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コーヒーは下肢静脈瘤に悪影響を及ぼす?双方の関係性について現役医師が解説

「下肢静脈瘤にコーヒーは良くないの?」
「静脈瘤に良くないのなら控えようと思うけれど、ストレスになりそう」
コーヒーを好まれる方の中には、このような不安や悩みを抱えている方もいらっしゃるでしょう。
結論として、下肢静脈瘤とコーヒーに関する明確な因果関係は、現時点では認められていません。
ただし、コーヒーに含まれるカフェインには注意すべき作用があります。
本記事では、下肢静脈瘤とコーヒーの関係や、下肢静脈瘤の方もコーヒーを楽しむための方法などを解説します。
下肢静脈瘤への不安を解消し、コーヒーを安心して楽しむためにも、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
コーヒーが下肢静脈瘤に関係する医学的根拠は確認されていない
現在の医学的見解では、「コーヒーを飲むことで下肢静脈瘤が悪化する」といった明確な根拠は確認されていません。スウェーデン及びアメリカの研究機関による共同研究においても、コーヒーと下肢静脈瘤発症の関係は不明との結果が示されました。(文献1)
この章では、カフェインが持つ作用と下肢静脈瘤の関係性について解説します。
コーヒー(カフェイン)が血管に与える影響
カフェインには血管収縮作用があるとされています。アメリカの論文によると、コーヒーを飲んだときは飲まないときと比較して、脳の血流が速くなり脳血管が収縮しているとの結果が得られました。(文献2)
広島大学の研究では、カフェインは血管内壁の機能を上げて、血管を拡張させる作用があるとの結果が得られました。(文献3)
カフェインは血管に少なからず影響を与えますが、静脈瘤の発症および悪化との関連は示されていません。
コーヒー(カフェイン)が持つ利尿作用
コーヒーに含まれるカフェインには利尿作用があります。フランスの論文では、「カフェインは、主に腎臓での血液ろ過機能の抑制により利尿作用を生じさせる」とのメカニズムが示されました。(文献4)
そのため、コーヒーを飲み過ぎると体内の水分が減りやすくなります。水分不足により血液が濃くなると、足の血流がさらに滞り、静脈瘤のリスクを間接的に高める可能性があります。
カフェインの利尿作用が、下肢静脈瘤の発症や悪化を招く可能性もゼロではありません。
下肢静脈瘤でお悩みの方がコーヒーを楽しむための工夫
下肢静脈瘤でお悩みの方がコーヒーを楽しむための工夫として、以下の3つが挙げられます。
- コーヒーとは別に水分も補給する
- 1日3杯を目安に適量飲む
- 夜間は控えて日中に飲む
コーヒーとは別に水分も補給する
コーヒーは水分補給にカウントせず、あくまで楽しみの1つと考えましょう。
人体の約60%は水分であり、それを維持するためにも1日2.5リットルの水分摂取が必要です。食事で摂れる水分が約1リットルであり、体内で作られる水分が約0.3リットルであるため、経口摂取する水分は約1.2リットルが目安です。(文献5)
コーヒーを適量飲みつつ、その他に水や白湯、ノンカフェインのお茶などで水分を補給しましょう。適切な水分補給は血液の流れをスムーズにし、足のむくみやだるさを予防します。
1日3杯を目安に適量飲む
適切な量を守れば、下肢静脈瘤の方もコーヒーを楽しめます。
一般成人の場合、健康に悪影響を及ぼさないコーヒー摂取量は1日3杯程度です。
ドリップ式のコーヒーでは、マグカップ1杯(237ml)に約100mgのカフェインが含まれます。インスタントコーヒーでのカフェイン量も、ほぼ同量です。カナダ保健省では、健康な成人のカフェイン1日摂取目安量を400㎎としています。コーヒーに換算すると3~4杯程度です。(文献6)
カフェインが多く含まれている飲み物の種類とカフェイン含有量を、表に示しました。(文献6)
飲み物 | カフェイン含有量 |
---|---|
ドリップ式コーヒー | 100mlにつき60mg |
インスタントコーヒー | 100mlにつき57mg |
缶コーヒー・コーヒー飲料 | 100mlにつき10mg未満~90mg |
玉露 | 100mlにつき160mg |
紅茶 | 100mlにつき30mg |
煎茶 | 100mlにつき20mg |
ほうじ茶 | 100mlにつき20mg |
ウーロン茶 | 100mlにつき20mg |
エナジードリンク | 100mlにつき32~300mg |
この表を参考に、コーヒーを含むカフェイン飲料の1日量を設定すると良いでしょう。
夜間は控えて日中に飲む
