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【医師監修】後縦靭帯骨化症のリハビリ内容を公開|禁忌と評価方法もあわせて解説

「後縦靭帯骨化症のリハビリはどのようにして行われるのか?」
「後縦靭帯骨化症のリハビリの効果を知りたい」
後縦靭帯骨化症では、首や手足のしびれ、動かしにくさによって生活機能が低下し、不安を抱える方が多くいます。
自己流の運動は症状を悪化させる可能性があり、医療機関での評価に基づかないまま、自宅で行える範囲を判断するのは困難です。適切なリハビリには、病状の進行度に応じた運動療法と、避けるべき禁忌動作の理解が欠かせません。
本記事では、現役医師の監修のもと、後縦靭帯骨化症のリハビリ内容に加えて、禁忌事項や評価方法についても詳しく解説します。最後に、後縦靭帯骨化症のリハビリに関するよくある質問も紹介しますので、ぜひご一読ください。
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目次
後縦靭帯骨化症におけるリハビリの目的と効果
| 目的と効果 | 詳細 |
|---|---|
| 筋力強化による脊椎の支持と負荷軽減 | 首・背中周囲の筋力向上による脊椎の支持力強化、骨化部位への負担軽減 |
| 関節の可動域維持と姿勢改善による機能向上 | 首や肩・体幹の柔軟性維持、姿勢バランスの改善による可動域確保 |
| 日常生活の自立支援とQOLの維持・向上 | 歩行・更衣・家事などの動作効率改善、疲労軽減による生活の質向上 |
後縦靭帯骨化症のリハビリは、脊椎や神経への負担を軽減し、日常生活機能を維持することを目的とします。骨化による神経圧迫は可動域の低下やしびれを招くため、筋力・柔軟性の維持と姿勢の安定が重要です。
痛みや疲労を悪化させる動作を避けつつ、生活動作を円滑に行う訓練を行います。医師の適切な指導のもとリハビリを継続することで、機能維持とQOL向上が期待できます。
以下の記事では、後縦靭帯骨化症の寝たきりを抑えるための方法を詳しく解説しています。
筋力強化による脊椎の支持と負荷軽減
後縦靭帯骨化症に対して体幹や肩甲帯の筋力強化を行うと、背骨を支える「筋肉のコルセット効果」が高まり、骨化部位への負荷が減少します。これにより神経圧迫の悪化を防止できます。
そのため、姿勢や歩行など日常動作の安定にも効果的です。また、筋力が低下しているとリハビリで得た可動域改善・歩行改善・神経症状の軽減が定着しにくく、再び筋力低下と動作制限の悪循環に陥る可能性があります。
適切な筋力強化は、歩行スピードや握力、立ち上がり動作などの改善を長期的に維持し、症状再悪化を防止する基盤です。
実際、術後や保存療法のリハビリにおいて、筋・骨・神経の機能が相互に改善する可能性が報告されています。(文献1)
関節の可動域維持と姿勢改善による機能向上
後縦靭帯骨化症は、関節や筋肉の硬さにより姿勢が前傾しやすく、首・肩・腰の可動域が低下することで日常動作にも支障が生じます。
リハビリでは、ストレッチや姿勢調整を通して関節可動域を維持し、筋肉や靭帯の拘縮を防ぐことが重要です。可動域が保たれることで首や脊椎の動きが滑らかになり、基本動作の負担が軽減されます。
また、正しい姿勢は骨化部位や脊椎への過度な負荷を防ぎ、神経圧迫の悪化や痛みの増強を抑える効果があります。
さらに、可動域と姿勢が整うことで歩行や立位の安定性が高まり、長期的な神経症状の悪化リスクを低減できます。日常生活では長時間同じ姿勢を続けないようにし、適切な座り方や立ち方を意識することが症状管理に役立ちます。
日常生活の自立支援とQOLの維持・向上
| 目的・効果 | 詳細 |
|---|---|
| 日常動作の安定と自立支援 | 筋力・バランス向上による歩行や立位、起き上がりの安定、転倒リスクの軽減 |
| 生活動作の工夫と環境整備の支援 | 正しい姿勢や動き方の指導、福祉用具活用や住宅改修による生活環境の改善 |
