以下のページをご覧ください。 まとめ|大腸がんの進行速度はさまざまな要因で決まる!違和感を感じたら早期受診を 大腸がんの進行速度は人によって異なり、年齢やがんのタイプ、生活習慣、遺伝的素因、免疫力など実にさまざまな要因で決まります。若い人でも油断はできませんし、高齢だからといって必ずしも急激に悪化するわけでもありません。 それでも共通して言えるのは、早期発見・早期治療が最も有効な対策です。大腸がんは早く見つかれば高い確率で治せる病気ですので、仮に進行していても適切な治療で進行を遅らせられます。 普段からバランスの良い食事や適度な運動を心がけ、大腸に限らず検診の指摘や体調の違和感を軽視せずに、おかしいと思ったら年齢に関係なく早めに医療機関を受診しましょう。 皆さんにお伝えしたいのは、大腸がんは怖がりすぎず正しく恐れ、早期発見ができれば決して怖い病気ではありません。不安な気持ちがある方は一人で抱え込まず専門医に相談し、適切な検査と対策で大腸がんから自分自身を守っていきましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1)国立がん研究センター「がんの統計’18 図表編」2018年.https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2018_date_J.pdf.(最終アクセス:2025年4月29日) (文献2)Bailey CE, et al. (2015). Increasing disparities in the age-related incidences of colon and rectal cancers in the United States, 1975-2010. JAMA Surgery, 150(1), pp.17-22. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25372703/(最終アクセス:2025年04月29日) (文献3)Sung H, et al. (2024). Colorectal cancer incidence trends in younger versus older adults: an analysis of population-based cancer registry data. The Lancet Oncology, 26(1), pp.1-??. DOI: 10.1016/S1470-2045(24)00600-4(最終アクセス:2025年04月29日) (文献4)田中秀典, 田中信治. 「高齢者の大腸がんの特徴と治療」『日本老年医学会雑誌』57(4), pp.423-430, 2020年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/57/4/57_57.423/_pdf (最終アクセス:2025年04月22日) (文献5)国立がん研究センター「大腸がん患者数統計」国立がん研究センター がん情報サービス,https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c02#h-title (最終アクセス:2025年04月22日) (文献6)Chou C-L, et al. (2011). Differences in clinicopathological characteristics of colorectal cancer between younger and elderly patients: an analysis of 322 patients from a single institution. American Journal of Surgery, 202(5), pp.574-582. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21872205/(最終アクセス:2025年04月29日)
2025.04.30







