- 内科疾患、その他
- 内科疾患
ジストニアの症状を現役医師が解説|局所性・心因性の特徴や治療法を紹介

目や口が開けづらい、または字が書きづらいといった症状が見られ、ジストニアを疑う方もいるでしょう。ジストニア症状の判別は、医師の診断が必要です。
また、ジストニアといっても局所性や全身性、心因性などさまざまな種類があります。症状回復には、原因を踏まえた上で、適切な治療を行うことが大切です。
本記事では、ジストニア症状を種類別に解説します。主な治療法も紹介するので、眼瞼けいれんや書痙などに悩む方はぜひ参考にしてください。
目次
ジストニア症状とは
ジストニア症状とは、自分の意志とは関係なく筋肉がこわばってしまい、姿勢や運動に異常をきたす不随運動疾患です。発症の原因は解明されていませんが、主に脳からの指令に障害が起こっている可能性が考えられています。
ジストニアが発症する部位は、手や足、首などさまざまです。また、種類によって引き起こされる症状や現れるタイミングは異なります。
ジストニア症状の診断は症状や身体診察の結果に基づいて判断されるため、疑いがある場合は早めに専門機関を受診しましょう。
イップス・てんかんとの違い
ジストニア症状と類似するイップスやてんかんには、以下の違いがあります。
イップス |
ゴルフや野球などのスポーツにおいて、無意識に筋肉がこわばって思うようなプレーが急にできなくなる運動疾患 |
---|---|
てんかん |
大脳の電気的な興奮が発生する場所によって繰り返し引き起こされる慢性疾患 |
イップスを発症する主な要因は、プレッシャーなどによる心因的ストレスです。医学的な病名ではないため、局所性ジストニアの一種と考えられる場合もあります。
対して、てんかんは脳疾患に分類されています。似た症状が見られるものの、運動疾患に分類されるジストニアとは定義や発症のメカニズムなどが異なるため、正確な診断が必要です。
ジストニアの主な初期症状
ジストニアは発症する筋肉の部位によって、異なる症状を引き起こすものの、くねらせた動きやねじれが特徴です。
主な初期症状は、以下の通りです。
- 目や口が開けづらい
- 字が書きづらい
- 首や肩が勝手に傾く
- 話す際に舌が出る
- 歩行中に足や身体が曲がる
発症パターンのなかには、字を書くときなど特定の動作をするときだけに現れるケースもあります。ジストニア症状は局所的に発症するほか、病状の進行によって全身に出る場合もあります。
ただし、筋肉のこわばりやつっぱりなどの症状では、ジストニアとは判断するのが難しい点に注意が必要です。不随意運動や姿勢異常が見られた場合は、専門機関を受診しましょう。
【種類別】ジストニアの症状と原因
ジストニアは、種類によって症状や発症の原因が異なります。主な種類は、以下の6つです。
- 局所性ジストニア
- 分節性ジストニア
- 全身性ジストニア
- 心因性ジストニア
- 薬剤性ジストニア
- 遺伝性ジストニア
それぞれの症状や原因を解説するので、参考にしてください。
局所性ジストニア
局所性ジストニアでは、手や足など身体における1つの部位に症状が見られます。成人で発症したジストニアの多くは、局所性ジストニアといわれています。(文献1)
局所性ジストニアの主な症状は、以下の通りです。
- 眼瞼けいれん
- れん縮性斜頸
- けいれん性発声障害
- 書痙
局所性ジストニア症状は、同じ動作を長期間繰り返し行う場合に発症する可能性があります。そのため、音楽家や漫画家、美容師など特定の職業の方が発症するケースも見られます。
分節性ジストニア
分節性ジストニアでは、頸部と体幹や頭頚部2か所など、隣接する2つ以上の部位に症状が見られます。主な症状は、以下のように局所性ジストニアと同じです。
- 眼瞼けいれん
- れん縮性斜頸
- けいれん性発声障害
- 書痙
分節性ジストニアの場合、眼瞼けいれんのほか、隣接する下顎や頸部などに症状が見られる場合があります。
全身性ジストニア
全身性ジストニアは、体幹とその他2部位以上に症状が見られます。好発年齢は小児から青年期といわれており、成人で発症した場合の原因は明らかになっていません。全身性ジストニアの原因は、遺伝やほかの疾患による続発、薬剤の使用などです。
全身性ジストニアでは、主に次の症状が見られます。
- 身体がねじれたような姿勢になる
- 上を向くように首を反らせるなど身体が反り返った姿勢になる
- 足関節が内側に曲がる
- 眼瞼けいれんを引き起こす
ジストニア症状が長期間続くと、骨や関節が変形する可能性もあります。また症状が悪化した場合、呼吸障害や嚥下性肺炎などを発症するケースも珍しくありません。
心因性ジストニア
心因性ジストニアは、ストレスが原因で脳神経細胞に異常をきたして、不随意運動を引き起こします。原因は明確になっていませんが、精神的ストレスのかかる環境にいる人に発症しやすい傾向にあります。
主な症状は、以下の通りです。
- 眼瞼けいれん
- れん縮性斜頸
- 身体の歪み
- けいれん性発声障害
- 書痙
ジストニア症状は、ストレスや疲労によって悪化する可能性があります。悪化を防ぐためにも、原因を理解した上で適切な治療を受けることが大切です。
薬剤性ジストニア
薬剤性ジストニアは、次の3つに分類され、発症原因もそれぞれ異なります。
種類 |
特徴 |
---|---|
急性ジストニア |
薬物服用開始によって急性発症する 若年層では体幹が中心・高齢層では頭頚部疾患が多い傾向にある |
遅発性ジストニア |
