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高齢者の脊椎圧迫骨折|治療方法と期間・予防法を医師が解説

高齢者 圧迫骨折 治療
公開日: 2025.05.29

高齢で脊椎圧迫骨折と診断され、今後の治療の方法が気になる方もいるのではないのでしょうか。

高齢者の脊椎圧迫骨折は、当初はコルセットなどを着けて安静にしながら、リハビリに取り組んでいくのが一般的です。ただ、脊椎圧迫骨折は骨粗鬆症(骨粗しょう症)が関わっているため、日常生活を見直しながら骨を強くする習慣も欠かせません。

本記事では高齢者の脊椎圧迫骨折について、治療方法や期間、予防の方法を解説していきます。

高齢者の脊椎圧迫骨折の治療法

脊椎圧迫骨折の治療は、基本的には安静にすることが大切です。ただし、安静だけでなく、患者さんの状態に応じてさまざまな治療法を組み合わせて行います。

主な治療法には以下のようなものがあります。

  • 保存療法:コルセットやギプスを着用して安静を保つ
  • 薬物療法:鎮痛薬や骨粗鬆症の治療薬による症状緩和
  • 手術療法:骨セメント注入術や固定術による根本的治療
  • リハビリテーション:筋力維持と機能回復を目的とした訓練

それぞれの治療法について、詳しく解説していきます。

保存療法|コルセットやギプスの着用

保存療法は脊椎圧迫骨折の治療で、最も基本的な手段です。とりわけ高齢者の場合は、体力の負担を抑えながら回復を図れる方法としてよく用いられます。

具体的には、硬めのコルセットやギプスを腰回りに装着することで、脊椎や腰を安定させるものです。脊椎圧迫骨折が起きてから1ヶ月は、骨折部位が不安定な状態で変形もしやすいため、コルセットなどで安定させます。

保存療法では月日が経つ中で、骨折部位が固定するのを待つのがポイントです。同時に痛みも2週間から1ヶ月程度で、次第に収まってきます。ただ、骨折部位の完全な回復までは数ヶ月はかかるため、その間はコルセットなどを装着するのが一般的です。

薬物療法|鎮痛薬や骨粗しょう症の治療薬

続いて薬物療法は、骨折した箇所の痛みが特に強い場合に用いられます。基本的に湿布や飲み薬などの、市販薬や病院で処方された薬物を使用するやり方です。痛みの程度によっては、骨折部位の筋肉の緊張を和らげる目的で、筋弛緩薬も使われます。

加えて、症状が落ち着いて床を離れられる段階に、高齢者の脊椎圧迫骨折の主な要因である骨粗しょう症の治療薬も投与されます。

手術療法|骨セメント注入術や固定術

手術療法は、保存療法で状況が好転しない場合や骨折部位の変形が著しいなどの状況が見られる時に用いられる方法です。手術療法では、つぶれた骨の内部をバルーンで広げた後、骨セメントを注入して骨自体を安定化させる「骨セメント注入術」が活用されます。骨セメント注入術は手術療法でも、患者の体への負担が少ない点も特徴です。

骨セメント注入術以外にも、骨をボルトなどで固定する「固定術」もあります。固定術は骨折箇所が3ヶ月以上見られるなどの深刻な状況で使われる術式です。

リハビリテーション|筋力維持が目的

リハビリテーションは、基本的には骨折や手術の直後から始まります。治療が始まって間もない頃は、ベッドで安静にしていることが大切ではあるものの、安静にしている間は筋力が低下しやすいです。筋力が低下した場合、再度骨折する危険性さえあります。

骨折や手術から1週間は、専門スタッフの指導を受けながらベッドでできるエクササイズを行う流れです。1週間経過してコルセットで骨折部位を固定した後は、歩行訓練やバランス訓練を積極的に行います。

さらにコルセットやギプスを外した後は、足腰の筋力を回復させるための体幹トレーニングを進めていくのが一般的です。

高齢者の脊椎圧迫骨折の治療期間の目安

高齢者が脊椎圧迫骨折してしまった時、具体的にどの程度の期間にわたって治療が必要なのか、気になる方もいるのではないでしょうか。

脊椎圧迫骨折の治療期間は、数週間から数ヶ月程度が目安です。特に最初の1ヶ月は、安静と可能な範囲での筋力回復が欠かせません。順調に治療や回復が進んだ場合は、3~4ヶ月程度で骨折部位が癒合(骨がくっついて治癒)していきます。

ただし、高齢者は若い年代の方よりも骨の修復に時間がかかるため、骨折の状況や程度などによって治療期間が長引く場合もあります。

高齢者の脊椎圧迫骨折の予防法

脊椎圧迫骨折の要因は、骨の量や密度が減ってしまう骨粗しょう症です。そのため、普段から骨を強く丈夫に保つことが、脊椎圧迫骨折の予防につながります。

また、一度脊椎圧迫骨折を経験した方は、再発リスクが高いため、予防対策がより重要です。ここでは、脊椎圧迫骨折の具体的な予防法を解説します。

骨を強くする食生活が大切

脊椎圧迫骨折や骨粗しょう症を防ぐには、まず骨を強くする食生活を意識します。

骨を強くする栄養素には骨を生成するカルシウムや、カルシウムの吸収を促すビタミンD、筋力の強化や骨の形成を助けるたんぱく質などが挙げられます。カルシウムは牛乳やチーズなどの乳製品や、カタクチイワシのような小魚に多く含まれる栄養素です。

