変形性膝関節症に悩むスポーツ選手へ、復帰を目指すための最新の治療法とは
公開日: 2021.12.20更新日: 2024.10.07
目次
変形性膝関節症に悩むスポーツ選手へ、復帰を目指すための最新の治療法について
スポーツ時に膝に痛みを感じたことがある方は多いのではないのでしょうか。
スポーツは、ジャンプ動作のほか、急な停止や発進・方向転換をするなどして、膝に大きな衝撃が加わりやすく、膝(半月板や靭帯)を傷めやすいものです。さらにこれまでの研究から、半月板や靭帯を損傷すると、ある病気の起因になることがわかっています。
それが「変形性膝関節症」です。
変形性膝関節症は、軟骨が摩耗することで膝に痛みを感じるほか、関節が変形する疾患です。一般的には50代以降の女性に多く発生しますが、スポーツ選手のように日頃から関節に負担がかかるような過ごし方をしていると、「年齢や性別に関係なく軟骨が磨耗し発症」します。
今回の記事では「変形性膝関節症を発症したスポーツ選手が、どのようにスポーツ復帰を目指すのか」最新の情報を含め、変形性膝関節症に悩むスポーツ選手に、復帰を目指していただけるよう最新の治療法をご紹介してまいりましょう。
膝の負傷|スポーツへ復帰するまでの流れ
負傷してすぐの痛みのある場合は、無理をせず安静にし、保存療法により炎症や痛みを抑えます。痛みのレベルに合わせて、徐々に運動療法を取り入れ、スポーツ復帰を目指していくことになります。
実際のスポーツの動きを取り入れたり、運動強度を上げたりする際の目安は、「日常生活で膝に痛みや支障を感じない状態」程度です。
スポーツ復帰後の最終的なレベルは、膝に痛みが出ない範囲までの運動強度とします。
変形性膝関節症の運動療法で気をつけること
スポーツ復帰に向けて運動療法を取り入れる際には、以下のような「膝に負荷のかかる要素」を取り除くことが大切です。
- 運動療法で気を付けたいこと
- 1)衝撃の強い運動を避ける
- 2)軽度な運動からスタートし、徐々に強度を上げる
- 3)ダイエットをして膝への負担を軽くする
- 4)インソールを着用する
詳しく解説していきます。
1)膝への衝撃が強い運動は避ける変形性膝関節症では、してはいけない運動があります。それは、衝撃の強い運動です。 例えば、ジャンプ動作のほか、急な停止や発進・方向転換です。 痛みが緩和されれば運動を再開しますが、その際、衝撃が強い運動は避けるようにしましょう。 2)軽度な運動からスタートし、徐々に強度を上げるたとえ膝に痛みがあったとしても、全く動かさないでいると筋肉や関節が拘縮し、元の運動レベルまで回復するのに時間がかかります。 そのため、ウォーキングやプールでの運動、軽度なストレッチや筋力トレーニングなどからスタートし、徐々に運動強度を上げて本格的にスポーツへの復帰を目指します。 プールでの運動は、浮力が関節への負荷を軽減するので、痛みが強い方にはおすすめです。 3.4)ダイエット/インソールの着用で、膝への負担を軽くするまた、膝に負担がかかる原因に、下肢のアライメント異常や、肥満があります。体重が重たいと膝への負担が上がるので、減量することをおすすめします。 また、下肢にO脚変形性を呈する場合は、靴にインソールを装着することで膝の内側にかかる負荷を軽減させたりします。 |
このように、スポーツへの復帰に向けて運動に取り組む際には、膝に負荷がかかる要素を取り除くことが大切です。
変形性膝関節症は、よくある筋肉痛と違い、痛みを感じたまま放って置いて治るものではありません。痛みに耐えながらスポーツを続けると、状態が悪化し、今後の選手生命が短くなる可能性があります。そのため、スポーツをする頻度や時間、強度は慎重に調整しましょう。
保存療法でも思ったような効果がみられず、軽度な運動でも痛みが強く出てしまう場合、手術という選択肢があります。ただし、手術によってはスポーツに支障が出るため注意が必要です。
変形性膝関節症|一般的な手術と、手術を避ける最新の治療方法
保存療法でも効果がみられなかった場合、観血療法(手術)という選択肢があります。
体への侵襲が低い順に、「関節鏡下視手術」「高位脛骨骨切り術」「人工関節置換術」があります。さらに最新の治療法「再生医療」についてもご紹介していきます。
手術のタイミングや適応される手術方法は、持病の有無・年齢・症状の程度によっても異なります。「大きな手術をしたくない」など個人の思いによっても使い分けられます。
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関節鏡下視手術
- ・膝に開けた小さな穴から手術器具を入れ、損傷した半月板や関節軟骨を取り除く手術法です。
- ・体への侵襲は低く、手術は手術時間も 1 時間程度です。
- ・術後すぐに歩くことができることからスポーツへの早期復帰が見込まれます。ただし膝に違和感なく歩けるようになるまで数ヶ月から半年ほどかかります。