カフェインには覚醒作用があり、3時間程度持続します。就寝3~4時間前にコーヒーを飲むと、就寝時にも覚醒作用が続き、入眠を妨げたり睡眠が浅くなったりするなど、いわゆる「睡眠の質低下」を招きます。(文献7)
そのため、コーヒーを飲むときは睡眠への影響が少ない日中の時間帯を選びましょう。
また、下肢静脈瘤の症状である足のこむら返りやむずむず感、かゆみなどにより睡眠の質が低下することがあります。睡眠不足は全身の健康に影響するため、良質な睡眠の確保が大切です。
コーヒーが体に及ぼす影響と望ましい飲み方については、下記の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
【コーヒー以外】下肢静脈瘤でお悩みの方が日常生活で気をつけるべきポイント
下肢静脈瘤でお悩みの方は、長時間の同じ姿勢や締め付けの強い衣服および、靴の着用を避けましょう。
長時間の同じ姿勢や圧迫は、下肢の血流を妨げてしまい、足先から心臓へ血液が戻りにくくなる状況をつくり出します。その結果、下肢静脈に負担がかかり、静脈瘤の発生や悪化を引き起こします。
喫煙も血管の機能障害につながり、下肢静脈瘤に間接的な悪影響を及ぼすため、禁煙につとめましょう。
足をこまめに動かす、圧迫する衣服や靴は控える、禁煙につとめるなどが、日常生活で気をつけるべきポイントです。
下肢静脈瘤でやってはいけないことやセルフケアの方法については、以下の2記事でも解説しています。あわせてご覧ください。
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【関連記事】
下肢静脈瘤でやってはいけないことを現役医師が解説|日常生活から意識して悪化を防ごう
【医師監修】下肢静脈瘤を自分で治すことはできるのか|セルフケア方法とあわせて解説
コーヒーと上手に付き合いつつ下肢静脈瘤の予防につとめよう
コーヒーが下肢静脈瘤を悪化させる医学的な根拠は存在していません。
カフェインが血管に与える影響は少なからず存在しますが、下肢静脈瘤との関係は現時点では不明です。ただし、コーヒーに含まれる利尿作用によって、体内の水分不足が生じ、下肢静脈瘤に良くない影響を与える可能性があります。
下肢静脈瘤でお悩みの方がコーヒーを楽しむためには、コーヒー以外の水分摂取も心がける、適量を守る、夕方以降のコーヒーを控えるなどの工夫が必要です。
コーヒーとの付き合い方に加えて、生活習慣の改善が必要な部分もあります。
好きなコーヒーを無理に我慢せず、本記事を参考にしつつ適度に楽しむ方法を見つけましょう。
その中で、下肢静脈瘤と思われる症状が出現、もしくは悪化した場合は我慢せず、医療機関を受診してください。
リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。下肢静脈瘤についてお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
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下肢静脈瘤とコーヒーに関するよくある質問
下肢静脈瘤の場合アルコールはよくありませんか?
アルコールもカフェイン同様に利尿作用があります。アルコールには、バソブレッシン(抗利尿ホルモン)の分泌を抑制する作用があるためです。
ビールを例にとると、1リットルのビールで1.1リットルの水分が失われるとされています。(文献8)
そのためアルコールも、コーヒーと同じように下肢静脈瘤のリスクを間接的に高める可能性があります。
下肢静脈瘤に良い飲み物には何がありますか?
水や麦茶、白湯、ハーブティーなどカフェインが含まれていない飲み物が良いでしょう。
一度にたくさん飲むよりも、少量ずつ何回かに分けて飲む方が望ましいでしょう。人間の身体が吸収できる水分量は30分でコップ1杯ほどとされているためです。(文献9)
参考文献
Vascular effects of caffeine found in BOLD fMRI|Journal of Neuroscience Research
Effects of Acute Administration of Caffeine on Vascular Function|The American Journal of Cardiology
Mécanismes de l’effet diurétique de la caféine|médecine/sciences
カフェインと睡眠|NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター