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男性でも乳がんになるって本当?確率や症状・セルフチェックの方法を医師が解説

男性で乳房にしこりやかゆみなどがあり「自分は乳がんかもしれない」と不安を感じてはいませんか。
中には「男性で乳がんなんて聞いたことがない」と思う方も多いでしょう。しかし乳がんは女性に限らず、男性でも発症するリスクはあります。発症率は女性より低いものの、放置すると進行や転移のリスクがあります。そのため、早期発見とセルフチェックが非常に重要です。
本記事では、男乳がんの基礎知識やセルフチェック方法、発症する原因について解説します。
この記事を参考に男乳がんについての知識を深め、日々のセルフチェックを習慣化して早期発見にお役立てください。
目次
男乳がんは10万人に1人の割合で発症する
男性にも少量ながら母乳を作る乳腺組織があるため、乳がんのリスクがあります。(文献1)そのため、乳がんは男性にとって「自分には無関係」ではない病気です。
実際、乳がん全体の約0.6%は男性に発症しており、日本では男性で約10万人に1人が発症するとの報告もあります。(文献2)さらに海外では、40年の間に40%の男性乳がんの発症率が上昇しているとの報告があります。(文献3)
このように発症頻度は少ないながらも、発見が遅れると進行してしまう恐れがあるため、男性も乳房の異変に注意を払うことが大切です。
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男性乳がんのセルフチェックポイント
今すぐできる男性乳がんのチェックポイントは以下の3つです。
- 乳頭近くにこぶはあるか
- 乳頭から血液や液体の分泌はないか
- 乳頭の形に異変はないか
男性は女性に比べて乳腺組織が少ないため、乳頭周辺に異変があらわれやすい傾向があります。(文献1)そのため、鏡の前で定期的に確認する習慣が早期発見につながります。
本章を参考に、男性乳がんのセルフチェックを行ってみましょう。
乳頭近くにこぶはあるか
男性乳がんの初期症状のひとつが「乳頭付近のこぶ(しこり)」です。以下の方法でセルフチェックを行ってみましょう。
- 片手を上げる
- 反対の手であばら骨から乳頭に向かって優しく触れる
- 乳頭の上下方向に沿って手を滑らせる
- 「の」の字を書くように乳房全体をまんべんなく触る
乳頭の近くのこぶは痛みを伴わない場合もあるため症状がなくても油断せず、定期的なセルフチェックを行いましょう。
乳頭から血液や液体の分泌はないか
乳頭からの分泌物も、男性乳がんの初期症状の一つです。セルフチェックでは、乳頭を優しくつまみ、液体が出ないか確認しましょう。もし分泌がある場合は、以下をチェックして記録を取っておくことが重要です。
- 左右片方または両方
- 液体の色や量
- しこりの有無
- 症状が続いている期間
とくに赤や茶色の分泌物が出る場合は血液が混ざっている可能性があるため、すぐに受診するようにしましょう。具体的な症状をまとめておき、医師に詳しく話せるようにしておくと受診の際に説明しやすくなります。
乳頭の形は以前と変わっていないか
乳頭の形状変化やへこみも、男性乳がんの初期症状のひとつです。乳頭の形をチェックする方法は以下のように、鏡の前でまっすぐ立って確認してみましょう。
- 乳頭の形に違和感はないか
- 乳頭周辺の皮膚の見た目や感覚に異常はないか
- 両手を上に上げてみて、手を上げる前後で乳頭の高さや方向に変わりはないか
日頃から乳頭の形を意識して確認すると、微細な変化に気づきやすくなります。また、今回解説したチェック方法は、入浴や着替えのついでに短時間で行えます。チェックする習慣をつけて早期発見できるようにしましょう。
男性乳がんの原因
男性乳がんは、主に年齢や遺伝的要因により発症リスクが高まると言われています。
本章では、男性乳がんの主な原因についてわかりやすく解説します。本章を参考に、心当たりのある方は日頃からセルフチェックを習慣化し、必要に応じて定期的な検診を受けるようにしましょう。
年齢
女性の乳がんは40代〜50代に多く見られますが、男性乳がんは60代後半の発症が多い傾向です。(文献4)そのため、女性よりも高齢で発症しやすいのが特徴です。(文献2)
高齢者よりも頻度は低いものの、若年層でも発症するリスクはあるため、年齢に限らず注意が必要です。乳房に違和感があれば、早めにセルフチェックや検査を行うようにしましょう。
乳がんのセルフチェックについては、以下の記事でも紹介しています。
遺伝
男性の乳がんは、遺伝的な要因で発症リスクが高まることがあります。
とくに、BRCA1またはBRCA2遺伝子に変異があると「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」と呼ばれる体質になり、乳がんのリスクが高まります。
HBOCの男性では、12人に1人乳がんを発症するリスクがあるとされており、他の男性よりも高いリスクを抱えているためより注意が必要です。(文献5)