またビタミンDは、鮭やサンマなどの魚類や、マイタケやキクラゲなどのキノコ類から多く摂取できます。たんぱく質も肉や魚のほか、納豆や味噌のような大豆食品に多いです。

なお、ビタミンDは、食事以外にも日光を浴びることでも生成されるため、意識的な外出や日光浴もおすすめできます。

適度な運動を取り入れる

骨粗しょう症、ひいては脊椎圧迫骨折を防ぐ上で適度な運動も効果的とされる方法です。

運動は骨に負荷を与えることで、骨密度を高めます。同時に筋力の維持・強化によって足腰が鍛えられ、脊椎への負荷が分散されるため、骨折のリスクを下げる効果も期待できます。

脊椎圧迫骨折の予防に役立つ運動には、ウォーキングが挙げられます。適度な負荷で骨の強化が期待でき、運動習慣がない方でも気軽に始められます。慣れてきたら、ジョギングなどより強度の高い運動に段階的に取り組むのも効果的です。

自宅内の歩行にも注意

脊椎圧迫骨折を予防するには、自宅内での歩行にも注意を払う必要があります。脊椎圧迫骨折を引き起こす人は、骨粗しょう症で骨密度が下がっている分、ちょっとした転倒や尻もちで骨折しやすいためです。

自宅内で歩く際には、段差や滑りやすい床は特に注意すべき箇所です。玄関や階段などにはあらかじめ手すりを設置し、歩く際もつかまるようにすれば転倒による骨折のリスクを下げられます。同時に滑りやすい床には、滑り止めシートやマットを敷くのもおすすめです。

脊椎圧迫骨折の治療でやってはいけないことは?

脊椎圧迫骨折の治療では、やってはいけない行為もいくつかあります。具体的には次のとおりです。

  • あおむけの状態で寝る:背中への負荷が大きくなるため、横向きの姿勢を推奨。
  • 前かがみになる:骨折した部位に負荷がかかるため。
  • 重い物を持つ:背骨に強い力や負荷がかかる。特に床に置いてあるものの持ち上げは禁忌。
  • 体をひねる・反らす:骨折部位に負荷がかかり悪化の原因となるため。
  • 飲酒・喫煙:骨の強度や密度を弱めるため。

これらの注意点を守ることで、症状の悪化や再発を防ぐことにつながります。不明な点があれば、必ず医師に相談してから行動しましょう。

まとめ|脊椎圧迫骨折は日頃からの予防が大事です

高齢者の脊椎圧迫骨折の治療は、基本的に保存療法で安静にしながら、運動やリハビリテーションを取り入れていきます。しかし、脊椎圧迫骨折自体は骨粗しょう症が根本的な原因であるため、骨を強くするための食事や運動の改善が重要です。

逆に考えれば、日頃から規則正しい食事や適度な運動を通じて骨粗しょう症を予防すれば、脊椎圧迫骨折のリスクは下げられます。

骨粗しょう症や脊椎圧迫骨折への対策を立てたい方は、日頃の食生活や運動の習慣を見直しましょう。

高齢者の脊椎圧迫骨折の治療に関してよくある質問

高齢者の圧迫骨折は治る?

高齢者の圧迫骨折は、コルセットなどで固定した状態での安静と運動を行うことで、2~3ヶ月程度で治るケースが多いです。

根本的な原因として骨粗しょう症があるため、日常生活の見直しや骨の強化で再発を防止できます。

高齢者の腰椎圧迫骨折の入院期間はどのくらい?

高齢者が腰椎圧迫骨折の手術を目的にした入院期間は、基本的には1週間程度が一般的です。

ただし、まれに合併症を引き起こす場合があり、その際には入院期間が延びることがあります。

なお、退院後も経過の確認のために、定期的な通院が必要です。

高齢者の圧迫骨折は寝たきりになりやすい?

高齢者は圧迫骨折がきっかけで寝たきりになるケースがあります。

骨折によって寝たり起きたりするだけでも痛みに苦しめられるため、体を動かす気力が下がってしまうためです。

痛みを恐れて体を動かさない状態が続くと筋力が低下し、さらに動くことが困難になり、寝たきりになってしまうことがあります。

圧迫骨折は放置するとどうなる?

圧迫骨折を適切に治療せずに放置すると、骨折した骨がつぶれたまま固まってしまい、背中が曲がった状態になることがあります。また、骨がきちんとくっつかずに、長期間痛みが続く場合もあります。

さらに、圧迫骨折を起こす方は骨がもろくなっていることが多いため、他の背骨や別の部位でも骨折を起こしやすいです。このため、一度圧迫骨折を起こした場合は、骨密度の検査や骨粗しょう症の治療を受けることが重要です。

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