| 生活の質(QOL)の維持・向上 | 身体機能維持による不安軽減、精神的安定、社会参加や趣味継続による満足度向上 |
(文献2)
リハビリの最終的な目的は、できる限り自立した生活を続けることです。後縦靭帯骨化症では、手足のしびれや力の入りづらさが進行すると、着替えや歩行などの動作が難しくなる場合があります。
理学療法や作業療法では、生活動作の練習や補助具の活用を通じて、日常生活を無理なく行えるよう支援します。
厚生労働科学研究費補助金・脊柱靭帯骨化症研究班が実施した研究では、ADLの制限がQOLと強く関連し、とくに移動動作(立ち上がり・歩行)や入浴・更衣の制限が生活の質の低下に直結することが報告されています(文献3)
そのため、身体面だけでなく心理面のサポートも重要です。継続したリハビリは、QOL(生活の質)の維持・向上に役立ちます。
後縦靭帯骨化症におけるリハビリの評価方法【事前の状態チェック】
| 評価方法 | 詳細 |
|---|---|
| 神経・運動機能の評価 | 手足のしびれ・感覚の低下、筋力、反射、歩行バランスの確認による神経障害の把握 |
| 日常動作・姿勢のチェック | 歩行・立ち上がり・更衣などの動作確認、姿勢の傾きや負担のかかる動きの観察 |
| 画像検査による評価 | MRI・CT・X線を用いた骨化の範囲や神経圧迫の確認、脊椎アライメント評価 |
リハビリを始める前には、医師や理学療法士が症状の進行度や神経の状態を把握することが欠かせません。
後縦靭帯骨化症の場合、骨化の部位や神経圧迫の程度によって適切な運動が異なります。医師や理学療法士が神経機能や姿勢、日常動作の可否などを総合的に評価します。
これにより、無理な運動を避けながら、個々の症状に合わせたリハビリ計画を立てられます。
神経・運動機能の評価
神経・運動機能の評価は、後縦靭帯骨化症におけるリハビリ計画の基礎となる重要な工程です。医師や理学療法士が手足のしびれや感覚鈍麻、筋力低下、反射異常、歩行の安定性などを詳細に確認します。
とくに頸椎に骨化がある場合は握力や指先の巧緻動作も重要な指標です。これらの情報から、医師は神経がどの程度圧迫されているかを把握し、実施できる運動量や避けるべき動作を判断します。
また、評価結果は個々の症状に応じたリハビリ目標の設定にも役立ち、症状の変化を継続的に追うことでプログラムを適切に調整します。
日常動作・姿勢のチェック
| 評価方法 | 詳細 |
|---|---|
| 日常生活の動作障害を早期に発見するため | 着替え・歩行・起き上がりなどの困難動作の把握、リハビリ方針の明確化 |
| 不良姿勢や過度な負担を見つけるため | 頭部前方位や猫背など姿勢のゆがみの確認、負担軽減に向けた生活改善 |
| 患者の自立度やQOLの評価に役立つ | 日常動作の自立度の把握、支援や環境調整の検討、生活の質向上への貢献 |
日常動作と姿勢のチェックは、後縦靭帯骨化症の症状による生活上の困りごとを早期に把握し、適切なリハビリ計画を立てる上で欠かせません。
とくに姿勢のゆがみや長時間同じ姿勢を続けることは、脊柱や神経に過度な負荷をかけ、症状悪化につながる可能性があります。
立位姿勢が手術成績に影響する報告もあり、姿勢評価は治療効果の向上にも関わります。(文献4)
画像検査による評価
| 評価方法 | 詳細 |
|---|---|
| 骨化の範囲と程度を正確に把握するため | レントゲン・CTによる骨化部位と進行度の確認、骨化形状の把握 |
| 神経圧迫の状況を確認するため | MRIによる脊髄・神経根の圧迫度や変化の評価 |
| 治療方針やリハビリ計画の立案に不可欠 | 骨化進行度と神経圧迫所見に基づく保存療法と手術療法の判断材料 |
| リハビリプログラムを設計・調整するための資料となる | 骨化の長さ・厚さ、脊柱管占拠率、脊椎配列、神経圧迫所見などに基づく個別リハビリ計画の作成 |
後縦靭帯骨化症の治療では、骨化の範囲や神経圧迫の有無を画像検査で正確に把握することが、治療方針やリハビリ計画の決定に不可欠です。
