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肩の人工関節のデメリットを医師が解説|7つのリスクと再生医療という選択肢

人工関節
公開日: 2021.12.20 更新日: 2025.08.31

「人工関節の手術は痛みをなくすために必要なのはわかるけれど、合併症や後遺症が心配でなかなか踏み切れない……」そのような不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

肩の人工関節置換術は、つらい痛みを和らげ、生活の質を取り戻す有効な方法です。

しかし一方で、手術には特有のデメリットやリスクがあるのも事実です。

本記事では、肩人工関節の手術に伴う代表的な7つのデメリットを整理して解説します。

それぞれのリスクの特徴や発生しやすい条件、予防の工夫についても触れますので、正しくリスクを理解し、後悔のない治療選択につなげましょう。

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肩の人工関節の7つのデメリット・リスク

肩人工関節手術は、痛みを軽減し生活の質を取り戻す有効な方法ですが、肩は可動域が広く、膝や股関節とは異なるリスクを抱えやすい部位です。

そのため、手術を受ける前に想定される合併症を理解しておくことが大切です。

ここでは代表的な7つのリスクを紹介します。

感染症や血栓症といった生命に関わるものから、脱臼や可動域制限、再手術の必要性といった長期的に影響するものまで、それぞれ確認していきましょう。

感染症リスク

肩の人工関節手術で最も注意すべき合併症の一つが感染症です。

人工関節は体内に異物を入れるため、いったん細菌が侵入すると自然には治りにくく、再手術が必要になることもあります。

感染症には大きく2つのタイプがあります。手術後すぐに起こる「早期感染」と、数年後に発症する「遅発感染」です。

早期感染では発熱や患部の強い痛み、腫れなどがみられ、遅発感染では軽い痛みや動かしにくさが長く続く形で現れることがあります。

感染症リスクを高める要因としては以下が知られています。

  • 糖尿病
  • 関節リウマチ
  • 免疫抑制剤を使用している
  • 肥満
  • 喫煙習慣

これらの条件がある方は、感染の危険性が高まるため、手術前に十分な準備や対策を行うことが重要です。

感染症にかかった場合の治療は、まず抗菌薬による点滴が行われます。症状が強い場合や感染が広がっている場合には、人工関節を入れ替える再手術が必要になることもあります。

予防策としては、手術前に虫歯や皮膚炎などの感染源を治療しておくこと、手術時には抗菌薬を予防的に投与することが有効とされています。

また、清潔な環境での手術操作と手術後の適切なリハビリ管理も重要です。(文献1

血栓症の危険性

肩人工関節の手術では、血栓症も重要なリスクの一つです。血栓症とは、血管の中に血のかたまり(血栓)ができて血流を妨げる状態を指します。

とくに脚の深い血管にできる深部静脈血栓症(DVT)と、血栓が肺に飛んで血管を詰まらせる肺塞栓症は、命に関わることもある合併症です。

症状としては、脚の腫れや赤み、強い痛みが現れる場合があります。

肺塞栓症では、急な息切れ、胸の痛み、めまいなどが起こり、緊急対応が必要になります。

リスクを高める要因には次のようなものがあります。

  • 高齢
  • 肥満
  • がんなどの悪性疾患
  • 血栓症の既往歴
  • 長時間の手術や手術後の安静

手術後の体調に異変を感じた場合は、すぐに医療スタッフに伝えましょう。(文献2

脱臼リスクと動作制限

肩は体の関節の中でも最も動きの幅が広い構造を持っています。

そのため、人工関節に置き換えると、特定の動作で脱臼が起こりやすくなる特徴があります。

注意が必要なのは、次のような動作です。

  • 背中に手を回す(帯を結ぶ、ポケットに手を入れるなど)
  • 腕を大きく上げる(洗濯物を干す、高い場所に物を取るなど)
  • 手を体の内側に大きくひねる動作