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高位脛骨骨切り術
- ・脛骨の一部を切り取り、膝にかかる偏った負担を整える手術法です。
- ・変形性膝関節症に多いO脚変形を矯正し、膝関節の内側への負担を軽減させます。
- ・入院期間は2ヶ月程度、そこからリハビリテーションに5〜6週間必要
- ・スポーツへの復帰するまで時間がかかります。
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人工関節置換術
- ・金属やチタンなどを使い、傷んだ膝関節を人工の関節に置き換える手術。
- ・入院期間は1ヶ月程度と、高位脛骨骨切り術と比べて短いことが特徴。
- ・関節鏡視下手術や高位脛骨骨切り術と比べ、痛みに対して高い改善度合いが期待できる。
- ・術後は正座のように、膝を深く曲げられなくなる(屈曲制限)。
- ・スポーツ時のパフォーマンスに大きな影響が出る可能性があり復帰には疑問符がつきかねません
- ・人工関節に劣化や緩みがみられた場合には再手術になります。
最新療法「再生医療(スポーツのQOLの維持(復帰)に最強)」
再生医療は、運動療法や薬物療法と手術の中間に位置する新たな治療法として注目されています。
再生医療では、人間なら誰もが持つ「傷んだ部位を治そうとする働き」を利用した最新の治療法で、損傷した部位の治癒を促進させるほか、これまで不可能とされてきた軟骨や靭帯、半月板の再生が期待できます。
大きな手術や入院は必要なく、日帰りで行える、体への侵襲が最も低い治療法です。手術には選手生命に関わるような合併症のリスクがありますが、再生医療では自分の血液や脂肪由来の幹細胞を使うため、副作用のリスクはほとんどなく、スポール選手にとって最も理想的な治療方法といえるものです。
PRP療法と幹細胞治療について、以下で詳しく解説していきます。
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1.PRP(血小板血漿)療法
- ・損傷部位の修復を早める血小板や成長因子を利用し、膝の痛みや炎症を抑え、傷んだ部位の治癒を促進させます。
- ・治療の流れとしては、遠心分離機にて血漿成分を抽出し、関節内に注射するだけと日帰りで行えます。
- ・アメリカではスポーツ選手を中心に実施され、現在では一般の方々への治療法としても広く導入されています。
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2.自己脂肪由来「幹細胞治療」
- ・培養した幹細胞を膝に注射し、磨耗した軟骨・靭帯・半月板を再生させます。
- ・幹細胞には内蔵や皮膚・筋肉など、さまざまな細胞に分化(変化)する能力があります。
- ・米2つぶほどの脂肪を採取後、4〜6週間かけて幹細胞を培養・増殖し、関節内へ注射します。
- ・PRP療法同様に日帰りで、痛みもほとんど伴わない治療法です。
▲当院の症例をご紹介。「半月板損傷」と「変形性膝関節症」が同時発症!マラソンが趣味の患者様。
まとめ・変形性膝関節症に悩むスポーツ選手へ、復帰を目指すための最新の治療法について
変形性膝関節症のスポーツ選手が、現場復帰を目指すにあたり重要なのは見極めです。膝に強い痛みを感じたまま運動をすると悪化する可能性がありますが、痛みから膝を全く動かさないのもまた問題です。膝がどのような状態なのかを見極めて、それに適した治療を施すことが、早期のスポーツ復帰につながるほか、選手生命の長期化になります。
運動療法などの保存療法でも効果がみられなければ、手術がありますが、スポーツからの離脱期間が発生したり、可動域が制限されたりするなど、パフォーマンスに影響が出ます。またスポーツ選手は絶えず膝に負荷がかかる生活を送ることから、手術をするのかどうかの判断は難しいところです。
そうした事情から、「湿布や運動療法では効果がみられなかったけど、手術は避けたい」方には、保存療法と観血療法の中間に位置する「再生医療」があります。
体に大きな負担をかけず、入院や手術の必要のない新たな治療法として期待されるほか、変形性膝関節症の初期から治療に取り組むことで、悪化を防ぎ、パフォーマンスをあげ、少しでも長く選手生活を続けられる可能性が広がりました。悩んでいる方は、まずは一度ご相談をされみることをおすすめします。
以上、変形性膝関節症を発症したスポーツ選手が復帰を目指すために取り組むための治療法について解説いたしました。
当院は再生医療専門のクリニックです。お力になることができれば幸いです。
詳しくは無料相談をご利用ください。
変形性膝関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます
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