CTは骨化の形状や広がりを詳細に確認でき、MRIは神経への圧迫状況を評価するのに優れています。さらに、骨化の厚さや脊柱管占拠率、頸椎・腰椎の配列などの情報は、リハビリの強度や動作範囲を設定する基盤となります。
実際、占拠率は神経症状や術後成績との関連が報告されており、個別のリハビリプログラム作成に大切な指標です。(文献5)
後縦靭帯骨化症におけるリハビリ方法【評価をもとに行う運動】
| リハビリ方法 | 詳細 |
|---|---|
| 柔軟性とバランスを高めるストレッチ・体幹運動 | 首・肩・腰の可動域維持、体幹の安定性向上、姿勢保持能力の改善 |
| 四肢と体幹の筋力トレーニング | 手足と体幹の筋力強化、脊椎支持力の向上、負担分散による症状悪化予防 |
| 歩行・日常動作の訓練 | 歩行安定性の向上、立ち上がり・階段動作の改善、生活自立度の向上 |
後縦靭帯骨化症のリハビリでは、症状や神経の状態を踏まえて柔軟性・筋力・動作能力を総合的に高めることが重要です。
まず、ストレッチや体幹運動で首や腰の可動域を保ち、姿勢を安定させます。次に、四肢と体幹の筋力強化により脊椎の支持力を高め、負担を分散して症状悪化を防ぎます。
さらに、歩行や立ち上がりといった日常動作の訓練を行うことは生活動作の安定と自立度向上を図る上で欠かせません。これらを組み合わせることで、症状の安定と効果的な機能改善が期待できます。
柔軟性とバランスを高めるストレッチ・体幹運動
| リハビリ方法 | 詳細 |
|---|---|
| 柔軟性とバランスを高めるストレッチ | 筋肉の柔軟性維持、拘縮予防、血流促進、疲労軽減、動作効率の向上 |
| 体幹運動(バランス運動) | 姿勢安定、脊柱負担の軽減、神経圧迫軽減、歩行・立位の安定、転倒予防 |
後縦靭帯骨化症では、神経圧迫により筋肉がこわばりやすく、関節の動きが制限されるため、ストレッチと体幹運動はリハビリを行う上で欠かせません。
首・肩・背中・腰のストレッチは筋肉の柔軟性を保ち、拘縮を防ぐことで動作のしやすさを維持します。また、血流促進や疲労軽減にも役立ち、継続により身体全体の連動性が高まります。
体幹を中心としたバランス運動は姿勢を安定させ、脊柱への負担を減らすことで神経圧迫の軽減に寄与します。
バランス能力の向上は歩行や立位の安定を高めて転倒を予防し、自立度の維持にも役立ちますが、痛みや違和感がある場合は無理をせず中止しましょう。
四肢と体幹の筋力トレーニング
| 評価・訓練項目 | 詳細 |
|---|---|
| 体幹筋の強化 | 脊椎支持力の向上、脊柱への負担軽減、神経圧迫悪化の予防 |
| 四肢の筋力維持・強化 | つかむ・歩く・立つなどの基本動作の安定、自立度向上、転倒予防 |
| 筋萎縮・筋力低下への対処 | 神経障害による筋力低下の抑制、機能回復の促進、QOL向上 |
後縦靭帯骨化症では、体幹と四肢の筋力を適切に維持・強化することが、脊椎の保護と日常生活動作の安定に不可欠です。
軽い負荷を用いた筋力トレーニングは、腹部や背部の体幹筋を鍛え、脊椎を支える力を高めることで過度な負担を軽減し、神経圧迫の悪化を防止する効果があります。
また、肩甲骨を動かす運動や手足の筋力強化は、つかむ・歩く・立つといった基本動作を支え、自立度向上や転倒予防に寄与します。
神経障害により筋力が低下しやすい患者では、継続的なトレーニングが筋萎縮の進行を抑え、機能回復を促す上でも大切です。
歩行・日常動作の訓練
| 評価・訓練項目 | 詳細 |
|---|---|
| 基本動作の習得と動作の安定化 | 歩行・起立・移乗の安定、転倒リスクの軽減、自立生活の確保 |
| 日常動作のスムーズな連結と適応力の向上 | 動作間の連続性向上、実生活への適応力強化、動作効率の改善 |
| QOL改善のための自立支援 | 社会参加の促進、精神的自信の向上、生活の質全体の維持・向上 |
(文献6)