これらは人工関節に強い負担をかけ、脱臼のリスクを高めるとされています。

予防のためには、手術後のリハビリで正しい動かし方を学ぶことが欠かせません。

一度脱臼すると再発しやすい傾向があるため、手術後は慎重な管理で脱臼を防ぎましょう。

生活の中では脱臼しやすい姿勢を避けたり、無理に腕を伸ばさない工夫も必要です。

理学療法士による生活指導も受けて、動作の工夫を取り入れてください。(文献3

摩耗・ゆるみによる再置換の可能性

人工関節は一度入れれば一生使えるわけではありません。

時間の経過とともに摩耗や「ゆるみ」が起こり、再手術(再置換)が必要になる場合があります。

人工関節の摩耗は、金属やポリエチレンといった部品同士が繰り返し擦れ合うことで進行します。

その結果、関節の安定性が低下し、痛みや腫れ、動かしにくさが再び現れてきます。

また、摩耗によって生じた微細な粉が骨を刺激し、骨が少しずつ体に吸収されて弱くなることで、人工関節がゆるみやすくなります。

再置換が必要となる主な兆候は以下の通りです。

  • 関節の痛みが再発する
  • 肩を動かしたときに違和感や異常な音がある
  • X線検査でインプラントの位置がずれている

再置換手術は、初回の手術よりも難易度が高く、合併症のリスクも大きくなります。

人工関節の寿命は一般的に15〜20年程度とされますが、患者様の年齢や生活スタイルによって大きく変わります。

若い方や活動量が多い方は、再置換の可能性が高まるため、長期的な視点で手術を検討しましょう。

神経損傷と機能障害のリスク

肩人工関節手術では、周囲を走行する重要な神経を傷つけてしまう可能性があります。神経は細く繊細で、一度損傷すると回復が難しい場合があるため、とても注意が必要です。

代表的な神経損傷には次のようなものがあります。

神経 働き・役割
腋窩神経(えきかしんけい) 三角筋を通っており、損傷すると腕を横に持ち上げる(外転)動作ができなくなります。
筋皮神経(きんぴしんけい) 上腕二頭筋を通り、肘を曲げる力が弱くなるほか、前腕の外側の感覚が鈍くなることがあります。

これらの神経は肩関節のすぐ近くを通っているため、人工関節の設置や手術器具の操作中に影響を受けやすい位置にあります。

神経損傷が起こると、日常生活の質に大きな影響を与えます。

このため、手術を担当する医師が肩の解剖を熟知していること、また術後の神経症状を見逃さずに早期対応する体制が整っていることがとても重要です。(文献4

可動域制限による生活動作の困難

肩人工関節手術の後、多くの患者様が直面する課題の一つが可動域の制限です。

とくにリバース型人工関節では、肩の構造を反転させて安定性を高めるため、どうしても動かせる範囲が狭くなります。

代表的に制限されやすい動きは以下の通りです。

動作 難しくなる動き・事例
屈曲(前に腕を上げる) 洗濯物を干す、高い棚に手を伸ばすといった動作が難しくなる。
外転(横に腕を広げる) 荷物を持ち上げる、体操で両手を広げるといった動きに制限が出る。
内旋(腕を内側にひねる) 背中に手を回す動作が困難となる。
外旋(腕を外にひねる) 洗髪や髪を後ろで束ねる動作がしにくくなる。

研究報告では、リバース型人工関節は痛みの改善や安定性の向上に有効である一方、背中に手を回す動作(内旋)や頭上動作の制限が残ることが多いと示されています。(文献5

このため、術後にはどの動きが難しくなるのかを事前に理解し、理学療法士と一緒に日常生活に適した代替動作を学ぶことが重要です。

たとえば、衣服の着脱では前開きの服を選ぶ、入浴では入浴補助具を活用するなど、生活を工夫することで制限の影響を軽減できます。

再手術が必要になる可能性

肩人工関節は、痛みを和らげ生活の質を改善する有効な治療法ですが、一度の手術で一生使えるとは限りません。

感染、脱臼、摩耗・ゆるみなどの問題が生じると、再手術(再置換や再固定)が必要になる場合があります。

再手術は初回の手術に比べて難易度が高く、以下の課題があります。

  • 骨の欠損や変形:人工関節の取り外しにより骨がさらに損なわれ、固定が難しくなる。
  • 合併症の増加:感染や神経損傷、血栓症などのリスクが高まる。
  • 回復期間の延長:リハビリが長引き、日常生活への復帰に時間がかかる。

とくに高齢者の場合、再手術時には体力や合併症の影響が大きくなるため、初回手術の段階で将来の再手術の可能性を念頭に置いて計画を立てることが大切です。

肩の人工関節の種類別デメリット|従来型とリバース型

肩人工関節には、大きく分けて「アナトミカル型(従来型)」と「リバース型」の2種類があります。

それぞれの構造や適応が異なるため、発生しやすいデメリットにも違いがあります。以下の通りです。

  アナトミカル型(従来型) リバース型
特徴
  • 自然に近い動きを再現しやすい
  • 若年層や活動性の高い患者にも用いられる
  • 腱板損傷があっても施術可能
  • 脱臼リスクあり
デメリット
  • 腱板が損傷している場合は安定性が低い
  • 脱臼リスクが比較的高い
  • 可動域制限が生じやすい
  • 負荷をかける動作で脱臼リスクがある
主な適応

腱板が保たれている場合に適応

腱板断裂性関節症、高齢者

このように、肩の人工関節はどちらを選ぶかで将来の生活に与える影響が変わります。

担当医と十分に相談し、自分の症状や生活スタイルに合った方法を選択することが重要です。(文献6)(文献7

肩の人工関節手術の概要とポイント

肩人工関節手術は、保存療法で改善が得られない患者様に行われる治療法です。

損傷した関節を人工関節に置き換えることで、痛みを和らげ、生活の質を高めることを目的としています。

手術は全身麻酔で行われ、入院は一般的に2〜4週間程度です。術後はリハビリを通じて徐々に可動域と筋力を回復させていきます。

肩の人工関節手術の適応疾患別リスク

肩人工関節手術は、基礎疾患によって手術後のリスクや経過が異なります。主な疾患ごとの特徴を以下の表にまとめました。

疾患名

手術が適切と判断される特徴 主なリスク・注意点
変形性肩関節症 関節のすり減りによる痛み・可動域制限 高齢者では感染や血栓症リスクが高い
関節リウマチ 炎症で関節が破壊される 免疫抑制薬の影響で感染リスクが上昇
腱板断裂性関節症 腱板が損傷し肩を動かせない リバース型が多く、可動域制限や脱臼が残りやすい
上腕骨頭壊死 骨への血流障害で壊死が進行 若年者でも起こり、再手術の可能性が比較的高い

疾患ごとのリスクを理解しておくことで、手術後の生活に備えられます。

変形性肩関節症のリスクについては、以下の記事で詳細に解説しておりますので、気になる方はご確認ください。

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肩の人工関節手術の入院期間と回復までの流れ

肩人工関節手術は、入院から退院後のリハビリまで一定の流れがあります。以下の表に一般的な目安をまとめました。

時期 主な内容 ポイント
手術当日〜翌日 全身麻酔で手術、安静 痛み止めや感染予防の管理が行われる
1週目 基本的なリハビリ開始 医師や理学療法士の指導で可動域訓練を少しずつ開始
2〜3週目 入院リハビリ 日常生活に必要な動作(更衣・洗面など)の練習
退院後(1〜3カ月) 外来リハビリ中心

洗濯物を干す・棚に手を伸ばすなど生活動作を徐々に回復

半年以降 社会生活復帰 家事・趣味・軽いスポーツが可能となる例もある

入院は平均で2〜3週間程度ですが、年齢や合併症によって延びることもあります。完全な回復には半年ほどかかるケースもあるため、焦らず段階的にリハビリを続けることが大切です。

肩の人工関節手術にかかる費用目安

手術費用については、自己負担3割の場合、おおむね50万〜60万円前後が一つの目安になります。

例として、ある病院では人工肩関節置換術(入院8日)で約56万円と案内されています。

医療機関や入院日数、個室利用などで上下しますが、総医療費が200万〜250万円に達するケースもあり、その場合の3割負担は約60万〜75万円もあります。

ただし、高額療養費制度を併用すれば自己負担は月ごとの上限額までに抑えられる仕組みです。

以下は、肩の人工関節手術で費用が掛かる項目についてまとめたものです。

費用項目

概要 確認ポイント
手術料・麻酔料 人工関節本体を含む外科手技と麻酔管理の費用 保険適用範囲、インプラントの種類、術式の違い
入院費 病室・投薬・処置・検査などの入院管理費 入院日数、個室か大部屋か、食事療養費の扱い
リハビリ費 急性期から外来期までの理学療法費 入院中の頻度、退院後の通院回数と期間
術後外来・投薬 創部チェック、画像検査、疼痛コントロール 通院間隔、画像検査の種類と回数
装具・消耗品

スリング、保護材、創部ケア用品

自費分の有無、交換頻度
公的制度 高額療養費制度、限度額適用認定証、医療費控除 手続き方法、自己負担上限、対象外費用の確認

費用を抑えるには、公的制度の活用が鍵となります。高額療養費制度などを活用して、人工関節手術の費用を抑えましょう。

肩疾患の人工関節に再生医療は適用される?

再生医療は、すでに人工関節を入れた肩には適用されません。しかし、人工関節手術を行う前の段階であれば、症状や画像所見、生活背景などを総合して、手術前の選択肢として検討されることがあります。

再生医療は、患者様自身から採取・培養した幹細胞を患部に投与する治療法です。入院や手術を行わずに受けられます。ただし、対象疾患や期待できる経過には個人差があり、医師の評価が前提となります。

実施の可否、治療計画、想定される経過、リスクなどの詳細については、当院リペアセルクリニックまでご相談ください。

\無料相談受付中/

通話料無料/受付時間 09:00~18:00

まとめ|肩人工関節のデメリットを理解して後悔のない治療選択を

肩に人工関節を入れるかどうかの判断は、リスクの理解から始まります。

本記事では、感染症・血栓症・脱臼・摩耗やゆるみ・神経損傷・可動域制限・再手術の7点を軸に整理しました。

人工肩関節置換術後に変形性肩関節症などの合併症が起こるリスクは、患者様の年齢や基礎疾患、手術方法、術後の過ごし方によって変わります。

また、使用する人工関節が従来型かリバース型かによって、術後に残る機能制限や日常生活での注意点も異なります。

人工肩関節置換術後の入院はおおむね2〜3週間が目安で、外来リハビリを経て数カ月かけて生活を整える流れになります。

費用は複数の項目で構成されるため、高額療養費制度などの公的支援も視野に入れて、見積もりの内訳を早めに確認しましょう。

迷いが残るときは、専門医に相談して診察を受けるのが一番の解決策です。

手術を避けたいとお考えの場合は再生医療の選択肢もあるので、お悩みの方はぜひ当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。

リペアセルクリニックでは再生医療に精通した医師が、患者様の状態に応じて個別に治療方針を提案いたします。

参考文献

(文献1)
人工関節置換術後感染に関する研究|日本人工関節学会誌

(文献2)
人工関節置換術と静脈血栓塞栓症|core.ac.uk

(文献3)
リバース型人工肩関節置換術後の脱臼症例報告|肩関節学会誌

(文献4)
人工肩関節置換術における腋窩神経損傷のリスク|肩関節学会誌

(文献5)
肩関節リバース型人工関節置換術後の可動域と機能評価|日本リハビリテーション医学会誌

(文献6)
リバース型人工肩関節置換術の適応基準|日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会

(文献7)
リバース型人工肩関節のガイドライン|日本肩関節学会