家族に乳がんや卵巣がんの治療歴がある方、またはHBOCの診断を受けている方は、こまめにセルフチェックや定期健診を受けるようにしましょう。
男性乳がんの検査方法
男性乳がんの疑いがある場合、女性と同様の検査方法を用いるのが一般的です。主な検査方法は、以下の通りです。
検査の種類 |
検査方法 |
検査からわかること |
---|---|---|
マンモグラフィー |
乳房を板で挟み、あらゆる方向から圧迫して撮影 |
触診ではわからないしこりを発見できる |
超音波検査(エコー) |
専用の機械を患部に当て、音波を使用し乳腺の内部を画像化する |
腫瘍の有無や増殖を確認できる |
このほか、必要に応じて針でがん組織を採取する「生検検査」のような、より詳しい状態がわかる検査を行う場合もあります。どのような検査があるか事前に知りたい方は、受診する病院のホームページや電話・メール問い合わせなどで確認しましょう。
男性乳がんの治療方法
男性乳がんの治療は、女性と同様にがんの進行度によって選択されます。がんのステージが初期段階の場合、切除可能なら手術による乳房切除が行われます。また、症状に応じて医師の判断で放射線治療や術後の薬物療法が選択される場合もあるでしょう。(文献4)
男性乳がんでも、女性にも使用されるようなホルモン療法を選択する場合があります。ただし、男性と女性ではホルモンの仕組みが異なるため、女性と同じ薬剤がそのまま使用されるとは限りません。治療法は個人の病状により異なるため、専門医と相談しながら自分にあった方法を選びましょう。
乳がんの手術については、以下の記事にて詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
男性乳がんは早期発見で悪化を防ごう
男性乳がんは、早期に発見し適切な治療を受ければ、予後が良好になる可能性が高まります。
日頃から乳房のセルフチェックを行い、しこりや分泌物などの異変に気づいた場合は、早めの受診が大切です。
ぜひ本記事が、皆様の男性乳がんの早期発見に少しでも役立てられれば幸いです。
当院「リペアセルクリニック」では、人体にもともと存在する「幹細胞」を用いた乳がん手術後の後遺症に対する緩和治療を行っています。今ならメール相談やオンラインカウンセリングにて無料相談を受付中です。気になる方はぜひ当院までご相談ください。
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男性乳がんに関してよくある質問
男性の乳がんの致死率は?
男性乳がんは発症率が低いものの、診断後の死亡率は女性よりも高い傾向にあります。海外の研究では、2004年〜2014年に乳がんと診断された人の死亡率は、女性が17.4%、男性は27.2%だったという報告があります。(文献3)
ただし、がんが進行していないうちに早期に治療すると、予後が良好となる可能性が高まります。
女性より死亡率が高い報告もあることから、少しでも異常を感じたら早期に検査を受けることが、命を守る上で重要です。
男の乳がんは何科にいくべきですか?
男性乳がんが疑われる場合は、乳腺外科の受診が専門です。
受診に抵抗がある場合は、女性専門としていない乳腺外来を選んだり、パートナーと一緒に受診したりして、受診のハードルを下げるのも一つの手です。
早めに専門医に相談すると、違和感の有無が男性乳がんかどうかがわかるでしょう。
参考文献
(文献1)小池綏男,飯沼伸佳ほか.「38年間に経験した男性乳癌6例の検討」『信州医誌』60巻(2号), p79-p83.2012年,https://plaza.umin.ac.jp/~s-igaku/DATA/60_02/60_02_03.pdf
(文献2)国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)2020年https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/14_breast.html#anchor1
(文献3)Santhi Konduri, et al. 2020年. Epidemiology of male breast cancer.The Breast:, 54巻, p8-p14.https://www.thebreastonline.com/article/S0960-9776(20)30163-6/fulltext
(文献4)神尾 孝子「性差医療(1)乳腺外科領域」東女医大誌 89(1): 1-6, 2019.2https://www.jstage.jst.go.jp/article/jtwmu/89/1/89_1/_pdf/-char/en
(文献5)日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)「Q36 男性の乳がん対策について教えてください。」遺伝性 乳がん卵巣がんを知ろう!, 2022年5月,https://johboc.jp/guidebook_g2022/q36/