歩行訓練では、バランス感覚の回復と下肢筋力の維持を目指します。歩幅やリズムを整え、安定した歩行動作を習得していきます。
必要に応じて杖・歩行補助具の使用や、着替え・家事などの日常動作を取り入れたリハビリも症状の改善に欠かせません。
実生活に近い環境で練習することで、自立した生活を続けやすくなります。
後縦靭帯骨化症のリハビリにおける禁忌事項
| 禁忌事項 | 詳細 |
|---|---|
| 頸椎への過度な負荷や急な動作を避ける | 首を強く反らす・ひねる動作の回避、急激な方向転換や勢いのある運動の制限 |
| しびれや脱力など神経症状が強いときは運動を中止する | 痛み増悪・感覚異常・脱力の出現時の運動中断、症状悪化の予防 |
| 医師の許可なく頸椎牽引や強いマッサージを行わない | 頸椎牽引を自己判断で行うことの禁止、強圧マッサージや過度な指圧の回避、頸椎への負担軽減 |
後縦靭帯骨化症では、頸椎周囲の神経が圧迫されやすいため、リハビリ中の負担管理が欠かせません。
とくに首への強い負荷や急な動作は、神経症状の増悪につながる可能性があります。また、しびれや脱力などの症状が強く現れた場合は、運動を続けることで障害が進む恐れがあるため、中止が必要です。
さらに、頸椎牽引や強いマッサージは状態により逆効果となることがあり、自己判断ではなく、医師の判断が求められます。
頸椎への過度な負荷や急な動作を避ける
後縦靭帯骨化症では、骨化した靭帯が脊髄や神経根を圧迫しているため、頸椎への過度な負荷や急な動作は症状悪化の大きな要因となります。
首を急に反らせたり強くねじる動作は、圧迫をさらに強め、新たなしびれや麻痺を引き起こす可能性があります。リハビリでは、動作を小さくゆっくり行い、無理に可動域を広げようとしないことが基本です。
違和感や痛みを感じた場合は直ちに中止し、首へのストレスを最小限に抑えることが重要です。また、日常生活でも重い荷物を持ち上げるなど頸椎に負担がかかる行動は避ける必要があります。
しびれや脱力など神経症状が強いときは運動を中止する
| 禁忌事項・観点 | 詳細 |
|---|---|
| 神経症状悪化のサインを見逃さないため | しびれ・脱力の増強による神経機能悪化の兆候把握、症状進行や回復遅延の防止 |
| リスクの高い運動を中断する | 脊髄・神経圧迫増大の可能性の回避、転倒や重度症状の予防 |
| 適切な治療方針の再評価につながる | 医師の診察によるリハビリ計画の見直し、治療選択の検討、長期的機能維持への対応 |
後縦靭帯骨化症では、しびれや脱力の増強は神経への負担が高まっている重要なサインです。この状態で運動を続けると、神経障害が進行し、しびれの悪化や動作機能の低下につながる可能性があります。
そのため、運動中に症状が強まった際には中止し、早急に医師へ相談しましょう。症状の変化を適切に把握することで、リハビリ計画の変更や治療方針の見直しが行われ、長期的な機能維持に役立ちます。
医師の許可なく頸椎牽引や強いマッサージを行わない
後縦靭帯骨化症(OPLL)では、骨化によって脊柱管が狭くなり、脊髄や神経根が常に圧迫されやすい状態です。そのため、頸椎牽引や強いマッサージを行うと、骨化部や狭窄部に「ずれ」や動的ストレスが加わり、症状悪化のリスクが高まります。
牽引や強いマッサージは、首の椎体や椎間関節、靭帯、神経構造に「引き伸ばす力」や「回旋・側屈・伸展」といった動きを加えることになり、非常に危険です。
研究によると、OPLLの頸椎に回旋操作(マニピュレーション)を行うと脊髄・硬膜・神経根への応力が著しく増えることが確認されています。(文献7)
また、医師や理学療法士がリハビリを開始する際は、画像検査や神経・運動機能、姿勢評価を行い、適切な運動内容や強度を決定することが重要です。
OPLLでは保存療法の範囲や手術適応の判断を慎重に行うべきと報告されており、医師の指導なく牽引や強いマッサージを行うことは避ける必要があります。(文献8)
【リハビリと併用できる】後縦靭帯骨化症の治療法
| 治療法 | 詳細 |
