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コロナ後遺症に多い筋肉痛の原因・治療法を解説

2024年に東京iCDCリスクコミュニケーションチームが実施した都民1万人アンケート調査によれば、2か月以上コロナ後遺症に苦しんだ成人は23.4%にものぼっていました。(文献1)
新型コロナ感染症罹患後の後遺症については、かかった人の年齢、性別問わず多くの報告が寄せられています。
多くの症状が確認されており、いまだ解明されていないことも少なくありません。
意識が朦朧とする「ブレインフォグ」が一時期話題となりましたが、実は「筋肉痛」も後遺症として現れることをご存知でしょうか。
この記事では、コロナ後遺症として報告されている筋肉痛について、原因や治療法を解説します。
コロナにかかってから筋肉痛が治らない、運動していないのに筋肉痛がするという人はぜひ参考にしてみてください。
目次
コロナ後遺症の筋肉痛は気のせいではない
コロナ後遺症について、WHOは以下のように定義しています。
|
厚生労働省が北海道札幌市と大阪府八尾市を対象に行った調査では、新型コロナウイルス感染3か月後も何らかの症状が続いていると答えた人が八尾市で「14.3%」、札幌市では「20.9%」にものぼりました。(文献2)
コロナ後、原因不明の体調不良に悩まされている人が15%前後いたのです。
コロナ後遺症に悩まされる人の多くが「倦怠感」「集中力の低下」「身体の痛み」を訴えています。
新型コロナウイルスが流行した当初は研究が進んでおらずコロナとの関連性が明確ではありませんでしたが、現在ではコロナ後遺症はひとつの病状として世界が認めているのです。
コロナ後遺症による筋肉痛の症状・特徴
実際にコロナ後遺症でどのような症状が起こるのか紹介します。通常の筋肉痛との違いや、筋肉痛以外のコロナ後遺症の症状についても項目ごとに解説します。
コロナ後遺症の筋肉痛の症状・特徴
コロナ後遺症による筋肉痛の症状の特徴として、身体全体に痛みが見られるという点が挙げられます。
通常起こる筋肉痛は、運動などによって筋肉組織が損傷を起こし、その修復過程で炎症が起こることで痛みが発生します。
そのため、通常の筋肉痛では運動でよく使った一部の筋肉が痛みます。
しかし、コロナ後遺症の筋肉痛の場合はウイルスが原因で起こっているため、全身が痛むのです。
また、通常の筋肉痛は、運動の負荷にもよりますがおよそ2~4日ほどで治ることがほとんどです。
一方コロナ後遺症の筋肉痛は長期化することも多く、長ければ数か月痛みが続くこともあります。
そのほかにも通常の筋肉痛とコロナ後遺症による筋肉痛には違いがあります。表で比較してみましょう。
特徴 | コロナ後遺症の筋肉痛 | 通常の筋肉痛 |
---|---|---|
原因 | 免疫異常・炎症反応・神経障害(自己免疫など) | 運動などによる筋繊維の損傷 |
発症のきっかけ | 運動していないのに痛くなる | 激しい運動や普段しない運動をした後 |
痛みの性質 |
持続的、身体が重い |
鋭い痛みや張り感 |
場所 |
広範囲(肩・背中・太ももなど) 痛む場所が移動することもある |
使った部位に限定される |
持続時間 | 数週間〜数か月続くことも | 通常は2〜3日で軽快 |
他の症状 | 倦怠感・ブレインフォグ・息苦しさなどを伴う | 通常は痛み以外の症状はない |
検査で異常 | 炎症マーカー上昇や自己抗体が見つかる場合あり | 基本的に異常なし |
通常の筋肉痛と違う点を感じたら、まずは医師に相談してみましょう。
筋肉痛以外の後遺症
筋肉痛以外のコロナ後遺症については、以下の症状が報告されています。
- ブレインフォグ
- 疲労感・倦怠感
- 関節痛
- 咳、喀痰、息切れ
- 胸痛
- 脱毛
- 記憶障害
- 集中力低下
- 頭痛
- 抑うつ
- 嗅覚・味覚障害
- 動悸
- 下痢、腹痛
- 睡眠障害
一見すると風邪症状に見えるものも多く、コロナ後遺症と結びついていなかったという人もいるかもしれません。
また、複数の症状が併発することが多い点もコロナ後遺症の特徴です。
なぜコロナ後遺症で筋肉痛が起きるのか
コロナ後遺症で筋肉痛が発生するメカニズムについては研究が進んでいます。
通常の筋肉痛は運動を行うことにより筋繊維が破壊されることで発生しますが、コロナ後遺症による筋肉痛はその限りではありません。
近年の研究をもとに、コロナ後遺症で筋肉痛が起こる原因を紹介します。
コロナ罹患により体内のエネルギーをつくる力が低下する
2024年に海外で、コロナ後遺症の患者25名と新型コロナ感染症に罹患したものの後遺症の症状のない患者21名を集め、エアロバイクを10分~15分間こぐサイクリングテストが実施されました。(文献3)
この実験の結果、コロナ後遺症の患者は健康な被験者と同量の運動でも、運動後筋力が低く酸素摂取量も少なかったことがわかりました。
また、コロナ後遺症患者の筋繊維中にあるミトコンドリアについて調べたところ、ミトコンドリアの機能が低下していることがわかりました。(文献6)
ミトコンドリアの主な機能は細胞のエネルギーを生成することです。この機能が弱まっているため、筋肉痛が長引いているのではないかと考えられています。
コロナウイルスと自己免疫の関係
近年の研究では、コロナ罹患後に自己免疫疾患、炎症疾患のリスクが高まることが報告されています。(文献4)
