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頚椎症性脊髄症の手術成功率は?手術の効果や注意点を解説

「頚椎症性脊髄症の手術、成功率はどのくらいなんだろう?」
医師から手術が必要といわれ、成功率を調べた方も多いのではないでしょうか。首の手術と聞いて、成功するのか、後遺症は残らないのか、不安や疑問を感じることもあるでしょう。
頚椎症性脊髄症の手術成功率は約50~80%です。しかし、この数字だけでは判断できません。手術のタイミング、年齢、症状の進行度によって結果は大きく変わるからです。
この記事では頚椎症性脊髄症の手術の成功率について解説します。
手術内容や後遺症、手術後の過ごし方や注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
頚椎症性脊髄症の手術成功率は?
頚椎症性脊髄症の手術で症状が改善する割合は、49.4%~79.2%です。(文献1)
この数値は、日本整形外科学会が定めた、症状の程度や治療効果を評価する「JOAスコア」によるものです。
およそ50%以上の人が手術によって症状が改善されています。ただし、手術するタイミングによっては症状があまり改善されない場合もあります。
症状が悪化して歩けない状態の場合、手術をしても症状が改善しないことがあります。また、手術による合併症や後遺症のリスクもまったくないわけではありません。
医師と相談し、手術するメリットとデメリットを十分に理解して判断することが重要です。
頚椎症性脊髄症の手術の種類と内容
頚椎症性脊髄症の症状が軽度〜中程度の場合、頚椎カラーや痛み止め薬などを用いて症状を緩和する保存療法で治療を進めます。
しかし、数カ月経っても症状が改善されない場合や、手足のしびれや運動障害が酷くなった場合には手術療法が検討されます。
手術方法は主に、首の前方から手術をする「前方除圧固定術」と首の後ろから患部の手術をする「後方除圧術」の2通りです。
それぞれの手術方法について詳しく紹介します。
前方除圧固定術
前方除圧固定術は、脊髄を圧迫する原因を首の前から取り除き、隙間ができた部分をチタン製のケージや人工骨、プレートなどを用いて固定する方法です。
圧迫要因が前方に近い場合や、圧迫されている範囲が比較的少ない場合この手術が適用されます。
頚椎の変形に関する疾患では一般的に広く用いられる手術方法である一方、手術の難易度が高い点が特徴です。
起こりうる合併症として、移植骨の沈下や隣接椎間障害が挙げられます。
後方除圧術(椎弓形成術)
後方除圧術(椎弓形成術)は背中側から頚椎に侵入し、圧迫要因を取り除く手術です。
人工骨などを用いて脊柱管を広げ、脊髄の圧迫を和らげます。
手術範囲が広い場合に後方除圧術が適用されることが多いです。
後方除圧術で見られる合併症としては移植骨の沈下、隣接椎間障害のほか、腕や肩に麻痺が見られることがあります。
頚椎症性脊髄症の手術をすべきタイミング
頚椎症性脊髄症は、手術するタイミングが重要です。
決め手となるのは、患者様本人の「年齢」と「症状の進行度」です。
それぞれ適したタイミングはいつなのか解説します。
年齢
高齢の患者とそうではない患者の手術後の改善率を比較すると、高齢の患者のほうが改善率は低かったという結果も出ています。(文献2)
高齢者は手術前の時点で症状が既に重くなっていることが多く、病気の進行度を示すJOAスコア(症状の重さを数値で表したもの)が低い状態から治療を始めることになります。これが改善率の低さにつながっています。
そのため、高齢の方が手術を受ける場合は、歩行障害などの症状が完全には改善せず、ある程度残ってしまう可能性があることを理解しておく必要があります。
このことから、手術を検討する場合は、できるだけ若いうちに決断することが重要です。
症状の進行度
頚椎症性脊髄症の手術を検討しているのであれば、歩行ができるうちに手術を受けましょう。症状が進行し重症化してしまうと、手術をしても効果が得られない可能性があります。