|---|---|
| 薬物療法 | 痛み・しびれの軽減、筋緊張の緩和、炎症の抑制 |
| 装具療法 | 頸椎の安定補助、動作時の負担軽減、姿勢保持のサポート |
| 神経ブロック療法 | 痛みの一時的軽減、神経周囲の炎症緩和、リハビリ実施時の負担軽減 |
| 再生医療 | 組織修復の促進、慢性痛の緩和、機能改善の可能性 |
後縦靭帯骨化症では、リハビリと併行して複数の治療を組み合わせることで、症状管理や機能維持がより効果的になります。
薬物療法は痛みやしびれ、筋緊張を和らげ、装具療法は頸椎の安定を補助します。また、神経ブロック療法は強い痛みを一時的に軽減し、リハビリを進めやすくします。
近年注目される再生医療は、組織修復や慢性痛の改善が期待されますが、提供施設が限られ、すべての症状に適用できるわけではありません。そのため、実施している医療機関で適応の可否を医師に相談する必要があります。
薬物療法
| 目的・効果 | 詳細 |
| 痛みや炎症を緩和するため | NSAIDsによる頸部・肩の痛み軽減、神経周囲の炎症抑制 |
| 筋肉の緊張を緩和し動きを助ける | 筋弛緩薬による筋緊張の軽減、可動域改善 |
| 神経症状の改善をサポート | 神経障害性疼痛薬やビタミンB群製剤によるしびれ・神経痛の緩和、神経機能改善 |
| 症状進行の抑制・QOL維持に貢献 | 症状管理による日常生活の負担軽減、リハビリ効果の向上 |
薬物療法は、後縦靭帯骨化症で生じる痛み・炎症・筋緊張・神経症状を和らげ、日常生活を送りやすくする上で重要な役割を担います。
NSAIDsは痛みや炎症を抑え、筋弛緩薬は筋肉のこわばりを緩和します。また、神経障害性疼痛薬やビタミンB群製剤はしびれや神経痛の軽減に有効です。
薬物療法自体は骨化を治すものではありませんが、症状を抑えることでリハビリに取り組みやすくなり、QOLの維持にも大きく寄与します。
装具療法
| 目的・効果 | 詳細 |
|---|---|
| 脊椎の安定化と固定による負担軽減 | 頸椎カラーによる不要な動きの制限、骨化部位・神経への負荷軽減、痛みの軽減 |
| 神経の圧迫進行を防ぐサポート | 首の姿勢安定、脊髄・神経根圧迫の増悪予防、反り動作の抑制 |
| 安静保持と日常生活のサポート | 日常動作時の頸部保護、運動療法併用の補助、症状管理の支援 |
| 保存療法としての進行予防・手術回避の支援 | 神経圧迫リスクを高める動きの抑制、症状安定化、進行抑制による手術回避支援 |
装具療法は、後縦靭帯骨化症における保存療法の重要な柱であり、頸椎の不要な動きを制限することで骨化部位や神経への負荷を減らし、症状悪化の抑制に寄与します。
首の姿勢が安定することで神経圧迫の進行を防ぎ、日常生活での負担軽減にもつながりますが、OPLLでは手術が必要となる例もあります。保存療法(リハビリ・薬物療法・装具)は、症状の安定や進行抑制が期待できる手段です。
装具療法はこの保存療法の重要な一翼を担い、神経圧迫リスクを高める動きを抑えることで、重症化や手術適応を回避するための管理を支える役割を果たします。(文献9)
神経ブロック療法
後縦靭帯骨化症(OPLL)では、骨化により脊髄や神経根が圧迫され、しびれや脱力などの神経症状が生じやすくなります。
神経ブロック療法(硬膜外ブロック・神経根ブロック)は、神経周囲に局所麻酔薬やステロイド薬を注入し、炎症や痛み、過剰な興奮を抑える治療です。
実際に、頸椎OPLL患者で神経ブロックを行った症例では、6か月後にJOAスコアや愁訴スコアが有意に改善したとの報告があります。神経ブロック療法により症状のピークを和らげることで、理学療法や体幹訓練、可動域訓練をスムーズに開始できるようになります。(文献10)
再生医療
再生医療は、回復が難しい脊髄神経損傷に対して、幹細胞などを用いて神経機能の改善を目指す治療法です。
後縦靭帯骨化症では、しびれや脱力といった神経症状の改善が報告され、QOL(生活の質)の向上につながる可能性があります。
