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シーバー病とは?原因・治療・再発防止を医師が解説

「最近、かかとが痛いと子どもが言い出した」「練習後はつま先で歩いている気がする」
このようなお悩みを持たれている保護者の方もいらっしゃることでしょう。
お子さまのかかとの痛みは、多くの場合シーバー病と呼ばれる成長期特有の疾患が原因です。
適切な知識と対処法を身につけることで、お子さまの痛みを和らげ、スポーツを継続できるようになります。
本記事では、シーバー病の原因・症状・治療法から、再発防止やスポーツ復帰のポイント、そして当院で受けられる再生医療まで詳しく解説いたします。
保護者の皆さまが抱える不安を解消し、お子さまの健やかな成長をサポートするための情報をお届けしますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
シーバー病とは?成長期の子どもに多いかかとの痛み
シーバー病は、成長期の子どもに特有のかかとの痛みを引き起こす疾患です。
正式には「踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)」と呼ばれ、10歳前後の活発な男の子に多く見られます。(文献1)
この病気の特徴は、踵骨(かかとの骨)の成長板と呼ばれる部分に繰り返し負荷がかかることで炎症が生じ、痛みや腫れを引き起こすことです。
成長期の骨は大人の骨と異なり、踵骨軟骨と呼ばれる軟骨のため、運動による繰り返しの負荷によって炎症を起こしやすくなっています。
シーバー病の痛みは、運動中や運動後に現れることが多く、安静にすると症状が軽減されますが、朝起きたときの一歩目や、長時間座った後に立ち上がるときにも痛みを感じることがあります。
多くの保護者はこのまま放置して大丈夫なのかを心配されていると思いますが、早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
適切な対処を行わずに放置してしまうと、痛みが慢性化し、日常生活に支障をきたす可能性がありますが、正しい知識を手に入れ、対処法を実践すれば多くの場合で症状の改善が期待できます。
シーバー病の原因と発症メカニズム
シーバー病の発症には、いくつかの要因が複合的に関与しています。
最も大きな原因は、成長期のかかとの骨に対する過度な負荷です。
アキレス腱・足底腱膜の牽引ストレスとは?
アキレス腱や足底腱膜は、かかとの骨に直接付着している重要な組織です。
これらの組織が硬くなったり緊張したりすると、運動時にかかとへの牽引ストレス(引っ張る力)が増加します。
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐ太くて強い腱で、走ったり跳んだりする動作のたびに、この腱がかかとの骨を強く引っ張ります。
足底腱膜は、足の裏全体に広がる膜状の組織で、歩行時の衝撃を吸収する役割を担っており、成長期の子どもは、骨の成長に対して筋肉や腱の成長が追いつかないことがあります。
この成長のアンバランスにより、アキレス腱や足底腱膜の柔軟性が低下し、かかとへの牽引ストレスが強くなりやすい状態になってしまします。
このストレスが繰り返されることで、成長期の柔らかい踵骨の成長板に炎症が生じ、シーバー病を発症してしまいます。
また、偏平足や足の形状、不適切な靴の使用なども、かかとへの負担を増加させるリスク要因となります。
とくに、靴選びは重要です。クッション性の乏しい靴や、サイズが合わない靴を使用すると、さらに症状が悪化する可能性があります。
どんな症状が出る?家庭でできるセルフチェック
シーバー病の症状を早期に発見するためには、保護者の方が日常的にお子さまの様子を観察することが大切です。
以下のような症状やサインが見られる場合は、シーバー病の可能性を疑いましょう。
チェック項目 | 症状の詳細 |
---|---|
かかとを押したときの痛み | 親指でかかとの後ろ側を軽く押して痛がる |
朝起きたときの痛み | ベッドから起き上がる最初の一歩で痛がる |
運動後の痛み | 練習や試合の後にかかとを痛がる |
歩き方の変化 | つま先立ちで歩いたり、歩き方がおかしい |
長時間座った後の痛み | 椅子から立ち上がるときに痛がる |
運動後の痛み
運動後にかかとに痛みを感じるのは、シーバー病の最も典型的な初期症状の一つです。
とくに、サッカーやバスケットボール、陸上競技など、ジャンプや走る動作を繰り返すスポーツに取り組んでいるお子さまに多く見られるので、練習や試合が終わった後にかかとの痛みを訴えたり、つま先立ちで歩いている場合は要注意です。
初期段階では軽い違和感程度かもしれませんが、放置すれば痛みは徐々に悪化し、やがて日常生活にも影響を及ぼす可能性があります。
とくに疲労が蓄積しやすい連続した練習日や、練習量が急に増えた時期には注意が必要です。
ので、お子さまが運動後の違和感を口にした場合は、それを見逃さずに適切な対処を始めることが予防の第一歩となります。
朝一番の痛み
朝起きた直後に感じるかかとの痛みも、シーバー病の代表的な症状の一つです。
これは、睡眠中に筋肉や腱が硬くなり、起床して最初に動作を行うときに成長板への張力が急激にかかることで生じています。
ベッドから起き上がって最初の一歩目に痛みがある場合は、炎症がある程度進行しているサインでもあります。
多くの場合、歩いているうちに痛みは軽減しますが、症状が繰り返すようであれば、セルフケアだけでなく医療機関へ相談しましょう。
朝の痛みを放置すると、日中の活動にも支障をきたすようになり、お子さまの生活の質に大きな影響を与える可能性があります。
歩き方の変化
シーバー病の進行に伴い、お子さまの歩き方に変化が現れることがあります。特徴的な変化は、かかとの痛みを避けるためにつま先歩きをするようになる点です。
痛いかかとに体重をかけることを本能的に避けようとする自然な反応ですが、長期間このような歩き方を続けると症状の悪化を引き起こします。保護者や指導者の方は注意深く観察しましょう。
観察するポイントは以下の通りです。
- つま先立ちで歩いている
- 片足をかばうような歩き方をしている
- 歩く速度が遅くなった
- 階段の昇り降りを嫌がるようになった
これらの異常が見られた場合には、早期に専門医の診察を受けましょう。
シーバー病はどのくらいで治る?回復までの期間と注意点
シーバー病の回復期間は、症状の程度や対処法の適切さによって大きく異なりますが、一般的には数カ月から1年程度とされています。
ただし、これはあくまで目安であり、個人差が非常に大きい疾患です。
軽度の場合では、適切なケアを行うことで1〜2カ月程度で症状が改善する場合もありますが、症状が進行してから治療を開始した場合や、不適切な対処により症状が悪化した場合は、回復に1年から数年程度かかることもあります。
回復期間を左右する重要な要因として、以下の点が挙げられます。
要因 | 回復への影響 |
---|---|
発見の早さ | 早期発見ほど回復が早い |
運動の調整 | 適切な休息で回復促進 |
成長段階 | 成長期真っ盛りは時間がかかりがち |
個人の体質 | 治りやすさに個人差がある |
早期発見と適切な対処が何より大切です。お子さまのSOSと真剣に向き合ってあげることで、回復期間を大幅に短縮できます。
また、痛みがなくなったからといって完全に治ったわけではありません。
運動を再開する際は、段階的に進めることが重要です。ウォーキングやストレッチからはじめて、徐々に負荷をあげ、最終的には元の運動量に戻しましょう。
そして、シーバー病は成長に伴う疾患であるため、お子さまの成長が完全に終了するまでは再発の可能性も考慮してください。
シーバー病を早く治すための保存療法とセルフケア
シーバー病の早期改善には、保存療法とセルフケアの適切な組み合わせが効果的です。
手術が必要になることはほとんどありません。多くの場合で手術をしない保存治療により症状の改善が期待できます。
保存療法の基本は、患部の安静を保ち、必要に応じてアイシングを行い、テーピングやインソールを使用してかかとへの負担を軽減しましょう。
セルフケアとしては、ふくらはぎや足底筋膜のストレッチ、足裏のマッサージが効果的です。これらの方法を組み合わせることで、シーバー病の症状を早期に改善し、再発を防げます。
重要なのは、一つの方法に頼るのではなく、複数のアプローチを並行して行うことです。お子さまの症状や生活スタイルに合わせた組み合わせを見つけましょう。
テーピングとアイシングの使い方
テーピングとアイシングは、シーバー病の症状軽減に非常に有効な手段です。テーピングは、かかとへの負担を軽減し、痛みを和らげる効果があります。
適切な巻き方を習得すると、日常生活や軽い運動時の痛みを大幅に軽減できるため、以下の基本的なテーピングの手順を抑えておきましょう。
基本的なテーピング手順は以下の通りです。
- 足首の力を抜いて、つま先を内側に入れる。
- 小指の付け根からテーピングの端を貼り付け、かかとに巻き込んでピンと張る様に貼り付ける。
- 余った部分は足を巻き込むように斜め上に上げて貼り付ける。
テーピングは毎日交換し、皮膚のかぶれに注意しながら使用してください。
アイシングは炎症を抑え、痛みを軽減するために重要な処置です。運動後や痛みが強いときに、かかと中心に15〜20分程度のアイシングを行うことで、症状の悪化を防げます。
これらの方法を適切に組み合わせて、早期回復を促進しましょう。
ストレッチと靴・インソールの工夫
シーバー病の予防や症状改善には、ストレッチとインソールの工夫が大きな役割を果たします。
アキレス腱やふくらはぎのストレッチは、牽引ストレスの軽減につながり、かかとへの負担を大きく減らします。
足首ストレッチ
椅子に座り、片足をもう片方の太ももの上に乗せて、足首を手でつかみます。
もう片方の手で足の指と手の指を組んで、ゆっくりと大きく足首を回してください。痛みのない範囲で20回程度回したら、逆足も同様に行います。
階段ストレッチ
かかとはふくらはぎの筋肉と密接につながっているため、ふくらはぎが硬いとシーバー病のリスクが高まります。
うつ伏せになって腕立て伏せの姿勢を取り、片足をもう片方の足首の上に乗せます。下の足のかかとを床につけることで、ふくらはぎとアキレス腱の心地良い伸びを感じられます。
20秒キープして、逆足も同様に行ってください。
靴に関しては、クッション性が高く踵をしっかりとサポートできる構造のものを選ぶことが重要です。
適切な靴選びのポイントは以下の通りです。
- かかと部分にしっかりとしたクッションがある
- 足のサイズに正確に合っている
- アーチサポート機能がついている
- 古すぎずクッション性が保たれている
インソールの活用も重要です。市販のクッション性インソールや、必要に応じて医療用インソールの使用を検討してください。
これらの対策を組み合わせることで、症状の改善と再発防止の両方を実現できます。
シーバー病の再発防止とスポーツ復帰時の注意点
シーバー病は適切な治療により症状が改善しても、フォームやトレーニング内容を改善しないままだと再発するリスクが高い疾患です。
再発防止のためには、根本的な原因への対処と、段階的なスポーツ復帰を考えておきましょう。
痛みが無くなったらまずは軽いウォーキングとストレッチからはじめ、問題なければジョギング、そして習っているスポーツの動作練習と移行していき、最終的には通常練習へと復帰するのが理想です。
定期的に痛みの確認を行い、各段階で痛みが出現した場合は前の段階に戻って様子を見ましょう。一般的には1〜2カ月でこれまで通りスポーツができるようになります。
保護者の方は、お子さまがもう大丈夫と言っても、組織の回復には時間がかかることを理解し、長期的な視点でサポートしてあげてください。
また、指導者との連携も大切です。お子さまの状態を正確に伝え、無理をさせないよう配慮を求めてください。
シーバー病の受診のタイミングと当院の再生医療の選択肢
シーバー病の症状が現れた場合、適切なタイミングで医療機関を受診しましょう。
以下のような受診すべき症状がないかチェックしてください。
- 2週間以上痛みが持続している
- 歩行にも支障が出ている
- 片足ではなく両足に痛みがある
- 安静にしていても痛みが続く
- 痛みが徐々に強くなっている
これらの症状がある場合、セルフケアだけでは改善が困難な可能性があります。
一般的な保存療法で改善しない場合、リペアセルクリニックでは、PRP(多血小板血漿)を用いた再生医療もご案内可能です。
PRP療法の特徴として、以下の点があげられます。
- 患者さま自身の血液から血小板を濃縮した液体を精製する治療
- 細胞の代謝プロセスに関与する成長因子を豊富に含む
- 入院を必要とせず治療期間が短い
- 副作用のリスクが少ない
当院の再生医療は、お子さまの成長段階や症状の程度を十分に考慮した上で治療プランをご提案します。PRP療法について知りたい方は以下のリンクをご確認ください。
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まとめ|シーバー病は早期発見と正しいケアが重要です
シーバー病は、成長期の子どもによく見られる疾患ですが、放置してしまうと症状が長引き、お子さまのスポーツ活動や日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
しかし、適切な知識と対処法を実践することによって、多くの場合で症状の改善が期待できる疾患でもあります。
早期発見のためには、運動後の痛み、朝起きたときの痛み、歩き方の変化など、お子さまの日常の変化に注意を払うことが大切です。
家庭でのセルフケアとしては、適切なストレッチ、アイシング、テーピング、そして靴・インソールの工夫をしましょう。
そして、再発を防ぐためには正しいフォームの習得、段階的なスポーツ復帰、そして継続的なリハビリを意識した運動習慣の見直しが必要です。
症状が長引く場合や、通常の治療で改善が見られない場合は、再生医療などの選択肢もあるので、シーバー病でお悩みの方は当院にお気軽にご相談ください。
適切な診断と治療により、お子さまが再び元気にスポーツを楽しめるよう、全力でサポートいたします。
参考文献
(文献1)
済生会「踵骨骨端症(アポフィサイティス)」
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/apophysitis_of_the_calcaneus/ (最終アクセス:2025年5月24日)