頚椎症性脊髄症が重症化すると、足をひきずるなどの歩行障害、ボタンを留めるなどの細かい動作がやりづらくなる巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい)などが起こります。
さらに、歩けなくなり身体を動かさなくなると、足の筋肉が衰えてしまいます。衰えた状態から再び筋肉を増やし、歩行ができるまで回復を目指すのは困難です。
そのため、手術を検討しているのであれば、歩行ができるうちに受けた法が良いと考えられます。医師とよく相談の上で決めましょう。
頚椎症性脊髄症手術後の経過とリハビリ
手術後の入院期間はおよそ2〜4週間ほどです。術後は頚椎カラーで首を固定する場合もあります。
手術によって脊髄の圧迫は改善されますが、それだけで治療が完了するわけではありません。
手足のしびれや運動障害によって身体をあまり動かせていないと、日常生活を送るために必要な筋肉が衰えてしまいます。
そのため、手術後は歩行訓練や筋力トレーニングなどのリハビリテーションをします。
手術をしたから大丈夫と油断すると、症状が悪化してしまうこともあります。頚椎に負担がかからないよう、普段の生活の中でも工夫が必要です。
- 寝る際にはうつぶせ寝や横向きで寝ない。
- 長時間上向きや下向きになる姿勢をとらない。
- 読書やテレビ、スマートフォンの使用時は長時間熱中してしまうことがあるため、意識的に休憩を取る。
これらの点を心がけ、症状の回復を目指しましょう。
頚椎症性脊髄症手術後に発生する可能性がある後遺症
頚椎症性脊髄症の手術後、軸性疼痛と呼ばれる首から肩にかけての痛みが強くなってしまう症状や、手足の痺れ、膝関節の可動が悪くなるといった後遺症が見られることがあります。
手術方法によっても、それぞれ異なる合併症のリスクがあります。
前方除圧固定術で手術をした場合、手術時に気道を損傷することがごくまれにあります。
そのほか合併症として嚥下障害や急性的な上気道障害を起こすこともありますが、大半の場合は一過性です。
後方除圧術で手術をした場合は、脊椎が通常よりも後ろに弯曲してしまう「後弯変形」が見られることがあります。
これらのリスクについても事前に医師とよく相談し、十分に理解した上で手術を検討することが大切です。
頚椎症性脊髄症に対する治療の一つ「再生医療」とは
再生医療とは、自己再生能力を持つ「幹細胞」という細胞を用いる治療法です。
幹細胞は神経や血管、筋肉などさまざまな細胞に変化する能力「分化能」があります。この幹細胞を患者様自身の脂肪から採取し、培養したものを患部に投与します。
頚椎症性脊髄症に対する再生医療については、以下の治療内容もご覧ください。
まとめ|頚椎症性脊髄症の手術成功率は50〜80%!手術を受けるタイミングが重要
頚椎症性脊髄症の手術で症状が改善する確率は、およそ50%〜80%です。
手術方法はおもに前方除圧固定術と後方除圧術(椎弓形成術)の2つの方法がありますが、いずれの手術でも同様の改善率が報告されています。
一方で、手術後に首から肩にかけてしびれるような痛みが起こったり、手足のしびれや関節の可動域が下がるといった後遺症が起こることがあります。
合併症を起こすこともあるため、手術によるリスクも理解しておくことが重要です。
また、頚椎症性脊髄症は、手術するタイミングによって症状の改善率が変わる可能性があります。
高齢の場合や症状が進行し重症化している場合、手術をしても大きな改善が見られない場合があります。
とくに歩行が困難になった後の手術は、あまり効果が得られません。手術を検討する場合は、適した時期を医師と相談し決めましょう。
手術を伴わない治療法をご検討の際は、再生医療も選択肢になります。再生医療をお考えの方は、お気軽に当院「リペアセルクリニック」までお問い合わせください。
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参考文献