とくに従来の治療では改善が乏しい難治性症状への新たな選択肢として注目されています。また、リハビリテーションとの併用により効果が高まると考えられており、神経再生と機能回復を同時に促す治療戦略として期待されています。
以下の記事では、後縦靭帯骨化症に対して再生医療を適用した事例を紹介しています。
リハビリで改善しない後縦靭帯骨化症は医療機関を受診しよう
リハビリを続けても症状が改善しない場合や、しびれ・脱力が強まる場合は、骨化の進行が疑われます。放置すると神経障害が固定化する恐れがあります。そのため、早期の受診が重要です。
医療機関では画像検査や神経評価を行い、手術や再生医療を含めた治療方針を提案します。自己判断での中断や過度な運動は避け、医師の指導のもと適切に進めることが大切です。
リハビリで改善しない後縦靭帯骨化症についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、後縦靭帯骨化症に対して再生医療を用いた治療を行っています。
後縦靭帯骨化症に対する再生医療は、患者自身の幹細胞を用いて損傷した組織の修復を促し、身体に備わる治癒力を高めることで改善を図る治療法です。細胞レベルでの再生を後押しすることで、神経症状の緩和や機能回復につながる可能性があり、従来の治療に加わる新たな選択肢です。
ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。
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後縦靭帯骨化症のリハビリに関するよくある質問
後縦靭帯骨化症はカイロプラクティックで治せますか?
後縦靭帯骨化症(OPLL)は、カイロプラクティックのみで治療できる疾患ではありません。
靭帯が骨化して脊柱管を狭め、脊髄や神経根を圧迫する構造的な病態であり、進行する可能性もあります。
そのため、治療の中心は整形外科による保存療法や、症状に応じた手術療法の検討が必要です。カイロプラクティックは補助的に利用されることはありますが、単独での治癒は期待できません。
後縦靭帯骨化症は指定難病ですか?
後縦靭帯骨化症(OPLL)は指定難病に該当し、一定の条件を満たせば医療費助成の対象になります。
助成を受けるには、画像検査で骨化が確認され、神経障害による運動機能障害が日常生活に支障をきたす、または重症度分類に該当することが必要です。なお、手術を行う場合は、これらの条件に当てはまらなくても助成が認められるケースがあります。(文献11)
後縦靭帯骨化症は国の支援制度を適用できますか?
後縦靭帯骨化症(OPLL)は国の指定難病に該当し、条件を満たせば医療費助成などの公的支援を利用できます。
医療費助成は自動的には受けられず、画像検査での骨化確認、日常生活に支障をきたす神経症状や運動機能障害の有無、医師の診断書を含む申請書類の提出、自治体での手続きが必要です。
後縦靭帯骨化症(OPLL)で受けられる支援の詳細は、以下のとおりです。
| 支援項目 | 詳細 |
|---|---|
| 難病医療費助成制度 | 重症度基準該当時の医療費上限設定、自己負担軽減 |
| 障害者手帳・障害年金 | 税控除・交通機関割引などの各種支援、条件満たす場合の障害年金受給 |
| リハビリの日数制限の除外 | 医療保険でのリハビリ継続利用、発症後150日制限の対象外 |
| 申請に必要な手続き | 医師の診断書提出、自治体窓口での申請手続き |
支援制度の適用を検討する際は、主治医またはお住まいの市区町村の保健福祉窓口へ相談することが大切です。
参考文献
Ossification of the Posterior Longitudinal Ligament: A Review of Literature|PubMed®
運動負荷と記録で科学的なトレーニングを実現する歩行トレーニングロボットとその事例|(46)医機学 Vol.92,No5(2022)