長期間の薬物使用や減量・中止によって発症する 若年層では下肢発症・発症年齢が上がるほど上肢に症状が現れる傾向にある |
薬物性離脱症候群 |
薬物の急激な減量・中止によって発症する 主に小児に多い傾向にある |
症状は、次のようにほかのジストニアと同様です。
- 眼瞼けいれん
- れん縮性斜頸
- 身体のねじれ・反り返り
- けいれん性発声障害
- 書痙
中枢神経に作用する薬物を服用している、もしくは服用歴がある場合は薬物性ジストニアの可能性が考えられます。
遺伝性ジストニア
遺伝性ジストニアは、遺伝によって引き起こされます。ただし、遺伝子ジストニアは遺伝子を持っていても発症しない可能性があります。
遺伝性ジストニアの主な原因は、以下のように局所性から全身性までさまざまです。
- 眼瞼けいれん
- れん縮性斜頸
- 身体のねじれ・反り返り
- けいれん性発声障害
- 書痙
小児発症が多い傾向にあるため、家族でジストニアの発症歴がある場合は診断を検討するのがおすすめです。
ジストニアの症状は治る?主な治療法
ジストニアは不随運動疾患ですが、脳の病気でもあるため、完治は難しいといわれています。しかし、適切な治療により、症状の回復が期待できます。
ジストニア症状の主な治療法は、以下の3つです。
- 薬物治療
- ボツリヌス治療
- 手術治療
治療内容について、以下で解説するので参考にしてください。
薬物治療
一般的に、全身性ジストニア症状では薬物治療が行われます。薬物治療では、局所注射もしくは経口で投与するケースが一般的です。
全身性ジストニア症状の場合、主に抗コリン薬が使用されます。抗コリン薬では、神経から送られる特定の信号を遮断し、けいれんを減らす作用が期待できます。
抗コリン作用を持つ薬は、以下の通りです。
- トリヘキシフェニジル
- カルバマゼピン
- バクロフェン
- ベンツトロピン
薬物治療で効果が見られない場合、脳深部刺激療法を行うケースもあります。
ボツリヌス治療
局所性ジストニアでは、ボツリヌス治療を行うのが一般的です。ボツリヌス治療とは、筋肉の緊張を和らげるボツリヌス製剤を局所注射する治療法です。筋肉内への投与により、筋肉の緊張を和らげ、神経の働きを抑えます。
ボツリヌス治療によって、日常生活動作を行いやすくするほか、関節の変形防止や筋肉のつっぱりによる痛み緩和などの効果が期待できます。
眼瞼けいれんやけいれん性発声障害、書痙などではボツリヌス治療が用いられるケースがほとんどです。ボツリヌス治療は、効果が徐々に弱くなるため、3〜4カ月毎に治療する必要があります。
手術治療
薬物療法やボツリヌス治療で症状回復が見られない場合は、手術治療を行います。ジストニア症状の代表的な手術と特徴は、以下の3つです。
術式 |
特徴 |
---|---|
脳深部刺激術 |
脳の深部に電気刺激を行い、脳神経回路を調整して症状を改善する |
高周波凝固手術 |
治療部位に電極を挿入し電気刺激を行い、症状を改善する |
バクロフェン髄腔内投与療法 |
バクロフェンが入ったポンプを腹部に埋め込み、カテーテルを通じて薬を投与して症状を改善する |
手術を行う場合、いずれも1〜2週間ほどの入院や通院が必要になります。症状回復が見られない場合は、手術を検討するのも手段の1つです。
ジストニアの症状における再生医療の可能性
再生医療とは、患者自身の脂肪組織から幹細胞を分離・培養し、静脈内投与により組織修復や機能回復を目指す治療法です。幹細胞を採取する際は、おへその横からごくわずかな脂肪を取るため、身体の負担を最小限に抑えられます。
また、入院が不要な点も再生医療の特徴です。ジストニアの治療で効果が現れずお悩みの場合は、再生医療を検討するのも手段の1つです。当院では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けておりますので、治療法について知りたい方はお気軽にお問い合わせください。
\無料オンライン診断実施中!/
ジストニアの症状判別は医師の診断が必要
ジストニアの症状は、原因や発症する部位によって異なります。症状や身体診察の結果に基づいて判断されるため、思い当たる症状が見られた場合は専門機関への受診を検討しましょう。
ジストニア症状は、原因や種類によって治療法が異なります。適切な治療を行うためにも、原因の把握が大切です。
万が一症状の回復が見込めない場合は、改善策として再生医療を検討するのもおすすめです。ジストニアの症状を理解し、早期対策を図りましょう。

手術をしない新しい治療「再生医療」を提供しております。
ジストニアと症状に関するよくある質問
ジストニアはどんな人がなりやすいですか?
ジストニアは、同じ動作を繰り返している人がなりやすい疾患です。具体的には、ピアノなどの楽器を演奏している、ハサミの操作を繰り返すなどの職業の人が発症する場合もあります。そのため、音楽家や美容師、スポーツ選手などはジストニアになる可能性が考えられます。
ジストニアは死亡の要因になりますか?
ジストニアは、症状が進行すると稀に呼吸不全などを引き起こす可能性があります。実際に、全身性ジストニアを発症し、嚥下性肺炎で死亡した事例もあります。(文献2)
そのため、ジストニア症状が見られた際は放置せず、専門機関を受診しましょう。
心因性ジストニアは何科を受診すればよいですか?
心因性ジストニアの場合、心療内科を受診しましょう。不安定な精神状態の場合、治療効果が得られにくい可能性もあるためです。(文献3)心身ストレスが原因の場合、心理療法により症状が緩和するケースも考えられるため、心療内科の受診を検討してみてください。
参考文献