この研究では観察期間180日を超える新型コロナウイルス患者約314万例、そうではない人約376万例の計約690万例を検証しました。
その結果、新型コロナウイルスに罹患した人は関節リウマチや脱毛症といった自己炎症性疾患を患うリスクが高いことがわかりました。
自己炎症性疾患には筋肉痛を伴う病気もあります。長期化している場合は炎症疾患の可能性も考慮し、医師への相談も検討したほうがよいでしょう。
コロナ罹患後の運動が逆効果になることも
体力を回復しようと運動を行うと、さらに後遺症がひどくなってしまう可能性があるため注意が必要です。
コロナウイルスによって免疫機能が低下している場合、運動によって損傷を受けた筋肉繊維の回復に時間がかかってしまいます。
ダメージを受けたことによって、炎症を起こすリスクもあり、結果として筋肉痛の回復が遅れてしまう可能性もあります。まずは、かかりつけの医師に相談し、過度な運動は控えるようにしましょう。
コロナ後遺症による筋肉痛の治療法
コロナ後遺症による筋肉痛は時間経過によって治ることが多いとされています。厚生労働省の調査では、罹患18か月後に後遺症を訴える人は成人ではおよそ5%、小児では1%ほどでした。(文献5)
治療の基本としては痛みを抑える薬物療法が推奨されています。
しかし、コロナ後遺症の筋肉痛は様々な要因が絡んでいる可能性が高いといわれています。長期化している場合はリハビリテーションの実施も検討すべきでしょう。
また、精神的な要因が潜んでいる場合もあります。心理面でのケアも含め、多方面でのアプローチが必要になります。
コロナ後遺症の治療としての選択肢「再生医療」とは
コロナ後遺症には、再生医療という治療の選択肢もあります。
再生医療とは患者様自身から幹細胞を採取・培養し、患部に投与する治療法です。幹細胞は「分化能」という、さまざまな組織の細胞に変化する能力があります。
コロナ後遺症でお悩みで再生医療をご検討の際は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。
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まとめ|コロナ後遺症の筋肉痛は時間経過で治ることが多い!不安な場合はすぐかかりつけ医師に相談を
コロナ後遺症のひとつとして、筋肉痛はよく見られる症状のひとつです。
近年の研究では免疫や細胞の再生力の低下により、炎症を引き起こし筋肉痛を伴っている可能性が高いとされています。
コロナ後遺症による筋肉痛は時間経過によって治ることが多いため、継続的な薬物療法やリハビリテーションが効果的です。
また、コロナ後遺症の治療としては、再生医療という選択肢もあります。
長期的なコロナ後遺症に悩まされている人は、まずは病院にかかることをおすすめします。
文献1
東京都「東京iCDCリスクコミュニケーションチームによる都民1万人アンケート調査結果(2024年2月実施)」(2024年)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tosei/06_01_458(最終アクセス:2025年5月22日)
文献2
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COV ID-1 9)の罹患後症状について(研究報告、今後の厚生労働省の対応)」(2024年)pp.5-6
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001285610.pdf‘(最終アクセス:2025/5/22)
文献3
Brent Appelman,et al.(2024)Muscle abnormalities worsen after post-exertional malaise in long COVID
https://www.nature.com/articles/s41467-023-44432-3(accessed:2025/5/23)
文献4
Yeon-Woo Heo,et al.(2024)JAMA dermatology. 2024 Dec 01;160(12);1278-1287. pii: e244233.
https://pmc.carenet.com/?pmid=39504045# (accessed:2025/5/23)
文献5
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COV ID-1 9)の罹患後症状について(研究報告、今後の厚生労働省の対応)」(2024年)pp.7-8
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001285610.pdf‘(最終アクセス:2025年5月22日)
文献6
Appelman, B., et al. Muscle abnormalities worsen after post-exertional malaise in long COVID. Nature Communications. 2024;15:44432.
https://doi.org/10.1038/s41467-023-44432-3(最終アクセス:2025年5月22日)
文献7
新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kouisyou_qa.html(最終アクセス:2025年5月22日)